JP2008188641A - 耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工強化により高強度化した鋼板を素材として製造した溶接鋼管の溶接熱影響部の軟化域及び軟化率を小さくすることにより疲労特性を改善した溶接鋼管を提供する。
【解決手段】Ti,Nb,Bを含有し、さらに必要に応じてMo:0.01〜0.30質量%を含有した低合金鋼であって、しかも下記(4)式で定義されるC当量を0.25〜0.6質量%に調整した冷延鋼板を素材とし、溶接軟化部のΔHV及び軟化部幅を次の(1),(2)のように定義するとき、ΔHV×軟化部幅≦150の溶接鋼管を得る。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B+1/4Mo ・・・(4)
溶接軟化部のΔHV=母材硬さ−溶接部最軟化部の硬さ ・・・(1)
軟化部幅=溶接入熱によって母材より硬さが軟化した部分幅(mm) ・・・(2)
【選択図】図3
【解決手段】Ti,Nb,Bを含有し、さらに必要に応じてMo:0.01〜0.30質量%を含有した低合金鋼であって、しかも下記(4)式で定義されるC当量を0.25〜0.6質量%に調整した冷延鋼板を素材とし、溶接軟化部のΔHV及び軟化部幅を次の(1),(2)のように定義するとき、ΔHV×軟化部幅≦150の溶接鋼管を得る。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B+1/4Mo ・・・(4)
溶接軟化部のΔHV=母材硬さ−溶接部最軟化部の硬さ ・・・(1)
軟化部幅=溶接入熱によって母材より硬さが軟化した部分幅(mm) ・・・(2)
【選択図】図3
Description
本発明は、高強度で安価な、自動車,自転車等の構造部材や補強材に使用される耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管に関する。
自動車,自転車等の構造部材や補強部材に使用される溶接鋼管においては、所定の強度と疲労特性が要求される。また自動車,自転車等の用途で要求される軽量化を図る上でも、機械的強度が高く、薄肉化しても所望強度レベルを満足することが重要となる。しかも安価な手法で高強度化が図れることが望ましい。
鋼材の強化機構としては、固溶体強化法や変態組織強化法、あるいは加工強化法などがある。しかしながら、固溶体強化法や変態組織強化法では、Si,Mn等の特殊な合金元素を多量に添加する必要があり、添加量に伴って強度は向上するものの、必然的に鋼材コストが高くなる。
鋼材の強化機構としては、固溶体強化法や変態組織強化法、あるいは加工強化法などがある。しかしながら、固溶体強化法や変態組織強化法では、Si,Mn等の特殊な合金元素を多量に添加する必要があり、添加量に伴って強度は向上するものの、必然的に鋼材コストが高くなる。
一方、冷間圧延等による加工強化法は、安価に高強度化を達成し得る点で効率的な方法である。低炭素鋼であって、酸洗によって熱延スケールが除去された熱延鋼帯を圧下率10〜50%で1パス圧延した後、得られた鋼帯の幅方向両端部を溶接した高強度溶接鋼管が特許文献1で提案されている。
本発明者等も、C−Mn系の熱延鋼板を、圧下率10〜75%で冷間圧延し、冷間圧延したままの鋼帯の幅方向両端部を溶接することにより、高強度溶接鋼管を製造する方法を特許文献2で提案している。
特開2002−327245号公報
特開2005−29882号公報
本発明者等も、C−Mn系の熱延鋼板を、圧下率10〜75%で冷間圧延し、冷間圧延したままの鋼帯の幅方向両端部を溶接することにより、高強度溶接鋼管を製造する方法を特許文献2で提案している。
ところが、上記特許文献2にも開示されているとおり、C−Mn系の熱延鋼板を高圧下率で冷間圧延することにより加工硬化させた鋼板から高強度溶接鋼管を製造する場合の最大の課題は、高強度化を容易に達成できても、溶接時の入熱により溶接熱影響部において軟化が生じることである。また、自動車,自転車等に用いられる構造部材には、アーク溶接やTiG溶接など種々の溶接が施されるが、この溶接の際の入熱量が大きい場合にも溶接軟化が生じる。溶接熱影響部に溶接軟化域が生じると、溶接熱影響のない領域に比較してこの部材の強度及び耐疲労性が非常に低下してしまう。他の強化法により高強度化した鋼板でも溶接時の熱影響により強度の低下が認められるが、加工硬化した鋼材における溶接軟化は他の強化法による鋼材よりも顕著である。
溶接軟化の対策としては、通常、鋼板にTi,Nb等の元素を複合添加するとともに、C当量の適正化により溶接熱影響部の軟化を極力抑えるようにする。しかし、加工硬化した鋼材を素材として製造した溶接鋼管の強度及び疲労特性が低下する課題の解決には不十分である。
溶接軟化の対策としては、通常、鋼板にTi,Nb等の元素を複合添加するとともに、C当量の適正化により溶接熱影響部の軟化を極力抑えるようにする。しかし、加工硬化した鋼材を素材として製造した溶接鋼管の強度及び疲労特性が低下する課題の解決には不十分である。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、C−Mn系の鋼板にTi,Nbに加えてBを添加し、さらに必要に応じてMoを添加することと、C当量の適正化と、溶接熱影響部の軟化域及び軟化率を小さく抑えることを特徴とする耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管を提供することを目的とする。
本発明の耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管は、その目的を達成するため、オープンパイプ状に成形した冷延鋼板の端部同士を溶接により接合して製造した溶接鋼管であって、接合部の溶接金属の近傍における溶接軟化部のΔHV及び軟化部幅をそれぞれ次の(1)式,(2)式のように定義するとき、溶接軟化部のΔHV×軟化部幅≦150であることを特徴とする。
溶接軟化部のΔHV=母材硬さ−溶接部最軟化部の硬さ ・・・(1)
軟化部幅=溶接の入熱によって母材より硬さが軟化した部分の幅(mm) ・・・(2)
溶接軟化部のΔHV=母材硬さ−溶接部最軟化部の硬さ ・・・(1)
軟化部幅=溶接の入熱によって母材より硬さが軟化した部分の幅(mm) ・・・(2)
前記冷延鋼板としては、質量%で、C:0.01〜0.20質量%,Si:1.5質量%以下,Mn:2.5質量%以下,P:0.05質量%以下,S:0.02質量%以下,酸可溶Al:0.005〜0.10質量%,B:0.0005〜0.005質量%,Ti:0.01〜0.15質量%,及びNb:0.01〜0.10質量%を、さらに必要に応じてMo:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記(3)又は(4)式で定義されるC当量が0.25〜0.6質量%に調整された成分組成を有するものが好ましい。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B ・・・(3)
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B+1/4Mo ・・・(4)
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B ・・・(3)
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B+1/4Mo ・・・(4)
本発明は、高強度溶接鋼管の疲労特性の劣化を抑制するため、まず、溶接熱影響部における軟化率と軟化部の大きさを著しく小さく抑えることを要件とし、溶接軟化部のΔHV及び軟化部幅を前出の(1),(2)式のように定義するとき、溶接軟化部のΔHV×軟化部幅≦150とする。さらに、溶接軟化部の軟化率と大きさを制御できる手段は、鋼組成と溶接条件である。そこで、C−Mn鋼にTi,Nbに加えてBを添加し、さらに必要に応じてMoを添加することと、C当量を適正化することにより、広範な溶接条件においても溶接熱影響部の軟化率及び軟化部を小さく抑えることができ、疲労特性を改善した溶接鋼管を提供できるものである。
このような成分組成の熱延鋼板を基材として、さらに通常の冷間圧延による冷間加工を付与することにより高強度化を図るとともに、素材鋼板の組成的な特徴である溶接鋼管製造時の溶接熱影響部の軟化や、構造材料として使用する際の溶接熱影響部の軟化を抑制することができる。高価な合金元素を多量に使用するものでもないので、本発明により、耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管を安価に提供することができる。
次に、本発明における溶接熱影響部の軟化率及び軟化部幅を限定した理由について説明する。
溶接軟化部のΔHV×軟化部幅≦150
溶接鋼管が構造部材として用いられる場合、部材の形状や荷重負荷の状況によってこの溶接部分に高い応力が発生すると、溶接軟化部が基点となって疲労による亀裂が発生、伝播することがある。これを抑制するためには、溶接軟化部の軟化の程度と領域をできるだけ小さくすることが好ましい。詳細は実施例の記載に譲るが、発明者らは、種々の合金組成、溶接条件により溶接鋼管を製造し、溶接軟化部の評価や溶接部の強度特性、疲労特性を評価することによって、溶接軟化部のΔHV×軟化部幅が150を超えると強度特性の低下が著しく、耐疲労特性も劣化することを見出した。このため、上記ΔHV×軟化部幅を150以下に限定する。
なお、図1に示すように、溶接軟化部のΔHVは母材の硬さから溶接軟化部の硬さを引いた値であり、軟化部幅は溶接入熱によって母材より硬さが軟化した部分の幅(単位はmm)である。
溶接軟化部のΔHV×軟化部幅≦150
溶接鋼管が構造部材として用いられる場合、部材の形状や荷重負荷の状況によってこの溶接部分に高い応力が発生すると、溶接軟化部が基点となって疲労による亀裂が発生、伝播することがある。これを抑制するためには、溶接軟化部の軟化の程度と領域をできるだけ小さくすることが好ましい。詳細は実施例の記載に譲るが、発明者らは、種々の合金組成、溶接条件により溶接鋼管を製造し、溶接軟化部の評価や溶接部の強度特性、疲労特性を評価することによって、溶接軟化部のΔHV×軟化部幅が150を超えると強度特性の低下が著しく、耐疲労特性も劣化することを見出した。このため、上記ΔHV×軟化部幅を150以下に限定する。
なお、図1に示すように、溶接軟化部のΔHVは母材の硬さから溶接軟化部の硬さを引いた値であり、軟化部幅は溶接入熱によって母材より硬さが軟化した部分の幅(単位はmm)である。
溶接軟化部のΔHVと軟化部幅は、鋼板の組成と溶接による材料への入熱量の影響を大きく受ける。鋼板の組成は、請求項2または3に開示した成分の組成を採用する必要がある。また、溶接による材料への入熱が大きいほど溶接軟化部のΔHVと軟化部幅は大きくなるので、ΔHV×軟化部幅を150以下にするための具体的な手段のひとつは溶接による入熱量の調整であり、溶接電流や溶接速度の調整によることが一般的である。溶接電流が大きいほど、あるいは溶接速度が小さいほど、溶接による入熱量は大きくなる。
次に、本発明における基材鋼の化学成分の作用及び含有量を限定した理由について個別に説明する。
C:0.01〜0.20質量%
Cは鋼板の高強度化に有効な合金成分である。0.01質量%以上でCによる強化作用がみられる。しかし、過剰量のCの含有は、焼入れ性に対して大きな影響を与え、溶接部の加工性を劣化させ、割れの発生原因にもなる。延性及び溶接部の靭性の面から、上限値は0.20質量%とした。
C:0.01〜0.20質量%
Cは鋼板の高強度化に有効な合金成分である。0.01質量%以上でCによる強化作用がみられる。しかし、過剰量のCの含有は、焼入れ性に対して大きな影響を与え、溶接部の加工性を劣化させ、割れの発生原因にもなる。延性及び溶接部の靭性の面から、上限値は0.20質量%とした。
Si:1.5質量%以下
強度向上に有効な合金成分であり、0.05質量%以上でSiの添加効果がみられる。しかし、1.5質量%を超えて添加すると、強度が上昇するものの冷間加工性や表面性状が劣化しやすい。
強度向上に有効な合金成分であり、0.05質量%以上でSiの添加効果がみられる。しかし、1.5質量%を超えて添加すると、強度が上昇するものの冷間加工性や表面性状が劣化しやすい。
Mn:2.5質量%以下
強度向上に寄与する合金成分であり、Mnによる強度改善効果は0.30質量%以上で見られ、Mn含有量が多いほど顕著になる。しかし、過剰量のMnの含有は溶接性を著しく劣化させる。さらに、Mnは焼入れ性を向上させる元素であり、C当量を増大させて溶接部の加工性を劣化させ、割れの原因にもなる。この点で、Mn含有量は低いほど好ましく、本成分系では上限値は2.5質量%とした。好ましくは1.0〜2.0質量%とする。
強度向上に寄与する合金成分であり、Mnによる強度改善効果は0.30質量%以上で見られ、Mn含有量が多いほど顕著になる。しかし、過剰量のMnの含有は溶接性を著しく劣化させる。さらに、Mnは焼入れ性を向上させる元素であり、C当量を増大させて溶接部の加工性を劣化させ、割れの原因にもなる。この点で、Mn含有量は低いほど好ましく、本成分系では上限値は2.5質量%とした。好ましくは1.0〜2.0質量%とする。
P:0.05質量%以下
0.05質量%を超えて含有させると低温靭性が低下する。そのため、P含有量は低いほど好ましく、本成分系では上限値を0.05質量%とした。好ましくは0.02質量%以下とする。
0.05質量%を超えて含有させると低温靭性が低下する。そのため、P含有量は低いほど好ましく、本成分系では上限値を0.05質量%とした。好ましくは0.02質量%以下とする。
S:0.02質量%以下
Sは熱間加工性,冷間加工性に有害な成分であることから、可能な限りその含有量を低減することが好ましい。通常不可避的に含有されるS:0.02質量%以下である限り、溶接鋼管の特性に悪影響は現れない。好ましくは0.005質量%以下とする。
Sは熱間加工性,冷間加工性に有害な成分であることから、可能な限りその含有量を低減することが好ましい。通常不可避的に含有されるS:0.02質量%以下である限り、溶接鋼管の特性に悪影響は現れない。好ましくは0.005質量%以下とする。
酸可溶Al:0.005〜0.10質量%
Alは、製鋼段階で脱酸剤として添加される合金成分である。十分な脱酸効果を得るためには、酸可溶Alとして0.005質量%以上の添加が必要である。Al脱酸効果は酸可溶Al:0.10質量%で飽和し、それ以上の添加は却って鋼材コストの上昇を招く。好ましくは、Al添加量を0.02〜0.04質量%の範囲とする。
Alは、製鋼段階で脱酸剤として添加される合金成分である。十分な脱酸効果を得るためには、酸可溶Alとして0.005質量%以上の添加が必要である。Al脱酸効果は酸可溶Al:0.10質量%で飽和し、それ以上の添加は却って鋼材コストの上昇を招く。好ましくは、Al添加量を0.02〜0.04質量%の範囲とする。
Ti:0.01〜0.15質量%
Tiは鋼中の固溶C,S及びNを析出物として固定する成分であり、析出強化により鋼板の高強度化に有効な成分である。析出物は、溶接熱影響部に導入された加工歪みの回復を抑制するとともに、溶接加熱時の固溶,再析出によって溶接熱影響部の軟化を防止する。また、NをTiNとして固定することにより、後述の有効B量の低減を防止する上でも有効な成分である。高強度化に及ぼすTiの添加効果は0.01質量%以上でみられるが、0.15質量%を超える過剰添加は、却って製造コストの上昇を招く。好ましくは0.01〜0.05質量%の範囲でTi含有量を選定する。
Tiは鋼中の固溶C,S及びNを析出物として固定する成分であり、析出強化により鋼板の高強度化に有効な成分である。析出物は、溶接熱影響部に導入された加工歪みの回復を抑制するとともに、溶接加熱時の固溶,再析出によって溶接熱影響部の軟化を防止する。また、NをTiNとして固定することにより、後述の有効B量の低減を防止する上でも有効な成分である。高強度化に及ぼすTiの添加効果は0.01質量%以上でみられるが、0.15質量%を超える過剰添加は、却って製造コストの上昇を招く。好ましくは0.01〜0.05質量%の範囲でTi含有量を選定する。
Nb:0.01〜0.10質量%
NbはTiと同様にCと反応して析出物を生成し、析出強化により鋼板の高強度化に有効な成分である。Nbはまた、金属組織を微細化して鋼材の強度を向上させる。さらに、溶接部においてはTiと同様に加工歪みの回復を抑制するとともに、溶接加熱時の固溶,再析出によって溶接熱影響部の軟化を防止する。Nbの添加効果は0.01質量%以上でみられるが、0.10質量%を超える過剰添加では、その効果は飽和し、製造コストの上昇を招く。好ましくは0.01〜0.05質量%の範囲でNb含有量を選定する。
NbはTiと同様にCと反応して析出物を生成し、析出強化により鋼板の高強度化に有効な成分である。Nbはまた、金属組織を微細化して鋼材の強度を向上させる。さらに、溶接部においてはTiと同様に加工歪みの回復を抑制するとともに、溶接加熱時の固溶,再析出によって溶接熱影響部の軟化を防止する。Nbの添加効果は0.01質量%以上でみられるが、0.10質量%を超える過剰添加では、その効果は飽和し、製造コストの上昇を招く。好ましくは0.01〜0.05質量%の範囲でNb含有量を選定する。
B:0.0005〜0.005質量%
Bは、本発明における特徴的な成分である。鋼材の焼入れ性を高めて、高強度化に極めて有効な成分である。また、Ti,Nbとの複合添加により、溶接熱影響部に導入された加工歪みの回復を抑制する効果を発揮し、溶接熱影響部の軟化部幅を狭くするとともに、軟化率も著しく小さくすることができる。
それらの効果は、0.0005質量%に満たないと認められず、0.005質量%を超えて含有させると強度は高くなるものの加工性が著しく低下する。したがって、B添加量は0.0005〜0.005質量%の範囲とする。好ましくは0.001〜0.003質量%の範囲である。
Bは、本発明における特徴的な成分である。鋼材の焼入れ性を高めて、高強度化に極めて有効な成分である。また、Ti,Nbとの複合添加により、溶接熱影響部に導入された加工歪みの回復を抑制する効果を発揮し、溶接熱影響部の軟化部幅を狭くするとともに、軟化率も著しく小さくすることができる。
それらの効果は、0.0005質量%に満たないと認められず、0.005質量%を超えて含有させると強度は高くなるものの加工性が著しく低下する。したがって、B添加量は0.0005〜0.005質量%の範囲とする。好ましくは0.001〜0.003質量%の範囲である。
Mo:0.01〜0.30質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、高強度化と溶接部の靭性向上に寄与する成分である。Moの添加効果は0.01質量%以上でみられる。性質改善効果は添加量が多いほど顕著であるが、0.30質量%の添加でその効果は飽和する。それ以上の添加は却って製造コストの上昇を招く。Moを添加する場合は0.01〜0.30質量%の範囲、好ましくは0.05〜0.1質量%の範囲で選定する。
必要に応じて添加される合金成分であり、高強度化と溶接部の靭性向上に寄与する成分である。Moの添加効果は0.01質量%以上でみられる。性質改善効果は添加量が多いほど顕著であるが、0.30質量%の添加でその効果は飽和する。それ以上の添加は却って製造コストの上昇を招く。Moを添加する場合は0.01〜0.30質量%の範囲、好ましくは0.05〜0.1質量%の範囲で選定する。
C当量:0.25〜0.6質量%
C当量は、溶接熱影響部の軟化抑制に大きな影響を及ぼす指標である。本発明では、Moを含まない場合には式(3)を、Moを含む場合には式(4)を用いてC当量を求める。C含有量が主要因子であるが、C以外にも強度向上のために添加するMn及びSi、軟化率と軟化部幅を著しく小さく抑えることに有効なBやMoの含有量も因子である。
前述のように、加工強化により高強度化した冷延鋼板に対し、溶接による入熱が加わると、溶接部近傍の熱影響部に顕著な溶接軟化域が生じることが問題である。このとき、軟化の程度はC当量が大きい材料ほど軟化率及び軟化幅が小さく抑えられるため、溶接鋼管の特性を満足させる上で、C当量は0.25質量%以上が必要である。しかし、0.6質量%を超えるほどに増加すると、溶接部が著しく硬化し、溶接部の加工性が著しく損なわれるばかりでなく、溶接割れの原因にもなる。そこで、C当量が0.25〜0.6質量%の範囲に調整されるように成分設計されることが好ましい。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B ・・・(3)
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B+1/4Mo ・・・(4)
C当量は、溶接熱影響部の軟化抑制に大きな影響を及ぼす指標である。本発明では、Moを含まない場合には式(3)を、Moを含む場合には式(4)を用いてC当量を求める。C含有量が主要因子であるが、C以外にも強度向上のために添加するMn及びSi、軟化率と軟化部幅を著しく小さく抑えることに有効なBやMoの含有量も因子である。
前述のように、加工強化により高強度化した冷延鋼板に対し、溶接による入熱が加わると、溶接部近傍の熱影響部に顕著な溶接軟化域が生じることが問題である。このとき、軟化の程度はC当量が大きい材料ほど軟化率及び軟化幅が小さく抑えられるため、溶接鋼管の特性を満足させる上で、C当量は0.25質量%以上が必要である。しかし、0.6質量%を超えるほどに増加すると、溶接部が著しく硬化し、溶接部の加工性が著しく損なわれるばかりでなく、溶接割れの原因にもなる。そこで、C当量が0.25〜0.6質量%の範囲に調整されるように成分設計されることが好ましい。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B ・・・(3)
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B+1/4Mo ・・・(4)
続いて、本発明の溶接鋼管の製造方法について簡単に説明する。
熱間圧延
熱間強度の安定化を図るためAr3変態点以上の仕上げ温度で熱間圧延した後、450℃以上600℃以下の温度域で巻取り、変態により高強度化させる。仕上げ温度がAr3変態点を下回ると、変態に伴う熱間強度の変動が大きく圧延方向に板厚が大きく変動するゲージハンチングや幅絞り等により板厚精度が劣化しやすい。巻取り温度が高いほど鋼帯の延性が向上するが、600℃を超える温度域で巻取ると鉄系炭化物の生成に起因して強度が著しく低下する。巻取り温度の低下に伴って強度は上昇するが、過度に低い450℃未満の温度で巻取ると低温変態相によって硬質化し、冷間圧延時の板厚精度や冷間圧延後の形状が劣化しやすくなる。
したがって、熱間圧延は、仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:450℃以上600℃以下の条件で行うことが好ましい。
熱間圧延
熱間強度の安定化を図るためAr3変態点以上の仕上げ温度で熱間圧延した後、450℃以上600℃以下の温度域で巻取り、変態により高強度化させる。仕上げ温度がAr3変態点を下回ると、変態に伴う熱間強度の変動が大きく圧延方向に板厚が大きく変動するゲージハンチングや幅絞り等により板厚精度が劣化しやすい。巻取り温度が高いほど鋼帯の延性が向上するが、600℃を超える温度域で巻取ると鉄系炭化物の生成に起因して強度が著しく低下する。巻取り温度の低下に伴って強度は上昇するが、過度に低い450℃未満の温度で巻取ると低温変態相によって硬質化し、冷間圧延時の板厚精度や冷間圧延後の形状が劣化しやすくなる。
したがって、熱間圧延は、仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:450℃以上600℃以下の条件で行うことが好ましい。
冷間圧延
酸洗後の冷間圧延では、加工強化によって鋼帯を高強度化するため冷延率を10%以上に設定することが好ましい。10%に満たないと強度の上昇が小さい。10%以上の冷延率は、板厚精度を確保する上でも有効である。しかし、冷延率の増加に応じて高強度化も進行するが、過度に大きな冷延率は製造コストの上昇を招くので冷延率の上限を75%に設定する。
このように、酸洗後の冷延は、冷延率:10〜75%で行うことが好ましい。
酸洗後の冷間圧延では、加工強化によって鋼帯を高強度化するため冷延率を10%以上に設定することが好ましい。10%に満たないと強度の上昇が小さい。10%以上の冷延率は、板厚精度を確保する上でも有効である。しかし、冷延率の増加に応じて高強度化も進行するが、過度に大きな冷延率は製造コストの上昇を招くので冷延率の上限を75%に設定する。
このように、酸洗後の冷延は、冷延率:10〜75%で行うことが好ましい。
造管工程
熱延板は、TiやNbが鋼中のC,N,S等を析出物として固定することによって析出強化されている。さらに冷間圧延工程において加工強化によって高強度化された冷延鋼帯は、焼鈍工程を経ずに所定幅に裁断され、造管ラインに送られる。造管ラインでは、鋼帯をロール成形又はロールレス成形してオープンパイプ状に加工し、高周波溶接等により鋼帯の幅方向両端部を接合することにより、所定直径の溶接鋼管を製造する。
熱延板は、TiやNbが鋼中のC,N,S等を析出物として固定することによって析出強化されている。さらに冷間圧延工程において加工強化によって高強度化された冷延鋼帯は、焼鈍工程を経ずに所定幅に裁断され、造管ラインに送られる。造管ラインでは、鋼帯をロール成形又はロールレス成形してオープンパイプ状に加工し、高周波溶接等により鋼帯の幅方向両端部を接合することにより、所定直径の溶接鋼管を製造する。
また、所定幅に裁断された鋼帯を長手方向に切断して切板とし、板巻き成形とTIG溶接,MIG溶接,レーザ溶接等の種々の溶接方法により切板の両端部を溶接して所定直径の単管を製造することもできる。
このとき、本発明に従う耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管とするためには、この造管工程の溶接の際に、得られる接合部の溶接金属近傍における溶接軟化部のΔHV×軟化部幅を150以下とする必要がある。ここで、前記したように、溶接軟化部のΔHVと軟化部幅を制御する具体的な手段のひとつがこの溶接の際の入熱量の調整であり、入熱量の調整は溶接電流や溶接速度の調整により行うことが一般的である。溶接電流が大きいほど、あるいは溶接速度が小さいほど溶接による入熱量は大きくなり、それに伴って溶接軟化部のΔHV及び軟化部幅は大きくなる。そこで、ΔHV×軟化部幅を150以下とするためには、溶接接合部に健全な溶接金属を形成できる入熱量を下回らない範囲で、できるだけ少ない入熱量で溶接を行うように溶接条件を選定する必要がある。
このとき、本発明に従う耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管とするためには、この造管工程の溶接の際に、得られる接合部の溶接金属近傍における溶接軟化部のΔHV×軟化部幅を150以下とする必要がある。ここで、前記したように、溶接軟化部のΔHVと軟化部幅を制御する具体的な手段のひとつがこの溶接の際の入熱量の調整であり、入熱量の調整は溶接電流や溶接速度の調整により行うことが一般的である。溶接電流が大きいほど、あるいは溶接速度が小さいほど溶接による入熱量は大きくなり、それに伴って溶接軟化部のΔHV及び軟化部幅は大きくなる。そこで、ΔHV×軟化部幅を150以下とするためには、溶接接合部に健全な溶接金属を形成できる入熱量を下回らない範囲で、できるだけ少ない入熱量で溶接を行うように溶接条件を選定する必要がある。
実施例1:
表1に示す成分組成の鋼スラブを1230℃に加熱し、Ar3変態点以上の温度で仕上げ圧延し、560℃で巻き取り、熱間圧延して板厚3.2mmの熱延鋼帯を製造した。各熱延鋼帯を酸洗した後、引き続き、圧延率10〜60%の冷間圧延を行って造管用鋼帯を用意した。
表1に示す成分組成の鋼スラブを1230℃に加熱し、Ar3変態点以上の温度で仕上げ圧延し、560℃で巻き取り、熱間圧延して板厚3.2mmの熱延鋼帯を製造した。各熱延鋼帯を酸洗した後、引き続き、圧延率10〜60%の冷間圧延を行って造管用鋼帯を用意した。
用意した造管用鋼帯のうち、鋼No.5とNo.10の圧延率60%の冷間圧延を施した試験片を用意し、平板状のまま溶接速度を変化させることにより溶接入熱を変化させ、入熱量に対する溶接軟化部のΔHV,軟化率,軟化部幅との関係を評価した。この際、溶接方法はMIG溶接法、溶接条件としては、電圧14V,電流70A,溶接速度は60〜85mm/分の範囲で変化させた。ここでは、溶接速度を変更することで入熱量を変化させたが、溶接電流によって行っても差し支えない。
なお、溶接熱影響部の軟化率,軟化部幅について、溶接部の断面を埋め込んで、JIS Z3101の「溶接熱影響部の最高硬さ試験方法」に準じて熱影響部の硬さをビッカース硬度計で測定し、次式により溶接軟化部のΔHV及び軟化率を求めた。また図1に示す関係を基準として軟化部幅を求めた。
溶接軟化部のΔHV=母材硬さ−溶接軟化部の硬さ
軟化率(%)=〔(母材硬さ−溶接軟化部の硬さ)/母材硬さ〕×100 ・・・(2)
その結果を表2に示した。
なお、溶接熱影響部の軟化率,軟化部幅について、溶接部の断面を埋め込んで、JIS Z3101の「溶接熱影響部の最高硬さ試験方法」に準じて熱影響部の硬さをビッカース硬度計で測定し、次式により溶接軟化部のΔHV及び軟化率を求めた。また図1に示す関係を基準として軟化部幅を求めた。
溶接軟化部のΔHV=母材硬さ−溶接軟化部の硬さ
軟化率(%)=〔(母材硬さ−溶接軟化部の硬さ)/母材硬さ〕×100 ・・・(2)
その結果を表2に示した。
表2に示す結果からもわかるように、溶接速度を遅くして材料への入熱量を増加させれば、材料によらず溶接軟化部のΔHV及び軟化率は大きくなる。また軟化部幅も大きくなる。このように、溶接条件は、溶接軟化部のΔHV×軟化部幅を制御する手段のひとつである。
また、同一の溶接条件で鋼No.5とNo.10に溶接を行った場合、No.5(本発明鋼)はNo.10(比較鋼)よりも溶接軟化部のΔHV,軟化率,軟化部幅のいずれの点でも小さい。このように鋼組成もΔHV×軟化部幅を制御する手段のひとつであり、本発明鋼は、溶接軟化部のΔHV,軟化率,軟化部幅を小さく抑えることができていることがわかる。
また、同一の溶接条件で鋼No.5とNo.10に溶接を行った場合、No.5(本発明鋼)はNo.10(比較鋼)よりも溶接軟化部のΔHV,軟化率,軟化部幅のいずれの点でも小さい。このように鋼組成もΔHV×軟化部幅を制御する手段のひとつであり、本発明鋼は、溶接軟化部のΔHV,軟化率,軟化部幅を小さく抑えることができていることがわかる。
一方、比較例の鋼No.10のようにΔHV,軟化率,軟化部幅が大きくなりやすい鋼では、ΔHV×軟化部幅≦150を満たす溶接条件を選定することが困難である。これは、次のような理由による。ΔHV,軟化率,軟化部幅が大きくなりやすい鋼であっても溶接による材料の入熱を少なくすればΔHV×軟化部幅を小さくすることは可能である。しかし溶接鋼管は管状に成形した冷延鋼板の端部同士をつき合わせ、溶接により接合して製造することから、入熱量が不足すると接合部の溶込みが不十分になり、健全な溶接金属が形成されないなどの不具合を生じる。したがって、健全な溶接部を形成させるために必要な入熱量を供給する溶接条件を採用すると、鋼の組成によっては溶接軟化部のΔHV×軟化部幅を150以下とする入熱量を上回ってしまうことがある。
すなわち、本発明の鋼組成を採用することと溶接条件を適正に選定することにより、溶接軟化部のΔHV×軟化部幅を150以下とすることが実現できる。
すなわち、本発明の鋼組成を採用することと溶接条件を適正に選定することにより、溶接軟化部のΔHV×軟化部幅を150以下とすることが実現できる。
実施例2:
次に、実施例1で用意した造管用鋼帯をスリットした後、ロール成形によりオープンパイプ状に加工し、鋼帯幅方向の両端部を溶接して直径31.8mmの溶接鋼管を製造した。この際、溶接方法はMIG溶接、溶接条件は、電圧14V,電流70A,溶接速度70mm/分とした。
溶接熱影響部のΔHV,軟化率及び軟化部幅を実施例1と同様の方法で求めた。ただし、鋼No.6から製造した溶接鋼管は、溶接部の断面を埋め込むために溶接鋼管を切断した際に溶接部から割れを生じた。このことは、C当量が大きい鋼No.6の素材は溶接部が脆いことを示している。
なお、冷間圧延して得られた鋼板について、JIS Z2201の5号試験片を用い、JIS Z2241に準じた室温での引張試験を行い、母材の引張強さを測定した。これらの結果を表3に示した。
次に、実施例1で用意した造管用鋼帯をスリットした後、ロール成形によりオープンパイプ状に加工し、鋼帯幅方向の両端部を溶接して直径31.8mmの溶接鋼管を製造した。この際、溶接方法はMIG溶接、溶接条件は、電圧14V,電流70A,溶接速度70mm/分とした。
溶接熱影響部のΔHV,軟化率及び軟化部幅を実施例1と同様の方法で求めた。ただし、鋼No.6から製造した溶接鋼管は、溶接部の断面を埋め込むために溶接鋼管を切断した際に溶接部から割れを生じた。このことは、C当量が大きい鋼No.6の素材は溶接部が脆いことを示している。
なお、冷間圧延して得られた鋼板について、JIS Z2201の5号試験片を用い、JIS Z2241に準じた室温での引張試験を行い、母材の引張強さを測定した。これらの結果を表3に示した。
表3の各試験片のうち、圧延率が60%である試験片(No.1,3,5,7,9,13,15,16,17,18)について、C当量と溶接軟化部の軟化率の関係を図2に示す。これらは、冷間圧延率が60%と高いために、いずれの試験片も引張強さが900N/mm2を超える高強度材である。
前述のように、加工強化により高強度化した冷延鋼板に対して溶接による入熱が加わると、溶接部近傍の熱影響部に顕著な溶接軟化域が生じる問題がある。このとき、本発明鋼であって、C当量が0.25〜0.6の範囲であれば、十分に高強度化した鋼板であっても軟化率を小さく抑えることができる。
前述のように、加工強化により高強度化した冷延鋼板に対して溶接による入熱が加わると、溶接部近傍の熱影響部に顕著な溶接軟化域が生じる問題がある。このとき、本発明鋼であって、C当量が0.25〜0.6の範囲であれば、十分に高強度化した鋼板であっても軟化率を小さく抑えることができる。
実施例3:
また、表3の各試験片のうち、圧延率が60%である試験片(No.1,3,5,7,9,13,15,16,17,18)について、造管用鋼帯を平板状のままで端面同士を付き合わせ溶接し、それからJIS5号試験片を切り出して溶接部付き引張試験片を作製した。溶接条件は、電圧14V,電流70A,溶接速度70mm/分のMIG溶接法とした。作製した溶接部付き引張試験片を用いて溶接部の引張強さを評価し、次式により引張強さの強度低下率を求めた。
強度低下率(%)=〔(冷延まま材の引張強さ−溶接部の引張強さ)/冷延まま材の引張強さ〕×100
また、疲労特性を評価するために、片振り引張疲労試験片を作製し、JIS Z3103の「アーク溶接継手の片振り引張疲れ試験方法」及びJIS Z2273「金属材料の疲れ試験方法通則」に準じて疲れ限度を測定し、疲れ限度比を求め、疲れ限度比0.5以上を合格とした。このように評価した溶接部の強度低下率と疲れ限度比を表4に示した。また、ΔHV×軟化部幅と疲れ限度比の関係を図3に示した。
なお、試験片No.10(鋼No.6)は溶接部が脆く加工性に乏しいため、強度低下率及び疲れ限度比の評価は行わなかった。
また、表3の各試験片のうち、圧延率が60%である試験片(No.1,3,5,7,9,13,15,16,17,18)について、造管用鋼帯を平板状のままで端面同士を付き合わせ溶接し、それからJIS5号試験片を切り出して溶接部付き引張試験片を作製した。溶接条件は、電圧14V,電流70A,溶接速度70mm/分のMIG溶接法とした。作製した溶接部付き引張試験片を用いて溶接部の引張強さを評価し、次式により引張強さの強度低下率を求めた。
強度低下率(%)=〔(冷延まま材の引張強さ−溶接部の引張強さ)/冷延まま材の引張強さ〕×100
また、疲労特性を評価するために、片振り引張疲労試験片を作製し、JIS Z3103の「アーク溶接継手の片振り引張疲れ試験方法」及びJIS Z2273「金属材料の疲れ試験方法通則」に準じて疲れ限度を測定し、疲れ限度比を求め、疲れ限度比0.5以上を合格とした。このように評価した溶接部の強度低下率と疲れ限度比を表4に示した。また、ΔHV×軟化部幅と疲れ限度比の関係を図3に示した。
なお、試験片No.10(鋼No.6)は溶接部が脆く加工性に乏しいため、強度低下率及び疲れ限度比の評価は行わなかった。
表4に示すように、本発明鋼の溶接部は、比較鋼と比べて溶接軟化部のΔHV×軟化部幅が小さく、溶接部の強度低下も小さい。また、比較鋼と比べて疲労限度比は高い水準を示しており、本発明鋼による溶接部の耐疲労特性が優れていることが分かる。
このように、加工強化を適用した素材を用いる場合でも、本発明により、耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管を得ることができる。
このように、加工強化を適用した素材を用いる場合でも、本発明により、耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管を得ることができる。
Claims (3)
- オープンパイプ状に成形した冷延鋼板の端部同士を溶接により接合して製造した溶接鋼管であって、前記接合部の溶接金属の近傍における溶接軟化部のΔHV及び軟化部幅をそれぞれ次の(1)式,(2)式のように定義するとき、溶接軟化部のΔHV×軟化部幅≦150であることを特徴とする耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管。
溶接軟化部のΔHV=母材硬さ−溶接部最軟化部の硬さ ・・・(1)
軟化部幅=溶接の入熱によって母材より硬さが軟化した部分の幅(mm) ・・・(2) - 冷延鋼板が、C:0.01〜0.20質量%,Si:1.5質量%以下,Mn:2.5質量%以下,P:0.05質量%以下,S:0.02質量%以下,酸可溶Al:0.005〜0.10質量%,B:0.0005〜0.005質量%,Ti:0.01〜0.15質量%,及びNb:0.01〜0.10質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記(3)式で定義されるC当量が0.25〜0.6質量%になるように調整された成分組成を有する冷延鋼板である請求項1に記載の耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B ・・・(3) - 冷延鋼板が、C:0.01〜0.20質量%,Si:1.5質量%以下,Mn:2.5質量%以下,P:0.05質量%以下,S:0.02質量%以下,酸可溶Al:0.005〜0.10質量%,B:0.0005〜0.005質量%,Ti:0.01〜0.15質量%,Nb:0.01〜0.10質量%,及びMo:0.01〜0.30質量%を含有し、かつ下記(4)式で定義されるC当量が0.25〜0.6質量%になるように調整された成分組成を有する冷延鋼板である請求項1に記載の耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+5B+1/4Mo ・・・(4)
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JP2007026343A JP2008188641A (ja) | 2007-02-06 | 2007-02-06 | 耐溶接軟化性及び疲労特性に優れた高強度溶接鋼管 |
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CN102102162A (zh) * | 2009-12-22 | 2011-06-22 | 鞍钢股份有限公司 | 一种大线能量焊接热影响区低m-a含量的钢板 |
JP2015209560A (ja) * | 2014-04-25 | 2015-11-24 | 新日鐵住金株式会社 | フルハード冷延鋼板 |
JP2018062712A (ja) * | 2017-12-15 | 2018-04-19 | 新日鐵住金株式会社 | フルハード冷延鋼板 |
-
2007
- 2007-02-06 JP JP2007026343A patent/JP2008188641A/ja not_active Withdrawn
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