JP2008263242A - 磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法及び製造装置 - Google Patents

磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】希土類磁石の高性能化に有効な、酸化の程度が低く粉末粒径が小さい極めて活性な粉末を安全に使用できる、磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法を提供し、かつ種々の形状の製品を能率よく生産できる方法を提供する。
【解決手段】秤量・充填部41及び高密度化部42において、磁気異方性希土類焼結磁石の原料となる微粉末を所定の密度になるようにモールドに充填し、磁界配向部43においてパルス磁界により微粉末を配向させた後、微粉末をプレスすることなく焼結炉44において焼結する。この方法では量産装置の動作が単純で、囲いを小さくすることができるため、従来の大がかりなプレス装置を用いる方法で問題となっていた粉末の酸化や燃焼の危険性を排除することが可能となる。また平板状、弓形板状磁石等希土類焼結磁石の最重要形状の製品を多数個取りモールドを使用して、能率よく生産できる。
【選択図】図5

Description

本発明は高性能の希土類磁石の製造方法及びその製造装置に関する。
希土類・鉄・ホウ素系焼結磁石(以下「RFeB磁石」という)は、それまでの永久磁石材料の特性をはるかに凌駕するばかりでなく、ネオジム、鉄及びボロンなど資源的に豊富な原料を用いるため廉価であり、1982年に出現して以来理想的な永久磁石材料として着実に市場を拡大しつつある。主な用途はコンピューターHDD(ハード・ディスク・ドライブ)磁気ヘッド駆動用モーターVCM(ボイスコイルモーター)、高級スピーカー、ヘッドホン、電動補助型自転車、ゴルフカート、永久磁石式磁気共鳴診断装置(MRI)などである。さらに、ハイブリット・カー駆動用モーターにおいても実用化が進められている。
RFeB磁石は1982年に本願発明者らによって見出された(特許文献1)。このRFeB磁石は、正方晶の結晶構造の、磁気異方性を有するR2Fe14B金属間化合物を主相とする。高い磁気特性を得るためには磁気異方性の特徴を生かすことが必要であり、焼結法以外にも鋳造・熱間加工・時効処理の方法(特許第2561704号)や急冷合金をダイ・アップセット加工する方法(米国特許第4,792,367号)が提案されている。しかしこれらの方法は、磁気特性および生産性の両面において焼結法に劣る。焼結法は、永久磁石に必要とされる緻密で均質な微細組織を得るための最良の方法である。
[製造工程]
RFeB焼結磁石は、組成配合、溶解、鋳造、粉砕、磁界中圧縮成形、焼結、熱処理の工程を経て製造される。
[組成]
RFeB磁石が見出された後、その保磁力などの特性改善のため、添加元素(特許第1606420号等)、熱処理(特許第1818977号等)、結晶粒径コントロール(特許第1662257号等)などの効果が明らかにされてきたが、保磁力の向上に最も効果的なのは、重希土類元素(Dy、Tb)の添加である(特許第1802487号)。重希土類元素を多量に用いれば保磁力は確実に増加するが、飽和磁化が低下して最大エネルギー積が低下する。また、Dy、Tbは資源に限りがあり、高価であるため、将来に需要増大が見込まれるハイブリットカーや産業用・家庭用モーターをまかなうことは不可能である。
[溶解]
焼結磁石には緻密で均一な微細組織が要求される。当初は合金溶湯を鋳造し、微粉砕する方法が一般的であった(例えば特許第1431617号)。合金溶湯をストリップキャスト法で急冷すればα鉄の出現が抑えられて、非磁性の希土類元素の量を少なくすることで高いエネルギー積が得られる(特許第2665590号、特開2002-208509等)。
[粉砕]
RFeB合金は水素を吸蔵させると合金内にマイクロクラックが生じ、粉砕が容易になる(特許第1675022号)。微粉砕には、シャープな粒度分布の粉末が得られることから、窒素などの不活性ガスを利用するジェットミル粉砕が主流である(特許第1883860号等)。
[成形]
磁界中で粉末を圧縮成形して磁気異方性焼結磁石を得る方法は、フェライト磁石の発明に端を発し(特公昭29-885号、米国特許第2,762,778号)、その後RCo磁石やRFeB磁石の製造に応用された(米国特許第3,684,593号等、特許第1431617号)。微粉末はRFeB正方晶結晶構造のc軸を一方向に揃えて成形される。金型プレス法が一般的であるが、さらに高い配向度と高いエネルギー積を得る方法としてCIP法(特許第3383448号)やRIP法(特許第2030923号等)がある。
[金型プレス法]
ウェント等によって1951年にフェライト磁石が発明(特公昭35-8281号、米国特許第2,762,777号)された同じ年に、ゴルター等によって磁気異方性焼結フェライト磁石が発明された(特公昭29-885号、米国特許2,762,778号)。このとき初めて、磁気異方性永久磁石の製法に磁界中圧縮成形・焼結の手法が用いられた。その後、金型プレス法における欠点を克服するために数多くの改良がなされてきた。
[潤滑剤の添加]
金型成型時の微粉末の配向を高めるため、また、粉末と粉末、粉末と金型の摩擦を軽減するために、潤滑剤を添加する方法がある(特許第2545603号、第3459477号等)。
[湿式磁場プレス]
微粉末の酸化を防ぎながら高い配向性を達成するために鉱物油、合成油又は植物油と微粉末の混練物を金型内に高圧注入し、磁界中で湿式圧縮成形する方法がある(特許第2731337号等)。この場合、スラリーを加圧注入、加圧充填すると高い磁気特性が得られるという報告がある(特許第2859517号)。
[CIP]
金型成型法では一方向からの加圧しか採用できず、それが配向を乱す原因である。あらゆる方向から等方的に圧力を加えることができれば、配向の乱れが小さくなる。圧力を等方的に加える方法には、微粉末をゴム容器に入れて外部から磁界をかけ、冷間静水圧プレス(Cold Isostatic Pressing、CIP)を施す方法(特許第3383448号)等がある。
[RIP]
CIPと同等の効果を得る方法として、本発明者らは先に金型プレス機内にゴム型を設置して等方的圧力を加えるRIP(Rubber Isostatic Pressing)法を提案した(特許第2030923号)。この方法は自動化が容易なため、CIPよりもはるかに量産に向いている。
[AT]
凝集性のある微粉末を金型プレス等のダイ・キャピティに充填する方法として、空気タッピング(エア・タッピング、Air Tapping、AT)法が提案された(特開平9-78103号、特開平9-169301号、特開平11-49101号)。空気タッピングとは、高速の気流を粉末に断続的に作用させて、ダイ・キャビティに粉末を高密度にかつ均一に充填する技術である。更に、空気タッピング法を用いて固化し、ニアネットシェイプの成形体を得る方法が提案されている(特開2000-96104号)。
[パルス磁界]
粉末の方向を揃えるために外部から磁界を印加する方法が採用される。RFeB磁石の場合、正方晶構造のc軸方向が容易磁化軸に相当し、磁界を印加すると粉末は一方向に配向する。通常の金型プレスの場合は電磁石による静磁界が印加され、その大きさは最大15kOe程度である。しかし、空心コイルを用いたパルス磁界では15〜55kOeの強い磁界をかけることができ、実際に高い磁界を印加した方が磁気特性は向上する(特許第3307418号)。
[クローズドシステム]
粉末が酸化するのを避けるために粉砕工程、成形工程を不活性雰囲気下で行うことが提案されている(特開平6-108104)。
特許第1431617号
[焼結法の効果]
粉末冶金(焼結)法では、緻密で均一な微細組織が得られる。希土類コバルト磁石やRFeB磁石において、それぞれの材質の特性を生かし、高性能の永久磁石を得るには粉末冶金法にまさる方法はない。
[磁界中プレス成形]
磁気異方性焼結磁石の製造方法に磁界中圧縮成形・焼結の手法が用いられたのは、1951年にウェント等によってフェライト磁石が発明(特公昭35-8281号、米国特許2,762,777号)された直後に、ゴルター等によって磁気異方性焼結フェライト磁石が出現したのが最初である(特公昭29-885号、米国特許2,762,778号)。圧縮成形する目的は、圧縮によって液体成分を搾り出すため、及び、配向した粒子を固定するためであるとされている。また、圧縮成形は所望の形状を得るために好ましいとされている。圧縮成形しないでそのまま磁界中で容器と共に加熱した例があるが、圧縮成形した例に比べて、密度が低く、磁気特性も低い。
その後磁界中圧縮成形・焼結の手法はRCo焼結磁石(米国特許第3,684,593等)及びRFeB焼結磁石(特許第1431617号)に引き継がれた。磁界を印加することは粒子を配向するために必須の工程であるが、圧縮の効果については特に深い考察は行われて来なかった。
[金型プレスが選択される理由]
金型プレスが用いられる理由は、ほとんど最終形状・寸法に近いもの(ネットシェイプ)が得られ、歩留まりがよく、自動化が可能だからである。特にネットシェイプと歩留まりの観点からは金型プレス法は量産に適した方法として広く採用されてきた。
[RIP]
CIPと同等の効果を得る方法として、本願発明者らは先にRIP法を提案した(特許第2030923号)。RIPでは、微粉末をゴム型に入れて、パルス磁界をかけ、ゴム型全体を金型プレス機で加圧する。CIP方式と同じく等方的に圧力が加えられ、かつパルス磁界を用いることができるので、金型プレス法よりも磁気特性は高い。この方法は、ゴム型充填、パルス磁界印加、圧縮成形、消磁の工程を連続して行う自動化が可能なため、量産に向いている。
[磁界中プレス工程の詳細]
長い歴史の中で、金型プレス法は効率的な作業のために自動化が図られてきた。その工程はおおよそ次の通りである。
・微粉末がフィーダーを通して金型内に供給される。
・上パンチを下ろしてキャビティを封じる。
・磁界が印加される。
・磁界を印加しながら上パンチと下パンチで加圧する。
・逆磁界または交番磁界をかけて圧粉体を消磁する。
・上パンチが上がる。
・下パンチが上がり(またはダイスが下がり)、圧粉体が金型上に押し出される。
・ロボット・アームが圧粉体をコンベアに運ぶ。
・圧粉体が一箇所に集められる。
・焼結台版上に並べられる。
この際、衝突や溶着を避けるために、圧粉体は間隔をおいて配置される。作業状況により圧粉体は数日間保管されることがある。粉末冶金法で用いられる金型プレスは精密機械であり、単個(1個)取りのプレスであればパンチ・ダイスの位置合わせは比較的容易であるが、多数個取りの場合は複雑である。磁石は円板、矩形、穴あき円板、弓形など、さまざまな形状・寸法のものが要求され、その度に煩雑な金型取替え作業が必要となる。
[磁界中圧縮成形の目的と効果]
圧縮成形の役割について、例えば"Rare-earth Iron Permanent Magnet", edited by J.M.D. Coey, CLARENDON PRESS, OXFORD, 1996, pp. 340-341には、"The pressing load is sufficient to make compacts having enough strength to be handled but without significant misorientation of the crystallites."(加圧力は粒子の配列に重要な乱れを起こすことなくハンドリングのための充分な強度をもった圧粉体を作るのに充分な程度である)と記載されている。また、J. Ormerod, "Powder Metallurgy of rate earth permanent magnets", Powder Metallurgy 1989, Vol. 32, No. 4, p. 247では 、"The pressing pressure should be sufficient to give the powder compact enough mechanical strength to withstand handling, but not high enough to cause particle misorientation."(加圧力は圧粉体にハンドリングに耐える充分な機械的強度を与える程度であるが、粒子の配向の乱れを起こすほど高くない程度でなければならない)との記載がある。いずれの文献においても、大きな圧力で加圧すれば配向が乱れることを認識しながら、ハンドリングのために圧粉体に充分な強度を持たせるためには強く圧縮することが必要であると認識されている。
[希土類磁石に固有の問題]
希土類磁石は、化学的に活性で酸化し易い希土類元素を約30重量%含む。希土類焼結磁石製造工程には、化学的に活性な希土類元素を大量に含み、平均粒度が3μmくらいの微粉末を取り扱う工程が存在する。この微粉末のひとつひとつを磁界中で一定方向に配向する必要があるため、一般粉末冶金法で用いられるような、予め造粒して粉末の流動性を改善する手段を用いることができない。微粉末は嵩が大きく、また粉末ひとつひとつが磁石の性質を有しているため、金型キャビティ内に粉末を供給してもブリッジを形成し、均等充填がむずかしい。
[配向を上げるために]
金型成形時の微粉末の配向度を高めるため、潤滑剤を添加する方法が提案されている(特許第3459477号、特開平8-167515等)。潤滑剤は、微粉末の摩擦を小さくする効果があり、磁界をかけながら圧縮するときの配向度を向上させる。しかし、充分な潤滑効果を得る目的で多量の潤滑剤を加えると、脱脂のために長時間を必要とする。ある種の液体潤滑剤(例えば特開2000-306753号)は揮発性にすぐれていて、焼結体中にほとんど残存しないとされる。しかし、配向度を向上させる目的で潤滑剤を多量に添加すると、金型プレス後の圧粉体強度が弱くなり、ハンドリングの問題を生じる。金型プレス機では電磁石によって静磁界が印加される。電磁石による静磁界は、鉄心による磁束の飽和があるため、せいぜい10〜15kOe(1〜1.5T)程度に留まる。磁界をかけたまま加圧していくと、粉同士の摩擦力のほうが大きくなって、粉が回転し、配向が乱れる。それを防ぐために、パルス磁界による配向方法が提案されている(特許第3307418号)。パルス磁界では1.5〜5.5Tの磁界をかけることができて、Br(残留磁束密度)が向上する効果が確認されている。しかし、この発明のように金型プレス機内でパルス磁界を印加すると、磁界をかける度に渦電流損やヒステリシス損が発生して金型が発熱する。また、金属製の金型に瞬間的な衝撃が加わり、精密機械であるプレス機の寿命を短くするため、実用的でない。
[圧粉体強度を上げるために]
金型プレス法の作業性を向上させるために有機質のバインダーや潤滑剤を添加したり、湿式成形する方法が提案されているが、いずれも強い圧力で圧縮することが前提となっており、これらの成分は圧粉体内部に強く閉じ込められて、焼結前段階の脱脂工程において容易に除去されない。低い温度で長時間加熱することで脱脂が完全に行われるが、生産性は著しく低下する。有機質成分が残存するまま高温で過熱すると、炭素などの不純物が構成元素と反応して磁気特性等が低下し、耐食性が悪くなる。
[湿式成形法]
微粉末の酸化を防ぎながら高い配向度を達成するために鉱物油・合成油と微粉末の混合物を磁界中で湿式圧縮成形する方法が提案されている(特許第2859517号等)。ジェットミルで微粉砕した粉末を鉱物油あるいは合成油中に集積し、混合した後、金型キャビティ内に加圧注入・加圧充填する。湿式成形はSrフェライト磁石の製造技術の応用であるが、フェライト磁石では水を用いるのに対して希土類磁石では水を用いることができず、溶媒や油を用いる。しかし油は炭素など不純物となる成分を多く含み、焼結段階で抜けにくい。容易に蒸発して残留しない油が研究されているが、固く圧縮した圧粉体内に閉じ込められた炭素を取り除くのは困難である。油が蒸発して、希土類と反応しない温度で脱脂する作業が必要であるが、そのためには比較的低温で長時間保持しなければならず、量産効率が著しく悪くなる。脱脂が十分に行われないと、高い温度で希土類元素と容易に反応して磁気特性を劣化させるとともに、耐食性を悪くする。
[無酸素工程]
金型プレス法では、微粉末は大気中に哂される。微粉末を作製後、磁界中プレスから焼結炉への搬入までを不活性ガス雰囲気中で行うとする提案がある(特開平6-108104)。しかし、実際には金型周辺に飛び散った微粉を掃除したり、頻繁に金型を取替えることが不可欠である。飛び散った微粉をそのままにしておくと、開放するときに非常に危険である。磁石微粉は嵩が大きくブリッジを作り易いために定量供給がうまくいかず、定期的に圧粉体重量を測定してフィードバックする必要がある。一般的な結晶のように多量のバインダーと高圧を用いて成形して堅牢な圧粉体を作製するようなことは、希土類磁石ではできない。したがって、圧粉体は脆くこわれやすい。グローブボックスのように人間の手をプレス機に差し入れて作業することは危険であり、非能率である。すなわち、金型プレス機を含む工程全体を不活性雰囲気中に置くという構想は量産的に成功させることがきわめて難しい。
[微粉末を用いない理由]
ダイス・パンチのクリアランスを如何に小さくしようとも、3μmの微粉末を閉じ込めるのは不可能であり、微粉末を圧縮するたびにはじき出された微粉末が金型周辺を飛び交うことになる。それらは、発火・爆発の危険性をもつ。自動集塵機で集めることは可能だが、定期的に掃除が必要である。世界で最も進んだ技術をもつ磁石メーカにおいて、量産に使われるRFeB焼結磁石の結晶粒径は、レーザー式粉末粒度分布測定装置により測定される粒径の中央値であるD50が4.5〜6μmであるとされる。D50の測定値は顕微鏡による実測値の大きさに近いことが知られている。R2Fe14B金属間化合物の単磁区粒子径はさらに小さい(0.2〜0.5μm)。従って、焼結磁石の場合においても、より小さな結晶粒子径の方が高い保磁力を期待できる。ところが実際には、特開昭59-163802号第3図から明らかなように、粒子径が小さくなると急激に保磁力が低下する。これは、微粉を取り扱う従来工程において酸化が避けられないことを示している。化学的に活性な希土類元素を含むRFeB合金微粉は、非常に酸化し易く、大気中に放置すると発火することがある。粉末粒径が小さいほど発火の危険性は大きくなる。発火しないまでも容易に酸化し、焼結磁石において非磁性の酸化物として存在し、磁気特性低下の原因となる。しかし従来法では、成形プロセスと、成形体を焼結炉に搬入するプロセスで微粉末が大気に晒されることは避けられない。上述のように世界のトップメーカの微粉砕粉末の粒径はD50で4.5〜6μm程度であり、これよりも細かいと、たとえ成形体であっても容易に酸化が起こる。微粉末に予め油や液体潤滑剤を添加し、酸化防止の相乗効果を持たせようとする試みがあるが、潤滑剤などの多量の添加は圧粉体強度を弱くし、また炭素などを残留させて磁気特性を低下させる。すなわち、D50=4μm以下の微粉を、従来の金型プレス法では実際上取り扱うことはできない。
上述したように、RFeB系焼結磁石の製造方法および製造装置の第一の課題は、製造ラインを完全に密閉系にすることが難しいということである。RFeB系焼結磁石では、製造工程中の粉末や圧粉体の酸化をできるだけ低く抑えるほど、また粉末の粒径を小さくするほど高特性化できることが知られている。ところが、表面層の酸化が少なく、粉末粒径が小さいほど粉末は活性で、製造ラインは常時N2などの不活性ガスで満たしておかなくてはならない。少しでもそこに空気が侵入すると、粉末が発熱する。量産ラインでは粉末の量が多いので、小さい発熱が大きい発熱に、そして火災につながる心配がある。現在、大部分のRFeB系異方性焼結磁石は金型プレス法またはRIP法を使用した生産ラインによって生産されている。これらの生産ラインの一部は不活性ガスを満たして運転するように設計されており、これらの生産ラインによって生産されるRFeB系異方性焼結磁石は酸化の程度が低く高特性である。しかし、これらの低酸素生産ラインは火災や爆発にいたる大事故の心配を払拭できていない。そのため、特性のさらなる向上が可能であることが分っていても、現状以上に粉末を活性化することは困難である。現状の生産ラインを完全な密閉系にすることが困難な理由は次の通りである。
金型プレスを使用した生産ライン:
(1) 囲わなければならない空間が大きい。
(2) 系に空気を入れないで大型の金型を交換することは困難である。
(3) 粉末充填、圧縮、圧粉体取出し、圧粉体清掃(余分に付着している粉末除去)、圧粉体を台板上に整列、圧粉体を載せた台板の箱詰め、圧粉体を入れた箱を焼結炉に装入、という一連の工程を、生産性向上のために短いサイクルタイムで実施しなくてはならない。実際の工程では、これらの工程中に様々なトラブルが頻繁に発生する。トラブルを解決するためにはどうしても人手が必要で、系内に空気を導入しなくては解決しない事態がしばしば発生する。
RIPを使用した生産ライン:
ゴム型に粉末を高密度充填、磁界配向、圧縮、圧粉体取出し、ゴム型清掃、圧粉体を台板に整列、圧粉体を載せた台板の箱詰め、圧粉体を入れた箱を焼結炉に装入、という一連の工程においても、サイクルタイムを短くすることが生産性向上のため不可欠であり、それによりトラブルが頻繁に発生する。金型プレスによる生産ラインと同様、系内に空気を導入して問題を解決しなくてはならない事態がしばしば発生する。
上述した2種類の生産ラインにおいて、系を完全に密閉系にできない第一の理由は、粉末を圧縮した後、圧粉体を金型あるいはゴム型から取り出さねばならないことにある。圧粉体を金型やゴム型から取り出すときに圧粉体が割れたり、欠けたり、余分な粉末を吸い付けたりして、トラブルが起こる。その後の圧粉体の取り扱いの工程中においても圧粉体の割れや欠けによるトラブルが起こる。そのようなトラブルに対してはロボットによる対処ができないので、系内に空気を導入して、人手によって対処が行われることになる。このようにして、従来の生産ラインでは、一時的には密閉系でのRFeB系異方性焼結磁石の生産は可能であるが、長時間の連続運転はきわめて難しく、現状以上に活性な粉末を取り扱うことは生産現場から拒否されるだけでなく、実際に危険である。
上述したように、従来の金型プレス法やRIP法を使用したRFeB系異方性焼結磁石の生産方式は、活性な粉末を取り扱う工程としては不適当であり、量産品として、これまで以上に磁気特性が高い、特に保磁力が高い磁石を生産するために、粉末粒径を小さくしたり、粉末に含まれる酸素量を下げたりすることに関して限界があった。レーザー式粒度分布測定法で測定したとき、従来の生産方式に使われる粉末は、世界のトップメーカの最高レベルのRFeB磁石の生産においてもD50として表わされる粒径分布の中央値が5μm程度までであった。
RFeB系異方性焼結磁石の生産方式のもう一つの課題は、平板状および弓形板状磁石の生産性が低いという問題である。RFeB系異方性焼結磁石の全製品の中で平板状および弓形板状磁石の占める割合はきわめて高い。これらの磁石において磁化方向はいずれも板面に垂直な方向である。
従来法による平板状磁石の製造方法の1つは、大きいブロック状焼結体を外周刃切断機で薄切りする方法である。この方法の欠点は焼結後の高価な焼結体の一部が切くずになってしまうことで、その割合は品物の厚さが薄くなるにつれて上がっていく。もう1つの問題は加工(切断)に時間がかかり、工具の消耗も大きいことである。
従来法による平板状磁石の製造方法として、もう一つの方法は、金型プレス法によって1枚ずつ磁界中プレスして圧粉体を作り、1枚ずつ別々に焼結する方法である。この方法の欠点は、平板状磁石の成形には平行磁界中プレス法を使わなければならないことである。平行磁界中プレス法によると、圧縮時に粉末の配向が乱され、焼結によって作られる磁石の最大エネルギー積が、直角磁界中プレス品よりも10MGOe近く低くなる。さらに平板状磁石を1つずつプレスして焼結する方法は生産性が低い。いくつかのダイキャビティを作って複数個の圧粉体を作製して焼結する多数個取りプレス法を使うこともできるが、印加圧力の制限から、一度に成形できる圧粉体の数は2〜4個程度で、あまり大きい改善にはならない。
従来法により弓形板状磁石を生産するには普通平行磁界中プレス法が使われる。この方式は、上述した平板状磁石を作製するときと同じ問題を有する。即ち、焼結後の磁石の配向性が低いために磁石の最大エネルギー積が低いということと、1個ずつ成形する方法、あるいは複数個のダイキャビティによる多数個取り成形法を使っても、成形から焼結までの工程の生産性が低いということである。
従来法によって弓形板状磁石を生産するとき、直角磁界中プレス法を使うと焼結後の磁石の最大エネルギー積の向上を計ることができる。しかしこの場合でも、生産性が低いという欠点は残る。また、弓形板状形状の圧粉体の高さをあまり大きくできないという問題がある。
もう一つの従来の生産方式の欠点は、円形あるいは異形形状の断面を持つ長尺物の焼結体の生産ができないということである。金型プレス法では、平行磁界中プレス方式のときは、成形できる圧粉体の長さ(高さ)に制限があること、磁石の最大エネルギー積が低いことが問題である。直角磁界中プレス方式により長尺物を作製するときは、成形できる圧粉体の断面形状に制約があり、ニアネットシェイプの成形ができない。
さらに従来の生産方式の欠点として、高特性を持つ扁平リング磁石の生産が困難であることが挙げられる。扁平リング磁石は円板面に垂直な方向に磁化して使用される。扁平リング磁石を作るには、平行磁界中プレス方式が使われるが、この方式では、最大エネルギー積が直角磁界中プレス法により作られた磁石より10MGOe近く低いものしか生産できない。RIP法は扁平リング磁石の生産方式として高特性化が期待されたが、成形時の形状のゆがみの問題等のため、扁平リング磁石のRIP法による生産は行われていない。
従来法のもう1つの問題は、1mmまたはそれ以下の厚さの薄板状磁石や、断面の一辺または直径が1mm以下の異形断面長尺品や円形断面長尺品の焼結磁石を、そのような小寸法をもつ圧粉体の焼結により直接作製することができないことである。その理由は、そのように小さい寸法をもつ圧粉体を金型プレスやRIP法により作製することが難しい上に、圧粉体作製後、そのように小さい寸法を持つ圧粉体を台板上に並べたり箱に詰めたり、焼結炉に装入したりするときに壊れないように取り扱うことが難しいからである。金属射出成型(metal injection molding、MIM)法が1つの可能な方法として知られているが、炭素不純物の残留等の問題があって、RFeB異方性焼結磁石の生産にはあまり使われていない。
[本発明の目的]
本発明の目的は、磁気異方性希土類系焼結磁石の製造法および製造装置において、現状の金型プレス法およびRIP法を含む焼結磁石製造法および製造装置の根本的な問題を排除し、現状より高い最大エネルギー積と高い保磁力をもつRFeB系焼結磁石を提供すること、平板状磁石や弓形板状磁石の生産性を向上させること、高い配向度を持つリング磁石を作製する手段、並びに円形や異形断面をもつ長尺品焼結体及び1mm以下の小寸法をもつ焼結体を作製する手段を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る高密度、高配向度磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法の第1の態様は、
a) 製品の形状に対応した空洞を持つ容器(以下これをモールドという)に合金粉末を高密度に充填する工程と、
b) 前記合金粉末に高磁界を印加して、合金粉末を配向させる工程と、
c) 前記合金粉末をモールドに入れたまま、該合金粉末から放出される気体成分をモールド外に排出可能な状態で加熱して焼結する工程と、
d) 前記合金粉末の焼結体を前記モールドから取り出す工程と、
を有することを特徴とする。
ここで、空洞は所望の製品の形状と寸法および焼結時の収縮を考慮して設計することが望ましい。高密度、高配向度焼結体とは、密度が理論密度の97%以上であり、配向度が、最大印加磁界10Tのパルス磁化測定法で測定したとき、残留磁化Jrの飽和磁化Jsによる割合Jr/Jsが93%以上であることである。
本発明に係る製造方法の第2の態様は、
a) モールドに合金粉末を高密度に充填する工程と、
b) 前記合金粉末に高磁界を印加して、合金粉末を配向させる工程と、
c) 前記合金粉末をモールドに入れたまま、該合金粉末から放出される気体成分をモールド外に排出可能な状態で加熱して、この合金粉末の仮焼結体を作製する工程と、
d) 前記仮焼結体を前記モールドから取出すか、前記モールドの一部を除去した後、前記仮焼結体を、その仮焼結温度より高温に加熱して本焼結する工程と、
e) 前記仮焼結体を本焼結した焼結体を、前記モールドの残部から取り出す工程と、
を有することを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第3の態様は、第1又は第2の態様において、合金粉末のモールドへの充填密度が該合金の真密度の35〜60%であることを特徴とする。
通常、合金粉末を空洞内に落としこむだけの粉末充填法によると、粉末の充填密度は理論密度の20%程度である。本発明の方法では35%以上に高密度充填することが好ましい。35%以下では、焼結後の焼結体密度が低く、大きい巣が焼結体中に形成され、実用的な焼結磁石にならない。充填密度があまり高すぎて、60%以上になると合金粉末の磁界配向が困難になる。
本発明に係る製造方法の第4の態様は、第3の態様において、前記充填密度が真密度の40〜55%であることを特徴とする。
第3の態様より好ましい範囲を与える。
本発明に係る製造方法の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれかにおいて、配向磁界が2T以上であることを特徴とする。
焼結磁石の配向度Jr/Jsが93%以上となるために、配向磁界は少なくとも2T以上であることが好ましい。
本発明に係る製造方法の第6の態様は、第5の態様において、配向磁界が3T以上であることを特徴とする。配向磁界のより好ましい範囲を与える。
本発明に係る製造方法の第7の態様は、第6の態様において、配向磁界が5T以上であることを特徴とする。これは配向磁界のさらに好ましい範囲を与える。
本発明に係る製造方法の第8の態様は、第1〜第7の態様のいずれかにおいて、配向磁界がパルス磁界であることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第9の態様は、第8の態様において、配向磁界が交番磁界であることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第10の態様は、第1〜第9の態様のいずれかにおいて、配向磁界を複数回印加することを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第11の態様は、第10の態様において、配向磁界が直流磁界と交番磁界の組合せであることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第12の態様は、第1〜第11の態様のいずれかにおいて、合金粉末に潤滑剤が添加されていることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第13の態様は、第12の態様において、潤滑剤が固体潤滑剤または液体潤滑剤あるいはその両方であることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第14の態様は、第13の態様において、液体潤滑剤が脂肪酸エステル又は解重合ポリマーを主成分とすることを特徴とする。
第6〜第14の態様は配向度を向上させるための手段を与えるものである。
本発明に係る製造方法の第15の態様は、第1〜第14の態様のいずれかにおいて、合金粉末の粒径が4μm以下であることを特徴とする。
これにより、従来の金型プレス法またはRIP法を含む磁石製造法では粉末が活性すぎて量産化が困難であった高特性RFeB異方性焼結磁石の生産が可能になる。
本発明に係る製造方法の第16の態様は、第15の態様において、合金粉末の粒径が3μm以下であることを特徴とする。これにより、第15の態様よりさらに高特性の磁石の生産が可能になる。
本発明に係る製造方法の第17の態様は、第16の態様において、合金粉末の粒径が2μm以下であることを特徴とする。これにより、第16の態様よりさらに高特性の磁石の生産が可能になる。
本発明に係る製造方法の第18の態様は、第17の態様において、合金粉末の粒径が1μm以下であることを特徴とする。これにより、第17の態様よりさらに高特性の磁石の生産が可能になる。
本発明に係る製造方法の第19の態様は、第16〜第18の態様のいずれかにおいて、合金粉末の粒径が3μm以下であって焼結温度が1030℃以下であることを特徴とする。
これによりRFeB焼結磁石の高特性化が図れるとともに、モールドの寿命を大幅に延ばすことが可能になる。
本発明に係る製造方法の第20の態様は、第19の態様において、合金粉末の粒径が2μm以下であって焼結温度が1010℃以下であることを特徴とする。これによりRFeB焼結磁石の高特性化が第19の態様よりさらに進み、モールドの寿命もさらに向上する。
本発明に係る製造方法の第21の態様は、第1〜第20の態様のいずれかにおいて、モールドの一部又は全部を複数回使用することを特徴とする。
これは本発明を工業的に実施するとき、生産性向上のためにぜひ必要なことである。
本発明に係る製造方法の第22の態様は、第1〜第21の態様のいずれかにおいて、モールドが複数個の空洞を持つことを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第23の態様は、第1〜第22の態様のいずれかにおいて、空洞が柱状であることを特徴とする。
これは円形断面あるいは異形断面をもつ長尺品をネットシェイプで作製する方法である。
本発明に係る製造方法の第24の態様は、第1〜第23の態様のいずれかにおいて、筒状の空洞の中心に柱状の中子が配置されていることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第25の態様は、第24の態様において、合金粉末を空洞に充填し、磁界を印加して配向した後、モールドの中子を抜いて、又は、モールドの中子を細いものに置き換えて、焼結することを特徴とする。
第24及び第25の態様は、従来法では不可能であった直角磁界中プレス品なみの高特性をもつ、筒形リング状磁石の生産を可能にするものである。
本発明に係る製造方法の第26の態様は、第23〜第25の態様のいずれかにおいて、空洞の主軸方向に磁界を印加して合金粉末を配向することを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第27の態様は、第26の態様において、前記主軸方向の空洞両端の蓋および底にあたる部分の材質を強磁性体とすることを特徴とする。
第26及び第27の態様は、ゆがみのできるだけ少ない柱状あるいは筒状の焼結体を得るための手段を与える。
本発明に係る製造方法の第28の態様は、第22の態様において、空洞が平板状であることを特徴とする。これは、平板状磁石の高生産性生産方法を与える。
本発明に係る製造方法の第29の態様は、第22の態様において、空洞が弓形板状であることを特徴とする。これは、弓形板状磁石の高生産性生産方法を与える。
本発明に係る製造方法の第30の態様は、第28又は第29の態様において、空洞の平板面又は弓形板面に垂直な方向に磁界を印加して合金粉末を配向することを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第31の態様は、第30の態様において、空洞の平板面又は弓形板面を形成する部分の材質が非磁性体又は1.5T以下の飽和磁化を有するものであることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第32の態様は、第31の態様において、前記飽和磁化が1.3T以下であることを特徴とする。
第30〜第32の態様は平板状あるいは弓形板状磁石を製造するとき、巣のない、高密度の焼結体を得るための手段を与える。
本発明に係る製造方法の第33の態様は、第22〜第32の態様のいずれかにおいて、モールドに複数の空洞が2列以上並んで配置されていることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第34の態様は、第1〜第33の態様のいずれかにおいて、モールドの部位のうち、合金粉末の磁界配向方向と平行な壁を構成する部位の一部または全部が強磁性体であることを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第35の態様は、第1〜第34の態様のいずれかにおいて、空洞の内壁に焼着き防止コーティングを施したことを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第36の態様は、第1〜第35の態様のいずれかにおいて、機械的な振動を利用する機械的タッピング法、押し棒を押しこむことによるプッシャー法若しくは気体流の衝撃を使うエアー・タッピング法又はそれらの併用によって合金粉末をモールドに強制充填することを特徴とする。
本発明に係る製造方法の第37の態様は、第1〜第36の態様のいずれかにおいて、溶湯急冷法により得られた合金を粉砕して得られる微粉末を合金粉末として用いることを特徴とする。
本発明に係る磁気異方性希土類焼結磁石の製造装置の第1の態様は、
a) 合金を微粉砕した合金粉末をモールドに高密度充填する合金粉末充填手段と、
b) 合金粉末を磁界中配向する磁界中配向手段と、
c) 当該モールドのまま合金粉末を焼結する焼結手段と、
d) モールドを合金粉末供給手段、磁界中配向手段、焼結手段の順に搬送する搬送手段と、
e) 合金粉末充填手段、磁界中配向手段、焼結手段及び搬送手段を収容する容器と、
f) 前記容器の内部を不活性ガス雰囲気又は真空にする雰囲気調整手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明に係る磁気異方性希土類焼結磁石の製造装置の第2の態様は、
a) 合金を微粉砕した合金粉末をモールドに高密度充填する合金粉末充填手段と、
b) 合金粉末を磁界中配向する磁界中配向手段と、
c) 当該モールドのまま合金粉末を保形するまで仮焼結する仮焼結手段と、
d) 仮焼結した合金粉末を本焼結する本焼結手段と、
e) モールドを合金粉末供給手段、磁界中配向手段、仮焼結手段、本焼結手段の順に搬送する搬送手段と、
f) 合金粉末充填手段、磁界中配向手段、予備焼結手段、本焼結手段及び搬送手段を収容する容器と、
g) 前記容器の内部を不活性ガス雰囲気又は真空にする雰囲気調整手段と、
を備えることを特徴とする。
これは、本発明を実施する装置の安全性を高めるための手段を与える。
本発明に係る製造装置の第3の態様は、前記容器を収容する外部容器を備えることを特徴とする。これは、本発明を実施する装置の安全性をさらに高めるための手段を与える。
発明の実施の形態及び効果
本発明によれば、磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法において、空洞を持つモールドに微粉末を充填し、外部から磁界を印加して粉末を配向した後、そのまま焼結する。ここで、空洞の形状や寸法は、所望の製品の形状や寸法に対応して設計する。その際、焼結時の収縮を考慮して設計することが望ましい。
本発明の製造方法は、RCo(希土類コバルト)磁石やRFeB(希土類・鉄・ホウ素)磁石の製造に適用される。
本発明によれば、微粉末をモールドに閉じ込めた後、磁界を印加し、そのまま焼結工程に移行する。微粉が飛び交うことはなく、希土類磁石の微粉であっても安全に取り扱うことができる。
本発明によれば、微粉末充填、磁界の印加、焼結炉への搬入までのプロセスの一切がアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気中、あるいは真空中で行われる。希土類磁石は酸素など不純物の影響を受ける。RFeB磁石にせよ、SmCo磁石にせよ、予め酸化される希土類量を見込んで、その化学量論組成よりも希土類リッチ側に組成を選択することが必要とされる。しかしその分、非磁性相が多くなって、特性が低下する。本発明によるプロセスをRFeB磁石、SmCo磁石の希土類磁石に適用すると、微粉末の状態で大気中の酸素に触れる機会がないため、焼結体の酸素を低減できる。この場合、酸化される希土類量を予め見込む必要がないため、希土類(Nd、Sm)量を極限まで下げることができて、高い磁気特性を得ることができる。同時に圧縮プロセスがないため高配向が維持されて、高Br・高エネルギー積が実現される。
本発明においては、焼結(第1の態様の場合)又は仮焼結(第2の態様の場合)は、合金粉末から放出される気体成分をモールド外に排出可能な状態で行う。そのため、モールドには焼結時あるいは仮焼結時に脱気用の開口部、細孔、細隙あるいは溝等が形成されていることが必要である。これら脱気用開口部等は初めから形成しておいてもよいが、合金粉末の充填及び磁界中配向の工程の後に形成してもよい。
粉末には水素解砕時に合金中に吸収された水素が多量に吸蔵されていることがあり、また、窒素、水分などの吸着ガス成分が必ず存在する。さらに、微粉末に混合された潤滑剤やバインダーの一部または全部は高温で気化する。これらの気体成分は焼結時あるいは仮焼結時にモールドの外に排出されるようにする必要がある。これらの気体成分がモールド内に密封されたままでは、焼結時に焼結体の密度が上がらないとか、焼結体がこれらの気体成分と反応して汚染され、磁気特性に悪影響を及ぼす。このような気体成分の排出用細隙や細孔をモールドにあらかじめ設けておくか、モールドに合金粉末を充填して、蓋を閉め、磁界配向してから、モールド外壁の一部や中子(第24又は第25の態様)を除去して開口部を形成してもよい。なお、上述の細隙や細孔は空洞とその蓋の間の合わせめのように、自然にできる隙間でもよい。
本発明によれば、目的とする寸法、形状より予め定められた空洞をもつモールドに微粉末を充填し、外部から磁界を印加して粉末を配向した後、そのまま焼結あるいは仮焼結することができる。
磁石合金微粉末はモールド内に高密度充填される。高密度充填の程度は従来の金型プレス法における充填の程度よりも高く、従来の金型プレス法やCIP法、RIP法における圧縮成形体の相対密度よりも低い。従来法では圧粉体ハンドリングのために堅牢な圧粉体強度が必要であったが、本発明においては圧粉体ハンドリング工程が存在しないため、圧縮する必要がない。
合金粉末はモールド内に十分高密度にかつ均一に充填されなくてはならない。そうでないと焼結体の密度が低下したり、パルス磁界配向時に粉末の偏りが生じて、焼結体中に巣ができたりする。
本発明の希土類磁石は、RFeB磁石が好ましい。
RFeB磁石は、原子百分比で、R(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種):12〜20%、B:4〜20%及び残部実質的にFeからなる。
磁石の温度特性や耐食性の改善、微粉末の安定性改善のためにFeの50%未満をCoに置換してもよい。
保磁力の改善、焼結性やその他製造性の改善のためにTi、Ni、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Al、Sn、Zr、Hf、Gaなどを添加してもよい。これらの添加元素を複合添加してもよいが、いずれの場合にも総量で6原子%以下であることが好ましい。特に、Cu、Al、V、Moが好ましい。
RFeB磁石の場合、焼結は900〜1200℃の間で行われる。
本発明の希土類磁石製造方法は、希土類コバルト磁石(RCo磁石)にも適用することができる。
RCo磁石のうち、1-5型磁石の組成範囲は、RTx(RはSm又はSmとLa,Ce,Pr,Nd,Y,Gdの1種又は2種以上の組み合わせ、TはCo又はCoとMn,Fe,Cu,Niのうち1種又は2種以上の組み合わせ、3.6<x<7.5)で示され、その焼結温度は1050〜1200℃である。
2-17型RCo磁石の組成範囲は、R(但し、RはSm又はSmを50重量%以上含む2種以上の希土類元素):20〜30重量%、Fe:10〜45重量%、Cu:1〜10重量%、Zr、Nb、Hf、Vの1種以上:0.5〜5重量%、残部Co及び不可避的不純物であり、焼結温度は1050〜1250℃である。
1-5型の場合も2-17型の場合も、焼結時に900℃以下で熱処理を施すことによって保磁力を高めることができる。
磁気特性の高い磁石を得るためには、焼結密度を高くすると共に、上記のように粒成長を起こすことなく焼結することにより保磁力を高くすることが望ましい。焼結密度を十分に高くすることができ、且つ粒成長を起こすことがない焼結温度として最適焼結温度を定義することができる。最適焼結温度は、磁石の組成及び粉末粒度、焼結時間等により異なる。
本発明において仮焼結は、粉末の一部が結合して形状が保存できる状態になるまで行う。そのためには、仮焼結の温度は500℃以上とするとよい。一方、モールドの寿命を考慮し、焼結する品物とモールドとの焼き付きを防止するためには、仮焼結の温度は最適焼結温度より30℃低い温度以下とするとよい。最適焼結温度では充填した粉末の反応性が高くなっているために、モールドへの焼き付きが強くなる傾向があるからである。
RFeB磁石やRCo磁石には、金属間化合物の化学量論組成(R2Fe14BやRCo5)よりも多い希土類元素が含有される。それらは他の構成元素との間に低融点の合金を生成し、液相焼結を起こす。液相焼結によって、モールド内に充填された合金粉末は充填状態から収縮して高密度の焼結体になる。筒状の空洞の中心に柱状の中子が配置された筒形リング状のモールドに粉末を充填して焼結すると、モールドの中子に収縮が阻止されて、焼結体の内径部分に亀裂が生じる。そのような場合には仮焼結後、中子を除去するか、仮焼結体を本焼結用の容器に移し替えるか、あるいは粉末をモールドに充填して磁界配向した後、仮焼結あるいは焼結のための加熱を開始する前に中子を除去するか、又は細い中子に替えて焼結をすると、亀裂のない焼結体が作製できる。
本発明の特徴の1つは、焼結後、所望の形状と寸法をもつ焼結磁石が得られるように設計された空洞をもつモールドを使用し、そのモールドをくり返し使用することである。希土類焼結磁石が1つの商品について100万個単位の生産が行われることが多いことを考えると、これは工業技術として必須の要件である。本発明者は、提案する技術が一定の条件を満たしたときにモールドの繰返し使用が工業的に可能であることを実証した。
本発明では、さらに高い生産性を実現するために、多数個の空洞を持つモールドの使用を提案する。従来法としての金型プレス法やRIP法と比べて圧倒的に有利なことは、1つのモールドで作製できる平板状磁石や弓形板状磁石の数が何倍も大きいことと、そのようにして作られる磁石の特性が磁石片ごとにばらつきが少なく、きわめて均一であることである。これは、本発明では、合金粉末の配向のために、きわめて長い空芯コイルが使用できるからである。例えば、コイルとしてビッター型コイルを使用し、コイルの長さを20cmとすると、典型的な平板状あるいは弓形板状の希土類焼結磁石を1つのモールドで30個も作製できる。コイルの中の磁界は均一なので、このようにして作製される平板状あるいは弓形板状磁石の磁気特性は、磁石片ごとにほとんどばらつきがなく均一である。ビッター型コイルを使用するのは、この型のコイルは、高磁界を繰返し発生させるコイルとして、通常の巻線型コイルに比べて寿命が長いためである。
モールドを構成する材料の選択は、本発明を工業技術として使用するために重要である。例えば、平板状磁石用のモールドとして、鉄製のモールドを使用すると、パルス磁界を印加したとき、モールド内の合金粉末が平板の外周部に押しつけられ、そのまま焼結すると、平板の中央部に大きい巣をもつ焼結体ができる。この巣以外の部分は高密度で、高配向の焼結体になっている。このような磁石は工業材料として不適格であるのは当然である。モールドの材質を適正に選択する、即ち、空洞の平板面あるいは弓形板面を形成する部分に非磁性体を用いるか、又は飽和磁化が1.5T以下、より望ましくは1.3T以下という飽和磁化の低い材料を用いることにより、このような問題は解決される。
また、モールド部位のうち、合金粉末の磁界配向方向と平行な壁を構成する部位の一部または全部を強磁性体材料で構成すると、磁界配向後の合金粉末の配向が磁気回路として固定され安定化される。これにより、磁界配向後モールドの取扱い中にモールドに多少の衝撃力が加わっても、配向の乱れが起こらないので、生産装置の高速化、生産の安定化が可能になる。同様に、空洞が柱状もしくは筒形リング状である場合には、主軸方向(深さ方向)の空洞両端の蓋および底にあたる部分には強磁性体を用いることが望ましい。こうすることにより、磁界配向後の合金粉末の配向が安定に保たれる。
モールドを繰返し使用するために、モールドに合金粉末が焼き付くことを防止するためのコーティングを施すことができる。焼付防止に有効なコーティングとして、BN(ボロンナイトライド)コーティングがある。BNコーティングの方法として、BN粉末を機械的に塗付する程度でも焼着き防止にはある程度有効である。もっと完全な焼付防止のためには、BN粉末を更に強くモールドに固着させることが望ましい。固着のためのバインダーとして樹脂を用いる場合は、焼結のたびに毎回コーティングを実施する。バインダーとして金属やガラスを使用して、モールド内面にBNを焼き付けておくと、複数回使用可能なコーティングができる。また、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD法等によるTiN、TiC、TiB2等の各種窒化物、炭化物、硼化物、あるいはアルミナ等の酸化物から成る薄膜コーティングは、耐久性があり、表面がなめらかで複数回使用可能な焼付防止コーティングとして有効である。
世界のトップレベルのネオジム磁石焼結体の結晶粒径の大きさは5〜15μmであり、焼結前の微粉末の粒径はD50で4.5〜6μmである。ここでD50とは、レーザー式粒度分布測定器(例:シンパテック社製、堀場製作所社製)で測定された、粒度分布の中央値を示す。かつて用いられていた空気透過式粒度分布測定器(フィッシャー社製サブ・シーヴ・サイザー、F.S.S.S.)による測定値が3μmである微粒子の粒径は、D50では約4.5〜5μmと表示される。希土類元素を30重量%以上含む希土類磁石合金組成では、従来の金型プレス法によりD50が4.5μm (F.S.S.S.で3μm)以下の微粉末を取り扱うことは困難であった。本発明において微粉末は窒素などの不活性雰囲気中でモールド内に充填され、磁界によって配向され、焼結炉に搬入されるため、空気に触れる工程がなく、たとえ微粉末であっても取扱上なんら危険性はない。
化学的に活性な希土類元素を多量に含むRFeB磁石合金微粉末を取り扱う上で、従来の金型プレス、CIPやRIPによる製造プロセスは不適格である。酸化されていない4μm以下の小さな粒径のRFeB合金粉末を大気中に晒せば、発火、爆発の危険性があり、安定生産できない。仮に発火せずに済んだとしても、微粉末は表面積が大きいために酸素量が増加し、磁気特性は低下する。従来法ではこれらの影響を避けることができないため、4.5μm以下の微粉末を工業的に大量に取り扱うことはできなかった。
本発明によりD50の値が4μm以下のRFeB合金粉末を用いて焼結磁石を作ると、高配向でエネルギー積が高く、かつ保磁力の高いネオジム焼結磁石が得られる。
本発明によれば、僅少で高価なDyやTbをまったく用いないか、用いたとしても僅かな量で、ハイブリッドカーや産業用モータに使用される、高い保磁力を持ったRFeB磁石を安定に量産できる。
本発明の特徴のひとつは、金型プレスやCIP、RIPのように粉末を配向した後で加圧成形を行わないことである。モールド内で配向された粉末は、従来法のように、圧力が印加されることによって配向が乱されるということがなく、高い配向が維持されたまま焼結される。高い配向度によって、高い残留磁束密度(Br)と高い最大エネルギー積((BH)max)が実現される。
従来法ではD50の値が3μm以下あるいは2μm以下、あるいはさらに高保磁力化のために、1μm以下の希土類含有磁石粉末を取り扱う手段がない。本発明によれば、微粉末作製後焼結までのプロセスを完全な不活性雰囲気中で処理することができ、D50の値が0.5μm以下の希土類含有磁石粉末でも取り扱うことができる。
磁石合金粉末は、配合組成を溶解炉で溶解した鋳造インゴット、または溶湯急冷法(ストリップキャスト法)で得た鋳片を粉砕して得られる。数μmの微粉末を得るには、一般に粗粉砕と微粉砕に分けて粉砕を行うことが多い。粗粉砕は機械的に粉砕する方法と水素中において水素を吸蔵させて粉砕する方法(水素粉砕法)があり、水素粉砕法が生産性にすぐれている為に多く用いられている。微粉砕方法としては、ボールミルやアトライターによる方法、窒素などの気流を用いて粉砕するジェットミル粉砕法などが一般的である。本発明では数μm以下の微粉末を用いることを特徴とするが、微粉末を得る方法に制限はなく、上述以外の方法であってもよい。
本発明におけるモールド中粉末の充填密度は、真密度に対して35%〜60%にすることが好ましく、40%〜55%の間がより好ましい。
従来法(金型プレス法、CIP、RIP)では、後工程に繋がるハンドリングのために堅牢な圧粉体を必要とした。そのため、充分な磁気特性を得るため以上の強い加圧力を必要とした。本発明では圧粉体のハンドリング工程が存在しないため、従来法のような圧粉体強度を考慮する必要がない。
粉体充填には機械的な振動を利用する機械タッピング法、モールド内に押し棒を押しこむプッシャー法又はエアー・タッピング法(特開2000-96104号)を用いることが好ましい。ミクロン単位の磁石粉末は凝集しやすく、モールドに充填する際に容易にブリッジを形成して均一充填が難しい。機械タッピング法やプッシャー法によって、機械的にブリッジを壊して高密度充填を行う。あるいはエアー・タッピング法により、粉末フィーダー内の粉末に周期的なエアー衝撃を加えることによって粉末をモールド内に高密度に定量均一充填できる。
特開2000-96104号公報には、予めバインダー等を添加した粉末をエアー・タッピング法によって型内に充填し、加熱などの方法でバインダーを固化し粉体を結合させて成形体を得て、その後焼結する方法が記載されている。しかし、この発明は磁石に関する方法ではなく、磁界による配向がなく、モールドのまま焼結(または仮焼結)するという発想がない。本発明においては粉末成形体を得るためのバインダーを用いることはなく、バインダーで固めた粉末成形体をハンドリングする必要もない。
粉末の配向に用いる外部磁界発生源はパルス磁界が好ましい。粉末を充填したモールドを空心コイル内に置いてパルス磁界が引加される。金型プレス法で用いられる電磁石による静磁界方式では印加磁界は高々1.5Tであるのに対し、パルス磁界方式ではこれよりずっと高い磁界を印加することができる。本発明におけるパルス磁界の大きさは2T以上、好ましくは3T以上必要で、5T以上であることがさらに好ましい。また、粉末を配向するためのパルス磁界は直流パルスを1回だけ印加するよりも、予め交番減衰式の波形磁界を印加し、その後直流パルス磁界を印加するような方法が好ましい。
特許第3307418号には、RFeB磁石の製造において、1.5〜5Tの磁界を与えることにより、磁気特性が向上することが確認されている。しかし、従来の金型プレスにパルス磁界を印加すると、金型中に渦電流損失やヒステリシス損失が発生して連続使用できない。また、パルス磁界による衝撃力が金型に加わるため、金型が破損することがある。
本発明における粉末配向磁界は、超伝導式コイルなどによって強い磁界を得ることができるのであれば、それでもよい。
すぐれた磁気特性を有する希土類焼結磁石は、緻密で均質な微細組織を必要とする。そのような焼結体を得るため、微細で緻密な合金インゴットを得る方法としてストリップキャスト法が提案された(特許第2665590等)。従来のRFeB磁石の製法ではストリップキャスト合金の薄帯の厚さは300μm程度のものが使われているが、本発明の方法では合金薄帯の厚さは250μm以下が望ましい。さらにD50=3μm以下の粉末粒径をもつ微粉末を得るための薄帯としては、200μmまたはそれ以下の厚さが好ましい。D50=2μm以下の粉末を得るための薄帯としては、150μm以下の厚さが好ましい。このように適切な厚さの合金薄帯を使用して微粉末を得ることにより、最終的に得られるネオジム焼結磁石の保磁力を最大にすることができる。
本発明において、粉砕機からの微粉末の取り出しより焼結炉への搬入までの工程の一切が、不活性雰囲気中で行われる。ホッパーに置かれた微粉末は機械的タッピングやエアー・タッピングのような高密度充填手段を通じて不活性ガス雰囲気中に設置されたモールド中に充填され、蓋をされて、磁界中配向手段を設けた場所に移動する。パルス磁界等の磁界中配向手段によってモールド中の粉末が配向され、そのまま焼結炉入り口に搬送される。
予め液体潤滑剤を添加した微粉末をモールドに充填することは、磁界中配向を容易にして配向度を高めるため、好ましい方法である。
一般に、固体潤滑剤は蒸気圧が低く沸点は高いが、液体潤滑剤は蒸気圧が高く沸点は低い。微粉末全体に行き渡り易いこと、脱脂性が容易であることを考慮すると、液体潤滑剤がよい。
液体潤滑剤としてカプロン酸メチルやカプリル酸メチルを飽和脂肪酸と共に用いることが知られている(特開2000-109903号)。しかし金型プレス法にこれらの潤滑剤を用いる場合は磁石粉末に対して0.05〜0.5重量%というごく少量しか用いることができない。これらは揮発性がよく、焼結体に残存しないという特長を持つが、金型プレスで強く圧縮成形した圧粉体を焼結する際には、圧粉体内部に閉じ込められた潤滑剤成分までも除去することが困難であり、高温で潤滑剤成分と磁石成分が反応して磁気特性を低下させるおそれがあるからである。
本発明においてモールド内の粉末は圧縮されておらず、潤滑剤成分がガス化して容易に除去される。したがって本発明の液体潤滑剤の量は多い方が好ましい。しかし多すぎる場合には高密度充填されないおそれがある。好ましい液体潤滑剤の添加量は0.1〜1%である。
本発明の液体潤滑剤は、潤滑性があって揮発し易いものであればよく、オクチル酸メチル、デカン酸メチル、カプリル酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチル酸メチル、ステアリン酸メチルなどを用いることができる。ステアリン酸亜鉛などの室温で固体の潤滑剤は、液体潤滑剤に比べて、粉体粒子表面に均一に塗付するのが難しいという欠点を持つ。しかしスーパーミキサー(カリタ社製)と呼ばれる混合機のように固体潤滑剤を粉体粒子表面にたんねんに塗付する装置を使用すると、固体潤滑剤の潤滑効果が最大限に発揮されるようになる。このような方法で固体潤滑剤が添加された粉末は、液体潤滑剤を添加した粉末に比べて、圧縮による固化現象が起こりにくいという特長をもつ。このような粉末を本発明の希土類磁石製造方法において使用すると、パルス配向時に粉末が外周部に押しつけられて固まり、その後の焼結により、焼結体中央部に巣が形成されることが防止できる。
[本発明の効果]
本発明は、RFeB磁石やRCo磁石など希土類磁石の磁気異方性焼結磁石の製造方法において、従来法の問題点や矛盾点を解決する方法として見出された。すなわち、本発明によれば金型プレス等の大掛かりな成形装置を必要とせず、ハンドリングのための堅牢な圧粉体を作る必要もないので配向の乱れがなく、ネットシェイプ形状の磁気異方性焼結磁石が得られる。空心コイルによって強いパルス磁界を与えることができ、また希土類元素を含む化学的に活性な微粉末を大気に触れることなく処理できるので、酸素量が少なく粒度の小さな粉末を取り扱うことができ、TbやDyを用いなくとも高い保磁力の希土類磁石が得られる。また、薄板状や弓形板状など希土類磁石製品として最も多く生産されている製品形状の高性能磁石を極めて能率よく生産することができる。
[モールド]
モールドは、焼結温度(〜1100℃)の高温に耐える材質が望ましい。予めモールドを昇温していく過程において粒子の軽度の結合が生じ、被焼結物は自己保形可能な状態となる。この仮焼結状態で、モールドの一部または全部を取り除き、別のモールドあるいは台板に仮焼結体を移し替えることができる。仮焼結の温度は500℃から焼結温度よりも30℃低い温度までの間が望ましいため、仮焼結時に用いるモールドはこの温度に耐える材質であればよい。
モールドの材質には、鉄、鉄合金、ステンレス、パーマロイ、耐熱鋼、耐熱合金、超合金や、モリブデン、タングステンあるいはそれらの合金、さらにフェライトやアルミナなどのセラミックスなどを用いることができる。
[モールド内壁コーティング]
焼結時の焼結体とモールド内壁の融着を避けるために、予めモールドの内壁にBN等の離形剤を塗付することも有効である。モールドの内壁にBNを塗布したり、MoやWのような高融点金属等を溶射法により吹き付けてこれらの膜を内壁に形成することにより、焼結時に焼結体がモールド内壁に付着したり、その付着のために焼結体が変形したり割れたりするのを防止することは、良質の焼結磁石を生産するのに有効である。TiN、TiC、TiB、Al2O3、ZrO2等の薄膜をステンレスなどのモールド表面に、スパッタリングやCVD、あるいはイオンプレーティングによって形成すると耐久性のある融着防止コーティングができる。
[充填方法]
本発明において、充填方法は重要である。造粒できない永久磁石合金微粉末は磁石の性質を有するために凝集し易く、ブリッジを形成して、モールド内に定量充填するのが困難である。本発明で用いられる強制充填には、例えば機械的タッピング法、プッシャー法、本件発明者により開発されたエアー・タッピング法(特開2000-96104号)を用いることができる。
[充填密度]
充填密度は合金の真密度の35%から60%とすることが好ましい。35%以下であると、焼結体に大きい巣が形成されたり、焼結体全体が低密度で多孔質になって、実用的な永久磁石が得られない。実用的に使用可能な高品質の永久磁石を得るためには、充填密度は35%以上が必要である。充填密度が60%を超えると、磁界配向により充分な配向が得られない。充分に配向して、巣や割れがなく、高密度の焼結体を得るためのより好ましい充填密度の範囲は40〜55%である。
モールドとしては、図1に示すような、個々の形状に応じた単個取りモールドを用いることができる。また、効率を上げるために図2又は図3に示すような多数個取りのモールドを用いることもできる。各空洞の仕切りは、着脱可能な薄い仕切り(例えば図2(3)の仕切り21)でよい。また、図2(1)、(2)、(4)、(5)のようなモールドは、ドリルやエンドミルによる切削加工や、放電加工などにより、無垢の材料に直接所望形状の空洞を形成することによって作られる。予め収縮率から逆算した所定形状の空洞をもつモールドを用意し、所定の強制充填を行えば、均質な所定形状の焼結体を得ることができる。
図1(3)又は(4)のモールドにより製造される穴あき筒形リング状磁石は、従来の金型プレス法では平行磁界プレス法によってのみ製作可能であった。平行磁界プレス法で製作される焼結磁石の磁気特性が低いため、直角磁界プレス並みかそれ以上の磁気特性を持つ筒形リング状磁石の製造方法の開発が望まれていた。ゴムモールドの中心に金属製の棒(中子)を設置し、パルス磁界を印加した後CIPまたはRIPで圧縮する方法が試みられたが、ネットシェイプ性が悪く、生産性が低い。本発明による製造方法では、微粉末をモールドに入れてパルス配向後、そのまま焼結すればよい。内径部分で収縮が起きるので、仮焼結により保形された段階で、仮焼結体を図1(3)又は(4)のモールドから取り出し、別の焼結用モールドに移し変えるか、中子を除去してから本焼結を行う。あるいは、磁界配向後であって加熱を行う前に中子を除去するか、細い中子に替えて本焼結を行うこともできる。このようにして直角磁界プレス並みまたはそれ以上の磁気特性を持つ筒形リング状のRFeB焼結磁石を製作できる。なお、図1(3)、(4)にはモールドの空洞が円筒状である場合の例を示したが、空洞は六角柱状等の他の形状であってもよい。また、中子も円柱状に限らず、六角柱状等の他の形状であってもよい。
図1(2)に、大型ブロック用のモールドの例を示す。従来の金型プレス法ではプレス圧の限界や均一磁界領域の限界によって困難であった大きさのものが、本発明によれば容易にできる。
図2(3)に、薄い仕切りで区切られた平板磁石用のモールドを示す。このモールドを用いることにより、多数個取りが可能である。
図2(4)に、モーターなどで用いられる弓形板状磁石用のモールドを示す。従来の金型プレス法が苦手とする形状についても、本発明では容易に製造することができる。仕切りの部分は図2(3)と同様に着脱可能にしてもよい。
図2(5)に、扇形の断面を有する柱状磁石を製造するためのモールドを示す。作製された扇形断面柱状磁石を所定の厚さずつに切断して得られる磁石はボイスコイルモータなどに用いられる。
図3に、図2(1), (3)のモールドよりも更に多数の平板磁石を1度に作製することができるモールドの例を示す。本発明の製造方法では金型プレス機を用いる必要がないため、平板状の空洞を2列並べて配置することができる。また、このような空洞を3列以上並べることもでき、平板状の空洞の代わりに弓形板状等、他の形状の空洞を2列以上並べて配置することもできる(図示は省略)。本発明では微粉末を配向させる際に従来よりも空芯部の容量が大きいコイルを使用することができるため、このように空洞を2列以上並べても平板磁石毎の磁石特性のばらつきを十分に小さく抑えることができる。
[蓋]
図1〜図3に挙げるようなモールドに微粉末を充填し、蓋をしてから、パルス磁界を印加して粉末を配向する。パルス磁界を粉末に印加すると、粉末を構成する粒子は1つ1つ磁石になり、磁石のN極どうし、S極どうしが反撥しあって、粉末体積が大きく膨張する。蓋をしないか、蓋が不完全であると、パルス磁界配向のとき粉末が飛散してしまう。
蓋はモールドに軽くはめこむ程度に設計される。蓋とモールドの口のはめ合いがきつすぎると、空洞内が密閉状態になる。空洞内が密閉状態であると、焼結時に焼結体の高密度化が粗害されたり、潤滑剤等に含まれる炭素成分に汚染されて、磁気特性の低下が起こる。このため、蓋とモールドの口に小さいすき間ができるようにはめ合いを調節するか、図4(1)、(2)のように脱気用の小孔を形成しておく。
[希土類磁石]
本発明は、R(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種。)および遷移元素を含有する希土類磁石の製造方法に適用される。
希土類磁石の組成は特に限定されず、希土類元素および遷移元素を含むものであればよいが、本発明は特に、RFeB系焼結磁石(Feの一部はCoで置換可能である。)、またはRCo系焼結磁石の製造に適する。
RFeB系希土類磁石の組成は通常、Rを27〜38重量%、Feを51〜72重量%、BをO.5〜4.5重量%含有することが好ましい。R含有量が少なすぎると、鉄に富む相が析出して高保磁力が得られなくなる。一方、R含有量が多すぎると、残留磁束密度が低下する。
希土類元素Rとしては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、Lu等を挙げることができ、特に、Ndおよび/またはPrを含むことが好ましい。さらに、Rの一部を重希土類元素のジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)で置換すると、高い保磁力が得られる。しかし、重希土類元素の置換量が多くなりすぎると残留磁束密度が低下するので、重希土類元素の置換量は6重量%以下が好ましい。B含有量が少なすぎると高保磁力が得られず、B含有量が多すぎると高残留磁束密度が得られない。なお、Feの一部をCoで置換することも可能であるが、その場合、置換量が多くなりすぎると保磁力が低下するので、Co量は30重量%以下が好ましい。
さらに、保磁力や焼結性を改善するために、Al、Cu、Nd、Cr、Mn、Mg、Si、C、Sn、W、V、Zr、Ti、Mo、Gaなどの元素を添加してもよいが、これらの添加量の総量が5重量%を超えると残留磁束密度が低下してくるため、好ましくない。
磁石合金中には、これらの元素の他、製造上の不可避的不純物あるいは微量添加物として、例えば炭素や酸素が含有されていてもよい。
このような組成を有する磁石合金は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有する。また、通常、体積比で0.1〜10%程度の非磁性相を含むものである。
磁石粉末の製造方法は特に限定されていないが、通常、母合金インゴットを鋳造し、これを粉砕して製造するか、還元拡散法によって得られた合金粉末を粉砕して製造する。
[粉末粒径]
磁石微粉末の平均粒子径は、RFeB磁石の場合、0.5〜5μmがよい。従来法の工程では、微粉末または圧粉体が大気に晒されるため、4μm以下の微粉末を用いることができなかった。本発明の工程では、微粉末が大気に晒されることがないから、3μm以下あるいは、さらに2μm以下の粉末を用いることができる。高い保磁力を得るためには、焼結体の結晶粒径は、RFeB型磁石の単磁区粒子径の大きさである0.2〜0.3μmにできるだけ近いことが望ましい。それを実現するためには、微粉末粒径も微細な方が望ましい。
微粉末の粒径は、かつてはFisherのサブ・シーブ・サイザー(Sub-sieve-sizer : F.S.S.S.)で測定された数値が用いられていた(例えば特開昭59-163802号)。しかし現在ではレーザー式粒度分布測定装置(例:シンパテック社製、堀場製作所社製)により得られる粒度分布の中央値D50の値で定義するのが一般的である。両方法の測定値には1.5から2倍の違いがあることが知られている。本願では、レーザー式粒度分布装置で測定したD50の値を用いる。
本発明における好ましい結晶粒径の大きさは、RFeB磁石の場合、D50の値として4μm以下である。大きな保磁力を得るためには3μm以下が好ましく、本発明のプロセスが完全なクローズドシステムで行われることから2μm以下がさらに好ましい。さらに、RFeB金属間化合物の単磁区粒子径の大きさの結晶粒径に近づけるために最適な大きさは1μm以下である。
RCo磁石の場合、好ましい粉末粒径の大きさは、1-5型、2-17型のいずれかの場合も1〜5μmである。
[パルス磁界]
モールドにつめられた粉末は所要の磁界を受けて配向する。このとき、磁界は強い方が好ましい。金型プレス法で用いられる鉄心をもつ電磁石方式では、鉄心の飽和磁化の磁界である2.5Tが限度である。金型プレス法において、強いパルス磁界を用いる提案もあるが、ヒステリシス損失・渦電流損失による温度上昇や、精密なプレス機に衝撃的な力が加わり金型の寿命を短くするので実際的でない。本発明においては、連続装置内に配置した空心コイルにより、粉末を充填したモールドにパルス磁界を印加する。なお、本発明では、金型プレス法やCIP、RIP法の場合に必要な圧粉体のハンドリングのための消磁工程は不要である。
配向のための磁界は強いほうが好ましいが、現実には電源の大きさやコイルの強度、連続使用の頻度によって限度がある。これらを考慮した好ましい磁界強度は2T以上、より好ましくは3T以上、さらに好ましくは5T以上であるが、この程度の磁界は空心コイルにより得ることができる。空心コイルによりパルス磁界を得る場合、金型プレスではコイル径は金型より大きくなければならない。金型は粉末が入る空洞の大きさに比べてはるかに大きいため、そのような金型を入れることができる内径の大きい空心コイルが必要である。それに対して本発明の場合は空心コイルの内径はモールドが入る程度の大きさでよい。空心コイルでは同じアンペア・ターンであってもコイル内径が小さいほど磁界強度が大きくなるため、本発明の方法を用いてコイル内径を小さくすることができることにより、電源やコイルの負担を軽減し、経済性を高めることができる。
パルス磁界によって配向されたモールド内の微粉末は、通常、消磁しないでそのまま焼結前工程である脱脂工程へ搬送される。本発明では、酸素に接する機会のないクローズドプロセスとすることができるため、焼結炉は連続処理炉であることが望ましい。しかしモールドを密閉容器に入れ、その密閉容器を不活性ガスで充満させた搬送チャンパーに入れ、焼結炉前室に設けた雰囲気チャンバーの中でモールドを密閉容器から焼結台板上に移すことも可能である。
[焼結前]
焼結前室において、モールドを真空または不活性ガス減圧雰囲気下で昇温する。潤滑剤を用いた場合には、この段階で脱脂する。従来の金型プレスやCIP、RIPを用いて強く圧粉した場合は、圧粉体内部に閉じ込められた潤滑剤成分を容易に脱脂できないが、本発明においては、粉末は圧縮されないので、粉末中の粒子表面に塗布された潤滑剤成分はモールドと蓋のすきまあるいはモールド又はその蓋に設けられた脱気孔を通じて容易に蒸発する。
圧粉体を焼結するに際し、500℃よりも低い温度では粒子の結合が起きないが、焼結が始まる温度以上の温度では収縮が起こり割れを生じることがある。リング形状に焼結する場合は、モールドのまま焼結すると、焼結時の内径部分の収縮によって割れが発生するおそれがある。そのような場合は、500℃以上でかつ焼結収縮が始まる温度よりも低い温度で仮焼結し、粒子同士が軽く結合して収縮の始まらないうちに仮焼結体をモールドから取り出し、中子のないモールドに交換して本焼結を行えばよい。あるいは、中子だけを取りはずして本焼結を行ってもよい。
[製造装置]
本実施例の製造装置について、図5及び図6を用いて説明する。
図5に示すように、全体の装置(以下システムという)は隔壁40によって囲まれ、ArガスやN2ガス等の不活性ガスで満たされている。システムは、図5に示すように、粉末秤量・充填部41、タッピングによる高密度化部42、磁界配向部43及び焼結炉44から構成されている。これら各工程の間はコンベア45によって連結されており、モールド46に詰められた粉末がコンベア45によって間歇的に運ばれ、各ステージで所定の処理が行われる。
秤量・充填部41においては、加振器の付いたホッパ47よりモールド46に一定量の粉末が供給される。このとき、粉末充填密度は自然充填密度に近い小さい値なので、所定量の粉末をモールド46に保持するために、モールド46の上部にガイド48が取り付けられている。
次の高密度化部42において、モールド46の上部の粉末上面に蓋49がかぶせられ、図5に示すように、プレスシリンダー50の押棒51により蓋49を押さえながら、モールド46の下部のタッピング装置52を駆動して、粉末の高密度化が行われる。タッピング装置はモールド46内の粉末に下向きの加速度を断続的に与える(タッピング)加振器である。タッピングによりモールド46内の粉末はモールド46の上端(ガイド下端)まで、あるいはそれより少し下方まで押し下げられ、蓋49がモールド46の上面に装着される。その後、タッピング時のホルダー53とガイド48がモールド46から取りはずされ、蓋付きモールドに粉末が高密度に充填された状態で、コンベアによって磁界配向部に搬送される。
磁界配向部43では、粉末が充填されたモールド46が所定の方向に向けられ、所定の位置(コイルの中央部)に置かれる。隔壁40外に設置されているコイル54にパルス大電流が流され、これにより発生するパルス磁界によりモールド46内の粉末が所定の方向に配向される。粉末配向後、粉末が充填されたモールド46は搬送されて、焼結炉に入っていく。
本システムの特長は、粉末がモールドに入れられて運ばれるので粉末のハンドリング(受け渡しや搬送)が容易で、複雑な動きをするロボットやマニュアルオペレーション(人手)が必要でないこと、金型プレスなどで使われている総圧10t〜200tというような巨大なプレス装置が不要であることなどのために、図5に強調して示したように、システム全体を隔壁40によって完全に囲うことが容易にできることである。本発明においては、粉末粒径が究極的にはD50=1μmないし2μmとなる工程を目指しているので、安全性はきわめて重要な因子である。隔壁に穴が開いたり、亀裂が入ったりすると、システム全体が大爆発することも考えられるからである。その意味で、本発明のシステムでは、図6に示したように、図5に示した隔壁40の外側に外側隔壁55を設置して、二重の安全対策を取ることができる。このとき、外側と内側の隔壁の間にも不活性ガスを満たしておく。このようにすればいずれかの工程中に内側隔壁が破れるようなことがあっても、外側隔壁が空気の侵入を防いでくれるので、粉末の燃焼や爆発の心配がない。このようにして、システムをフェイルセーフとすることができる。
次に、本実施例において行った実験について説明する。
[実験1]
Nd=31.5重量%、B=0.97重量%、Co=0.92重量%、Cu=0.10重量%、Al=0.26重量%、残部Fe、の合金をストリップキャスト法で作製した。この合金を5〜10mmのフレーク状に砕いた後、水素解砕とジェットミルにより、D50=4.9μmの微粉末を得た。粉砕工程において酸素濃度は0.1%以下として、微粉末中に含まれる酸素量を極力低く抑えるようにした。ジェットミル粉砕後、液体潤滑剤であるカプロン酸メチルを粉末に対して0.5重量%添加し、ミキサーで撹拌混合した。
この粉末を内径10mm、外径12mm、長さ30mmのステンレスパイプに、粉末充填密度が3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0g/cm3になるように充填して、パイプの両端にステンレス製の蓋を取り付けた。このステンレスパイプに詰めたNdFeB磁石粉末に、パイプの軸に平行な方向にパルス磁界を印加した。パルス磁界の強さのピーク値は8Tで、交番的に方向を変えながら減衰していく交番減衰磁界(以下ACパルスという)と、ピーク値8Tに達した後、磁界方向を変えないで減衰していくパルス磁界(以下DCパルスという)の2種類のパルス磁界を使用した。本実施例ではAC、DC、DCの順に、いずれもピーク値8Tのパルス磁界をステンレスパイプに充填した磁石粉末に印加した。磁界印加の後、磁石粉末が充填されたステンレスパイプを焼結炉に搬送し、1050℃で1時間焼結した。この実験で、ステンレスパイプへの粉末の充填、パルス磁界配向、焼結炉への装入、途中の全ての搬送は、全て不活性ガスの中で行い、磁石粉末を一切空気にさらさないで粉砕から焼結までの工程を実施した。焼結後、焼結体をステンレスパイプから取り出した。粉末充填密度を3.0g/cm3、3.2g/cm3としたときの焼結体は中に巣のような空洞が多くできていたが、充填密度を3.4g/cm3としたときの焼結体は蓋に接するごく一部を除いて空洞が生成されていなかった。充填密度を3.6g/cm3以上としたときの焼結体の密度は理論密度の98.7%に達し、空洞はきわめて少ないか全く生成されておらず、高密度高品質の焼結体が形成されることを確認した。焼結体を直径7mm、高さ7mmの円柱に加工して、最大磁界10Tのパルス磁界を印加して、磁気測定を行った。パルス磁界印加による磁気測定から10Tにおける磁化の値に対する残留磁化の比を求め、焼結体中の配向度を測定した。その結果、充填密度=3.6g/cm3により作製した焼結体の配向度は97.0%、3.8g/cm3のものは96.0%であった。比較のために従来法としての金型磁界中成形法により作製した焼結体の配向度は95.6%であった。
[実験2]
実験1と同じ合金から水素解砕とジェットミルによって得たD50=4.9μm及びD50=2.9μmの粉末を作製し、焼結体の形状と密度に及ぼすモールドの材質(飽和磁化Js)依存性を調べた。モールドの粉末が充填される空間の大きさは直径25mm、厚さ7mmの扁平な円柱状とし、モールド材質は鉄(Js=2.15T)、パーマロイ(Js=1.4T、1.35T、0.73T、0.65T、0.50T)および非磁性ステンレスのものを作製した。これらモールドの壁の厚さは全て1mmとした。
粉末をこれらのキャビティに充填密度3.8g/cm3になるように詰め、実験1と同じAC→DC→DC(ピーク磁界はいずれも8T)の磁界をモールドごと粉末に印加してこの粉末を配向させ、その後、焼結した。本実験でも実験1と同様、粉末は全工程において空気に触れないようにして焼結体を得た。焼結条件は、D50=4.9μmの粉末に対しては1050℃、D50=2.9μmの粉末に対しては1020℃とした。焼結後、モールドから焼結体を取り出した。その結果、焼結体の形状がモールドの材質によって大きく変わることが分った。Jsが最大である鉄製モールドにより作製した焼結体には中央部に2mm程度の大きい穴があり、この穴の周りから直径0.5mm程度の柱状体がとれてきて、穴がさらに大きくなった。
モールド材質として、Jsが1.35T以上のパーマロイを使用した場合も、鉄製モールドほどではないが同様な傾向が見られた。また、非磁性のステンレスモールドについても、焼結体中央部に小さい巣が形成されていることがあった。しかし、このときの巣は実用上多くの目的には支障がない程度のものがほとんどであった。欠陥がなく、形状が良好であったのは、Js=0.5〜0.73Tのパーマロイ製モールドを使って作製した焼結体であった。中でもJs=0.73Tのパーマロイ製モールドにより作製した焼結体は欠陥が全くなく、形状も最良であった。このことから本発明に使用する粉末モールドに使用する材料は、Jsが大きすぎもせず、小さすぎもせず、Js=0.3〜1T、好ましくはJs=0.5〜0.8Tが最適であることが分かった。この最適Jsの値は粉末充填密度と粉末の磁化にも関係しており、モールド材のJsが(粉末の磁化)×(粉末の百分率で表した充填密度)の値に近いときに最良の焼結体が得られることが分かった。このようなモールド材質による焼結体の品質の差は、キャビティー形状に依存し、焼結後の焼結体形状が扁平なときに顕著に現れることが判明した。
[実験3]
実験1と同じストリップキャスト合金を水素粉砕した後、ジェットミルにより、粉砕条件を変化させて粒径の異なる微粉末を作製した。作製した微粉末の粒径はD50=2.91μm、4.93μm、9.34μmの3種類である。これらの粉末について実験2と同じ形状をもつパーマロイ製モールド(Js=0.73T)に、充填密度3.8g/cm3まで充填し、焼結した。この場合も、粉砕から焼結までの全工程において、粉末が空気に触れることがないように、高純度のArガス中で作業が行われた。比較のために、従来法の金型プレスによる焼結体作製も行った。従来法の場合についても、粉末や圧粉体が焼結前に空気に触れないように、不活性ガス中で全ての作業を行った。焼結温度は、本実施例においても、従来法の金型プレス法を使用する場合でも、D50=2.91μm、については1020℃、D50=4.93μmについては1050℃、D50=9.34μmについては1100℃とした。これらの温度において異常粒成長が抑制された良好な焼結体が得られた。いずれの焼結体についても焼結後500℃で1時間熱処理された。実験1で述べたパルス磁化測定により、保磁力を測定した結果および焼結体中の酸素量分析結果を表1に示す。比較のために、従来法の金型プレスにより作製した焼結体の保磁力および焼結体中酸素量を表2に示す。
表1と表2を比較すると、粉末粒径が小さい粉末を使用したとき、本発明の方法は従来法に比べて大きい保磁力が得られることが分かる。これは、それぞれの表に示すように、本発明の方法では、工程中に粉末が酸化される程度が低いことによっている。なお、D50=2.91μmの粉末についての比較例の実験中に、プレス機の囲いのわずかな空気漏れのために粉末が加熱されて燃えだした事故があったことに注意しなければならない。一般に従来法の金型プレス法は圧粉体を金型から取出すときに、圧粉体と金型との摩擦により熱が発生したり、プレス機自体、または圧粉体取出し、配置、箱詰作業時に頻繁に発生する種々のトラブルのために、外部から酸素が系内に侵入しやすく、全システムがAr雰囲気中において動作するように設計されていても、焼結後の焼結体酸素量は増加しやすい。酸素の混入量がある限界を超えると粉末が加熱されて、燃えたり爆発に至る事故が発生することもある。これに対して、本発明の方法は、工程が単純なのでトラブルが少なく酸素の系内への侵入をきわめて低く抑えることができるとともに、この状態が安定しているので、粉末粒径が小さくても、焼結後の焼結体中の酸素量をきわめて低くでき、安定して低酸素焼結体を生産できる。表1と表2の差は数少ない実施例の比較であるが、生産量が多い大量生産においては、本発明の効果は表1と表2の差よりさらに大きくなることが予想される。
本実施例により、D50=2.91μmの粉末をNdFeB焼結磁石の生産に安定して使用することが可能であり、本発明の方法がDyやTbのような高価な希土類元素を使わないで高保磁力化が可能であることが実証された。
[実験4]
実験1のストリップキャスト合金を水素粉砕し、ジェットミルにより、D50=2.9μmの粉末を作製した。この粉末にカプロン酸メチルを0.5重量%添加して、よく混合した。一方直径23mm、深さ4mmの空洞を持つモールドを鉄、磁性ステンレス(Js=1.4T)、パーマロイ(Js=0.7T)および非磁性ステンレスの4種類の材質で作製した。モールドの肉厚は両端面3mm、側方部2mmとした。モールド内面にはBN粉末と固形ワックスを混ぜたものをこすり付けて焼結中の溶着防止膜を形成した。これらのモールドに、上述したカプロン酸メチルを添加したD50=2.9μmの粉末を、充填密度が3.2g/cm3、3.3g/cm3、3.4g/cm3、3.5g/cm3、および3.6g/cm3になるように充填した。その後粉末を充填したモールドをコイルに入れ、円柱形モールドの軸方向に、ピーク値9TのAC、続いてDC、もう一度DCの磁界を印加して粉末を配向させ、引き続き焼結を行った。焼結は、真空中で1010℃で2時間行い、冷却した。図7に焼結後のモールド内面および焼結体の写真を示す。焼結体寸法は直径19.0〜19.5mm、厚さ2.7〜2.8mm(充填密度が高いものほど大きい。)であった。写真から鉄製モールドを使用して作製した焼結体は全て、まん中に穴があいていて、モールド側中央部に焼結体のかけらが残留していることが分かる。このように、鉄製モールドを使用して比較的薄肉の焼結体を作製するときは、粉末の充填密度が高い場合でも、中央部に大きい穴ができてしまう。磁性ステンレス(SUS440)モールドを使用したときにも、充填密度が低い場合には円板状焼結体の中央部にやはり巣ができる傾向にあることが分る。磁化Jsが比較的小さいパーマロイや非磁性ステンレス(SUS304)のモールドを使用すると、低充填密度(3.2〜3.3g/cm3)でも中央部に穴ができない。なお、この実験で使用したモールドは蓋が軽く閉まる程度(すり合わせ部があまりきついはめあいになっていない)にした。焼結中の粉末から放出されるガス成分は、このゆるいすり合わせ部から抜けていった。
[実験5]
実験4と同じ粉末を使用し、直径10mm、長さ60mmの空洞をもつモールドを使用して、実験4と同様の実験をした。円柱モールドの片方に蓋をはめこみ、形成された空洞に粉末を充填密度3.4g/cm3、3.5 g/cm3、3.6g/cm3、3.7g/cm3、3.8g/cm3まで充填した。本実験では両蓋の材質とモールドの材質を独立に変える実験も行った。粉末をモールドに充填して両蓋を閉めた後、実験4と同じ条件で円柱モールドの軸方向に磁界配向を行った。その後実験4と同じ条件で焼結した。蓋のモールド両端のはめ合いはゆるめとして、焼結中の放出ガスが排出されやすいようにした。焼結条件は実験4と同様である。焼結体の密度、形状、巣の形成の状況を調べた結果、焼結体の密度は全ての試料について、7.5g/cm3以上で、欠陥のない長細い円柱焼結体が作製できた。しかし、両端の蓋の材質が非磁性のSUS304のとき、円柱の中央部が太く、両端部が細い樽形の形状を持つ傾向が認められた。両端部が強磁性体製のときには均一な太さの円柱試料が形成された。
[実験6]
実験4と同じ粉末を使用して、図2(3)のモールドにより平板状および弓形板状磁石の作製実験を行った。ただし、弓形板状磁石用モールドは、しきり板21を湾曲したしきり板に替えて使用した。モールドは粉末充填前にBNと固形ワックスの混合物をこすり付けてコーティングをした。上下の蓋は、厚さ1mmの平らな非磁性ステンレス板を使用し、この板の四隅に設けた穴と、図2(3)には示されていない、モールドの四角のネジ穴にボルトを通して締めつけて上下の蓋とモールド本体を固定した。粉末充填量は3.2g/cm3から3.9g/cm3まで0.1g/cm3ずつの間隔で変え、焼結条件は実験4と同じとした。配向磁界の方向はモールド外わくの長辺の方向に平行な方向とした。実験結果の要点はつぎの通りである。
(1) 充填密度が3.4g/cm3以上でモールドの材質およびしきり板の材質が非磁性のときおよびパーマロイのとき、欠陥のない、高密度の、かつ高い磁気特性をもつNdFeB焼結磁石の平板状および弓形板状磁石が作製できた。
(2) 平板面および弓形板面のしきり板が鉄または磁性ステンレス製の場合には、平板および弓形板の中央部に実験4の写真(図7)に示したものと同様の巣が形成され、良好な製品が作製できなかった。
(3) モールド外わくの材質が鉄,磁性ステンレスまたはパーマロイ、上蓋及び底板の材質が非磁性ステンレス、仕切り板の材質が非磁性ステンレスまたはパーマロイとして、モールドに粉末を充填して、両蓋を閉め、パルス磁界配向した後、上下の非磁性ステンレス製の蓋および底板を取り除いたが、配向されたモールド内の粉末は、けば立ったり、落下したりすることはなく、多少の機械的振動やショックにも安定であることが分った。その後、上下の蓋および底板を取除いたまま焼結を行ったところ、高配向・高焼結密度の良好な焼結体が作製できた。但し、モールド外わくの材質が鉄又は磁性ステンレスのとき、仕切り板で仕切られた複数の空洞のうち両端の空洞、即ち平板面又は弓形板面がこの外わくに接する空洞に形成された焼結体には巣ができていた。これら両端以外の空洞からは、巣が形成されていない良好な焼結体が得られた。
[実験7]
実験4と同じ粉末を使用して、軸方向に配向された筒形リング状磁石の作製実験を行った。使用したモールドには、底蓋中央にも、上蓋と同様の、中子が入る穴があいている。中子を底蓋にはめこみ、底蓋をモールドにはめこんで筒形リング状空洞を形成した。この筒形リング状空洞に合金粉末を3.4〜3.8g/cm3の密度で充填し、上蓋を閉めた。中子と上下の蓋およびモールドと上下の蓋のはめ合いは、はめこんだ後、持ち上げてもずり落ちないが、強く引きぬくと外れる程度に調整しておいた。上下の蓋、中子、モールドの材質を実験4と同様に4種類それぞれ独立に変えて実験した。
その結果、中子を非磁性ステンレス製として、上下の蓋を磁性体(鉄、磁性ステンレス、パーマロイ)としたとき、キャビティーに粉末を充填して、磁界を筒形リング状キャビティーの軸方向に印加した後、中子を引きぬいても、磁化された粉末が上下蓋に吸着されて粉末の落下や崩れが起こらないことを確認した。そして、中子を引き抜いたまま、モールドごと、筒の軸を鉛直にして焼結炉に入れ、1010℃で2時間焼結を行った。このようにして作製した焼結体は変形やゆがみもなく、焼結収縮から予想される通りの筒形リング状であった。また、巣などの欠陥もなく、高密度であることを確認した。磁気特性を測定した結果、この実験で作製された筒形リング状NdFeB焼結体は、従来法の平行磁界中プレス(金型プレス)によって作製されるNdFeB焼結磁石よりもはるかに高いBrおよび(BH)maxを持ち、直角磁界中プレスによって作製された磁石の特性と同じくらいか、条件によってはそれより高い特性をもっていることを確認した。本実験において、使用したモールドと、それによって作製された筒形リング状NdFeB焼結磁石の写真を図8に示す。この時、モールドの空洞の外径は23.0mm、内径は10.0mm、高さは33.2mmであった。そして、この作製された筒形リング状磁石の外径は19.1mm、内径は8.6mm、高さは22.3mmであった。
[実験8]
表3に示すような組成と厚さの異なる合金を5種類作製した。
これらの合金に水素を吸蔵させて、合金に細かいひびを入れてから、合金を400℃に加熱して主相中の水素を除去した。このようにして水素粉砕した合金をジェットミルにより微粉砕した。ジェットミルの粉砕条件を変えて粉砕することによりD50=4μm以下の粒径の粉末を作製した。なお、ジェットミル粉砕前に、水素粉砕した合金中に合金重量の0.05%のステアリン酸亜鉛粉末(固体潤滑剤)を添加した。これらの粉末を空気に触れないようにして、高純度Arを満たした高性能グローブボックス(露点約-80℃)に移し、その後の全ての粉末の取り扱いを、このグローブボックス中で行った。グローブボックスの中で、まず液体潤滑剤カプロン酸メチルを0.5%合金粉末に添加して、高速で羽根が回るミキサーで5分程度撹拌した。これらの粉末を直径10mm、深さ10mmの円柱状空洞をもつパーマロイ製モールドに充填した。充填密度は2.5g/cm3から4.1g/cm3まで0.1g/cm3きざみで変化させた。粉末をモールドに充填した後、モールドに蓋をした。蓋には特に小孔や溝を設けないで、蓋とモールドの口とのはめ合い部分のすきまを焼結時の脱気孔とした。粉末を充填したモールドを密閉容器に入れて、この密閉容器に入れたまま粉末とモールドにパルス磁界を印加した。パルス磁界は1.8T〜9Tの範囲で変化させ、交流減衰パルス、直流パルスを順次印加して粉末の磁界配向を行った。粉末を磁界配向した後、密閉容器を焼結炉入口に結合させ、空気に全く触れることなく、密閉容器内のモールドを焼結炉内に移行して、焼結炉入口を閉じた。焼結は10-4Pa以上の高真空中で行った。焼結温度は950℃〜1050℃の範囲で変化させ、焼結後の焼結体の密度(焼結密度)が7.5g/cm3を超える最低温度を最適温度とした。焼結時間は2hとした。焼結後、焼結体を800℃から室温まで急冷し、その後500〜600℃で1h加熱して急冷した。熱処理後、全試料を直径7mm、長さ7mmの円柱に加工し、外観検査、密度測定、最大磁場10Tのパルス磁化測定による磁化曲線の測定を行った。この実験の主要な結果を表4に示す。
表4において、配向磁界が9.0Pや1.8Pとなっているのは、それぞれ9.0Tおよび1.8Tのピーク値をもつパルス磁界を意味し、いずれの場合もそれぞれのピーク値をもつ交流減衰パルス1回と続いて同じピーク値をもつ直流パルスを同方向に2回印加した。2.5Dは2.5Tの直流磁界を印加したことを示す。このとき、まず直流磁界をモールドの1方向に印加して、次にモールドを固定したまま磁界印加方向を逆方向に変化させて同じ強さの直流磁界を印加した。
本実験において、本発明の方法により、従来の金型プレス法やRIP法では取扱いが困難な、粒径がきわめて小さい粉末が安全に使用でき、従来法では達成困難であった高保磁力をもつNdFeB焼結磁石が工業的に製作可能であることを確認した。
ただし、このような高特性を得るためには、モールドへの粉末の充填密度、配向磁界、焼結温度等を適切に設定することが望ましい。試料1〜13においては高い残留磁束密度Br、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ及び配向度Jr/Jsが得られている。それに対して試料14及び15は焼結温度を他の試料よりも高くしたものであるが、(BH)max及び保磁力HcJが他の試料よりもやや低下している。また、試料16は配向磁界が低く、Br、(BH)maxおよびJr/Jsが他の試料よりもやや低下している。試料17は充填密度を他の試料よりも低くしたものであるが、焼結体中に空洞ができ、他の試料と比較可能な磁気特性の測定ができなかった。
比較例は従来の金型プレス法により、従来の標準的な大きさの粒径をもつ粉末を使用して作製したNdFeB焼結磁石の例を示す。比較例では粉末粒径をあまり小さくできないので、得られる保磁力が本発明の磁石の例より小さいことが分かる。
本発明の磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法の実施に用いる単個取りのモールドの例を示す斜視図。 本発明の磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法の実施に用いる多数個取りのモールドの例を示す斜視図。 本発明の磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法の実施に用いる多数個取りのモールドの例を示す斜視図。 本実施例のモールドに用いる蓋の例を示す斜視図。 本発明の磁気異方性希土類焼結磁石の製造装置の一例を示す概略構成図。 本発明の磁気異方性希土類焼結磁石の製造装置の一例を示す概略構成図。 本実施例において作製した円板状NdFeB焼結磁石及びその作製に用いたモールドの写真。 本実施例において作製した筒形リング状NdFeB焼結磁石(磁界配向方向は軸に平行な方向)及びその作製に用いたモールドの写真。
符号の説明
40…隔壁
41…秤量・充填部
42…高密度化部
43…磁界配向部
44…焼結炉
45…コンベア
46…モールド
47…ホッパ
48…ガイド
49…蓋
50…プレスシリンダー
51…押棒
52…タッピング装置
53…ホルダー
54…コイル
55…外側隔壁

Claims (1)

  1. a) 製品の形状に対応した空洞を持つ容器(以下これをモールドという)に合金粉末を高密度に充填する工程と、
    b) 前記合金粉末に高磁界を印加して、合金粉末を配向させる工程と、
    c) 前記合金粉末をモールドに入れたまま、該合金粉末から放出される気体成分をモールド外に排出可能な状態で加熱して焼結する工程と、
    d) 前記合金粉末の焼結体を前記モールドから取り出す工程と、
    を有することを特徴とする磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法。
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