JP2008298343A - 冷媒分流器一体化構造の膨張弁及びこれを用いた冷凍装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、不連続な冷媒流動音を低減するとともに、良好な冷媒分流特性が得られる冷媒分流器一体化構造の膨張弁、及びこの膨張弁を用いた冷凍装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、絞り作用を行う第1絞り部10と、第1絞り部10通過後の冷媒を分流管12に分流するための冷媒分流室6と、冷媒分流室6に接続された分流管12とを備える。分流管12は、第1絞り部10が形成されている壁体(第1仕切壁4)の近くに開口するように形成され、第1絞り部10の出口側の周囲に、第1絞り部10から噴出される冷媒流が直接的に分流管12の入口に吹き付けられることを防止するための筒状部材13を設ける。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、絞り作用を行う第1絞り部10と、第1絞り部10通過後の冷媒を分流管12に分流するための冷媒分流室6と、冷媒分流室6に接続された分流管12とを備える。分流管12は、第1絞り部10が形成されている壁体(第1仕切壁4)の近くに開口するように形成され、第1絞り部10の出口側の周囲に、第1絞り部10から噴出される冷媒流が直接的に分流管12の入口に吹き付けられることを防止するための筒状部材13を設ける。
【選択図】図1
Description
本発明は、冷媒分流器と膨張弁とを一体化した冷媒分流器一体化構造の膨張弁及びこれを用いた冷凍装置に関する。
空気調和装置、冷蔵庫、製造工程用冷却装置などの冷凍装置において、蒸発器が複数のパス(熱交換器における冷媒流通路)で構成される場合がある。この場合の冷媒回路は、例えば、図16に示すように構成されている。圧縮機101によって加圧された冷媒は、凝縮器102で凝縮され、受液器103を経て膨張弁104に送られる。膨張弁104で減圧された冷媒は、冷媒配管105を介して冷媒分流器106に送られ、冷媒分流器106で分流されて蒸発器107の複数のパスに送られる。蒸発器107に送られた低圧冷媒は、蒸発器107で蒸発気化し、アキュムレータ108を介して圧縮機101に還流される。このように蒸発器107が複数のパスに構成される場合には、膨張弁104の下流側の冷媒配管105に、膨張弁104で減圧された冷媒を蒸発器107の複数のパスに均等に分流するための冷媒分流器106が取り付けられている。なお、冷媒分流器106は、例えば特許文献1に記載されているように、所定容積の冷媒分配空間(以下冷媒分流室という)を備えた容器であって、この容器に、この冷媒分流室と蒸発器107の各パスとを接続するための分流管取付孔が形成されたものである。したがって、冷媒分流器106に流入する冷媒は、所定の流通方向においては膨張弁104で減圧された冷媒であるため、低圧の気液二相流冷媒となっている。そして、この気液二相流冷媒は、膨張弁104と冷媒分流器106とを接続する冷媒配管105を流れる間に大きな気泡が存在するプラグ流やスラグ流になりやすい。また、冷媒分流器106に流入する冷媒がプラグ流やスラグ流になった場合は、重力の影響等により、各分流管に気泡が均等に流入しないことがあり、均等な分流が行われ難いという問題があった。
そこで、最近の冷媒分流器においては、例えば、特許文献1に記載のように、分流管取付穴の上流側に開度一定の絞り部(特許文献1では経路縮小部材)を配置し、この絞り部下流側の冷媒を噴霧状態とすることにより、均等な分流を実現しようとする提案がなされている。
一方、上記の冷媒分流器の問題とは別に、膨張弁においては次のように冷媒流動音が問題となっている。
膨張弁は、一般に、流入する冷媒が高圧液冷媒であることを基本としている。ところが、冷凍装置の運転条件の変動などにより、膨張弁の上流側、すなわち受液器の出口(受液器がない場合は凝縮器の出口)側の冷媒に気泡が含まれる場合がある。そして、この気泡を含む高圧液冷媒は、膨張弁に至る冷媒配管を流通する間に配管外部から加熱されて気泡が増加したり、冷媒流中の気泡が合体したりすることがある。その結果、大きな気泡が断続的に存在するプラグ流やスラグ流に成長して膨張弁に流入することがある。また、プラグ流やスラグ流が膨張弁に送られてくると、絞り部に対し液冷媒とガス冷媒とが交互に流れる不連続状態となり、膨張弁の冷媒流に速度変動及び圧力変動が生ずる。このため、絞り部では気液が交互に流れることにより「チュルチュル」という音を発したり、絞り部から冷媒配管系へ流出する霧状冷媒の噴出速度及び圧力が変動して膨張弁出口側で「シャーシャー」という音を発したりというように不連続な冷媒流動音が発生するという問題があった。さらには、冷媒配管内の速度変動及び圧力変動により膨張弁や接続配管などの膨張弁周りの機器が振動して膨張弁周りに振動音を発生するという問題があった。なお、このような冷媒流動音及び振動音を総称して、以下の説明では膨張弁における不連続な冷媒流動音という。
膨張弁は、一般に、流入する冷媒が高圧液冷媒であることを基本としている。ところが、冷凍装置の運転条件の変動などにより、膨張弁の上流側、すなわち受液器の出口(受液器がない場合は凝縮器の出口)側の冷媒に気泡が含まれる場合がある。そして、この気泡を含む高圧液冷媒は、膨張弁に至る冷媒配管を流通する間に配管外部から加熱されて気泡が増加したり、冷媒流中の気泡が合体したりすることがある。その結果、大きな気泡が断続的に存在するプラグ流やスラグ流に成長して膨張弁に流入することがある。また、プラグ流やスラグ流が膨張弁に送られてくると、絞り部に対し液冷媒とガス冷媒とが交互に流れる不連続状態となり、膨張弁の冷媒流に速度変動及び圧力変動が生ずる。このため、絞り部では気液が交互に流れることにより「チュルチュル」という音を発したり、絞り部から冷媒配管系へ流出する霧状冷媒の噴出速度及び圧力が変動して膨張弁出口側で「シャーシャー」という音を発したりというように不連続な冷媒流動音が発生するという問題があった。さらには、冷媒配管内の速度変動及び圧力変動により膨張弁や接続配管などの膨張弁周りの機器が振動して膨張弁周りに振動音を発生するという問題があった。なお、このような冷媒流動音及び振動音を総称して、以下の説明では膨張弁における不連続な冷媒流動音という。
このために、膨張弁における不連続な冷媒流動音を低減する方法として、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動を緩和する手段が設けられていた。例えば、特許文献2においては、閉鎖可能な絞り部の上流側に冷媒流を減圧する他の絞り部が設けられている。また、特許文献3においては、閉鎖可能な絞り部の上流側に冷媒流に乱れを生起する乱れ生起部が設けられている。また、特許文献4においては、閉鎖可能な絞り部の下流側に冷媒流を減圧する他の絞り部が設けられている。
特開2002−188869号公報
特開2005−69644号公報
特開2005−351605号公報
特開2005−226846号公報
上述のように、従来の冷媒分流器では、分流を均等に行う手段として分流管取付孔の上流側に絞り部が設けられていたが、絞り部は冷媒分流器の上流側に設けられる膨張弁においても基本的な構成要素となっており、同一構成要素を重複して配置するという無駄があった。一方、従来の膨張弁では、上述のように、膨張弁における不連続な冷媒流動音を低減するために、冷媒流の速度変動及び圧力変動を緩和する手段が設けられていた。しかし、このような手段を膨張弁単独の構成要素として設けることは、膨張弁が大型化しコストの上昇を招くという問題があった。
本発明は、従来技術におけるこのような問題点を解決するものであって、膨張弁における絞りと冷媒分流器における絞りとを共通化して、膨張弁から冷媒分流器に至る冷媒回路を一体化して簡素化するとともに、膨張弁における不連続な冷媒流動音の低減を図ることを目的とする。また、本発明は、絞り部から噴出される冷媒流が直接分流管に吹き付けられないようにして、冷媒分流器における冷媒の分流特性を向上させることを目的とする。また、本発明は、このような冷媒分流器一体化構造の膨張弁を用いた冷凍装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、第1弁体と第1弁孔との間に形成された、絞り作用を行う第1絞り部と、第1絞り部通過後の冷媒を分流管に分流するための冷媒分流室と、冷媒分流室に接続された分流管とを備え、前記分流管は、第1絞り部が形成されている壁体の近くに開口するように形成され、前記第1絞り部の出口側の周囲には、第1絞り部から噴出される冷媒流が直接的に分流管に流れることを防止するための筒状部材が設けられていることを特徴とする。
このように構成された冷媒分流器一体化構造の膨張弁によれば、冷媒分流特性が改善されるとともに、冷媒音の低減を行うことができ、さらに、膨張弁と冷媒分流器とを一体化することにより、膨張弁から冷媒分流器に至る回路部分を簡素化して、その占有スペースを小さくするとともにコストを軽減することができる。
これら改善点についてさらに説明する。まず、冷媒分流特性が改善される点について詳しく述べる。
この冷媒分流器一体化構造の膨張弁においては、第1絞り部通過後の気泡が細分化された噴霧状態の冷媒が、冷媒配管を経ることなく直接冷媒分流室に導かれる。したがって、絞り部通過後に気液二相流がプラグ流やフラグ流に発展することがなくなり、分流特性が向上する。
この冷媒分流器一体化構造の膨張弁においては、第1絞り部通過後の気泡が細分化された噴霧状態の冷媒が、冷媒配管を経ることなく直接冷媒分流室に導かれる。したがって、絞り部通過後に気液二相流がプラグ流やフラグ流に発展することがなくなり、分流特性が向上する。
また、第1絞り部の出口側の周囲に筒状部材が設けられているので、第1絞り部から噴出される冷媒流が直接的に分流管に流れることを防止するとともに、第1絞り部から噴出された冷媒流を第1絞り部に対向する壁体に衝突させて方向転換する迂回回路を形成している。仮に、第1絞り部から噴出された噴流が、直接分流管の入口を成す微小面積部に衝突すると、流出孔に流入できずに周辺面で衝突して跳ね返ってくる成分の影響や、分流管に流入した成分でも流入直後の剥離流れの影響などが入り乱れて大きな不安定現象が生じる。しかしながら、本発明では、前述のように第1絞り部からの噴流を迂回させて分流管の入口に到達するようにしているので、上記のような問題を発生させないで済む。また、第1絞り部から噴出される噴流が有する間欠的な変動の影響も軽減できる。
次に、膨張弁における冷媒流動音の改善について説明する。
第1絞り部から流出する冷媒流の噴出エネルギは、冷媒分流室が拡大空間部として作用することにより拡散されるので、第1絞り部上流側の冷媒流がプラグ流あるいはスラグ流となった場合に、膨張弁における冷媒流の圧力変動を緩和することができる。この結果、膨張弁における不連続な冷媒流動音を軽減することができる。
第1絞り部から流出する冷媒流の噴出エネルギは、冷媒分流室が拡大空間部として作用することにより拡散されるので、第1絞り部上流側の冷媒流がプラグ流あるいはスラグ流となった場合に、膨張弁における冷媒流の圧力変動を緩和することができる。この結果、膨張弁における不連続な冷媒流動音を軽減することができる。
また、冷媒流動音については、この冷媒分流器一体化構造の膨張弁が暖房サイクルに使用される場合にも改善される。本発明に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、ヒートポンプ式の空気調和機等に使用される場合には、暖房運転時には逆方向に冷媒が流通する状態で使用されることになる。この場合、冷媒分流室に流入する高圧液冷媒がプラグ流あるいはスラグ流であった場合には、冷媒流動音が発生しやすいが、冷媒流が分流管から冷媒分流室に合流するときに、各分流管から流入する冷媒が合流により掻き乱されるとともに、筒状部材に衝突して掻き乱される。この結果、冷媒流中の気泡が細分化され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が効果的に低減される。
また、上記のように構成された冷媒分流器一体化構造の膨張弁において、第1絞り部の入口側に第1弁体を収納する弁室が形成され、第1絞り部を形成する壁体を介在させて第1絞り部の出口側に冷媒分流室が形成されているように構成することができる。このように構成すれば、従来の弁室の構成のままで冷媒分流室等を設計することができる。また、冷媒分流室の設計に対する制約も少なくなる。
また、前記冷媒分流室は、第1絞り部を構成する第1弁孔の中心軸に対し直交する方向の寸法が第1弁孔の中心軸の軸方向の寸法より大きくなるように形成され、前記分流管は、このように形成された冷媒分流室における第1絞り部から径方向に離れた位置において冷媒分離室に開口するように形成されているようにすることもできる。このように構成すると、第1絞り部から噴出される冷媒流をより確実に迂回させることができるので、前述の迂回による効果をより一層発揮させることができる。
また、前記冷媒分流室において第1絞り部に対向する壁体には、第1絞り部から衝突するように流出される噴流を、分流管の入口の方に方向転換するようにガイドするガイド部を形成してもよい。このように構成すれば、第1絞り部からの噴流が方向転換する際の乱れを抑制し、噴出エネルギを低減するとともに、冷媒流中の気泡の細分化を行い、冷媒流動音を軽減することができる。
また、前記弁室には、気泡細分化手段を配置してもよい。このように構成すると、第1絞り部上流側の冷媒流がプラグ流あるいはスラグ流となった場合に、気泡細分化手段により第1絞り部の上流側の冷媒流中の気泡が細分化されて、第1絞り部への冷媒の流れが連続化され、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和される。したがって、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。また、第1絞り部下流側の噴霧状態が安定化され、冷媒分流室における冷媒の分流が安定化される。
また、前記冷媒分流室における冷媒通路に多孔質透過材層を配置してもよい。このように構成すれば、第1絞り部通過後の冷媒流は、この多孔質透過材層を通過する際に噴出エネルギが消耗されるので、膨張弁における速度変動及び圧力変動が緩和され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。また、第1絞り部通過の冷媒流は、多孔質透過材層通過時に気泡が細分化されるので、各分流管に対する気液二相流冷媒の流動状態が均一化され、冷媒分流室の分流特性が向上する。
また、第1絞り部の出口側に第1弁体を収納する弁室が形成され、この弁室が冷媒分流室に兼用される弁室兼冷媒分流室として構成することもできる。このように構成すると、膨張弁から冷媒分流器に至る回路部分がより顕著に簡素化される。
また、前記弁室兼冷媒分流室は、第1絞り部を構成する第1弁孔の中心軸に対し直交する方向の寸法が第1弁孔の中心軸の軸方向の寸法より大きくなるように形成され、前記分流管は、このように形成された冷媒分流室における第1絞り部から径方向に離れた位置において冷媒分離室に開口するように形成されているようにすることもできる。このように構成すると、第1絞り部から噴出される冷媒流をより確実に迂回させることができるので、前述の迂回による効果をより一層発揮させることができる。
また、前記弁室兼冷媒分流室において第1絞り部に対向する壁体には、第1絞り部から衝突するように流出される噴流を、分流管の入口の方へ方向転換するようにガイドするガイド部が形成してもよい。このように構成すれば、第1絞り部からの噴流が方向転換する際の乱れを抑制し、噴出エネルギを低減するとともに、冷媒流中の気泡の細分化を行い、冷媒流動音を軽減することができる。
前記弁室兼冷媒分流室の入口側に整流室を形成し、この整流室に気泡細分化手段が配置されているようにしてもよい。このように構成すれば、弁室と冷媒分流室とを兼用した構成において第1絞り部の上流側に気泡細分化手段を設置することができる。また、気泡細分化手段を設置することにより、第1絞り部上流側の冷媒流がプラグ流あるいはスラグ流となった場合に、第1絞り部の上流側において冷媒流中の気泡が細分化される。このため、第1絞り部への冷媒の流れが連続化され、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和される。したがって、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。また、第1絞り部下流側の噴霧状態が安定化され、冷媒分流室における冷媒の分流が安定化される。
また、前記弁室兼冷媒分流室における冷媒通路に多孔質透過材層が配置してもよい。このように構成すれば、第1絞り部通過後の冷媒流は、この多孔質透過材層を通過する際に噴出エネルギが消耗されるので、膨張弁における速度変動及び圧力変動が緩和され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。また、第1絞り部通過の冷媒流は、多孔質透過材層通過時に気泡が細分化されるので、各分流管に対する気液二相流冷媒の流動状態が均一化され、弁室兼冷媒分流室の冷媒分流特性が向上する。
また、前記気泡細分化手段として第2絞り部を形成してもよい。このように構成すれば、膨張弁上流側の冷媒流がプラグ流あるいはスラグ流となった場合に、第2絞り部において気泡が細分化されて、第1絞り部への冷媒の流れが連続化され、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和される。また、第2絞り部と第1絞り部との多段絞りの構成となり、絞り部における噴出エネルギが分散される。この結果、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動がより緩和される。したがって、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。また、第1絞り部下流側の噴霧状態が安定化され、冷媒分流室又は弁室兼冷媒分流室における冷媒の分流が安定化される。
また、前記気泡細分化手段として、第2絞り部と第1絞り部との間に拡大空間部を設けるようにしてもよい。このように構成すると、第2絞り部で気泡が細分化された冷媒は、拡大空間部において噴出エネルギが分散されるとともに、第1絞り部に流入する冷媒中の気泡がさらに細分化される。これにより、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動がより緩和されるので、冷媒流動音がより低減されるとともに、冷媒分流室又は弁室兼冷媒分流室における冷媒の分流がより安定化される。
また、前記気泡細分化手段として多孔質透過材層を設けるようにしてもよい。このように構成すれば、第1絞り部へ流れる冷媒流中の気泡が多孔質透過材層において細分化される。これにより、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動がより緩和されるので、冷媒流動音が低減されるとともに、冷媒分流室における冷媒の分流が安定化される。また、多孔質透過材層を設けることにより、第1絞り部のごみ詰まりを低減することができる。
また、前述の第1絞り部の冷媒分流室に設ける筒状部材を、先端部が交互に凹凸を繰り返す端縁に形成することもできる。このように構成すると、逆方向に冷媒を流して使用される場合において、この部分を通過する冷媒により一層の乱れを生じさせることができるので、気泡細分化効果が向上し、冷媒音を軽減することができる。また、冷房時の正方向に冷媒を流通させる使用においても、第1絞り部からの高速噴流がこの筒状部材の先端部に衝突して剥離流れを生じる際も、安定的な渦の生成を抑制することができるので、速度変動及び圧力変動が緩和され、冷媒流動音がより低減されるとともに、冷媒分流室における冷媒の分流がより安定化される。
また、本発明に係る冷凍装置は、上記冷媒分流器一体化構造の膨張弁を用いたものである。したがって、膨張弁における不連続な冷媒流動音を低減するとともに、分流特性の向上により能力を向上させることができ、さらに、簡素な冷凍装置を構成することができる。
本発明に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁によれば、第1絞り部通過後の噴霧状態の冷媒が冷媒分流室に導かれるので、冷媒の分流を均等に行うことができる。また、第1絞り部から噴出された冷媒流を第1絞り部に対向する壁体に衝突さて方向転換する迂回回路により分流管に流入するようにしているので、膨張弁に流入してくる気液二相流の変動の影響を受けにくくなる。また、第1絞り部から流出する冷媒流の噴出エネルギが冷媒分流室で拡散されるので、第1絞り部上流側の冷媒流がスラグ流あるいはプラグ流となった場合に、冷媒分流室に流入する冷媒の噴出エネルギが低減され、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和される。これにより、膨張弁における不連続な冷媒流動音を低減することができる。また、冷媒が逆方向に流れる暖房運転時においては、冷媒が分流管から冷媒分流室に合流するときに掻き乱され、或いは、分流管から入ってくる冷媒が筒状部材に衝突して、冷媒流中の気泡が細分化される。これにより、気泡が細分化されて冷媒音が軽減される。また、膨張弁と冷媒分流器が一体化されることにより、冷媒回路が簡素化される。
以下、本発明の各実施の形態に係る膨張弁について、図面に基づき説明する。なお、各実施の形態に共通する要素には同一の符号を付し、説明を簡略化する。また、以下の説明において上下左右方向をいうときは、各図における上下左右方向をいうものとする。また、各図における実線矢印は、正方向の冷媒の流れ方向、例えば、従来例に係る図16における冷房運転時の冷媒の流れ方向を示すものとする。ただし、膨張弁としては逆方向で冷媒を流して使用することは可能であるので、以下に説明する冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、例えば空気調和機の冷房運転を正方向流れとした場合の逆方向流れ、すなわち暖房運転などに用いることは可能である。なお、このとき冷媒分流室は冷媒分流器として機能しない。ただし、以下の記載においては、特に断りのない限りは正方向に冷媒を流通させる冷房運転についてのみ説明するものとし、説明を簡略化する。
(実施の形態1)
以下、この発明の実施の形態1に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁について、図1に基づき説明する。図1は実施の形態1に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図であって、弁室の上部の弁駆動装置を省略して示している。実施の形態1に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、通常の冷媒回路において、膨張弁から冷媒分流器に至る回路部分に代わり使用されるものである。
以下、この発明の実施の形態1に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁について、図1に基づき説明する。図1は実施の形態1に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図であって、弁室の上部の弁駆動装置を省略して示している。実施の形態1に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、通常の冷媒回路において、膨張弁から冷媒分流器に至る回路部分に代わり使用されるものである。
この冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、中心軸を上下方向とする略円筒状に形成された弁本体1を有し、その側面には入口ポート2が形成されている。この入口ポート2には液管3が接続されている。また、弁本体1は、内部が第1仕切壁4により上下に仕切られ、上部(上流側)に弁室5が形成され、下部(下流側)に冷媒分流室6が形成されている。前述の入口ポート2は弁室5の側面に形成されている。
第1仕切壁4は、弁座を成し、その中心部には、弁室5と冷媒分流室6との間に絞り部を形成する第1弁孔7が形成されている。弁室5内には弁棒8が収納されている。弁棒8は、上方の弁駆動装置(図示省略)から下方に延びるものであって、弁本体1及び弁室5と同心に配置されている。また、弁棒8の先端には、第1弁体(この場合ニードル弁)9が形成されている。そして、第1弁体9は、不図示の弁駆動装置の駆動により弁棒8を介して第1弁孔7に対し進退自在に移動するように構成されている。このようにして、第1弁体9と第1弁孔7とにより、冷凍負荷に対応して開度可変、かつ全閉可能とした第1絞り部10が形成されている。
冷媒分流室6は、所定の容積に形成され、外周壁の上方部に、すなわち、第1絞り部10が形成されている第1仕切壁4の近くに、均等ピッチで、かつ、蒸発器のパス数に見合う複数個の分流管取付孔11が形成されている。そして、この分流管取付孔11には冷媒分流室6と蒸発器の各パスの入口とを接続する分流管12が接続されている。
また、第1絞り部10の出口側の周囲、すなわち、冷媒分流室6側の周囲には第1絞り部10から噴出される冷媒流が直接的に分流管12の入口に流れることを防止するための筒状部材13が設けられている。この筒状部材13は、断面形状は図1に示されるように肉厚が先端に行くに従い薄くなっている円筒状の部材であって、その軸方向の長さは、第1絞り部10から噴出される冷媒流が直接的に分流管12の入口に流れることを防止する長さとされている。したがって、分流管12の入口と対向する状態に筒状部材13が配置されている。
実施の形態1の冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、上記のように構成されたものであって、次のように作用する。
この冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、通常の冷媒回路において正方向(図示矢印の方向)に冷媒を流すように使用される場合、凝縮器で凝縮した液冷媒が入口ポート2から流入する。入口ポート2から入ってきた冷媒は、第1絞り部10で減圧されて噴霧される。そして、噴霧状態のままで冷媒分流室6に流入する。この噴流は、筒状部材13にガイドされて冷媒分流室6の底壁、すなわち、第1絞り部10に対向する壁体(冷媒分流室6の底壁)に衝突し、方向を上方に転換して分流管12の入口に向かうように迂回して流れる。このため、噴流が直接分流管12の入口に流れることがないので、第1絞り部10からの噴流における圧力変動、速度変動が直接分流管12内の冷媒流通に影響しないように構成されている。また、噴霧状態の冷媒が分流管12に流れるようになっているので、冷媒分流室6においては重力の影響を受けることなく、各分流管12に均等に分流される。
この冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、通常の冷媒回路において正方向(図示矢印の方向)に冷媒を流すように使用される場合、凝縮器で凝縮した液冷媒が入口ポート2から流入する。入口ポート2から入ってきた冷媒は、第1絞り部10で減圧されて噴霧される。そして、噴霧状態のままで冷媒分流室6に流入する。この噴流は、筒状部材13にガイドされて冷媒分流室6の底壁、すなわち、第1絞り部10に対向する壁体(冷媒分流室6の底壁)に衝突し、方向を上方に転換して分流管12の入口に向かうように迂回して流れる。このため、噴流が直接分流管12の入口に流れることがないので、第1絞り部10からの噴流における圧力変動、速度変動が直接分流管12内の冷媒流通に影響しないように構成されている。また、噴霧状態の冷媒が分流管12に流れるようになっているので、冷媒分流室6においては重力の影響を受けることなく、各分流管12に均等に分流される。
また、入口ポート2から大きな気泡が存在するスラグ流あるいはプラグ流となって気液二相流冷媒が入ってきた場合、第1絞り部10に対する冷媒流は、液冷媒とガス冷媒(気泡)とが交互に流れる不連続状態となる。このため、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動が生じやすくなっている。また、このような冷媒流の速度変動及び圧力変動により膨張弁における不連続な冷媒流動音が発生しやすくなっている。しかし、本実施の形態によれば、第1絞り部10の下流側に冷媒流路を拡大する冷媒分流室6が形成されているため、冷媒分流室6内において噴出エネルギが拡散される。この結果、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。
また、このような冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、可逆に冷媒を流通させるヒートポンプ式冷媒回路において、冷媒を逆方向に流して使用される。この場合、最近のヒートポンプ式空気調和機の冷媒回路では、この冷房用に使用されていた室内側の膨張弁は、暖房運転時においては、室内側熱交換器出口における冷媒の過冷却度を調整する絞りとして使用される例が多い。この場合、この冷媒分流器一体化構造の膨張弁は室内側熱交換器のすぐ近くに接続されている。そして、室内側熱交換器からの液冷媒が複数の分流管12を介して冷媒分流室6に流入し、混合される。冷媒分流室6に入ってきた冷媒は、第1絞り部10で絞られて、弁室5を介し液管3から流出する。この場合において、運転停止中は室内側熱交換器には冷媒が気液二相状態で貯留されており、運転開始の過渡期においては室内側熱交換器の出口での完全液化が困難であるため、この膨張弁に気液二相流が流れ込むことになる。このため、暖房運転開始時に、冷媒分流室6に流入する高圧液冷媒がプラグ流あるいはスラグ流となることがあり、先ほどの冷房運転時の場合と同様に冷媒流動音が発生しやすい状況になっている。しかしながら、本実施の形態の場合は、冷媒が分流管12から冷媒分流室6に合流するときに掻き乱されるとともに、分流管12から冷媒分流室6に流れ込む冷媒が筒状部材13に衝突して掻き乱される。これにより、気液二相流冷媒中の気泡が細分化されるので、本実施の形態に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、逆方向に冷媒が流通するように使用される場合においても、膨張弁における不連続な冷媒流動音を効果的に低減することができる。
また、本実施の形態に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、冷媒を逆方向に流して通常の膨張弁として使用される場合においても、同様にして冷媒流動音が低減される。すなわち、分流管12からフラグ流或いはスラグ流が流入してくる場合には、分流管12からの冷媒の合流作用及び筒状部材13への冷媒の衝突作用により気泡が細分化され、冷媒流動音が低減される。
本実施の形態に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、以上のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
(1)膨張弁と冷媒分流器とが一体化されているので、膨張弁から冷媒分流器に至る回路部分が簡素化され、占有スペースが省スペース化される。
(1)膨張弁と冷媒分流器とが一体化されているので、膨張弁から冷媒分流器に至る回路部分が簡素化され、占有スペースが省スペース化される。
(2)冷媒分流室6には噴霧状態の冷媒が流れ込むので、重力の影響を受けることなく、各分流管12に均等に分流される。
(3)第1絞り部10からの高速の噴霧流が分流管12の入口に直接吹き込まれることがないので、第1絞り部10からの噴流の影響を受けて発生する不安定現象(噴流の分流管12の入口への衝突、跳ね返り、剥離流れなどの複合現象)を回避することができる。
(3)第1絞り部10からの高速の噴霧流が分流管12の入口に直接吹き込まれることがないので、第1絞り部10からの噴流の影響を受けて発生する不安定現象(噴流の分流管12の入口への衝突、跳ね返り、剥離流れなどの複合現象)を回避することができる。
(4)第1絞り部10の下流側に冷媒流路を拡大する冷媒分流室6が形成されているため、噴出エネルギが拡散される。これにより、冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。
(5)逆方向に冷媒が流通するように使用される場合において、分流管12から冷媒分流室6に流入する冷媒は、各分流管12からの冷媒が合流することにより掻き乱されるとともに、筒状部材13に衝突することにより掻き乱される。これにより、気液二相流冷媒中の気泡が細分化される。このように、本発明に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、逆方向に冷媒が流通するように使用される場合においても、膨張弁における不連続な冷媒流動音が効果的に低減される。
(6)冷媒分流室6の上流側に設置される第1絞り部10は、冷凍負荷に対応して開度可変に絞られるので、従来の冷媒分流器に取り付けられているような開度一定の絞り部と異なり、流量及び乾き度などの運転状況に応じて適切な絞り度に変化し、これにより冷媒分流特性をより一層向上させることができる。
(7)第1絞り部10の上流側に弁室5が形成され、下流側に冷媒分流室6が形成されている。したがって、従来の弁室の構成のままで冷媒分流室6等を設計することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について図2に基づき説明する。図2は、実施の形態2に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態1における冷媒分流室6の形状及び分流管取付孔11の取付位置を変更したものである。すなわち、この実施の形態においては、冷媒分流室6は、第1絞り部10の軸心を中心として半径方向(図面における横方向)の寸法が第1絞り部10の軸心方向(図面における縦方向)の寸法より大きくなる形状に形成され、つまり、図面で見るように膨張弁の中心軸に対し薄く横に広がった形状に形成されている。また、分流管取付孔11が、第1絞り部10の周辺に拡がる壁体、すなわち、第1仕切壁4と同じ高さ位置に形成されている冷媒分流室6の上部壁における周辺部、すなわち、第1絞り部10から離れた位置に形成されており、この分流管取付孔11を介して分流管12が冷媒分流室6に開口している。
次に、実施の形態2について図2に基づき説明する。図2は、実施の形態2に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態1における冷媒分流室6の形状及び分流管取付孔11の取付位置を変更したものである。すなわち、この実施の形態においては、冷媒分流室6は、第1絞り部10の軸心を中心として半径方向(図面における横方向)の寸法が第1絞り部10の軸心方向(図面における縦方向)の寸法より大きくなる形状に形成され、つまり、図面で見るように膨張弁の中心軸に対し薄く横に広がった形状に形成されている。また、分流管取付孔11が、第1絞り部10の周辺に拡がる壁体、すなわち、第1仕切壁4と同じ高さ位置に形成されている冷媒分流室6の上部壁における周辺部、すなわち、第1絞り部10から離れた位置に形成されており、この分流管取付孔11を介して分流管12が冷媒分流室6に開口している。
実施の形態2は、以上のように構成されているので、第1絞り部10から噴出される冷媒流が直接的に分流管12に流入することはなく、実施の形態1の場合より大きく迂回する。この結果、実施の形態1の場合と同様若しくはそれ以上の迂回効果を奏することができ、冷媒分流室6における分流特性が良好となる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について図3に基づき説明する。図3は、実施の形態3に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態2における分流管取付孔11及び分流管12の取付を変更したものである。すなわち、この実施の形態においては、分流管取付孔11は、第1絞り部10に対向する壁体(冷媒分流室6の底壁)に設けられている。また、この分流管取付孔11に取り付けられる分流管12は、この分流管取付孔11を貫通して固定されるとともに、冷媒分流室6内における第1絞り部10の周辺に広がる壁体、すなわち、第1仕切壁4と同じ高さ位置に形成されている冷媒分流室6の上部壁に近い位置において開放するように構成されている。
次に、実施の形態3について図3に基づき説明する。図3は、実施の形態3に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態2における分流管取付孔11及び分流管12の取付を変更したものである。すなわち、この実施の形態においては、分流管取付孔11は、第1絞り部10に対向する壁体(冷媒分流室6の底壁)に設けられている。また、この分流管取付孔11に取り付けられる分流管12は、この分流管取付孔11を貫通して固定されるとともに、冷媒分流室6内における第1絞り部10の周辺に広がる壁体、すなわち、第1仕切壁4と同じ高さ位置に形成されている冷媒分流室6の上部壁に近い位置において開放するように構成されている。
実施の形態3は、以上のように構成されているので、第1絞り部10から噴出された冷媒流は、図示破線のように、反転迂回して、上方の分流管12の入口に流入する。したがって、実施の形態2の場合と同様の迂回効果を発揮することができるとともに、分流管12を膨張弁の軸心方向に揃えて配置することができる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について図4に基づき説明する。図4は、実施の形態4に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態1の冷媒分流室6における第1絞り部10に対向する壁体を変更したものである。この実施の形態における第1絞り部10に対向する壁体(冷媒分流室6の底壁)は、内壁面が第1絞り部10から噴出された衝突流を円滑に周辺に広げて反転させるように作用するガイド部に構成されている。具体的には、ガイド部として、第1絞り部10に対向する部分に円錐状の突出部15を形成するとともに、底壁面と側壁とのコーナ部を円弧面16に形成している。
次に、実施の形態4について図4に基づき説明する。図4は、実施の形態4に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態1の冷媒分流室6における第1絞り部10に対向する壁体を変更したものである。この実施の形態における第1絞り部10に対向する壁体(冷媒分流室6の底壁)は、内壁面が第1絞り部10から噴出された衝突流を円滑に周辺に広げて反転させるように作用するガイド部に構成されている。具体的には、ガイド部として、第1絞り部10に対向する部分に円錐状の突出部15を形成するとともに、底壁面と側壁とのコーナ部を円弧面16に形成している。
実施の形態4は、このように構成されているので、第1絞り部10からの噴流が方向転換する際の乱れを抑制することができる。したがって、液管3から気液二相流が入ってきた場合において、このガイド部が冷媒流の流れ方向変更作用を助長して冷媒流の噴出エネルギを低減するとともに、冷媒流中の気泡の細分化を行い、冷媒流動音を低減することができる。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について図5に基づき説明する。図5は、実施の形態5に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態2の冷媒分流室6における第1絞り部10に対向する壁体(冷媒分流室6の底壁)を変更したものである。この実施の形態における第1絞り部10に対向する壁体は、内壁面が第1絞り部10からの噴出された衝突流を円滑に周辺に広げて反転させるように作用するガイド部に構成されている。具体的には、ガイド部として、第1絞り部10に対向する部分に円錐状の突出部17を形成するとともに、この壁面と側壁とのコーナ部を曲面18で滑らかに接続している。
次に、実施の形態5について図5に基づき説明する。図5は、実施の形態5に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態2の冷媒分流室6における第1絞り部10に対向する壁体(冷媒分流室6の底壁)を変更したものである。この実施の形態における第1絞り部10に対向する壁体は、内壁面が第1絞り部10からの噴出された衝突流を円滑に周辺に広げて反転させるように作用するガイド部に構成されている。具体的には、ガイド部として、第1絞り部10に対向する部分に円錐状の突出部17を形成するとともに、この壁面と側壁とのコーナ部を曲面18で滑らかに接続している。
実施の形態5は、このように構成されているので、第1絞り部10からの噴流が方向転換する際の乱れを抑制することができる。したがって、液管3から気液二相流が入ってきた場合において、このガイド部が冷媒流の流れ方向変更作用を助長して冷媒流の噴出エネルギを低減するとともに、冷媒流中の気泡の細分化を行い、冷媒流動音を低減することができる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6について図6に基づき説明する。図6は、実施の形態6に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図であって、弁室上方の駆動装置を省略して示している。実施の形態6に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁も、実施の形態1のものと同様に、通常の冷媒回路において、膨張弁から冷媒分流器に至る回路部分に代わり使用されるものである。
次に、実施の形態6について図6に基づき説明する。図6は、実施の形態6に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図であって、弁室上方の駆動装置を省略して示している。実施の形態6に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁も、実施の形態1のものと同様に、通常の冷媒回路において、膨張弁から冷媒分流器に至る回路部分に代わり使用されるものである。
この冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、中心軸を上下方向とする略円筒状に形成された弁本体21を有し、その下壁22には入口ポート23が形成されている。この入口ポート23には液管24が接続されている。また、弁本体21の内部には、弁室兼冷媒分流室25が形成されている。なお、弁室兼冷媒分流室25の上方は、弁駆動装置(図示せず)を収納する駆動部26であり、駆動部26と弁室兼冷媒分流室25との間に隔壁27が形成されている。
下壁22は、弁座を成し、その中心部には、前述のように入口ポート23が形成されるとともに、弁室兼冷媒分流室25との間に絞り部を形成する第1弁孔28が形成されている。弁室兼冷媒分流室25内には、弁棒29が収納されている。弁棒29は、上方の弁駆動装置(不図示)から下方に延びるものであって、弁本体21及び弁室兼冷媒分流室25と同心に配置されている。また、弁棒29の先端には、第1弁体(この場合ニードル弁)30が形成されている。そして、第1弁体30は、弁駆動装置の駆動により弁棒29を介して第1弁孔28に対し進退自在に移動するように構成されている。このようにして、第1弁体30と第1弁孔28とにより冷凍負荷に対応して開度可変、かつ全閉可能とした第1絞り部31が形成されている。
弁室兼冷媒分流室25は、所定の容積に形成されている。そして、弁室兼冷媒分流室25の側壁における第1絞り部31に近い側に(図面における弁室兼冷媒分流室25の下方に)、均等ピッチで、かつ、蒸発器のパス数に見合う複数個の分流管取付孔32が形成されている。そして、この分流管取付孔32には、弁室兼冷媒分流室25と蒸発器の各パスの入口とを接続する分流管33が接続されている。また、第1弁孔28の弁室兼冷媒分流室25側に、第1絞り部31から噴出される冷媒流が直接分流管33の入口に流れることを防止する筒状部材34が形成されている。この筒状部材34は、実施の形態1における筒状部材を上下反転させた形態に形成されている。
実施の形態6の冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、上記のように構成されたものであって、次のように作用する。
この冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、通常の冷媒回路において正方向(図示矢印の方向)に冷媒を流すように使用される場合、凝縮器で凝縮した液冷媒が入口ポート23から流入する。入口ポート23から入ってきた冷媒は、第1絞り部31で減圧されて噴霧される。そして、噴霧状態のままで弁室兼冷媒分流室25に流入する。第1絞り部31から噴出された冷媒流は、破線で示すように、筒状部材34にガイドされて弁棒29と弁室兼冷媒分流室25の外周壁との間に噴出され、駆動部26との隔壁27などの適宜の壁体に衝突し、反転して分流管取付孔32から分流管33に流入するように構成されている。このため、噴流が直接分流管33の入口に流れることがないので、第1絞り部31からの噴流における圧力変動、速度変動が直接分流管33内の冷媒流通に影響しないように構成されている。また、噴霧状態の冷媒が分流管33に流れるようになっているので、弁室兼冷媒分流室25においては重力の影響を受けることなく、各分流管33に均等に分流される。
この冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、通常の冷媒回路において正方向(図示矢印の方向)に冷媒を流すように使用される場合、凝縮器で凝縮した液冷媒が入口ポート23から流入する。入口ポート23から入ってきた冷媒は、第1絞り部31で減圧されて噴霧される。そして、噴霧状態のままで弁室兼冷媒分流室25に流入する。第1絞り部31から噴出された冷媒流は、破線で示すように、筒状部材34にガイドされて弁棒29と弁室兼冷媒分流室25の外周壁との間に噴出され、駆動部26との隔壁27などの適宜の壁体に衝突し、反転して分流管取付孔32から分流管33に流入するように構成されている。このため、噴流が直接分流管33の入口に流れることがないので、第1絞り部31からの噴流における圧力変動、速度変動が直接分流管33内の冷媒流通に影響しないように構成されている。また、噴霧状態の冷媒が分流管33に流れるようになっているので、弁室兼冷媒分流室25においては重力の影響を受けることなく、各分流管33に均等に分流される。
また、入口ポート23から大きな気泡が存在するスラグ流あるいはプラグ流となって気液二相流冷媒が入ってきた場合、第1絞り部31に対する冷媒流は、液冷媒とガス冷媒(気泡)とが交互に流れる不連続状態となる。このため、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動が生じやすくなっている。また、このような冷媒流の速度変動及び圧力変動により膨張弁における不連続な冷媒流動音が発生しやすくなっている。しかし、本実施の形態によれば、第1絞り部31の下流側に冷媒流路を拡大する弁室兼冷媒分流室25が形成されているため、弁室兼冷媒分流室25内において噴出エネルギが拡散される。この結果、膨張弁における冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。
また、このような冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、可逆に冷媒を流通させるヒートポンプ式冷媒回路において、冷媒を逆方向に流して使用される。この場合、実施の形態1において述べたように、最近のヒートポンプ式空気調和機の冷媒回路では、暖房運転時においては、室内側熱交換器出口における冷媒の過冷却度を調整する絞りとして使用される例が多い。そして、室内側熱交換器からの液冷媒が複数の分流管33を介して弁室兼冷媒分流室25に流入し、混合される。弁室兼冷媒分流室25に入ってきた冷媒は、第1絞り部31で絞られて、弁室兼冷媒分流室25を介し液管24から流出する。この場合において、運転停止中は室内側熱交換器には冷媒が気液二相状態で貯留されており、運転開始の過渡期においては室内側熱交換器の出口での完全液化が困難である。このため、暖房運転開始時に、弁室兼冷媒分流室25に流入する高圧液冷媒がプラグ流あるいはスラグ流となることがあり、先ほどの冷房運転時の場合と同様に冷媒流動音が発生しやすい状況になっている。しかしながら、本実施の形態の場合は、冷媒が分流管33から弁室兼冷媒分流室25に合流するときに掻き乱されるとともに、分流管33から弁室兼冷媒分流室25に流れ込む冷媒が筒状部材34に衝突して掻き乱される。これにより、気液二相流冷媒中の気泡が細分化されるので、本実施の形態に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、このように逆方向に冷媒が流通するように使用される場合においても、膨張弁における不連続な冷媒流動音を効果的に低減することができる。
また、本実施の形態に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、冷媒を逆方向に流して通常の膨張弁として使用される場合においても、同様にして冷媒流動音が低減される。すなわち、分流管33からフラグ流或いはスラグ流が流入してくる場合には、分流管33からの冷媒の合流作用及び筒状部材34への冷媒の衝突作用により気泡が細分化され、冷媒流動音が低減される。
本実施の形態に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、以上のように構成されているので、前述の実施の形態1における(1)〜(6)と同様の作用効果を奏することができる。また、本実施の形態によれば、弁室と冷媒分流室とが兼用となっているので、実施の形態1の場合に比しよりコンパクトに構成することができる。
(実施の形態7)
次に、実施の形態7について図7に基づき説明する。図7は、実施の形態7に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態6における弁室兼冷媒分流室25の形状及び分流管取付孔32の取付位置を変更したものである。すなわち、この実施の形態においては、弁室兼冷媒分流室25は、第1絞り部31の軸心を中心として半径方向(図面における横方向)の寸法が第1絞り部31の軸心方向(図面における縦方向)の寸法より大きくなる形状に形成され、つまり、図面で見るように膨張弁の中心軸に対し横に広がった形状に形成されている。また、分流管取付孔32が、側壁における下壁22に近い位置、すなわち、第1絞り部31の周辺に拡がる壁体に近い位置であって、第1絞り部31から離れた位置に形成されており、この分流管取付孔32を介して分流管33が弁室兼冷媒分流室25に開口している。
次に、実施の形態7について図7に基づき説明する。図7は、実施の形態7に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態6における弁室兼冷媒分流室25の形状及び分流管取付孔32の取付位置を変更したものである。すなわち、この実施の形態においては、弁室兼冷媒分流室25は、第1絞り部31の軸心を中心として半径方向(図面における横方向)の寸法が第1絞り部31の軸心方向(図面における縦方向)の寸法より大きくなる形状に形成され、つまり、図面で見るように膨張弁の中心軸に対し横に広がった形状に形成されている。また、分流管取付孔32が、側壁における下壁22に近い位置、すなわち、第1絞り部31の周辺に拡がる壁体に近い位置であって、第1絞り部31から離れた位置に形成されており、この分流管取付孔32を介して分流管33が弁室兼冷媒分流室25に開口している。
実施の形態7は、以上のように構成されているので、第1絞り部31から噴出される冷媒流が直接的に分流管33に流入することはなく、実施の形態6の場合より大きく迂回する。この結果、実施の形態6の場合と同様若しくはそれ以上の迂回効果を奏することができ、弁室兼冷媒分流室25における分流特性が良好となる。
(実施の形態8)
次に、実施の形態8について図8に基づき説明する。図8は、実施の形態8に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態7における第1絞り部31に対向する壁体を変更したものである。この実施の形態における第1絞り部31に対向する壁体は、内壁面が第1絞り部31から噴出された衝突流を円滑に周辺に広げて反転させるように作用するガイド部に構成されている。具体的には、ガイド部として、駆動部との隔壁27の中心部(弁棒周り)を円錐状に下方に突出させた突出部25aとするとともに、この突出部25aの周囲から弁室兼冷媒分流室25の上壁を経て弁室兼冷媒分流室25にかけての形状を冷媒の流線に沿う曲面形状とした曲面壁25bとしている。
次に、実施の形態8について図8に基づき説明する。図8は、実施の形態8に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態7における第1絞り部31に対向する壁体を変更したものである。この実施の形態における第1絞り部31に対向する壁体は、内壁面が第1絞り部31から噴出された衝突流を円滑に周辺に広げて反転させるように作用するガイド部に構成されている。具体的には、ガイド部として、駆動部との隔壁27の中心部(弁棒周り)を円錐状に下方に突出させた突出部25aとするとともに、この突出部25aの周囲から弁室兼冷媒分流室25の上壁を経て弁室兼冷媒分流室25にかけての形状を冷媒の流線に沿う曲面形状とした曲面壁25bとしている。
実施の形態8は、このように構成されているので、第1絞り部31からの噴流が方向転換する際の乱れを抑制することができる。したがって、液管3から気液二相流が入ってきた場合において、このガイド部が冷媒流の流れ方向変更作用を助長して冷媒流の噴出エネルギを低減するとともに、冷媒流中の気泡の細分化を行い、冷媒流動音を低減することができる。
(実施の形態9)
次に、実施の形態9について図9に基づき説明する。図9は、実施の形態9に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、膨張弁に流入する冷媒がプラグ流又はスラグ流の場合に気泡を細分化できるように、実施の形態1における弁室5内に気泡細分化手段として、第2絞り部35を設けるとともに、この第2絞り部35と第1絞り部31との間に拡大空間部36を設けたものである。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
次に、実施の形態9について図9に基づき説明する。図9は、実施の形態9に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、膨張弁に流入する冷媒がプラグ流又はスラグ流の場合に気泡を細分化できるように、実施の形態1における弁室5内に気泡細分化手段として、第2絞り部35を設けるとともに、この第2絞り部35と第1絞り部31との間に拡大空間部36を設けたものである。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
実施の形態9に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、図9に示すように、弁室5の中央部に高さ寸法の大きい第2仕切壁37を設け、第2仕切壁37の下方、すなわち、第2仕切壁37と第1絞り部31との間に拡大空間部36が形成されている。そして、この第2仕切壁37の中央部に下方に向かって孔径が小さくなるテーパ孔が形成されている。このテーパ孔が第2弁孔38を成す。また、弁棒8は、実施の形態1の場合と同様に弁本体1と同心に配置されており、第1弁体9の上方に、つまり弁棒8の中間部に拡径部を形成し、これを第2弁体39としている。第2弁体39は、外周面を下方に向かって外径が小さくなるテーパ面として形成されるとともに、このテーパ面に螺旋溝が形成されている。これにより、第2弁孔38と第2弁体39との間に略螺旋状の螺旋状通路が形成される。この螺旋状通路が第2絞り部35を形成する。第2絞り部35は、弁棒8が上下方向に駆動されることにより螺旋状通路の断面積および長さが変化する。例えば、冷凍負荷の小さいときは弁棒8が下方に移動して、螺旋状通路の断面積を小さくするとともに、螺旋状通路の長さを長くして冷媒流通抵抗が大きくなるように(開度が小さくなるように)している。第2絞り部35は、このように開度可変に形成されている。なお、第1絞り部31は、前述のように第1弁孔7と第1弁体9との間に形成されるものであって、弁棒8の上下方向の駆動により、開度可変、かつ全閉可能に形成されている。
実施の形態9に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、以上のように実施の形態1の場合と同様に第1仕切壁4の下部(下流側)に冷媒分流室6が形成されているので、実施の形態1のものと同様の作用効果を奏することができる。また、これに加え、上述のように第1仕切壁4の上部(上流側)の弁室5内に、第2絞り部35及び拡大空間部36が形成されているので、次のような作用効果を奏することができる。
前述の実施の形態1の場合には、入口ポート2からスラグ流あるいはプラグ流となって気液二相流冷媒が入ってきた場合、このスラグ流あるいはプラグ流が第1絞り部10を通過する前に冷媒流中の気泡が細分化されていなかった。しかし、この実施の形態においては、入口ポート2から入ってくるスラグ流あるいはプラグ流などの気液二相流冷媒は、第2絞り部35を通過することにより気泡が細分化される。これにより、第1絞り部10への冷媒流れが連続化され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が効果的に低減される。特に、第2絞り部35は、螺旋状通路により構成されているので、絞り通路を長くすることができ、気泡細分化効果を向上させることができる。
また、この実施の形態の場合は、第2絞り部35と第1絞り部10とにより2段絞り部が形成されるので、それぞれの絞り部における噴出エネルギ自体が小さくなる。したがって、この観点からも膨張弁を通過する冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和される。さらに、この実施の形態においては、第2絞り部35以外に拡大空間部36が設けられており、第2絞り部35通過後の冷媒流が、拡大空間部36において流路拡大により噴出エネルギが拡散され、冷媒中の気泡がこの拡大空間部36においてさらに細分化される。したがって、第2絞り部35のみの場合に比し、気泡細分化効果がさらに向上し、膨張弁を流通する冷媒流の速度変動及び圧力変動をさらに緩和することができる。この結果、前記実施の形態1の場合に比し、膨張弁における不連続な冷媒流動音をさらに低減することができる。
(実施の形態10)
次に、実施の形態10について図10に基づき説明する。図10は、実施の形態10に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態1における弁室5内に、冷媒流内の気泡を細分化する気泡細分化手段として多孔質透過材層43を備えたものである。このように実施の形態10は、実施の形態9と比較して気泡細分化手段を多孔質透過材層43とした点において相違する。
次に、実施の形態10について図10に基づき説明する。図10は、実施の形態10に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態1における弁室5内に、冷媒流内の気泡を細分化する気泡細分化手段として多孔質透過材層43を備えたものである。このように実施の形態10は、実施の形態9と比較して気泡細分化手段を多孔質透過材層43とした点において相違する。
実施の形態10に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、図10に示すように、弁室5内に多孔質透過材層43が設けられている。多孔質透過材層43は、第1仕切壁4の上面から入口ポート2の上部にかけて、弁棒8を取り囲む円筒状に形成されたものであって、上下部には弁室5の内面に支持される支持板43a,43bが形成されている。多孔質透過材層43の素材としては、発泡金属、セラミック、発泡性樹脂、メッシュ状のもの、多孔板などを用いることができる。
実施の形態10に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁は、以上のように構成されているので、入口ポート2から冷媒流がスラグ流あるいはプラグ流となって入ってきた場合、この冷媒流が多孔質透過材層43を通過することにより、第1絞り部10へ流れる冷媒流中の気泡が多孔質透過材層43において細分化される。したがって、実施の形態9の場合と同様に、膨張弁における不連続な冷媒流動音を低減することができる。また、多孔質透過材層43は、通過する冷媒中のごみを除去することができるので、フィルターを兼用することができる。
(実施の形態11)
次に、実施の形態11について図11に基づき説明する。図11は、実施の形態11に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態1における形状を変更するとともに、冷媒分流室内における冷媒流路に多孔質透過材層45を設置したものである。すなわち、この実施の形態においては、冷媒分流室6は、第1絞り部10の軸心を中心として半径方向(図面における横方向)の寸法が第1絞り部10の軸心方向(図面における縦方向)の寸法より大きくなる形状に形成され、つまり、図面で見るように膨張弁の中心軸に対し横に広がった形状に形成されている。また、冷媒分流室6内には円筒状の多孔質透過材層45が冷媒分流室6と同心に配置されている。この多孔質透過材層45の素材としては、実施の形態10におけるものと同様のものでよく、発泡金属、セラミック、発泡性樹脂、メッシュ状のもの、多孔板などでよい。
次に、実施の形態11について図11に基づき説明する。図11は、実施の形態11に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態1における形状を変更するとともに、冷媒分流室内における冷媒流路に多孔質透過材層45を設置したものである。すなわち、この実施の形態においては、冷媒分流室6は、第1絞り部10の軸心を中心として半径方向(図面における横方向)の寸法が第1絞り部10の軸心方向(図面における縦方向)の寸法より大きくなる形状に形成され、つまり、図面で見るように膨張弁の中心軸に対し横に広がった形状に形成されている。また、冷媒分流室6内には円筒状の多孔質透過材層45が冷媒分流室6と同心に配置されている。この多孔質透過材層45の素材としては、実施の形態10におけるものと同様のものでよく、発泡金属、セラミック、発泡性樹脂、メッシュ状のもの、多孔板などでよい。
実施の形態11は、以上のように構成されているので、第1絞り部10から噴出される冷媒流が直接的に分流管12に流入することはなく、実施の形態1の場合より大きく迂回する。この結果、実施の形態1の場合と同様若しくはそれ以上の迂回効果を奏することができ、冷媒分流室6における分流特性が良好となる。
また、冷媒分流室における冷媒通路に多孔質透過材層45を配置しているので、第1絞り部10通過後の冷媒流は、この多孔質透過材層45を通過する際に噴出エネルギが消耗される。これにより、膨張弁における第1絞り部10通過後の冷媒流の速度変動及び圧力変動が緩和され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。また、第1絞り部10通過の冷媒流は、多孔質透過材層45通過時に気泡が細分化されるので、各分流管12に対する気液二相流冷媒の流動状態が均一化され、冷媒分流室6の分流特性が向上する。また、多孔質透過材層45は、通過する冷媒中のごみを除去することができるので、逆方向流れの場合はフィルターを兼用することができる。
(実施の形態12)
次に、実施の形態12について図12に基づき説明する。図12は、実施の形態12に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態11における多孔質透過材層45をメッシュ46に変更したものである。この場合も実施の形態10と同様の作用効果を奏することができる。また、メッシュ46は、通過する冷媒中のごみを除去することができるので、逆方向流れの場合はフィルターを兼用することができる。
次に、実施の形態12について図12に基づき説明する。図12は、実施の形態12に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態11における多孔質透過材層45をメッシュ46に変更したものである。この場合も実施の形態10と同様の作用効果を奏することができる。また、メッシュ46は、通過する冷媒中のごみを除去することができるので、逆方向流れの場合はフィルターを兼用することができる。
(実施の形態13)
次に、実施の形態13について図13に基づき説明する。図13は、実施の形態13に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態7における弁室兼冷媒分流室25の冷媒通路に、円筒状の多孔質透過材層47を弁室兼冷媒分流室25と同心に設置したものである。多孔質透過材層47の素材としては、実施の形態10におけるものと同様のものでよく、発泡金属、セラミック、発泡性樹脂、メッシュ状のもの、多孔板などでよい。なお、上記以外は実施の形態7と同一である。
次に、実施の形態13について図13に基づき説明する。図13は、実施の形態13に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁は、実施の形態7における弁室兼冷媒分流室25の冷媒通路に、円筒状の多孔質透過材層47を弁室兼冷媒分流室25と同心に設置したものである。多孔質透過材層47の素材としては、実施の形態10におけるものと同様のものでよく、発泡金属、セラミック、発泡性樹脂、メッシュ状のもの、多孔板などでよい。なお、上記以外は実施の形態7と同一である。
実施の形態13は、以上のように構成されているので、第1絞り部31通過後の冷媒流は、この多孔質透過材層47を通過する際に噴出エネルギが消耗されるので、膨張弁における速度変動及び圧力変動が緩和され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。また、第1絞り部31通過の冷媒流は、多孔質透過材層47通過時に気泡が細分化されるので、各分流管33に対する気液二相流冷媒の流動状態が均一化され、弁室兼冷媒分流室25の冷媒分流特性が向上する。また、多孔質透過材層47は、通過する冷媒中のごみを除去することができるので、逆方向流れの場合はフィルターを兼用することができる。
(実施の形態14)
次に、実施の形態14について図14に基づき説明する。図14は、実施の形態14に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁の基本的構造は、実施の形態7のように弁室兼冷媒分流室25が軸方向の寸法よりも径方向寸法の方が大きくなったものにおいて、第1絞り部31の入口側に整流室51を形成するとともに、その内部の冷媒通路中に気泡細分化手段を配置したものである。
次に、実施の形態14について図14に基づき説明する。図14は、実施の形態14に係る冷媒分流器一体化構造の膨張弁の要部縦断面図である。この図に示すように、同膨張弁の基本的構造は、実施の形態7のように弁室兼冷媒分流室25が軸方向の寸法よりも径方向寸法の方が大きくなったものにおいて、第1絞り部31の入口側に整流室51を形成するとともに、その内部の冷媒通路中に気泡細分化手段を配置したものである。
整流室51を形成するために、弁室兼冷媒分流室の下壁22の下方に、新しく容器が延設され、その内部が整流室51として形成されている。また、この整流室51の底壁52に入口ポート23を形成し、この入口ポート23に液管24を接続している。したがって、弁室兼冷媒分流室25の下壁22には、入口ポート23が形成されていないし、液管24も接続されていない。そして、整流室51の中間高さ位置には、気泡細分化手段として、円盤状の多孔質透過材層53が水平に配置されている。多孔質透過材層53の素材としては、実施の形態10におけるものと同様のものでよく、発泡金属、セラミック、発泡性樹脂、メッシュ状のもの、多孔板などでよい。
実施の形態14は、以上のように構成されているので、入口ポート23から冷媒流がスラグ流あるいはプラグ流となって入ってきた場合、大きな空間からなる整流室51に入ることにより冷媒流のエネルギが拡散され、冷媒流中の気泡が細分化される。そして、この冷媒流が多孔質透過材層53を通過することにより、第1絞り部31へ流れる冷媒流中の気泡が多孔質透過材層53においてさらに細分化される。これにより、第1絞り部31への冷媒流れが連続化され、膨張弁における不連続な冷媒流動音が顕著に低減される。したがって、本実施の形態の場合は、第1絞り部31の入口側で気泡が細分化されていなかった実施の形態7に比し、膨張弁における不連続な冷媒流動音が低減される。また、多孔質透過材層53は、通過する冷媒中のごみを除去することができるので、フィルターを兼用することができる。
(変形例)
(1)実施の形態1における筒状部材13は、図15(a)の第1弁孔7の中心側から見た展開図に示すように、その先端が平坦に形成されている。しかし、この先端部は、交互に凹凸を繰り返す端縁に形成してもよい。例えば、同図(b)の展開図のように鋸歯状に形成したものでもよいし、同図(c)のように規則的に凹凸したものとしてもよい。また、これら形状とは別のランダムな形状としてもよい。このような形状にすると、冷媒を逆方向から流す暖房運転時において、この筒状部材13に衝突する冷媒流がこの凹凸部を通過することにより一層乱されるので、気泡細分化効果がより一層大きくなり、不連続な冷媒通過音をより一層低減することができる。また、正方向に冷媒を流す冷房運転時においても、第1絞り部10からの高速噴流がこの筒状部材13の先端部に衝突して剥離流れを生じる際も、安定的な渦の生成を抑制することができるので、低騒音化を図ることができる。他の実施の形態における筒状部材13,34についても、同様に変形することができる。
(1)実施の形態1における筒状部材13は、図15(a)の第1弁孔7の中心側から見た展開図に示すように、その先端が平坦に形成されている。しかし、この先端部は、交互に凹凸を繰り返す端縁に形成してもよい。例えば、同図(b)の展開図のように鋸歯状に形成したものでもよいし、同図(c)のように規則的に凹凸したものとしてもよい。また、これら形状とは別のランダムな形状としてもよい。このような形状にすると、冷媒を逆方向から流す暖房運転時において、この筒状部材13に衝突する冷媒流がこの凹凸部を通過することにより一層乱されるので、気泡細分化効果がより一層大きくなり、不連続な冷媒通過音をより一層低減することができる。また、正方向に冷媒を流す冷房運転時においても、第1絞り部10からの高速噴流がこの筒状部材13の先端部に衝突して剥離流れを生じる際も、安定的な渦の生成を抑制することができるので、低騒音化を図ることができる。他の実施の形態における筒状部材13,34についても、同様に変形することができる。
(2)実施の形態9及び実施の形態10には、気泡細分化手段を設けた例が記載されているが、このような気泡細分化手段は実施の形態2〜5、11及び12においても適用することができる。また、気泡細分化手段としては、このような例に限られたものではなく、他の気泡細分化手段を弁室5に設けるようにしてもよい。例えば、第2絞り部35と拡大空間部36の何れかのみを設けるようにしてもよい。また、冷媒流に乱れを与えるような他の手段、例えば、冷媒流に旋回流を与えたり、冷媒流を蛇行させたりするような手段に置き換えてもよい。また、弁棒8の周囲における弁棒8と直交する平面上に、ドーナツ状の多孔質透過材層を設けるようにしたものでもよい。また、このような気泡細分化手段は、実施の形態2〜5、11及び12に対して適用することができる。
(3)また、実施の形態9における第2絞り部35に関し、第2弁体39及び第2弁孔38をテーパ状にしているが、これを弁棒8の中心線に平行な外周面を備えた弁体、あるいは弁棒8の中心線に平行な内周面を備えた弁孔にしてもよい。また、この第2弁体39に設けられている螺旋溝を複数条の螺旋溝で形成し、複数の絞り通路となるようにしてもよい。また、螺旋溝に代えて上下方向に直線状に延びる複数条の凹溝で形成してもよい。また、このような溝を第2弁体39の外周面ではなく第2弁孔38の内周面に形成してもよい。また、これらの溝を第2弁体39あるいは第2弁孔38の何れにも形成しない絞り部としてもよい。さらには、これら溝の段面形状を半円形、3角形、4角形など種々の形状にすることも可能である。
(4)実施の形態14において、整流室51の側面に液管24を接続する入口ポート23を形成することにより、整流室51に配置する円盤状の多孔質透過材層53に代えて、整流室と同心に円筒状の多孔質透過材層を設置することもできる。また、整流室51に配置する気泡細分化手段として、実施の形態9のように第2絞り部と拡大空間部36とからなる構成とし、整流室51そのものを第2絞り部35と拡大空間部36とからなる構成に置換してもよい(図9参照)。
5…弁室、6…冷媒分流室、7,28…第1弁孔、9,30…第1弁体、10,31…第1絞り部、12,33…分流管、13,34…筒状部材、25…弁室兼冷媒分流室、35…第2絞り部、36…拡大空間部、43、45,47,53…多孔質透過材層、51…整流室。
Claims (16)
- 第1弁体と第1弁孔との間に形成された、絞り作用を行う第1絞り部と、第1絞り部通過後の冷媒を分流管に分流するための冷媒分流室と、冷媒分流室に接続された分流管とを備え、
前記分流管は、第1絞り部が形成されている壁体の近くに開口するように形成され、
前記第1絞り部の出口側の周囲には、第1絞り部から噴出される冷媒流が直接的に分流管に流れることを防止するための筒状部材が設けられている
ことを特徴とする冷媒分流器一体化構造の膨張弁。 - 請求項1記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁において、
第1絞り部の入口側に第1弁体を収納する弁室が形成され、第1絞り部を形成する壁体を介在して第1絞り部の出口側に冷媒分流室が形成されている
ことを特徴とする冷媒分流器一体化構造の膨張弁。 - 前記冷媒分流室は、第1絞り部を構成する第1弁孔の中心軸に対し直交する方向の寸法が第1弁孔の中心軸の軸方向の寸法より大きくなるように形成され、
前記分流管は、このように形成された冷媒分流室における第1絞り部から径方向に離れた位置において冷媒分離室に開口するように形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。 - 前記冷媒分流室において第1絞り部に対向する壁体には、第1絞り部から衝突するように流出される噴流を、分流管の入口の方へ方向転換するようにガイドするガイド部が形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 前記弁室には、気泡細分化手段が配置されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 前記冷媒分流室における冷媒通路に多孔質透過材層が配置されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 請求項1記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁において、
第1絞り部の出口側に第1弁体を収納する弁室が形成され、この弁室が冷媒分流室に兼用され弁室兼冷媒分流室として構成されている
ことを特徴とする冷媒分流器一体化構造の膨張弁。 - 前記弁室兼冷媒分流室は、第1絞り部を構成する第1弁孔の中心軸に対し直交する方向の寸法が第1弁孔の中心軸の軸方向の寸法より大きくなるように形成され、
前記分流管は、このように形成された冷媒分流室における第1絞り部から径方向に離れた位置において冷媒分離室に開口するように形成されている
ことを特徴とする請求項7記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。 - 前記弁室兼冷媒分流室において第1絞り部に対向する壁体には、第1絞り部から衝突するように流出される噴流を、分流管の入口の方へ方向転換するようにガイドするガイド部が形成されていることを特徴とする請求項7又は8記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 前記弁室兼冷媒分流室の入口側に整流室を形成し、この整流室に気泡細分化手段が配置されていることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 前記弁室兼冷媒分流室における冷媒通路に多孔質透過材層が配置されていることを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 前記気泡細分化手段は、第2絞り部であることを特徴とする請求項5又は10記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 前記気泡細分化手段は、第2絞り部と第1絞り部との間に拡大空間部を備えていることを特徴とする請求項12記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 前記気泡細分化手段は、多孔質透過材層であることを特徴とする請求項5又は10記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 前記筒状部材は、先端部が交互に凹凸を繰り返す端縁に形成されていることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁。
- 請求項1〜15の何れか1項に記載の冷媒分流器一体化構造の膨張弁を用いたことを特徴とする冷凍装置。
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