JP2008202084A - 接合方法及び接合構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】接合材料塗布工程において、2枚の被接合部材10(10A、10B)のうち、一方10Aの接合面の必要範囲にのみ接合材料12を塗布すした後、接合材料12の表面に表面コート材14を、少なくとも接合材料12を塗布した範囲に重ねて塗布する。そして、表面コート材14自体の接着強度によって、接合材料12に、接合作業の際に剥がれを生じないような接着強度を確保する。
【選択図】図1
Description
ところで、金属ナノ粒子を用いた接合技術は、有機保護膜で被覆された金属ナノ粒子とバインダーとが含まれるペースト状の接合材料を、被接合部材の所定の位置に塗布して被接合部材間に保持した状態で、被接合部材及び接合材料を加熱・加圧して接合部材を焼成することにより、被接合部材同士を接合する接合方法である(例えば、特許文献1参照。)。かかる接合方法によれば、引張せん断試験(試験設備:最大推力10kN島津製オートグラフ、試験速度:6.0m/min)によって求められる接合強度値で、48〜85MPaの強度が得られる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属ナノ粒子を用いた接合技術を用いるにあたり、接合材料の接合強度を低下させることなく、接合作業時における接合材料の剥がれの問題を解決することにある。
又、上記課題を解決するために、本発明の接合構造は、金属ナノ粒子が含まれる接合材料が、2枚の被接合部材間の所定の位置に保持され、加熱・焼成されることにより、被接合部材同士が接合されてなる接合構造の、接合材料に、接合材料の表面が表面コート材によって被覆されることで、接合作業の際に剥がれを生じないような表面強度を確保するものである。
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。又、各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。よって、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
本項に記載の接合方法は、2枚の被接合部材のうち、一方の接合面の必要範囲にのみ接合材料を塗布し、接合材料の表面に必要な硬度の確保が可能な材料からなる表面コート材を、少なくとも前記接合材料を塗布した範囲に重ねて塗布することで、接合材料の表面を表面コート材によって被覆する。そして、表面コート材自体の強度によって、接合材料に、接合作業の際に剥がれを生じないような表面強度を確保する。その後、2枚の被接合部材同士を重ね合わせ、接合材料がその接合温度以上となるように加熱しながら被接合部材同士を加圧することで、被接合部材同士を接合するものである。
本項に記載の接合方法は、一方の接合面の必要範囲にのみ前記接合材料を塗布した後、前記接合材料を乾燥させることで、接合材料中から溶剤を蒸発させる。又、接合材料の表面に必要な硬度の確保が可能な材料からなる表面コート材を、少なくとも接合材料を塗布した範囲に重ねて塗布した後、表面コート材を乾燥させることで、表面コート材に含まれる溶剤を乾燥させるものである。従って、加熱・加圧工程中に、被接合部材の間で溶剤がガス化し、その圧力によって、接合材料が被接合部材の間から吹き飛ばされてしまうといった不具合は生じない。
本項に記載の接合方法は、表面コート材を、接合材料を塗布した範囲よりも広く塗布することによって、比較的剥がれの生じ易い接合部材周縁部を表面コート材で確実に覆い隠し、接合材料の剥がれに対する強度を向上させるものである。又、表面コート材の塗布範囲に高精度が求められることもない。
本項に記載の接合方法は、2枚の被接合部材同士を重ね合わせ、接合材料がその接合温度以上となるように加熱しながら被接合部材同士を加圧する際に、表面コート材に密着するもう一方の被接合部材の表面を、表面コート材に添加する活性剤によって清浄化し、被接合部材ともう一方の接合材料との接合性を向上させることができる。
なお、活性剤の例としては、カルボン酸、アジピン酸、アミン等が挙げられる。又、表面コート材にロジン系フラックスを用いる場合には、かかるフラックス自体が活性作用を備えている。
本項に記載の接合構造は、その製造過程において、2枚の被接合部材のうち、一方の接合面の必要範囲にのみ接合材料が塗布され、接合材料の表面に必要な硬度の確保が可能な材料からなる表面コート材が、少なくとも前記接合材料が塗布された範囲に重ねて塗布されることで、接合材料の表面が表面コート材によって被覆された状態となる。従って、表面コート材自体の強度によって、接合材料には、接合作業の際に剥がれを生じないような表面強度が確保される。そして、2枚の被接合部材同士が重ね合わせられ、接合材料がその接合温度以上となるように加熱されながら、被接合部材同士が加圧されることで、被接合部材同士が接合されるものである。
本項に記載の接合構造は、表面コート材が、接合材料が塗布された範囲よりも広く塗布されることによって、比較的剥がれの生じ易い接合部材周縁部が表面コート材で確実に覆い隠されることとなり、接合材料の剥がれに対する強度が向上するものである。
本項に記載の接合構造は、2枚の被接合部材同士を重ね合わせられ、接合材料がその接合温度以上となるように加熱されながら被接合部材同士が加圧される際に、表面コート材に密着するもう一方の被接合部材の表面が、表面コート材に添加される活性剤によって清浄化され、被接合部材ともう一方の接合材料とが強固に接合された接合構造となる。
図1には、本発明の実施の形態に係る、金属ナノ粒子用いて被接合部材同士を接合する接合手順が、模式的に示されている。各工程は以下の通りである。
(i)接合材料塗布工程:被接合部材10(10A)の接合面に、接合材料12を塗布する。接合材料12は、有機保護膜で被覆された金属ナノ粒子と、バインダーと、溶剤とが混合されたものである。なお、図示の例では、被接合部材10は銅板である。又、金属ナノ粒子は銀ナノ粒子が最適であるが、その他にも、例えば、金、パラジウム又は銅その他の金属からなる金属ナノ粒子を用いることが可能である。又、図示の例では、バインダーにははんだ用樹脂系フラックス、溶剤にはアルコールが用いられている。
(ii)接合材料乾燥工程:(i)の塗布工程にて被接合部材10の接合面に塗布した接合材料12を乾燥させ、接合材料12に含まれる溶剤を蒸発させる。
(iii)表面コート材塗布工程:接合材料12の表面に、必要な硬度の確保が可能な材料からなる表面コート材14を重ねて、一定の厚みとなるように塗布する。この際、図2に拡大して示されているように、接合材料12を塗布した範囲よりも広く表面コート材14を塗布し、接合材料12の周縁部を、完全に表面コート材14で覆うことが望ましい。
なお、表面コート材14には、樹脂系コート材(エポキシ系、エナメル系、アクリル系、炭化水素系)が用いられる。又、必要に応じて、表面コート材14には活性剤が添加される。この活性剤としては、例えば、ロジン系フラックス、カルボン酸、アジピン酸、アミン等が用いられる。
(iv)表面コート材乾燥工程:(iii)の塗布工程にて接合材料12に重ねて塗布した表面コート材14を乾燥させ、接合材料12に含まれる溶剤20を蒸発させる。なお、表面コート材14は液状をなしており、塗布作業をスプレーにより行うことが可能である。
(vi)加熱・加圧工程:接合材料12がその接合温度以上となるように加熱しながら、2枚の被接合部材10(10A、10B)同士を加圧する。かかる加熱圧接作業には、プレス金型を用いることが可能である。
(vii)接合工程(接合完了工程):接合材料12がその接合温度以上に維持された状態で、被接合部材10(10A、10B)に、必要な接合強度を得るための圧力を付与することにより、被接合部材10(10A、10B)同士を接合する。
まず、本発明の実施の形態では、(i)接合材料塗布工程において、2枚の被接合部材10(10A、10B)のうち、一方10Aの接合面の必要範囲にのみ接合材料12を塗布する。そして、(iii)表面コート材塗布工程において、接合材料12の表面に必要な硬度の確保が可能な材料からなる表面コート材14を、少なくとも接合材料12を塗布した範囲に重ねて塗布することで、接合材料12の表面を、表面コート材14によって被覆することができる。そして、表面コート材14自体の強度によって、接合材料12に、接合作業の際に剥がれを生じないような表面強度を確保することができる。
なお、(iii)表面コート材塗布工程において、接合材料12を塗布した範囲よりも広く表面コート材14を塗布することにより、比較的剥がれの生じ易い接合部材12の周縁部を表面コート材14で確実に覆い隠し、接合材料12の剥がれに対する強度を向上させることができる。
なお、図4に示される接合材料12の剥がれ試験は、被接合部材の試験片10(10C)に、接合材料12(5×5mm角)を塗布し、更に、本発明の実施の形態に係る試験片には更に表面コート材14を重ねて塗布し、被接合部材10(10A)上に載置して、錘16(300g)を試験片10(10C)に載置することにより荷重を加え、被接合部材10(10A)と平行に10mmスライドさせる手法を採るものである。
なお、表面コート材14に樹脂系コート材(エポキシ系、エナメル系、アクリル系、炭化水素系)を用いた場合には、表面コート材14の耐剥がれ性は鉛筆硬度2H〜6H程度となり、接合強度Iは32〜42MPa程度となる。一方、表面コート材14にロジン系フラックスを用いた場合には、表面コート材14の耐剥がれ性は鉛筆硬度2H程度となり、接合強度Iは55.2〜76.2MPa程度となる。
このように、本発明の実施の形態によれば、表面コート材の使用量を抑え、かつ、接合材料の接合強度を低下させることなく、接合作業時における接合材料の剥がれの問題を解決することが可能であることが理解されるであろう。
Claims (4)
- 金属ナノ粒子が含まれる接合材料を、2枚の被接合部材間の所定の位置に保持した状態で加熱・焼成することにより、被接合部材同士を接合する接合方法であって、
前記2枚の被接合部材のうち、一方の接合面の必要範囲にのみ前記接合材料を塗布し、前記接合材料の表面に必要な硬度の確保が可能な材料からなる表面コート材を、少なくとも前記接合材料を塗布した範囲に重ねて塗布した後、2枚の被接合部材同士を重ね合わせ、前記接合材料がその接合温度以上となるように加熱しながら、前記被接合部材同士を加圧することを特徴とする接合方法。 - 前記表面コート材に、活性剤を添加して用いることを特徴とする請求項1記載の接合方法。
- 金属ナノ粒子が含まれる接合材料が、2枚の被接合部材間の所定の位置に保持され、加熱・焼成されることにより、被接合部材同士が接合されてなる接合構造であって、
前記2枚の被接合部材のうち、一方の接合面の必要範囲にのみ、前記接合材料が塗布され、なおかつ、前記接合材料の表面に必要な硬度の確保が可能な材料からなる表面コート材が、少なくとも前記接合材料が塗布された範囲に重ねて塗布された状態で、該表面コート材と共に前記接合材料が前記2枚の被接合部材の間に挟まれ加熱・焼成されてなることを特徴とする接合構造。 - 前記表面コート材に、活性剤が添加されていることを特徴とする請求項3記載の接合構造。
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