JP2008165215A - 光学フィルム及びプラズマディスプレイ用光学フィルタ - Google Patents
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Abstract
Description
PDPからは、可視光と同時に、近赤外線、電磁波等の有害光も放射される。例えば近赤外線は、家庭用テレビ、クーラー、ビデオデッキ等の家電製品用の近赤外線リモコンを誤作動させたり、通信機器を誤作動させてPOS(販売時点情報管理)システム等のデータ転送時に悪影響を及ぼす。そのため、PDPの前面(視認側)には、近赤外線等の有害光を防止する光学フィルタの設置が必要となっている。
光学フィルムとしては、例えば、近赤外線を吸収する色素を透明樹脂に分散させ、これをポリエチレンテレフタレート(PET)製等のフィルム上に形成したものがある。
近赤外線を吸収する色素としては、ポリメチン系、金属錯体系、スクアリウム系、シアニン系、インドアニリン系等の各種色素が報告されている。
しかし、ジイモニウム系色素は、光や熱、湿気等に弱く、劣化し易いという問題がある。このような色素の劣化は、近赤外線吸収能を低下させるだけでなく、変色を生じ、視認透過率が低下して、色目が緑みを帯びてくるなど、光学フィルムの光学特性を悪化させてしまう。
すなわち、本発明は、一般式(I)
本発明の光学フィルムは、透明樹脂中に、上記一般式(I)で表されるジイモニウム系色素(以下、ジイモニウム系色素(I)ということがある。)を含有する近赤外線吸収層を有することを特徴とするものである。
ジイモニウム系色素(I)は、塩化合物であり、該塩化合物を構成する陰イオンが特定の陰イオン(X−)であることを特徴とする。
ここで、Rfは、炭素数1〜4のフルオロアルキル基であり、炭素数1〜2のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数1のフルオロアルキル基であることが最も好ましい。炭素数が上記範囲内であると、耐熱性、耐湿性などの耐久性、および後述する有機溶剤への溶解性が良好である点で好ましい。このようなRfとしては、例えば−CF3、−C2F5、−C3F7、C4F9等のパーフルオロアルキル基、−C2F4H、−C3F6H、−C2F8H等が挙げられる。
特に、前記フルオロアルキル基がパーフルオロアルキル基であると、耐湿性に最も優れるため、好ましい。さらに、トリフルオロメチル基であることが最も好ましい。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、又はオクテニル基等を示す。該アルケニル基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
アリール基としては、例えば、ベンジル基、p−クロロベンジル基、p−メチルベンジル基、2−フェニルメチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、α−ナフチルメチル基、又はβ−ナフチルエチル基等を示す。該アリール基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
アルキニル基としては、例えば、プロピニル基、ブチニル基、2−クロロブチニル基、ペンチニル基、又はヘキシニル基等を示す。該アルキニル基は、ヒドロキシル基、カルボキシ基等の置換基を有してもよい。
(モル吸光係数(εm)の測定方法)
当該ジイモニウム系色素を、試料濃度が20mg/Lとなるようにクロロホルムで希釈し、試料溶液を作製する。この試料溶液の吸収スペクトルを、分光光度計を用いて、300〜1300nmの範囲で測定し、その最大吸収波長(λmax)を読み取り、該最大吸収波長(λmax)におけるモル吸光係数(εm)を下記式から算出する。
ε=−log(I/I0)
(ε:吸光係数、I0:入射前の光強度、I:入射後の光強度)
εm=ε/(c・d)
(εm:吸光係数、c:試料濃度(mol/L)、d:セル長)
本発明においては、近赤外線吸収層を構成する透明樹脂中に、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、上述したジイモニウム系色素(I)以外の、最大吸収波長が800〜1100nmの範囲にある近赤外線吸収色素を一種類以上配合してもよい。
このような近赤外線吸収色素としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等の一般的なものが使用できる。
有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、ジイモニウム系色素(I)以外のジイモニウム系色素、アンスラキノン系色素、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素、ジチオール系金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、又はトリアリルメタン系色素等が挙げられる。
特に、850nm付近に最大吸収波長(λmax)を有する色素を配合すると、ジイモニウム系色素(I)の最大吸収波長(λmax)が1000nmに付近にあることから、幅広い領域の近赤外線を効率よく吸収でき、全色素量(ジイモニウム系色素(I)およびそれ以外の近赤外線吸収色素の合計量)を少なくできる。そのため、コストが低減できる、色素の劣化が生じにくくなる、近赤外線吸収層を形成する際に色素を有機溶媒に充分溶解させることができる等の利点がある。
本発明において、透明樹脂は、実用的な耐久性を維持できること、成形性が容易であることと、成形時の色素の劣化が抑制されることなどから、ガラス転移温度が80〜180℃の範囲にあることが好ましく、特に120〜180℃の範囲であることが好ましい。
好ましい透明樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。この樹脂は、例えば、鐘紡社製、商品名「O−PET」のポリエステル系樹脂、JSR社製、商品名「ARTON」のポリオレフィン系樹脂、日本ゼオン社製、商品名「ゼオネックス」のポリシクロオレフィン系樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、商品名「ユーピロン」のポリカーボネート系樹脂、日本触媒社製、商品名「ハルスハイブリッドIR−G204」などのポリアクリル系樹脂などの市販品を用いることができる。
近赤外線吸収層は、上述したジイモニウム系色素(I)および任意の成分と透明樹脂とを有機溶剤に溶解させ、得られた塗工液を基材上に塗工し、乾燥させることにより形成できる。
一般的に、光学フィルムは、PDP等の表示装置の視認側に配置されるため、無彩色が好まれる。したがって、JISZ8701−1999に従い計算されたC光源基準において、無彩色に対応する色度座標は、(x、y)=(0.310、0.316)であることから、本発明の光学フィルムは、色素の種類及び含有量を適宜選定し、(x、y)=(0.310±0.100、0.316±0.100)にすることが好ましい。
また、視感平均透過率を45%以上にすることが好ましい。
特に、上記色度座標(x、y)の規定と視感平均透過率の規定を同時に満たすことが好ましい。
透明基板の材料としては、ガラス、透明で高剛性の高分子材料から適宜選択して使用することができるが、好ましくはガラス、強化もしくは半強化ガラス、ポリカーボネート、又はポリアクリレートなどが挙げられる。光学フィルムが透明基板に貼着されたものを光学フィルタとして使用すると、PDPなどの表示装置の保護板としての機能も発揮できる。
粘着剤を用いる場合、この粘着剤に紫外線吸収剤などの種々の機能を有する添加剤を添加してもよい。
この場合、光学フィルムは、表示装置の視認側に設置すればよく、表示装置から離して設置してもよいし、表示装置表面に直接貼り付けてもよい。
本発明の光学フィルムは、特に近赤外線が発生するPDPなどの光学フィルタに好適に用いることができる。
近赤外線吸収性色素を、試料濃度が20mg/Lとなるようにクロロホルムで希釈し、試料溶液を作製した。この試料溶液の吸収スペクトルを、島津製作所製UV−3100を用いて、300〜1300nmの範囲で測定し、その最大吸収波長(λmax)を読み取り、該最大吸収波長(λmax)におけるモル吸光係数(εm)を下記式から算出した。
ε=−log(I/I0)
(ε:吸光係数、I0:入射前の光強度、I:入射後の光強度)
εm=ε/(c・d)
(εm:吸光係数、c:試料濃度(mol/L)、d:セル長)
ガラス転移温度が140℃の透明ポリエステル樹脂(鐘紡社製、商品名「O−PET」)をシクロペンタノン/トルエン(6/4容量比)混合溶媒に15質量%になるように溶解して、主剤溶液を得た。この主剤溶液の樹脂分に対して、ジイモニウム系色素(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン・−ビス(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)イモニウム塩:日本カーリット社製、商品名「CIR−1085」、λmax:1073nm,εm:1.0×105)14.0質量%を主剤溶液に添加し、これらを溶解させた塗工液を得た。この塗工液をマイクログラビアにて、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、商品名「A4100」)上に乾燥塗膜の厚みが4μmとなるようにコーティングし、120℃で5分間乾燥させて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に近赤外線吸収層を有する光学フィルムを得た。
例1で使用したジイモニウム系色素に代えて、N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジヘキシルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−ビス(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)イモニウム塩(日本カーリット社製、商品名「CIR−1105」、λmax:1059nm,εm:9.8×104)を用いた以外は、例1と同様にして光学フィルムを得た。
例1で使用した色素14.0質量%を6.7質量%に代え、さらにフタロシアニン系色素(日本触媒社製、商品名「IR−14」、λmax890nm)2.0質量%、フタロシアニン系色素(日本触媒社製、商品名「IR−12」、λmax833nm)1.4質量%を添加した以外は、例1と同様にして光学フィルムを得た。
例1で使用した主剤溶液を、メチルエチルケトン(MEK)を用いて15質量%にしたアクリル樹脂(日本触媒社製、商品名「ハルスハイブリッドIR−G204」:樹脂のガラス転移温度=89℃)溶液に代えた以外は、例1と同様にして光学フィルムを得た。
例3で使用した主剤溶液を、MEKを用いて15質量%にしたアクリル樹脂(日本触媒社製、商品名「ハルスハイブリッドIR−G204」)溶液に代えた以外は、例3と同様にして光学フィルムを得た。
例3で使用したポリエチレンテレフタレートフィルムを、反射防止フィルム(旭硝子社製、商品名「アークトップURP2199」)に代え、反射防止層とは反対の面に例3で作製した近赤外線吸収層を形成させて光学フィルムを得た。
例1で使用した色素を、ジイモニウム系色素(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−過塩素酸イモニウム塩):日本カーリット社製、商品名「CIR−1080」、λmax:1070nm,εm:8.8×104)に代えた以外は、例1と同様にして光学フィルムを得た。
例1で使用した色素を、ジイモニウム系色素(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−ヘキサフルオロアンチモン酸イモニウム塩):日本化薬社製、商品名「IRG−022」、λmax:1090nm,εm:1.1×105)に代えた以外は、例1と同様にして光学フィルムを得た。
例1で使用した色素を、ジイモニウム系色素(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−トリフルオロメタンスルホン酸イモニウム塩):ナガセケミテックス社製、商品名「NIR−IMFS」、λmax:1077nm,εm:9.3×104)に代えた以外は、例1と同様にして光学フィルムを得た。
例1で使用した色素を、ジイモニウム系色素(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−P−トルエンスルホン酸イモニウム塩):ナガセケミテックス社製、商品名「NIR−IMPTS」、λmax:1077nm,εm:8.2×104)に代えた以外は、例1と同様にして光学フィルムを得た。
例7で使用した色素の添加量を30質量%に代えた以外は、例7と同様にして光学フィルムを得た。
例1〜11で得た光学フィルムの光学特性(視感平均透過率、色度、近赤外線透過率)、および耐久性(耐熱性、耐湿性)を下記方法で評価した。その結果を表1に示す。
なお、表1に、例1〜11で使用したジイモニウム系色素の陰イオン(X−)、及び側鎖R(一般式(I)の陽イオンにおけるR1〜R8に相当)の炭素数を併記する。
分光光度計(島津製作所社製、UV−3100) を用い、各試料から切り出した20×20mm角の試験片のスペクトルを380〜1300nmの範囲で測定した。
JIS Z8701−1999に従い、可視領域(380〜780nm)における加重平均透過率(視感平均透過率Tv)、色度座標(x、y)を算出した。
また、近赤外領域(850nm、900nm、950nm、1000nm)の透過率を測定し、室内の空気の透過率を比較対照として、近赤外線透過率を求めた。各波長における近赤外線透過率をそれぞれT850、T900、T950、T1000とした。
定温恒温器(東京理化器械社製)を用い、温度80℃に設定し、500時間試験後の各試料のTv、x、yの各測定値について、試験前の測定値と比較した。試験前後の変化量がすべて3%未満であるものを〇、いずれか一つでも3%以上〜5%未満のものがある場合は△、いずれか一つでも5%以上のものがある場合を×とした。
恒温恒湿試験器(東京理化器械社製、KCH−1000)を用い、温度60℃、湿度95%RHに設定し、500時間試験後の各試料のTv、x、yの各測定値について、試験前の測定値と比較した。試験前後の変化量がすべて3%未満であるものを〇、いずれか一つでも3%以上〜5%未満のものがある場合は△、いずれか一つでも5%以上のものがある場合を×とした。
これに対し、陰イオンとしてClO4 −を用いた例7、陰イオンとしてSbF6 −を用いた例8、陰イオンとしてCF3SO3 −を用いた例9、陰イオンとしてCH3C6H4SO3 −を用いた例10の光学フィルムは、耐湿性が悪く、特に例9、例10は耐熱性も悪かった。
また、例10の光学フィルムは、近赤外線吸収能がかなり悪かった。これは、例10で用いたジイモニウム系色素が、近赤外線吸収層中での安定性が非常に低く、層中で急速に壊れてしまったためと考えられる。
また、例7で用いたジイモニウム系色素の添加量を増量した例11の光学フィルムは、Tvが低く、色度座標も、理想的な値((x、y)=(0.310,0.316))から大きくはずれていた。また、耐熱性、耐湿性ともに悪かった。
Claims (3)
- 前記フルオロアルキル基がパーフルオロアルキル基である請求項1記載の光学フィルム。
- 前記透明樹脂中に、さらに、最大吸収波長(λmax)が800〜1100nmの範囲にある、前記ジイモニウム系色素以外の近赤外線吸収色素を含有する請求項1または2記載の光学フィルム。
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