JP2008260994A - 浸炭製品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】真空引きすることなく炉内の酸素濃度を十分に低下させ,ムラのない浸炭層を有する浸炭製品が得られる浸炭製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】ワークWを収納した室内に,まず水素と窒素の混合ガスを導入して雰囲気置換を行う。これにより残留酸素を減少させる。露点が−50℃以下(より好ましくは−55℃以下)まで低下してから,アセチレンと窒素の混合ガスの供給による浸炭を開始する。これにより,雰囲気の残留酸素が非常に少なくなり,ワークWの表面の酸化膜もほとんどない状態で浸炭が行われる。このため,酸化膜により浸炭が妨害されることがない。こうして,真空引きすることなく,ムラのない良好な浸炭層を有する浸炭製品が製造される。
【選択図】図1
【解決手段】ワークWを収納した室内に,まず水素と窒素の混合ガスを導入して雰囲気置換を行う。これにより残留酸素を減少させる。露点が−50℃以下(より好ましくは−55℃以下)まで低下してから,アセチレンと窒素の混合ガスの供給による浸炭を開始する。これにより,雰囲気の残留酸素が非常に少なくなり,ワークWの表面の酸化膜もほとんどない状態で浸炭が行われる。このため,酸化膜により浸炭が妨害されることがない。こうして,真空引きすることなく,ムラのない良好な浸炭層を有する浸炭製品が製造される。
【選択図】図1
Description
本発明は,鋼製の対象品に浸炭性ガスにより浸炭を施す浸炭製品の製造方法に関する。さらに詳細には,常圧のままで浸炭ムラのない均一な浸炭ができるようにした浸炭製品の製造方法に関するものである。
炭化水素を炭素源とする浸炭においては,炭化水素が高温で分解して生じた活性炭素が鋼の表面に吸着し,内部へ侵入する。このような浸炭方法を,一酸化炭素等の状態を経由して浸炭させる方法と対比して直接浸炭法という。直接浸炭法では,炉内雰囲気に酸素が残存していると,浸炭深さのムラ等の不良の原因となる。酸素の存在により,鋼の表面に酸化膜が存在する状況で浸炭が行われることとなるからである。ムラになるのは,酸化膜厚が均一ではないからである。そこで例えば特許文献1の技術では,浸炭に先立ち炉内を真空引きすることとしている。真空引きにより炉内の酸素残存量を低減させてから浸炭処理のためのガスを導入するのである。これにより,上記の浸炭不良を防止しようとしている。
特開2005−120404号公報
しかしながら前記した従来の技術には,次のような問題点があった。すなわち,浸炭に先立ち真空引きをしているので,大掛かりな真空排気装置が必要である。このために設備の大規模化が避けられない。なお,真空引きする代わりに大気圧のまま窒素等の不活性ガスを導入して炉内雰囲気を置換することも考えられる。しかしこれでは酸素を十分に除去できず,結局,浸炭ムラを防止しきれない。
本発明は,前記した従来の浸炭技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,真空引きすることなく炉内の酸素濃度を十分に低下させ,ムラのない浸炭層を有する浸炭製品が得られる浸炭製品の製造方法を提供することにある。
この課題の解決を目的としてなされた本発明では,鋼製の対象品を収納した室内に非浸炭性還元ガスと不活性ガスとの混合ガスを導入することにより,対象品の周囲の雰囲気の露点を−50℃以下,より好ましくは−55℃以下にする露点低下を行う。あるいは混合ガスの導入により,雰囲気の酸素濃度を7.2×10-20体積%以下,さらに好ましくは2.6×10-20体積%以下にする。その後に対象品の周囲を炭化水素を含む雰囲気として浸炭を行う。こうした気相での浸炭方法により浸炭製品を製造するのである。
このため本発明の浸炭製品の製造方法では,室内への混合ガスの導入により,元々存在していた空気が押し出される。また,空気中の酸素が非浸炭性還元ガスとの反応して除去される。これにより,真空引きすることなく,雰囲気の残留酸素濃度が著しく低下する。それとともに対象品の表面の酸化膜があらかた除去される。その状態で浸炭を行うので,ムラのない均一な浸炭層を有する浸炭製品が得られるのである。
本発明によれば,真空引きすることなく炉内の酸素濃度を十分に低下させ,ムラのない浸炭層を有する浸炭製品が得られる浸炭製品の製造方法が提供されている。
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態では,次の手順により,成形済みの鋼製品に浸炭を施して浸炭製品を製造する。1.炉内に対象製品を収納する。
2.炉内に水素と窒素の混合ガスを導入し,この混合ガスにより炉内雰囲気を置換する。この雰囲気置換は,炉内雰囲気の露点が−50℃以下に定めた所定の値以下となるまで行う。
3.製品を所定の浸炭温度(950℃程度)まで加熱する。
4.炉内に炭化水素と窒素の混合ガスを導入し,浸炭を行う。
2.炉内に水素と窒素の混合ガスを導入し,この混合ガスにより炉内雰囲気を置換する。この雰囲気置換は,炉内雰囲気の露点が−50℃以下に定めた所定の値以下となるまで行う。
3.製品を所定の浸炭温度(950℃程度)まで加熱する。
4.炉内に炭化水素と窒素の混合ガスを導入し,浸炭を行う。
本形態の浸炭製品の製造方法は,図1の準備室付きの加熱炉と,図2の準備室なしの加熱炉とのいずれでも実施できる。図1の準備室付きの加熱炉は,準備室(パージ室ともいう)1と,処理室2とを有している。準備室1の前には外扉3が設けられており,準備室1と処理室2との間には中扉4が設けられている。準備室1には,第1ガス導入口5と排気口6と露点計9とが設けられている。処理室2にも,第2ガス導入口7と排気口8とが設けられている。第2ガス導入口7は,中扉4よりもやや内側(図中右側)に入り込んだ位置に配置されている。処理室2は加熱機能を有している。なお,処理室2には当然,処理済みの製品の取り出し口が設けられているが,それは本発明の特徴とは関係ないので図示を省略している。
図2の準備室なしの加熱炉は,処理室12と,扉13とを有している。処理室12には,第1ガス導入口15と第2ガス導入口17と排気口16と露点計19とが設けられている。処理室12は加熱機能を有している。
図1および図2において,第1ガス導入口5,15は,水素と窒素との混合ガスを室内に供給する導入口である。第2ガス導入口7,17は,不飽和炭化水素であるアセチレンと窒素との混合ガスを室内に供給する導入口である。これらのガス導入口には適宜,開閉弁や流量調整弁などが設けられている。またいずれのガス導入口も,窒素ガスのみを導入することもできる。導入されるいずれのガスも,水蒸気を含まない乾燥ガスである。
排気口6,8,16には適宜,開閉弁や逆止弁等が設けられている。排気口6,8,16は,真空排気機能は有していないが,ガス導入口からガスが導入されて室内の圧力が上昇すると,室内のガスの流出を許容する。これにより,室内の圧力が大気圧からあまり変動しないようになっている。
図1の準備室付きの加熱炉における処理室2には通常,ワークWを載置するトレイが多数配置され,自動搬送装置が備えられる。すなわち,準備室付きの加熱炉は多くの場合,連続処理用に用いられる。その場合,処理室2は図1に示したよりももっと長く,第2ガス導入口7はその長手方向に沿って複数設けられる。これに対し図2の準備室なしの加熱炉は,毎回ワークWを入れ替えるバッチ処理用に用いられる。いずれの場合でも,油焼き入れその他の後処理のための設備を付設することができる。
以下,詳細な手順を説明する。この手順説明においては,各扉は特記しない限り閉じているものとする。また,各ガス導入口からのガスの導入も,特記しない限りしないものとする。まずは,図1の準備室付きの加熱炉を用いる場合の手順を説明する。この準備室付きの加熱炉を用いる場合,処理室2の中はあらかじめ,露点が所定値以下の状態に維持されている。
[1.製品挿入]
外扉3を開いてワークWを準備室1の中に挿入し,外扉3を閉じる。
外扉3を開いてワークWを準備室1の中に挿入し,外扉3を閉じる。
[2.炉内雰囲気の置換]
外扉3を閉じたら,第1ガス導入口5から準備室1に水素と窒素の混合ガスを導入する。導入する混合ガスの水素濃度は,アセチレンとの混合により爆発しない程度に低くなければならない。後に中扉4を開いたときに準備室1の室内ガスと処理室2の室内ガスとが接触するからである。この導入により,準備室1内の大気は次第に排気口6を通して排出される。
外扉3を閉じたら,第1ガス導入口5から準備室1に水素と窒素の混合ガスを導入する。導入する混合ガスの水素濃度は,アセチレンとの混合により爆発しない程度に低くなければならない。後に中扉4を開いたときに準備室1の室内ガスと処理室2の室内ガスとが接触するからである。この導入により,準備室1内の大気は次第に排気口6を通して排出される。
これにより,準備室1内の大気中に元々含まれていた酸素や水蒸気は準備室1内からこ排出されていく。このため酸素濃度と湿度が低下していく。湿度の低下により,ワークWの表面や炉の壁面等に吸着していた水分子が遊離してくるが,これも排出されていく。また,ワークWの表面の酸化膜が水素により還元されて水分が生じるが,これも排出されていく。このため結局,酸素濃度と湿度はともに低下していく。湿度の低下は露点の低下を意味する。このため,露点計9により計測される露点を見ることで,準備室1内の残留酸素の減少の程度をモニタできる。また,残留酸素の減少はワークWの表面の酸化膜の減少と対応している。
このため本形態では,露点が,−50℃以下に定めた所定の値以下となるまで水素−窒素混合ガスによる準備室1内の雰囲気の置換を続けることとしている。露点がこのレベルにまで下がれば,残留酸素濃度は0.0062体積%以下である。この状態ではもはやワークWの表面には,浸炭を阻害するような酸化膜はほとんど存在しない。なお,露点を−55℃以下にまで下げれば,残留酸素濃度は0.037体積%以下でありさらに良好である。
[3.加熱]
露点が所定値を下回ったら,第1ガス導入口5からの混合ガスの供給を停止する。そして中扉4を開いて,ワークWを準備室1から処理室2へ移す。そして中扉4を閉じる。さらに,処理室2の室内を加熱して950℃程度まで昇温させる。これによりワークWも950℃程度まで加熱される。なお,準備室1にある程度の予熱機能を持たせてもよい。
露点が所定値を下回ったら,第1ガス導入口5からの混合ガスの供給を停止する。そして中扉4を開いて,ワークWを準備室1から処理室2へ移す。そして中扉4を閉じる。さらに,処理室2の室内を加熱して950℃程度まで昇温させる。これによりワークWも950℃程度まで加熱される。なお,準備室1にある程度の予熱機能を持たせてもよい。
[4.浸炭]
そして,第2ガス導入口7から処理室2内へアセチレンと窒素の混合ガスを導入する。すると,ワークWに浸炭処理が施される。このとき,ワークWの表面からは前述の露点低下により,酸化膜がほとんど除去されている。このため,ワークWの表面への炭素原子の吸着,さらに侵入がほとんど妨害されることがない。その状態を維持(例えば10分程度)することによりワークWに十分な炭素を侵入せしめ,その後,侵入した炭素の拡散のため,そのままの温度で保持する(例えば5分程度)。この保持のときにはアセチレンの供給を断って窒素のみの雰囲気にすればよい。こうして,表面にほぼ均一に浸炭層が形成された浸炭製品が製造される。
そして,第2ガス導入口7から処理室2内へアセチレンと窒素の混合ガスを導入する。すると,ワークWに浸炭処理が施される。このとき,ワークWの表面からは前述の露点低下により,酸化膜がほとんど除去されている。このため,ワークWの表面への炭素原子の吸着,さらに侵入がほとんど妨害されることがない。その状態を維持(例えば10分程度)することによりワークWに十分な炭素を侵入せしめ,その後,侵入した炭素の拡散のため,そのままの温度で保持する(例えば5分程度)。この保持のときにはアセチレンの供給を断って窒素のみの雰囲気にすればよい。こうして,表面にほぼ均一に浸炭層が形成された浸炭製品が製造される。
自動搬送機能を用いて連続処理を行う場合には,処理室2の中をあらかじめ浸炭温度に加熱しておく。そして,中扉4から近い第2ガス導入口7からアセチレンと窒素の混合ガスを流しておく。さらに,中扉4から遠い第2ガス導入口7からは窒素のみを流しておく。こうすると,処理室2内で自動搬送されるワークWは,まずアセチレンと窒素の混合雰囲気内に置かれ,次いで窒素のみの雰囲気内に置かれることとなる。これにより,浸炭に引き続き拡散が行われる。また,1つのワークWを処理室2内に送り込んだら,準備室1では次のワークWのための露点低下処理を開始する。こうして,多数のワークWに連続的に浸炭処理を施すことができる。
次に,図2の準備室なしの加熱炉を用いる場合の手順を説明する。この場合でも基本的な考え方は同じである。
[1.製品挿入]
扉13を開いてワークWを処理室12の中に挿入し,扉13を閉じる。
扉13を開いてワークWを処理室12の中に挿入し,扉13を閉じる。
[2.炉内雰囲気の置換]
扉13を閉じたら,第1ガス導入口15から処理室12に水素と窒素の混合ガスを導入する。これにより,準備室付きの加熱炉の場合の説明で述べたのと同様にして,処理室12内の露点が低下していく。すなわち,残留酸素が減少していく。
扉13を閉じたら,第1ガス導入口15から処理室12に水素と窒素の混合ガスを導入する。これにより,準備室付きの加熱炉の場合の説明で述べたのと同様にして,処理室12内の露点が低下していく。すなわち,残留酸素が減少していく。
[3.加熱]
処理室12内の酸素濃度が低下したら,処理室12の昇温を開始する。これによりワークWも加熱される。
処理室12内の酸素濃度が低下したら,処理室12の昇温を開始する。これによりワークWも加熱される。
[4.浸炭]
露点が所定値を下回り,かつワークWが目標温度に達したら,第1ガス導入口15からの水素と窒素の混合ガスの導入を停止し,代わって第2ガス導入口17からアセチレンと窒素の混合ガスを導入する。十分にアセチレンと窒素の混合ガスを供給したら,拡散のためアセチレンを断って窒素のみを供給する。これにより,ワークWに浸炭処理を施す。こうして,表面にほぼ均一に浸炭層が形成された浸炭製品が製造される。
露点が所定値を下回り,かつワークWが目標温度に達したら,第1ガス導入口15からの水素と窒素の混合ガスの導入を停止し,代わって第2ガス導入口17からアセチレンと窒素の混合ガスを導入する。十分にアセチレンと窒素の混合ガスを供給したら,拡散のためアセチレンを断って窒素のみを供給する。これにより,ワークWに浸炭処理を施す。こうして,表面にほぼ均一に浸炭層が形成された浸炭製品が製造される。
以下,実施例を説明する。本実施例では,直径18mm,軸方向長さ50mmの円柱形状の試験片をワークWとして使用した。試験片の材質としては,クロム含有肌焼き鋼であるJIS−SCr420Hを使用した。加熱炉としては,図2の準備室なしのタイプのものを使用した。むろん,図1の準備室付きの加熱炉を用いても同様の試験ができる。
「2.」の炉内雰囲気の置換は,次の条件で行った。
供給ガスの組成:窒素97体積%+水素3体積%
目標露点:表1に示す5水準(うち2水準は比較例)
ここで,水素を3体積%としたのは前述の通り,アセチレンとの混合による爆発を防止するためである。すなわち,後述の浸炭時の混合ガス成分下では,水素の爆発限界は3.5体積%である。このためこれに対し安全側にある程度の余裕を持たせたものである。なお,表1中の「酸素濃度」は,雰囲気の露点が目標値まで低下したときの残留酸素の濃度の,次の手順による計算値である。
供給ガスの組成:窒素97体積%+水素3体積%
目標露点:表1に示す5水準(うち2水準は比較例)
ここで,水素を3体積%としたのは前述の通り,アセチレンとの混合による爆発を防止するためである。すなわち,後述の浸炭時の混合ガス成分下では,水素の爆発限界は3.5体積%である。このためこれに対し安全側にある程度の余裕を持たせたものである。なお,表1中の「酸素濃度」は,雰囲気の露点が目標値まで低下したときの残留酸素の濃度の,次の手順による計算値である。
まず,雰囲気の自由エネルギーΔGは,
ΔG = −57250+4.48TlogT−2.21T
で表される。ここでTが露点である。また,
H2+(1/2)O2 = H2O
なる系の平衡定数kは,各成分の分圧P(**)を用いて,
k = P(H2O)/P(H2)/P(O2)1/2
で表される。また,自由エネルギーΔG,露点T,平衡定数kの間には,
logk = −ΔG/RT
なる関係がある。ここでRは気体定数である。これより,露点Tから自由エネルギーΔGを求め,さらに平衡定数kを求めることにより,酸素の分圧を求めることができる。その全圧に対する比をとることにより酸素濃度が求められる。
出典:O-Kubaschewski and Ell Evans: Metallurgical Thermochemistry, Pergamon Press Ltd, London (1956), p331
ΔG = −57250+4.48TlogT−2.21T
で表される。ここでTが露点である。また,
H2+(1/2)O2 = H2O
なる系の平衡定数kは,各成分の分圧P(**)を用いて,
k = P(H2O)/P(H2)/P(O2)1/2
で表される。また,自由エネルギーΔG,露点T,平衡定数kの間には,
logk = −ΔG/RT
なる関係がある。ここでRは気体定数である。これより,露点Tから自由エネルギーΔGを求め,さらに平衡定数kを求めることにより,酸素の分圧を求めることができる。その全圧に対する比をとることにより酸素濃度が求められる。
出典:O-Kubaschewski and Ell Evans: Metallurgical Thermochemistry, Pergamon Press Ltd, London (1956), p331
「4.」の浸炭(拡散を含む。)は,次の条件で行った。
・浸炭
炉内温度:950℃
供給ガスの組成:窒素99体積%+アセチレン1体積%
保持時間:600秒
・拡散
炉内温度:950℃
供給ガスの組成:窒素のみ
保持時間:300秒
・浸炭
炉内温度:950℃
供給ガスの組成:窒素99体積%+アセチレン1体積%
保持時間:600秒
・拡散
炉内温度:950℃
供給ガスの組成:窒素のみ
保持時間:300秒
こうして得られた5水準の試験片について,処理完了後における浸炭深さを,顕微鏡による断面組織観察により測定した。測定箇所は,円柱の側面上で長さ方向に中央の位置とし,円周方向に等間隔に4箇所測定した。測定結果を表2に示す。表2中の「0°」,「90°」,「180°」,「270°」は,円周方向の4箇所の測定箇所を示す。「平均」,「MAX」,「MIN」は,水準ごとの4箇所の測定値の平均値,最大値,最小値を示す。
表2の結果を図3のグラフに示す。図3のグラフ中では,表1,表2における「水準」を括弧付き数字で示している。これより,次のことが分かる。実施例である水準1,2においては,平均で0.18mm程度の浸炭深さがあり,最低でも0.12mm程度の浸炭深さが確保されている。このように水準1,2は,非常に良好な浸炭結果が得られた。このため表2中の「判定」を二重丸とした。実施例水準3においては,水準1,2と比較して,最低値ではやや劣るが,平均値ではさほど遜色ない。未浸炭領域の発生は見られない。このように水準3は,良好な結果が得られた。このため表2中の「判定」を一重丸とした。これに対し,比較例である水準4,5においては,最低値が「0」であった。すなわち未浸炭領域の発生が認められた。特に水準5では,全体としてほとんど浸炭されていなかった。
むろん,実施例と比較例とでこのような顕著な相違が現れた原因は,雰囲気置換の終了時点での露点の低さ,言い替えると残留酸素濃度の少なさの違いにある。比較例である水準4,5においては,露点があまり下がらないうちに雰囲気置換を終了している。このために試験片の表面の酸化膜が多く残ったまま浸炭処理が開始されてしまったのである。このため,浸炭不良になったのである。
これに対し実施例である水準1〜3においては,露点が−50℃を下回るまで雰囲気置換を実施した。このため,残留酸素濃度が7.2×10-20体積%を下回った状態で浸炭処理に供されたのである。このために試験片の表面の酸化膜がほぼ除去された状態で浸炭処理が開始されたのである。これにより,良好な浸炭結果が得られたのである。
特に水準1,2においては,露点が−55℃を下回るまで雰囲気置換を実施した。このため,残留酸素濃度が2.6×10-20体積%を下回った状態で浸炭処理に供されたのである。このために試験片の表面の酸化膜がほとんど除去された状態で浸炭処理が開始されたのである。これにより,特に良好な浸炭結果が得られたのである。
以上詳細に説明したように本実施の形態および本実施例では,水素と窒素の混合ガスを炉内に供給することで,残留酸素を十分に低下させてから浸炭処理を行うこととしている。これにより,真空排気を行うことなく大気圧のままで,ワークの表面の酸化膜を除去して良好な浸炭製品が得られるようにしている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,雰囲気置換時に用いる非浸炭性還元ガスとしては,水素の代わりにアンモニアを用いることもできる。また,浸炭処理時に用いる炭化水素としては,アセチレンに限らずエチレンやプロパンなどでもよい。不活性ガスとしては,窒素以外にアルゴン等の希ガスも使用可能である。対象材の鋼種は,普通鋼の他,クロム鋼やクロモリ鋼など一般的に浸炭処理に供されるものであれば何でもよい。処理温度は鋼種その他の条件に合わせて決めればよい。また,真空排気機能を有する処理炉を用いて,真空排気機能を休止させた状態で実施することもできる。
本発明は例えば,次のような各種部品の成形後の浸炭処理に用いることができる。すなわち,内燃機関におけるピストンピンやカムギヤ等,車両の駆動伝達系における各種ギヤ,等速ジョイント等である。
1 準備室
2,12 処理室
5,15 第1ガス導入口(水素,窒素)
7,17 第2ガス導入口(アセチレン,窒素)
044 露点計
2,12 処理室
5,15 第1ガス導入口(水素,窒素)
7,17 第2ガス導入口(アセチレン,窒素)
044 露点計
Claims (4)
- 鋼製の対象品に気相にて浸炭を施す浸炭製品の製造方法において,
対象品を収納した室内に非浸炭性還元ガスと不活性ガスとの混合ガスを導入することにより,対象品の周囲の雰囲気の露点を−50℃以下にする露点低下を行い,
その後に対象品の周囲を炭化水素を含む雰囲気として浸炭を行うことを特徴とする浸炭製品の製造方法。 - 請求項1に記載の浸炭製品の製造方法において,
前記露点低下の際に,露点を−55℃以下にすることを特徴とする浸炭製品の製造方法。 - 鋼製の対象品に気相にて浸炭を施す浸炭製品の製造方法において,
対象品を収納した室内に非浸炭性還元ガスと不活性ガスとの混合ガスを導入することにより,対象品の周囲の雰囲気の酸素濃度を7.2×10-20体積%以下にする酸素濃度低下を行い,
その後に対象品の周囲を炭化水素を含む雰囲気として浸炭を行うことを特徴とする浸炭製品の製造方法。 - 請求項3に記載の浸炭製品の製造方法において,
前記酸素濃度低下の際に,酸素濃度を2.6×10-20体積%以下にすることを特徴とする浸炭製品の製造方法。
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EP2186593A1 (de) * | 2008-11-17 | 2010-05-19 | Linde Aktiengesellschaft | Gasgemisch |
JP2015101735A (ja) * | 2013-11-21 | 2015-06-04 | 大同特殊鋼株式会社 | 浸炭部品 |
US10053747B2 (en) | 2014-03-11 | 2018-08-21 | Honda Motor Co., Ltd. | Steel part and method of manufacturing the same |
JP2018162475A (ja) * | 2017-03-24 | 2018-10-18 | 大陽日酸株式会社 | 浸炭炉の運転方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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