以下、本発明の内燃機関用点火装置の一実施例を図1,図2で説明する。図1は本発明の内燃機関用点火装置の一実施例を示す断面図、図2は内燃機関用点火装置の水平断面図である。
内燃機関用点火装置(点火コイル)10は、主に一次ボビン11,一次コイル12,二次ボビン13,二次コイル14,外装ケース15,エポキシ樹脂部材16,センタコア(開磁路鉄心)17,サイドコア(外装鉄心)18、及び可撓性エポキシ樹脂部材19より構成されている。
内燃機関用点火装置(点火コイル)10は、一次ボビン11の下部に配置されたマグネット20,高圧端子21,ばね22,ゴムブーツ部材23,過早着火防止用高圧ダイオード24,シールゴム部材25、及びイグナイタユニット30から構成されている。
イグナイタユニット30は、箱形にプレス成形された銅またはアルミニウム製の金属製ベース36を有し、この金属製ベース36は、パワートランジスタチップ31とハイブリッドIC回路36を有している。イグナイタ端子32は、接着材39を介して金属製ベース36に一体的に形成された端子台37に固着されている。イグナイタ端子32は一次コイル端子33とコネクタ側端子35に接続されている。イグナイタユニット30は、コネクター34を有している。
センタコア17は、点火装置10の中央部に配置され、このセンタコア17は方向性珪素鋼板をプレス積層して構成されている。一次ボビン11はセンタコア17の外周に嵌合され、そしてエナメル線等の二次コイル12は一次ボビン11に巻層されている。二次ボビン13は一次ボビン11の外側に配置される。複数に分割された二次コイル14は二次コイル13に所定の間隔で巻き付けられている。外装ケース15は、二次ボビン13の外周に巻層されている。
外装ケース15はイグナイタケース部15aとコイルケース部15bとから構成され、コイルケース部15bは外側に垂直に伸びる突起部15b1を有している。サイドコア18は、外装ケース15のコイルケース部15bの外側に配置されている。
図3の(a)は本発明の内燃機関用点火装置の内側サイドコアの斜視図、図3の(b)は本発明の内燃機関用点火装置の外側サイドコアの斜視図である。
サイドコア18は内側珪素鋼板(内側サイドコア)18aと外側珪素鋼板(外側サイドコア)18bの二つの珪素鋼板18a,18bの積層構造で構成される。二つの珪素鋼板18a,18bはそれぞれ一枚の方向性珪素鋼板で作られている。サイドコア18の内側珪素鋼板18aは、0.35mmの板厚の一枚の方向性珪素鋼板で作られている。内側珪素鋼板18aは、垂直に伸びるスリット18a1を有して、ほぼ管状に丸めて形成されている。内側珪素鋼板18aは外装ケース15の外周に嵌合され、内側珪素鋼板18aのスリット18a1は外装ケース15のコイルケース部15bの突起部15b1に位置させられる。なお、このコイルケース部15bの突起部15b1は外装ケース15に必ずしも設ける必要はない。
サイドコア18の外側珪素鋼板18bは、0.35mmの板厚の一枚の方向性珪素鋼板で作られている。外側珪素鋼板18bは、垂直に伸びるスリット18b1を有して、ほぼ管状に丸めて形成されている。外側珪素鋼板18bは、内側珪素鋼板18aの外周に積層して重ねられる。従って、サイドコア18の積層構造は、内側珪素鋼板18aと外側珪素鋼板18bとからなり、合計0.7mmの板厚を有する。外側珪素鋼板18bのスリット18b1は外装ケース15のコイルケース部15bの突起部15b1の間に位置させられる。
本発明の上記実施例の点火装置10においては、内側珪素鋼板18aと外側珪素鋼板18bとから構成されるサイドコア18の積層構造は、スリット18a1を有する内側珪素鋼板18aの垂直側壁端部との間にスリット18b1を有する外側珪素鋼板18bの垂直側壁端部との間に、ギャップ(空間)gを形成している。
ギャップgを形成する内側珪素鋼板18aのスリット18a1と外側珪素鋼板18bのスリット18b1は、コイルケース部15bの突起部15b1によって電気的に絶縁して分離されている。そしてスリット18a1とスリット18a1とを有するサイドコア18は、磁束の1ターンショートを防止する。
点火装置10のサイドコア18として使用される方向性珪素鋼板と無方向性珪素鋼板については、商業上に販売されている珪素鋼板の板厚として一般的に四種類のものがあり、これらは0.23mm,0.3mm,0.35mm及び0.5mm板厚の種類がある。特に、本発明においては、サイドコア18として、一例として、一枚で用いられる珪素鋼板としては板厚が0.5mmが好適に使用でき、二枚あるいは三枚で用いられる珪素鋼板の積層構造としては板厚が0.35mm(合計板厚0.7mmあるいは1.05mm)のものが好適に使用できる。
一次ボビン11は熱可塑性合成樹脂(例えば、変成ポリフェニレンオキサイド(以下「変成PPO」という)等)で成形して作られる。この一次ボビン11には一次コイル12が巻装されている。
前記一次ボビン11は、熱衝撃試験後に一次ボビン11と高電圧を絶縁するためのエポキシ樹脂部材16が剥離して電界集中が起こり絶縁破壊が起こるのを防止するため、エポキシ樹脂部材16との接着性を考慮して変成PPOで成形する。本発明の内燃機関用点火装置10がエンジンのプラグホール部内に取り付けられることを考慮すると、一次ボビン11としての変性PPOの熱変形温度は150℃以上の材料を使用したほうがよい。
図4の(a)は本発明の内燃機関用点火装置の溝(切欠き)を有する一次ボビンの斜視図、図4(b)は図4の(a)の溝を有する一次ボビンの平面図である。
図4の(a),(b)に示すように、一次ボビン11に一次コイル12の巻線部に高電圧絶縁用エポキシ樹脂部材16が含浸しやすいように深さ0.1〜0.5mmの溝(切欠き)11a及び11bを設けている。一次コイル12は0.3〜1.0mm程度のエナメル線を一層当り数十回ずつ、数層にわたり合計100〜300回程度積層巻されている。熱可塑性合成樹脂(例えば、変成PPO等)で成形して作った二次ボビン13には二次コイル14が巻装されている。二次ボビン13はセンタコア17と二次コイル14の間に配置され、二次コイル14で発生した高電圧を絶縁する役目もある。
ここで、センタコア17は接地(GND)から浮かしているため、二次コイル14で発生する電圧の中間電位となる。センタコア17と二次コイル14の電位差を絶縁するためには、二次ボビン13の肉厚を0.5〜1.2mmとし、更に二次コイル14とセンタコア17の間の電界集中を防止するために、二次ボビン13の内側に可撓性エポキシ樹脂部材19を真空注入する。二次コイル14は線径0.03〜0.06mm程度のエナメル線を用いて合計10,000〜30,000回程度分割巻されている。
外装ケース15は、熱可塑性合成樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」という)やポリフェニレンサルファイド(以下「PPS」という)等で成形して作られている。この外装ケース15は、高圧側にゲートを設けて高圧側にボイドができないようにしている。センタコア17は板厚0.2〜0.7mmの珪素鋼板をプレス積層して形成している。
サイドコア18と、センタコア17の下部に配置されたマグネット20は、点火装置10をエンジンのプラグホール部に実装した際に、センタコア部の有効磁束φxを最も良く活用できるように、かつ、二次コイル14とサイドコア18の間に発生する浮遊容量Cを合理的に削減できるように配置する。
図5は本発明の内燃機関用点火装置をエンジンに実装した際の磁束の流れを示す図である。
図5に示すように、点火装置10をエンジンのプラグホール部に実装した際に、センタコア17部の有効磁束φxは、サイドコア18部の磁束φ1 とエンジンのプラグホール部43の磁束φ0とに分かれる。エンジンのプラグホール部43の磁束φ0により、1ターンショートのシリンダヘッドカバーがアルミニウム製の場合のサイドコア18の厚さとエンジンの二次電圧の関係は次のように示される。
φx≒φ1+φ0
V2≒Nxdφx/dt
V2′≒Nxd(dφx+φ0)/dt
ここで、V2は単品点火装置の場合の二次電圧、V2′はエンジンに実装された場合の点火装置の二次電圧である。
本発明の上記実施例の点火装置10によれば、サイドコア18を板厚0.35mmのスリットを有する方向性珪素鋼板を二枚重ねて合計板厚0.7mmにすることにより、磁束の1ターンショートを防止し、かつエンジン要求二次電圧以上の所定の二次電圧を得ることができ、従ってエンジン要求二次電圧をクリアできる。
図6は内燃機関のシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーがともにアルミニウム製の場合のサイドコアの長さと点火装置の二次電圧の関係を示す。
図6に示すように、例えば、サイドコアの上端はプラグホールを形成したエンジンのシリンダヘッドの上端よりも高く位置することが望ましい。具体的にいえば、サイドコアの上端はエンジンのシリンダヘッドの上端よりも高く位置させるか、サイドコアの上端はエンジンのシリンダヘッドの上端より10mm高く位置させる。上記構成により、点火装置10の二次電圧(V1)はエンジンの要求するエンジン要求二次電圧(V2)より高いので、点火装置10はエンジンに確実に着火できる。
図7は、エンジンのシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーがともにアルミニウムで作られた場合の本発明の内燃機関用点火装置の断面図である。
図7に示すように、アルミニウム製のシリンダヘッド41aとアルミニウム製のシリンダヘッドカバー42aは点火装置10を収納するプラグホール部43aを形成する。点火プラグ44aは点火装置10の下部に配置されている。
サイドコア18の上端18cがシリンダヘッドカバー42aの上端42a1と同じかそれよりも高い場合には、点火装置10の二次電圧は変わらない。しかしながら、サイドコア18の上端18cが、シリンダヘッドカバー42aの上端42a1よりも低い場合には、点火装置10の二次電圧は低下する。このサイドコア18の円周上の少なくとも1箇所は1ターンショートを防止する切欠き(切れ目,スリット18aまたは18b)を設けている。
シリンダヘッド41aとシリンダヘッドカバー42aがともにアルミニウム製の場合、サイドコア18は、板厚0.3〜0.5mmの珪素鋼板を管状に丸めて2〜3枚重ね肉厚を0.6mm以上とし、サイドコア18の上端18cをシリンダヘッドカバー42aの上端42a1と同じ程度かセンタコア17の上端17aよりも下方とする。
図8は、エンジンのシリンダヘッドがアルミニウム製でシリンダヘッドカバーが熱硬化性樹脂製である場合の本発明の内燃機関用点火装置の断面図である。
図8に示すように、アルミニウム製のシリンダヘッド41bと熱硬化性樹脂製のシリンダヘッドカバー42bは点火装置10を収納するプラグホール部43bを形成する。点火プラグ44bは点火装置10の下部に配置されている。
シリンダヘッド41bがアルミニウム製でシリンダヘッドカバー42bが熱可塑性合成樹脂製(例えば、ポリプロピレンやナイロン6やナイロン66やナイロン12等)の場合、サイドコア18は厚さ0.3〜0.5mmの珪素鋼板を管状に丸めて2〜3枚重ね肉厚を0.6mm以上とし、サイドコア18の上端18cをシリンダヘッド41bの上端41b1と同じ程度かセンタコア17の上端17aよりも下方とする。
シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーがともにアルミニウム製で、エンジンのプラグホール部に鉄製のプラグチューブが圧入されている場合、サイドコアは厚さ0.3〜0.5mmの珪素鋼板を管状に丸めて1〜2枚重ね肉厚を0.6mm以上とし、サイドコアの上端をシリンダヘッドカバーの上端と同じ程度かセンタコアの上端よりも下方とする。
図9は、エンジンのシリンダヘッドがアルミニウム製でシリンダヘッドカバーが熱硬化性樹脂製であり、鉄製のプラグチューブがエンジンのプラグホール部に収納されている場合の本発明の内燃機関用点火装置の断面図である。
図9に示すように、アルミニウム製のシリンダヘッド41cと熱硬化性樹脂製のシリンダヘッドカバー42cは点火装置10を収納するプラグホール部43cを形成する。点火プラグ44cは点火装置10の下部に配置されている。
シリンダヘッド41cがアルミニウム製でシリンダヘッドカバー42cが熱可塑性合成樹脂製(例えば、ポリプロピレンやナイロン6やナイロン66やナイロン12等)であり、エンジンのプラグホール部43cに鉄製のプラグチューブ45が圧入されている場合、サイドコア18は厚さ0.3〜0.5mmの珪素鋼板を管状に丸めて1〜2枚重ね肉厚を0.6mm以上とし、サイドコア18の上端18cをシリンダヘッド41cの上端41c1と鉄製のプラグチューブ45の上端45aのいずれか高い方の上端と同じ程度かセンタコア17の上端17aよりも下方とする。
図10の(a)はマグネットがセンタコアの上部に位置している本発明の内燃機関用点火装置のセンタコアとマグネットの位置関係図、(b)はマグネットがセンタコアの下部に位置している本発明の内燃機関用点火装置のセンタコアとマグネットの位置関係図、(c)は二個のマグネットがセンタコアの上部と下部に位置している本発明の内燃機関用点火装置のセンタコアとマグネットの位置関係図である。
図10の(a),(b),(c)のようにセンタコア17の一端もしくはセンタコア17の両端には、一次コイル12で形成された磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるマグネット20(20a,20b,20c0,20d)を備えている。
マグネット20は、シリンダヘッド41aとシリンダヘッドカバー42aがともにアルミニウム製の場合、センタコア17の両端にマグネット(20c,20d)を装着する方が効率良く磁束を発生させることができる。
シリンダヘッド41bまたは41cがアルミニウム製でシリンダヘッドカバー42bまたは42cが熱可塑性合成樹脂製の場合には、センタコア17の一端にマグネット20(20aまたは20b)を装着するだけで効率良く磁束を発生させることができる。この場合、マグネット20(20aまたは20b)はセンタコア17の熱可塑性合成樹脂製シリンダヘッドカバー42b、42c側に装着するよりも、アルミニウム製シリンダヘッド41b,41c側に装着した方が効率良く磁束を発生させることができる。
図11は点火装置の取付位置がセンタコアの上端より低く位置する場合の、本発明の内燃機関用点火装置の他の実施例を示す断面図である。
従来の点火装置ではコイルの取付位置をセンタコアの上端よりも下げることができなかったが、本発明では図11のように点火装置10の取付位置46をセンタコア17の上端17aよりも下げることができるため、点火プラグ44(44a,44b,44c)から点火装置10の取付位置46までの距離が短かいエンジンにも取り付けることができる。
本発明の点火装置10の構成部品は、内側からセンタコア17,二次コイル14,一次コイル12,外装ケース15,サイドコア18の順に同心状に配置している。これらのコイル部は外装ケース15の中に挿入され、エポキシ樹脂部材16等の絶縁層で高電圧を絶縁する。
このエポキシ樹脂部材16は、熱衝撃性(−40℃と130℃の繰返し試験等)と高温下での耐高電圧特性等を向上させるため、硬化後のガラス転移点が120〜162℃、かつ熱膨張係数がガラス転移点以下の温度範囲における平均値として10〜50×10-6のものを使用する。プラグホール部43に収納される円筒形点火装置10では、一次コイル11の発熱をいかにプラグホール部43の外の空気に逃がすかが最大の課題である。
図12は本発明の内燃機関用点火装置で発生した熱の流れを示す説明図である。
一次コイル12および二次コイル14で発生した熱(通常、二次コイル14の発熱は一次コイル12の発熱の半分以下となり、一次コイル12と二次コイル14の電力損失を合計すると約4W以下となる)は、図12に示すようにエポキシ樹脂部材16からセンタコア17を通して空気中に逃げる熱流Aとエポキシ樹脂部材16からサイドコア18を通して空気中に逃げる熱流Bとが存在する。
このため、熱(電力損失)と一次コイル12の温度上昇とプラグホール部43の外側の周囲温度との関係を熱抵抗で表すと、約15℃/W(プラグホール部43の上部が風によって冷やされる場合は、約5℃/W〜10℃/Wとなる)となるような熱伝導の良いエポキシ樹脂部材16を使用した構造を採用している。二次コイル14で発生した高電圧は高圧端子21,ばね22等を介して点火プラグ44に供給される。点火プラグ44が挿入される部分は、シリコンゴム等のゴムブーツ部材23で絶縁する。
図13は本発明の内燃機関用点火装置の外装ケースのイグナイタケースユニットの回路図である。
コイル部の上部に設置されるワンチップイグナイタ50は、図13に示すように、絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ(以下「IGBT」という)51と電流制限回路52及び入力抵抗53から構成されている。IGBT51は、メインIGBT54とサブIGBT55で構成されている。電流検出用負荷56は、サブIGBT55のエミッタと接地(GND)間に設けられている。
IGBT51のゲートとコレクタ間には、温度特性に優れたポリシリコンで構成した双方向ポリシリコンツェナーダイオード57を挿入し、一次電圧を350〜450Vでクランプしている。入力と接地(GND)間には、ブリーダ抵抗58を挿入し、入力信号接続部の接点電流を1mA以上とし、端子のめっきを錫めっきでも十分な接続信頼性が得られるように構成している。
前記ワンチップイグナイタ50は、IGBT51が接合されている側のヒートシンクの下部に放熱用の銅又はアルミニウム製の金属板をシリコン接着剤で接着し、IGBT51と端子はアルミワイヤで接続してエポキシ樹脂で成形したTO−3P又はTO−220タイプとしている。
以下、本発明の別の実施の形態について、図面を参照し説明する。
図14は、本発明による一実施例の内燃機関用点火装置の構成を示す断面図である。図において、1次ボビン101には1次コイル102が巻層されている。また、2次ボビン103には2次コイル104が巻層されている。1次コイル102はエナメル線を積層巻きしたものである。2次コイル104は分割巻きしたものである。
コイルケース105bは、2次コイル104の外側に配置されている。センタコア107は1次ボビン101の内側に配置され、珪素鋼板をプレス積層したものである。サイドコア108は2次コイル104を収納するコイルケース105bの外側に配置され、薄い珪素鋼板を管状に丸めたものである。そして、磁束の1ターンショートを防ぐため、サイドコア108円周上の少なくとも一箇所は切れ目108aを設けている。センタコア107とサイドコア108を磁気的に結合して閉磁路を形成するために、2次コイル104の低圧側に低圧側コア1018を、2次コイル104の高圧側に高圧側コア109を配置する。
そして、低圧側コア1018の上部は可撓性エポキシ樹脂やゴムなどの弾性部材1012でカバーする。これにより、2次コイル104などを絶縁する絶縁用樹脂としての絶縁用エポキシ樹脂106と、センタコア107と、低圧側コア1018とを隔離することができる。高圧側コア109は2次ボビン103に設けられたポケット部103aに収容され絶縁用エポキシ樹脂106により隔離されている。閉磁路コアの一部にはコアギャップがあり、このコアギャップには1次コイル102により形成された磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるマグネット1010を備えている。上記のような構成部品からコイル部が構成されている。
このコイル部は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPSまたはPPS樹脂と略す)などのような耐熱性,耐電圧性を有する合成樹脂で一体成形された、コイルケース105bの中に圧入収容され、更に、充填される絶縁用エポキシ樹脂106で高電圧から絶縁されると共に固定される。2次コイル104で発生した高電圧は、点火装置の全長を少しでも短くするために、長手方向に対して垂直方向に配置された過早着火防止用の高圧ダイオード1017,高圧端子1013,スプリング1014を介して後述する点火プラグに供給される。点火プラグが挿入される部分は、シリコンゴム等のゴムブーツ1015で絶縁する。シリンダヘッドカバーと接する部分には、即ち、内燃機関のプラグホールの上面近傍に対応する部位には、プラグホール外からプラグホール内への浸水を防止する環状のシールゴム1016が設けられ該シールゴム1016は、収納体としてのコイルケース105bに嵌挿されている。したがって、シール体としてのシールゴム1016は、プラグホール内外の環境を隔絶していると言える。
一方、コイル部の上部に近接配置されるイグナイタ部は、イグナイタユニット1020やパワートランジスタチップ1021などから構成されている。即ち、イグナイタユニット1020は、箱型にプレス成形された銅またはアルミ製の金属製ベース1026に、パワートランジスタチップ1021とハイブリッドIC回路1028が内蔵されており、金属製ベース1026内にはシリコンゲル1029が充填されている。金属製ベース1026は、イグナイタ側端子1022を熱可塑性合成樹脂などで一体成形支持している端子台1027にシリコン接着剤で固着されている。
そして、イグナイタ部を収容するイグナイタケース105aは、コネクタ1024を兼ねてポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBTまたはPBT樹脂と略す)などの熱可塑性合成樹脂で一体成形されている。イグナイタケース105a内には絶縁用エポキシ樹脂106が充填され、イグナイタユニット1020などが絶縁固定されている。また、コイル部とイグナイタ部とコネクタ1024のコネクタ側端子1025とは、イグナイタ側端子1022が1次コイル端子1023ならびにコネクタ側端子1025に溶接されて、電気的に接続される。
次に、図15を参照して内熱機関用点火装置の詳細構成について説明する。
図15は、図14の実施例の主要構成部品の展開図である。
センタコア107は、低圧側コア1018と一体にプレス加工され且つ積層されたものである。マグネット1010が取り付けられたセンタコア107及び低圧側コア1018から成るT字型コアは、一次ボビン1の内側に収容される。T字型コアを内包した一次ボビン101は、圧入部101cを介して2次ボビン103に圧入される。2次ボビン103は半径方向から挿入される高圧側コア109を収納するポケット部103aを有し、該ポケット部103aに高圧側コア109を内包した後に、圧入部103cを介してコイルケース105bに圧入固定される。
そして、一次ボビン101及び二次ボビン103、ならびに二次ボビン103及びコイルケース105bの嵌合構造と、高圧側コア109のポケット挿入構造と、絶縁用エポキシ樹脂106の充填構造とによって、コイル部は固定される。コイルケース105bの外側に配置されて外側閉磁路を形成する円筒形のサイドコア108は、軸方向に延長し円周方向に拡がる事の可能な切れ目108aを有しこの切れ目を広げることでコイルケース105bへの挿入が容易に可能ともなっている。
図16は、図14の実施例を内燃機関に搭載した状態の断面図である。本発明による実施例の円筒形の内燃機関用点火装置は、図16に示すように内燃機関に搭載される。1039は内燃機関のシリンダヘッドカバー、1030はシリンダヘッドである。
点火プラグ1032は、シリンダヘッド1030の燃焼室に突き出すように固定されている。内燃機関用点火装置は、イグナイタケース105aに設けられた取付部105hを介して取り付けボルト1031でシリンダヘッドカバー1039に固定される。内燃機関用点火装置のコイルケース105bは、燃焼室で発生した熱エネルギを受け易いシリンダヘッド1030及びシリンダヘッドカバー1039に穿たれたプラグホール1040内に挿入されるため、150℃位の高い耐熱性が要求されるものである。
そして、コイルケース105bが挿入されるプラグホール1040(孔径及び深さ)は、所定の機種の内燃機関に対し、所定の規定で標準化されている。
次に、図17,図18を参照して外装ケースとしてのイグナイタケース105a及びコイルケース105bについて説明する。
図17は、本発明による一実施例のイグナイタケースの鳥瞰図である。図18は、本発明による一実施例のコイルケースの鳥瞰図である。
図17において、コネクタ1024を兼用しているイグナイタケース105aは、コネクタ1024として要求される衝撃強度や寸法精度を確保する点から、PBT樹脂で形成される。特に、イグナイタケース105aに兼用されているコネクタ1024は、異なる仕様の相手コネクタに対応するために、種々の形態を採っており、イグナイタケース105aも種々製作される。かつ、相手コネクタと嵌合するコネクタ1024は複雑な形状を有するので、スライド成形加工される。従って、コネクタ1024を兼用するイグナイタケース105aには、成形性が良いという材料特性も要求される。
このように、異なる仕様の相手コネクタに対応するコネクタ1024を有するイグナイタケース105aが、従来技術の外装ケースのように一体形成された構造では、標準化することは困難であると言える。
そこで、図17,図18に示すように外装ケースは、イグナイタケース105aとコイルケース105bとに2分割する。そしてイグナイタケース105aに一体化するためのコイルケース105bとの結合部(すなわち、嵌合部)を設け、該結合部に、抜け防止用の段付部105cと廻り止め防止用兼位置決め用の突起部105eを設ける。さらに、イグナイタ部としてのイグナイタユニット1020等が収容される部分はカップ(内箱)状に形成する。
一方、図18において、前述のように標準化されているプラグホール1040に挿入されるコイルケース105bは、耐熱性などの点から、PPS樹脂で形成される。あるいは、後述するようなPPS樹脂に変性ポリフェニレンオキサイド樹脂(以下、変性PPOまたは変性PPO樹脂と略す)を配合剤として、例えば、約20(%)配合した混合樹脂で形成される。
そして、図のようにコイルケース105bには一体化するためのイグナイタケース105aとの結合部(すなわち、嵌合部)を設け、該結合部に、抜け防止用の段付部105dと、廻り止め防止用兼位置決め用の切欠部105fとを同時に形成する。ここで、プラグホール1040の標準化を活かすために、規定のプラグホール1040の寸法に対応して、コイルケース105bの外形寸法(例えば、段付部105dの直径φD,ケース本体の直径φd,全長Lなど)は統一され、コイルケース105bの共用化が図られている。
また、段付部105dの直径φDと嵌合する図17に示した段付部105cの直径φDは同じ寸法であり、特に、段付部105cの直径φDは、異なる仕様の相手コネクタに対応するために異なる形状で製作された各イグナイタケース105aに対して同一直径となっており、プラグホール1040の標準化を活用するために統一される。
図19は、本発明による一実施例のコイルケースとイグナイタケースとの結合部において、両者を一体に結合した状態を示す断面図である。
イグナイタケース105aとコイルケース105bとを、実装される環境条件の違いや種々の要求コネクタ仕様に対応できるように2分割したが、最終的に内燃機関用点火装置として用いるには、一体に結合されていなければならない。
そこで、2分割された部位に該当する、イグナイタケース105aの段付部105cとコイルケース105bの段付部105dとにおいて、両者は結合される。換言すれば、挿入される内燃機関のプラグホールの上面近傍に対応する部位に相当する結合部(すなわち、嵌合部)にて、両者は嵌合され一体に結合される。
具体的には、図19の実施例の場合は、結合部に設けてあるV字型溝105gに接着剤1033を塗布し、結合部は接着によって結合される、即ち、接合される。このとき、突起部105eと切欠部105fとが噛み合って回転方向が固定される。
上記のように、本実施例による外装ケースは、異なる仕様の相手コネクタに対応するために種々の形状に形成されるイグナイタケース105aと、標準化されているプラグホール1040に対応し標準化された外形寸法(直径と全長)を有するコイルケース105bとに2分割され、該イグナイタケース105a及びコイルケース105bは、2分割された部位にて一体に結合されているものである。
更に、両段付部105c,105dの結合面(すなわち、嵌合面)は、コイルケース105bの軸方向(即ち、プラグホール1040の孔軸方向)とコネクタ1024の接続方向(プラグホールの孔軸方向に直角な方向)との「直角度」や、コイルケース105bの軸心とイグナイタケース105aに設けられた取付部105hの中心との距離の「寸法精度」が確保されるように形成されていて、換言すれば、両段付部105c,105dの結合部は、コイルケース105bの長手方向の軸方向(即ち、プラグホール1040の孔軸方向)に対し垂直なる当接面と、コイルケース105bの軸心と同心となっている当接面とを有して形成されていて、結合部においてガタがないように嵌合され強固に接合される。
表1は、コイルケースに用いられる材料、及びコネクタを兼用するイグナイタケースに用いられる材料を要求特性から評価し表に纏めたものである。コイルケースまたはコネクタとして使用が考えられる材料に対して、使用上から要求される特性項目毎に、優れた材料特性を呈示する順と、要求度合いの順に、二重丸,○,△で表わし評価した結果を示している。
すなわち、コイル部を収容しプラグホール内に挿入されるコイルケースの要求特性は、主として耐熱性,耐電圧性である。プラグホール外に位置しイグナイタ部を収容するがコネクタとしての機能が重要視されるイグナイタケースの要求特性は、主として衝撃強度,耐薬品性である。
このように、外装ケースとしてのイグナイタケース105aならびにコイルケース105bの材料に対し、要求される特性が異なる。従って、コイルケース及びコネクタ(即ち、イグナイタケース)は2分割しかつ一体に結合することが望ましいことが、この表からも理解される。
そして例えば、コネクタとしての要求特性を満たす材料としては、PBT樹脂がある。
また、コイルケースとしての要求特性を満たす材料としては、PPS樹脂またはPPSと変性PPOの混合樹脂があると言える。
ここで、PPS樹脂を用いるに当たり、密着性(または接着性)に対し考慮する必要がある。即ち、充填封入する絶縁用エポキシ樹脂106とコイルケース105bとの密着性が悪く、剥離してしまうと欠陥となり、点火ミスに到る可能性がある。
したがって、コイルの長期絶縁性確保のためには、両者の密着性を長期的に持続させる必要がある。具体的には、内燃機関の温度環境条件に等価である−40℃と130℃の熱ストレスを交互に繰り返し加えて、300サイクル以上剥離が発生しないようにすることが望まれる。そして、コイルケース105bの材料としてPPS樹脂を単独で用いた場合、使用条件によっては、300サイクル未満で剥離してしまう場合があることが判明した。
一方、変性PPOは、絶縁用エポキシ樹脂106との密着性が良いことから、一般的に点火装置の2次コイル104の材料としても使用されている。しかし、耐薬品性が悪いことから、外気に曝される個所に用いるには適さない。
ところで、前述したように、内燃機関のプラグホールの上面近傍に対応する部位に嵌挿されているシール体としてのシールゴム1016は、プラグホール内外の環境を隔絶することによって、浸水防止の点以外に、コイルケース105bを外気に曝させないという点で重要な役割を果たしていることが判る。したがって、コイルケース105bに変性PPOが使えるという可能性が出てくる。
そこで、コイルケース105bに対し、耐熱性,耐薬品性,耐電圧性に優れたPPS樹脂と充填封入する絶縁用エポキシ樹脂106との密着性に優れた変性PPOとの混合材で、例えばPPS基材に変性PPOを約20(%)混合し、それぞれの特性を活かした混合材料で、対応するものである。
即ち、コイルケース105bは、耐熱性,耐電圧性に優れる材料特性を有する基材樹脂に、コイル部を絶縁する絶縁用樹脂との密着性に優れる材料特性を有する配合剤を混ぜ合わせ、それぞれの樹脂が有する優れた材料特性を活かした混合材料から形成されていることが望ましいと言える。
換言すれば、シールゴム1016の機能のプラグホール内外環境を隔絶することを旨く利用することが可能である。即ち、本発明による内燃機関用点火装置は、電気的に接続され近接配置されたコネクタを有するイグナイタ部及びコイル部と、該イグナイタ部及び該コイル部を収容する収納体と、該収納体に嵌挿されて当該収納体が挿入される内燃機関のプラグホール内外の環境を隔絶するシール体とを備え、収納体は、シール体が嵌挿されている部位(近傍を含む部位)にて、コイル部を収容しプラグホール内に挿入されるコイル収納部と、イグナイタ部を収容しプラグホール外にて異なる仕様の相手コネクタに接続されるコネクタを有するイグナイタ収納部とに2分割され、該コイル収納部と該イグナイタ収納部は、2分割された部位にて一体に結合されているものであると言える。
ところで、要求される環境仕様に許容範囲があれば、コイルケース105bとイグナイタケース105aとを同一材料としても可である。この場合、2分割された両者を別々に形成するので、それぞれの形状に合わせ成形型の型割方向,注入ゲート位置,押し出しピン位置等の成形条件を適正に設定することができ、従って、成形上の欠陥が少なく、前述の「直角度」や「寸法精度」に優れたケースを製作することができるという利点を十分に活かすことができる。この利点によって、使用範囲が広げられる。そして、本実施例に対しては、他の樹脂に比べ耐熱性,耐薬品性,耐電圧性にバランスが取れているPPS樹脂が望ましいと言える。
以上を纏めれば、本実施例の特徴は、外装ケースとしての収納体は、主にコイル部を収容し孔径等が標準化されている内燃機関のプラグホール内に挿入されるコイル収納部としてのコイルケース105bと、主にイグナイタ部を収容しプラグホール外にて異なる仕様の相手コネクタと嵌合するコネクタを有するイグナイタ収納部としてのイグナイタケース105aとに2分割され、該コイルケース105bと該イグナイタケース105aとが該2分割された部位にて接着などによって一体に結合された構成であると言える。
換言すれば、収納体は、当該収納体が配置される環境から定められる対環境要求仕様が相違する内燃機関のプラグホール内外部位を境として、プラグホール内に挿入されるコイル収納部と、プラグホール外に位置するイグナイタ収納部とに2分割され、該2分割された部位が結合されているとも言える。
また、コイル本体を収納するコイルケースと、コネクタを兼ねイグナイタを収納するイグナイタケースとを分離し、コイルケースを耐熱性,耐電圧性,コイル絶縁用樹脂との密着性などに優れた合成樹脂とするものであるとも言える。
図20は、本発明による他の実施例のコイルケースとイグナイタケースとの結合部において両者を一体に結合した状態を示す断面図である。図20に示すように、コイルケース105bは、コイルケース105bの段付部105dをイグナイタケース105aの底部に沿って展開して延ばした部分(延展部)を有する構成である。延展部を有することで、前述の「直角度」や「寸法精度」を向上させることができると共に、当接面が大きくなるので結合部での嵌合の安定性が得られる。また、耐熱性の優れたコイルケース105bの延展部がイグナイタケース105aを覆うので、内燃機関のシリンダヘッドカバー1039等と対面するイグナイタケース105aの底部の耐熱性を向上することができる。
すなわち、耐熱性にやや劣る合成樹脂を用いたイグナイタケース205aを用いても、プラグホール外の内燃機関のシリンダヘッドカバー2039等と対面する部位における最高温度130℃程度となる厳しい耐熱環境条件に対応させることができる利点がある。
また、コイルケース205bとイグナイタケース205aとの固定は、接着剤2033にて接合する方法、充填する絶縁用エポキシ樹脂206にて同時注形し固定する方法、ならびに、コイルケース205bとイグナイタケース205aとを予め別々に製作し、その後に一体成形し固定する方法などがあり、いずれの方法でも可である。
図29は、本発明による別の実施例のコイルケースとイグナイタケースとの結合部において両者を一体に結合した状態を示す断面図である。すなわち、上述した一体成形し固定する方法の成形中のケースの状態を断面にて示した図である。
図において、2034aは成型金型の左右のスライド型、2034bは中子型であり、矢印がそれぞれの型の可動スライド方向である。一体成形する場合は、段付部205cまたは段付部205dのどちらか一方を、一体成形する相手側ケースに対して埋設させるように構成すれば、該埋設した段付部が抜け防止あるいは廻り止め防止を兼用し、成形加工の一回の工程で、結合(接合)と抜け防止あるいは廻り止め防止が行えるので有効である。
以上のように、コイルケース205bと、イグナイタユニット2020等を収容しコネクタ2024を兼ねるイグナイタケース205aとを別々に成形することで、コネクタならびにコイルケースとしてそれぞれに要求される特性を満足した円筒形の内燃機関用点火装置を提供することができる。
また、イグナイタケース205aの形状を、コネクタ2024がイグナイタユニット2020の横方向に延長する配置、すなわち、コネクタ2024が内燃機関のプラグホールの孔軸方向に直角な方向に延びる形状とすれば、内燃機関用点火装置の縦方向の全長が短くなり、スペース効率を向上することができる。
また、一般的に点火装置は、異なる仕様の相手コネクタを有する制御装置などに接続されるが、該相手コネクタのコネクタの向きや取り付け位置等が異なり、各内燃機関に対応して異なった形状のコネクタとなっている。本発明によれば、上記対応が、イグナイタケース205a側のみの寸法変更にて対応することができるため、コイルケース205b側の共用化が図られ、部品の標準化が図れ、安価な内燃機関用点火装置を提供する点から有効である。
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照し説明する。
図22は、本発明による一実施例の内燃機関用点火装置を示す部分断面図である。図22の内燃機関用点火装置は、内燃機関に取り付けられた状態で示されている。図23は、図22の内燃機関用点火装置を示す鳥瞰図である。図24は、図22の内燃機関用点火装置と内燃機関の一部を示す鳥瞰図である。図22〜図24を同時に参照しながら、本発明による内燃機関用点火装置の構成について、円筒形点火装置の場合を取り上げて詳説する。
図23に示すように、本実施例の円筒形点火装置(以下、点火装置と略す)2040の外観形状は、ケース201と、サイドコア202と、ゴムブーツ203と、シールゴム204とから構成されている。図22に戻り、点火装置2040は、コイル部2020が円筒形のケース201のコイルケース201a内に収納されているものである。シリンダヘッドカバー206と接する側のコイルケース201aには、環状のシールゴム204が嵌挿されて(嵌め込み挿入されて)設けられ、点火プラグ209と接する側のコイルケース201aにはゴムブーツ203が設けられている。シールゴム204の上端部204eは、シリンダヘッドカバー206と接する側のケース201の下面に接触している。そして、サイドコア202は、外周表面に突起部202aを有している。なお、本実施例で言う円筒部は、主にコイルケース201aに該当するが、便宜上、シールゴム204が当接するケース201の下面を含めて円筒部と言う。
一方、点火装置の円筒部としてのコイルケース201aが軸方向に挿入されるプラグホールは、シリンダヘッドカバー206とプラグチューブ207とに設けられている。図22,図24に示すようにシリンダヘッドカバー206のプラグホールは、その先端部は土手形状になっており、換言すれば円管状となっている。また、プラグチューブ207のプラグホールは、円管であり、その円管の径はシリンダヘッドカバー206の円管より径が小さく、かつ、内側円管の端部としてのプラグチューブ207の先端部は、外側円管の端部としてのシリンダヘッドカバー206の先端部より凹んだ低い位置に配置されている。
換言すれば、本実施例の内燃機関のプラグホールは、内側円管の端部が外側円管の端部より凹んでいる同心二重円管状からなり、該プラグホールの底部に点火プラグ209を収容している構造となっていると言える。
シリンダヘッドカバー206のプラグホールの内径をφD9,点火装置の円筒部(すなわち、コイルケース201a及びサイドコア202に相当する部分)の外径をφDとすると、一般的に、隙間は、φD9−φD=2〜4(mm)となり、シールゴム204が撓むに必要な肉厚を十分に確保することができない。特に、プラグチューブ207のプラグホールの内径φD5は、φD9>φD5の関係にあり、隙間は、φD5−φD=〜2(mm)程度となり、シールゴム204に撓みを確保することはさらに困難である。
一方、シリンダヘッドカバー206とエンジンブロック208とは別々に製作されているため、一般的に、シリンダヘッドカバー206のプラグホールとエンジンブロック208に取り付けられるプラグチューブ207のプラグホールとは「ずれる」ことになる。すなわち、両プラグホールの「ずれ」として、径方向にも軸方向にも、約1(mm)程度のばらつき寸法が発生することになる。そして、シリンダヘッドカバー206とプラグチューブ207のプラグホール位置が上記のようにずれている場合にも、シールゴム204は、シール構造を形成しなければならない。
ところで、図22のように、点火装置は点火プラグ209と電気的に接続された後にねじ205を介してシリンダヘッド206に固定される。そして、ねじ205を締め付けた際に、シールゴム204とシリンダヘッドカバー206が当接するシール部に、点火装置の挿入方向とは逆の方向にシールゴム204の反力が発生している。
次に、本発明によるシールゴムのシール構造について説明する。
図25は、本発明による一実施例のシールゴムを示す断面図である。図26は、図25のシールゴムを用いた内燃機関用点火装置のシール構造を示す断面図である。本実施例の構成と動作について説明する。本実施例の場合も、点火装置の円筒部の外径をφD,シリンダヘッドカバー206のプラグホールの内径をφD9,プラグチューブ207のプラグホールの内径をφD5とする。
図25に示すように、シールゴム204は、内径φD1を有する円錐部204aと、内径φD2と外径φD3とを有する内側円筒部204cと、寸法関係をφD1<φD<φD2とする段付き部204bと、径方向に延展する面を形成する鍔部204dと、前述した上端部204eと、鍔部204dに設けた凹み部204fと、外側円筒部204gとから構成される。そして、シールゴム204は、点火装置の円筒部(すなわち、コイルケース201aまたはサイドコア202)に、圧入嵌挿されて固定されている。
シールゴム204がφD1<φD<φD2の関係となっている段付き部204bを有することにより、円錐部204a側の圧入代を大きくすることができる。
即ち、内径φD2を有する内側円筒部204cでは、点火装置の円筒部の外径φDよりも大きいので、シールゴム204の円筒部への嵌挿を容易にし、内径φD1を有する円錐部204aでは、該円錐部204aの圧入のための肉厚を十分に確保することができる利点がある。更に、円錐部204aの圧入代を大きくすることができるので、圧入力が大きくなり、点火装置をプラグチューブ207のプラグホールに差し込んだ際の円錐部204aのめくれが防止されるという利点もある。
一方、円錐部204aのテーパ面は、点火装置をプラグチューブ207に差し込む際のガイドとなる。すなわち、シールゴム204は、円筒部に嵌挿された状態において、点火プラグ209側の方向の先端に向かってその外径が漸次減少するテーパ状となっている円錐部204aおよび円錐先端部204sを有する。また、シールゴム204の内側円筒部204cの外径(φD3)の外周面は、シリンダヘッドカバー206のプラグホールの内径(φD9)の内周面に対し、非接触(φD3<φD9)とし、シールゴム204のプラグホールへの挿入を容易にもしている。
ところで、円筒部としてのサイドコア202に設けた突起部202aは、円筒部外周の一部または全周に突き出した形状であり、円筒部に嵌挿されたシールゴム204の点火プラグ側の先端となる円錐部204aの前述の円錐先端部204sより、点火プラグ209寄りの部位に形成されている。そして突起部202aの外径φD4は、φD<φD4<φD5となるような寸法関係とし、かつ嵌挿されたシールゴム204の円錐先端部204sの外径を、突起部202aの外径φD4より小さく形成されている。これによって、シールゴム204のめくれを防止することができる。
すなわち、シールゴム204が点火装置の円筒部に嵌挿された状態において、シールゴム204の円錐先端部204sは突起部202a(外径φD4)の陰に隠れた状態に204の円錐先端部204sのめくれが防止されることになる。なお、突起部202aは、円筒部としてのコイルケース201aに設けられても可である。
一方、本実施例のシールゴム204では、図26に示すように点火装置がプラグホールに挿入された時に、シリンダヘッドカバー206の先端部206aと、シールゴム204の径方向に延展する面を形成する鍔部204dとが当接することによって、シール構造を形成する。そして、シリンダヘッドカバー206内への浸水が防止される。
すなわち、前述のように、プラグホールとしての先端部206aにおいては、軸方向に約1mm程度のバラツキ寸法が発生するが、シールゴム204の鍔部204dがシリンダヘッドカバー206の先端部206aに当接し軸方向に押圧されたときに、軸方向に変形しシールするので、浸水などが防止される。
上記の鍔部204dに形成される径方向に延展する延展面とは、点火装置の円筒部(即ち、プラグホール)の径方向に延長し拡がる面を指しており、先端部206aが径方向に約1mm程度「ずれ」ても、該延展面が「ずれた」シリンダヘッドカバー206の先端部206aに必ず当接するので、確実にシールすることができることを意味している。従って、鍔部204dの延展面の広さは、プラグホールの位置ずれを十分に吸収できるほどの大きさ、換言すれば、当接してくる先端部206a(外側円管端部)の径方向のずれを逃げうる広さが必要である。例えば、少なくとも先端部206aの端部寸法と最大「ずれ」寸法を加えた以上の広さになる。
他方、前述のように、テーパ状となっている円錐部204aは、点火装置2040の円筒部をプラグチューブ207のプラグホールに挿入する際のガイドとなっているので円筒部とプラグチューブ207の「芯合わせ」が優先することになる。したがって、最大「ずれ」寸法をシリンダヘッドカバー206のプラグホールとシールゴム204との間で吸収することが必要で、上記したシールゴム204の延展面が、位置ずれを吸収しつつシール機能を果たすためには必須のこととなる。
以上のように、本発明の特徴は、プラグホールの底部にある点火プラグと接続するよう該プラグホールに軸方向に挿入される円筒部と、プラグホールの先端部に当接し当該プラグホール内への浸水を防止するよう該円筒部に嵌挿されているシールゴムとを備える円筒形点火装置であって、該シールゴムが、該先端部に軸方向から当接して、十分に軸方向に撓みかつ径方向に逃げうるシール構造(例えば、径方向に延展する延展面が形成されている鍔部)を有していることにあり、これによって軸方向または/および径方向に発生するプラグホールとの位置ずれを吸収し、確実に浸水を防ぐことができる円筒形点火装置が提供される。
換言すれば、本発明の他の特徴は、内側円管の端部が外側円管の端部より凹んでいる同心二重円管構造のプラグホールに挿入されるシールゴムは、外側円管端部に当接し当該プラグホ−ル内への浸水を防止するよう円筒部の径方向に延展する面が形成されている鍔部と、内側円管内部に当接し当該シールゴムをガイドするテーパ面を有する円錐部とを有していることにある。このような構成のシールゴムであれば該鍔部が、外側の円管端部に当接することによって軸方向に押圧されて軸方向に変形しプラグホールの軸方向の位置ずれを吸収し、かつ、鍔部の延展する面が、プラグホールの径方向の位置ずれも吸収するので、シールゴムとプラグホールの位置ずれが確実にシールされ、防水性に優れた信頼性の高い内熱機関用点火装置が提供される。
なお、上記構成において、シールゴムの内側円筒部204cの外周面が、外側のプラグホール円管の内周面に非接触である方が、シールゴムのプラグホールへの挿入が容易となるので望ましいと言える。
そして、上記のようにバラツキが十分に吸収されるので、ねじ205を介してシリンダヘッド206に点火装置を固定した際の軸方向に発生するシールゴム204の反力は低減され、すなわち、ケース1の取付位置に付加されている軸方向の歪みが低減され、ケース1の変形が防止される利点がある。
さらにまた、本発明の別の特徴は、円筒部(厳密には円筒部の一部を形成する部分)としてのケース1の下面と鍔部204dとの間に、軸方向から先端部206aに当接して軸方向に撓み変形した当該鍔部204dの膨らみを逃がしうる空隙2040を意図的に形成している点にある。この空隙2030がシールゴム204の軸方向の逃げ部となり、この逃げ部が軸方向のバラツキを十分に吸収するので、確実にシールすることができる。
なお、意図的に形成する空隙2030に関し、2つの実施例を示している。すなわち、図26において、左側図象の空隙2030は、ケース201の下面と鍔部204dに設けた凹み部204fとの間で形成された例を示している。そして、右側図象の空隙2030はケース201の下面に設けたケース凹み部201fとシールゴム204の凹みのない鍔部204dとの間で形成された例を示している。ところで、空隙2030は有った方がシールは確実に増すが、空隙2030が無く充分に柔軟性のあるシールゴム204を用いても可であることは言うまでもない。
次に、他の実施例について説明する。
図27は、本発明による他の実施例のシールゴムを示す断面図である。
図28は、図27のシールゴムを用いた内燃機関用点火装置のシール構造を示す断面図である。
本実施例は、図25,図26のように十分に軸方向に撓ませてシール構造を形成することができない場合に主に対応するもので、径方向に大きく撓ませてシールする構造の例を示している。
図27に示すように、シールゴム204は、外径φD8及び内径φD6を有し両テーパ面を有する山形状の円錐部204aと、内径φD7を有する内側円筒部204cと、寸法関係をφD7<φD<φD6とする段付き部204bと、鍔部204dと、上端部204eと、鍔部204dに設けた凹み部204fと、外側円筒部204gとから構成される。
そして、点火装置の円筒部に、嵌挿されて固定される。
なお、内側円筒部204cの径方向の肉厚tは、次の関係にあることが望ましいことは自明である。(φD7+2t)<φD9段付き部204bがφD7<φD<φD6の関係になっていることは、内側円筒部204cでは圧入嵌合することができ、円錐部204aでは、該円錐部204aにおける肉厚が大きくなっても、シールゴム204を点火装置の円筒部に嵌挿する際の挿入が容易であることになり、したがって、円錐部204aの肉厚を十分に確保することができることに結び付いている。
本実施例のシールゴム204では、シリンダヘッドカバー206のプラグホールの内側(内径φD9の部位)に円錐部204aが当接し該円錐部204aが変形することによってシール構造が形成され、シリンダヘッドカバー206内への浸水が防止される。
すなわち、シリンダヘッドカバー206の先端部206aには、前述のように径方向のバラツキが発生するため、円錐部204aは、φD8>φD9となるような寸法関係になっている。そして、シールゴム204がプラグホールに挿入された際に、シールゴム204の円錐部204aが内側に押圧されて変形することによって、径方向のバラツキが吸収される。このとき、本実施例においては、逃げ部としての空隙2030が形成される。そして、該空隙2030は、さらにも増して、径方向のバラツキを十分に吸収するので、前述の実施例と同様に確実にシールすることができる。
なお、図25に示した段付き部204bの(φD6−φD)からなる隙間が予め保有する寸法構成としているので、本実施例の空隙2030が形成される。
換言すれば、両テーパ面を有する山形円錐部としての円錐部204aが、挿入時にシリンダヘッドカバー206のプラグホールの内面に当接して当該シールゴム204をガイドしつつ径方向に撓みを形成して、径方向に発生するバラツキ寸法を吸収し、かつ当該撓みを吸収しうる空隙を内部に形成して、軸方向に発生するバラツキ寸法も十分に吸収するので、確実にシールすることができると言える。
尚、図28において、左側図象の場合は、シリンダヘッドカバー206の先端部206aがシールゴム204の鍔部204dと当接していない状態で、シールゴム204の円錐部204aがシリンダヘッドカバー206のプラグホール内側にて変形させられて、左側図象の空隙2030が、形成されている例を示している。
これに対し、右側図象の空隙2030は、シールゴム204の円錐部204aとシリンダヘッドカバー206のプラグホール内側との間、および、ケース201の下面とシールゴム204の凹み部204fとの間の2箇所で形成されている例を示している。すなわち、右側図象の場合は、上述した2つの実施例を同時に適用している例を示している。
換言すれば、本発明によるシールゴムは、軸方向からプラグホールの先端部に当接して軸方向に撓み、かつ該先端部の径方向のずれを逃げうる広さの、延展面が径方向に形成されている鍔部と、挿入時にプラグホ−ルの内面に当接して当該シールゴムをガイドしつつ径方向に撓みを形成し、かつ当該撓みを吸収しうる空隙を内部に形成している、両テーパ面を有する山形円錐部とを有していると言える。
以上のように、点火装置のシールゴム部分に、十分に径方向に撓むシール構造を形成することによって、軸方向または/および径方向に発生しているプラグホールとの位置ずれを吸収し、図25,図26に示した実施例と同様に、確実に浸水を防ぐことができる円筒形点火装置が提供される。
なお、図25,図26に示した実施例の場合は、φD9とφDの隙間が非常に狭い場合に適している。そして、図27,図28に示した実施例の場合は、図25,図26の場合よりも、φD9とφDの隙間にやや余裕がある場合に適していると言える。
本実施例によって解決しようとする課題、および実施例の特徴ある構成作用効果を整理すると以下の通りである。
従来の内燃機関用点火装置は、特開平2−228011 号に示すように、点火装置のサイドコアは、外装ケースの外周長より長い横幅を持った一枚の無方向性珪素鋼板を点火装置の外装ケースに多重に積層したスパイラル状のサイドコアに構成されている。サイドコアは約6.5重量%の珪素を含む板厚0.1mmの無方向性珪素鋼板で構成されている。しかしながら、上記従来の点火装置においては、スパイラル状サイドコアの製作には多くの時間を必要とし、結果的に高価な点火装置になっていた。
さらに、従来の点火装置のサイドコアは、外装ケースの外周のすべてを多重にまた完全に取り巻いている。いいかえれば、このサイドコアは、外装ケースの外周にギャップ(空間)を全く形成していない構成である。
従って、上記サイドコア構成を有する従来の点火装置で得られる二次電圧は低く、状況によっては従来の点火装置は、エンジンの要求する二次電圧以上の必要な二次電圧を得ることができないので、点火装置がエンジンに対して確実に点火できない場合があった。
従来の点火装置においては、点火装置を収納するプラグホール部を有するエンジンのシリンダヘッドやシリンダヘッドカバーの材質や長さに関係なく、サイドコアはセンタコアと同程度の断面積となるように巻き付けられている。
さらに、従来の上記点火装置においては、センタコアの両端に、一次コイルにより形成された磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるマグネットを備えているため、高価な内燃機関用点火装置となっていた。
本実施例では、点火装置をエンジンのプラグホール部に実装した際に、センタコア部の有効磁束を最も効率良く活用できる内燃機関用点火装置を提供することを目的とする。二次コイルとサイドコア間に発生する浮遊容量を合理的に削減できる内燃機関用点火装置を提供することを目的とする。
また、エンジンのプラグホール部のシリンダヘッドやシリンダヘッドカバーの材質や長さにより、サイドコアの厚さや長さを変えることができる内燃機関用点火装置を提供することを目的とする。さらに、センタコアの一端もしくはセンタコアの両端に入れるマグネットの枚数や厚さを変えることができる内燃機関用点火装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本実施例では、センタコア,一次ボビンに巻装された一次コイル,二次ボビンに巻装された二次コイル,外装ケース、この外装ケースの外周に配置された珪素鋼板製のサイドコアとからなり、一次コイルと二次コイルはセンタコアと外装ケースとの間に配置された内燃機関用点火装置で、この点火装置は少なくともエンジンのシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとで形成されたプラグホール部に収納されたものにおいて、サイドコアは、1ターンショートを防止するスリットを有し、エンジンの要求二次電圧以上の所定の二次電圧を得るようにした。
シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーがともにアルミニウム製の場合、サイドコアは、例えば、一枚の板厚0.3〜0.5mmを有する方向性珪素鋼板あるいは一枚の板厚0.3〜0.5mmを有する無方向性珪素鋼板を管状に丸めて形成される。
シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーがともにアルミニウム製の場合、サイドコアは、例えば、板厚0.3〜0.5mmを有し合計板厚0.6mm以上の二枚または三枚の方向性珪素鋼板あるいは一枚の無方向性珪素鋼板と少なくとも一枚の板厚0.3〜0.5mmを有する方向性珪素鋼板からなり合計板厚0.6mm以上の珪素鋼板を管状に丸めて形成される。この場合、サイドコアの上端は、シリンダヘッドカバーの上端と同じ程度かあるいはセンタコアの上端よりも下方とする。
シリンダヘッドがアルミニウム製でシリンダヘッドカバーが熱可塑性合成樹脂製(例えば、ポリプロピレンやナイロン6やナイロン66やナイロン12等)の場合、サイドコアは、例えば、一枚の板厚0.3〜0.5mmを有する方向性珪素鋼板あるいは一枚の板厚0.3〜0.5mmを有する無方向性珪素鋼板を管状に丸めて形成される。この場合、サイドコアの上端は、シリンダヘッドカバーの上端と同じ程度かセンタコアの上端よりも下方とする。
シリンダヘッドがアルミニウム製でシリンダヘッドカバーが熱可塑性合成樹脂製(例えば、ポリプロピレンやナイロン6やナイロン66やナイロン12等)の場合、サイドコアは、例えば、板厚0.3〜0.5mmを有しで合計板厚0.6mm以上の二枚または三枚の方向性珪素鋼板あるいは板厚0.3〜0.5mmを有する一枚の無方向性珪素鋼板と板厚0.3〜0.5mmを有する少なくとも一枚の方向性珪素鋼板よりなる合計板厚0.6mm以上の珪素
鋼板を管状に丸めて形成される。この場合、サイドコアの上端は、シリンダヘッドカバーの上端と同じ程度かセンタコアの上端よりも下方とする。
シリンダヘッドがアルミニウム製でシリンダヘッドカバーが熱可塑性合成樹脂製(例えば、ポリプロピレンやナイロン6やナイロン66やナイロン12等)であり、エンジンのプラグホール部に鉄製プラグチューブが圧入されている場合、サイドコアは、例えば、一枚の板厚0.3〜0.5mmを有する方向性珪素鋼板あるいは一枚の板厚0.3〜0.5mmを有する無方向性珪素鋼板を管状に丸めて形成される。この場合、サイドコアの上端は、シリンダヘッドの上端と鉄製プラグチューブの上端でいずれか高い方の上端と同じ程度かあるいはセンタコアの上端よりも下方とする。
シリンダヘッドがアルミニウム製でシリンダヘッドカバーが熱可塑性合成樹脂製(例えば、ポリプロピレンやナイロン6やナイロン66やナイロン12等)であり、エンジンのプラグホール部に鉄製プラグチューブが圧入されている場合、サイドコアは、例えば、板厚0.3〜0.5mmを有し合計板厚0.6mm以上の二枚または三枚の方向性珪素鋼あるいは板厚0.3〜0.5mmを有する一枚の無方向性珪素鋼板と板厚0.3〜0.5mmを有する少なくとも一枚の方向性珪素鋼板よりなる合計板厚0.6mm以上の珪素鋼板を管状に丸めて形成される。この場合、サイドコアの上端は、シリンダヘッドの上端と鉄製プラグチューブの上端とのいずれか高い方の上端と同じ程度かあるいはセンタコアの上端よりも下方とする。
センタコアの一端もしくはセンタコアの両端に、一次コイルにより形成された磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるマグネットを装着する。シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーがともにアルミニウム製の場合、センタコアの両端にマグネットを装着する方が効率良く磁束を発生させることができる。シリンダヘッドがアルミニウム製でシリンダヘッドカバーが熱可塑性合成樹脂製の場合には、センタコアの一端にマグネットを装着するだけで効率良く磁束を発生させることができる。この場合、マグネットはセンタコアの熱可塑性合成樹脂製シリンダヘッドカバー側に装着するよりも、アルミニウム製シリンダヘッド側に装着する方が効率良く磁束を発生させることができる。
本実施例によれば、サイドコアは、磁束の1ターンショートを防止するスリットを有し、エンジンの要求二次電圧以上の所定の二次電圧が得られるので、点火装置をエンジンのプラグホール部に実装した際に、センタコア部の有効磁束を最も効率良く活用できる内燃機関用点火装置を提供できる。また二次コイルとサイドコア間に発生する浮遊容量を合理的に削減できる内燃機関用点火装置を提供できる。
エンジンのプラグホール部のシリンダヘッドやシリンダヘッドカバーの材質や長さにより、サイドコアの厚さや長さを変えて、かつセンタコアの一端もしくは、センタコアの両端に入れるマグネットの枚数や厚さを変えることにより安価な内燃機関用点火装置を提供できる。
さらに、本実施例によれば、シールゴムとプラグホールの位置関係が径方向または軸方向または両方向にずれが生じた場合でも、確実なシール構造を形成することができるので、シリンダヘッドカバー内への浸水を防止することができる効果がある。
以下実施例に記載された実施の態様を整理すると以下の通りである。
〔実施態様1〕
センタコア,一次ボビンに巻装された一次コイル,二次ボビンに巻装された二次コイル,外装ケース、前記外装ケースの外周に配置された珪素鋼板製のサイドコアとからなり、前記一次コイルと前記二次コイルは前記センタコアと前記外装ケースとの間に配置された内燃機関用点火装置で、この点火装置はエンジンの少なくともシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとで形成されたプラグホール部に収納されたものにおいて、
前記サイドコアは、磁束の1ターンショートを防止するスリットを有し、前記エンジンの要求二次電圧以上の所定の二次電圧が得られることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様2〕
実施態様1において、前記サイドコアは、スリットを有する一枚の方向性珪素鋼板及びスリットを有する一枚の無方向性珪素鋼板のいずれかからなることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様3〕
実施態様1において、前記サイドコアは、少なくとも二枚の方向性珪素鋼板の積層構造からなり、各方向性珪素鋼板はそれぞれスリットを有し、これらのスリットはほぼ同じ位置に整列させたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様4〕
実施態様1において、前記サイドコアは、スリットを有する少なくとも一枚の無方向性珪素鋼板とスリットを有する少なくとも一枚の方向性珪素鋼板の積層構造からなり、前記少なくとも一枚の無方向性珪素鋼板の前記スリットと前記少なくとも一枚の方向性珪素鋼板の前記スリットはほぼ同じ位置に整列させたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様5〕
実施態様1において、前記シリンダヘッドと前記シリンダヘッドカバーがともにアルミニウム製の場合、前記サイドコアは板厚0.3〜0.5mmの二枚または三枚の方向性珪素鋼板をほぼ管状に丸めて重ねて合計板厚を0.6mm以上とし、各方向性珪素鋼板はそれぞれスリットを有し、これらのスリットはほぼ同じ位置に整列させたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様6〕
実施態様5において、前記サイドコアの上端は、前記シリンダヘッドの上端と同じ程度かあるいは前記センタコアの上端よりも下方であることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様7〕
実施態様1において、前記シリンダヘッドがアルミニウム製で前記シリンダヘッドカバーが熱可塑性合成樹脂製の場合、前記サイドコアは板厚0.3〜0.5mmの二枚または三枚の方向性珪素鋼板をほぼ管状に丸めて重ねて合計板厚を0.6mm以上とし、各方向性珪素鋼板はそれぞれスリットを有し、これらのスリットはほぼ同じ位置に整列させたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様8〕
実施態様7において、前記サイドコアの上端は、前記シリンダヘッドの上端と同じ程度かあるいは前記センタコアの上端よりも下方であることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様9〕
実施態様1において、前記エンジンの前記プラグホール部に鉄製プラグチューブが圧入されている場合、前記サイドコアは、スリットを有する板厚0.3〜0.5mmの一枚の無方向性珪素鋼板またはスリットを有する板厚0.3〜0.5mmの一枚の方向性珪素鋼板からなることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様10〕
実施態様9において、前記サイドコアの上端は、前記シリンダヘッドカバーの上端と同じ程度かあるいは前記センタコアの上端よりも下方であることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様11〕
実施態様5において、前記エンジンの前記プラグホール部に鉄製プラグチューブが圧入されている場合、前記サイドコアは、スリットを有する板厚0.3〜0.5mmの一枚の無方向性珪素鋼板またはスリットを有する板厚0.3〜0.5mmの一枚の方向性珪素鋼板からなることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様12〕
実施態様11において、前記サイドコアの上端は、前記シリンダヘッドの上端と鉄製プラグチューブとの上端のいずれか高い方の上端と同じ程度かあるいは前記センタコアの上端よりも下方であることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様13〕
実施態様1において、前記センタコアの少なくとも一端に、前記一次コイルにより形成された磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるマグネットを備えたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様14〕
電気的に接続され近接配置されたコネクタを有するイグナイタ部及びコイル部と、該イグナイタ部及び該コイル部を収容する収納体とを備える内燃機関用点火装置において、
前記収納体は、前記コイル部を収容し、標準化されている内燃機関のプラグホール内に挿入されるコイル収納部と、前記イグナイタ部を収容し、前記プラグホール外にあって異なる仕様の相手コネクタに接続される前記コネクタを有するイグナイタ収納部とに2分割され、
該コイル収納部と該イグナイタ収納部は、前記2分割された部位にて一体に結合されていることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様15〕
電気的に接続され近接配置されたコネクタを有するイグナイタ部及びコイル部と、該イグナイタ部及び該コイル部を収容する収納体と、該収納体に嵌挿されて当該収納体が挿入される内燃機関のプラグホール内外の環境を隔絶するシール体とを備え、
前記収納体は、前記シール体が嵌挿されている部位にて、前記コイル部を収容し前記プラグホール内に挿入されるコイル収納部と、前記イグナイタ部を収容し前記プラグホール外にて異なる仕様の相手コネクタに接続される前記コネクタを有するイグナイタ収納部とに2分割され、
該コイル収納部と該イグナイタ収納部は、前記2分割された部位にて一体に結合されていることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様16〕
実施態様14または実施態様15において、前記コイル収納部は、耐熱性,耐電圧性に優れる材料特性を有する基材樹脂に、前記コイル部を絶縁する絶縁用樹脂との密着性に優れる材料特性を有する配合剤を混ぜ合わせた混合材料から形成されていることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様17〕
実施態様16において、前記基材樹脂はポリフェニレンサルファイド樹脂であり、前記配合剤は変性ポリフェニレンオキサイド樹脂であることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様18〕
実施態様14または実施態様15において、前記コイル収納部は、ポリフェニレンサルファイド樹脂から形成されていることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様19〕
実施態様14または実施態様15において、前記コイル収納部と前記イグナイタ収納部との結合部は、当該コイル収納部の軸方向に対し垂直なる当接面と、当該コイル収納部の軸心に同心となる当接面とを有していることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様20〕
実施態様14または実施態様15において、前記コイル収納部と前記イグナイタ収納部との結合は、予め形成した前記コイル収納部に前記イグナイタ収納部を一体形成して結合するものであることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様21〕
内側円管の端部が外側円管の端部より凹んでいる同心二重円管状からなり底部に点火プラグを収容している内燃機関のプラグホールに、軸方向に挿入される円筒部と、該プラグホ−ル内への浸水を防止するよう前記円筒部に嵌挿されているシールゴムとを備え、
前記シールゴムは、軸方向から前記外側円管端部に当接して軸方向に撓み得てかつ該外側円管端部の径方向のずれを逃げ得る広さの、延展面が径方向に形成されている鍔部と、 挿入時に前記内側円管に当接して当該シールゴムをガイドするよう、前記点火プラグの方向に向かってテーパ状となっている円錐部とを有していることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様22〕
実施態様21において、前記鍔部は、軸方向に撓み変形した当該鍔部の膨らみを逃がしうる空隙を、前記円筒部との間に形成していることを特徴とする内燃機関用点火装置。
〔実施態様23〕
実施態様21において、前記円筒部は、前記円錐部の円錐先端部よりも前記点火プラグ寄りの部位に、該円錐先端部の外径よりも小さい外径に形成された突起部を有することを特徴とする内熱機関用点火装置。
〔実施態様24〕
実施態様21または実施態様22または実施態様23において、前記シールゴムは、前記円錐先端部を含み内径φD1を有する前記円錐部と、内径φD2を有する内側円筒部と、前記各内径寸法がφD1<φD<φD2の関係となっている段付き部とを有することを特徴とする内燃機関用点火装置。
ただし、φDは、円筒部の外径。
〔実施態様25〕
円管状の先端部を有し底部に点火プラグを収容している内燃機関のプラグホールに軸方向に挿入される円筒部と、該プラグホ−ル内への浸水を防止するよう前記円筒部に嵌挿されているシールゴムとを備える内燃機関用点火装置において、
前記シールゴムは、軸方向から前記先端部に当接して軸方向に撓み得てかつ該先端部の径方向のずれを逃げ得る広さの、延展面が径方向に形成されている鍔部と、
挿入時に前記プラグホ−ルの内面に当接して当該シールゴムをガイドしつつ径方向に撓みを形成し、かつ当該撓みを吸収しうる空隙を内部に形成している、両テーパ面を有する山形円錐部とを、有していることを特徴とする内燃機関用点火装置。
11…一次ボビン、12…一次コイル、13…二次ボビン、14…二次コイル、15…外装ケース、17…センタコア、18…サイドコア、18a…内側珪素鋼板、18a1,18b1…スリット、18b…外側珪素鋼板、20…マグネット、41…シリンダヘッド、42…シリンダヘッドカバー、43…プラグホール部、44…点火プラグ、4205…鉄製プラグチューブ。