JP2008173606A - 触媒材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】活性種を高密度で担持することで、優れた触媒特性を有し、燃料電池の電極等として実用性のある触媒材料を提供する。
【解決手段】導電性材料表面に、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子が物理的に吸着しているか、又は該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合させた多核錯体分子が被覆しており、更に該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子の吸着層又は該多核錯体分子の被覆層に触媒金属が配位していることを特徴とする触媒材料。
【選択図】図1
【解決手段】導電性材料表面に、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子が物理的に吸着しているか、又は該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合させた多核錯体分子が被覆しており、更に該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子の吸着層又は該多核錯体分子の被覆層に触媒金属が配位していることを特徴とする触媒材料。
【選択図】図1
Description
本発明は、触媒材料及びその製造方法に関する。特に、活性種を高密度で担持することによって、触媒活性が高く、燃料電池の触媒として好適な触媒材料及びその製造方法に関する。
近年電極触媒として、ポルフィリン、クロロフィル、フタロシアニン、テトラアザアヌレン、シッフ塩基などの大環状化合物やその誘導体で表面修飾した電極系に関する研究が多数行われている。そして、これらの電極触媒による分子状酸素(O2)の電気化学的な多電子還元特性を利用して、リン酸型、固体高分子型などといった(酸素−水素)燃料電池カソードでの白金(Pt)およびその合金に代わる電極触媒としての応用が期待されている(下記非特許文献1参照)。
しかしながら、上記大環状化合物を利用した電極系の触媒活性は、燃料電池に使用するためには十分ではなく、更に優れた触媒特性を有し、実用性のある触媒材料の開発が求められている。
「表面技術」、第46巻、第4号、第19〜26頁、及び"POLYMERS FOR ADVANCED TECHNOLOGYS"、No.12、P.266−270(2001)
本発明は、特定の活性種を担持することで、優れた触媒特性を有し、特に燃料電池の電極等として実用性のある触媒材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、まず、大環状化合物で触媒活性が上がらない理由を検討した。その結果、大環状化合物では、触媒担体に担持させる際に、低密度となってしまい、活性が低下するのではないかとの推論に達した。そしてこの検討から、複素単環式化合物またはこれから導かれる多核高分子で触媒担体を被覆すれば、触媒金属を配位するM−N4構造が多く形成され、活性の高い触媒材料が得られるとの知見を得た。
そこで、本発明者らは、多核高分子で被覆された導電性材料の、特定の重合性モノマー、又は該モノマーの重合物である多核高分子を重合性配位子とし、配位部分に触媒金属を配位せしめた触媒材料によって上記課題が解決されることを見出し本発明に到達した。
更に、研究の結果、前記重合性配位子を特定の条件(印加電圧、溶媒、支持電解質)で電解重合されたものである場合に、活性種の担持密度が高く、触媒活性の向上が著しいことを見出し本発明に到達した。又、担体となる導電性材料の特性を検討し、特定の比表面積と平均粒径を有する場合に、触媒活性の向上が著しいことを見出し本発明に到達した。又、前記電解重合及び/又は触媒金属の配位(メタレーション)を複数回繰り返すことが、活性種の担持密度を高くし、触媒活性を向上させることに有効であることを見出し本発明に到達した。又、前記電解重合及び/又は触媒金属の配位(メタレーション)を複数回繰り返す際に、補助配位子を用いることが配位性を向上させることに有効であることを見出し本発明に到達した。更に、被覆層に配位される触媒金属が貴金属と遷移金属を同時に配位されたものである場合に、触媒活性の向上が著しいことを見出し本発明に到達した。
即ち、第1に、本発明は、触媒材料の発明であり、導電性材料表面に、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子が物理的に吸着しているか、又は該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合させた多核錯体分子が被覆しており、更に該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子の吸着層又は該多核錯体分子の被覆層に触媒金属が配位していることを特徴とする。
前記電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子としては、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基との組み合わせにより各種化合物を用いることが出来る。これらの中で、複素環としてピロール、該複素環に結合する電子吸引性基としてピリジンを選択した、2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)が好ましく例示される。
第2に、本発明は、上記触媒材料の製造方法の発明であり、導電性材料表面を、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子で物理的に吸着させるか、又は該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合させた多核錯体分子で被覆させた後、該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子の吸着層又は該多核錯体分子の被覆層に触媒金属を配位させることを特徴とする。
前記電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子として、2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)が好ましく例示されることは上述の通りである。
本発明では、前記触媒金属の配位工程の後、不活性ガス中400〜800℃で焼成することが触媒活性向上のため好ましい。
本発明では、導電性材料表面を、2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)を電解重合させた多核錯体分子で被覆する電解重合工程において、該電解重合の印加電位を0.8〜1.5Vとすることが好ましい。
本発明では、導電性材料表面を、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合させて、該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子から導かれた多核高分子で被覆する電解重合工程と、該多核高分子の被覆層に触媒金属を配位させて多核錯体分子とするメタレーション工程とを有する触媒材料の製造方法において、該電解重合工程及び/又は該メタレーション工程を1回行なうことも複数回以上行なうことも出来る。電解重合工程及び/又は該メタレーション工程を複数回以上行なうことによって、活性種の担持密度を高くすることができ、この結果、触媒活性を向上させることができる。
本発明では、前記触媒金属を配位するに際して、触媒金属としては、各種触媒分野で公知の貴金属や遷移金属を用いることが出来るが、貴金属と遷移金属を同時に配位させることによって触媒活性を向上させることが出来る。具体的には、前記貴金属としてパラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)から選択される1種以上が、前記遷移金属としてコバルト(Co)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)から選択される1種以上が好ましく例示される。
本発明では、前記触媒金属を配位した後、熱処理(焼成)を施すと触媒活性の向上に有効である。熱処理(焼成)により触媒活性を大幅に向上させることができる。具体的な熱処理(焼成)条件は触媒成分と加熱温度で変化するが、例えば、400〜700℃で2〜4時間が好ましく例示される。
本発明では、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子の吸着層又は該多核錯体分子の被覆層に触媒金属を配位させる際に、前記触媒金属に補助配位子として低分子複素環化合物を配位させることは、触媒の配位性を高め、活性種である多核配位分子の担持密度を向上させることに効果的である。
本発明において、『補助配位子』とは、「複素単環式化合物から導かれた多核高分子」が触媒金属に配位するのを補助して、より完全に該触媒金属を配位する作用を有する低分子化合物であり、低分子複素環化合物が好ましく上げられる。補助配位子を用いることで、より触媒活性を向上させることが出来る。例えば、前記触媒金属に更に補助配位子として低分子複素環化合物である窒素含有低分子化合物を配位させることは、触媒金属の配位を促進する上で好ましい。ここで、前記窒素含有低分子化合物としては各種化合物が用いられる。ここで、前記低分子複素環化合物としては各種化合物が用いられる。この中で、異項原子として1個の窒素原子を有するピリジン、及び異項原子として2個の窒素原子を有するフェナントロリンが好ましく例示される。
第3に、本発明は、上記触媒材料からなる燃料電池用触媒である。本発明の触媒材料に採用される貴金属としては特に限定されず、燃料電池用触媒として公知のものが用いられる。又、貴金属と遷移金属も用いられる。例えば、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)から選択される1種以上であり、前記遷移金属がコバルト(Co)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)から選択される1種以上である場合が好ましく例示される。この中で、貴金属がイリジウム(Ir)であり、遷移金属がコバルト(Co)である組み合わせ、貴金属がロジウム(Rh)であり、遷移金属がコバルト(Co)である組み合わせ、及び貴金属がパラジウム(Pd)であり、遷移金属がコバルト(Co)である組合せが特に好ましい。
第4に、本発明は、上記触媒材料を燃料電池用触媒として含む燃料電池である。
本発明において、前記電解重合性を有する複素環としては複素単環式化合物が例示され、その中でも、ピロール、ジメチルピロール、ピロール−2−カルボキシアルデヒド、ピロール−2−アルコール、ビニルピリジン、アミノ安息香酸、アニリン及びチオフェンを基本骨格とする単環性化合物が好ましく例示される。又、これら電解重合性を有する複素環を電解重合することによって得られる多核高分子部として、ポリピロール錯体、ポリビニルピリジン錯体、ポリアニリン錯体またはポリチオフェン錯体が好ましく例示される。電解重合性を有する複素環を電解重合する手法は種々の公知文献によって知られている。
本発明において、前記電解重合性を有する複素環としては複素単環式化合物が例示され、その中でも、ピロール、ジメチルピロール、ピロール−2−カルボキシアルデヒド、ピロール−2−アルコール、ビニルピリジン、アミノ安息香酸、アニリン及びチオフェンを基本骨格とする単環性化合物が好ましく例示される。又、これら電解重合性を有する複素環を電解重合することによって得られる多核高分子部として、ポリピロール錯体、ポリビニルピリジン錯体、ポリアニリン錯体またはポリチオフェン錯体が好ましく例示される。電解重合性を有する複素環を電解重合する手法は種々の公知文献によって知られている。
本発明では、前記電解重合工程は公知の各種溶媒中で行なうことが好ましい。この中で、水−メタノール又は水−エタノール混合溶媒中で行なうことが特に好ましい。
又、前記電解重合工程を、NH4ClO4又はPTSを支持電解質として用いて行なうことが好ましい。
本発明において、触媒材料の担体となる前記導電性材料は、比表面積が500〜2000m2/gであることが好ましく、800〜1500m2/gであることがより好ましい。又、前記導電性材料の平均粒径が3〜30nmであることが好ましく、3〜10nmであることがより好ましい。
本発明の触媒材料の製造方法において、前記メタレーション工程の後、熱処理を施す工程を有することも好ましい。
本発明において、貴金属と遷移金属を同時に配位させた触媒である場合は、前記触媒金属を有する触媒材料中の貴金属含有量が20〜60wt%であることが好ましい。この範囲で触媒の活性性能の向上が見られる。
本発明において、前記複合化された触媒金属を有する触媒材料の原料が、高純度化されていることが好ましい。触媒材料の原料を高純度化することにより、触媒活性が大幅に向上する。触媒材料の原料を高純度化の具体的方法としては、例えば、パラジウム原料として酢酸パラジウムを原料として用い、公知の物理的または化学的手法により、この酢酸パラジウムの純度を上げれば良い。触媒材料の原料を高純度化により触媒活性が大幅に向上することの理由は必ずしも明らかではないが、活性点を形成するN、Co、Pd等の表面組成、特にPdの導入量が大幅に向上することが原因であると考えられる。
本発明において、前記導電性材料として、金属、半導体、炭素系化合物及び導電性高分子が好ましく例示される。
本発明の触媒材料には、上記の触媒金属の他に、第2金属及び/又はそのイオンを更に含むことが好ましい。又、本発明の触媒材料には、アニオンをドープすることも活性を向上させるうえで好ましい。
本発明の触媒材料の形状は制限されず、例えば、粒状物、ファイバー状物、中空状物またはコーン・ホーン状物であることができる。
本発明の触媒材料は、触媒金属を特定の化合物に配位させて高密度で担持させたものであり、優れた触媒活性を有するとともに、燃料電池用触媒として用いた場合に発電性能を向上させることができる。
本発明の触媒材料は、導電性材料の表面へ電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を物理吸着させ、その配位部分に触媒金属を配位したものである。
また、本発明の触媒材料は、導電性材料の表面を電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合して得られた多核高分子で被覆し、その配位部分に触媒金属を配位したものである。
電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子としては、Co等への強い配位性を有する複素単環式化合物であるピリジンと電解重合性を有するピロールが結合した2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)が好ましく例示される。
本発明の触媒材料に使用される導電性材料としては、例えば、白金、金、銀、ステンレス等の金属、シリコン等の半導体、グラッシーカーボン、カーボンブラック、グラファイト、活性炭等の炭素系材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子が挙げられるが、入手のしやすさや価格、その重量等から、グラッシーカーボン、カーボンブラック、グラファイト、活性炭等の炭素系化合物を導電性材料として用いることが好ましい。また、その導電性材料の形状としては、板状、棒状等のものであっても良いが、表面積が多くなる点から、粒状物、ファイバー状物、中空状物またはコーン・ホーン状物が好ましい。
このうち粒状物は、特に、3〜30nmの平均粒径のものが好ましく、3〜10nmの平均粒径のものがより好ましい。また、ファイバー状物、中空状物およびコーン・ホーン状物は、それぞれカーボンファイバー(フィラー)、カーボンナノチューブおよびカーボンナノホーンが好ましい。
一方、導電性材料を被覆する多核高分子は、複素単環式化合物から導かれたものである。原料として使用される複素単環式化合物としては、ピロール、ビニルピリジン、アニリン、チオフェン等を基本骨格とする単環性化合物が挙げられる。より具体的には、ピロール、ジメチルピロール、ピロール−2−カルボキシアルデヒド、ピロール−2−アルコール、ビニルピリジン、アニリン、アミノ安息香酸、チオフェン等が複素単環式化合物として使用される。
また、多核高分子の配位部分に配位される触媒金属としては、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)等から選択される1種以上の貴金属が挙げられ、また、これら貴金属と複合化される、コバルト、鉄、モリブデン、クロム、イリジウム等から選択される1種以上の遷移金属が挙げられる。
電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子から多核高分子を導き、これで導電性材料を被覆する方法としては、電解重合法を利用することができる。電解重合法としては、導電性材料上に複素単環式化合物を電解重合させて多核高分子で被覆し、これに触媒金属を作用させて、この多核高分子の配位部分(含窒素化合物錯体であれば、M−N4構造部分)に触媒金属を担持せしめる方法である。
複素単環式化合物を導電性材料上に電解重合させるにあたり、導電性材料が一般の板状物や棒状物であれば従来の電解重合の装置、条件に準じて実施することができるが、導電性材料が微細な粒状物、ファイバー状物、中空状物、コーン・ホーン状物を用いる場合は、流動床電極電解重合装置を使用することが効果的である。
電解重合により得られた多核高分子で被覆された導電性粒子(以下、「被覆粒子」という)に、触媒金属を含有する溶液を作用させるには、例えば、触媒金属を溶解した適当な溶液に被覆粒子を懸濁させ、不活性気体条件下で加熱還流すれば良い。
本発明で用いる配位物は、触媒金属原子に対し、複素単環式化合物の有する異項原子(ピロール、アニリンの場合は窒素原子、チオフェンの場合は硫黄原子)が配位した形状である。この配位物を導電性材料上に物理吸着させることにより、触媒金属を担持した重合性配位子と触媒金属が電導性材料表面を物理吸着して被覆するのである。また、この配位物を導電性材料上に電解重合させることにより、触媒金属を担持した多核高分子からなる多核錯体分子が電導性材料表面を被覆するのである。
上記配位物を導電性材料上に電解重合させるにあたり、導電性材料が一般の板状物や棒状物であれば従来の電解重合の装置、条件に準じて実施することができるが、導電性材料が微細な粒状物、ファイバー状物、中空状物、コーン・ホーン状物を用いる場合は、前記と同様流動床電極電解重合装置を使用することが必要となる。流動床電極電解重合装置を使った電解重合の方法も、溶媒として上記配位物を溶解可能なものを選択する以外は、前記とほぼ同様にして実施することができる。この中で、水−メタノール又は水−エタノールからなる混合溶媒が好適である。
なお、理想的には、1個の触媒金属を4個の複素環中の窒素原子やイオウ原子が配位する。実際の重合性配位子や重合性配位子から導かれた多核高分子では、その分子の集合性、曲がり具合、立体障害などの理由で、1個の金属に必ず4個の複素環中の窒素原子やイオウ原子が配位するとは限らない。そこで、反応系に低分子複素環化合物を添加すると、1個の金属に3個や2個の窒素原子やイオウ原子しか配位していなくても、これら低分子複素環化合物が補助配位子として作用して金属に補助的に配位させることが可能となる。
以上のようにして得られる、本発明の触媒金属を配位した重合性配位子や重合性配位子からなる多核錯体で被覆された触媒材料は、従来のポルフイリンなどの大環状化合物等で表面修飾した電極材料に比べ優れた触媒活性を有するものであり、白金や白金系合金に代わる触媒として、例えば、各種燃料電池のカソードの電極触媒として使用できるものである。
すなわち、燃料電池のカソード(酸素極または空気極)の電極触媒材料に求められるのは、下記のような酸素還元反応に対して触媒作用があり、促進することである。具体的には、酸素(O2)、プロトン(H+)および電子(e-)が供給された時に、下記反応式(1)で表される酸素の4電子還元または反応式(2)および反応式(3)で表される酸素の2+2電子還元の酸素還元反応が、効果的な貴な電位で、触媒されて促進することである。
<酸素の4電子還元>
触媒
O2 + 4H+ + 4e- ―→ 2H2O (1)
<酸素の2+2電子還元>
触媒
O2 + 2H+ + 2e- ―→ H2O2 (2)
触媒
H2O2 + 2H+ + 2e- ―→ 2H2O (3)
<酸素の4電子還元>
触媒
O2 + 4H+ + 4e- ―→ 2H2O (1)
<酸素の2+2電子還元>
触媒
O2 + 2H+ + 2e- ―→ H2O2 (2)
触媒
H2O2 + 2H+ + 2e- ―→ 2H2O (3)
本発明では、後記するように、回転ディスク電極(RDE)測定よりクリックボルタンメトリー(CV)で酸素還元のピーク電位が、0.54V vs.SCEであり、反応電子数が4に近い。これは、現在燃料電池のカソード(酸素極または空気極)の電極触媒材料として使用されている白金およびその合金の触媒性能に匹敵するものである。よって、本発明の触媒材料が燃料電池のカソード(酸素極または空気極)の電極触媒材料として使用可能なことは明らかである。
以上のようにして得られる、本発明に係る触媒材料は、その他の金属元素として、第2金属及び/又はそのイオンを含むものであることが好ましい。ここで、第2金属及び/又はそのイオンとしては、例えば、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金、金及び水銀等を使用することができるが、なかでもニッケル(Ni)を使用することが好ましい。第2金属及び/又はそのイオンを含む触媒材料は、多核錯体分子が構成する配位部分にコバルト等の触媒金属を配位せしめる際に、第2金属及び/又はそのイオンを添加することによって製造することができる。例えば、複素単環式化合物で被覆された導電性材料と酢酸コバルトと酢酸ニッケルとをメタノール溶液中で還流することによって、本発明に係る第2金属及び/又はそのイオンを含む触媒材料を製造することができる。
本発明に係る触媒材料が第2金属及び/又はそのイオンをさらに含むことによって、触媒材料の酸化還元性能をより向上させることができる。したがって、第2金属及び/又はそのイオンを含む触媒材料は、燃料電池等に使用する際に要求される触媒特性を十分に有し、実用性のあるものとなる。
さらに、本発明に係る触媒材料を製造する際には、重合性配位子や重合性配位子から導かれた多核高分子が構成する配位部分に触媒金属を配位せしめた触媒材料に対して熱処理(焼成)を施すことが好ましい。また、熱処理(焼成)は不活性ガス雰囲気中で施すことがより好ましい。
具体的には、上述したように、導電性材料上に重合性配位子を物理吸着させた後、又は重合性配位子を電解重合させて多核高分子で被覆した後、これに触媒金属を作用させて被覆層に触媒金属を配位させることで多核錯体分子からなる触媒材料を製造する。この方法の場合、触媒金属を配位させた後、熱処理(焼成)を施すことが好ましい。
本熱処理(焼成)は、例えば、当初温度(通常は常温)から昇温し、設定の温度を所定の時間維持した後、徐々に冷却するような処理である。ここで、本熱処理(焼成)における処理温度とは、所定の時間維持する設定温度のことを意味する。一例としては、当初温度を維持している間にセル内を排気して所望の圧力とし、5℃/minの昇温速度で設定温度T(T=約400〜700℃)まで昇温し、設定温度Tで約2〜4時間維持し、その後、約2時間かけて室温まで冷却する処理を挙げることができる。
このように、触媒材料に対して熱処理(焼成)を施すことによって、触媒材料の酸化還元性能をより向上させることができる。したがって、熱処理(焼成)を施した触媒材料は、燃料電池等に使用する際に要求される触媒特性を十分に有し、実用性のあるものとなる。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
[実施例1:重合性配位子2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)の電解重合]
図1に示すフローに従って、「Co−N4構造」の高密度化を目的として、Coへの強い配位性を有するピリジンと重合性を有するピロールが結合した重合性配位子である2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)を用いて触媒材料を作製した。
図1に示すフローに従って、「Co−N4構造」の高密度化を目的として、Coへの強い配位性を有するピリジンと重合性を有するピロールが結合した重合性配位子である2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)を用いて触媒材料を作製した。
(1)「電解重合」
2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)1.4gと炭素粒子(Ketjen)1gを、支持電解質としてLiClO4を0.1M含むDMF溶媒200mlに溶かした。30分間アルゴン脱気した後、流動床電極を用いて印加電圧1.0Vの定電位法で45分間電解重合を行い、ポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)被覆炭素粒子を得た。
なお、用いた2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)量はKetjenの表面積(800m2/g)に隙間無くポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)がつくと仮定した量の10倍量である。
2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)1.4gと炭素粒子(Ketjen)1gを、支持電解質としてLiClO4を0.1M含むDMF溶媒200mlに溶かした。30分間アルゴン脱気した後、流動床電極を用いて印加電圧1.0Vの定電位法で45分間電解重合を行い、ポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)被覆炭素粒子を得た。
なお、用いた2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)量はKetjenの表面積(800m2/g)に隙間無くポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)がつくと仮定した量の10倍量である。
(2)「メタレーション」
上記(1)により得たポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)被覆炭素粒子について、次のようにしてコバルト金属を担持させた。すなわち、200mlのナス型フラスコに、ポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)被覆炭素粒子を2g、酢酸コバルト4.08gを取り、更にDMFまたはメタノールを入れた。30分間アルゴン脱気を行った後、2時間還流を行った。更に、吸引濾過により固形物を濾取し、120℃で3時間減圧乾燥してコバルト−ポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)電解重合膜錯体で被覆された炭素粒子(触媒粒子)を得た。
上記(1)により得たポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)被覆炭素粒子について、次のようにしてコバルト金属を担持させた。すなわち、200mlのナス型フラスコに、ポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)被覆炭素粒子を2g、酢酸コバルト4.08gを取り、更にDMFまたはメタノールを入れた。30分間アルゴン脱気を行った後、2時間還流を行った。更に、吸引濾過により固形物を濾取し、120℃で3時間減圧乾燥してコバルト−ポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)電解重合膜錯体で被覆された炭素粒子(触媒粒子)を得た。
(3)「焼成」
上記(2)により得たコバルト錯体のポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)電解重合膜で被覆された炭素粒子(触媒粒子)を、アルゴンガス雰囲気下、600℃で2時間加熱処理をした。
上記(2)により得たコバルト錯体のポリ2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)電解重合膜で被覆された炭素粒子(触媒粒子)を、アルゴンガス雰囲気下、600℃で2時間加熱処理をした。
熱処理をした触媒材料を用いて、サイクリックボルタンメトリー(CV)及び回転ディスク電極(RDE)測定を行い、ピーク電位及びピーク電流密度を測定した。
なお、本測定は、次の条件で行った。
[CV(サイクリックボルタンメトリー)およびRDE]
(回転ディスク電極)測定:
測定装置:
ポテンショスタット[日厚計測DPGS−1]
ファンクションジェネレーター[日厚計測NFG−5]
X−Yレコーダー[理研電子D−72DG]
作用極:
エッジ面パイロリティックグラファイト(EPG)電極
参照極:
飽和カロメル電極(SCE)
対 極:
白金線
支持電解質: 1.0M HClO4 水溶液
掃引範囲: 600〜−600mV
掃引速度:100mV/sec(CV),10mV/sec(RDE)
回転速度:100,200,400,600,900rpm(RDE)
なお、本測定は、次の条件で行った。
[CV(サイクリックボルタンメトリー)およびRDE]
(回転ディスク電極)測定:
測定装置:
ポテンショスタット[日厚計測DPGS−1]
ファンクションジェネレーター[日厚計測NFG−5]
X−Yレコーダー[理研電子D−72DG]
作用極:
エッジ面パイロリティックグラファイト(EPG)電極
参照極:
飽和カロメル電極(SCE)
対 極:
白金線
支持電解質: 1.0M HClO4 水溶液
掃引範囲: 600〜−600mV
掃引速度:100mV/sec(CV),10mV/sec(RDE)
回転速度:100,200,400,600,900rpm(RDE)
測定方法:
錯体単独でのCV測定では、錯体20mgをメタノール10mlに溶かし、そこから10μlをエッジ面パイロリティックグラファイト(EPG)電極上にキャストし、さらにナフィオンと2−プロパノールの混合溶液を8μlキャストしたものを電極として測定した。
錯体単独でのCV測定では、錯体20mgをメタノール10mlに溶かし、そこから10μlをエッジ面パイロリティックグラファイト(EPG)電極上にキャストし、さらにナフィオンと2−プロパノールの混合溶液を8μlキャストしたものを電極として測定した。
また各処理を施した炭素系粒子は、その20mgをナフィオン溶液250μl中に分散させ、そこから20μlをEPG電極上にキャストしたものを電極として測定した。
表1に、実施例1の結果を示す。
表1の結果より、「Co−N4構造」の高密度化を目的として、多核高分子にCoへの強い配位性を有するピリジンと重合性を有するピロールが結合した重合性配位子である2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)を用いた、燃料電池カソード触媒は,調製条件(金属配位時の溶媒、焼成有無)を検討することにより、酸素還元電位及び電流密度が高くなり、高活性な触媒を得ることができることが分かる。
現時点で詳細性能向上メカニズムは不明であるが,Coへの強い配位性を有するピリジンと重合性を有するピロールが結合した重合性配位子である2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)を用いることにより、活性種を高密度に担持できている可能性がある。
[実施例2:重合性配位子2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)の非重合使用]
[Co−N4構造]の高密度化を目的として、多核錯体分子として、Coへの強い配位性を示すピリジンと電解重合性を示すピロールが結合した重合性配位子2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)をカーボン担体に物理吸着させ、酸素還元活性を発現させた。これを用いて燃料電池カソード触媒を調製した。
表2に、実施例2の結果を示す。
[Co−N4構造]の高密度化を目的として、多核錯体分子として、Coへの強い配位性を示すピリジンと電解重合性を示すピロールが結合した重合性配位子2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)をカーボン担体に物理吸着させ、酸素還元活性を発現させた。これを用いて燃料電池カソード触媒を調製した。
表2に、実施例2の結果を示す。
表2の結果より、重合性配位子2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)をカーボン担体に物理吸着させことにより、触媒活性を示すピーク電位が、重合性配位子2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)(pyPy)をカーボン担体に電解重合させる場合と比べても格段に優れているとともに、反応速度を示すピーク電流密度が焼成無しと比べても格段に優れていることが分かる。
本発明によって、上記の優れた触媒活性性能が向上する理由は現時点では必ずしも明確ではないが、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を用いることにより、活性種である触媒金属を高密度に担体に担持できることが原因ではないかと考えられる。上記実施例2では、Co等への強い配位性を有する複素単環式化合物であるピリジンと電解重合性を有するピロールが結合した2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)が活性種であるCoを高密度に担体に担持できるものと考えられる。
本発明の触媒材料は、触媒金属を特定の化合物に配位させて高密度で担持させたものであり、優れた触媒活性を有するとともに、燃料電池用触媒として用いた場合に発電性能を向上させることができる。これにより、本発明は、燃料電池の普及に貢献する。
Claims (14)
- 導電性材料表面に、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子が物理的に吸着しているか、又は該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合させた多核錯体分子が被覆しており、更に該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子の吸着層又は該多核錯体分子の被覆層に触媒金属が配位していることを特徴とする触媒材料。
- 前記電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子が2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)であることを特徴とする請求項1に記載の触媒材料。
- 導電性材料表面を、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子で物理的に吸着させるか、又は該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合させた多核錯体分子で被覆させた後、該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子の吸着層又は該多核錯体分子の被覆層に触媒金属を配位させることを特徴とする触媒材料の製造方法。
- 前記電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子が2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)であることを特徴とする請求項3に記載の触媒材料の製造方法。
- 前記触媒金属の配位工程の後、不活性ガス中400〜800℃で焼成することを特徴とする請求項3又は4に記載の触媒材料の製造方法。
- 前記導電性材料表面を、2−(1H−ピロール−3−イルピリジン)を電解重合させた多核錯体分子で被覆する電解重合工程において、該電解重合の印加電位を0.8〜1.5Vとすることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の触媒材料の製造方法。
- 導電性材料表面を、電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子を電解重合させて、該電解重合性を有する複素環と該複素環に結合する電子吸引性基を有する重合性配位子から導かれた多核高分子で被覆する電解重合工程と、該多核高分子の被覆層に触媒金属を配位させて多核錯体分子とするメタレーション工程とを有する触媒材料の製造方法において、該電解重合工程及び/又は該メタレーション工程を複数回以上行なうことを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の触媒材料の製造方法。
- 前記触媒金属を配位するに際して、貴金属と遷移金属を同時に配位させるものであることを特徴とする請求項3乃至7に記載の触媒材料の製造方法。
- 前記触媒金属を配位した後、熱処理を施す工程を有することを特徴とする請求項3乃至8のいずれかに記載の触媒材料の製造方法。
- 前記触媒金属に補助配位子として低分子複素環化合物を配位させる工程を含むことを特徴とする請求項3乃至9のいずれかに記載の触媒材料の製造方法。
- 前記窒素含有低分子化合物がピリジン及び/又はフェナントロリンであることを特徴とする請求項10に記載の触媒材料の製造方法。
- 前記貴金属がパラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)から選択される1種以上であり、前記遷移金属がコバルト(Co)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)から選択される1種以上であることを特徴とする請求項3乃至11のいずれかに記載の触媒材料の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の触媒材料からなる燃料電池用触媒。
- 請求項1又は2に記載の触媒材料を燃料電池用触媒として含む燃料電池。
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