JP2008288279A - 表面処理金属板および電子機器用筐体 - Google Patents

表面処理金属板および電子機器用筐体 Download PDF

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Abstract

【課題】電子機器の筐体に好適に用いることができ、接合部の電磁波シールド性及び耐食性に優れた金属板及び該金属板を少なくとも一部に用いて製造された電子機器用筐体を提供する。
【解決手段】金属板の少なくとも一部に、有機樹脂を含み平均厚みが0.5μm以上10μm以下の有機樹脂層が形成されており、該有機樹脂層中に高誘電率粒子を含有することを特徴とする接合部の電磁波シールド性及び耐食性に優れた表面処理金属板、及びこれを用いた電子機器用筐体である。さらに、有機樹脂層と金属板の間に、金属板よりも表皮深さの大きい金属からなる金属層を有し、かつ金属層の平均厚みが0.5μm以上40μm以下であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子機器の筐体に好適に用いることができ、接合部の電磁波シールド性及び耐食性に優れた表面処理金属板及び該金属板を少なくとも一部に用いて製造された電子機器用筐体に関する。特に、数MHzから数GHzまでの放射ノイズによる電子機器の誤動作を効果的に抑制可能な金属板及び筐体に関する。
電磁波は以前より、放送、レーダー、船舶通信、電子レンジ等に利用されてきたが、近年、情報通信技術のめざましい発展により、その利用は飛躍的に拡大している。中でも、大容量情報の伝送が可能となるGHz帯の利用が急増し、携帯電話(1.5GHz)、ETC(5.8GHz)、衛星放送(12GHz)、無線LAN(2.45〜60.0GHz)、車載追突防止レーダー(76GHz)等で用いられるようになってきた。一方、一般家庭においても、従来のケーブル配線に加え、マイクロ波、ミリ波を用いた無線通信でパソコンやテレビ、各種情報家電をネットワーク化して、いつでもコンピューターに繋がるユビキタス社会の到来が始まっている。
このように、数多くの電磁波発生源が我々の周囲を取り巻き、通信デバイスの小型化、高速化、薄肉化と相まって、不要電磁波の放射とそれによる誤動作の危険性は格段に高まっているものと考えられる。
不要な電磁波の放射(Emission)を抑制したり、不要電磁波の放射を受けても誤動作し難くする(Immunity)手段として、金属材料による電磁波シールド技術がある。電磁波シールド材として金属材料が適することは、例えば、非特許文献1に記載がある。本発明で述べる電磁波シールドとは、非特許文献1で言う「電磁シールド」のことであって、「静電シールド」や「磁気シールド」とは区別されるべきものである。即ち、周波数が凡そ1MHz以上の電磁波が、材料を貫通して漏洩するのを防止する効果を言う。この意味で、金属材料は、例えば、プラスチック等と比較して、格段に優れた電磁波シールド効果を有する。不要電磁波の発生源を金属板で囲うことによりEmissionは抑制され、また電子回路を金属板で囲うことにより、外部からの不要輻射から回路を守るImmunityの手段となる。したがって、金属板により隙間や接合部の無い電子機器筐体を作製できれば、良好な電磁波シールドが得られ、電磁波漏洩は殆ど問題にならない。
しかしながら、電子機器用筐体には、ビス止め、スポット溶接、はぜ折等による何らかの接合部がある。また、金属板の表面は、耐食性や耐指紋性を付与する目的で、有機樹脂を含有する被膜で被覆されていることがある。このような場合には、電磁波は接合部から漏洩する可能性があり、筐体の電磁波シールド性は接合部からの漏洩の大小によって決まる。したがって、金属板といえども、電磁波シールド性を改善する技術が必要となる。
金属板の電磁波シールド性改善を意図した従来技術を例示する。特許文献1には、亜鉛系又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に、クロムを含有しない有機及び/又は無機皮膜を形成させた表面処理鋼板において、中心線平均粗さが大きい、即ち凹凸があるめっき鋼板の上に皮膜を形成させることにより、皮膜厚の分布を不均一にして、電磁波シールド性と耐食性に優れた表面処理鋼板を提供する方法が開示されている。皮膜の導電性は凸部の皮膜厚が薄い部分で決定されるため、上記の構成は電磁波シールド性に優れること、また皮膜の不均一があっても良好な耐食性が得られることが述べられている。
特許文献2には、表面が粗面化された鋼板と、その表層にNi、Cu、Al、Zn、Snから選ばれる金属を主成分とする膜厚2μm以下のめっきを形成させた鋼板が、電磁波シールド性に優れていることが開示されている。鋼板表面の凹凸で電磁波は反射され、また凹凸により行路長を大きくすることで電磁波が減衰されること、めっき層を形成させることで、めっき/鋼板界面における電磁波の反射によっても電磁波が減衰されることが開示されている。
特許文献3には、めっき鋼板表面にクロメート皮膜を介して、樹脂からなる不連続皮膜を形成させた導電性表面処理鋼板が開示されている。
特許文献4には、有機皮膜中に、微細突起を有する導電性物質を適量含有させた導電性、電磁波シールド性に優れた塗装鋼板が開示されている。導電性物質としては透磁率の高いものが好ましいこと、導電性物質は塗膜を貫通することが必要であり、そのために微細突起を設けて樹脂の被覆を軽減すべきであることが開示されている。
特許文献5には、鋼板表面にAg、Cu、Au、Al等からなる導電性被覆層とNi、Fe等からなる透磁性被覆層を交互に積層した電磁波シールド材が開示されている。電磁波は電界成分及び磁界成分から構成されるため、導電性被覆層により電界成分を、透磁性被覆層により磁界成分をシールドするというのが技術思想である。同様の技術は特許文献6にも見られる。
特許文献7には、鋼板表面に膜厚2μm以上の強磁性体でない金属を含む皮膜を有する、接合部の電磁波遮断性に優れた鋼板が開示されている。磁性体同士、非磁性体同士の接合部からの電磁波の漏洩に比べて、磁性体と非磁性体の接合部からは電磁波漏洩が多大となること、皮膜金属の表皮効果によって電磁波は減衰し、接合部の電磁はシールド性が良好になること、皮膜の電磁波浸透深さが浅いほど、皮膜が厚いほど電磁波は大きく減衰することが述べられている。
金属板以外での電磁波シールドの従来技術を例示する。特許文献8には、フレーク状導電性粉末とバインダー樹脂からなる電磁波シールド膜及び電磁波シールド塗料が開示されている。導電性粉末として、アスペクト比が10〜250の銀、銅、ニッケル、コバルト、ケイ素鋼が好ましいこと、電磁波シールド膜の膜厚は10〜100μmとすべきことが述べられている。
特許文献9には、電磁波を吸収する吸収材を含み、その隙間に電磁波反射材を配置した電磁波遮断材が開示されている。電磁波吸収材は、黒鉛又はカーボンブラック、架橋型高分子、線状高分子とアルカン系直鎖低分子からなること、電磁波反射材はNi等の金属粉体を用いることが述べられている。
特許文献10には、軟磁性金属粉末をゴム又はプラスチックのマトリクス中に分散させたシート状の電磁波シールド材が開示されている。軟磁性金属粉末として、Fe、Ni、Co、Vが好ましく、Cr、Si、Alは好ましくないこと、シートは誘電率εが100以上、比抵抗が1MΩ・cm以上であるべきこと、誘電率εを高くすることで電磁波の反射率が高くなることが述べられている。
特開2004−156081号公報 特開2002−232184号公報 特開昭63−114635号公報 特開2005−313609号公報 特開2002−353685号公報 特開2004−169091号公報 特開平11−307361号公報 特開2000−357893号公報 特開2002−246785号公報 特開2001−68889号公報 清水康敬著、「最新 電磁波の吸収と遮断」、p205〜223、日経技術図書株式会社 (1999) 塩崎忠著、「絶縁・誘電セラミクス−製造と応用−」、p65〜77、株式会社シーエムシー (1985) 「誘電材料の応用展開−材料開発からナノデバイス応用まで−」 II 誘電体材料 第1章、第2章、IV 応用編 第2章、東レリサーチセンター (2006) 工藤敏夫, EMC, 1991.2.5, No.34, p49 (1991)
しかしながら、これらの従来技術にはいずれも課題がある。特許文献1と特許文献2は、金属板表面に凹凸を付与することで電磁波シールド性を改善するとの技術内容である。しかし、発明者らの検討によると、国際規格(CISPR)で求められる30MHz〜1GHzまでの電界波の漏洩抑制に対して、これらの方法は必ずしも有効ではない。特許文献1では、電磁波シールド効果を検証する方法として直流表面抵抗を測定しているが、交流である高周波のシールド性を評価する指標として原理的に適切でない。また、特許文献2では、KEC法により1〜100MHzまでの電磁波のシールド効果を評価しているが、周波数範囲が国際規格に準拠していない。また、KEC法では、発信源と受信源が近接していて、上記の周波数範囲では両者が1波長以上離れておらず、近傍界での測定となっている。したがって、発信源の種類によって結果が異なり、正しく電界波の漏洩抑制を調べているかどうか定かではない。そもそもこれらの技術思想では、凹凸があるめっき鋼板を厚みの不均一な有機皮膜で被覆しており、凸部の皮膜厚が薄い部分が腐食の起点となることが懸念される。特許文献3においても、樹脂被覆が無い部分での耐食性や耐指紋性は不良である。
特許文献4は、塗膜を貫通する導電性物質によって電磁波シールド性を改善するものであるので、絶縁性被膜で金属板を被覆することによる塗膜本来の防錆機能を損なうものである。
特許文献5及び6は、導電性皮膜/透磁性皮膜を交互に積層したものであるが、それぞれの厚みが一旦決定されてしまえば、有効にシールドできる周波数も決定されてしまい、国際規格で定める幅広い周波数範囲に1種類の金属材で対応することはできない。そもそも平面波においては、電界、磁界のいずれかをシールドすれば電磁波はシールドされるので、導電性皮膜と透磁性皮膜を交互に積層する必然性が無い。
以上の金属板に関する特許文献1〜6には、接合部での電磁波シールド性を向上させるという課題認識が希薄であり、したがって接合部でなぜ電磁波が漏洩し易いか、接合部での漏洩を如何にして防止するかに関する示唆が無い。
特許文献7は、接合部での電磁波シールド性を明確に意図したものである。しかしながら、金属の表面が有機樹脂を含有する被膜で被覆されている場合については、漏洩を抑制する方法を示唆するものではない。
特許文献8及び9の電磁波シールド膜は、いずれもバインダー樹脂中に金属粉やカーボンブラック等の導電性物質を含有するものである。これを金属板に適用した場合を考えると、特許文献4と同様に、耐食性が不良となることが懸念される。
特許文献10は、金属板で裏打ちされていないシート材であるため、主として電磁波を吸収することにより、透過を防止するものである。シートの厚みは1mm以上である。加えて、シートの誘電率や比抵抗を高めることで、反射特性を改善している。これを膜厚10μm以下の層として金属板表面を被覆したとしても、この厚みでは電磁波吸収能力は無視できるほど小さく、一方、金属板で裏打ちされているので皮膜自身に反射特性は必要ない。即ち、金属板の接合部電磁波シールド性を改善することはできない。
そこで、本発明は、従来の技術での上記課題を解決し、接合部の電磁波シールド性及び耐食性に優れた表面処理金属板、及び、これを用いた電子機器用筐体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、まず接合部でなぜ電磁波が漏洩し易いかを解明すべく、実験と計算を行った。その結果、接合部からの電磁波漏洩現象を説明するに至った。次に、漏洩を如何にして防止するかについて等価回路を基に考察し、着想を得て実験により検証した。その結果、金属表面を被覆する樹脂含有層の誘電率を高めること、金属板表面を表皮深さのより大きい金属で被覆することにより、課題解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の(1)〜(11)を要旨とする。
(1) 金属板表面の少なくとも一部に、有機樹脂を含む平均厚みが0.5μm以上10μm以下の有機樹脂層が形成されており、該有機樹脂層中に高誘電率粒子を含有することを特徴とする、表面処理金属板。
(2) 前記高誘電率粒子の体積含有率は、10%以上85%以下であることを特徴とする、前記(1)記載の表面処理金属板。
(3) 前記高誘電率粒子の平均長径は、1μm以下であり、かつ、該平均長径は、前記有機樹脂層の平均厚みの1/2以下であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の表面処理金属板。
(4) 前記金属板の中心線平均粗さは、2μm以下であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理金属板。
(5) 前記表面処理金属板の表面抵抗率は、10−3Ωcm以上1Ωcm未満であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面処理金属板。
(6) 前記有機樹脂層と前記金属板との間に、前記金属板よりも表皮深さの大きい金属からなる金属層を有し、前記金属層の平均厚みは、0.5μm以上40μm以下であることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の表面処理金属板。
(7) 前記金属層は、非磁性体であることを特徴とする、前記(6)記載の表面処理金属板。
(8) 前記金属層の主成分は、Cu、Al、Zn、Sn、Cr、Pb、Ti、Mnの中から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(7)に記載の表面処理金属板。
(9) 前記金属板は、非磁性体であることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の表面処理金属板。
(10) 前記金属板の主成分がCu、Al、Zn、Sn、Cr、Pb、Ti、Mnの1種又は2種以上である前記(9)記載の表面処理金属板。
(11) 前記(1)〜(10)のいずれかに記載の表面処理金属板を少なくとも一部に用いてなる電子機器用筐体。
本発明により、接合部の電磁波シールド性及び耐食性に優れた金属板を提供でき、これを電子機器筐体に用いることで、国際規格(CISPR)で求められる30MHz〜1GHzの放射ノイズはもちろん、動作周波数の高速化に伴って今後発生が予想される10GHzまでの放射ノイズに対しても、これを効果的にシールドし、電子機器の誤動作を抑制可能である。したがって、従来行われてきた接合部の電磁波シールド対策、即ち、ガスケットの多用やスポット溶接やビス止め等を省略もしくは簡素化でき、生産性、経済性に優れた電子機器筐体を提供することができる。
以下、本発明を詳述する。
まず、接合部でなぜ電磁波が漏洩し易いかについて述べる。金属板からなる電子機器筐体の内部で発生した、周波数が数MHzから数GHzの放射ノイズは、金属板表面に到達すると、その大部分は反射されるが、一部は金属板の内部へ浸透しながら減衰してゆく。電界強度が1/eまでに減衰する深さがその金属の浸透深さであり、上記の周波数帯では数十μm以下である。したがって、発生する電流は金属の表皮を伝わる。
筐体接合部の金属板の間に絶縁層がある場合、筐体内に放射ノイズによる電界が発生すると、筐体内側の金属板表皮にはその方向に電流が発生する。接合部には絶縁層があるため、電流は接合部を横切って伝達されない。すると、電流は筐体内側の金属板表皮から筐体外側の金属板表皮へと流れる。この電流によって筐体外側に電界が発生し、これが漏洩電磁波となって伝わる。
接合部にある層が有機樹脂層の場合、有機樹脂中に分極性成分等の影響により、若干の伝達が起こる。この伝達が起こり易いほど、金属板の表皮を伝わって筐体外側へ漏洩する電流が少なくなり、漏洩が起こり難い。
接合部を等価回路で表すと、図1のようになると考えた。(i)は有機樹脂層の直流抵抗であり、周波数に依存せず一定値になると考えられる。(ii)は有機樹脂層の容量成分、(iii)は金属層および金属板の表皮深さに対応した抵抗成分である。周波数が高くなると、(ii)の容量成分に基づくインピーダンスは減少する。また、周波数が高くなると金属の表皮深さは浅くなるため、電流は流れ難くなって、(iii)の抵抗成分は大きくなる。
本発明者らの検討によると、(i)〜(iii)の内、どの成分が支配的であるかは、周波数によって概ね以下のように変化する。直流からkHz帯までは、(i)の直流抵抗RDCが支配的である。MHz帯では(ii)の誘電容量成分Cの寄与が大きくなる。GHz帯では(iii)の金属板の抵抗成分R(ω)の寄与が大きくなる。したがって、数MHzから数GHzまでの放射ノイズを低減するためには、(ii)の誘電容量Cを高めて、接合部を横切る変位電流が流れ易くすること、及び、(iii)の抵抗R(ω)を下げるために、金属板の表皮深さをなるべく大きくすることが有効である。
以上を基に、本発明の内容について説明する。
前記(1)は、誘電容量を高めた有機樹脂層の皮膜構造を規定したものである。有機樹脂層の単位面積当たりの誘電容量を高めるためには、a)膜厚を薄くする、b)比誘電率を高くする、の2つの方法が考えられるが、a)の方法を採ると耐食性が低下するため、b)の方法が好ましい。具体的には、b−1)有機樹脂層に比誘電率の高い樹脂を用いる、b−2)有機樹脂層に高誘電率粒子を分散させる、の2つの方法が考えられる。汎用される樹脂の比誘電率は2〜4程度であり、樹脂の変更による誘電容量の増加は高々2倍である。これに対して、ペロブスカイト型化合物に代表される高誘電率材料は、比誘電率が低いものでも10〜100、高いものでは数千あり、これらの微粒子を有機樹脂層中に分散させることで、誘電容量をより高くすることができる。そこで、本発明ではb−2)の方法を採る。
本発明で適用可能な高誘電率粒子としては、有機樹脂層中に分散可能であって、適量分散させることにより有機樹脂層の比誘電率を少なくとも5倍以上に高める効果を有するものであれば、特に制限はない。例えば、強誘電体であるチタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸鉛、ニオブ酸ストロンチウムバリウム、タンタル酸リチウム、酒石酸ナトリウムカリウム(ロッシェル塩)、リン酸二水素カリウム、三硫化グリシン等が例示できる。これらの構成元素の一部を、キュリー温度をシフトさせる効果を有する元素(シフター)により置換したもの、例えば、チタン酸バリウムのBa2+をSr2+、Ca2+等で、Ti4+をSn4+、Zr4+等で置換してキュリー温度を常温付近にシフトさせたものや、さらにはCaTiO、MgTiO等のデプレッサーを添加したものも含む。強誘電体では比誘電率が数百〜数千に及び、有機樹脂層の誘電容量を著しく増加させることができ、この結果、優れた接合部電磁波シールド性が得られる。
高誘電率粒子として常誘電体を用いても構わない。例えば、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、酸化チタン(特にルチル型)、チタン酸ストロンチウム、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)等が例示できる。これらは、比誘電率が強誘電体よりも小さいものが多いが、有機樹脂層中への添加量を調節したり、数種類を複合添加したりすることで、有機樹脂層の誘電容量を有意に増加させる効果を有する。以上の他、非特許文献2、非特許文献3に記載のある誘電体材料を使用することができる。
本発明の金属板としては、電子機器の筐体もしくは筐体内の部材に適する形状、寸法、強度、加工性を備えたものであれば、特にその種類は制限されず、鋼やアルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛、ニッケル、チタン等の金属板及び合金板、さらには、これらの金属板を異種金属で被覆しためっき金属板等が例示できる。筐体を構成する金属板は通常、板厚3mm以下である。金属板を筐体の構造部材として用いる場合の板厚の下限値は通常0.1mmである。
本発明に用いる有機樹脂としては、高誘電率粒子のバインダーとして有機樹脂層を形成し得るものであれば、特に制限が無く、水溶性有機樹脂、エマルジョン型有機樹脂、溶剤系有機樹脂のいずれもが使用可能である。例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、アイオノマー系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂あるいはポリスチレン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニルスルフィド、ポリアミドイミド、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリマー等が例示される。これらを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いたり、共重合体を用いたり(例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、等)、互いに変性したり(例えば、エポキシ変性ウレタン樹脂、アクリル変性アイオノマー樹脂、等)、あるいは別の有機物で変性したもの(例えば、アミン変性エポキシ樹脂、等)を用いても良い。
有機樹脂層の平均膜厚は、供試材の断面を適正な倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)又は光学顕微鏡で観察することにより決定する。金属板の十分離れた位置から最低10サンプルを採取し、埋め込み・研磨の後、各サンプルとも特異でない3〜5箇所について断面観察により膜厚測定を行って、得られた合計30〜50測定の平均値を膜厚とする。
有機樹脂層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下とする。0.5μm未満では耐食性が不十分であり、10μm超になると本発明の技術をもってしても電磁波シールド性が不十分となる。有機樹脂層は、筐体に使用される金属板の表裏面全てに形成されていても良いし、接合部として用いられる部分にのみ形成されていても良い。接合部として用いられる部分には有機樹脂層は必須である。
有機樹脂層中には、有機樹脂、高誘電率粒子以外の構成成分があっても良い。例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物添加剤、ポリエチレン、フッ素樹脂等からなるワックスや界面活性剤等の有機添加剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の有機−無機複合添加剤、着色顔料、腐食抑制剤等が例示される。なお、金属粉末、カーボンブラック、グラファイト等の導電性添加剤を添加しても構わないが、耐食性確保の観点から少量に抑制すべきであり、最大でも20vol%である。
前記(2)は、有機樹脂層中における高誘電率粒子の好ましい体積含有率の範囲を規定したものである。10%未満では効果が不十分となり易く、85%超では有機樹脂層の形成が困難となることがある。最適な体積含有率は、用いる樹脂と高誘電率粒子との組み合わせによってそれぞれ異なり、実験的に求める必要があるが、概ね以下の指針に従えばよい。有機樹脂として水溶性樹脂又は溶剤系樹脂を用いた場合には、高誘電率粒子を高い体積含有率まで含有させることができる。これは、樹脂が不定形のため高誘電率粒子の隙間を埋めるバインダーとして成膜できるためである。但し、高誘電率粒子を60%以上含有させる場合には、気泡の巻き込みが起こらないように注意する必要がある。気泡を巻き込んだまま成膜すると、有機樹脂層の誘電率がむしろ低下するためである。エマルジョン型樹脂を用いた場合には、エマルジョンと高誘電率粒子の粒子径の大小により、高誘電率粒子の体積含有率の上限が決まる。例えば、エマルジョンと高誘電率粒子の粒子径が同程度である場合には、通常、高誘電率粒子は50%程度までしか添加できない。エマルジョンの粒子径が高誘電率粒子の粒子径に比べて小さいほど、高誘電率粒子の体積含有率は高くできる。
有機樹脂層中における高誘電率粒子の体積含有率は、供試材の断面を適正な倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)又は光学顕微鏡で観察することにより決定する。金属板の十分離れた位置から最低10サンプルを採取し、埋め込み・研磨の後、各サンプルとも特異でない3〜5箇所について断面観察を行う。高誘電率粒子の同定には、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)や電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて元素分析を行うのが良い。高誘電率粒子として同定された粒子の各分析断面における分布面積率を求め、これをその断面における体積含有率とする。得られた合計30〜50測定の平均値を有機樹脂層中における高誘電率粒子の体積含有率とする。
高誘電率粒子の体積含有率を前記(2)の範囲としたときに得られる有機樹脂層の誘電容量は、当然、高誘電率粒子そのものの比誘電率によって異なる。十分な電磁波シールド効果が得られるためには、有機樹脂層の比誘電率が少なくとも5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上となるように、高誘電率粒子の比誘電率と体積含有率を選択する必要がある。このように選択することで、優れた接合部電磁波シールド性が得られる。そのための設計指針として、下式(I)に示すリヒトネッカーの指数則を用いると良い。なお、体積含有率v1及びv2は100%を1.0として小数で表す。
Figure 2008288279

ε 有機樹脂層の比誘電率
ε 高誘電率粒子の比誘電率 v1 高誘電率粒子の体積含有率(比率)
ε 有機樹脂の比誘電率 v2 有機樹脂の体積含有率(比率)
前記(3)は、高誘電率粒子の好ましい粒子径を規定したものである。有機樹脂層の膜厚は最大でも10μmであり、有機樹脂をバインダーとした均一な層を形成するために、高誘電率粒子の長径の上限は1μmとする。有機樹脂層の平均膜厚が2μm以下の場合には、高誘電率粒子の長径の上限は膜厚の1/2とする。これよりも長径の大きな高誘電率粒子を含有させることは、有機樹脂層の耐食性、加工性を劣化させるため好ましくない。なお、高誘電率粒子は球状のみならず、扁平状や不定形であってもよい。これら全ての形態について、最も長い寸法を長径と呼ぶことにする。粒子が凝集している場合でも、二次粒子径ではなく、個々の粒子の一次粒子径から長径を決定する。
有機樹脂層中における高誘電率粒子の平均長径は、平均膜厚と同様にして、供試材の断面を適正な倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)又は光学顕微鏡で観察することにより決定する。
前記(4)は、金属板の中心線平均粗さを2μm以下に規定したものである。より好適には1.5μm以下である。RaはJIS−B−0601に準拠し、カットオフ値0.8mmとして測定する。本発明は、特許文献1や特許文献2のように、金属板表面に凹凸を付与することで電磁波シールド性を改善しようとするものではない。凹凸の付与は電磁波シールド性の改善につながらないばかりか、有機樹脂層の膜厚が小さい部位、例えば0.5μm未満の部位では、耐食性の低下を招くので避けるべきである。表面粗さは、通常ダル鋼板程度で十分であり、ことさらテクスチャーを付与する必要はない。本発明の構成によれば、金属板がブライト相当の平滑さ、即ち、Raが0.1μm未満であっても、十分な接合部電磁波シールド性を発現するものである。
前記(5)は、電磁波シールド性と耐食性を更に良好にするための要件である。耐食性を更に良好とするためには、有機樹脂層で被覆された金属板の表面抵抗率が10−3Ωcm以上であることが好適である。10−3Ωcm未満であると腐食が起こり易い。一方、電磁波シールド性を更に良好にするためには、表面抵抗率は1Ωcm未満であることが好適である。より好ましくは10−1Ωcm未満である。表面抵抗率の測定は、JIS−K−7194に準拠して行い、プローブには四探針プローブを用いる。
前記(6)〜(10)は、図1、(iii)で説明した金属板の抵抗R(ω)を小さくするための要件である。前記(6)は、金属板を、これより表皮深さの大きい金属からなる金属層で被覆した後に、有機樹脂を含有する有機樹脂層を形成させることにより、金属板単体よりもR(ω)を小さくしたものである。この結果、より優れた接合部電磁波シールド性が得られる。金属層の平均厚みが0.5μm未満では効果が小さく、40μm超では効果が飽和する。金属層の形成方法は、電気めっき、溶融めっき、気相めっき、置換析出、圧着等、通常の方法のいずれを用いても良いが、電気めっき、溶融めっき、置換析出が経済的である。金属層の金属として、2種以上の金属を選択しても良い。この場合には、これらの合金としてもよいし、又は単金属からなる層を用いた複層構造としても良い。複層構造とする場合には、有機樹脂層に近い層としてより表皮深さの大きい金属を選ぶのが好適である。
前記(7)は、金属層として非磁性体を用いることにより、前記(6)の要件を満足させた構成である。金属の表皮深さは、導電率、比透磁率の−1/2乗に比例する。金属の違いによる導電率の差は比透磁率の差に比べて小さく、比透磁率の大小(磁性体であるかどうか)により、表皮深さの大小はほぼ決まる。金属層として表皮深さの大きい非磁性体を用いることで、R(ω)を小さくすることができ、優れた接合部電磁波シールド性が得られる。この方法は特に、金属板として鋼板などの磁性金属を用いる場合に有効である。
前記(8)は、非磁性体である金属層の主成分として、特定の金属の内1種又は2種以上から選択するものである。金属層として用いる金属の表皮深さは、Cu<Al<Zn<Sn<Cr<Pb<Ti<Mnの順である。2種以上の金属を選択する場合には、これらの合金としてもよいし、又は単金属からなる層を用いた複層構造としても良い。合金とする場合には、例えば、Znめっきの代わりに、Zn−Snめっき、Zn−Crめっき、Zn−Tiめっき、Zn−Mnめっき等を用いるのが効果的である。複層構造とする場合には、有機樹脂層に近い層としてより表皮深さの大きい金属を選ぶのが好適である。例えば、鋼板の上にZnをめっきし、その上層にSnをめっきし、その上層に有機樹脂層を設けるという例が挙げられる。
前記(9)は、金属として非磁性体を用いることにより、R(ω)を小さくした構成である。下記(10)には含まれない例として、オーステナイト系ステンレス鋼板が例示できる。
前記(10)は、非磁性体である金属の主成分として、特定の金属の内1種又は2種以上から選択するものである。2種以上の金属を選択する場合には、これらの合金とする。
前記(11)は、前記(1)〜(10)の金属板を少なくとも一部に用いてなる電子機器用筐体である。本発明の金属材を少なくとも一部に適用可能な電子機器筐体としては、例えば、デスクトップPC、デジタルテレビ等のデジタル家電製品、複写機、さらにはカーナビゲーション、カーAV、エンジンルーム用電子機器、車載レーダー用筐体等のカーエレクトロニクス機器等が挙げられる。また、ノートPC、携帯電話等のモバイル製品用筐体の一部に本発明の金属材を用いてもよい。
本発明の金属板を筐体の一部に用いる場合には、少なくとも、ビス止め、スポット溶接、はぜ折等による接合部には必ず適用すべきである。ただし、接合部がシーム溶接のように金属板を溶融して隙間無く接合している部位には適用しなくても問題ない。
以下に、実施例を用いて、本発明を非限定的に説明する。
(実施例1)
(1) 供試した金属板
以下の7種類の金属板を用いた。
鋼板:板厚0.8mmの軟鋼板
SUS1(ステンレス鋼板):板厚1.2mmのSUS304
SUS2(ステンレス鋼板):板厚1.2mmのSUS430
Cu(銅板) :板厚1.0mmの純Cu板
Ni(ニッケル板) :板厚1.0mmの純Ni板
Ti(チタン板) :板厚1.0mmの純Ti板
Al(アルミニウム板) :板厚0.6mmのJIS3004
(2) 金属層
上記金属板の上に、さらに金属層を設けたものについては、以下の8種類の中から選択した。
Zn−EG(電気亜鉛めっき):硫酸亜鉛水溶液に硫酸を添加しためっき浴を用いて、金属板に電気亜鉛めっきした。
Zn−HD(溶融亜鉛めっき):Alを0.20%含有する溶融亜鉛浴に金属板を浸漬して溶融亜鉛めっきした。
Al(溶融アルミニウムめっき):Siを10%含有する溶融アルミニウム浴に金属板を浸漬して溶融アルミニウムめっきした。
Sn(電気錫めっき):フェロスタン浴を用いて、金属板に電気錫めっきした。
Cu(電気銅めっき):硫酸銅水溶液に硫酸を添加しためっき浴を用いて、金属板に電気銅めっきした。
Cr(電気クロムめっき):サージェント浴を用いて、金属板に電気クロムめっきした。
Ti(蒸着チタンめっき):真空蒸着により、金属板にチタンめっきを施した。
(3) 粗度測定
金属板及び金属被覆層Bを有する金属板の表面粗度の測定には、触針式粗度計(ミツトヨ製、サーフテストSV−3100 S4)を用いた。中心線平均粗さはJIS−B−0601に準拠し、カットオフ値0.8mmとして求めた。なお、表2のRaの測定値は、金属層があるものについては全て金属層を施した後の値である。
(4) 有機樹脂
有機樹脂には、エマルジョン系、水溶性、溶剤系の合計6種類から選んで用いた。
U :エマルジョン系ウレタン樹脂(大日本インキ製、ハイドランHW)
E :エマルジョン系エポキシ樹脂(荒川化学工業製、モデピクス302)
A :エマルジョン系アクリル樹脂(三井化学製、アルマテックス)
PV:水溶性ポリビニルアルコール(日本合成化学製、ゴーセノールT)
M :溶剤系メラミン樹脂(日本ペイント製、オルガセレクト100)
PE:溶剤系ポリエステル樹脂(日本ペイント製、ユニポン400)
(5) 高誘電率粒子
表1に示す5種類の高誘電率粒子を用いた。表中の比誘電率及び粒径はカタログ値である。
Figure 2008288279
(6) その他の添加剤
いくつかの水準については、以下の導電性顔料を添加した。
CB:カーボンブラック(旭カーボン株式会社製AX−010)
また、全水準に防錆顔料として、以下を10mass%添加した。
コロイダルシリカ(日産化学製、スノーテックスシリーズ)
コロイダルシリカの種類は、樹脂の種類に応じて適したものを選んだ。平均粒子径は20nmのものを選んだ。
(7) 塗布、乾燥
有機樹脂、高誘電率粒子とその他の添加剤を混合し、ロールコーターで金属板に塗布し、直火型の乾燥炉で乾燥した。乾燥条件(温度、時間)は、樹脂の種類と膜厚に応じて、それぞれ適切に調整した。高誘電率粒子としてロッシェル塩を用いた場合には、結晶の溶融を防ぐため、乾燥条件は板温100℃以下、時間30秒以下とし、樹脂には水溶性樹脂を用いた。
(8) 高誘電率粒子の長径、体積含有率及び平均厚みの測定
走査型電子顕微鏡により、有機樹脂層の断面観察を行って、高誘電率粒子の長径、体積含有率及び平均厚みを測定した。10サンプルについて各3箇所ずつ、合計30箇所の測定結果を平均した。
(9) 表面抵抗率の測定
表面抵抗率測定には、JIS−K−7194に準拠した三菱化学製低抵抗率計Loresta−EP(型番MCP−T360)を用いた。プローブには四探針プローブであるASPプローブ(型番MCP−TP03P)を用いた。測定は1サンプルにつき5回行い、最高、最低を除く3データの平均を求め、下記の基準で評点付けした。評点Aが本発明の好適範囲である。
評点F:10−4Ωcm未満
評点S:10−4Ωcm以上、10−3Ωcm未満
評点A:10−3Ωcm以上、1Ωcm未満
評点B:1Ωcm以上、10Ωcm未満
評点C:10Ωcm以上
(10) 電磁波シールド性の評価
板厚3mmのAl板を溶接して一辺550mmの筐体を作製し、上面にのみ137mm×137mmの開口部を設けた。これを電波半無響室内に設置し、電磁波の基準発信源として、Schaffner社製コームジェネレーターを筐体内部に固定した後、周波数10MHz〜1000MHzまで10MHz間隔でパルス波を発信した。開口部周囲に、幅5mmのソフトガスケット(森宮電機製SGK5−1)を置いた。この上に150mm×150mmの供試金属板を載せた。筐体から水平方向に3m離れた地点に受信アンテナを配置し、これをスペクトラムアナライザーに接続することにより、筐体からの漏洩電磁波の信号強度を測定し、電界強度1μV/mを0dB(基準値)としてdBで表示した。測定は3回行い、得られた結果を平均した。比較として、開口部に金属板を置かない場合(全オープン)の信号強度(Io)、及び、開口部に銅板を置き、銅板の周囲と筐体の接触部分を銅箔製の導電テープで完全にシールした場合(全シールド)の信号強度(Is)も測定した。開口部に供試金属板を置いたときに得られた電界強度の平均値(Im)に対して、下式(II)により得られる値を、その供試金属板の電磁波シールド効果(SE)とした。
Figure 2008288279
代表値として周波数350MHz、700MHzの値を表2に示した。なお、開口部を全シールドしたときの電磁波シールド効果、即ち、(Io−Is)の値は、周波数350MHzで30dB、700MHzで35dBであった。これらが、本評価方法での最高到達レベルである。また、放射ノイズの漏洩抑制の観点からの合格レベルは、周波数350MHzで26dB以上、700MHzで31dB以上とした。
(11) 耐食性の評価
供試材を150mm(L)×70mm(W)に切り出し、JIS−Z−2371に規定する塩水噴霧試験を72時間行った。腐食面積率により以下のように評価した。評点3以上を合格とした。
評点5:腐食面積率2%未満
評点4:腐食面積率2%以上、5%未満
評点3:腐食面積率5%以上、10%未満
評点2:腐食面積率10%以上、20%未満
評点1:腐食面積率20%以上
本発明例を表2に示す。本発明例の内、No.1、2、3、4、7、11、12、16、25、28、31、33、35について、それぞれ高誘電率粒子を用いない比較例を表3のNo.36、37、42、40、41、43、44、45、46、47、48、49、50に示す。また、表3のNo.51、52は、表2のNo.2と金属板、金属層の構成、有機樹脂層の組成が同じで、有機樹脂層の膜厚のみ異なる場合である。
Figure 2008288279
Figure 2008288279
本発明例は、いずれも比較例に対して、耐食性を損なうことなく電磁波シ−ルド性が改善されている。また、表2の通り、本発明の好適範囲内では、さらに優れた電磁波シールド性を得ることができる。
(実施例2)
表2の実施例No.2、3、4及び表3の比較例No.37、40の金属材をデスクトップPCの筐体に用いた。電波半無響室内で3m離れた地点での周波数30MHz〜1000MHzの放射ノイズを測定し、VCCI規格値(情報技術装置クラスBの規格:30MHz〜230MHzでは40dB以下、230MHz〜1000MHzでは47dB以下)と比較した。この結果、実施例No.2、3、4は規格を満足し、一方、No.37、40からは規格値以上の放射ノイズが検出された。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
接合部の等価回路である。

Claims (11)

  1. 金属板表面の少なくとも一部に、有機樹脂を含む平均厚みが0.5μm以上10μm以下の有機樹脂層が形成されており、
    該有機樹脂層中に高誘電率粒子を含有することを特徴とする、表面処理金属板。
  2. 前記高誘電率粒子の体積含有率は、10%以上85%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理金属板。
  3. 前記高誘電率粒子の平均長径は、1μm以下であり、かつ、該平均長径は、前記有機樹脂層の平均厚みの1/2以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の表面処理金属板。
  4. 前記金属板の中心線平均粗さは、2μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理金属板。
  5. 前記表面処理金属板の表面抵抗率は、10−3Ωcm以上1Ωcm未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理金属板。
  6. 前記有機樹脂層と前記金属板との間に、前記金属板よりも表皮深さの大きい金属からなる金属層を有し、該金属層の平均厚みが0.5μm以上40μm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
  7. 前記金属層は、非磁性体であることを特徴とする、請求項6に記載の表面処理金属板。
  8. 前記金属層の主成分は、Cu、Al、Zn、Sn、Cr、Pb、Ti、Mnの中から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項7に記載の表面処理金属板。
  9. 前記金属板は、非磁性体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
  10. 前記金属板の主成分は、Cu、Al、Zn、Sn、Cr、Pb、Ti、Mnの中から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項9に記載の表面処理金属板。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の表面処理金属板を少なくとも一部に用いてなる電子機器用筐体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013214567A (ja) * 2012-03-30 2013-10-17 Kobe Steel Ltd 電磁波シールド性に優れた樹脂塗装金属板

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