JP2008291322A - 拡管性に優れた油井用鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】降伏強さ:350MPa以上、n値:0.08以上を有し、かつn値と均一伸びu-Elとが、n>0.007×(25−u-El)(ここで、n:n値、u-El:均一伸び(%))を満足する鋼管とする。これにより、優れた拡管性を確保できる。この鋼管は、質量%で、C:0.35%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.10〜3.50%を含み、P、S、Alを適正量含有し、あるいはさらにCr,Cuの群、Niの群、Mo,V,Nb,Ti,Zr,B,Wの群、Caの群のうちの1群または2群以上を含有する組成を有する鋼管に、熱処理として、焼入れ処理および焼戻処理、または焼準処理および焼戻処理、または焼戻処理を施して得られる。
【選択図】なし
Description
ln(d)≦−0.0067YS+8.09
の関係を満足する拡管加工後の耐食性に優れた拡管用油井鋼管が記載されております。しかし、特許文献3に記載された技術では、限界拡管率は高々30%以下であり、更なるコスト削減要求から、拡管率が30%を超える拡管性に優れた油井用鋼管が要求されている。
本発明は、かかる従来技術の問題を有利に解決し、従来より安価な、拡管性に優れる油井用鋼管を提供することを目的とする。
(1)油井内に挿入された状態で拡管される油井用鋼管であって、降伏強さ:350MPa以上、n値:0.08以上を有し、かつn値と均一伸びu-Elとが次(1)式
n>0.007×(25−u-El)‥‥‥(1)
(ここで、n:n値、u-El:均一伸び(%))
を満足し、拡管性に優れることを特徴とする油井用鋼管。
(2)(1)において、前記油井用鋼管が、質量%で、C:0.35%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.10〜3.50%、P:0.07%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする油井用鋼管。
(3)(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、次A群〜D群
A群:Cr:2.0%以下、Cu:3.5%以下のうちから選ばれた1種または2種、
B群:Ni:2.0%以下、
C群:Mo:2.0%以下、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.01%以下、W:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.0005〜0.01%
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする油井用鋼管。
(4)質量%で、C:0.35%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.10〜3.50%、P:0.07%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼管に、熱処理として、焼入れ処理および焼戻処理、または焼準処理および焼戻処理、または焼戻処理を施すことを特徴とする油井用鋼管の製造方法。
(5)(4)において前記組成に加えてさらに、質量%で、次A群〜D群
A群:Cr:2.0%以下、Cu:3.5%以下のうちから選ばれた1種または2種、
B群:Ni:2.0%以下、
C群:Mo:2.0%以下、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.01%以下、W:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.0005〜0.01%
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする油井用鋼管の製造方法。
n>0.007×(25−u-El)‥‥‥(1)
(ここで、n:n値、u-El:均一伸び(%))
を満足するn値を有することが必要となるという知見を得ている。n値が(1)式を満足できない場合には、所望の優れた拡管性を確保することができない。なお、均一伸びu-Elは、管軸方向を引張方向とする引張試験片を用いてJIS Z 2241の規定に準拠して測定した値を用いる。
C:0.35%以下
Cは、鋼管強度に関係する重要な元素であり、所望の強度を確保するために、0.04%以上含有することが望ましいが、0.35%を超えて多量に含有すると、鋼管製造時に焼割れを発生する恐れが増大する。このため、Cは0.35%以下に限定した。
Siは、通常の製鋼過程において脱酸剤として有用な元素である。このような効果を得るために0.05%以上含有することが望ましいが、1.5%を超える含有は、熱間加工性、さらには靭性を低下させる。このため、Siは1.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.7%以下である。
Mnは、固溶して鋼管強度を増加させる作用を有するとともに、n値向上に有効に寄与する元素である。油井用鋼管として所望の強度を確保するために0.10%以上の含有を必要とする。一方、3.50%を超える多量の含有は、靭性に悪影響を及ぼすとともに、鋼管製造時に焼割れを発生する恐れを増大させる。このため、Mnは0.10〜3.50%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.3〜3.5%である。
Pは、熱間加工性を低下させるとともに、耐硫化物応力腐食割れ性を劣化させる元素であり、本発明ではその含有量は可及的に少ないことが望ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。そのため、本発明ではPは、工業的に比較的安価に実施可能でかつ、熱間加工性、耐硫化物応力腐食割れ性を低下させない範囲である、0.07%以下に限定した。なお、好ましくは0.03%以下である。
Sは、パイプ造管過程における熱間加工性を著しく劣化させる元素であり、本発明ではその含有量は可及的に少ないことが望ましいが、極端な低減は製造コストの高騰を招く。そのため、本発明ではSは、通常の工程でのパイプ製造が可能な範囲である0.01%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
Alは、強力な脱酸剤として作用するとともに、Nと結合し結晶粒を微細化する作用をも有する元素である。このような効果を安定して確保するために0.005%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Alは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.007〜0.03%である。
A群:Cr:2.0%以下、Cu:3.5%以下のうちから選ばれた1種または2種
A群:Cr、Cuはいずれも、耐腐食性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Cuは、保護皮膜を強固にして鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は0.2%以上の含有で顕著となるが、3.5%を超える含有は、高温で粒界にCuSが析出し、熱間加工性を低下させる。このため、Cuは3.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜2.0%である。
B群:Niは、靭性の向上に有効に寄与する元素である。また、Cuを含有する場合には圧延時の割れを防止するのに有効に寄与する。このような効果を得るためには0.1%以上含有することが望ましいが、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、Niは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.0%である。
C群:Mo、V、Nb、Ti、Zr、B、Wはいずれも、鋼管強度を増加させる作用を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。
Moは、焼入れ性の向上を介して、鋼管強度の増加に寄与する元素であるが、硫化水素が存在する環境下では耐硫化物応力腐食割れ性をも向上させる元素でもある。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが望ましいが、2.0%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、Moは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜1.5%である。
Nbは、鋼の強度増加、靱性向上に有効に寄与する元素である。このような効果は0.01%以上の含有で顕著となるが、0.20%を超える含有は、靱性を低下させる。このため、Nbは0.20%以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.12%である。
Zrもまた、鋼管強度を増加させ、耐応力腐食割れ性を改善する作用を有する元素である。このような効果は、Zr:0.01%以上の含有で顕著となる。一方、0.20%を超える含有は、靱性を劣化させる。このため、Zrは0.20%以下にそれぞれ限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.02〜0.15%である。
Wもまた、鋼管強度を増加させ、耐応力腐食割れ性を改善する作用を有する元素である。このような効果は、0.2%以上の含有で顕著となる。一方、W:1.0%を超える含有は、靱性を劣化させる。このため、Wは1.0%以下に限定することが好ましい。
D群:Caは、SをCaSとして固定しS系介在物を球状化する作用により、介在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、水素のトラップ能を下げる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.0005%以上の含有が必要であるが、0.01%を超える含有は、CaOの増加を招き、耐CO2腐食性、耐孔食性が低下する。このため、Caは0.0005〜0.01%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.001〜0.005%である。
つぎに、本発明油井用鋼管の好ましい製造方法を継目無鋼管を例にして説明する。なお、本発明では鋼管は、継目無鋼管に限定されるものではなく、溶接鋼管(電縫鋼管)としてもよいのは言うまでもない。
なお、焼戻処理に代えて、二相域の温度に加熱し冷却する二相域処理としても良い。また、焼戻処理、二相域処理は少なくとも2回繰り返す処理としても良い。
さらに、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
次いで各鋼管から試験片素材(長さ:300mm)を切り出し、表2に示す熱処理を施した。なお、一部の鋼管では熱間圧延ままとした。
また、上記した熱処理を施された試験片素材から、拡管試験片(鋼管:長さ300mm)を採取した。これら拡管試験片(鋼管)に、拡管試験片(鋼管)の内径より大きい各種外径を有するプラグを順次、プレスにより押し込み、亀裂が発生した時点のプラグ径を求め、次式で限界拡管率を算出した。
なお、使用したプラグの外径は、拡管率が5%刻みとなるように配慮した。
得られた結果を表2に示す。
Claims (5)
- 油井内に挿入された状態で拡管される油井用鋼管であって、降伏強さ:350MPa以上、n値:0.08以上を有し、かつn値と均一伸びu-Elとが下記(1)式を満足し、拡管性に優れることを特徴とする油井用鋼管。
記
n>0.007×(25−u-El)‥‥‥(1)
ここで、n:n値、
u-El:均一伸び(%) - 前記油井用鋼管が、質量%で、
C:0.35%以下、 Si:1.5%以下、
Mn:0.10〜3.50%、 P:0.07%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.05%以下
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1に記載の油井用鋼管。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、下記A群〜D群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項2に記載の油井用鋼管。
記
A群:Cr:2.0%以下、Cu:3.5%以下のうちから選ばれた1種または2種、
B群:Ni:2.0%以下、
C群:Mo:2.0%以下、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.01%以下、W:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.0005〜0.01% - 質量%で、
C:0.35%以下、 Si:1.5%以下、
Mn:0.10〜3.50%、 P:0.07%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.05%以下
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼管に、熱処理として、焼入れ処理および焼戻処理、または焼準処理および焼戻処理、あるいは焼戻処理を施すことを特徴とする油井用鋼管の製造方法。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、下記A群〜D群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項4に記載の油井用鋼管の製造方法。
記
A群:Cr:2.0%以下、Cu:3.5%以下のうちから選ばれた1種または2種、
B群:Ni:2.0%以下、
C群:Mo:2.0%以下、V:0.20%以下、Nb:0.20%以下、Ti:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.01%以下、W:1.0%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.0005〜0.01%
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