JP2008307661A - 構造体の製造方法および構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】基板上にナノスケールの無機物からなるドット、ライン又はホールを無機物が凝集することなく形成することができる構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体の製造方法であって、基板上にブロック共重合体を塗布してブロック共重合体のセグメントが分離したミクロ相分離構造体を形成する工程と、前記ミクロ相分離構造体に無機成分を溶解した溶液を接触させてミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントに前記無機成分を浸潤する工程と、前記ブロック共重合体を除去して前記無機成分を含むドット、ライン又はホールのいずれかを形成する工程とを有する構造体の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体の製造方法であって、基板上にブロック共重合体を塗布してブロック共重合体のセグメントが分離したミクロ相分離構造体を形成する工程と、前記ミクロ相分離構造体に無機成分を溶解した溶液を接触させてミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントに前記無機成分を浸潤する工程と、前記ブロック共重合体を除去して前記無機成分を含むドット、ライン又はホールのいずれかを形成する工程とを有する構造体の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体の製造方法およびその製造方法により得られた構造体に関するものである。
材料技術や材料加工技術が高度に進歩する中で、昨今はナノテクノロジーという言葉に代表されるように取り扱う材料の大きさがナノメートル(10億分の1メートル)のオーダーになり、このようなサイズの素材を製造、測定、評価、加工、応用する際にも新たな基盤技術の確立が重要な課題となっている。例えば、粒子を例に考えてみると微細化が進み、その直径が小さくなればなるほど、粒子を構成する原子のうち粒子表面に存在する原子の割合が増えることになる。そして究極的には、粒子を構成する原子の全てが表面を構成する原子である状態にまでなる。このように、微細化が進むほど、粒子の大きさに対して粒子表面にかかる力の割合が大きくなり、同じ素材でもミクロンスケール(100万分の1メートル)の粒子とナノスケールの粒子では、性状が大きく変化することも珍しくない。
ナノメートルスケールという微細な領域は、例えば可視光の波長が数百ナノメートルであり、更には蛋白質等の生体分子の大きさが数〜数十ナノメートルであり、光学材料や生体材料の分野においても従来のミクロンスケールの材料では到達しえなかった特別な特性を引き出せるものと期待されている。また、半導体材料においても、粒子の大きさを数〜数十ナノメートルの大きさにすることで、電子エネルギーが1粒子内で量子化した量子サイズ効果を発現する量子ドットを得ることも可能であり、光学のみならず電子材料の分野でも、新たな特性を引き出せることが期待されている。
このようなナノスケールの材料の製造方法は、同じ組成の塊を粉砕、研磨、分解、切削等の微細加工プロセスを繰り返したり、或いは組み合わせることによって、より一層微細にしていくトップダウン方式と、原子、分子という材料を構成する最小単位のユニットを自己組織化などの手法を用いて徐々に組み上げて行くボトムアッププロセスという大きく分けて二通りの方法がある。
しかしながら上述のどちらの手法を用いて得られたナノスケールの材料においても、表面に存在する原子の割合が多くなっているという観点では同じであり、微細化により個々の重量が低減するが、全体として表面積は増加し、その結果表面効果による凝集力が大きくなり自発凝集を起こすことになる。その結果、ナノメートルサイズになって発揮することが期待されている新規特性を引き出すことができないという課題が発生し、ナノテクノロジー技術の発達に大きな障害となっていたが、ナノメートルサイズのドット、ライン(ワイヤー)、ホールを汎用性の高い方法で凝集解除する手法がなかった。
ナノスケールの材料が、強い自己凝集性を示す理由としては、先に述べた通りサイズ効果を挙げることができる。特にナノスケールの材料として有望視されているものの中には、原子価状態の変化が容易に起きるものが少なくなく、より多様な過程を経て凝集を起こしてしまう。半導体材料や導電性材料のナノスケールの無機物は、特別な分散処理を施さなければ、ほとんど凝集状態であることは、粒度分布測定、電子顕微鏡(SEM若しくはTEM)、原子間力顕微鏡等の手法で容易に確認することができる。
ナノスケールの材料を実際に有効なデバイスとして用いる場合には、何らかの基板(基板)上において用いることとなるが、やはり、基板上でも個々のナノスケールの無機物を孤立させて存在させなければ、ナノスケールの無機物に期待する特性を発現できない場合が多々ある。
ナノスケールの無機物を凝集させないためには、例えば非常に希薄な分散状態をつくっておいて、その分散溶液を乾燥させる方法が考えられるが、この手法では溶媒の蒸発過程で分散溶液の濃度が上昇し、凝集を完全に防ぐことが不可能であった。また、そもそも溶液中に一次粒子の形で分散させること自体に、凝集力を解除するために大きなシェアをかけたり、分散剤を添加するなどの特別な手段が必要であり、場合によってはこの凝集力を解除するために必要な操作(シェア、分散剤添加、表面処理等)が、当初のナノスケールの無機物の特性に何らかの影響を及ぼすこともあった。
特開2004−097910公報
特開2004−35858公報
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、基板上にナノスケールの無機物からなるドット、ライン又はホールを無機物が凝集することなく形成することができる構造体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、曲面基板上にもナノスケールの無機物からなるドット、ライン又はホールを無機物が凝集することなく形成することができる構造体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の製造方法により基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体を提供するものである。
上記の課題を解決する構造体の製造方法は、基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体の製造方法であって、基板上にブロック共重合体を塗布してブロック共重合体のミクロ相分離構造体を形成する工程と、前記ミクロ相分離構造体に無機成分を溶解した溶液を接触させてミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントに前記無機成分を浸潤する工程と、前記ブロック共重合体を除去して前記無機成分を含むドット、ライン又はホールのいずれかを形成する工程とを有することを特徴とする。
上記の課題を解決する構造体は、上記の方法により製造された、基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体であることを特徴とする。
本発明は、基板上にナノスケールの無機物からなるドット、ライン又はホールを無機物が凝集することなく形成することができる構造体の製造方法を提供することができる。
また、本発明は、曲面基板上にもナノスケールの無機物からなるドット、ライン又はホールを無機物が凝集することなく形成することができる構造体の製造方法を提供することができる。
また、本発明は、曲面基板上にもナノスケールの無機物からなるドット、ライン又はホールを無機物が凝集することなく形成することができる構造体の製造方法を提供することができる。
また、本発明は、上記の製造方法により基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、基板上にブロック共重合体によるミクロ相分離構造体を形成し、次いでナノスケールの無機物を形成する原料の無機成分をミクロ相分離構造体の一成分にのみ作用する溶媒中に溶解させた溶液を得た後に、この溶液とミクロ相分離構造体とを接触させて、溶解している無機成分を、ミクロ相分離構造体のミクロ相分離を起こしているドメイン中へ浸潤させ、最後にブロック共重合体成分を除去することで、ドット、ライン又はホールを基板上に形成できることを見出した。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、基板上にブロック共重合体によるミクロ相分離構造体を形成し、次いでナノスケールの無機物を形成する原料の無機成分をミクロ相分離構造体の一成分にのみ作用する溶媒中に溶解させた溶液を得た後に、この溶液とミクロ相分離構造体とを接触させて、溶解している無機成分を、ミクロ相分離構造体のミクロ相分離を起こしているドメイン中へ浸潤させ、最後にブロック共重合体成分を除去することで、ドット、ライン又はホールを基板上に形成できることを見出した。
すなわち、本発明に係る構造体の製造方法は、基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体の製造方法であって、基板上にブロック共重合体を塗布してブロック共重合体のミクロ相分離構造体を形成する工程と、前記ミクロ相分離構造体に無機成分を溶解した溶液を接触させてミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントに前記無機成分を浸潤する工程と、前記ブロック共重合体を除去して前記無機成分を含むドット、ライン又はホールのいずれかを形成する工程とを有することを特徴とする。
前記ミクロ相分離構造体に、該ミクロ相分離構造体の相分離したセグメントに親和性を有する溶媒に無機成分を溶解させた溶液を接触させることが好ましい。
前記無機成分を溶解した溶液に含有される無機成分が金属の塩化物であり、溶媒が水であることが好ましい。
前記無機成分を溶解した溶液に含有される無機成分が金属の塩化物であり、溶媒が水であることが好ましい。
前記ブロック共重合体を除去する工程の後に、ブロック共重合体を除去して得られたドット、ライン又はホールのいずれかからなる無機成分を酸化または還元する工程を含むことが好ましい。
前記ミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントの形状がドット、ライン又はホールのいずれかからなることが好ましい。
前記基板上の面が曲面であることが好ましい。
前記基板上の面が曲面であることが好ましい。
また、本発明に係る構造体は、上記の方法により製造された、基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体であることを特徴とする。
次に、本発明を図面を用いて説明する。
次に、本発明を図面を用いて説明する。
(1)基板上へのブロック共重合体のミクロ相分離構造体を形成する工程
基板上にブロック共重合体を塗布してブロック共重合体のセグメントが分離したミクロ相分離構造体を形成する。ブロック共重合体とは、2種類以上の繰り返しユニットからなる共重合体において、同一の繰り返しユニット同士で重合しているもので、例えばA、Bの2種類の繰り返しモノマーの場合、AAAAAA−BBBBBBという構成や、AAAAA−BBBBBB−AAAAAAといったそれぞれの繰り返しユニットが一塊で重合している状態である。このブロック共重合体において、AとBはその化学組成により相溶性がことなるが、この分子鎖が集まった時には、その相溶性の違いによりA、Bそれぞれのセグメントはなるべく同じセグメント同士が集合しようとする。その結果、集合体においてもAとBとの各セグメントが分離した状態で存在することになり、その状態をミクロ相分離と呼ぶ。ミクロ相分離の形態は、各セグメントの分子量や分子量分布、相溶性の違いにより、ラメラ状、球状、シリンダー状などの形態をとることが知られている。
基板上にブロック共重合体を塗布してブロック共重合体のセグメントが分離したミクロ相分離構造体を形成する。ブロック共重合体とは、2種類以上の繰り返しユニットからなる共重合体において、同一の繰り返しユニット同士で重合しているもので、例えばA、Bの2種類の繰り返しモノマーの場合、AAAAAA−BBBBBBという構成や、AAAAA−BBBBBB−AAAAAAといったそれぞれの繰り返しユニットが一塊で重合している状態である。このブロック共重合体において、AとBはその化学組成により相溶性がことなるが、この分子鎖が集まった時には、その相溶性の違いによりA、Bそれぞれのセグメントはなるべく同じセグメント同士が集合しようとする。その結果、集合体においてもAとBとの各セグメントが分離した状態で存在することになり、その状態をミクロ相分離と呼ぶ。ミクロ相分離の形態は、各セグメントの分子量や分子量分布、相溶性の違いにより、ラメラ状、球状、シリンダー状などの形態をとることが知られている。
先ず、基板上にブロック共重合体の溶液を塗布する。塗布する方法は、スピンコート、ディップコート、ドクターブレードによる塗布、スプレー塗布などの従来公知の手法を用いることが可能である。溶剤が蒸発する際にブロック共重合体の各セグメントの相溶性や分子量、分子量分布によっては特別な処理を施さなくてもミクロ相分離を形成させることが可能な場合がある。単純に塗布したのみでミクロ相分離を形成できなければ、一旦、塗布基板全体をブロック共重合体のガラス転移点温度(Tg)以上に上げた後に、徐冷することでミクロ相分離を形成させることが可能となる場合が多い。
また、ミクロ相分離構造の形態は、基板とブロック共重合体の各セグメントとの親和性にも依存し、あまりにも基板と、共重合体中のあるセグメントの相互作用が強い場合には、そのセグメントが基板のすぐ上に層を形成してシリンダーや球状の層分離を形成しにくい場合がある。その場合は、予め基板の性状を変えて基板と共重合体の各セグメントの親和性が偏らないようにする必要がある。この親和性を分散させる方法としては、ブロック共重合体の各セグメントの中間程度の親和性を有する化合物での表面処理や、塗布するブロック共重合体に含まれる繰り返しユニットで作成したランダム共重合体若しくは交互共重合体を薄く塗布しておくことも有効である。
また、加熱処理を施す際は共重合体の酸化劣化を防止するために、真空中若しくは窒素やアルゴン等の不活性ガスで行うのが好ましい。
(2)無機成分を浸潤する工程
前記ミクロ相分離構造体に無機成分を溶解した溶液を接触させてミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントに前記無機成分を浸潤させる。溶液は無機成分を溶媒中に溶解させた溶液を用いる。このとき、溶媒の選択としては(1)の工程で塗布したブロック共重合体のうち、ミクロ相分離構造のうち無機成分を浸潤させたいセグメントのみに親和性のある溶媒を選択する。ここで親和性のある溶媒とは、無機成分を浸潤させたいセグメントのホモポリマーを溶解または膨潤させることが可能であることを意味する。例えば、ブロック共重合体がポリスチレン−ポリエチレンオキサイド系である場合、ポリエチレンオキサイド側に無機成分を浸潤させたい場合は、ポリスチレンを溶解若しくは膨潤させることができない、即ちポリスチレンとは親和性がなく、ポリエチレンオキサイドを溶解させることの出来る水を選ぶことが好適である。
(2)無機成分を浸潤する工程
前記ミクロ相分離構造体に無機成分を溶解した溶液を接触させてミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントに前記無機成分を浸潤させる。溶液は無機成分を溶媒中に溶解させた溶液を用いる。このとき、溶媒の選択としては(1)の工程で塗布したブロック共重合体のうち、ミクロ相分離構造のうち無機成分を浸潤させたいセグメントのみに親和性のある溶媒を選択する。ここで親和性のある溶媒とは、無機成分を浸潤させたいセグメントのホモポリマーを溶解または膨潤させることが可能であることを意味する。例えば、ブロック共重合体がポリスチレン−ポリエチレンオキサイド系である場合、ポリエチレンオキサイド側に無機成分を浸潤させたい場合は、ポリスチレンを溶解若しくは膨潤させることができない、即ちポリスチレンとは親和性がなく、ポリエチレンオキサイドを溶解させることの出来る水を選ぶことが好適である。
選択した溶媒中に、無機成分を溶解させた溶液を作成した後に、(1)の工程で作成したミクロ相分離構造体を形成した基板を作用させる。作用させる方法としては、溶液中に浸基板を漬させる方法、更に浸漬後しばらく溶液中で放置する方法、或いはスピンコート、スプレー塗布、ディップコート、ドクターブレードなどの従来公知の方法にて基板上に塗布したのちに乾燥させる方法等がある。また浸潤する量が少ない場合には、これらの方法を適宜、繰り返したり、組み合わせたりすることも可能である。
また、基板上のミクロ相分離構造体に無機成分を溶解した溶液を接触させるのに先立って、基板を真空中或いは/並びに加熱処理を施すことにより、無機成分を浸潤させるセグメント内の溶剤を完全に除去しておくことで、無機成分の浸潤する効率を上げることも可能である。
十分に無機成分を浸潤させたち、基板表面を軽く濯ぎ、基板表面上に余分な無機成分の残留が無い状態にしておくことで、無機成分の浸潤を更に高めることが可能である。
(3)前記ブロック共重合体を除去して前記無機成分を含むドット、ライン又はホールのいずれかを形成する工程
ブロック共重合体を除去する工程において、必要に応じて次に示す無機成分の変換処理を前後して行ったり、若しくは同時に行ってもよい。
(3)前記ブロック共重合体を除去して前記無機成分を含むドット、ライン又はホールのいずれかを形成する工程
ブロック共重合体を除去する工程において、必要に応じて次に示す無機成分の変換処理を前後して行ったり、若しくは同時に行ってもよい。
ブロック共重合体の除去に当たっては、湿式、乾式、加熱処理、光処理、活性ガス処理等の有機薄膜を除去するために従来行われているいかなる手法も用いることが可能である。
(4)無機成分の変換処理
ここでは前記ブロック共重合体を除去する工程の後、または同時にブロック共重合体を除去して得られたドット、ライン又はホールのいずれかからなる無機成分を酸化または還元して無機物とする工程である。
ここでは前記ブロック共重合体を除去する工程の後、または同時にブロック共重合体を除去して得られたドット、ライン又はホールのいずれかからなる無機成分を酸化または還元して無機物とする工程である。
例えば、所望の無機物の化学組成が酸化物若しくは金属で、無機成分の原料成分が塩化物であった場合には何らかの変換処理が必要となる。(3)の工程で作成した塩化物の無機成分を酸素雰囲気中で加熱することで、酸化物のナノ構造体を作成することができるし、また水素雰囲気若しくは真空中で加熱処理して還元することで金属のナノ構造体を作成することもできる。
上記の(1)乃至(4)の工程は非常に簡便で汎用性がある。一方で、フォトリソグラフィーのようなトップダウンプロセスでもナノ構造基板を得ることが可能ではあるが、装置が大型化する点に加え、フォトリソプロセスでは基板形状の制限があり、大きく湾曲したような形状の場合には加工できないこともあり、汎用性が低い点が挙げられるが、(1)乃至(4)の工程は特に基板形状による制限は無く、基板上の面が曲面であってもよい。
本発明に用いることの出来る基板材料としては特に制限されるものではなく、金属、半導体、絶縁体、樹脂材料、ガラスや石英等の光学材料、セラミック等を用いることが可能である。また基板の形状に関しても特に制限されるものではなく、必ずしも平面である必要が無く、ミクロ相分離を起こすブロック共重合体を塗布できることができればよい。また、本発明において基板材料はブロック共重合体の塗布、ブロック共重合体のミクロ相分離を起こす操作(加熱)、無機前駆体成分が溶解した溶液との作用、ブロック共重合体を除く工程、無機成分を目的の化合物に変換する工程に曝されることになるが、これらのプロセスに対する耐性を有する材質であるという条件を満たす必要がある。
ブロック共重合体の選択としては、先ずミクロ相分離を起こす材料であることが求められる。ミクロ相分離を起こすブロック共重合体については従来公知の材料を用いることができるが、層分離を起こすためには一般にブロック共重合体の各セグメント同士で相溶解性が乏しい材料である必要がある。また、ミクロ相分離の形態に関しては例えばジブロック共重合体では片方のセグメントが球状に分散している状態、シリンダー状に分散している状態、あるは両セグメントがラメラ状に折り重なっている状態が知られている。これらの相分離の形状はブロック共重合体を構成する化学的組成のほか、ブロック共重合体を溶解するための溶剤や塗布後の加熱処理条件、更には塗布面とブロック共重合体の各セグメントとの親和性の差によっても制御することが可能である。また、ブロック共重合体の各セグメントの分子量を調整することでミクロ相分離構造の大きさも調整することが可能である。
以下に本発明に用いることができるブロック共重合体の各セグメントを例示するが本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
ブロック共重合体を塗布するための溶剤としては従来公知のものを用いてよい。また溶剤は単一溶剤でも混合溶剤でもよく、ブロック共重合体の組成や分子量に応じて適宜選択することが可能である。例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、エタノール、ジメチルホルムアミド、クロロフォルム等が挙げられる。
構造体を形成する無機物としては金属若しくは金属酸化物であるが、その前駆体の無機成分としては塩や錯体若しくはアルコキシド等の溶剤に可溶な組成である必要がある。ナノ構造体材料として白金を選べば、その前駆対としてはH2PtCl6の塩を用いることが可能であるし、ルテニウムオキサイド(RuO2)でナノ構造体を形成させる場合にはその前駆体としてRuCl3やRu(III)アセチルアセトンといった錯体を選択することが可能である。また、TiO2でナノ構造体を形成させるためにはTiCl4のような塩化物や、Ti(OEt)4やTi(OiPr)4のようなアルコキシド若しくはチタンオキシドビス(ペンタンジオネート)等の錯体や、TiOSO4、Ti(NO3)4などを選択することが可能である。
無機成分を溶解させる溶媒としては従来公知の溶剤を選択することができるが、溶剤に求められる条件としては先ず無機成分に対する溶解性を有することが必要である。無機成分を溶解させる濃度に関しては、1質量%以上80質量%以下、好ましくは3質量%以上60質量%以下、より好ましくは5質量%以上40質量%以下である。溶解度が低すぎる場合は、ミクロ相分離を起こしたブロック共重合体に作用させても浸潤していく無機成分の量が少なく、結果としてブロック共重合体のミクロ相分離を反映したナノ構造体を形成させることが困難である。逆に、あまりにも高濃度で溶解させた溶液をブロック共重合体に接触させても、浸潤させるときにブロック共重合体のミクロ相分離構造を破壊させる現象が見られるためである。
ブロック共重合体の除去に当たっては、湿式、乾式、加熱処理、光処理、活性ガス処理等の有機薄膜を除去するために従来行われているいかなる手法も用いることが可能であるが、処理する工程でミクロ相分離構造を乱したり、無機成分にダメージを与える工程以外を選択する必要が可能である。特に加熱によりブロック共重合体を除去する方法は簡便ではあるが、往々にしてミクロ相分離構造の形態を乱すため、加熱による除去を試みる際は昇温レートや雰囲気に留意する必要がある。紫外線のような高エネルギー光照射、若しくはRIE(reactive ion etching)のようなドライプロセスは、ブロック共重合体の形態保持の観点で好ましい。また、オゾンのような酸化性の高い雰囲気で紫外線照射を行うことで、相分離構造の形態を保持しつつ効率的にブロック共重合体を除去することが可能である。
無機成分から所望の無機物の構造体へ変換する方法としては、例えば無機物を最終目的構造とする場合には空気若しくは酸素中での加熱や酸素ガスによるRIE等を行うことで変換可能である。また、金や白金自体の金属自身を最終目的構造体とする場合は、水素雰囲気中での加熱といった還元的な処理をすることで変換することが可能である。
本発明において、構造体とは、例えばナノサイズの特徴を有するナノ粒子、ナノロッド、ナノシリンダー、ナノホール等が挙げられる。
以下に本発明の実施の形態について具体的な例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
ブロック共重合体として、ポリスチレン(分子量227000g/mol)−ポリエチレンオキサイド(分子量61000g/mol)ブロック共重合体(分散度:1.04、創和化学製、商品名P2806−SEO)を1質量%となるようにトルエンに溶解した。常温での溶解では白濁が認められたため、一旦溶液を60℃に加熱したところ白濁は消失した。溶液を常温に戻しても透明性を保っていた。このトルエン溶液を、シリコンウエハー(3mm×3mm、厚さ:0.5mm)上に、スピンコートで3500rpm、1分間で塗布した。塗布後の基板表面は干渉色により色が変わっており薄膜が塗布されたことが示された。
実施例1
ブロック共重合体として、ポリスチレン(分子量227000g/mol)−ポリエチレンオキサイド(分子量61000g/mol)ブロック共重合体(分散度:1.04、創和化学製、商品名P2806−SEO)を1質量%となるようにトルエンに溶解した。常温での溶解では白濁が認められたため、一旦溶液を60℃に加熱したところ白濁は消失した。溶液を常温に戻しても透明性を保っていた。このトルエン溶液を、シリコンウエハー(3mm×3mm、厚さ:0.5mm)上に、スピンコートで3500rpm、1分間で塗布した。塗布後の基板表面は干渉色により色が変わっており薄膜が塗布されたことが示された。
さらにこの基板表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観測したところ、直径が30nm程度のドットが認められ、ブロック共重合体の組成より、ポリスチレンマトリックス中にポリエチレンオキサイドユニットが球状に存在しているミクロ相分離構造であることが確認された。ついで、この基板を40℃で24時間、真空乾燥した。
無機成分として白金塩(H2PtCl6、アルドリッチ製)を純水に溶解して15質量%の溶液を作成した。真空乾燥した基板を、このH2PtCl6溶液中に浸し、白金塩成分を水との親和性が高いポリエチレンオキサイドユニット中へ浸潤させるために24時間放置後に溶液より取り出し、純水で表面を濯いだ。次いで、この基板からブロック共重合体成分を除去するためにUV・オゾン分解装置で4時間処理して構造体を得た。処理後の基板表面後は処理前まで見られた薄膜が形成されたことによる干渉色が消失しており、UV・オゾン処理によりブロック共重合体が除去したことが認められた。この基板表面をAFMで観察したころ、ナノサイズのドット状の斑点が多数認められた。図1に実施例1で得られた構造体の基板表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。
実施例2
実施例1において、基板材料をシリコンウエハーからステンレス(3mm×3mm、厚さ:0.5mm)に変えた以外は同様にして、基板上にナノドットが形成された構造体を得た。
実施例1において、基板材料をシリコンウエハーからステンレス(3mm×3mm、厚さ:0.5mm)に変えた以外は同様にして、基板上にナノドットが形成された構造体を得た。
実施例3
実施例2において、基板材料を平板ステンレスから図2に示すような曲面を有するステンレス基板(厚さ:0.5mm)に変えた以外は同様にして、基板上にナノドットが形成された構造体を得た。AFM測定は、曲面の頂点付近で行ったが、同様にナノサイズのドットが形成されていることが確認できた。
実施例2において、基板材料を平板ステンレスから図2に示すような曲面を有するステンレス基板(厚さ:0.5mm)に変えた以外は同様にして、基板上にナノドットが形成された構造体を得た。AFM測定は、曲面の頂点付近で行ったが、同様にナノサイズのドットが形成されていることが確認できた。
実施例4
実施例1において、ブロック共重合体をポリスチレン(分子量19000g/mol)−ポリエチレンオキサイド(分子量123000g/mol)ブロック共重合体(分散度:1.04、創和化学製、商品名P1920−SEO)に変えた以外は同様にして白金のナノ構造体を作成した。図3に実施例4で得られた構造体の基板表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。
実施例1において、ブロック共重合体をポリスチレン(分子量19000g/mol)−ポリエチレンオキサイド(分子量123000g/mol)ブロック共重合体(分散度:1.04、創和化学製、商品名P1920−SEO)に変えた以外は同様にして白金のナノ構造体を作成した。図3に実施例4で得られた構造体の基板表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。
実施例5
実施例1において、無機成分をRuCl3に変えた以外は同様にしてナノ構造体を作成した。なお、最終的に基板表面に形成されたナノ構造体はRuO2である。
実施例1において、無機成分をRuCl3に変えた以外は同様にしてナノ構造体を作成した。なお、最終的に基板表面に形成されたナノ構造体はRuO2である。
応用例1
実施例2で作成したナノ構造体を質量分析用試料基板として利用した。
実施例2で作成した基板を、0.6mmだけ切削したMALDI−TOF MS測定用のステンレス製ターゲット基板へ導電性両面テープで接着して固定した。
実施例2で作成したナノ構造体を質量分析用試料基板として利用した。
実施例2で作成した基板を、0.6mmだけ切削したMALDI−TOF MS測定用のステンレス製ターゲット基板へ導電性両面テープで接着して固定した。
この基板上へ、トリアセチル−β−シクロデキストリン(分子式=C84H112O56、分子量=2017.75、東京化成:商品コード=T1844)のテトラヒドロフラン溶液(10μmol/L)をマイクロピペッターにより1μL滴下し、乾燥させた。
次いでこの基板をMALDI−TOF MS装置(商品名:REFLEX−III、ブルカー・ダルトニクス社製)へ装着した。MALDI−TOF MSの測定における照射レーザーは窒素レーザー(波長=337nm)であり、ポジイオンの反射モード(レフレクターモード)とした。照射レーザー強度は親イオンのピークが出始めた強度よりも2%だけ強い強度で測定し、一箇所において20パルスぶんのスペクトルを積算し、それを10箇所に渡り積算し、合計200パルスぶんのレーザー照射から得られる信号強度を合計したスペクトルを得た。
また、加速電圧26.5kVに設定し、質量数0から2500までのピークを取り込んだ。
また、測定における低分子量域のカットオフ値は0以上、即ちカットオフ無しで、検出器に飛行してきたカチオン種を全ての領域で取り込んだ。
また、測定における低分子量域のカットオフ値は0以上、即ちカットオフ無しで、検出器に飛行してきたカチオン種を全ての領域で取り込んだ。
得られたスペクトルの評価は、測定対象分子(プロトン若しくは基板上のNa、K、Ag等の1価の金属カチオンの付加体として分子量域:2018から2125付近に出現するピークを親イオンとした)の強度、及び、分子量域50から2000における分解物のピークの強度及び種類の多さにより判定を行った。
比較応用例1
比較のため、ナノ構造体を表面に形成していない基板(実施例1の処理前のステンレス基板)を用いて、応用例1と同様に質量分析を行った。
比較のため、ナノ構造体を表面に形成していない基板(実施例1の処理前のステンレス基板)を用いて、応用例1と同様に質量分析を行った。
ナノ構造体の有無を比較すると、ナノ構造体を形成された基板からは親イオン、すなわちプロトン若しくは基板上のNa、K、Ag等の1価の金属カチオンの付加体として分子量域:2018から2125付近に出現するピークがメインのピーク群であったのに対し、ナノ構造体の形成が無い基板では、レーザー強度を調整しても質量数が500以下のフラグメントに由来するピーク群がメインであった。
本発明の製造方法は、簡便な方法で無機物のナノ構造体を基板上に形成することが可能である。また、本発明の製造方法は、曲面の基板上にも簡便な手法で無機物のナノ構造体を形成させることも可能である。このようにして作成した構造体は、電極材料、光学材料、電子材料、分析用素子等への応用が可能である。
1 ステンレス基板
Claims (7)
- 基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体の製造方法であって、基板上にブロック共重合体を塗布してブロック共重合体のミクロ相分離構造体を形成する工程と、前記ミクロ相分離構造体に無機成分を溶解した溶液を接触させてミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントに前記無機成分を浸潤する工程と、前記ブロック共重合体を除去して前記無機成分を含むドット、ライン又はホールのいずれかを形成する工程とを有することを特徴とする構造体の製造方法。
- 前記ミクロ相分離構造体に、該ミクロ相分離構造体の相分離したセグメントに親和性を有する溶媒に無機成分を溶解させた溶液を接触させることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
- 前記無機成分を溶解した溶液に含有される無機成分が金属の塩化物であり、溶媒が水であることを特徴とする請求項1または2に記載の構造体の製造方法。
- 前記ブロック共重合体を除去する工程の後に、ブロック共重合体を除去して得られたドット、ライン又はホールのいずれかからなる無機成分を酸化または還元する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の構造体の製造方法。
- 前記ミクロ相分離構造体中の相分離したセグメントの形状がドット、ライン又はホールのいずれかからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の構造体の製造方法。
- 前記基板上の面が曲面であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の構造体の製造方法。
- 請求項1乃至6のいずれかの項に記載の方法により製造された、基板上に無機物からなるドット、ライン又はホールのいずれかが形成された構造体。
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2007
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