本発明の実施の形態を図1〜図3を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は溶液流延製膜法による位相差フィルムを製造する製造装置の概略図である。図1(a)は溶液流延製膜法による位相差フィルムを製造するのに使用する、流延工程、第1テンター搬送工程、第2テンター搬送工程、乾燥工程、巻き取り工程を順次有する製造装置の概略図である。図1(b)は溶液流延製膜法による位相差フィルムを製造するのに使用する、流延工程、第1乾燥工程、第1テンター搬送工程、第2テンター搬送工程、第2乾燥工程、巻き取り工程を順次有する製造装置の概略図である。図1(c)は溶液流延製膜法による位相差フィルムを製造するのに使用する、流延工程、第1乾燥工程、第1テンター搬送工程、第2乾燥工程、第2テンター搬送工程、第3乾燥工程、巻き取り工程を順次有する製造装置の概略図である。本発明は、図1(a)〜(c)に示す様な溶液流延製造装置で幅方向のリターデーション値が安定した薄膜・広幅の位相差フィルムの製造方法、この製造方法で製造された位相差フィルム、この位相差フィルムを使用した偏光板、及びこの偏光板を使用した液晶表示装置に関するものである。
図1(a)に示す製造装置に付き説明する。図中、1aは溶液流延製膜法による位相差フィルムの製造装置を示す。製造装置1aは溶液流延製膜工程101と、第1延伸工程102と、第2延伸工程103と、乾燥工程104と、巻き取り工程105とを有している。溶液流延製膜工程101は無端支持体として鏡面帯状金属流延ベルト(以下、ベルトという)101aと、ダイス101bと、加熱装置101cとを有している。ベルト101aは、エンドレスで走行する無端支持体から構成されている。ダイス101bは位相差フィルム形成用の樹脂を溶媒に溶解したドープ2を、ベルト101aに流延するために配設されている。加熱装置101cは、ベルト101aの上に流延されたドープ2をベルト101aから剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。
加熱装置101cは、乾燥箱101c1と、乾燥箱101c1の上側に配設された加熱風供給管101d1と下側に配設された加熱風供給管101d2と、排気管101d3とを有している。本図に示す加熱装置101cは加熱風を使用した場合を示しているが、加熱手段としては特に限定はなく、この他に、例えばベルトのドープ接触面に赤外線ヒータで加熱する方法、ベルトの裏面に温風を吹き付け裏面側から加熱する方法、ベルトの裏面に温水や加熱オイルを接触し加熱する方法等が挙げられる。流延後、剥離までの間での時間は作製するセルロースエステルフィルムの膜厚、使用溶剤によって異なるが、ベルトからの剥離性、製膜効率、工程の長さ等を考慮し、0.5分〜5分の範囲が好ましい。
使用する無端支持体として、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。流延する幅は1〜4mとすることが出来る。溶液流延製膜工程の無端支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい無端支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。無端支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、無端支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
ベルト101aは保持ロール101a1と保持ロール101a2とにより保持され、保持ロールの回転に伴い保持ロール101a1と保持ロール101a2の間を回転移動(図中の矢印方向)する様になっている。3はベルト101aに流延されたドープから溶媒が剥離出来る状態まで除去され固化したウェブを剥離する剥離点を示す。剥離点における温度は−50℃〜40℃とするのが好ましく、10℃〜40℃がより好ましく、15℃〜30℃とするのが最も好ましい。4は剥離点に設けられた搬送用ロールを示す。5は剥離されたウェブを示す。ベルトからウェブ5を剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブは縦方向に延伸するため、本発明においてはベルトからウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力を出来るだけ下げた状態で行うことが好ましい。具体的には、例えば50N/m〜170N/mにすることが効果的である。その際、20℃以下の冷風を当て、ウェブを急速に固定化することが本発明の効果を高める上で好ましい。
本図に示される製造装置の場合、剥離点で剥離されたウェブ5は、次工程の第1延伸工程102に送られる。第1延伸工程102に送られる時のウェブ5含まれる残留溶媒量は50質量%以上、250質量%以下となっている。残留溶媒量が50質量%未満では、延伸工程で目標とする1次延伸率にする時、ウェブが破断すること及び、目標とする1次延伸率が得られないことに伴い必要とするリターデーション値を得ることが出来ないため好ましくない。残留溶媒量が250質量%を超える場合は、ベルトからの剥離が困難となり、安定した製造が維持出来ないため好ましくない。
第1延伸工程102は、乾燥風取り入れ口102bと排出口102cとを有する外箱102aと、外箱102aの中に入れられた一軸延伸装置102dとを有している。第1延伸工程102における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、この他に、例えば赤外線が挙げられる。尚、乾燥風取り入れ口102bと排出口102cとは逆であってもよい。乾燥温度は、第1延伸工程102に入る時のウェブの残留溶剤量により異なるが、溶媒の蒸発に伴うウェブの表面への露結、残留溶媒量、伸縮率の調整、溶媒の発泡等を考慮し、30℃〜180℃の範囲で残留溶剤量により適宜選択して決めればよく、一定の温度で乾燥してもよいし、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。
第1延伸工程102の全長は、延伸開始時の残留溶媒量、1次延伸率、延伸終了時の残留溶媒量、延伸時間等を考慮し適宜決めることが可能である。
第1延伸工程102での1次延伸率はTD方向に10%〜40%である。尚、TD方向とはTransverse Direction方向を言い、ウェブの搬送方向に対して直角の方向(ロールと平行な方向)を言う。
1次延伸率が10%未満の場合は、延伸率不足により面内方向のリターデーション値Roの発現性が低く、面内方向のリターデーション値Roと、厚み方向のリターデーション値Rtとの比率Rt/Roが7以上となるため好ましくない。1次延伸率が40%を超える場合は、過剰な延伸により、フィルムの破断、ヘイズ上昇となるため好ましくない。
第1延伸工程102での1次延伸率の割合は、第1延伸工程102での1次延伸率と第2延伸工程103での2次延伸率との総和の80%〜100%である。80%未満の場合は、第2延伸率が過剰になり、フィルムの破断、ヘイズ上昇、又厚み方向のリターデーション値Rtの発現性が向上しRtが200nmを超える場合もあるため好ましくない。
第1延伸工程102での延伸時間は、1次延伸率、延伸ムラ等を考慮し、1秒〜10秒が好ましい。
第2延伸工程103は、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとを有する外箱103aと、外箱103aの中に入れられた一軸延伸装置103dとを有している。第2延伸工程103における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、この他に、例えば赤外線が挙げられる。尚、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとは逆であってもよい。乾燥温度は、延伸工程に入る時のウェブの残留溶剤量により異なるが、溶媒の蒸発に伴うウェブの表面への露結、残留溶媒量、伸縮率の調整、溶媒の発泡等を考慮し、30℃〜180℃の範囲で残留溶剤量により適宜選択して決めればよく、一定の温度で乾燥してもよいし、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。
第2延伸工程103へ入る時のウェブの残留溶媒量は5質量%以上、10質量%以下である。5質量%未満の場合は、ウェブの延伸性が無くなりウェブの破断の危険性が高くなるため好ましくない。10質量%を超える場合は、面内方向のリターデーション値Roと、厚み方向のリターデーション値Rtの発現性が悪くなり、面内方向のリターデーション値Roと、厚み方向のリターデーション値Rtとの比率Rt/Roが7以上となるため好ましくない。
第2延伸工程103での2次延伸率はTD方向に1%〜10%である。2次延伸率が1%未満の場合は、ウェブの弛みにより、熱風が均一に当たらず膜厚、光学値の偏差が大きいフィルムとなるため好ましくない。2次延伸率が10%を超える場合は、過剰な延伸により、フィルムの破断、ヘイズ上昇、又厚み方向のリターデーション値Rtの発現性が向上しRtが200nmを超えるため好ましくない。
第2延伸工程103での延伸時間は、2次延伸率、延伸ムラ等を考慮し、1秒〜10秒が好ましい。
第1延伸工程102の1次延伸率と第2延伸工程103の2次延伸率の総和は、ウェブの破断、ヘイズの上昇等を考慮し、11%〜50%が好ましく、更に第1延伸工程102の1次延伸率と第2延伸工程103の2次延伸率との関係は、第1延伸工程102の1次延伸率>と第2延伸工程103の2次延伸率を有している。
第2延伸工程103の全長は、延伸開始時の残留溶媒量、2次延伸率、延伸終了時の残留溶媒量、延伸時間等を考慮し適宜決めることが可能である。
第1延伸工程102の一軸延伸装置102d及び第2延伸工程103の一軸延伸装置103dに使用するテンターは特に限定はなく、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。
乾燥工程104は、乾燥風取り入れ口104bと排出口104cとを有する乾燥箱104aと、ウェブ5を搬送する上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとを有している。上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとは上下で一組で、複数組から構成されている。104fは第2延伸工程103から出てくるウェブ5を乾燥工程104に搬送する搬送ロールを示す。乾燥工程104に配設される搬送ロールの数は、乾燥条件、方法、製造される位相差フィルムの長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとは駆動源によって回転駆動されない自由回転ロールとなっている。又、乾燥工程から巻き取り工程までの間には、全て自由回転する搬送ロールが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ロール(駆動源によって回転駆動するロール)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ロールは、その駆動で位相差フィルムを搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアの吸引)などにより、位相差フィルムの搬送と、駆動ロールの回転とを同期させる機構が付いている。
乾燥工程104では加熱空気、赤外線等単独又は加熱空気と赤外線乾燥を併用しても構わない。簡便さの点で加熱空気で行うのが好ましい。本図は加熱空気を使用した場合を示している。乾燥温度は、乾燥工程に入る時のセルロースエステルフィルムの残留溶剤量により異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、30℃〜180℃の範囲で残留溶剤量により適宜選択して決めればよく、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。
乾燥工程104での乾燥処理後の位相差フィルムの残留溶媒量は、乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性伸縮率等を考慮し、0.1質量%〜0.001質量%が好ましい。
乾燥工程104の全長は、残留溶媒量、搬送速度、乾燥時間等を考慮し適宜決めることが可能である。
巻き取り工程105は、巻き取り装置(不図示)を有し、乾燥終了した位相差フィルムを必要量の長さに巻き芯に巻き取る。105aは巻き芯に巻き取られたロール状の位相差フィルムを示す。尚、巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることが出来る。
図1(b)に示す製造装置に付き説明する。図中、1bは溶液流延製膜法による位相差フィルムの製造装置を示す。製造装置1bは溶液流延製膜工程101と、第1乾燥工程106と、第1延伸工程102と、第2延伸工程103と、第2乾燥工程107と、巻き取り回収工程105とを有している。図1(a)に示される位相差フィルムの製造装置との違いは、第1延伸工程102で延伸する前に、ベルトから剥離したウェブ5を、一旦第1乾燥工程106で乾燥することである。他の工程は図1(a)に示される製造装置と同じである。
第1乾燥工程106は、乾燥風取り入れ口106bと排出口106cとを有する乾燥箱106aと、ウェブ5を搬送する上部の搬送ロール106dと下部の搬送ロール106eとを有している。上部の搬送ロール106dと下部の搬送ロール106eとは上下で一組で、複数組から構成されている。第1乾燥工程106で第1延伸工程102に入る前のウェブ5に含まれる溶媒量の調整を行うことが可能となっている。第1乾燥工程106で溶媒量の調整が行われた後、第1延伸工程102に送られる時のウェブ5含まれる残留溶媒量は図1(a)に示される場合と同じである。
第1乾燥工程106では、乾燥手段として加熱空気、赤外線等単独又は加熱空気と赤外線乾燥を併用しても構わない。簡便さの点で加熱空気で行うのが好ましい。乾燥条件は、第1乾燥工程106に入る時のウェブの残留溶剤量、使用溶媒により異なるため一義的に決めることは難しいが、第1延伸工程102に入る時の残留溶媒量になる様に、温度、時間等を適宜選択して決めて行う必要がある。第1乾燥工程106の全長は、残留溶媒量、搬送速度、乾燥時間等を考慮し適宜決めることが可能である。
本図に示される第1延伸工程102で、ウェブ5のTD方向に掛けられる延伸倍率(%)、1次延伸率の割合及び延伸時間は図1(a)に示される第1延伸工程の場合と同じである。第1延伸工程102が終了し、第2延伸工程103へ送られる時のウェブの残留溶媒量は図1(a)に示される第1延伸工程の場合と同じである。
第2延伸工程103で、ウェブ5のTD方向に掛けられる延伸倍率(%)、2次延伸率の割合及び延伸時間は図1(a)に示される第2延伸工程の場合と同じである。
第1延伸工程102の1次延伸率と第2延伸工程103の2次延伸率の総和は、図1(a)に示される第1延伸工程102の1次延伸率と第2延伸工程103の2次延伸率の総和と同じである。
第2乾燥工程107は、乾燥風取り入れ口107bと排出口107cとを有する乾燥箱107aと、ウェブ5を搬送する上部の搬送ロール107dと下部の搬送ロール107eとを有している。上部の搬送ロール107dと下部の搬送ロール107eとは上下で一組で、複数組から構成されている。107fは第2延伸工程103から出てくるウェブ5を第2乾燥工程107に搬送する搬送ロールを示す。第2乾燥工程107に配設される搬送ロールの数は、乾燥条件、方法、製造される位相差フィルムの長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ロール107dと下部の搬送ロール107eとは駆動源によって回転駆動されない自由回転ロールとなっている。又、乾燥工程から巻き取り工程までの間には、全て自由回転する搬送ロールが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ロール(駆動源によって回転駆動するロール)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ロールは、その駆動で位相差フィルムを搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアの吸引)などにより、位相差フィルムの搬送と、駆動ロールの回転とを同期させる機構が付いている。第2乾燥工程107は、図1(a)に示される乾燥工程104と同じ構成をしている。
第2乾燥工程107での加熱方法、加熱手段、温度、乾燥方法は図1(a)に示される乾燥工程104と同じである。又、第2乾燥工程107での乾燥処理後の位相差フィルムの残留溶媒量は、図1(a)に示される乾燥工程104と同じである。第2乾燥工程107の全長は、残留溶媒量、搬送速度、乾燥時間等を考慮し適宜決めることが可能である。
本図に示す様に、第1延伸工程102の前に第1乾燥工程106を配設することは、溶液流延製膜工程101の負荷を軽減することが可能となり、第1延伸工程102へ入る時のウェブの膜厚、1次延伸率に合わせ残留溶媒量の調整を正確に行うことが出来るため好ましい。その他の符号は図1(a)と同義である。
図1(c)に示す製造装置に付き説明する。図中、1cは溶液流延製膜法による位相差フィルムの製造装置を示す。製造装置1cは溶液流延製膜工程101と、第1乾燥工程106と、第1延伸工程102と、第2乾燥工程108と、第2延伸工程103と、第3乾燥工程109と、巻き取り回収工程105とを有している。図1(b)に示される位相差フィルムの製造装置との違いは、第1延伸工程102と第2延伸工程103との間に第2乾燥工程108を配設したことである。他の工程は図1(c)に示される製造装置と同じである。
第2乾燥工程108は、乾燥風取り入れ口108bと排出口108cとを有する乾燥箱108aと、ウェブ5を搬送する上部の搬送ロール108dと下部の搬送ロール108eとを有している。上部の搬送ロール108dと下部の搬送ロール108eとは上下で一組で、複数組から構成されている。
第2乾燥工程108で第2延伸工程103に入る前のウェブ5に含まれる溶媒量の調整を行うことが可能となっている。第2乾燥工程108で溶媒量の調整が行われた後、第2延伸工程103で延伸される時ウェブ5含まれる残留溶媒量は図1(a)に示される第2延伸工程103場合と同じである。第2乾燥工程108での乾燥手段としては第1乾燥工程106と同じである。第2乾燥工程108の全長は、残留溶媒量、搬送速度、乾燥時間等を考慮し適宜決めることが可能である。
本図に示される第1延伸工程102及び第2延伸工程103で延伸される時のウェブ5の残留溶媒量は図1(a)に示される第1延伸工程及び第2延伸工程の場合と同じである。本図に示される第1延伸工程102及び第2延伸工程103でウェブ5のTD方向に掛けられる延伸倍率(%)、延伸率の割合及び延伸時間は図1(a)に示される第1延伸工程及び第2延伸工程の場合と同じである。第1延伸工程102の1次延伸率と第2延伸工程103の2次延伸率の総和は、図1(a)に示される第1延伸工程102の1次延伸率と第2延伸工程103の2次延伸率の総和と同じである。
第3乾燥工程109は、乾燥風取り入れ口109bと排出口109cとを有する乾燥箱109aと、ウェブ5を搬送する上部の搬送ロール109dと下部の搬送ロール109eとを有している。上部の搬送ロール109dと下部の搬送ロール109eとは上下で一組で、複数組から構成されている。109fは第2延伸工程103から出てくるウェブ5を第3乾燥工程109に搬送する搬送ロールを示す。第3乾燥工程109に配設される搬送ロールの数は、乾燥条件、方法、製造される位相差フィルムの長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ロール109dと下部の搬送ロール109eとは駆動源によって回転駆動されない自由回転ロールとなっている。又、乾燥工程から巻き取り工程までの間には、全て自由回転する搬送ロールが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ロール(駆動源によって回転駆動するロール)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ロールは、その駆動で位相差フィルムを搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアの吸引)などにより、位相差フィルムの搬送と、駆動ロールの回転とを同期させる機構が付いている。第3乾燥工程109は、図1(a)に示される第2乾燥工程107と同じ構成をしている。
第3乾燥工程109での加熱方法、加熱手段、温度、乾燥方法は図1(a)に示される乾燥工程104と同じである。又、第2乾燥工程107での乾燥処理後の位相差フィルムの残留溶媒量は、図1(a)に示される乾燥工程104と同じである。尚、第3乾燥工程109は、第1乾燥工程106〜第2延伸工程での残留溶媒量に応じて使用することが可能である。第3乾燥工程109の全長は、残留溶媒量、搬送速度、乾燥時間等を考慮し適宜決めることが可能である。
その他の符号は図1(a)と同義である。
尚、本発明では図1(a)〜(c)に示される様に、巻き取り工程で巻き取る前の残留溶媒量が1.5質量%以下となったウェブを位相差フィルムと言う。
本図に示す様に、第1延伸工程102の前に第1乾燥工程106を配設し、更に第2延伸工程103の前に第2乾燥工程108を配設するは、1)第1延伸工程102の乾燥負荷を軽減することが出来、第1延伸工程106での延伸を高残留溶媒の領域で行うことが可能となり、2)第2延伸工程102へ入る時のウェブの膜厚、2次延伸率に合わせ残留溶媒量の調整を正確に行うことが可能となるため好ましい。
図1(a)〜(c)に示される製造装置で製造された位相差フィルムの厚み方向のリターデーション値Rtは、視野角、色味等を考慮し、0〜200nmが好ましい。又、面内方向のリターデーション値Roと、厚み方向のリターデーション値Rtとの比(Rt/Ro)は、視野角、色味等を考慮し、1〜7であることが好ましい。
面内方向のリターデーション値Roと、厚み方向のリターデーション値Rtは自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて測定した値を示す。
図1(a)〜(c)に示される製造装置により製造される位相差フィルムの厚さが20μm〜80μm、幅が1500mm〜2500mmである。厚さが20μm未満の場合は、偏光板を作製した時にカールが発生することにより、取り扱い性が悪くなるため好ましくない。厚さが80μmを超える場合は、材料単価が上がることにより、コスト高となるため好ましくない。厚さは(株)SONY製μ−mateにより測定した値を示す。
幅が1500mm未満の場合は、大型TVのように液晶画面対応が不可能になるため好ましくない。幅が2500mmを超える場合は、自重により、破断する危険性が高くなるため好ましくない。
図1(a)〜(c)に示される製造装置により製造される位相差フィルムのヘイズは、コントラストを考慮し、0〜0.1が好ましい。ヘイズはJIS K6714に規定される方法に従って日本電色工業(株)製 ヘイズメータ1001DP型で測定した値である。
図1(a)〜(c)に示される製造装置で使用するドープ2の位相差フィルム形成用の樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、位相差フィルム形成用の樹脂の濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
本発明での残留溶媒量(質量%)の値は一定の大きさのウェブ(位相差フィルム)を115℃で1時間乾燥した時のウェブ(位相差フィルム)の質量をBとし、乾燥前のウェブ(位相差フィルム)の質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)で求めた値である。
本発明での1次延伸率は、以下に示す計算式より計算で求めた値を示す。
1次延伸率(%)=(1次延伸後のウェブの中央から端部までの幅/延伸前のウェブの中央から端部までの幅)×100
尚、ウェブの中央から端部までの幅はC型JIS1級の鋼製スケールで幅を測定した値を使用する。
2次延伸率(%)=(2次延伸後のウェブの中央から端部までの幅/延伸前のウェブの中央から端部までの幅)×100
尚、ウェブの中央から端部までの幅はC型JIS1級の鋼製スケールで幅を測定した値を使用する。延伸前のウェブとは1次延伸する前のウェブを言う。
図1(a)〜(c)に示される溶液流延製造装置による位相差フィルムの製造方法により、位相差フィルムを製造することにより次ぎの効果が挙げられる。
1.ベルトから剥離したウェブの延伸を高残溶媒量の領域と、低残溶媒量の領域とに分割して行うことで、広幅、薄膜でも幅方向で安定したリターデーション値を有した位相差フィルムの製造が可能となった。
2.大型の液晶表示装置への対応が可能となった。
図2は本発明で製造した位相差フィルムを用いて作製した偏光板の模式図である。
図中、6は偏光板を示す。偏光板6は偏光子601の片側に保護フィルム602を配置し、他の片側に保護フィルムの機能を兼ねた位相差フィルム603を配置した構成を有している。位相差フィルム603は、偏光子の透過軸に対して、位相差フィルムの遅相軸が直交もしくは平行となるように配置されている。
本図に示す偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の位相差フィルム603の裏面側をアルカリ鹸化処理し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子601の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には位相差フィルム603を用いても、保護フィルム602を用いてもよい。
本発明の位相差フィルム603に対して、もう一方の面に用いられる保護フィルム602は面内リターデーションRoが0〜20nmで、Rtが−50〜50nmの光学的に等方性の保護フィルムであることが好ましい。又保護フィルムには8〜20μmの厚さのハードコート層もしくはアンチグレア層を有することも好ましく、例えば、特開2003−114333号公報、特開2004−203009号公報、同2004−354699号公報、同2004−354828号公報等記載のハードコート層もしくはアンチグレア層を有する偏光板保護フィルムが好ましく用いられる。更に、該ハードコート層もしくはアンチグレア層に反射防止層、防汚層等が積層されていることが好ましい。
或いは更にディスコチック液晶、棒状液晶、コレステリック液晶などの液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることも好ましい。例えば、特開2003−98348号公報記載の方法で光学異方性層を形成することが出来る。本発明の偏光板と組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する液晶表示装置を得ることが出来る。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。又、エチレン変性ポリビニルアルコールも偏光子として好ましく用いられる。偏光子の膜厚は5〜30μm、特に10〜25μmであることが好ましい。
図3は本発明で製造した位相差フィルムを用いて作製した偏光板を使用した液晶表示装置の模式分解構成図である。
図中、7は液晶表示装置を示す。液晶表示装置7は、液晶セル7aの片側に偏光板7bと、たの片側に偏光板7bとを有する構成となっている。偏光板7bは偏光子7b1の液晶セル7a側に位相差フィルム7b2を、他の片側に保護フィルム7b3を有する構成となっている。Eは偏光子7b1の透過軸を示し、Fは位相差フィルム7b2の遅相軸を示す。偏光板7cは偏光子7c1の液晶セル7a側に位相差フィルム7c2を、他の片側に保護フィルム7c3を有する構成となっている。Gは偏光子7b1の透過軸を示し、Hは位相差フィルム7b2の遅相軸を示す。偏光板7bと偏光板7cとは、互いに遅相軸が直交する様に配置されている。
本発明の位相差フィルムを用いた偏光板で構成された本図に示される液晶表示装置は、通常の偏光板と比較して高い表示品質を発現させるために用いる。特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが好ましい。
マルチドメイン化は、画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),184(2003)」にも示されているが、これらに限定されない。
本発明の偏光板は垂直配向モードに代表されるMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、電極配置とカイラル能を融合したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モードに効果的に用いることが出来る。本発明の位相差フィルムは中でも、垂直配向モード液晶表示装置に好ましく用いられ、特にMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モードの液晶表示装置に好ましく用いられる。
表示セルの表示品質は、人の観察において左右対称であることが好ましい。従って、表示セルが液晶表示セルである場合、実質的に観察側の対称性を優先してドメインをマルチ化することが出来る。ドメインの分割は、公知の方法を採用することが出来、2分割法、より好ましくは4分割法によって、公知の液晶モードの性質を考慮して決定出来る。
液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置しても応用されつつあり、本発明における表示品質は、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
本発明の液晶表示装置は、本発明の位相差フィルムを用いた偏光板を液晶セルの一方の面のみに配置するか、もしくは両面に配置するものである。この時偏光板に含まれる本発明の位相差フィルムが液晶セル側となるように用いることで表示品質の向上に寄与出来る。次に、本発明の位相差フィルムを製造に使用する材料に付き説明する。
(樹脂材料)
本発明の位相差フィルムは、製造が容易であること、偏光子との接着性がよいこと、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられ、中でも樹脂フィルムであることが好ましい。透明とは、可視光の透過率60%以上であることを言い、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有している樹脂フィルムを形成する樹脂であれば特に限定はなく、例えば、セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、セロファン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂等を挙げることが出来る。中でも、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)系樹脂が好ましく、本発明においては、特にセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート系樹脂が、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
本発明に係わるセルロースエステル系樹脂に付き説明する。セルロースエステル系樹脂は、セルロースアセテート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートフタレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく用いられる。
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有するセルロースエステル系樹脂が好ましく用いられる。
式(I) 2.0≦X+Y≦2.6
式(II) 0.1≦Y≦1.2
更に2.4≦X+Y≦2.6、1.4≦X≦2.3のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。中でも2.4≦X+Y≦2.6、1.7≦X≦2.3、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は公知の方法で合成することが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
本発明の位相差フィルムとして、セルロースエステル系樹脂を用いる場合、セルロースエステル系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。又それらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステル系樹脂は、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることが出来る。
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。又、本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂は各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステル系樹脂はこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)と言う。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂としては、前述のようにセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、又はセルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂のようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。尚、プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネート樹脂は耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、40000〜200000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、溶液流延法の場合は適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、50000〜150000である。又、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.4〜4.5の範囲であることが好ましい。
本発明に係わるシクロオレフィン樹脂について説明する。本発明に用いられるシクロオレフィン樹脂は脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好適である。
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
本発明に係わるシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
或いは、シクロオレフィン樹脂として、下記のノルボルネン系樹脂も挙げられる。ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、例えば特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−2108号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報、特開2001−277430号公報、特開2003−139950号公報、特開2003−14901号公報、特開2003−161832号公報、特開2003−195268号公報、特開2003−211588号公報、特開2003−211589号公報、特開2003−268187号公報、特開2004−133209号公報、特開2004−309979号公報、特開2005−121813号公報、特開2005−164632号公報、特開2006−72309号公報、特開2006−178191号公報、特開2006−215333号公報、特開2006−268065号公報、特開2006−299199号公報等に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
本発明に係わるシクロオレフィンポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
又、シクロオレフィンポリマー100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
本発明に係わるポリカーボネート系樹脂に付き説明する。ポリカーボネート系樹脂としては種々があり、化学的性質及び物性の点から芳香族ポリカーボネートが好ましく、特にビスフェノールA系ポリカーボネートが好ましい。その中でも更に好ましくはビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、叉は脂肪族炭化水素基などを導入したビスフェノールA誘導体を用いたものが挙げられるが、特に中央炭素に対して非対称にこれらの基が導入された誘導体を用いて得られた、単位分子内の異方性を減少させた構造のポリカーボネートが好ましい。例えばビスフェノールAの中央炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置き換えたもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一の水素をメチル基やフェニル基などで中央炭素に対し非対称に置換したものを用いて得られるポリカーボネート樹脂が好ましい。具体的には、4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカン又はこれらのハロゲン置換体からホスゲン法又はエステル交換法によって得られるものであり、例えば4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルブタン等を挙げることが出来る。又、この他にも例えば、特開2006−215465号公報、特開2006−91836号公報、特開2005−121813号公報、特開2003−167121号公報等に記載されているポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂よりなる位相差フィルムはポリスチレン系樹脂或いはメチルメタクリレート系樹脂或いはセルロースアセテート系樹脂等の透明樹脂と混合して使用してもよいし、又セルロースアセテート系フィルムの少なくとも一方の面にポリカーボネート樹脂を積層してもよい。
本発明において使用されるポリカーボネート系樹脂よりなる位相差フィルムはガラス転移点(Tg)が110℃以上であって、吸水率(23℃水中、24時間の条件で測定した値)が0.3%以下のものを使用するのがよい。より好ましくはTgが120℃以上であって、吸水率が0.2%以下のものを使用するのがよい。
(ドープ)
ドープを作製する際に使用される溶媒としては、上記樹脂を溶解出来る溶媒であれば何でもよく、又単独で溶解出来ない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解出来るものであれば使用することが出来る。一般的には良溶媒と、貧溶媒からなる混合溶媒が用いられている。尚、使用する樹脂を単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。例えばセルロースエステル系樹脂の場合、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。セルロースエステル系樹脂の場合、良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。
使用する樹脂により、良溶剤及び貧溶剤は異なってくるのでセルロースエステル系樹脂の場合に付き説明する。良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘクサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることが出来る。
次にセルロースエステル系樹脂を使用したドープを調製方法に付き述べる。ドープを調製する時の、セルロースエステル系樹脂の溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶剤の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。又、セルロースエステル系樹脂を貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。又、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステル系樹脂を溶解させることが出来る。
次に、このセルロースエステル系樹脂溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。又、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶剤の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
(可塑剤)
可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等が挙げられる。トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等が挙げられる。ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等が挙げられる。グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等が挙げられる。ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることが出来る。
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロースエステルとの相溶性の点から好ましい。
又、本発明では特に200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、更に好ましくは1〜133Paの化合物である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、上記ポリエステル可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は単独或いは2種以上併用して用いることが出来る。
可塑剤の使用量は寸法安定性、加工性の点を考慮すると、セルロースエステル系樹脂に対して、1〜40質量%添加させることが出来、3〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、更に好ましくは4〜15質量%である。3質量%未満の場合は、スリット加工や打ち抜き加工した際、滑らかな切断面を得ることが出来ず、切り屑の発生が多くなる。
本発明の位相差フィルムには酸化防止剤や紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。又例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
又、この他、カオリン、タルク、けい藻土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
本発明の製造方法で製造された位相差フィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板又は液晶表示用部材等に使用することが可能であり、この場合、偏光板又は液晶等の劣化防止のため、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。例えば、特開平10−182621号、特開平8−337574号、記載の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。又、特開平6−148430号、特開平12−273437号に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。或いは特開平10−152568号に記載されている紫外線吸収剤を加えてもよい。
これらの紫外線吸収剤の中では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい紫外線吸として挙げられる。以下にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートとの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
以下にベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)が挙げられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル系樹脂中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加することが好ましい。紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤としての効果、透明性等を考慮し、0.1質量%〜2.5質量%が好ましい。更に、好ましくは、0.8質量%〜2.0質量%%である。
又、セルロースエステル系樹脂フィルムには、フィルム同士の張り付きを防止したり、滑り性を付与したりして、ハンドリングしやすくするために、マット剤として微粒子を添加してもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子が挙げられる。無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、珪素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減出来るので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R976、R976S、R202、R812,R805、OX50、TT600、RY50、RX50、NY50、NAX50、NA50H、NA50Y、NX90、RY200S、RY200、RX200、R8200、RA200H、RA200HS、NA200Y、R816、R104、RY300、RX300、R106などが挙げられる。これらのうち、分散性や粒径を制御する点では、AEROSIL−200V、R972Vが好ましい。
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用出来る。
本発明に係る微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
微粒子の、見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、又、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。又例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することが出来る。
尚、見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)÷二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に係る微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
《調製方法A》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
《調製方法B》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。ここで添加するセルロースエステルとして、本発明の固形物を添加することが特に好ましい。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
《調製方法C》
溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。又その際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
又、これらの微粒子はフィルムの厚み方向で均一に分布していてもよいが、より好ましくは主に表面近傍に存在するように分布していることが好ましく、例えば、共流延法により、2種以上のドープを用いて、微粒子を主に表層側に配置されたドープに添加することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。好ましくは3種のドープを使用して表層側の2つのドープに主に微粒子を添加することが望ましい。
又、本発明のフィルムには導電性を有する物質を添加することで好ましいインピーダンスを有する光学フィルムを得ることも出来る。導電性物質としては特に限定はされないが、イオン導電性物質や導電性微粒子或いはセルロースエステルと相溶性を有する帯電防止剤などを用いることが出来る。
ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例えば、イオン性高分子化合物を挙げることが出来る。
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号に見られるようなアニオン性高分子化合物、例えば特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などに見られるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー、特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号に見られるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることが出来る。
又、導電性微粒子の例としては導電性を有する金属酸化物が挙げられる。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V2O5等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
又、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ωcm以下特に105Ωcm以下であって、1次粒子径が10nm以上0.2μm以下で、高次構造の長径が30nm以上6μm以下である特定の構造を有する粉体をフィルム内の少なくとも一部の領域に体積分率で0.01%以上20%以下含んでいることが好ましい。
特に好ましくは、特開平9−203810号に記載されているアイオネン導電性ポリマー或いは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマーなどを含有することが望ましい。
架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、得られる分散性粒状ポリマーにあり、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度に持たせることが出来るため、優れた導電性を有しているばかりでなく、低相対湿度下においても導電性の劣化は見られず、粒子同志も分散状態ではよく分散されているにもかかわらず、塗布後造膜過程において粒子同志の接着性もよいため膜強度も強く、又他の物質、例えば基体にも優れた接着性を有し、耐薬品性に優れている。
架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは一般に約0.01μm〜0.3μmの粒子サイズ範囲にあり、好ましくは0.05μm〜0.15μmの範囲の粒子サイズが用いられる。ここで用いている「分散性粒状ポリマー」の語は、視覚的観察によって透明又はわずかに濁った溶液に見えるが、電子顕微鏡の下では粒状分散物として見えるポリマーである。
帯電防止剤もしくはマット剤の添加は光学フィルムの表層部(表面から10μmの部分)に含まれていることが好ましく、共流延等の方法によってフィルムの表面に帯電防止剤及び/又はマット剤を含有させることが好ましい。具体的には、導電性物質及び/又はマット剤を含有するドープAと実質的にこれらを含有しないドープBを使用し、ドープBの少なくとも片側の面にドープAがあるように流延されることが好ましい。
必要に応じて、更に帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤、マット剤、その他添加剤を加えてもよい。
本発明の製造方法により製造された位相差フィルムは液晶ディスプレイに使用する偏光板、液晶表示装置に用いることが可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
図1(b)に示される製造装置を使用し、下記に示すドープを温度35℃で長さ100mのベルトの上に流延し、ベルトの剥離点でウェブを剥離(流延から剥離までの時間1.5分)し、位相差フィルムの厚さ、幅、第1延伸工程での残留溶媒量、第2延伸工程での残留溶媒量、第1延伸工程での1次延伸率、第2延伸工程での2次延伸率、1次延伸率の1次延伸率と2次延伸率との総和に対する割合を表1、表2に示す様に変えて延伸した。この後、乾燥工程で乾燥し、巻き取り工程でロール状とした位相差フィルムを3000m作製し試料No.101〜151とした。
ベルトは、表面を鏡面仕上げした幅2500mmのステンレススティールを使用した。尚、ベルトからウェブを剥離する時10℃の冷風を吹き付けた。ベルトからウェブを剥離する時の剥離張力は、最終的に仕上がる位相差フィルムの幅に対応して変化した。又、剥離点から巻き取り工程までの各工程での搬送張力も最終的に仕上がる位相差フィルムの幅に対応して変化した。
第1乾燥工程、第2乾燥工程、第1延伸工程及び第2延伸工程では溶媒除去手段として加熱風を使用し、第2乾燥工程が終了した時点での位相差フィルムの残留溶媒量を0.001質量%となるようにした。第1乾燥工程は全長100m、第2乾燥工程は全長1000mとした。第1延伸工程及び第2延伸工程は全長40mとした。第1延伸工程及び第2延伸工程の一軸延伸装置はクリップテンターを使用した。
第1延伸工程に入る前のウェブの残留溶媒量は第1乾燥工程の加熱風の温度、風量を調整することで調整した。第2延伸工程に入る前のウェブの残留溶媒量は第1延伸工程の加熱風の温度、風量を調整することで調整した。
残留溶媒量(質量%)の値は10cm×5cmの大きさのウェブ(位相差フィルム)を115℃で1時間乾燥した時のウェブ(位相差フィルム)の質量をBとし、乾燥前のウェブ(位相差フィルム)の質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)で求めた値である。剥離直後のウェブの残留溶媒量の変化は溶液流延製膜工程の加熱温度を変化させることで調整した。
第1延伸工程での延伸率は、以下に示す計算式より計算で求めた値を示す。
1次延伸率(%)=(1次延伸後のウェブの中央から端部までの幅/延伸前のウェブの中央から端部までの幅)×100
尚、ウェブの中央から端部までの幅はC型JIS1級の鋼製スケールで幅を測定した値を使用する。
2次延伸率(%)=(2次延伸後のウェブの中央から端部までの幅/延伸前のウェブの中央から端部までの幅)×100
尚、ウェブの中央から端部までの幅はC型JIS1級の鋼製スケールで幅を測定した値を使用する。延伸前のウェブとは1次延伸する前のウェブを言う。
位相差フィルムの厚さは(株)SONY製μ−mateを使用し、試料を巻き終わりから1m取り出し、幅方向に100cm間隔で20箇所、長さ方向に10cm間隔で10箇所を測定した平均値を示す。
第1延伸工程の全長は40m、1次延伸の時間は4%/秒とした。第2延伸工程の全長は40m、2次延伸の時間は1%/秒とした。
〈微粒子分散液の調製〉
二酸化珪素微粒子 11質量部
(商品名:AEROSIL−R972V(日本アエロジル株式会社製))
(一次粒子の平均径16nm、見掛比重90g/リットル)
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに下記セルロースエステル樹脂を添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を十分に攪拌しながら、ここに上記微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度1.0、総アシル基置換度2.5) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
〈主ドープの調製〉
下記組成の主ドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル樹脂を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。
主ドープを100質量部と微粒子添加液5質量部となるように加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合しドープとした。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 390質量部
エタノール 80質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度1.0、総アシル基置換度2.5) 100質量部
可塑剤:芳香族末端エステルサンプルNo.4 5質量部
可塑剤:トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.5質量部
紫外線吸収剤:チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
評価
作製した試料No.101〜151に付き、以下に示す方法で面内位相差値Ro、厚み方向の位相差値Rtを測定し結果を表3、表4に示す。尚、面内位相差値Ro、厚み方向の位相差値Rtは測定値から幅手偏差を求め評価した。
面内位相差値Ro、厚み方向の位相差値Rtの測定
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長が589nmにおいてフィルムのリターデーション測定を行い、面内位相差値Ro、厚み方向の位相差値Rt、厚み方向の位相差値Rtの幅手偏差を求める。幅手偏差は、20点の厚み方向の位相差値Rtを測定し、その最大値と最小値とのさを示す。
Ro幅手偏差は、偏光板加工した際に表示ムラが発生することから、2nm以下を製品可能とした。
Rt幅手偏差は、偏光板加工した際に表示ムラが発生することから、5nm以下を製品可能とした。
表3と表4において、試料No.107は剥離不良のため破断したため製造が出来なかった。試料No.108は残留溶媒量が低いため破断し、製造が出来なかった。試料No.121はフィルムの弛みが発生し、膜厚、光学値の偏差が大きくなり製品化は不可とした。試料No.128低残溶領域での限界延伸率である10%を超えたため破断しRo、Rtが測定出来なかった。試料No.129はRo幅手偏差、Rt幅手偏差が良好な結果を示したが、ヘイズ度が劣るため製品化は不可とした。試料No.135は薄膜限度膜厚のため破断が頻発しため破断しRo、Rtが測定出来なかった。試料No.142はRo幅手偏差、Rt幅手偏差が良好な結果を示したが、厚膜による偏光板化困難なため、のため製品化は不可とした。試料No.143はRo幅手偏差、Rt幅手偏差が良好な結果を示したが、幅が狭く大型製品化への対応が出来ないため製品化は不可とした。試料No.151はRo幅手偏差、Rt幅手偏差が良好な結果を示したが、幅が広くなり膜厚の安定化が困難であることから製品化は不可とした。本発明は、何れもRo幅手偏差が2nm以下、Rt幅手偏差が5nm以下であり、本発明の有効性が確認された。
実施例2
図1(b)に示される製造装置を使用し、下記に示すドープを温度35℃で長さ100mのベルトの上に流延し、ベルトの剥離点でウェブを剥離(流延から剥離までの時間1.5分)し、第1延伸工程でのTD方向への1次延する時間と第2延伸工程でのTD方向への2次延伸する時間とを表5に示す様に変えて延伸した。この後、乾燥工程で乾燥し、巻き取り工程で厚さ40μm、幅2000mmのロール状とした位相差フィルムを3000m作製し試料No.201〜213とした。
ベルト上へのドープの厚さは80μm、流延幅は2300mmとした。ベルトは、表面を鏡面仕上げした幅2500mmのステンレススティールを使用した。尚、ベルトからウェブを剥離する時10℃の冷風を吹き付けた。ベルトからウェブを剥離する時の剥離張力は200N/mとした。第1乾燥工程から第2乾燥工程までの搬送張力は200N/mとし、巻き取り工程は150N/mで位相差フィルムを巻き取り回収した。
第1延伸工程で1次延伸を行う時の残留溶媒量は60質量%とした。第2延伸工程で2次延伸を行う時の残留溶媒量は7質量%とした。
第1乾燥工程、第2乾燥工程、第1延伸工程及び第2延伸工程では溶媒除去手段として加熱風を使用し、第2乾燥工程が終了した時点での位相差フィルムの残留溶媒量を0.001質量%となるようにした。第1乾燥工程は全長100m、第2乾燥工程は全長1000mとした。第1延伸工程及び第2延伸工程は全長40mとした。第1延伸工程及び第2延伸工程の一軸延伸装置はクリップテンターを使用した。
第1延伸工程に入る前のウェブの残留溶媒量は第1乾燥工程の加熱風の温度、風量を調整することで調整した。第2延伸工程に入る前のウェブの残留溶媒量は第1延伸工程の加熱風の温度、風量を調整することで調整した。
第1延伸工程に入る時のウェブの幅は2000mmであった。第1延伸工程での1次延伸率は25%とした。第2延伸工程での2次延伸率は5%とした。
1次延伸率、2次延伸率、残留溶媒量及び位相差フィルムの厚さは実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
第1延伸工程の全長は40m、第2延伸工程の全長は40mとした。
〈微粒子分散液〉
実施例1と同じ微粒子分散液を調製した。
〈微粒子添加液〉
実施例1と同じ微粒子添加液を調製した。
〈主ドープ〉
実施例1と同じ組成の主ドープを実施例1と同じ方法で調製した。
評価
作製した試料No.201〜213に付き、実施例1と同じ方法面内位相差値Ro、厚み方向の位相差値Rtを測定し結果を表6に示す。尚、面内位相差値Ro、厚み方向の位相差値Rtは測定値から幅手偏差を求め評価した。
本発明は、何れもRo幅手偏差が2nm以下、Rt幅手偏差が5nm以下であり、本発明の有効性が確認された。
実施例3
液晶表示装置の作製
(偏光板の作製)
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と実施例1で作製した各位相差フィルム試料No.101〜152と、裏面側の保護フィルムとして、コニカミノルタタックKC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)とを貼り合わせて偏光板を作製しNo.3−1〜3−51とした。
工程1:50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したセルロースエステルフィルムを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースエステルフィルムの上にのせて、更にKC8UX−RHAの反射防止層が外側になるように積層し、配置した。
工程4:工程3で積層した位相差フィルムと偏光膜とセルロースエステルフィルム試料を圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とセルロースエステルフィルムと各試料No.101〜140とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板を作製した。
この後、市販の液晶TV(シャープ製 アクオス32AD5)の偏光板を剥離し、作製した試料No.101〜151をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。その際、その偏光板の貼合の向きは、位相差フィルムの面が液晶セル側となるように、且つ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い液晶表示装置を作製しNo.301〜351とした。
評価
作製した液晶表示装置No.301〜351を23℃55%RHの環境で、作製した液晶表示装置の液晶TV表示装置のバックライトを点灯して30分そのまま放置してから以下に示す方法で正面コントラストの評価を行った結果を表7、表8に示す。
正面コントラストの評価方法
測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶TVで白表示と黒表示の法線方向から正面輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。値が高い程コントラストに優れている。
正面コントラスト=表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度/表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度
試料No.342は使用した位相差フィルムの厚膜により偏光板が出来なかった。本発明の有効性が確認された。