JP2008274419A - 耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板 - Google Patents

耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐食性、電着塗装密着性および溶接性が得られるクロムフリー表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、特定のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン系水性液に対して、有機リン酸化合物、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、バナジン酸化合物、フッ化ジルコニウム化合物および炭酸ジルコニウム化合物を所定の割合で複合添加した表面処理組成物による表面処理皮膜を形成し、好ましくは、その上層に有機系皮膜を形成する。優れた耐食性と溶接性を有するとともに、表面処理皮膜中にノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂水性樹脂を添加したことにより、特に優れた電着塗装密着性を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車、家電、建材などの用途に最適な表面処理鋼板であって、特に皮膜中にクロムを全く含有しない環境調和型表面処理鋼板に関するものである。
家電用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板には、従来から亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸またはその塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は、耐食性に優れかつ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。
クロメート処理は公害規制物質である6価クロムを使用するものであるが、この6価クロムは処理工程においてクローズドシステムで処理され、完全に還元・回収されて自然界には放出されないこと、また、上層に形成する有機皮膜によるシーリング作用によってクロメート皮膜中からのクロム溶出もほぼゼロにできることから、実質的には6価クロムによって人体や環境が汚染されることはない。しかしながら、最近の地球環境問題に鑑み、6価クロムを含めた重金属の使用を自主的に削減しようとする動きが高まりつつある。また、廃棄製品のシュレッダーダストを投棄した場合に環境を汚染しないようにするため、製品中にできるだけ重金属を含ませない若しくはその含有量をできるだけ削減しようとする動きも始まっている。
このようなことから、亜鉛系めっき鋼板の白錆の発生を防止するために、クロメート処理によらない処理技術、所謂クロムフリー技術が数多く提案されている。例えば、無機化合物、有機化合物、有機高分子材料、あるいはこれらを組み合わせた溶液を用い、浸漬、塗布、電解処理などの方法により薄膜を生成させる方法がある。そのなかの一つとして、特許文献1には、チタン化合物、有機リン酸化合物、水溶性樹脂、バナジン酸塩およびジルコニウム塩からなる表面処理液により皮膜を形成させる方法が示されている。
特開2006-9121号公報
特許文献1の方法は、特定のチタン系水性液に特定の金属塩を組み合わせた混合液が鋼板表面で乾燥する過程で、含有する金属イオンによる複合塩の形成と酸化チタン系の緻密な皮膜成分の析出により、腐食抑制能の良好な皮膜を形成する。さらに、添加する水性樹脂により皮膜の凝集力を向上させ、密着性を強化することができる。しかしながら、開示されている水性樹脂では電着塗装後の温水浸漬などの厳しい環境下では密着性が低下し、電着塗装が剥離する問題が生じる。その原因として、以下の点が考えられる。
(i)アクリル系やウレタン系の水性樹脂は、樹脂そのものの密着性が不十分であり、温水浸漬などの厳しい環境下では電着塗装が剥離しやすい。
(ii)エポキシ系の水性樹脂は、カチオン化したエポキシ樹脂を用いているため、電着塗装時に発生する界面のアルカリとカチオン樹脂が反応し、密着性が低下しやすい。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、皮膜中にクロムを全く含まない表面処理鋼板であって、優れた耐食性、電着塗装密着性および溶接性が得られる表面処理鋼板を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、水性樹脂として密着性の良好なビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いるとともに、水性化する手段としてカチオン系ではなくノニオン系とすることで電着塗装密着性を向上させることができ、特に好ましくは一定範囲の分子量とすることで格段に優れた電着塗装密着性が得られることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、下記を要旨とするものである。
[1]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、有機リン酸化合物(B)を1〜400質量部、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)を固形分で10〜2000質量部、バナジン酸化合物(D)を1〜400質量部、フッ化ジルコニウム化合物(E)を1〜400質量部、炭酸ジルコニウム化合物(F)を1〜400質量部含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥させることにより形成された皮膜厚が0.01〜1.0μmの表面処理皮膜を有することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
[2]上記[1]の表面処理鋼板において、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)の数平均分子量が1000〜8000であることを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
[3]上記[1]または[2]の表面処理鋼板において、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)がポリオキシアルキレン鎖を有する水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの表面処理鋼板において、表面処理皮膜の上層に、さらに、皮膜厚が0.1〜5.0μmの有機系皮膜を有することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
[5]上記[4]の表面処理鋼板において、有機系皮膜の樹脂組成物の主成分が、皮膜形成有機樹脂(G)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)からなる活性水素含有化合物(H)との反応生成物であることを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
[6]上記[4]または[5]の表面処理鋼板において、有機系皮膜が、非クロム系防錆添加剤を樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.1〜50質量部含有することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
[7]上記[6]の表面処理鋼板において、非クロム系防錆添加剤が下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
(a)酸化ケイ素
(b)カルシウム化合物
(c)難溶性リン酸化合物
(d)モリブデン酸化合物
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の、S原子を含有する有機化合物
[8]上記[4]〜[7]のいずれかの表面処理鋼板において、有機系皮膜が、固形潤滑剤を樹脂組成物の固形分100質量部に対して1〜30質量部含有することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
[9]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、有機リン酸化合物(B)を1〜400質量部、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)を固形分で10〜2000質量部、バナジン酸化合物(D)を1〜400質量部、フッ化ジルコニウム化合物(E)を1〜400質量部、炭酸ジルコニウム化合物(F)を1〜400質量部含有する表面処理組成物を塗布し、到達板温が30〜200℃で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜1.0μmの表面処理皮膜を形成することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
[10]亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、有機リン酸化合物(B)を1〜400質量部、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)を固形分で10〜2000質量部、バナジン酸化合物(D)を1〜400質量部、フッ化ジルコニウム化合物(E)を1〜400質量部、炭酸ジルコニウム化合物(F)を1〜400質量部含有する表面処理組成物を塗布し、到達板温が30〜200℃で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜1.0μmの表面処理皮膜を形成し、その上層に、塗料組成物を塗布し、到達板温が30〜300℃で乾燥することにより、皮膜厚が0.1〜5.0μmの有機系皮膜を形成することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
本発明の表面処理鋼板は、皮膜中にクロムを含有しないにもかかわらず耐食性に優れ、しかも、優れた電着塗装密着性と溶接性を有する。
以下、本発明の詳細とその限定理由を説明する。
本発明の表面処理鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)、Zn−Mg合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板(例えば、Zn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板、Zn−11%Al−3%Mg合金めっき鋼板)、さらには、これらのめっき鋼板のめっき皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散した亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO2分散めっき鋼板)などを用いることができる。
また、上記のようなめっきのうち、同種または異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。
また、本発明の表面処理鋼板のベースとなるアルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムめっき鋼板、Al−Si合金めっき鋼板などを用いることができる。
また、めっき鋼板としては、鋼板面に予めNiなどの薄目付のめっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解または非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法のうち、実施可能ないずれの方法を採用することができる。
さらに、めっきの黒変を防止する目的で、めっき皮膜中にNi、Co、Feの1種以上の微量元素を1〜2000ppm程度析出させたり、或いはめっき皮膜表面にNi、Co、Feの1種以上を含むアルカリ性水溶液または酸性水溶液による表面調整処理を施し、これら元素を析出させるようにしてもよい。
次に、上記亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、第一層皮膜として形成される表面処理皮膜およびこの皮膜形成用の表面処理組成物について説明する。
本発明の表面処理鋼板において、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に形成される表面処理皮膜は、特定のチタン含有水性液(A)、有機リン酸化合物(B)、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)、バナジン酸化合物(D)、フッ化ジルコニウム化合物(E)および炭酸ジルコニウム化合物(F)を必須成分として含有する表面処理組成物(X)を塗布し、乾燥させることにより形成されるものである。この表面処理皮膜はクロム(但し、不可避不純物としてのクロムを除く)を含まない。
このような表面処理皮膜を形成することによって優れた品質性能が得られる理由は必ずしも明確ではないが、特定のチタン系水性液に特定の金属塩を組合わせて複合添加した混合液が鋼板表面で乾燥する過程で、含有する金属イオンによる複合塩の形成と酸化チタン系の緻密な皮膜成分の析出により、腐食抑制能が高い皮膜が形成されるために優れた耐食性が得られるとともに、水性樹脂としてノニオン系ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることにより、電着塗装時に発生する界面のアルカリに対する耐性を付与することができ、優れた電着塗装密着性が得られるためであると考えられる。
前記チタン含有水性液(A)は、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを混合して得られるチタンを含む水性液である。
前記加水分解性チタン化合物は、チタンに直接結合する加水分解性基を有するチタン化合物であって、水、水蒸気などの水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものである。また、加水分解性チタン化合物は、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であるものでもよいし、チタンに結合する基の一部が加水分解性基であるものでもよい。
前記加水分解性基としては、上記したように水分と反応することにより水酸化チタンを生成させるものであれば特に制限はないが、例えば、低級アルコキシル基やチタンと塩を形成する基(例えば、塩素などのハロゲン原子、水素原子、硫酸イオンなど)などが挙げられる。
加水分解性基として低級アルコキシル基を含有する加水分解性チタン化合物としては、特に、一般式Ti(OR)(式中、Rは同一若しくは異なる炭素数1〜5のアルキル基を示す)で示されるテトラアルコキシチタンが好ましい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
加水分解性基として、チタンと塩を形成する基を有する加水分解性チタン化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンなどが代表的なものとして挙げられる。
また、加水分解性チタン化合物の低縮合物は、上記した加水分解性チタン化合物どうしの低縮合物である。この低縮合物は、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であるものでもよいし、チタンに結合する基の一部が加水分解性であるものでもよい。
加水分解性基がチタンと塩を形成する基である加水分解性チタン化合物(例えば、塩化チタン、硫酸チタンなど)については、その加水分解性チタン化合物の水溶液とアンモニアや苛性ソーダなどのアルカリ溶液との反応により得られるオルトチタン酸(水酸化チタンゲル)も低縮合物として使用できる。
加水分解性チタン化合物の低縮合物及び水酸化チタンの低縮合物としては、縮合度が2〜30の化合物が使用可能であり、特に縮合度が2〜10の化合物を使用することが好ましい。縮合度が30を超えると、過酸化水素と混合した際に白色沈殿を生じ、安定なチタン含有水性液が得られない。
以上挙げた加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物は、1種または2種以上を使用できるが、そのなかでも、上述した一般式で示される加水分解性チタン化合物であるテトラアルコキシチタンが特に好ましい。
チタン含有水性液(A)としては、上記したチタン化合物と過酸化水素水を混合することにより得られるチタンを含む水性液であれば、従来公知のものを特に制限なしに使用することができる。具体的には、下記のものを挙げることができる。
(i)含水酸化チタンのゲルまたはゾルに過酸化水素水を添加して得られるチタニルイオン過酸化水素錯体またはチタン酸(ペルオキソチタン水和物)水溶液(特開昭63−35419号公報、特開平1−224220号公報参照)。
(ii)塩化チタンや硫酸チタンの水溶液と塩基性溶液から製造した水酸化チタンゲルに過酸化水素水を作用させ、合成することで得られるチタニア膜形成用液体(特開平9−71418号公報、特開平10−67516号公報参照)。
このチタニア膜形成用液体を得る場合、チタンと塩を形成する基を有する塩化チタンや硫酸チタンの水溶液とアンモニアや苛性ソーダなどのアルカリ溶液とを反応させることによりオルトチタン酸と呼ばれる水酸化チタンゲルを沈殿させる。次いで、水を用いたデカンテーションによって水酸化チタンゲルを分離し、良く水洗し、さらに過酸化水素水を加え、余分な過酸化水素を分解除去することにより、黄色透明粘性液体を得ることができる。
沈殿した上記オルトチタン酸は、OHどうしの重合や水素結合によって高分子化したゲル状態にあり、そのままではチタンを含む水性液としては使用できない。このゲルに過酸化水素水を添加するとOHの一部が過酸化状態になり、ペルオキソチタン酸イオンとして溶解或いは高分子鎖が低分子に分断された一種のゾル状態になり、余分な過酸化水素は水と酸素になって分解し、無機膜形成用のチタンを含む水性液として使用できるようになる。
このゾルはチタン原子以外に酸素原子と水素原子しか含まないので、乾燥や焼成によって酸化チタンに変化する場合、水と酸素しか発生しないため、ゾルゲル法や硫酸塩などの熱分解に必要な炭素成分やハロゲン成分の除去が必要でなく、低温でも比較的密度の高い酸化チタン膜を形成することができる。
(iii)塩化チタンや硫酸チタンの無機チタン化合物水溶液に過酸化水素を加えてぺルオキソチタン水和物を生成させた後に、塩基性物質を添加して得られた溶液を放置または加熱することによってペルオキソチタン水和物重合体の沈殿物を生成させ、次いで、少なくともチタン含有原料溶液に由来する水以外の溶解成分を除去した後に過酸化水素を作用させて得られるチタン酸化物形成用溶液(特開2000−247638号公報、特開2000−247639号公報参照)。
チタン化合物として加水分解性チタン化合物および/またはその低縮合物(以下、説明の便宜上「加水分解性チタン化合物a」という)を用いるチタン含有水性液(A)は、加水分解性チタン化合物aを過酸化水素水と反応温度1〜70℃で10分間〜20時間程度反応させることにより得ることができる。
この加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)は、加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水とを反応させることにより、加水分解性チタン化合物aが水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで、この水酸基含有チタン化合物に過酸化水素が配位するものと考えられ、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域での安定性が極めて高く、長期の保存に耐えるキレート液を生成する。従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルは、Ti−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させたチタン含有水性液(A)とは組成及び安定性が本質的に異なる。
また、加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)を80℃以上で加熱処理またはオートクレーブ処理すると、結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。前記加熱処理またはオートクレーブ処理が80℃未満では、酸化チタンの結晶化が十分に進まない。このようにして製造された酸化チタン分散液は、酸化チタン超微粒子の平均粒子径が10nm以下、好ましくは1〜6nm程度が望ましい。酸化チタン超微粒子の平均粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下する(塗布後乾燥して皮膜とした場合、膜厚1μm以上でワレを生じる)ので好ましくない。この酸化チタン分散液の外観は半透明状のものである。このような酸化チタン分散液も、チタン含有水性液(A)として使用することができる。
加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)を含む表面処理組成物(X)を、めっき鋼板表面に塗布・乾燥(例えば、低温で加熱乾燥)することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン含有皮膜(表面処理皮膜)を形成することができる。
表面処理組成物(X)を塗布した後の加熱温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下が好ましく、このような温度で加熱乾燥することにより、水酸基を若干含む非晶質(アモルファス)の酸化チタン含有皮膜が形成できる。
また、上記したような80℃以上の加熱処理またはオートクレーブ処理を経て得られた酸化チタン分散液をチタン含有水性液(A)として用いた場合、表面処理組成物(X)を塗布するだけで結晶性の酸化チタン含有皮膜が形成できるため、加熱処理できない材料のコーティング材として有用である。
また、チタン含有水性液(A)としては、酸化チタンゾルの存在下で、加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水とを反応させて得られるチタン含有水性液(A1)を使用することもできる。
前記酸化チタンゾルは、無定型チタニア微粒子または/およびアナタース型チタニア微粒子が水(必要に応じて、例えばアルコール系、アルコールエーテル系などの水性有機溶剤を添加してもよい)に分散したゾルである。この酸化チタンゾルとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、(i)硫酸チタンや硫酸チタニルなどの含チタン溶液を加水分解して得られる酸化チタン凝集物、(ii)チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物を加水分解して得られる酸化チタン凝集物、(iii)四塩化チタンなどのハロゲン化チタン溶液を加水分解または中和して得られる酸化チタン凝集物、などの酸化チタン凝集物を水に分散した無定型チタニアゾル、或いは前記酸化チタン凝集物を焼成してアナタース型チタン微粒子とし、このものを水に分散したゾルを使用することができる。
前記無定形チタニアの焼成では、少なくともアナタースの結晶化温度以上の温度、例えば、400℃〜500℃以上の温度で焼成すれば、無定形チタニアをアナタース型チタニアに変換させることができる。この酸化チタンの水性ゾルとしては、例えば、TKS−201(商品名,テイカ社製,アナタース型結晶形,平均粒子径6nm)、TA−15(商品名,日産化学社製,アナタース型結晶形)、STS−11(商品名,石原産業社製,アナタース型結晶形)などが挙げられる。
チタン含有水性液(A1)において、上記酸化チタンゾルxとチタン過酸化水素反応物y(加水分解性チタン化合物aと過酸化水素水との反応生成物)との質量比率x/yは、1/99〜99/1、好ましくは約10/90〜90/10の範囲が適当である。質量比率x/yが1/99未満では、安定性、光反応性などの点において酸化チタンゾルを添加した効果が十分に得られず、一方、99/1を超えると造膜性が劣るので好ましくない。
チタン含有水性液(A1)は、酸化チタンゾルの存在下で加水分解性チタン化合物aを過酸化水素水と反応温度1〜70℃で10分間〜20時間程度反応させることにより得ることができる。
チタン含有水性液(A1)の生成形態やその特性は、さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様であるが、特に、酸化チタンゾルを使用することにより、合成時に一部縮合反応が起きて増粘するのが抑えられる。その理由は、縮合反応物が酸化チタンゾルの表面に吸着され、溶液状態での高分子化が抑えられるためであると考えられる。
また、チタン含有水性液(A1)を80℃以上で加熱処理またはオートクレーブ処理すると、結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。この酸化チタン分散液を得るための温度条件、結晶化した酸化チタン超微粒子の粒子径、分散液の外観なども、さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様である。このような酸化チタン分散液も、チタン含有水性液(A1)として使用することができる。
さきに述べた加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)と同様、チタン含有水性液(A1)を含む表面処理組成物(X)を、めっき鋼板表面に塗布・乾燥(例えば、低温で加熱乾燥)することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン含有皮膜(表面処理皮膜)を形成することができる。
表面処理組成物(X)を塗布した後の加熱温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下が好ましく、このような温度で加熱乾燥することにより、水酸基を若干含むアナタース型の酸化チタン含有皮膜が形成できる。
以上述べたように、チタン含有水性液(A)の中でも、加水分解性チタン化合物aを用いたチタン含有水性液(A)やチタン含有水性液(A1)は、貯蔵安定性、耐食性などに優れた性能を有するので、本発明ではこれらを使用することが特に好ましい。
加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物に対する過酸化水素水の配合割合は、チタン化合物10質量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100質量部、望ましく1〜20質量部とすることが好ましい。過酸化水素水の配合割合が過酸化水素換算で0.1質量部未満では、キレート形成が十分でないため白濁沈殿が生じてしまう。一方、100質量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く、貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが、3〜30質量%程度であることが、取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
チタン含有水性液(A)には、必要に応じて、他のゾルや顔料を添加分散させることもできる。例えば、添加物としては、市販の酸化チタンゾルや酸化チタン粉末、マイカ、タルク、シリカ、バリタ、クレーなどが挙げられ、これらの1種以上を添加することができる。
表面処理組成物(X)中でのチタン含有水性液(A)の含有量は、固形分で1〜100g/L、好ましくは5〜50g/Lとすることが、処理液の安定性などの点から好ましい。
上記有機リン酸化合物(B)としては、例えば、1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸などのヒドロキシル基含有有機亜リン酸;2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸などのカルボキシル基含有有機亜リン酸、及びこれらの塩などが好適なものとして挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
有機リン酸化合物(B)は、チタン含有水性液(A)の貯蔵安定性を向上させる効果が大きいが、なかでも、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸はその効果が特に大きいことから、これを使用するのが特に好ましい。
有機リン酸化合物(B)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して固形分の割合で1〜400質量部、特に20〜300質量部とすることが、耐水付着性などの点から好ましい。有機リン酸化合物(B)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1質量部未満では耐食性が劣り、一方、400質量部を超えると、耐水付着性が劣るため好ましくない。
上記ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)は、水に溶解または分散可能なノニオン系ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。カチオン化したエポキシ樹脂では電着塗装時に発生する界面のアルカリとカチオン樹脂が反応し、密着性が低下しやすいため、エポキシ樹脂はノニオン系であることが必要である。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂をノニオン系として水溶化または水分散化させる方法については、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ノニオン系界面活性化剤の存在下にエポキシ樹脂を水中で分散させたエポキシエマルジョンが挙げられる。このようなエポキシ樹脂水分散体を製造する技術は公知の技術であり、例えば、特表平9−510481号においては、(a)1.0反応当量のエポキシ樹脂、(b)0.005〜0.5反応当量のアミン−エポキシ付加生成物、および任意で(c)約0.01〜1.0反応当量の多価フェノールを接触させて製造される硬化性エポキシ樹脂であって、前記アミン−エポキシ付加生成物は1.0当量の脂肪族ポリエポキシドと1.0より多いが約2.5を超えない反応当量のポリオキシアルキレンアミンとを接触させることによって得られるものである硬化性エポキシ樹脂を水と混合することにより水性分散液を製造する方法が開示されている。具体的には、Hexion Specialty Chemicals, Inc.製のエピレッツ水性エポキシ樹脂シリーズがあり、エピレッツ6943、同3510W60、同3515W60、同3519W50、同3520WY55、同3522W60、同3540WY55、同5003W55、同6006W70(いずれも商品名)などが挙げられる。
ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)の数平均分子量は特に規定するものではないが、特に優れた電着塗装密着性を得るという観点からは、好ましくは数平均分子量が1000〜8000、特に好ましくは2000〜5000のものを用いるのが望ましい。本樹脂は、皮膜のバインダーとしての役割も有するが、数平均分子量が1000未満では密着力が劣化傾向となり、一方、8000を超えると成膜性が低下し、密着性も低下傾向となるためである。
ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、固形分の割合で10〜2000質量部、特に100〜1500質量部であることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性、電着塗装密着性、接着強度などの点から好ましい。ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して10質量部未満では耐食性が劣化し、一方、2000質量部を超えると耐食性、電着塗装後密着性が劣化するため好ましくない。
上記バナジン酸化合物(D)は、表面処理組成物により得られる皮膜の防食性を向上させるものであり、例えば、バナジン酸、オルソバナジン酸リチウム、オルソバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ピロバナジン酸ナトリウム、塩化バナジル、硫酸バナジルなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、防食性に効果の大きいメタバナジン酸塩が好ましく、特にメタバナジン酸アンモニウムが好ましい。
バナジン酸化合物(D)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して固形分の割合で1〜400質量部、特に10〜400質量部とすることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性などの点から好ましい。バナジン酸化合物(D)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1質量部未満では耐食性が劣化し、一方、400質量部を超えると、アルカリ脱脂後の耐食性が劣るため好ましくない。
上記フッ化ジルコニウム化合物(E)としては、ジルコニウムフッ化水素酸のナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、ジルコニウムフッ化アンモニウムが、耐水付着性などの点から好ましい。
フッ化ジルコニウム化合物(E)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して固形分の割合で1〜400質量部、特に20〜400質量部とすることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性などの点から好ましい。フッ化ジルコニウム化合物(E)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1質量部未満では耐食性が劣化し、一方、400質量部を超えると、アルカリ脱脂後の耐食性が劣るため好ましくない。
上記炭酸ジルコニウム化合物(F)としては、炭酸ジルコニウムのナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、炭酸ジルコニウムアンモニウムが耐水付着性などの点から好ましい。
炭酸ジルコニウム化合物(F)の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して固形分の割合で1〜400質量部、特に10〜400質量部とすることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性などの点から好ましい。炭酸ジルコニウム化合物(F)の配合量が、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1質量部未満では耐食性が劣化し、一方、400質量部を超えると、アルカリ脱脂後の耐食性が劣るため好ましくない。
表面処理組成物(X)には、さらに必要に応じて、シランカップリング剤を添加することができる。シランカップリング剤としては、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン−塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトピロプルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニリトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、トリメチルクロロシランなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
シランカップリング剤の配合量は、チタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して1〜400質量部、特に10〜400質量部であることが、皮膜をアルカリ脱脂した後の耐食性などの点から好ましい。
表面処理組成物(X)には、さらに必要に応じて、有機微粒子および/または無機微粒子を添加することができる。このような微粒子を添加することにより塗膜の透明性が下がり、薄膜において発生しやすいニジムラ(干渉色)を抑えることができ、外観を重視する用途に特に適したものとなる。上記微粒子は、平均粒子径が3〜1000nm、特に3〜500nmのものが、粒子の沈降安定性および耐食性の点から好ましい。
上記有機微粒子としては、例えば、アクリル、ポリウレタン、ナイロン、ポリエチレングリコールなどの樹脂微粒子が挙げられる。また、無機微粒子としては、例えば、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。コストなどの点から、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウムなどが特に好ましい。
有機微粒子および/または無機微粒子の配合量は、表面処理組成物(X)の固形分中で1〜30質量%、特に1〜20質量%とすることが、耐食性などの点から好ましい。
表面処理組成物(X)には、さらに必要に応じて、無機リン酸化合物、フッ化水素酸などのエッチング剤、本発明が規定する成分以外の重金属化合物、水性有機高分子化合物、増粘剤、界面活性剤、防錆剤(タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾールなど)、着色顔料、体質顔料、シリカ、防錆顔料などを添加することができる。
また、表面処理組成物(X)は、通常水で希釈して使用されるが、必要に応じて、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール系溶剤などの親水性溶剤で希釈してもよい。
表面処理組成物(X)は、中性または酸性領域で安定な液体となるので、特にpH1〜7、特に1〜5の範囲が好ましい。
表面処理組成物(X)により形成される表面処理皮膜の膜厚は、経済性と塗膜性能、特に耐食性や付着性の観点から0.01〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.7μmとする。膜厚が0.01μm未満では十分な耐食性が得られず、一方、1.0μmを超えると溶接性、アルカリ脱脂後の耐食性が劣化する。
本発明の表面処理鋼板は、上記表面処理皮膜の上部に有機系皮膜を形成することで、さらに耐食性を向上させることができる。
この有機系皮膜は、皮膜厚が0.1〜5.0μmの皮膜であり、クロム(但し、不可避不純物としてのクロムを除く)を全く含まない。有機系皮膜の成分に特別な制限はないが、特に耐食性の観点からは、樹脂組成物の主成分が、皮膜形成有機樹脂(G)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)からなる活性水素含有化合物(H)との反応生成物(=基体樹脂(R))である塗料組成物を塗布し、乾燥することにより形成されたものであることが好ましい。以下、この好ましい実施形態の有機系皮膜について説明する。
皮膜形成有機樹脂(G)の種類としては、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)からなる活性水素含有化合物(H)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(H)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はない。この皮膜形成有機樹脂(G)としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、およびこれらの樹脂の付加物または縮合物などを挙げることができ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
また、皮膜形成有機樹脂(G)としては、反応性、反応の容易さ、防食性などの点から、樹脂中にエポキシ基を含有するエポキシ基含有樹脂(J)が特に好ましい。このエポキシ基含有樹脂(J)としては、一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)からなる活性水素含有化合物(H)と反応して、皮膜形成有機樹脂に活性水素含有化合物(H)が付加、縮合などの反応により結合でき、且つ皮膜を適切に形成できる樹脂であれば特別な制約はなく、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂、およびこれらの樹脂の付加物若しくは縮合物などが挙げられ、これらのエポキシ基含有樹脂の1種を単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
また、これらのエポキシ基含有樹脂(J)の中でも、めっき表面との密着性、耐食性の点からエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂が特に好適である。またその中でも、酸素などの腐食因子に対して優れた遮断性を有する熱硬化性のエポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂が最適であり、とりわけ高度な導電性およびスポット溶接性を得るために皮膜の付着量を低レベルにする場合には特に有利である。
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか、若しくはこのグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、特に低温での皮膜形成性を必要とする場合には、数平均分子量が1500以上であることが好適である。
上記変性エポキシ樹脂としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基または水酸基に各種変性剤を反応させた樹脂を挙げることができ、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸またはメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などを例示できる。
上記エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂としては、エポキシ基を有する不飽和モノマーとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを必須とする重合性不飽和モノマー成分とを、溶液重合法、エマルション重合法または懸濁重合法などによって合成した樹脂を挙げることができる。
上記重合性不飽和モノマー成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−,iso−若しくはtert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のC1〜24アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのC1〜4アルキルエーテル化物;N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることができる。
また、エポキシ基を有する不飽和モノマーとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなど、エポキシ基と重合性不飽和基を持つものであれば特別な制約はない。
また、このエポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などによって変性させた樹脂とすることもできる。
前記エポキシ樹脂として特に好ましいのは、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応生成物である下式に示される化学構造を有する樹脂であり、このエポキシ樹脂は特に耐食性に優れているため好ましい。
Figure 2008274419
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂の製造法は当業界において広く知られている。また、上記化学構造式において、qは0〜50、好ましくは1〜40、特に好ましくは2〜20である。
なお、皮膜形成有機樹脂(G)は、有機溶剤溶解型、有機溶剤分散型、水溶解型、水分散型のいずれであってもよい。
本実施形態の有機系皮膜は、皮膜形成有機樹脂(G)の分子中にヒドラジン誘導体を付与することを狙いとしており、このため活性水素含有化合物(H)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)であることが必要である。
皮膜形成有機樹脂(G)がエポキシ基含有樹脂である場合、そのエポキシ基と反応する活性水素含有化合物(H)として例えば以下に示すようなものを例示でき、これらの1種または2種以上を使用できるが、この場合も活性水素含有化合物(H)の少なくとも一部(好ましくは全部)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体であることが必要である。
・活性水素を有するヒドラジン誘導体
・活性水素を有する第1級または第2級のアミン化合物
・アンモニア、カルボン酸などの有機酸
・塩化水素などのハロゲン化水素
・アルコール類、チオール類
・活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤
前記活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物;
(2)ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物;
(3)1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなどのトリアゾール化合物;
(4)5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなどのテトラゾール化合物;
(5)5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物;
(6)マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなどのピリダジン化合物
また、これらのなかでも、5員環または6員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適である。
これらのヒドラジン誘導体は1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
活性水素含有化合物(H)の一部として使用できる上記活性水素を有するアミン化合物の代表例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(a)ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどの1個の2級アミノ基と1個以上の1級アミノ基を含有するアミン化合物の1級アミノ基を、ケトン、アルデヒド若しくはカルボン酸と例えば100〜230℃程度の温度で加熱反応させてアルジミン、ケチミン、オキサゾリン若しくはイミダゾリンに変性した化合物;
(b)ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−または−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;
(c)モノエタノールアミンのようなモノアルカノールアミンとジアルキル(メタ)アクリルアミドとをミカエル付加反応により付加させて得られた第2級アミン含有化合物;
(d)モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−ヒドロキシ−2′(アミノプロポキシ)エチルエーテルなどのアルカノールアミンの1級アミノ基をケチミンに変性した化合物;
活性水素含有化合物(H)の一部として使用できる上記4級塩化剤は、活性水素を有しないヒドラジン誘導体または第3級アミンはそれ自体ではエポキシ基と反応性を有しないので、これらをエポキシ基と反応可能とするために酸との混合物としたものである。4級塩化剤は、必要に応じて水の存在下でエポキシ基と反応し、エポキシ基含有樹脂と4級塩を形成する。
4級塩化剤を得るために使用される酸は、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれでもよい。また、4級塩化剤を得るために使用される活性水素を有しないヒドラジン誘導体としては、例えば3,6−ジクロロピリダジンなどを、また、第3級アミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
皮膜形成有機樹脂(G)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)からなる活性水素含有化合物(H)との反応生成物は、皮膜形成有機樹脂(G)と活性水素含有化合物(H)とを10〜300℃、好ましくは50〜150℃で約1〜8時間程度反応させて得られる。
この反応は有機溶剤を加えて行ってもよく、使用する有機溶剤の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの水酸基を含有するアルコール類やエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを例示でき、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、これらのなかでエポキシ樹脂との溶解性、塗膜形成性などの面からは、ケトン系またはエーテル系の溶剤が特に好ましい。
皮膜形成有機樹脂(G)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)からなる活性水素含有化合物(H)との配合比率は、固形分の割合で皮膜形成有機樹脂(G)100質量部に対して、活性水素含有化合物(H)を0.5〜20質量部、特に好ましくは1.0〜10質量部とするのが望ましい。
また、皮膜形成有機樹脂(G)がエポキシ基含有樹脂(J)である場合には、エポキシ基含有樹脂(J)と活性水素含有化合物(H)との配合比率は、活性水素含有化合物(H)の活性水素基の数とエポキシ基含有樹脂(J)のエポキシ基の数との比率[活性水素基数/エポキシ基数]が0.01〜10、より好ましくは0.1〜8、さらに好ましくは0.2〜4とすることが耐食性などの点から適当である。
また、活性水素含有化合物(H)中における活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)の割合は10〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%、さらに好ましくは40〜100モル%とすることが適当である。活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)の割合が10モル%未満では有機皮膜に十分な防錆機能を付与することができず、得られる防錆効果は皮膜形成有機樹脂とヒドラジン誘導体を単に混合して使用した場合と大差なくなる。
本実施形態では、緻密なバリア皮膜を形成するために、樹脂組成物中に硬化剤を配合し、有機系皮膜(上層皮膜)を加熱硬化させることが望ましい。
樹脂組成物皮膜を形成する場合の硬化方法としては、(1)イソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を利用する硬化方法、(2)メラミン、尿素およびベンゾグアナミンの中から選ばれた1種以上にホルムアルデヒドを反応させてなるメチロール化合物の一部若しくは全部に炭素数1〜5の1価アルコールを反応させてなるアルキルエーテル化アミノ樹脂と基体樹脂中の水酸基との間のエーテル化反応を利用する硬化方法、が適当であるが、このうちイソシアネートと基体樹脂中の水酸基とのウレタン化反応を主反応とすることが特に好適である。
上記(1)の硬化方法で用いるポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環族(複素環を含む)または芳香族イソシアネート化合物、若しくはそれらの化合物を多価アルコールで部分反応させた化合物が好ましい。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば以下のものが例示できる。
(i)m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、o−またはp−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート
(ii)上記(i)の化合物単独またはそれらの混合物と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなど)との反応生成物であって、1分子中に少なくとも2個のイソシアネートが残存する化合物
これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
また、ポリイソシアネート化合物の保護剤(ブロック剤)としては、例えば、
(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコールなどの脂肪族モノアルコール類
(2)エチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールのモノエーテル類、例えば、メチル、エチル、プロピル(n−,iso)、ブチル(n−,iso,sec)などのモノエーテル
(3)フェノール、クレゾールなどの芳香族アルコール
(4)アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム
などが使用でき、これらの1種または2種以上と前記ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、少なくとも常温下で安定に保護されたポリイソシアネート化合物を得ることができる。
このようなポリイソシアネート化合物(K)は、硬化剤として基体樹脂(R)に対し、好ましくは(R)/(K)=95/5〜55/45(不揮発分の重量比)、さらに好ましくは(R)/(K)=90/10〜65/35の割合で配合するのが適当である。ポリイソシアネート化合物(K)の配合量が(R)/(K)=95/5よりも少ないと、硬化剤としての効果が不足する場合がある。また、ポリイソシアネート化合物(K)には吸水性があるので、(R)/(K)=55/45よりも多く配合すると上層皮膜の密着性を劣化させてしまい、さらに、上層皮膜上に上塗り塗装を行った場合、未反応のポリイソシアネート化合物が塗膜中に移動し、塗膜の硬化阻害や密着性不良を起こしてしまう。
なお、基体樹脂(R)は以上のような架橋剤(硬化剤)の添加により十分に架橋するが、さらに低温架橋性を増大させるため、公知の硬化促進触媒を使用することが望ましい。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマスなどが使用できる。
また、例えば皮膜形成有機樹脂(G)にエポキシ基含有樹脂を使用する場合、付着性など若干の物性向上を狙いとして、エポキシ基含有樹脂とともに公知のアクリル、アルキッド、ポリエステルなどの樹脂を混合して用いることもできる。
有機系皮膜(塗料組成物)には、耐食性向上を目的として、必要に応じて非クロム系防錆添加剤を含有させることができる。有機系皮膜中にこのような非クロム系防錆添加剤を含有させることにより、より優れた防食性能を得ることができる。
この非クロム系防錆添加剤は特に下記(a)〜(e)の中から選ばれる1つ以上を用いることが好ましい。
(a)酸化ケイ素
(b)カルシウム化合物
(c)難溶性リン酸化合物
(d)モリブデン酸化合物
(e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の、S原子を含有する有機化合物
これら(a)〜(e)の非クロム系防錆添加剤の詳細および防食機構は、以下のとおりである。
まず、上記(a)の成分としては微粒子シリカであるコロイダルシリカや乾式シリカを使用することができるが、耐食性の観点からは特に、カルシウムをその表面に結合させたカルシウムイオン交換シリカを使用するのが望ましい。
コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学(株)製のスノーテックスO、20、30、40、C、S(いずれも商品名)を用いることができ、また、ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル(株)製のAEROSIL
R971、R812、R811、R974、R202、R805、130、200、300、300CF(いずれも商品名)を用いることができる。また、カルシウムイオン交換シリカとしては、W.R.Grace&Co.製のSHIELDEX C303、SHIELDEX
AC3、SHIELDEX AC5(いずれも商品名)、富士シリシア化学(株)製のSHIELDEX、SHIELDEX SY710(いずれも商品名)などを用いることができる。これらシリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制する。
また、上記(b)、(c)の成分は沈殿作用によって特に優れた防食性能(自己補修性)を発現する。
上記(b)の成分であるカルシウム化合物は、カルシウム酸化物、カルシウム水酸化物、カルシウム塩のいずれでもよく、これらの1種または2種以上を使用できる。また、カルシウム塩の種類にも特に制限はなく、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのようなカチオンとしてカルシウムのみを含む単塩のほか、リン酸カルシウム・亜鉛、リン酸カルシウム・マグネシウムなどのようなカルシウムとカルシウム以外のカチオンを含む複塩を使用してもよい。この(b)の成分は、腐食環境下においてめっき金属である亜鉛やアルミニウムよりも卑なカルシウムが優先溶解し、これがカソード反応により生成したOHと緻密で難溶性の生成物として欠陥部を封鎖し、腐食反応を抑制する。また、上記のようなシリカとともに配合された場合には、表面にカルシウムイオンが吸着し、表面電荷を電気的に中和して凝集する。その結果、緻密で且つ難溶性の保護皮膜が生成して腐食が封鎖し、腐食反応を抑制する。
また、上記(c)である難溶性リン酸化合物としては、難溶性リン酸塩を用いることができる。この難溶性リン酸塩は単塩、複塩などの全ての種類の塩を含む。また、それを構成する金属カチオンに限定はなく、難溶性のリン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどのいずれの金属カチオンでもよい。また、リン酸イオンの骨格や縮合度などにも限定はなく、正塩、二水素塩、一水素塩または亜リン酸塩のいずれでもよく、さらに、正塩はオルトリン酸塩の他、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。この難溶性リン化合物を用いることにより、腐食によって溶出しためっき金属の亜鉛やアルミニウムと、加水分解により解離したリン酸イオンとが錯形成反応し、緻密で且つ難溶性の保護皮膜が生成することによって腐食起点が封鎖され、腐食反応が抑制される。
また、上記(d)のモリブデン酸化合物としては、例えば、モリブデン酸塩を用いることができる。このモリブデン酸塩は、その骨格、縮合度に限定はなく、例えばオルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩などが挙げられる。また、単塩、複塩などの全ての塩を含み、複塩としてはリンモリブデン酸塩などが挙げられる。モリブデン酸化合物は不動態化効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食環境下で溶存酸素と共にめっき皮膜表面に緻密な酸化物を形成することで腐食起点を封鎖し、腐食反応を抑制する。
また、上記(e)の有機化合物としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。すなわち、トリアゾール類としては、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾールなどが、またチオール類としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2−メルカプトベンツイミダゾールなどが、またチアジアゾール類としては、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどが、またチアゾール類としては、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール類などが、またチウラム類としては、テトラエチルチウラムジスルフィドなどが、それぞれ挙げられる。これらの有機化合物は吸着効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食によって溶出した亜鉛やアルミニウムがこれらの有機化合物が有する硫黄を含む極性基に吸着して不活性皮膜を形成することで腐食起点を封鎖し、腐食反応を抑制する。
非クロム系防錆添加剤の配合量は、皮膜形成用の樹脂組成物の固形分100質量部に対して、固形分の割合で0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜30質量部とするのが適当である。この非クロム系防錆添加剤の配合量が0.1質量部未満では、アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が十分に得られず、一方、50質量部を超えると塗装性、加工性および溶接性が低下するだけでなく、耐食性も低下するので好ましくない。
なお、上記(a)〜(e)の防錆添加剤を2種以上複合添加してもよく、この場合にはそれぞれ固有の防食作用が複合化されるため、より高度の耐食性が得られる。特に、上記(a)の成分としてカルシウムイオン交換シリカを用い、且つこれに(c)、(d)、(e)の成分の1種以上、特に好ましくは(c)〜(e)の成分の全部を複合添加した場合に特に優れた耐食性が得られる。
また、有機系皮膜(塗料組成物)中には上記の防錆添加成分に加えて、腐食抑制剤として、他の酸化物微粒子(例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモンなど)、リンモリブデン酸塩(例えば、リンモリブデン酸アルミニウムなど)、有機リン酸及びその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩、及びこれらの金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩など)などの1種または2種以上を添加できる。
有機系皮膜(塗料組成物)中には、さらに必要に応じて、皮膜の加工性を向上させる目的で固形潤滑剤を配合することができる。
好適な固形潤滑剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
(1)ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス:例えば、ポリエチレンワックス、合成パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭化水素など
(2)フッ素樹脂微粒子:例えば、ポリフルオロエチレン樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂など)、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂など
また、この他にも、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドなど)、金属石けん類(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムなど)、金属硫化物(例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなど)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩などの1種または2種以上を用いてもよい。
以上の固形潤滑剤の中でも、特に、ポリエチレンワックス、フッ素樹脂微粒子(なかでも、ポリ4フッ化エチレン樹脂微粒子)が好適である。
ポリエチレンワックスとしては、例えば、クラリアントジャパン(株)製のセリダスト9615A、セリダスト3715、セリダスト3620、セリダスト3910(いずれも商品名)、三洋化成(株)製のサンワックス131−P、サンワックス161−P(いずれも商品名)、三井化学(株)製のケミパールW−100、ケミパールW−200、ケミパールW−500、ケミパールW−800、ケミパールW−950(いずれも商品名)などを用いることができる。
また、フッ素樹脂微粒子としては、テトラフルオロエチレン微粒子が最も好ましく、例えば、ダイキン工業(株)製のルブロンL−2、ルブロンL−5(いずれも商品名)、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のMP1100、MP1200(いずれも商品名)、旭硝子(株)製のフルオンディスパージョン
AD1、フルオンディスパージョン AD2、フルオン L141J、フルオン L150J、フルオン L155J(いずれも商品名)などが好適である。
また、これらのなかで、ポリオレフィンワックスとテトラフルオロエチレン微粒子の併用により特に優れた潤滑効果が期待できる。
有機系皮膜中での固形潤滑剤は、多く配合するほど潤滑性向上効果が大きくなるが、その他の皮膜性能を満足する範囲で添加するのが好ましく、皮膜形成用の樹脂組成物の固形分100質量部に対して、固形分の割合で好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは1〜10質量部とすることが望ましい。固形潤滑剤の配合量が1質量部未満では潤滑性向上効果が乏しく、一方、配合量が30質量部を超えると塗装性が低下するので好ましくない。
有機系皮膜(塗料組成物)は、皮膜形成有機樹脂(G)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)からなる活性水素含有化合物(H)との反応生成物(樹脂組成物)を主成分とし、これに必要に応じて硬化剤、非クロム系防錆添加剤、固形潤滑剤などが添加されるが、さらに必要に応じて、添加剤として、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料など)、着色染料(例えば、有機溶剤可溶性アゾ系染料、水溶性アゾ系金属染料など)、無機顔料(例えば、酸化チタンなど)、キレート剤(例えば、チオールなど)、導電性顔料(例えば、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫など)、カップリング剤(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤など)、メラミン・シアヌル酸付加物などの1種または2種以上を添加することができる。
また、上記主成分および添加成分を含む皮膜形成用の塗料組成物は、通常、溶媒(有機溶剤および/または水)を含有し、さらに必要に応じて中和剤などが添加される。
上記有機溶剤としては、前記皮膜形成有機樹脂(G)と活性水素含有化合物(H)との反応生成物を溶解または分散でき、塗料組成物として調整できるものであれば特別な制約なく、例えば、先に例示した種々の有機溶剤を使用することができる。
前記中和剤は、皮膜形成有機樹脂(G)を中和して水性化するために必要に応じて配合されるものであり、皮膜形成有機樹脂(G)がカチオン性樹脂である場合には酢酸、乳酸、蟻酸などの酸を中和剤として使用することができる。
有機系皮膜の皮膜厚は、好ましくは0.1〜5.0μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmとする。有機系皮膜の皮膜厚が0.1μm未満では耐食性向上効果が不十分であり、一方、膜厚が5.0μmを超えると溶接性や電着塗装密着性が低下する。
次に、本発明の表面処理鋼板の製造方法について説明する。
亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に表面処理皮膜を形成するには、上述した組成を有する表面処理組成物(処理液)を乾燥皮膜厚が上記範囲となるようにめっき鋼板面に塗布し、水洗することなく加熱乾燥させる。
表面処理組成物をめっき鋼板面にコーティングする方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法のいずれでもよい。塗布処理方法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどいずれの方法でもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理または浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
表面処理組成物をコーティングした後は、水洗することなく加熱乾燥を行う。加熱乾燥手段としては、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱乾燥は到達板温で好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは40℃〜140℃の範囲で行うことが望ましい。加熱乾燥温度が30℃未満では皮膜中に水分が多量に残り、耐食性が不十分となりやすい。一方、加熱乾燥温度が200℃を超えると、非経済的であるだけでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下しやすい。
上記のようにして形成された表面処理皮膜の上層に、第二層皮膜として有機系皮膜を形成することで、格段に優れた耐食性を発揮する。有機系皮膜用の塗料組成物を上述した膜厚となるよう表面処理皮膜面に塗布し、加熱乾燥させる。塗料組成物の塗布は、上述した表面処理皮膜の形成に用いた方法に準じて行えばよい。
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施しても構わない。加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱乾燥は到達板温で30〜300℃、好ましくは40℃〜140℃の範囲で行うことが望ましい。加熱乾燥温度が30℃未満では皮膜中に水分や有機溶剤が多量に残り、耐食性が不十分となりやすい。一方、加熱乾燥温度が300℃を超えると、非経済的であるだけでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下しやすい。
なお、本発明が規定する皮膜形態はめっき鋼板の片面、両面のいずれに形成してもよく、めっき鋼板表裏面の皮膜形態の組み合わせとしては、例えば、表面処理皮膜+有機系皮膜/無処理、表面処理皮膜+有機系皮膜/表面処理皮膜、表面処理皮膜+有機系皮膜/表面処理皮膜+有機系皮膜など、任意の形態とすることができる。
[表面処理皮膜(第一層)用の表面処理組成物]
表面処理組成物に用いたチタン含有水性液A1〜A7、有機リン酸化合物B1〜B6、水性有機樹脂C1〜C6、バナジン酸化合物D1〜D3、フッ化ジルコニウム化合物E1〜E3、炭酸ジルコニウム化合物F1〜F3を以下に示す。これらの成分を表1および表2に示す割合で配合し、表面処理組成物P1〜P49を得た。
(1)チタン含有水性液A1〜A7の製造
・製造例1
四塩化チタン60%溶液5ccを蒸留水で500ccとした溶液にアンモニア水(1:9)を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた。蒸留水で洗浄後、過酸化水素水30%溶液を10cc加えてかき混ぜ、チタンを含む黄色半透明の粘性のあるチタン含有水性液A1を得た。
・製造例2
テトラiso−プロポキシチタン10質量部とiso−プロパノール10質量部の混合物を30%過酸化水素水10質量部と脱イオン水100質量部の混合物中に20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し、黄色透明の少し粘性のあるチタン含有水性液A2を得た。
・製造例3
製造例2で使用したテトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラn−ブトキシチタンを使用した以外は製造例2と同様の製造条件で、チタン含有水性液A3を得た。
・製造例4
製造例2で使用したテトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラiso−プロポキシチタンの3量体を使用した以外は製造例2と同様の製造条件で、チタン含有水性液A4を得た。
・製造例5
製造例2に対して過酸化水素水を3倍量用い、50℃で1時間かけて滴下し、さらに60℃で3時間熟成した以外は製造例2と同様の製造条件で、チタン含有水性液A5を得た。
・製造例6
製造例3で製造したチタン含有水性液A3を、さらに95℃で6時間加熱処理することにより、白黄色の半透明なチタン含有水性液A6を得た。
・製造例7
テトラiso−プロポキシチタン10質量部とiso−プロパノール10質量部の混合物を、「TKS−203」(商品名,テイカ社製,酸化チタンゾル)5質量部(固形分)、30%過酸化水素水10質量部及び脱イオン水100質量部の混合物中に10℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後10℃で24時間熟成し、黄色透明の少し粘性のあるチタン含有水性液A7を得た。
(2)有機リン酸化合物B1〜B6
B1:1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸
B2:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
B3:1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸
B4:2−ヒドロキシホスホノ酢酸
B5:3−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸
B6:2−ヒドロキシホスホノ酢酸カリウム
(3)水性(水溶性又は水分散性)有機樹脂C1〜C6
C1:「エピレッツ6943」(商品名,Hexion Specialty Chemicals, Inc.製,ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂),数平均分子量:370
C2:「エピレッツ3520WY55」(商品名,Hexion Specialty Chemicals, Inc.製,ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂),数平均分子量:900
C3:「エピレッツ3540WY55」(商品名,Hexion Specialty Chemicals, Inc.製,ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂),数平均分子量:2900
C4:「アデカレジンEM−0718」(商品名,(株)ADEKA製,カチオン系水性エポキシ樹脂)
C5:「スーパーフレックスE−2500」(商品名,第一工業製薬社製,水性ポリウレタン樹脂)
C6:「バイロナールMD−1100」(商品名,東洋紡績社製,水性ポリエステル樹脂)
(4)バナジン酸化合物D1〜D3
D1:メタバナジン酸アンモニウム
D2:メタバナジン酸ナトリウム
D3:メタバナジン酸カリウム
(5)フッ化ジルコニウム化合物E1〜E3
E1:ジルコニウムフッ化アンモニウム
E2:ジルコニウムフッ化ナトリウム
E3:ジルコニウムフッ化カリウム
(6)炭酸ジルコニウム化合物F1〜F3
F1:炭酸ジルコニウムアンモニウム
F2:炭酸ジルコニウムナトリウム
F3:炭酸ジルコニウムリチウム
[有機系皮膜(第二層)用の塗料組成物]
有機系皮膜用の塗料組成物に用いた基体樹脂R1〜R4、硬化剤K1〜K4、硬化触媒N1〜N4、防錆添加剤L1〜L6、固形潤滑剤M1〜M3を以下に示す。
基体樹脂R1〜R4に対して、硬化剤K1〜K4、硬化触媒N1〜N4を適宜配合して表3に示す樹脂組成物S1〜S12を得た。なお、S13,S14は市販の有機樹脂である。
表3に示す樹脂組成物に対して、防錆添加剤L1〜L6、固形潤滑剤M1〜M3を適宜配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて所定時間撹拌することで、表4に示す有機系皮膜形成用の塗料組成物Q1〜Q32を調製した。
(1)基体樹脂R1〜R4の合成
<合成例1>
jER828(ジャパンエポキシレジン(株)製,エポキシ当量187)1870質量部とビスフェノールA912質量部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2質量部、メチルイソブチルケトン300質量部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル1500質量部を加えてから100℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(分子量96)を96質量部とジブチルアミン(分子量129)を129質量部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン205質量部を加えて、固形分60%のピラゾール変性エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂R1とする。この基体樹脂R1は、皮膜形成有機樹脂(G)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)を50mol%含む活性水素含有化合物(H)との反応生成物である。
<合成例2>
jER1007(ジャパンエポキシレジン(株)製,エポキシ当量2000)4000質量部とエチレングリコールモノブチルエーテル2239質量部を四つ口フラスコに仕込み、120℃まで昇温して1時間で完全にエポキシ樹脂を溶解した。このものを100℃に冷却し、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(分子量84)を168質量部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン540質量部を加えて、固形分60%のトリアゾール変成エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂R2とする。この基体樹脂R2は、皮膜形成有機樹脂(G)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)を100mol%含む活性水素含有化合物(H)との反応生成物である。
<合成例3>
イソホロンジイソシアネート(イソシアネート当量111)222質量部とメチルイソブチルケトン34質量部を四つ口フラスコに仕込み、30〜40℃に保ってメチルエチルケトキシム(分子量87)87質量部を3時間かけて滴下後、40℃に2時間保ち、イソシアネート当量309、固形分90%の部分ブロックイソシアネートを得た。
次いで、jER828(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量187)1496質量部とビスフェノールA684質量部、テトラエチルアンモニウムブロマイド1質量部、メチルイソブチルケトン241質量部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1090、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、メチルイソブチルケトン1000質量部を加えてから100℃に冷却し、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(分子量101)を202質量部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、上記固形分90%の部分ブロックイソシアネートを230質量部加え100℃で3時間反応させ、イソシアネート基が消失したことを確認した。さらに、エチレングリコールモノブチルエーテル461質量部を加えて、固形分60%のトリアゾール変成エポキシ樹脂を得た。これを基体樹脂R3とする。この基体樹脂R3は、皮膜形成有機樹脂(G)と、活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)を100mol%含む活性水素含有化合物(H)との反応生成物である。
<合成例4>
jER828(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量187)1870質量部とビスフェノールA912質量部、テトラエチルアンモニウムブロマイド2質量部、メチルイソブチルケトン300質量部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して4時間反応させ、エポキシ当量1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル1500質量部を加えてから100℃に冷却し、ジブチルアミン(分子量129)を258質量部加えて、エポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン225質量部を加えて、固形分60%のエポキシアミン付加物を得た。これを基体樹脂R4とする。この基体樹脂R4は、皮膜形成有機樹脂と、活性水素を有するヒドラジン誘導体を含まない活性水素含有化合物との反応生成物である。
(2)硬化剤K1〜K4
K1:「タケネート B−870N」(商品名,三井化学ポリウレタン(株)製,IPDIのMEKオキシムブロック体)
K2:「スミジュールBL3175」(商品名,住化バイエルウレタン(株),イソシヌレートタイプブロクイソシアネート)
K3:「デュラネート MF−B80M」(商品名,旭化成ケミカルズ,HMDIのMEKオキシムブロック体)
K4:「サイメル 325」(商品名,日本サイテックインダストリーズ(株)製,イミノ基型メラミン樹脂)
(3)硬化触媒N1〜N4
N1:ジブチル錫ジラウレート
N2:ナフテン酸コバルト
N3:塩化第一錫
N4:N−エチルモルホリン
(4)防錆添加剤L1〜L6
L1:カルシウムイオン交換シリカ
L2:コロイダルシリカ
L3:ヒュームドシリカ
L4:トリポリリン酸ニ水素アルミニウム
L5:リンモリブデン酸アルミニウム
L6:デトラエチルチウラムジスルフィド
(5)固形潤滑剤M1〜M3
M1:「LUVAX1151」(商品名,日本精蝋社製,ポリエチレンワックス)
M2:「セリダスト3620」(商品名,クラリアントジャパン(株),ポリエチレンワックス)
M3:「MP1100」(商品名,三井・デュポンフロロケミカル(株)製,テトラフルオロエチレン微粒子)
[表面処理鋼板の製造]
冷延鋼板をベースとした家電、建材、自動車部品用のめっき鋼板である、表5に示すめっき鋼板を処理原板として用いた。なお、鋼板の板厚は評価の目的に応じて所定の板厚のものを採用した。このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥した後、上記表面処理組成物をロールコーターにより塗布し、各種温度で加熱乾燥した。皮膜厚は、表面処理組成物の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度など)により調整した。
次いで、上記有機系皮膜形成用の塗料組成物をロールコーターにより塗布し、各種温度で加熱乾燥した。皮膜厚は、塗料組成物の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度など)により調整した。
得られた表面処理鋼板の皮膜組成と品質性能(耐白錆性、アルカリ脱脂後の耐白錆性、電着塗装密着性、溶接性)を評価した結果を表6〜表9に示す。なお、品質性能の評価は以下のようにして行った。
(1)耐白錆性
各サンプルについて、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、単層皮膜については200時間後、二層皮膜については500時間後の白錆発生面積率で評価した。その評価基準は以下のとおりである。
◎ :白錆発生面積率5%未満
○ :白錆発生面積率5%以上、10%未満
○−:白錆発生面積率10%以上、250%未満
△ :白錆発生面積率25%以上、50%未満
× :白錆発生面積率50%以上
(2)アルカリ脱脂後の耐白錆性
各サンプルについて、日本パーカラインジング(株)製のアルカリ処理液「CLN−364S」を用いて、60℃、2分間スプレー処理の条件でアルカリ脱脂した後、塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)を施し、単層皮膜については100時間後、二層皮膜については300時間後の白錆発生面積率で評価した。その評価基準は以下のとおりである。
◎ :白錆発生面積率5%未満
○ :白錆発生面積率5%以上、10%未満
○−:白錆発生面積率10%以上、250%未満
△ :白錆発生面積率25%以上、50%未満
× :白錆発生面積率50%以上
(3)電着塗装密着性
各サンプルにカチオン系電着塗料(関西ペイント(株)製「GT−10」)を膜厚30μmとなるように塗装した後、130℃×30分の焼付を行った。塗装したサンプルを温水(40℃)中に240時間浸漬し、直ちに碁盤目(10×10個、1mm間隔)のカットを入れて接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積率を測定した。その評価基準は以下のとおりである。
◎ :剥離なし
○ :剥離面積率5%未満
△ :剥離面積率5%以上、20%未満
× :剥離面積率20%以上
(4)溶接性
各サンプルについて、使用電極:CF型Cr−Cu電極、加圧力:200kgf、通電時間:10サイクル/50Hz、溶接電流:10kAの条件で連続打点性の溶接試験を行い、連続打点数で評価した。その評価基準は以下のとおりである。
◎ :2000点以上
○ :1000点以上、2000点未満
△ :500点以上、1000点未満
× :500点未満
表6〜表9によれば、本発明例は耐白錆性およびアルカリ脱脂後の耐白錆性(耐食性)、電着塗装密着性、溶接性のいずれにも優れている。一方、比較例では、耐白錆性およびアルカリ脱脂後の耐白錆性(耐食性)、電着塗装密着性、溶接性のいずれか一つ以上が本発明例に較べて劣っている。
表1および表2において、*1〜*7は以下の内容を示す。
*1 明細書本文に記載のチタン含有水性液A1〜A7
*2 明細書本文に記載の有機リン酸化合物B1〜B6
*3 明細書本文に記載の水性有機樹脂C1〜C6
*4 明細書本文に記載のバナジン酸化合物D1〜D3
*5 明細書本文に記載のフッ化ジルコニウム化合物E1〜E3
*6 明細書本文に記載の炭酸ジルコニウム化合物F1〜F3
*7 固形分の質量部
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表6〜表9において、*1〜*3は以下の内容を示す。
*1 表5に記載のめっき鋼板T1〜T9
*2 表1および表2に記載の表面処理組成物P1〜P49
*3 表4に記載の塗料組成物Q1〜Q32
Figure 2008274419
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Claims (10)

  1. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、有機リン酸化合物(B)を1〜400質量部、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)を固形分で10〜2000質量部、バナジン酸化合物(D)を1〜400質量部、フッ化ジルコニウム化合物(E)を1〜400質量部、炭酸ジルコニウム化合物(F)を1〜400質量部含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥させることにより形成された皮膜厚が0.01〜1.0μmの表面処理皮膜を有することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
  2. ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)の数平均分子量が1000〜8000であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
  3. ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)がポリオキシアルキレン鎖を有する水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
  4. 表面処理皮膜の上層に、さらに、皮膜厚が0.1〜5.0μmの有機系皮膜を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
  5. 有機系皮膜の樹脂組成物の主成分が、皮膜形成有機樹脂(G)と一部または全部の化合物が活性水素を有するヒドラジン誘導体(I)からなる活性水素含有化合物(H)との反応生成物であることを特徴とする請求項4に記載の耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
  6. 有機系皮膜が、非クロム系防錆添加剤を樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.1〜50質量部含有することを特徴とする請求項4または5に記載の耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
  7. 非クロム系防錆添加剤が下記(a)〜(e)の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
    (a)酸化ケイ素
    (b)カルシウム化合物
    (c)難溶性リン酸化合物
    (d)モリブデン酸化合物
    (e)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の、S原子を含有する有機化合物
  8. 有機系皮膜が、固形潤滑剤を樹脂組成物の固形分100質量部に対して1〜30質量部含有することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板。
  9. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、有機リン酸化合物(B)を1〜400質量部、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)を固形分で10〜2000質量部、バナジン酸化合物(D)を1〜400質量部、フッ化ジルコニウム化合物(E)を1〜400質量部、炭酸ジルコニウム化合物(F)を1〜400質量部含有する表面処理組成物を塗布し、到達板温が30〜200℃で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜1.0μmの表面処理皮膜を形成することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
  10. 亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン、水酸化チタンの低縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(A)の固形分100質量部に対して、有機リン酸化合物(B)を1〜400質量部、ノニオン系水性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(C)を固形分で10〜2000質量部、バナジン酸化合物(D)を1〜400質量部、フッ化ジルコニウム化合物(E)を1〜400質量部、炭酸ジルコニウム化合物(F)を1〜400質量部含有する表面処理組成物を塗布し、到達板温が30〜200℃で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜1.0μmの表面処理皮膜を形成し、その上層に、塗料組成物を塗布し、到達板温が30〜300℃で乾燥することにより、皮膜厚が0.1〜5.0μmの有機系皮膜を形成することを特徴とする耐食性、電着塗装密着性および溶接性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
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