JP2008263242A - 磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】秤量・充填部41及び高密度化部42において、磁気異方性希土類焼結磁石の原料となる微粉末を所定の密度になるようにモールドに充填し、磁界配向部43においてパルス磁界により微粉末を配向させた後、微粉末をプレスすることなく焼結炉44において焼結する。この方法では量産装置の動作が単純で、囲いを小さくすることができるため、従来の大がかりなプレス装置を用いる方法で問題となっていた粉末の酸化や燃焼の危険性を排除することが可能となる。また平板状、弓形板状磁石等希土類焼結磁石の最重要形状の製品を多数個取りモールドを使用して、能率よく生産できる。
【選択図】図5
Description
RFeB焼結磁石は、組成配合、溶解、鋳造、粉砕、磁界中圧縮成形、焼結、熱処理の工程を経て製造される。
RFeB磁石が見出された後、その保磁力などの特性改善のため、添加元素(特許第1606420号等)、熱処理(特許第1818977号等)、結晶粒径コントロール(特許第1662257号等)などの効果が明らかにされてきたが、保磁力の向上に最も効果的なのは、重希土類元素(Dy、Tb)の添加である(特許第1802487号)。重希土類元素を多量に用いれば保磁力は確実に増加するが、飽和磁化が低下して最大エネルギー積が低下する。また、Dy、Tbは資源に限りがあり、高価であるため、将来に需要増大が見込まれるハイブリットカーや産業用・家庭用モーターをまかなうことは不可能である。
焼結磁石には緻密で均一な微細組織が要求される。当初は合金溶湯を鋳造し、微粉砕する方法が一般的であった(例えば特許第1431617号)。合金溶湯をストリップキャスト法で急冷すればα鉄の出現が抑えられて、非磁性の希土類元素の量を少なくすることで高いエネルギー積が得られる(特許第2665590号、特開2002-208509等)。
RFeB合金は水素を吸蔵させると合金内にマイクロクラックが生じ、粉砕が容易になる(特許第1675022号)。微粉砕には、シャープな粒度分布の粉末が得られることから、窒素などの不活性ガスを利用するジェットミル粉砕が主流である(特許第1883860号等)。
磁界中で粉末を圧縮成形して磁気異方性焼結磁石を得る方法は、フェライト磁石の発明に端を発し(特公昭29-885号、米国特許第2,762,778号)、その後RCo磁石やRFeB磁石の製造に応用された(米国特許第3,684,593号等、特許第1431617号)。微粉末はRFeB正方晶結晶構造のc軸を一方向に揃えて成形される。金型プレス法が一般的であるが、さらに高い配向度と高いエネルギー積を得る方法としてCIP法(特許第3383448号)やRIP法(特許第2030923号等)がある。
ウェント等によって1951年にフェライト磁石が発明(特公昭35-8281号、米国特許第2,762,777号)された同じ年に、ゴルター等によって磁気異方性焼結フェライト磁石が発明された(特公昭29-885号、米国特許2,762,778号)。このとき初めて、磁気異方性永久磁石の製法に磁界中圧縮成形・焼結の手法が用いられた。その後、金型プレス法における欠点を克服するために数多くの改良がなされてきた。
金型成型時の微粉末の配向を高めるため、また、粉末と粉末、粉末と金型の摩擦を軽減するために、潤滑剤を添加する方法がある(特許第2545603号、第3459477号等)。
微粉末の酸化を防ぎながら高い配向性を達成するために鉱物油、合成油又は植物油と微粉末の混練物を金型内に高圧注入し、磁界中で湿式圧縮成形する方法がある(特許第2731337号等)。この場合、スラリーを加圧注入、加圧充填すると高い磁気特性が得られるという報告がある(特許第2859517号)。
金型成型法では一方向からの加圧しか採用できず、それが配向を乱す原因である。あらゆる方向から等方的に圧力を加えることができれば、配向の乱れが小さくなる。圧力を等方的に加える方法には、微粉末をゴム容器に入れて外部から磁界をかけ、冷間静水圧プレス(Cold Isostatic Pressing、CIP)を施す方法(特許第3383448号)等がある。
CIPと同等の効果を得る方法として、本発明者らは先に金型プレス機内にゴム型を設置して等方的圧力を加えるRIP(Rubber Isostatic Pressing)法を提案した(特許第2030923号)。この方法は自動化が容易なため、CIPよりもはるかに量産に向いている。
凝集性のある微粉末を金型プレス等のダイ・キャピティに充填する方法として、空気タッピング(エア・タッピング、Air Tapping、AT)法が提案された(特開平9-78103号、特開平9-169301号、特開平11-49101号)。空気タッピングとは、高速の気流を粉末に断続的に作用させて、ダイ・キャビティに粉末を高密度にかつ均一に充填する技術である。更に、空気タッピング法を用いて固化し、ニアネットシェイプの成形体を得る方法が提案されている(特開2000-96104号)。
粉末の方向を揃えるために外部から磁界を印加する方法が採用される。RFeB磁石の場合、正方晶構造のc軸方向が容易磁化軸に相当し、磁界を印加すると粉末は一方向に配向する。通常の金型プレスの場合は電磁石による静磁界が印加され、その大きさは最大15kOe程度である。しかし、空心コイルを用いたパルス磁界では15〜55kOeの強い磁界をかけることができ、実際に高い磁界を印加した方が磁気特性は向上する(特許第3307418号)。
粉末が酸化するのを避けるために粉砕工程、成形工程を不活性雰囲気下で行うことが提案されている(特開平6-108104)。
粉末冶金(焼結)法では、緻密で均一な微細組織が得られる。希土類コバルト磁石やRFeB磁石において、それぞれの材質の特性を生かし、高性能の永久磁石を得るには粉末冶金法にまさる方法はない。
磁気異方性焼結磁石の製造方法に磁界中圧縮成形・焼結の手法が用いられたのは、1951年にウェント等によってフェライト磁石が発明(特公昭35-8281号、米国特許2,762,777号)された直後に、ゴルター等によって磁気異方性焼結フェライト磁石が出現したのが最初である(特公昭29-885号、米国特許2,762,778号)。圧縮成形する目的は、圧縮によって液体成分を搾り出すため、及び、配向した粒子を固定するためであるとされている。また、圧縮成形は所望の形状を得るために好ましいとされている。圧縮成形しないでそのまま磁界中で容器と共に加熱した例があるが、圧縮成形した例に比べて、密度が低く、磁気特性も低い。
その後磁界中圧縮成形・焼結の手法はRCo焼結磁石(米国特許第3,684,593等)及びRFeB焼結磁石(特許第1431617号)に引き継がれた。磁界を印加することは粒子を配向するために必須の工程であるが、圧縮の効果については特に深い考察は行われて来なかった。
金型プレスが用いられる理由は、ほとんど最終形状・寸法に近いもの(ネットシェイプ)が得られ、歩留まりがよく、自動化が可能だからである。特にネットシェイプと歩留まりの観点からは金型プレス法は量産に適した方法として広く採用されてきた。
CIPと同等の効果を得る方法として、本願発明者らは先にRIP法を提案した(特許第2030923号)。RIPでは、微粉末をゴム型に入れて、パルス磁界をかけ、ゴム型全体を金型プレス機で加圧する。CIP方式と同じく等方的に圧力が加えられ、かつパルス磁界を用いることができるので、金型プレス法よりも磁気特性は高い。この方法は、ゴム型充填、パルス磁界印加、圧縮成形、消磁の工程を連続して行う自動化が可能なため、量産に向いている。
長い歴史の中で、金型プレス法は効率的な作業のために自動化が図られてきた。その工程はおおよそ次の通りである。
・微粉末がフィーダーを通して金型内に供給される。
・上パンチを下ろしてキャビティを封じる。
・磁界が印加される。
・磁界を印加しながら上パンチと下パンチで加圧する。
・逆磁界または交番磁界をかけて圧粉体を消磁する。
・上パンチが上がる。
・下パンチが上がり(またはダイスが下がり)、圧粉体が金型上に押し出される。
・ロボット・アームが圧粉体をコンベアに運ぶ。
・圧粉体が一箇所に集められる。
・焼結台版上に並べられる。
この際、衝突や溶着を避けるために、圧粉体は間隔をおいて配置される。作業状況により圧粉体は数日間保管されることがある。粉末冶金法で用いられる金型プレスは精密機械であり、単個(1個)取りのプレスであればパンチ・ダイスの位置合わせは比較的容易であるが、多数個取りの場合は複雑である。磁石は円板、矩形、穴あき円板、弓形など、さまざまな形状・寸法のものが要求され、その度に煩雑な金型取替え作業が必要となる。
圧縮成形の役割について、例えば"Rare-earth Iron Permanent Magnet", edited by J.M.D. Coey, CLARENDON PRESS, OXFORD, 1996, pp. 340-341には、"The pressing load is sufficient to make compacts having enough strength to be handled but without significant misorientation of the crystallites."(加圧力は粒子の配列に重要な乱れを起こすことなくハンドリングのための充分な強度をもった圧粉体を作るのに充分な程度である)と記載されている。また、J. Ormerod, "Powder Metallurgy of rate earth permanent magnets", Powder Metallurgy 1989, Vol. 32, No. 4, p. 247では 、"The pressing pressure should be sufficient to give the powder compact enough mechanical strength to withstand handling, but not high enough to cause particle misorientation."(加圧力は圧粉体にハンドリングに耐える充分な機械的強度を与える程度であるが、粒子の配向の乱れを起こすほど高くない程度でなければならない)との記載がある。いずれの文献においても、大きな圧力で加圧すれば配向が乱れることを認識しながら、ハンドリングのために圧粉体に充分な強度を持たせるためには強く圧縮することが必要であると認識されている。
希土類磁石は、化学的に活性で酸化し易い希土類元素を約30重量%含む。希土類焼結磁石製造工程には、化学的に活性な希土類元素を大量に含み、平均粒度が3μmくらいの微粉末を取り扱う工程が存在する。この微粉末のひとつひとつを磁界中で一定方向に配向する必要があるため、一般粉末冶金法で用いられるような、予め造粒して粉末の流動性を改善する手段を用いることができない。微粉末は嵩が大きく、また粉末ひとつひとつが磁石の性質を有しているため、金型キャビティ内に粉末を供給してもブリッジを形成し、均等充填がむずかしい。
金型成形時の微粉末の配向度を高めるため、潤滑剤を添加する方法が提案されている(特許第3459477号、特開平8-167515等)。潤滑剤は、微粉末の摩擦を小さくする効果があり、磁界をかけながら圧縮するときの配向度を向上させる。しかし、充分な潤滑効果を得る目的で多量の潤滑剤を加えると、脱脂のために長時間を必要とする。ある種の液体潤滑剤(例えば特開2000-306753号)は揮発性にすぐれていて、焼結体中にほとんど残存しないとされる。しかし、配向度を向上させる目的で潤滑剤を多量に添加すると、金型プレス後の圧粉体強度が弱くなり、ハンドリングの問題を生じる。金型プレス機では電磁石によって静磁界が印加される。電磁石による静磁界は、鉄心による磁束の飽和があるため、せいぜい10〜15kOe(1〜1.5T)程度に留まる。磁界をかけたまま加圧していくと、粉同士の摩擦力のほうが大きくなって、粉が回転し、配向が乱れる。それを防ぐために、パルス磁界による配向方法が提案されている(特許第3307418号)。パルス磁界では1.5〜5.5Tの磁界をかけることができて、Br(残留磁束密度)が向上する効果が確認されている。しかし、この発明のように金型プレス機内でパルス磁界を印加すると、磁界をかける度に渦電流損やヒステリシス損が発生して金型が発熱する。また、金属製の金型に瞬間的な衝撃が加わり、精密機械であるプレス機の寿命を短くするため、実用的でない。
金型プレス法の作業性を向上させるために有機質のバインダーや潤滑剤を添加したり、湿式成形する方法が提案されているが、いずれも強い圧力で圧縮することが前提となっており、これらの成分は圧粉体内部に強く閉じ込められて、焼結前段階の脱脂工程において容易に除去されない。低い温度で長時間加熱することで脱脂が完全に行われるが、生産性は著しく低下する。有機質成分が残存するまま高温で過熱すると、炭素などの不純物が構成元素と反応して磁気特性等が低下し、耐食性が悪くなる。
微粉末の酸化を防ぎながら高い配向度を達成するために鉱物油・合成油と微粉末の混合物を磁界中で湿式圧縮成形する方法が提案されている(特許第2859517号等)。ジェットミルで微粉砕した粉末を鉱物油あるいは合成油中に集積し、混合した後、金型キャビティ内に加圧注入・加圧充填する。湿式成形はSrフェライト磁石の製造技術の応用であるが、フェライト磁石では水を用いるのに対して希土類磁石では水を用いることができず、溶媒や油を用いる。しかし油は炭素など不純物となる成分を多く含み、焼結段階で抜けにくい。容易に蒸発して残留しない油が研究されているが、固く圧縮した圧粉体内に閉じ込められた炭素を取り除くのは困難である。油が蒸発して、希土類と反応しない温度で脱脂する作業が必要であるが、そのためには比較的低温で長時間保持しなければならず、量産効率が著しく悪くなる。脱脂が十分に行われないと、高い温度で希土類元素と容易に反応して磁気特性を劣化させるとともに、耐食性を悪くする。
金型プレス法では、微粉末は大気中に哂される。微粉末を作製後、磁界中プレスから焼結炉への搬入までを不活性ガス雰囲気中で行うとする提案がある(特開平6-108104)。しかし、実際には金型周辺に飛び散った微粉を掃除したり、頻繁に金型を取替えることが不可欠である。飛び散った微粉をそのままにしておくと、開放するときに非常に危険である。磁石微粉は嵩が大きくブリッジを作り易いために定量供給がうまくいかず、定期的に圧粉体重量を測定してフィードバックする必要がある。一般的な結晶のように多量のバインダーと高圧を用いて成形して堅牢な圧粉体を作製するようなことは、希土類磁石ではできない。したがって、圧粉体は脆くこわれやすい。グローブボックスのように人間の手をプレス機に差し入れて作業することは危険であり、非能率である。すなわち、金型プレス機を含む工程全体を不活性雰囲気中に置くという構想は量産的に成功させることがきわめて難しい。
ダイス・パンチのクリアランスを如何に小さくしようとも、3μmの微粉末を閉じ込めるのは不可能であり、微粉末を圧縮するたびにはじき出された微粉末が金型周辺を飛び交うことになる。それらは、発火・爆発の危険性をもつ。自動集塵機で集めることは可能だが、定期的に掃除が必要である。世界で最も進んだ技術をもつ磁石メーカにおいて、量産に使われるRFeB焼結磁石の結晶粒径は、レーザー式粉末粒度分布測定装置により測定される粒径の中央値であるD50が4.5〜6μmであるとされる。D50の測定値は顕微鏡による実測値の大きさに近いことが知られている。R2Fe14B金属間化合物の単磁区粒子径はさらに小さい(0.2〜0.5μm)。従って、焼結磁石の場合においても、より小さな結晶粒子径の方が高い保磁力を期待できる。ところが実際には、特開昭59-163802号第3図から明らかなように、粒子径が小さくなると急激に保磁力が低下する。これは、微粉を取り扱う従来工程において酸化が避けられないことを示している。化学的に活性な希土類元素を含むRFeB合金微粉は、非常に酸化し易く、大気中に放置すると発火することがある。粉末粒径が小さいほど発火の危険性は大きくなる。発火しないまでも容易に酸化し、焼結磁石において非磁性の酸化物として存在し、磁気特性低下の原因となる。しかし従来法では、成形プロセスと、成形体を焼結炉に搬入するプロセスで微粉末が大気に晒されることは避けられない。上述のように世界のトップメーカの微粉砕粉末の粒径はD50で4.5〜6μm程度であり、これよりも細かいと、たとえ成形体であっても容易に酸化が起こる。微粉末に予め油や液体潤滑剤を添加し、酸化防止の相乗効果を持たせようとする試みがあるが、潤滑剤などの多量の添加は圧粉体強度を弱くし、また炭素などを残留させて磁気特性を低下させる。すなわち、D50=4μm以下の微粉を、従来の金型プレス法では実際上取り扱うことはできない。
(1) 囲わなければならない空間が大きい。
(2) 系に空気を入れないで大型の金型を交換することは困難である。
(3) 粉末充填、圧縮、圧粉体取出し、圧粉体清掃(余分に付着している粉末除去)、圧粉体を台板上に整列、圧粉体を載せた台板の箱詰め、圧粉体を入れた箱を焼結炉に装入、という一連の工程を、生産性向上のために短いサイクルタイムで実施しなくてはならない。実際の工程では、これらの工程中に様々なトラブルが頻繁に発生する。トラブルを解決するためにはどうしても人手が必要で、系内に空気を導入しなくては解決しない事態がしばしば発生する。
ゴム型に粉末を高密度充填、磁界配向、圧縮、圧粉体取出し、ゴム型清掃、圧粉体を台板に整列、圧粉体を載せた台板の箱詰め、圧粉体を入れた箱を焼結炉に装入、という一連の工程においても、サイクルタイムを短くすることが生産性向上のため不可欠であり、それによりトラブルが頻繁に発生する。金型プレスによる生産ラインと同様、系内に空気を導入して問題を解決しなくてはならない事態がしばしば発生する。
本発明の目的は、磁気異方性希土類系焼結磁石の製造法および製造装置において、現状の金型プレス法およびRIP法を含む焼結磁石製造法および製造装置の根本的な問題を排除し、現状より高い最大エネルギー積と高い保磁力をもつRFeB系焼結磁石を提供すること、平板状磁石や弓形板状磁石の生産性を向上させること、高い配向度を持つリング磁石を作製する手段、並びに円形や異形断面をもつ長尺品焼結体及び1mm以下の小寸法をもつ焼結体を作製する手段を提供することである。
a) 製品の形状に対応した空洞を持つ容器(以下これをモールドという)に合金粉末を高密度に充填する工程と、
b) 前記合金粉末に高磁界を印加して、合金粉末を配向させる工程と、
c) 前記合金粉末をモールドに入れたまま、該合金粉末から放出される気体成分をモールド外に排出可能な状態で加熱して焼結する工程と、
d) 前記合金粉末の焼結体を前記モールドから取り出す工程と、
を有することを特徴とする。
ここで、空洞は所望の製品の形状と寸法および焼結時の収縮を考慮して設計することが望ましい。高密度、高配向度焼結体とは、密度が理論密度の97%以上であり、配向度が、最大印加磁界10Tのパルス磁化測定法で測定したとき、残留磁化Jrの飽和磁化Jsによる割合Jr/Jsが93%以上であることである。
a) モールドに合金粉末を高密度に充填する工程と、
b) 前記合金粉末に高磁界を印加して、合金粉末を配向させる工程と、
c) 前記合金粉末をモールドに入れたまま、該合金粉末から放出される気体成分をモールド外に排出可能な状態で加熱して、この合金粉末の仮焼結体を作製する工程と、
d) 前記仮焼結体を前記モールドから取出すか、前記モールドの一部を除去した後、前記仮焼結体を、その仮焼結温度より高温に加熱して本焼結する工程と、
e) 前記仮焼結体を本焼結した焼結体を、前記モールドの残部から取り出す工程と、
を有することを特徴とする。
通常、合金粉末を空洞内に落としこむだけの粉末充填法によると、粉末の充填密度は理論密度の20%程度である。本発明の方法では35%以上に高密度充填することが好ましい。35%以下では、焼結後の焼結体密度が低く、大きい巣が焼結体中に形成され、実用的な焼結磁石にならない。充填密度があまり高すぎて、60%以上になると合金粉末の磁界配向が困難になる。
第3の態様より好ましい範囲を与える。
焼結磁石の配向度Jr/Jsが93%以上となるために、配向磁界は少なくとも2T以上であることが好ましい。
これにより、従来の金型プレス法またはRIP法を含む磁石製造法では粉末が活性すぎて量産化が困難であった高特性RFeB異方性焼結磁石の生産が可能になる。
これによりRFeB焼結磁石の高特性化が図れるとともに、モールドの寿命を大幅に延ばすことが可能になる。
これは本発明を工業的に実施するとき、生産性向上のためにぜひ必要なことである。
これは円形断面あるいは異形断面をもつ長尺品をネットシェイプで作製する方法である。
第24及び第25の態様は、従来法では不可能であった直角磁界中プレス品なみの高特性をもつ、筒形リング状磁石の生産を可能にするものである。
第26及び第27の態様は、ゆがみのできるだけ少ない柱状あるいは筒状の焼結体を得るための手段を与える。
第30〜第32の態様は平板状あるいは弓形板状磁石を製造するとき、巣のない、高密度の焼結体を得るための手段を与える。
a) 合金を微粉砕した合金粉末をモールドに高密度充填する合金粉末充填手段と、
b) 合金粉末を磁界中配向する磁界中配向手段と、
c) 当該モールドのまま合金粉末を焼結する焼結手段と、
d) モールドを合金粉末供給手段、磁界中配向手段、焼結手段の順に搬送する搬送手段と、
e) 合金粉末充填手段、磁界中配向手段、焼結手段及び搬送手段を収容する容器と、
f) 前記容器の内部を不活性ガス雰囲気又は真空にする雰囲気調整手段と、
を備えることを特徴とする。
a) 合金を微粉砕した合金粉末をモールドに高密度充填する合金粉末充填手段と、
b) 合金粉末を磁界中配向する磁界中配向手段と、
c) 当該モールドのまま合金粉末を保形するまで仮焼結する仮焼結手段と、
d) 仮焼結した合金粉末を本焼結する本焼結手段と、
e) モールドを合金粉末供給手段、磁界中配向手段、仮焼結手段、本焼結手段の順に搬送する搬送手段と、
f) 合金粉末充填手段、磁界中配向手段、予備焼結手段、本焼結手段及び搬送手段を収容する容器と、
g) 前記容器の内部を不活性ガス雰囲気又は真空にする雰囲気調整手段と、
を備えることを特徴とする。
これは、本発明を実施する装置の安全性を高めるための手段を与える。
粉末には水素解砕時に合金中に吸収された水素が多量に吸蔵されていることがあり、また、窒素、水分などの吸着ガス成分が必ず存在する。さらに、微粉末に混合された潤滑剤やバインダーの一部または全部は高温で気化する。これらの気体成分は焼結時あるいは仮焼結時にモールドの外に排出されるようにする必要がある。これらの気体成分がモールド内に密封されたままでは、焼結時に焼結体の密度が上がらないとか、焼結体がこれらの気体成分と反応して汚染され、磁気特性に悪影響を及ぼす。このような気体成分の排出用細隙や細孔をモールドにあらかじめ設けておくか、モールドに合金粉末を充填して、蓋を閉め、磁界配向してから、モールド外壁の一部や中子(第24又は第25の態様)を除去して開口部を形成してもよい。なお、上述の細隙や細孔は空洞とその蓋の間の合わせめのように、自然にできる隙間でもよい。
RFeB磁石は、原子百分比で、R(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも一種):12〜20%、B:4〜20%及び残部実質的にFeからなる。
磁石の温度特性や耐食性の改善、微粉末の安定性改善のためにFeの50%未満をCoに置換してもよい。
保磁力の改善、焼結性やその他製造性の改善のためにTi、Ni、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Al、Sn、Zr、Hf、Gaなどを添加してもよい。これらの添加元素を複合添加してもよいが、いずれの場合にも総量で6原子%以下であることが好ましい。特に、Cu、Al、V、Moが好ましい。
RFeB磁石の場合、焼結は900〜1200℃の間で行われる。
RCo磁石のうち、1-5型磁石の組成範囲は、RTx(RはSm又はSmとLa,Ce,Pr,Nd,Y,Gdの1種又は2種以上の組み合わせ、TはCo又はCoとMn,Fe,Cu,Niのうち1種又は2種以上の組み合わせ、3.6<x<7.5)で示され、その焼結温度は1050〜1200℃である。
2-17型RCo磁石の組成範囲は、R(但し、RはSm又はSmを50重量%以上含む2種以上の希土類元素):20〜30重量%、Fe:10〜45重量%、Cu:1〜10重量%、Zr、Nb、Hf、Vの1種以上:0.5〜5重量%、残部Co及び不可避的不純物であり、焼結温度は1050〜1250℃である。
1-5型の場合も2-17型の場合も、焼結時に900℃以下で熱処理を施すことによって保磁力を高めることができる。
本発明によりD50の値が4μm以下のRFeB合金粉末を用いて焼結磁石を作ると、高配向でエネルギー積が高く、かつ保磁力の高いネオジム焼結磁石が得られる。
本発明によれば、僅少で高価なDyやTbをまったく用いないか、用いたとしても僅かな量で、ハイブリッドカーや産業用モータに使用される、高い保磁力を持ったRFeB磁石を安定に量産できる。
従来法(金型プレス法、CIP、RIP)では、後工程に繋がるハンドリングのために堅牢な圧粉体を必要とした。そのため、充分な磁気特性を得るため以上の強い加圧力を必要とした。本発明では圧粉体のハンドリング工程が存在しないため、従来法のような圧粉体強度を考慮する必要がない。
特開2000-96104号公報には、予めバインダー等を添加した粉末をエアー・タッピング法によって型内に充填し、加熱などの方法でバインダーを固化し粉体を結合させて成形体を得て、その後焼結する方法が記載されている。しかし、この発明は磁石に関する方法ではなく、磁界による配向がなく、モールドのまま焼結(または仮焼結)するという発想がない。本発明においては粉末成形体を得るためのバインダーを用いることはなく、バインダーで固めた粉末成形体をハンドリングする必要もない。
特許第3307418号には、RFeB磁石の製造において、1.5〜5Tの磁界を与えることにより、磁気特性が向上することが確認されている。しかし、従来の金型プレスにパルス磁界を印加すると、金型中に渦電流損失やヒステリシス損失が発生して連続使用できない。また、パルス磁界による衝撃力が金型に加わるため、金型が破損することがある。
本発明における粉末配向磁界は、超伝導式コイルなどによって強い磁界を得ることができるのであれば、それでもよい。
一般に、固体潤滑剤は蒸気圧が低く沸点は高いが、液体潤滑剤は蒸気圧が高く沸点は低い。微粉末全体に行き渡り易いこと、脱脂性が容易であることを考慮すると、液体潤滑剤がよい。
液体潤滑剤としてカプロン酸メチルやカプリル酸メチルを飽和脂肪酸と共に用いることが知られている(特開2000-109903号)。しかし金型プレス法にこれらの潤滑剤を用いる場合は磁石粉末に対して0.05〜0.5重量%というごく少量しか用いることができない。これらは揮発性がよく、焼結体に残存しないという特長を持つが、金型プレスで強く圧縮成形した圧粉体を焼結する際には、圧粉体内部に閉じ込められた潤滑剤成分までも除去することが困難であり、高温で潤滑剤成分と磁石成分が反応して磁気特性を低下させるおそれがあるからである。
本発明においてモールド内の粉末は圧縮されておらず、潤滑剤成分がガス化して容易に除去される。したがって本発明の液体潤滑剤の量は多い方が好ましい。しかし多すぎる場合には高密度充填されないおそれがある。好ましい液体潤滑剤の添加量は0.1〜1%である。
本発明は、RFeB磁石やRCo磁石など希土類磁石の磁気異方性焼結磁石の製造方法において、従来法の問題点や矛盾点を解決する方法として見出された。すなわち、本発明によれば金型プレス等の大掛かりな成形装置を必要とせず、ハンドリングのための堅牢な圧粉体を作る必要もないので配向の乱れがなく、ネットシェイプ形状の磁気異方性焼結磁石が得られる。空心コイルによって強いパルス磁界を与えることができ、また希土類元素を含む化学的に活性な微粉末を大気に触れることなく処理できるので、酸素量が少なく粒度の小さな粉末を取り扱うことができ、TbやDyを用いなくとも高い保磁力の希土類磁石が得られる。また、薄板状や弓形板状など希土類磁石製品として最も多く生産されている製品形状の高性能磁石を極めて能率よく生産することができる。
モールドは、焼結温度(〜1100℃)の高温に耐える材質が望ましい。予めモールドを昇温していく過程において粒子の軽度の結合が生じ、被焼結物は自己保形可能な状態となる。この仮焼結状態で、モールドの一部または全部を取り除き、別のモールドあるいは台板に仮焼結体を移し替えることができる。仮焼結の温度は500℃から焼結温度よりも30℃低い温度までの間が望ましいため、仮焼結時に用いるモールドはこの温度に耐える材質であればよい。
モールドの材質には、鉄、鉄合金、ステンレス、パーマロイ、耐熱鋼、耐熱合金、超合金や、モリブデン、タングステンあるいはそれらの合金、さらにフェライトやアルミナなどのセラミックスなどを用いることができる。
焼結時の焼結体とモールド内壁の融着を避けるために、予めモールドの内壁にBN等の離形剤を塗付することも有効である。モールドの内壁にBNを塗布したり、MoやWのような高融点金属等を溶射法により吹き付けてこれらの膜を内壁に形成することにより、焼結時に焼結体がモールド内壁に付着したり、その付着のために焼結体が変形したり割れたりするのを防止することは、良質の焼結磁石を生産するのに有効である。TiN、TiC、TiB、Al2O3、ZrO2等の薄膜をステンレスなどのモールド表面に、スパッタリングやCVD、あるいはイオンプレーティングによって形成すると耐久性のある融着防止コーティングができる。
本発明において、充填方法は重要である。造粒できない永久磁石合金微粉末は磁石の性質を有するために凝集し易く、ブリッジを形成して、モールド内に定量充填するのが困難である。本発明で用いられる強制充填には、例えば機械的タッピング法、プッシャー法、本件発明者により開発されたエアー・タッピング法(特開2000-96104号)を用いることができる。
充填密度は合金の真密度の35%から60%とすることが好ましい。35%以下であると、焼結体に大きい巣が形成されたり、焼結体全体が低密度で多孔質になって、実用的な永久磁石が得られない。実用的に使用可能な高品質の永久磁石を得るためには、充填密度は35%以上が必要である。充填密度が60%を超えると、磁界配向により充分な配向が得られない。充分に配向して、巣や割れがなく、高密度の焼結体を得るためのより好ましい充填密度の範囲は40〜55%である。
図2(3)に、薄い仕切りで区切られた平板磁石用のモールドを示す。このモールドを用いることにより、多数個取りが可能である。
図2(4)に、モーターなどで用いられる弓形板状磁石用のモールドを示す。従来の金型プレス法が苦手とする形状についても、本発明では容易に製造することができる。仕切りの部分は図2(3)と同様に着脱可能にしてもよい。
図2(5)に、扇形の断面を有する柱状磁石を製造するためのモールドを示す。作製された扇形断面柱状磁石を所定の厚さずつに切断して得られる磁石はボイスコイルモータなどに用いられる。
図3に、図2(1), (3)のモールドよりも更に多数の平板磁石を1度に作製することができるモールドの例を示す。本発明の製造方法では金型プレス機を用いる必要がないため、平板状の空洞を2列並べて配置することができる。また、このような空洞を3列以上並べることもでき、平板状の空洞の代わりに弓形板状等、他の形状の空洞を2列以上並べて配置することもできる(図示は省略)。本発明では微粉末を配向させる際に従来よりも空芯部の容量が大きいコイルを使用することができるため、このように空洞を2列以上並べても平板磁石毎の磁石特性のばらつきを十分に小さく抑えることができる。
図1〜図3に挙げるようなモールドに微粉末を充填し、蓋をしてから、パルス磁界を印加して粉末を配向する。パルス磁界を粉末に印加すると、粉末を構成する粒子は1つ1つ磁石になり、磁石のN極どうし、S極どうしが反撥しあって、粉末体積が大きく膨張する。蓋をしないか、蓋が不完全であると、パルス磁界配向のとき粉末が飛散してしまう。
蓋はモールドに軽くはめこむ程度に設計される。蓋とモールドの口のはめ合いがきつすぎると、空洞内が密閉状態になる。空洞内が密閉状態であると、焼結時に焼結体の高密度化が粗害されたり、潤滑剤等に含まれる炭素成分に汚染されて、磁気特性の低下が起こる。このため、蓋とモールドの口に小さいすき間ができるようにはめ合いを調節するか、図4(1)、(2)のように脱気用の小孔を形成しておく。
本発明は、R(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種。)および遷移元素を含有する希土類磁石の製造方法に適用される。
希土類磁石の組成は特に限定されず、希土類元素および遷移元素を含むものであればよいが、本発明は特に、RFeB系焼結磁石(Feの一部はCoで置換可能である。)、またはRCo系焼結磁石の製造に適する。
希土類元素Rとしては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb、Lu等を挙げることができ、特に、Ndおよび/またはPrを含むことが好ましい。さらに、Rの一部を重希土類元素のジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)で置換すると、高い保磁力が得られる。しかし、重希土類元素の置換量が多くなりすぎると残留磁束密度が低下するので、重希土類元素の置換量は6重量%以下が好ましい。B含有量が少なすぎると高保磁力が得られず、B含有量が多すぎると高残留磁束密度が得られない。なお、Feの一部をCoで置換することも可能であるが、その場合、置換量が多くなりすぎると保磁力が低下するので、Co量は30重量%以下が好ましい。
さらに、保磁力や焼結性を改善するために、Al、Cu、Nd、Cr、Mn、Mg、Si、C、Sn、W、V、Zr、Ti、Mo、Gaなどの元素を添加してもよいが、これらの添加量の総量が5重量%を超えると残留磁束密度が低下してくるため、好ましくない。
磁石合金中には、これらの元素の他、製造上の不可避的不純物あるいは微量添加物として、例えば炭素や酸素が含有されていてもよい。
このような組成を有する磁石合金は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有する。また、通常、体積比で0.1〜10%程度の非磁性相を含むものである。
磁石粉末の製造方法は特に限定されていないが、通常、母合金インゴットを鋳造し、これを粉砕して製造するか、還元拡散法によって得られた合金粉末を粉砕して製造する。
磁石微粉末の平均粒子径は、RFeB磁石の場合、0.5〜5μmがよい。従来法の工程では、微粉末または圧粉体が大気に晒されるため、4μm以下の微粉末を用いることができなかった。本発明の工程では、微粉末が大気に晒されることがないから、3μm以下あるいは、さらに2μm以下の粉末を用いることができる。高い保磁力を得るためには、焼結体の結晶粒径は、RFeB型磁石の単磁区粒子径の大きさである0.2〜0.3μmにできるだけ近いことが望ましい。それを実現するためには、微粉末粒径も微細な方が望ましい。
微粉末の粒径は、かつてはFisherのサブ・シーブ・サイザー(Sub-sieve-sizer : F.S.S.S.)で測定された数値が用いられていた(例えば特開昭59-163802号)。しかし現在ではレーザー式粒度分布測定装置(例:シンパテック社製、堀場製作所社製)により得られる粒度分布の中央値D50の値で定義するのが一般的である。両方法の測定値には1.5から2倍の違いがあることが知られている。本願では、レーザー式粒度分布装置で測定したD50の値を用いる。
本発明における好ましい結晶粒径の大きさは、RFeB磁石の場合、D50の値として4μm以下である。大きな保磁力を得るためには3μm以下が好ましく、本発明のプロセスが完全なクローズドシステムで行われることから2μm以下がさらに好ましい。さらに、RFeB金属間化合物の単磁区粒子径の大きさの結晶粒径に近づけるために最適な大きさは1μm以下である。
RCo磁石の場合、好ましい粉末粒径の大きさは、1-5型、2-17型のいずれかの場合も1〜5μmである。
モールドにつめられた粉末は所要の磁界を受けて配向する。このとき、磁界は強い方が好ましい。金型プレス法で用いられる鉄心をもつ電磁石方式では、鉄心の飽和磁化の磁界である2.5Tが限度である。金型プレス法において、強いパルス磁界を用いる提案もあるが、ヒステリシス損失・渦電流損失による温度上昇や、精密なプレス機に衝撃的な力が加わり金型の寿命を短くするので実際的でない。本発明においては、連続装置内に配置した空心コイルにより、粉末を充填したモールドにパルス磁界を印加する。なお、本発明では、金型プレス法やCIP、RIP法の場合に必要な圧粉体のハンドリングのための消磁工程は不要である。
焼結前室において、モールドを真空または不活性ガス減圧雰囲気下で昇温する。潤滑剤を用いた場合には、この段階で脱脂する。従来の金型プレスやCIP、RIPを用いて強く圧粉した場合は、圧粉体内部に閉じ込められた潤滑剤成分を容易に脱脂できないが、本発明においては、粉末は圧縮されないので、粉末中の粒子表面に塗布された潤滑剤成分はモールドと蓋のすきまあるいはモールド又はその蓋に設けられた脱気孔を通じて容易に蒸発する。
本実施例の製造装置について、図5及び図6を用いて説明する。
図5に示すように、全体の装置(以下システムという)は隔壁40によって囲まれ、ArガスやN2ガス等の不活性ガスで満たされている。システムは、図5に示すように、粉末秤量・充填部41、タッピングによる高密度化部42、磁界配向部43及び焼結炉44から構成されている。これら各工程の間はコンベア45によって連結されており、モールド46に詰められた粉末がコンベア45によって間歇的に運ばれ、各ステージで所定の処理が行われる。
秤量・充填部41においては、加振器の付いたホッパ47よりモールド46に一定量の粉末が供給される。このとき、粉末充填密度は自然充填密度に近い小さい値なので、所定量の粉末をモールド46に保持するために、モールド46の上部にガイド48が取り付けられている。
次の高密度化部42において、モールド46の上部の粉末上面に蓋49がかぶせられ、図5に示すように、プレスシリンダー50の押棒51により蓋49を押さえながら、モールド46の下部のタッピング装置52を駆動して、粉末の高密度化が行われる。タッピング装置はモールド46内の粉末に下向きの加速度を断続的に与える(タッピング)加振器である。タッピングによりモールド46内の粉末はモールド46の上端(ガイド下端)まで、あるいはそれより少し下方まで押し下げられ、蓋49がモールド46の上面に装着される。その後、タッピング時のホルダー53とガイド48がモールド46から取りはずされ、蓋付きモールドに粉末が高密度に充填された状態で、コンベアによって磁界配向部に搬送される。
磁界配向部43では、粉末が充填されたモールド46が所定の方向に向けられ、所定の位置(コイルの中央部)に置かれる。隔壁40外に設置されているコイル54にパルス大電流が流され、これにより発生するパルス磁界によりモールド46内の粉末が所定の方向に配向される。粉末配向後、粉末が充填されたモールド46は搬送されて、焼結炉に入っていく。
[実験1]
Nd=31.5重量%、B=0.97重量%、Co=0.92重量%、Cu=0.10重量%、Al=0.26重量%、残部Fe、の合金をストリップキャスト法で作製した。この合金を5〜10mmのフレーク状に砕いた後、水素解砕とジェットミルにより、D50=4.9μmの微粉末を得た。粉砕工程において酸素濃度は0.1%以下として、微粉末中に含まれる酸素量を極力低く抑えるようにした。ジェットミル粉砕後、液体潤滑剤であるカプロン酸メチルを粉末に対して0.5重量%添加し、ミキサーで撹拌混合した。
この粉末を内径10mm、外径12mm、長さ30mmのステンレスパイプに、粉末充填密度が3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0g/cm3になるように充填して、パイプの両端にステンレス製の蓋を取り付けた。このステンレスパイプに詰めたNdFeB磁石粉末に、パイプの軸に平行な方向にパルス磁界を印加した。パルス磁界の強さのピーク値は8Tで、交番的に方向を変えながら減衰していく交番減衰磁界(以下ACパルスという)と、ピーク値8Tに達した後、磁界方向を変えないで減衰していくパルス磁界(以下DCパルスという)の2種類のパルス磁界を使用した。本実施例ではAC、DC、DCの順に、いずれもピーク値8Tのパルス磁界をステンレスパイプに充填した磁石粉末に印加した。磁界印加の後、磁石粉末が充填されたステンレスパイプを焼結炉に搬送し、1050℃で1時間焼結した。この実験で、ステンレスパイプへの粉末の充填、パルス磁界配向、焼結炉への装入、途中の全ての搬送は、全て不活性ガスの中で行い、磁石粉末を一切空気にさらさないで粉砕から焼結までの工程を実施した。焼結後、焼結体をステンレスパイプから取り出した。粉末充填密度を3.0g/cm3、3.2g/cm3としたときの焼結体は中に巣のような空洞が多くできていたが、充填密度を3.4g/cm3としたときの焼結体は蓋に接するごく一部を除いて空洞が生成されていなかった。充填密度を3.6g/cm3以上としたときの焼結体の密度は理論密度の98.7%に達し、空洞はきわめて少ないか全く生成されておらず、高密度高品質の焼結体が形成されることを確認した。焼結体を直径7mm、高さ7mmの円柱に加工して、最大磁界10Tのパルス磁界を印加して、磁気測定を行った。パルス磁界印加による磁気測定から10Tにおける磁化の値に対する残留磁化の比を求め、焼結体中の配向度を測定した。その結果、充填密度=3.6g/cm3により作製した焼結体の配向度は97.0%、3.8g/cm3のものは96.0%であった。比較のために従来法としての金型磁界中成形法により作製した焼結体の配向度は95.6%であった。
実験1と同じ合金から水素解砕とジェットミルによって得たD50=4.9μm及びD50=2.9μmの粉末を作製し、焼結体の形状と密度に及ぼすモールドの材質(飽和磁化Js)依存性を調べた。モールドの粉末が充填される空間の大きさは直径25mm、厚さ7mmの扁平な円柱状とし、モールド材質は鉄(Js=2.15T)、パーマロイ(Js=1.4T、1.35T、0.73T、0.65T、0.50T)および非磁性ステンレスのものを作製した。これらモールドの壁の厚さは全て1mmとした。
粉末をこれらのキャビティに充填密度3.8g/cm3になるように詰め、実験1と同じAC→DC→DC(ピーク磁界はいずれも8T)の磁界をモールドごと粉末に印加してこの粉末を配向させ、その後、焼結した。本実験でも実験1と同様、粉末は全工程において空気に触れないようにして焼結体を得た。焼結条件は、D50=4.9μmの粉末に対しては1050℃、D50=2.9μmの粉末に対しては1020℃とした。焼結後、モールドから焼結体を取り出した。その結果、焼結体の形状がモールドの材質によって大きく変わることが分った。Jsが最大である鉄製モールドにより作製した焼結体には中央部に2mm程度の大きい穴があり、この穴の周りから直径0.5mm程度の柱状体がとれてきて、穴がさらに大きくなった。
実験1と同じストリップキャスト合金を水素粉砕した後、ジェットミルにより、粉砕条件を変化させて粒径の異なる微粉末を作製した。作製した微粉末の粒径はD50=2.91μm、4.93μm、9.34μmの3種類である。これらの粉末について実験2と同じ形状をもつパーマロイ製モールド(Js=0.73T)に、充填密度3.8g/cm3まで充填し、焼結した。この場合も、粉砕から焼結までの全工程において、粉末が空気に触れることがないように、高純度のArガス中で作業が行われた。比較のために、従来法の金型プレスによる焼結体作製も行った。従来法の場合についても、粉末や圧粉体が焼結前に空気に触れないように、不活性ガス中で全ての作業を行った。焼結温度は、本実施例においても、従来法の金型プレス法を使用する場合でも、D50=2.91μm、については1020℃、D50=4.93μmについては1050℃、D50=9.34μmについては1100℃とした。これらの温度において異常粒成長が抑制された良好な焼結体が得られた。いずれの焼結体についても焼結後500℃で1時間熱処理された。実験1で述べたパルス磁化測定により、保磁力を測定した結果および焼結体中の酸素量分析結果を表1に示す。比較のために、従来法の金型プレスにより作製した焼結体の保磁力および焼結体中酸素量を表2に示す。
実験1のストリップキャスト合金を水素粉砕し、ジェットミルにより、D50=2.9μmの粉末を作製した。この粉末にカプロン酸メチルを0.5重量%添加して、よく混合した。一方直径23mm、深さ4mmの空洞を持つモールドを鉄、磁性ステンレス(Js=1.4T)、パーマロイ(Js=0.7T)および非磁性ステンレスの4種類の材質で作製した。モールドの肉厚は両端面3mm、側方部2mmとした。モールド内面にはBN粉末と固形ワックスを混ぜたものをこすり付けて焼結中の溶着防止膜を形成した。これらのモールドに、上述したカプロン酸メチルを添加したD50=2.9μmの粉末を、充填密度が3.2g/cm3、3.3g/cm3、3.4g/cm3、3.5g/cm3、および3.6g/cm3になるように充填した。その後粉末を充填したモールドをコイルに入れ、円柱形モールドの軸方向に、ピーク値9TのAC、続いてDC、もう一度DCの磁界を印加して粉末を配向させ、引き続き焼結を行った。焼結は、真空中で1010℃で2時間行い、冷却した。図7に焼結後のモールド内面および焼結体の写真を示す。焼結体寸法は直径19.0〜19.5mm、厚さ2.7〜2.8mm(充填密度が高いものほど大きい。)であった。写真から鉄製モールドを使用して作製した焼結体は全て、まん中に穴があいていて、モールド側中央部に焼結体のかけらが残留していることが分かる。このように、鉄製モールドを使用して比較的薄肉の焼結体を作製するときは、粉末の充填密度が高い場合でも、中央部に大きい穴ができてしまう。磁性ステンレス(SUS440)モールドを使用したときにも、充填密度が低い場合には円板状焼結体の中央部にやはり巣ができる傾向にあることが分る。磁化Jsが比較的小さいパーマロイや非磁性ステンレス(SUS304)のモールドを使用すると、低充填密度(3.2〜3.3g/cm3)でも中央部に穴ができない。なお、この実験で使用したモールドは蓋が軽く閉まる程度(すり合わせ部があまりきついはめあいになっていない)にした。焼結中の粉末から放出されるガス成分は、このゆるいすり合わせ部から抜けていった。
実験4と同じ粉末を使用し、直径10mm、長さ60mmの空洞をもつモールドを使用して、実験4と同様の実験をした。円柱モールドの片方に蓋をはめこみ、形成された空洞に粉末を充填密度3.4g/cm3、3.5 g/cm3、3.6g/cm3、3.7g/cm3、3.8g/cm3まで充填した。本実験では両蓋の材質とモールドの材質を独立に変える実験も行った。粉末をモールドに充填して両蓋を閉めた後、実験4と同じ条件で円柱モールドの軸方向に磁界配向を行った。その後実験4と同じ条件で焼結した。蓋のモールド両端のはめ合いはゆるめとして、焼結中の放出ガスが排出されやすいようにした。焼結条件は実験4と同様である。焼結体の密度、形状、巣の形成の状況を調べた結果、焼結体の密度は全ての試料について、7.5g/cm3以上で、欠陥のない長細い円柱焼結体が作製できた。しかし、両端の蓋の材質が非磁性のSUS304のとき、円柱の中央部が太く、両端部が細い樽形の形状を持つ傾向が認められた。両端部が強磁性体製のときには均一な太さの円柱試料が形成された。
実験4と同じ粉末を使用して、図2(3)のモールドにより平板状および弓形板状磁石の作製実験を行った。ただし、弓形板状磁石用モールドは、しきり板21を湾曲したしきり板に替えて使用した。モールドは粉末充填前にBNと固形ワックスの混合物をこすり付けてコーティングをした。上下の蓋は、厚さ1mmの平らな非磁性ステンレス板を使用し、この板の四隅に設けた穴と、図2(3)には示されていない、モールドの四角のネジ穴にボルトを通して締めつけて上下の蓋とモールド本体を固定した。粉末充填量は3.2g/cm3から3.9g/cm3まで0.1g/cm3ずつの間隔で変え、焼結条件は実験4と同じとした。配向磁界の方向はモールド外わくの長辺の方向に平行な方向とした。実験結果の要点はつぎの通りである。
(1) 充填密度が3.4g/cm3以上でモールドの材質およびしきり板の材質が非磁性のときおよびパーマロイのとき、欠陥のない、高密度の、かつ高い磁気特性をもつNdFeB焼結磁石の平板状および弓形板状磁石が作製できた。
(2) 平板面および弓形板面のしきり板が鉄または磁性ステンレス製の場合には、平板および弓形板の中央部に実験4の写真(図7)に示したものと同様の巣が形成され、良好な製品が作製できなかった。
(3) モールド外わくの材質が鉄,磁性ステンレスまたはパーマロイ、上蓋及び底板の材質が非磁性ステンレス、仕切り板の材質が非磁性ステンレスまたはパーマロイとして、モールドに粉末を充填して、両蓋を閉め、パルス磁界配向した後、上下の非磁性ステンレス製の蓋および底板を取り除いたが、配向されたモールド内の粉末は、けば立ったり、落下したりすることはなく、多少の機械的振動やショックにも安定であることが分った。その後、上下の蓋および底板を取除いたまま焼結を行ったところ、高配向・高焼結密度の良好な焼結体が作製できた。但し、モールド外わくの材質が鉄又は磁性ステンレスのとき、仕切り板で仕切られた複数の空洞のうち両端の空洞、即ち平板面又は弓形板面がこの外わくに接する空洞に形成された焼結体には巣ができていた。これら両端以外の空洞からは、巣が形成されていない良好な焼結体が得られた。
実験4と同じ粉末を使用して、軸方向に配向された筒形リング状磁石の作製実験を行った。使用したモールドには、底蓋中央にも、上蓋と同様の、中子が入る穴があいている。中子を底蓋にはめこみ、底蓋をモールドにはめこんで筒形リング状空洞を形成した。この筒形リング状空洞に合金粉末を3.4〜3.8g/cm3の密度で充填し、上蓋を閉めた。中子と上下の蓋およびモールドと上下の蓋のはめ合いは、はめこんだ後、持ち上げてもずり落ちないが、強く引きぬくと外れる程度に調整しておいた。上下の蓋、中子、モールドの材質を実験4と同様に4種類それぞれ独立に変えて実験した。
その結果、中子を非磁性ステンレス製として、上下の蓋を磁性体(鉄、磁性ステンレス、パーマロイ)としたとき、キャビティーに粉末を充填して、磁界を筒形リング状キャビティーの軸方向に印加した後、中子を引きぬいても、磁化された粉末が上下蓋に吸着されて粉末の落下や崩れが起こらないことを確認した。そして、中子を引き抜いたまま、モールドごと、筒の軸を鉛直にして焼結炉に入れ、1010℃で2時間焼結を行った。このようにして作製した焼結体は変形やゆがみもなく、焼結収縮から予想される通りの筒形リング状であった。また、巣などの欠陥もなく、高密度であることを確認した。磁気特性を測定した結果、この実験で作製された筒形リング状NdFeB焼結体は、従来法の平行磁界中プレス(金型プレス)によって作製されるNdFeB焼結磁石よりもはるかに高いBrおよび(BH)maxを持ち、直角磁界中プレスによって作製された磁石の特性と同じくらいか、条件によってはそれより高い特性をもっていることを確認した。本実験において、使用したモールドと、それによって作製された筒形リング状NdFeB焼結磁石の写真を図8に示す。この時、モールドの空洞の外径は23.0mm、内径は10.0mm、高さは33.2mmであった。そして、この作製された筒形リング状磁石の外径は19.1mm、内径は8.6mm、高さは22.3mmであった。
表3に示すような組成と厚さの異なる合金を5種類作製した。
ただし、このような高特性を得るためには、モールドへの粉末の充填密度、配向磁界、焼結温度等を適切に設定することが望ましい。試料1〜13においては高い残留磁束密度Br、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ及び配向度Jr/Jsが得られている。それに対して試料14及び15は焼結温度を他の試料よりも高くしたものであるが、(BH)max及び保磁力HcJが他の試料よりもやや低下している。また、試料16は配向磁界が低く、Br、(BH)maxおよびJr/Jsが他の試料よりもやや低下している。試料17は充填密度を他の試料よりも低くしたものであるが、焼結体中に空洞ができ、他の試料と比較可能な磁気特性の測定ができなかった。
比較例は従来の金型プレス法により、従来の標準的な大きさの粒径をもつ粉末を使用して作製したNdFeB焼結磁石の例を示す。比較例では粉末粒径をあまり小さくできないので、得られる保磁力が本発明の磁石の例より小さいことが分かる。
41…秤量・充填部
42…高密度化部
43…磁界配向部
44…焼結炉
45…コンベア
46…モールド
47…ホッパ
48…ガイド
49…蓋
50…プレスシリンダー
51…押棒
52…タッピング装置
53…ホルダー
54…コイル
55…外側隔壁
Claims (1)
- a) 製品の形状に対応した空洞を持つ容器(以下これをモールドという)に合金粉末を高密度に充填する工程と、
b) 前記合金粉末に高磁界を印加して、合金粉末を配向させる工程と、
c) 前記合金粉末をモールドに入れたまま、該合金粉末から放出される気体成分をモールド外に排出可能な状態で加熱して焼結する工程と、
d) 前記合金粉末の焼結体を前記モールドから取り出す工程と、
を有することを特徴とする磁気異方性希土類焼結磁石の製造方法。
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