請求項1に係る本発明の一実施の形態(第1実施例)を、図1の要部斜視図によって説明する。
図1に示すように、慣性センサ1は、n個の慣性センサ素子11(11−1)、11(11−2)、…11(11−n)が並列に配置されている。各慣性センサ素子11は、支持部(図示せず)によって一端が支持された弾性支持体102−1の他端側に振動自在に支持された第1振動子101−1と、支持部(図示せず)によって一端が支持された弾性支持体102−2の他端側に振動自在に支持された第2振動子102とを備えている。また、各第1振動子101−1上には第1共通電極120−1が間隔をおいて配置され、同様に各第2振動子101−2上には第2共通電極120−2が間隔をおいて配置されている。それぞれの第1共通電極120−1は第1配線130−1によって並列に接続されている。同様に、それぞれの第2共通電極120−2は第2配線130−2によって並列に接続されている。
上記各慣性センサ素子11からの出力を得る際、上記第1共通電極120−1と第1振動子101−1との間、および第2共通電極120−2と第2振動子101−2との間に搬送波(+Vsinωt、−Vsinωt)を乗せて信号を取り出す。
次に、上記慣性センサ素子の一例を、図2に示した平面レイアウト図および図3に示した図2中のA−A’線断面図等によって説明する。ここでは、一例として、電磁駆動方式の慣性センサ素子を説明する。
図2および図3に示すように、慣性センサ素子11は、第1振動子101−1と第2振動子101−2を並行に備えている。例えば、第1振動子101−1を駆動側振動子とし、第2振動子101−2を励振側振動子とする。この第1振動子101−1、第2振動子101−2はともに矩形の薄膜からなり、一例としてシリコンで形成されている。上記第1振動子101−1と第2振動子101−1とは、互いに向かい合う側の角部が弾性支持体102−5、102−6とによって接続され、第1振動子101−1の第2振動子101−2とは反対側の角部分には弾性支持体102−1、102−2の一端側によって支持されている。また弾性支持体102−1、102−2の他端側は、それぞれ支持部103−1、103−2に支持固定されている。また、第2振動子101−2の第1振動子101−1とは反対側の角部分には弾性支持体102−3、102−4の一端側によって支持されている。また弾性支持体102−3、102−4の他端側は、それぞれ支持部103−3、103−4に支持固定されている。また弾性支持体102−5、102−6は、それぞれの中央部からフレーム部121側に延長形成されてフレーム部121に支持固定されていてもよい。上記弾性支持体102−1〜6は、それぞれが例えば板バネで構成され、例えばシリコンからなり、例えばU字形に形成されている。上記支持部103−1、103−2、103−3、103−4は、それぞれ第1基板100上に形成されている。したがって、第1振動子101−1および第2振動子101−2は弾性支持体102−1、102−2、102−3、102−4によってのみ支持されていて、第1基板100に対して完全に浮動状態に配置されている。
上記支持部102−1から弾性支持体102−1、第1振動子101−1、弾性支持体102−2を通り支持部103−2に至るものでこの第1振動子101−1を電磁駆動させるための電極108−1が絶縁膜107を介して配設されている。同様に、上記支持部102−3から弾性支持体102−3、第1振動子101−2、弾性支持体102−4を通り支持部103−4に至るものでこの第2振動子101−2の励振を検出するための電極108−2が絶縁膜107を介して配設されている。
上記振動子101が形成されている側とは反対側の上記第1基板100の裏面には磁石300が設けられている。
上記第1基板100上には、フレーム部121を介して第2基板200が形成されている。この第2基板200は、例えばガラス基板で形成されている。この第2基板200の上記第1基板100と対向する面の上記第1振動子101−1に形成された電極108−1に対向する位置には、第1共通電極120−1が形成され、第2振動子101−2に形成された電極108−2に対向する位置には、第2共通電極120−2が形成されている。
さらに、上記第2基板200には、上記支持部103−1、103−2上の電極108−1に接続するもので、電極108−1を外部に引き出すための引き出し電極124−1、124−2、他(図示せず)がコンタクト部125−1、125−2、他(図示せず)を介して形成され、上記支持部103−3、103−4上の電極108−2に接続するもので、電極108−2を外部に引き出すための引き出し電極124−3、124−4、他(図示せず)がコンタクト部125−3、125−4、他(図示せず)を介して形成されている。
上記慣性センサ素子11は、第1基板100の下部に配置された磁石300により電磁的に駆動される。上記第1実施例では、磁石300を第1基板100の下部に設置したが、第1基板100を掘り込んで、その内部に磁石300を設置する、または第2基板200の上部に設置することも可能である。また、第1基板100および第2基板200の両方に磁石300を設置することも可能である。いずれの構成も磁束密度の多少による出力の違いはあるが、動作として同様の結果が得られる。電磁駆動用の電極として、振動子101上の電極108に電流を流す。
上記構成の各慣性センサ素子11の各構成部品が同様なものとなるので、同一工程で、各構成部品を形成することが可能になる。したがって、複数の慣性センサ素子11を同一工程で製造することが可能になり、慣性センサ素子11間の位置ずれは、マスク精度および露光精度、エッチング精度等の半導体プロセスの精度まで高めることが可能になる。よって、各慣性センサ素子11より均一な信号出力を得ることができるという利点がある。
次に、上記慣性センサ素子11の動作原理を説明する。
駆動側の振動子(第1振動子101−1)上の電極108−1に対してある周期を持った交流電流が流れる。電流は周期性を持っているので、別の時点では、流れる方向が逆になることもある。電極に電流が流れると、第1基板100の下部に配された磁石300からの磁界により、ローレンツ力がX方向に発生する。
ローレンツ力Florentzは、電極に流れる電流をI、磁束密度をB、電極配線の長さをLとすると、Florentz=IBLなる式で表され、配線に直交する方向にその力が誘起される。このローレンツ力は印加される電流と同じ周期性をもって振動子に印加され、駆動側の第1振動子101−1は、弾性支持体102−1、102−2に接続されている支持部103−1、103−2を固定点とし、周期的に運動を繰り返す。
振動モード周波数を適切に選択することにより、もう一方の第2振動子101−2は弾性支持体102−3、102−4に接続されている支持部103−3、103−4を固定点とし、ある位相ずれを持ちながら運動を繰り返す。その際、外部からY軸まわりに角速度が与えられると、振動方向に直交した方向にコリオリ力が発生する。コリオリ力Florentzは、振動子の質量をm、駆動方向の振動速度をv、外部から印加される角速度をΩとすると、Florentz=2mvΩなる式で表される。
コリオリ力で発生した変位を大きく取るためには、駆動変位xmを大きく取る必要がある。また電磁駆動の場合、静電駆動で必要な櫛歯電極を必要とせず、櫛歯の間隙に制限されないために、大きな変位を取ることが可能となる。
コリオリ力が発生すると振動子101がZ軸方向に振動する。その際、第1、第2振動子101−1,101−2の上部にそれぞれ共通電極120−1、120−2が配置されていることで電極間に容量の変化が現れる。ここで、電圧印加の周波数はコントロールされており、第1、第2振動子101−1,101−2は逆位相でX方向に駆動している。このため、Z方向に対しては、一方の振動子(例えば第1振動子101−1)は検出電極120−1に近づく方向に変位し、もう一方の振動子(例えば第2振動子101−2)は検出電極120−2に遠ざかる方向に振動子が変位する。その容量差分を検出することで、印加される角速度を算出する。すなわち、上記第1角速度センサ1は、X軸に駆動し、Y軸周りの角速度をZ軸方向の容量変化として検出する。なお、第1、第2振動子101−1,101−2は逆位相で振動するので、上記の逆の場合もある。
角速度が印加されたときにはそれぞれの検出電極120と振動子101間に発生する容量変化量が異なるが、加速度が印加された際には、理想的には発生する容量変化量は異ならないため、差分を取っても容量差が生じない。よって、加速度成分を除去できる構造となっている。
上記加速度成分を除去できることについて図4により説明する。図4(1)に示すように、初期容量をCとして、検出電極120−1と第1振動子101−1との間に生じる容量をC1、検出電極120−2と第2振動子101−2との間に生じる容量をC2として、定常状態では、C1=C2=Cとなるので、容量差分C1−C2=0となり、容量差は生じていない。
次に、図4(2)に示すように、角速度が印加された場合には、C1>C、C2<C(もしくは駆動方向によってはC1<C、C2>C)となるので、容量差分|C1−C2|>0となり、容量差が生じる。
次に、図4(3)に示すように、加速度が印加された場合には、C1>C、C2>C(もしくは加速度の印加方向によってはC1<C、C2<C)となり、かつC1=C2であるので、容量差分|C1−C2|=0となり、容量差が生じない。したがって、加速度成分は除去されることになる。
また、図5の容量検出ブロック図に示すように、容量変化を読み取る際、第2基板200側の電極120と振動子101間に搬送波(+Vsinωt、−Vsinωt)を乗せ、容量変化(C1−C2)により発生した電荷を増幅器により増幅することにより実際の信号を取り出す。搬送波(+Vsinωt、−Vsinωt)は搬送波同期検波(図示せず)により除去され、また駆動波に関しては、駆動同期検波によって、駆動信号そのもの、もしくは誘導起電圧などの駆動モニタ手段の周期成分で検波することにより、角速度に対応した信号を取り出す。
上記慣性センサ1では、慣性センサ素子11を複数並列に配置し、第1配線130−1、第2配線130−2、第1検出電極120−1、第2検出電極120−2を各慣性センサ素子11(11−1〜n)に対して共通に用いることで、第1、第2振動子101−1、101−2自体の振動による変位量を小さくできるので、動作不良が発生しなくなるとともに、振動子−検出電極間の距離を短くできる。ここで、第1振動子101−1を第1検出電極120−1で検出し、第2振動子101−2を第2検出電極120−2で検出しているのは、前記図4によって説明した逆位相キャンセル機構(加速度成分の除去機構)をアレイ化した後も実現するためである。また、離調度を1から離すことで所望のSN比を得るための低域通過フィルタLPF(前記図5参照)に、応答性を阻害されることなく出力を上げることができる。
そして、図6のブロック図に示すように、各慣性センサ11より引き出された第1配線130−1、第2配線130−2(前記図1参照)によって出力信号は、仮想接地されているチャージポンプに入力され、増幅、復調された後に同期検波されて低域通過フィルタLPFを通して慣性センサ1の電圧出力となる。
上記慣性センサ素子11の説明では、電磁駆動方式の慣性センサ素子を説明したが、本発明の慣性センサに用いる慣性センサ素子は、電磁駆動方式に限定されず、静電駆動方式、圧電駆動方式の慣性センサ素子を適用することもできる。いずれの方式の慣性センサ素子であっても、複数の慣性センサ素子を有し、各慣性センサ素子で検出された出力値が加算されて出力されるように構成される。
上記慣性センサ1では、振動子面積を大きくしたことによる変形や離調度を1に近づけることによる応答性の低下をもたらすことなく、複数の慣性センサ素子11を並列に配置したことによって、低角速度から高角速度まで検出できるダイナミックレンジの広い慣性センサを提供できるという利点がある。また、各慣性センサ素子11で検出された出力値が加算されて出力されることから、変形による動作不良を発生することなく、また応答性が低下することなく、高い出力を得ることができるという利点がある。
次に、本発明の慣性センサに係る一実施の形態(第2実施例)を、図7のブロック図によって説明する。第2実施例では、慣性センサ1により角速度を検出する事例を説明する。
図7に示すように、慣性センサ素子11−1と慣性センサ素子11−2は、それぞれ、電極間距離、質量、バネ定数などを変えて単位角速度あたりの出力が異なるものである。例えば慣性センサ素子11−1を単位角速度あたりx(fF/deg/s)の容量変化、慣性センサ素子11−2を単位角速度あたり100x(fF/deg/s)の容量変化とする。それぞれ同ゲイン(利得)のC−V変換器(容量−電圧変換器)を通した後、例えば慣性センサ素子11−1の出力を1(mV/deg/s)、慣性センサ素子11−2の出力を100(mV/deg/s)となったとする。それぞれの最大出力を1Vに制限する。最後に加算器を用いて信号を合わせることで、0V〜1Vは10deg/sまで、1〜2Vは10000deg/sまでの角速度を検知でき、元の慣性センサ素子のダイナミックレンジが30dBとすれば60dBまでダイナミックレンジを拡大することができる。0〜1Vのときには慣性センサ素子11−2の出力も混じるために所望の信号+0.1%分だけ増幅される。誤差とみなしてもよいが、電圧で条件を設けて補正してもよい。
次に、本発明の慣性センサに係る一実施の形態(第3実施例)を、図8のブロック図によって説明する。第3実施例では、慣性センサ1により角速度を検出する事例を説明する。
図8に示すように、慣性センサ素子11−1と慣性センサ素子11−2は、それぞれ、単位角速度あたりの容量変化が同じものである。このような慣性センサ素子11−1、11−2を用い、各慣性センサ素子11−1、11−2に接続されているC−V(容量−電圧)変換器のゲイン(利得)を変える。すなわち、負荷容量Cを変える。例えば、慣性センサ素子11−1側のC−V変換器のゲインと、慣性センサ素子11−2側のC−V変換器のゲインに、例えば30dBの差を設ければ、2つの同ゲイン(利得)の慣性センサ素子11−1、11−2を用いて、60dBのダイナミックレンジの慣性センサ1を構成することが可能となる。
次に、本発明の慣性センサに係る一実施の形態(第4実施例)を、図9のブロック図によって説明する。第4実施例では、慣性センサ1により角速度を検出する事例を説明する。
図9に示すように、検出ユニット10−1には慣性センサ素子11−0を用い、検出ユニット10−2には慣性センサ素子11−1、11−2、…、11−nのn個の慣性センサ素子11を用いる。それぞれの慣性センサ素子11は、単位角速度あたりの容量変化が同じものである。この場合、検出ユニット10−1の出力を例えば1(mV/deg/s)とすれば、検出ユニット10−2の出力は例えばn(mV/deg/s)となる。これは、先に説明した第1実施例と第2実施例を組み合わせた構成である。上記検出ユニット10−1は、複数の慣性センサ素子11を用いてもよい。
また、C−V変換器の負荷容量Cによって利得を変えることもできる。これは、先に説明した第1実施例と第3実施例とを組み合わせた構成となる。
このように、第1実施例と第2実施例を組み合わせた構成、第1実施例と第3実施例とを組み合わせた構成等をとることによって、さらに、ダイナミックレンジを広くすることができる。
次に、本発明の慣性センサの一実施の形態(第2実施例)を、図10の要部斜視図によって説明する。
図1に示すように、慣性センサ2は、n個の慣性センサ素子11(11−1)、11(11−2)、…11(11−n)が並列に配置されているユニット10(10−1、10−2、10−m)が、複数行、例えば図面ではm行に配列されているものである。
各慣性センサ素子11は、支持部(図示せず)によって一端が支持された弾性支持体102−1の他端側に振動自在に支持された第1振動子101−1と、支持部(図示せず)によって一端が支持された弾性支持体102−2の他端側に振動自在に支持された第2振動子102とを備えている。
また、各ユニット10の各第1振動子101−1上には第1共通電極120−1が間隔をおいて配置され、同様に各第2振動子101−2上には第2共通電極120−2が間隔をおいて配置されている。それぞれの第1共通電極120−1は第1配線130−1によって並列に接続されている。同様に、それぞれの第2共通電極120−2は第2配線130−2によって並列に接続されている。
上記各慣性センサ素子11からの出力を得る際、上記第1共通電極120−1と第1振動子101−1との間、および第2共通電極120−2と第2振動子101−2との間に搬送波(+Vsinωt、−Vsinωt)を乗せて信号を取り出す。
上記慣性センサ2の慣性センサ素子11をM×Nのマトリクス状に並べる配置は一例であって、アレイ化の並べ方に関して、機能としてはレイアウトに依存せず、横方向、縦方向にならべても同様に効果を得ることができる。例えば、ゲインが同一の慣性センサ素子11をM×Nのマトリクス状に並べれば、M×N倍のアレイ効果が得られる。また、前記第4実施例のように出力を上げた検出ユニット同士を組み合わせてダイナミックレンジを拡大することも可能である。
次に、本発明の慣性センサの製造方法に係わる一実施の形態(製造方法の実施例)を、図11〜図17によって説明する。図11〜図17では、一例として、前記第2実施例で説明した慣性センサ2の製造工程を示す。図11〜図17は前記図2のA−A’線にそって表記している。
図11(1)に示すように、振動子、弾性支持体等を形成するための基板100を用意する。この基板100は、シリコン層131とシリコン層133との間に酸化シリコン層132を挟み込んだSOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。また、基板100の下面に、次ぎの工程でアライメントマークを形成する際のマスクとなるマスク層141を形成する。
まず、図11(2)に示すように、上記マスク層141をエッチングマスクに用いて、シリコン層131に、後に説明する第1、第2基板とのアライメントを行うためのアライメントマークおよびダイシングライン134を形成する。これは、後に説明する第1基板と第2基板との陽極接合時のアライメントおよび慣性センサ1を切り出す際のマークとなるものである。
次に、図11(3)に示すように、上部のシリコン層133を所望の膜厚となるよう基板全面にエッチングを施す。エッチング方法はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)や水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いたウエットエッチでよく、または化学的、物理的ドライエッチでも良い。また、所望の膜厚が予めわかっているならば、そのようなSOI基板を用意しても良い。
次に、図12(4)に示すように、陽極接合のフレーム形成のため、シリコン層133のエッチングを行い、凹部135を形成する。エッチング方法はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)や水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いたウエットエッチや化学的、物理的ドライエッチでも良い。このエッチングにおいて、振動子の膜厚および弾性支持体の膜厚が決定される。
次に、図12(5)に示すように、振動子を形成する領域上の一部および弾性支持体を形成する領域上に絶縁層107を形成する。絶縁層107は、次に形成する電極とシリコン層133との絶縁性を保持できるものであれば何でも良い酸化シリコン(SiO2)や窒化シリコン(SiN)など後で形成する。
次に、図12(6)に示すように、絶縁層107上にローレンツ印加のための配線108−1および誘導起電力検出のための配線108−2を形成する。配線材料は電子ビーム蒸着により形成した。本実施例においては、リフトオフ法により配線を形成したが、配線のエッチングをウェットエッチングやドライエッチングによって行っても良い。また本実施例においては、配線材料として、金、白金、クロムの3層金属材料を用いたが、金、白金、チタンの3層金属材料、金、クロムや白金、クロムまたは、金、チタンや白金、チタンなどの2層金属材料や、チタンの代わりに、窒化チタンとチタンとの積層材料を用いても良い。また、クロムやチタンの代わりに銅を用いても良い。また形成方法はスパッタ法やCVD法を用いても良い。
次に、図13(7)に示すように、エッチング技術として、例えば反応性イオンエッチングを用いてシリコン層133を加工して、振動子101、弾性支持体102、陽極接合のためのフレーム部121を形成する。
次に、図13(8)に示すように、不必要な部分、例えば振動子101や弾性支持体(図示せず)の下部の絶縁層132部をエッチングにより除去する。その際、支持部303となるシリコン層133下部の絶縁層132およびフレーム121となるシリコン層133の下部の絶縁層132は一部残して、シリコン層131と接続させる。ほかの部分は中空構造となる。これにより振動子101、弾性支持体(図示せず)、支持部103等が形成される。
次に第2基板側の作製方法を以下に説明する。
図14(1)に示すように、第2基板200には例えばガラス基板を用い、この第2基板200に共通電極120を電子ビーム蒸着により形成する。配線電極120として、金、白金、クロムの三層金属材料を用いたが、金、白金、チタンの三層金属材料、金、クロムや白金、クロムまたは、金、チタンや白金、チタンなどの二層金属材料や、チタンの代わりに、窒化チタンとチタンとの積層材料を用いても良い。また、クロムやチタンの代わりに銅を用いても良い。また形成方法はスパッタ法やCVD法を用いても良い。
次に図14(2)に示すように、コンタクト部125を、例えば無電解めっき法により金の支柱で形成する。この金の支柱は陽極接合後の第1基板100側のパッドとのコンタクトをとるために形成する。本実施例においては、金の支柱は直下に配置される配線パッド上およびシリコンに直接接続させる配線パッドに対してパッド毎に複数本形成する。これにより、陽極接合時に支柱がバネ状に屈曲し、適度なテンションをもって第1基板100側と接続することができる。スプリングコンタクトや、金バンプを用いる接続方法もあるが、本方法の場合、ガラス基板に過度な応力をかけることも無く、また、作成方法もきわめて簡単である。本実施例においては無電解めっき法を用いたが電解めっき法でも形成できる。
次に、図14(3)に示すように、第1共通電極120−1、第2共通電極120−2、引き出し電極124等をエッチングによって形成する。上記第1共通電極120−1は、同時に形成されている各慣性センサ素子11の第1共通電極120−1と、配線(図示せず)によって並列に接続されるように形成される。同様に、第2共通電極120−2は、同時に形成されている各慣性センサ素子11の第2共通電極120−2と、配線(図示せず)によって並列に接続されるように形成される。
上記工程において、電極(駆動電極)108−1および電極(検出電極)108−2〔前記図12参照〕のガラス側への引き出しのコンタクト部125−1、125−2、およびシリコン層133〔前記図12参照〕に直接接続するコンタクト(図示せず)を形成し、さらにフレーム121〔前記図12参照〕に接続するための引き出し電極(図示せず)を形成する。
次に第1基板100と第2基板200との組立方法を説明する。
図15(1)に示すように、陽極接合法により第2基板200とフレーム121を接合させる。その際、ローレンツ力を発生させる電極108−1のパッド部(支持部103−1上に形成されている部分)および電磁駆動で振動子101が動作したときに発生する誘導起電力を検出する電極108−2のパッド部(支持部103−3上に形成されている)をコンタクト部125−1、コンタクト部125−2を接続させる。同様に、シリコン層133〔前記図12参照〕に直接接続するための電極パッド(図示せず)にコンタクト部(図示せず)を接続させる。
次に、図15(2)に示すように、第1基板100および第2基板200を、例えばダイシングにより切断し、個別チップを形成する。
最後に、図16(3)に示すように、第1基板100側下部に磁石300を形成し、角速度検出の慣性センサ1が作製される。その後、図示はしないが、上記慣性センサ1はパッケージに実装される。
上記製造方法では、一つに慣性センサ素子11の製造方法を説明したが、実際には、上記工程で説明した慣性センサ素子11を同一基板上に同時に複数個形成することで、複数の慣性センサ素子11を並列に配置した慣性センサ1を得る。また、上記慣性センサ素子をマトリクス状に配列することによって、前記第2実施例で説明した慣性センサ2を得ることができる。この場合も、例えば、各慣性センサ素子11の第1共通電極120−1および第2共通電極120−2を形成する際に、各第1共通電極120−1を並列に接続する配線(図示せず)を形成するとともに、各第2共通電極120−2を並列に接続する配線(図示せず)を形成する
上記慣性センサの製造方法によれば、各慣性センサ素子11で検出された出力値が加算されて出力されるようになることから、慣性センサ1が変形による動作不良を発生することなく、また応答性が低下することなく、高い出力を得ることができるようになるとともに、複数の慣性センサ素子11を形成することによって低角速度から高角速度まで検出できるダイナミックレンジの広い慣性センサを提供できるという利点がある。
また、上記慣性センサ1、2では、2つの振動子の変位容量を計算することで、角速度を検出することができる。それぞれの検出電極と振動子間に発生する容量変化量が異なるが、並進加速度が印加された際には、発生する容量変化量は異ならないため、差分を取っても容量差が生じない。よって、角速度印加の時に発生する加速度成分を除去できる構造となっている。さらに2つの振動子の変位容量の和を計算することで、加速度を検出することができる。
以上説明した本発明に係る慣性センサ1もしくは2は、様々な電気・電子機器に適用することが可能である。
また、本発明に係る慣性センサ1もしくは2は、加速度を検出することができる。例えば、携帯型ハードディスク駆動装置(以下、ハードディスク駆動装置を略してHDDと記す)、ノート型パーソナルコンピュータ、HDD内蔵携帯型音楽再生装置、HDD内蔵携帯型音楽録音再生装置、HDD搭載型ビデオカメラ等のHDDを搭載した携帯型電子機器、携帯電話等の携帯端末装置、等に適用される。
上記慣性センサ1もしくは2は、姿勢制御、動作検知にも用いられるものである。例えば、ビデオカメラ、スチルカメラ、カメラの交換レンズ等の携帯型撮影機器、携帯電話等の携帯端末装置、ユーザ・インターフェース、ゲーム機、ゲームコントローラー、等に適用される。
上記慣性センサ1もしくは2は、振動制御にも用いられるものである。例えば、全自動洗濯機、自動車、振動制御装置、等に適用される。
上記慣性センサ1もしくは2は、動作検知にも用いられるものである。例えば、歩数計、防犯・防災装置、盗難防止装置、等に適用される。
上記慣性センサ1もしくは2は、衝撃(衝突)検知に用いられるものである。例えば、車両用エアバッグ装置、車両・船舶・航空機等の事故記録装置、HDD、等に適用され、また携帯型HDD、ノート型パーソナルコンピュータ、HDD内蔵携帯型音楽再生装置、HDD内蔵携帯型音楽録音再生装置、HDD搭載型ビデオカメラ等のHDDを搭載した携帯型電子機器、携帯電話等の携帯端末装置、等に適用される。
このように、本発明の慣性センサ1もしくは2は、あらゆる分野の電気・電子機器に適用することが可能である。以下、電気・電子機器の一実施の形態を以下に説明する。ここで説明するのは一例であって、上記した電気・電子機器に適用できる。なお、以下の説明において、慣性センサは、代表して慣性センサ1を記載するが、その他の慣性センサ2も同様に適用できる。
次に、請求項8に係る本発明の電気・電子機器の一実施の形態(第1実施例)を、図17によって説明する。図17では、ビデオカメラ装置の一例を示し、概略構成斜視図で示した。
図17に示すように、本適用例に係るビデオカメラ装置510は、本体511に、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ512、撮影時のスタート/ストップスイッチ513、表示部514、ファインダー515、撮影した画像を記録する記録装置(図示せず)、固体撮像装置等の撮像素子516等を含み、その撮像素子516が搭載される基板517には、角速度センサが搭載されていて、その角速度センサとして本発明に係る慣性センサ1を用いることによって作製される。
まず、本発明に係る電気・電子機器の一実施の形態(第2実施例)を、図18によって説明する。図18では、HDD装置の一例を示し、(1)図に概略構成斜視図を示し、(2)図に内部平面図を示した。
図18に示すように、本適用例に係るHDD装置530は、ベース部材531とベース部材531の内部に設置された装置を覆うカバー532を有し、上記ベース部材531の内部に設置されているベース基板533に、磁気ディスク534を駆動するモータ535、このモータに駆動される磁気ディスク534、支軸536に回動自在に設けたアクチュエータアーム537、その先端部にヘッドサスペンション538を介して形成された磁気ヘッド539等が設けられている。そして、ベース基板533上に慣性センサ1が設置されている。なお、慣性センサ1は、ベース部材531、カバー532等に設置することも可能である。
次に、本発明に係る電気・電子機器の一実施の形態(第3実施例)を、図19によって説明する。図19では、HDD装置を搭載したノート型パーソナルコンピュータの一例を示し、(1)図に表示部を開いた状態の概略構成斜視図を示し、(2)図に表示部を閉じた状態の概略構成斜視図を示した。
図19に示すように、本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータ550は、本体551に、文字等を入力するとき操作されるキーボード552、画像を表示する表示部553、HDD装置554等を含み、そのHDD装置554は、前記説明した本発明の慣性センサ1が搭載されたHDD装置550を用いることにより作製されている。また、慣性センサ1はノート型パーソナルコンピュータ550の基板(図示せず)や本体551や表示部553を構成する筐体の内側の空いている領域に取付けてもよい。
次に、本発明に係る電気・電子機器の一実施の形態(第4実施例)を、図20によって説明する。図20では、HDD装置を搭載したゲーム機の一例を平面図に示した。
図20に示すように、本適用例に係るHDD装置を搭載したゲーム機570は、本体571に、画面等を操作する第1操作ボタン群572、第2操作ボタン群573、画像を表示する表示部574、HDD装置575等を含み、そのHDD装置574は、前記説明した本発明の慣性センサ1が搭載されたHDD装置550を用いることにより作製されている。また、慣性センサ1はゲーム機570の基板(図示せず)や本体571を構成する筐体の内部側の空いている領域に取付けてもよい。
次に、本発明に係る電気・電子機器の一実施の形態(第5実施例)を、図21によって説明する。図21では、HDD装置を搭載したビデオカメラ装置の一例を示し、概略構成斜視図で示した。
図21に示すように、本適用例に係るHDD装置を搭載したビデオカメラ装置590は、本体591に、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ592、撮影時のスタート/ストップスイッチ593、表示部594、ファインダー595、撮影した画像を記録するHDD装置596等を含み、そのHDD装置596は、前記説明した本発明の慣性センサ1が搭載されたHDD装置550を用いることにより作製されている。また、慣性センサ1はビデオカメラ装置590の基板(図示せず)や本体591を構成する筐体の内部側の空いている領域に取付けてもよい。
次に、本発明に係る電気・電子機器の一実施の形態(第6実施例)を、図22によって説明する。図22では、カメラ付き携帯端末装置、例えばカメラ付き携帯電話機の一例を示し、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた除隊での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
図22に示すように、本適用例に係る携帯端末装置、例えば携帯電話機610は、上側筐体611、下側筐体612、連結部(ここではヒンジ部)613、ディスプレイ614、サブディスプレイ615、ピクチャーライト1616、カメラ617、角速度センサ618等を含み、その加速度センサ618として本発明に係る慣性センサ1を用いることにより作製される。また、慣性センサ1は、携帯電話機610の上側筐体611の内部側の他の位置、下側筐体612の内部側の空いている領域に取付けてもよい。
上記各電気・電子機器によれば、本発明の慣性センサ1もしくは2を備えたことから、高出力、広ダイナミックレンジの慣性センサの提供が可能となるので、例えば、角速度や加速度を瞬時に検知できるため、発生した角速度や加速度による補正行動を電気・電子機器にとらせることができるという利点がある。