以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態で使用される枚葉式の半導体製造装置の構成図である。
この半導体製造装置70は、PZT(Pb(Zr,Ti)O3)膜のエッチングとその後のアッシング(灰化)を行うものであって、窒素等の不活性ガスの減圧雰囲気とされたトランスファチャンバ71を有すると共に、このトランスファチャンバ71内に搬送ロボット78を有する。
そして、トランスファチャンバ71の周囲には、ロードロックチャンバ72、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチングチャンバ73、及びアッシングチャンバ74が設けられており、これらのチャンバ72〜74の間にはゲートバルブ75〜77が設けられる。
なお、各チャンバ73、74は、メンテナンス時を除いて窒素ガス等の減圧雰囲気となっており、通常は大気から隔離されている。
ゲートバルブ75〜77は、トランスファチャンバ71と各チャンバ73、74との間で搬送ロボット78によるシリコン基板20の受け渡しを行うときに開く。一方、各チャンバ73、74内で処理が行われているときは、ゲートバルブ75〜77が閉じ、これらのチャンバ73、74内が気密にされる。
シリコン基板20は、ロードロックチャンバ72に1ロット単位で格納されており、搬送ロボット78によって一枚ずつチャンバ73、74に搬送される。
本実施形態では、このような半導体製造装置70を用いて、以下のようにして半導体装置を製造する。
図2〜図11は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
この半導体装置は、キャパシタ下部電極のコンタクト領域上に導電性プラグが形成されるプレーナ型のFeRAMである。
最初に、図2(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、n型又はp型のシリコン(半導体)基板20表面に、トランジスタの活性領域を画定するSTI(Shallow Trench Isolation)用の溝を形成し、その中に酸化シリコン等の絶縁膜を埋め込んで素子分離絶縁膜21とする。なお、素子分離構造はSTIに限られず、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法で素子分離絶縁膜21を形成してもよい。
次いで、シリコン基板20の活性領域にp型不純物を導入してpウェル22を形成した後、その活性領域の表面を熱酸化することにより、ゲート絶縁膜28となる熱酸化膜を形成する。
続いて、シリコン基板20の上側全面に非晶質又は多結晶のシリコン膜及びタングステンシリサイド膜を順に形成し、これらの膜をフォトリソグラフィによりパターニングしてゲート電極25a、25bを形成する。
pウェル22上には、上記の2つのゲート電極25a、25bが間隔をおいてほぼ平行に配置され、それらのゲート電極25a、25bはワード線の一部を構成する。
次いで、ゲート電極25a、25bをマスクにするイオン注入により、各ゲート電極25a、25bの横のシリコン基板20にn型不純物を導入し、第1〜第3ソース/ドレインエクステンション24a〜24cを形成する。
その後に、シリコン基板20の上側全面に絶縁膜を形成し、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極25a、25bの横に絶縁性サイドウォール26として残す。その絶縁膜として、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により酸化シリコン(SiO2)膜を形成する。
続いて、絶縁性サイドウォール26とゲート電極25a、25bをマスクにしながら、シリコン基板20にn型不純物を再度イオン注入することにより、各ゲート電極25a、25bの側方のシリコン基板20に第1〜第3ソース/ドレイン領域23a〜23cを形成する。
ここまでの工程により、シリコン基板20の活性領域には、ゲート絶縁膜28、ゲート電極25a、25b、及び第1〜第3ソース/ドレイン領域23a〜23c等によって構成される第1、第2MOSトランジスタTR1、TR2が形成されたことになる。
次に、シリコン基板20の上側全面に、スパッタ法によりコバルト層等の高融点金属層を形成した後、この高融点金属層を加熱してシリコンと反応させ、シリコン基板20上に高融点金属シリサイド層27を形成する。その高融点金属シリサイド層27はゲート電極25a、25bの表層部分にも形成され、それにより各ゲート電極25a、25bが低抵抗化されることになる。
その後、素子分離絶縁膜21の上等で未反応となっている高融点金属層をウエットエッチングして除去する。
続いて、プラズマCVD法により、窒化シリコン(SiN)膜29を厚さ約20nmに形成する。次いで、この窒化シリコン膜29の上に、シランガスを使用するプラズマCVD法により酸化シリコン膜30を厚さ約80nmに形成し、更にその上にTEOS(Tetraethoxysilane)ガスを使用するプラズマCVD法により犠牲酸化シリコン膜を約1000nmに形成する。そして、その犠牲酸化シリコン膜の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して平坦化し、残された酸化シリコン膜30と窒化シリコン膜29とを第1層間絶縁膜31とする。上記のCMPの結果、第1層間絶縁膜31の厚さは、シリコン基板20の平坦面上で約700nmとなる。
次に、フォトリソグラフィにより第1層間絶縁膜31をパターニングして、第1〜第3ソース/ドレイン領域23a〜23cのそれぞれの上にコンタクトホールを形成する。そして、そのコンタクトホールの内面と第1層間絶縁膜31の上面に、スパッタ法により厚さ約30nmのチタン膜と厚さ約20nmの窒化チタン膜とをこの順にグルー膜として形成する。更に、六フッ化タングステンガスを使用するCVD法により、上記のグルー膜の上にタングステン膜を形成し、そのタングステン膜でコンタクトホールを完全に埋め込む。その後に、第1層間絶縁膜31上の余分なタングステン膜とグルー膜とをCMP法により研磨して除去し、上記の膜をコンタクトホールの中に第1〜第3導電性プラグ32a〜32cとして残す。これら第1〜第3導電性プラグ32a〜32cは、その下の第1〜第3ソース/ドレイン領域23a〜23cと電気的に接続されることになる。
ところで、その第1〜第3導電性プラグ32a〜32cは、タングステンを主に構成されるが、タングステンは非常に酸化され易く、プロセス中で酸化されるとコンタクト不良を引き起こす。
そこで、次の工程では、図2(b)に示すように、上記の第1〜第3導電性プラグ32a〜32cを酸化雰囲気から保護するための酸化防止膜36として、プラズマCVD法により酸窒化シリコン(SiON)膜36aと酸化シリコン膜36bとをこの順に形成する。その酸窒化シリコン膜36aの厚さは例えば100nmであり、酸化シリコン膜36bの厚さは約130nmである。また、酸化シリコン膜36bの成膜ガスとしてはTEOSが採用される。
次いで、図2(c)に示すように、後述の強誘電体キャパシタの下部電極の結晶性を高め、最終的にはキャパシタ誘電体膜の結晶性を改善するために、スパッタ法により第1アルミナ膜(下地絶縁膜)37を厚さ約20nmに形成する。
次に、図3(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、スパッタ法により、プラチナ膜を厚さ約150nmに形成し、それを第1導電膜41とする。
次いで、強誘電体膜42として、PZT膜をスパッタ法により第1導電膜41上に厚さ約120nmに形成する。その強誘電体膜42の成膜方法としては、スパッタ法の他に、MOCVD(Metal Organic CVD)法やゾル・ゲル法もある。更に、強誘電体膜42の材料は上記のPZTに限定されず、SrBi2Ta2O9、SrBi2(Ta, Nb)2O9等のBi層状構造化合物や、PZTにランタンをドープしたPLZT、或いはその他の金属酸化物強誘電体で強誘電体膜42を構成してもよい。
続いて、強誘電体膜42を構成するPZTを酸素含有雰囲気中でRTA(Rapid Thermal Anneal)により結晶化する。そのRTAの条件は、例えば、基板温度720℃、処理時間120秒、昇温速度125℃/秒である。
その後に、強誘電体膜42の上に、スパッタ法により酸化イリジウム(IrO2)膜を厚さ約250nmに形成し、それを第2導電膜43とする。
なお、第2導電膜43は貴金属膜又は導電性酸化貴金属膜で構成さればよく、上記の酸化イリジウム膜に代えて、イリジウム膜やプラチナ膜等の貴金属膜を第2導電膜43として形成してもよい。
次いで、図3(b)に示すように、スパッタ法により窒化チタン(TiN)膜を50nm以下の厚さ、より好ましくは20〜50nmの厚さ、更に好ましくは30nmに形成し、それをマスク材料膜45とする。なお、マスク材料膜45は、ウエットエッチングによる除去が容易であって、レジストよりもエッチレートが低く、且つ第2導電膜43と異なる材料よりなる膜であれば特に限定されない。例えば、窒化チタン膜に代えて窒化チタンアルミニウム(TiNAl)膜をマスク材料膜45として形成してもよい。
その後に、マスク材料膜45の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像することにより、キャパシタ上部電極形状の平面形状を有する第1レジストパターン46を形成する。
次に、図3(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、不図示のICPエッチングチャンバ内において、第1レジストパターン46をマスクにしてマスク材料膜45をドライエッチングし、エッチングされずに残ったマスク材料膜45を上部電極形状の補助マスク45aとする。
このドライエッチングでは、ハロゲンガスと不活性ガスとの混合ガス、例えば塩素ガスとアルゴンガスとの混合ガスがエッチングガスとして使用される。各ガスの流量は特に限定されないが、本実施形態では塩素ガスとアルゴンガスの流量を共に80sccmとする。
また、エッチングに際しては、上記のエッチングチャンバ73の周囲に巻かれたアンテナコイルに、周波数が13.56MHzでパワーが500〜1200Wのプラズマ発生用高周波電力が印加され、これによりチャンバ内のエッチングガスがプラズマ化する。
また、エッチングチャンバ内においてシリコン基板20が載置される基板載置台には、エッチング雰囲気中のイオンをシリコン基板20側に引き付けるためのバイアス電力として、周波数が460kHzでパワーが50〜400Wの高周波電力が印加される。なお、エッチングの最中では、エッチングチャンバ内の圧力が0.7Paに維持されると共に、基板温度が常温(20℃)とされる。
次に、図4(a)に示すように、補助マスク45aと第1レジストパターン46とをマスクにして第2導電膜43をエッチングすることにより、該第2導電膜43を上部電極43aにする。
このエッチングは、図3(c)で説明したマスク材料膜45aのエッチングと同様に、不図示のICPエッチングチャンバにおいて行われる。そして、基板温度を常温に保持し、チャンバ内の圧力を0.7Paに維持しながら、エッチングガスとして流量が10sccmの塩素ガスと流量が50sccmのアルゴンガスとの混合ガスとがエッチングチャンバ内に供給される。更に、プラズマ発生用高周波電力として、周波数が13.56MHzでパワーが2100Wの高周波電力がアンテナコイルに印加される。また、バイアス電力としては、周波数が460kHzでパワーが1400Wの高周波電力がチャンバ内の基板載置台に印加される。
このようなエッチング条件では、酸化イリジウムよりなる第2導電膜43がエッチングされるのと同時に、第1レジストパターン46の側面が後退する。そのため、このエッチングでは、化学反応性に乏しいイリジウムを含んだエッチング生成物が第1レジストパターン46の側面に付着し難くなり、除去が困難なエッチング生成物が補助マスク45aの上に残るのを防止できる。
次いで、図4(b)に示すように、基板温度を約200℃にしながら、酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスをプラズマ化してなる雰囲気中において、補助マスク45a上に残存する第1レジストパターン46をアッシングして除去する。
これにより補助マスク45aの上面が全て露出することになるが、補助マスク45aは、上部電極43aのパターニングに使用したものであり、これ以降の工程では不要となる。もし、補助マスク45aが上部電極43a上に残存していると、酸素含有雰囲気中での処理、例えば後述の強誘電体キャパシタの回復アニールにおいて、TiNよりなる補助マスク45aが酸化することになる。こうなると、補助マスク45aが絶縁体となってしまうので、補助マスク45aの上に導電性プラグを形成しても、上部電極43aと導電性プラグとを電気的に接続できなくなり、上部電極43aの電圧をコントロールすることができなくなってしまう。
そこで、次の工程では、図4(c)に示すように、濃度が30wt%の過酸化水素水(H2O2)と濃度が30wt%の水酸化アンモニウム(NH4OH)溶液との混合溶液よりなるエッチング液にシリコン基板20を浸すことにより、補助マスク45aを常温でウエットエッチングして除去する。なお、上記のエッチング液の混合比は特に限定されないが、本実施形態では過酸化水素水:水酸化アンモニウム溶液:純水=3:1:10の混合比を採用する。
また、上記のエッチング液が入れられた槽の内部をポンプで攪拌しながらウエットエッチングを行うことで、補助マスク45aを安定して除去することができる。
このようなウエットエッチングの結果、上部電極43a上に有機系のエッチング残渣が残ることがあるので、例えばアッシング装置内において上部電極43aの表面を酸素プラズマに曝し、上記のエッチング残渣を除去するのが好ましい。
以上により、上部電極43aの清浄面が露出することになる。
次に、図5(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、シリコン基板20の上側全面にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して、キャパシタ誘電体膜形状の第2レジストパターン47を上部電極43a上に形成する。
次いで、図1で説明した半導体製造装置70にシリコン基板20を移す。そして、ICPエッチングチャンバ73内にシリコン基板20を搬送し、このチャンバ73内において、第2レジストパターン47をマスクにしながら強誘電体膜42をドライエッチングして、残された強誘電体膜42をキャパシタ誘電体膜42aとする。
そのエッチングの条件は特に限定されないが、本実施形態ではハロゲンガスと不活性ガスとの混合ガス、例えば流量が40sccmの塩素ガスと流量が10sccmのアルゴンガスとの混合ガスがエッチングガスとして使用される。そして、プラズマ発生用高周波電力として、周波数が13.56MHzでパワーが2000Wの高周波電力がアンテナコイルに印加され、バイアス電力として、周波数が460kHzでパワーが600Wの高周波電力がチャンバ73内の基板載置台に印加される。
なお、エッチング時の基板温度は常温であり、チャンバ内の圧力は5mTorrに維持される。
このようなエッチングでは、エッチング対象である強誘電体膜42に起因したエッチング生成物42xが、キャパシタ誘電体膜42aと第2レジストパターン47のそれぞれの側面に付着する。
そのエッチング生成物42xは、エッチングガス中のハロゲンガス、すなわち塩素ガスを含んでおり、大気に曝されると塩酸を生成し、その塩酸によってキャパシタ誘電体膜42aの側面に変質層が形成される恐れがある。
そこで、次の工程では、図5(b)に示すように、図1の半導体製造装置70からシリコン基板20を取り出さずに、エッチングチャンバ73からアッシングチャンバ74にシリコン基板20を移し、このアッシングチャンバ74内で第2レジストパターンをアッシングして除去する。
このように、エッチングチャンバ73で処理を終了した後、大気にシリコン基板20を曝すことなく行われるアッシングはin-situアッシングとも呼ばれる。
なお、アッシングの条件は特に限定されないが、本実施形態では、基板温度を約200℃にしながら、流量が1800sccmの酸素ガスと流量が200scccmの窒素ガスとの混合ガスをプラズマ化してなる雰囲気中においてこのアッシングを行う。
これにより、第2レジストパターン47が除去されるのと同時に、大部分のエッチング生成物42xも除去される。
しかし、アッシングによってエッチング生成物42xを完全に除去するのは困難で、アッシングを何度行ってもキャパシタ誘電体膜42aの側面にある程度の量のエッチング生成物42xが残存する。
そこで、このようになおも残存するエッチング生成物42xを除去するため、次の工程では、図6(a)に示すように、上記のアッシングチャンバ74から洗浄装置にシリコン基板20を搬送し、その洗浄装置においてキャパシタ誘電体膜42aの側面を水洗する。
ここで、洗浄装置にシリコン基板20を搬送する際、シリコン基板20は大気に曝されることになるが、大気中に長時間シリコン基板20を放置しておくと、大気中の水分とエッチング生成物42aとの反応により生じる塩酸によってキャパシタ誘電体膜42aの側面が腐食され、該側面に変質層が形成されてしまう。
このような変質層の形成を防ぐため、アッシングチャンバ74を出たシリコン基板20を大気中に長時間放置せず、なるべく早く洗浄装置に搬送するのが好ましい。その具体的な時間については後で詳述する。
また、この工程で使用する洗浄装置は特に限定されないが、本実施形態では図12に示されるような超音波洗浄(D-sonic)用のスクラバーを洗浄装置として使用する。
図12は、この水洗で使用されるスクラバーの斜視図である。
このスクラバー80はスピンナーテーブル81とノズル82とにより構成され、周波数が1.5MHzの超音波が印加された純水Wがノズル82からシリコン基板20に向けて吐出する。
そして、水洗に際しては、スピンナーテーブル81の回転運動によってシリコン基板20を約1000rpmの回転数で回転させながら、ノズル82からシリコン基板20に純粋Wを30秒間吐出する。
なお、このようなタイプのスクラバーに代えて、超音波が印加された純水中にシリコン基板20を浸して洗浄を行うスクラバーを用いてもよい。
更に、上記のような超音波洗浄に代えて、シリコン基板20に向けて高圧の純水を噴射する高圧ジェット洗浄や、液槽内の純水に複数枚のシリコン基板20を一括して浸すバッチ洗浄を行ってもよい。
このうち、高圧ジェット洗浄は、2000rpmの回転数でシリコン基板20を回転させながら、5MPaの圧力で純水をシリコン基板20に30秒間噴射して行われる。
また、バッチ洗浄は、1ロット(25枚)のシリコン基板20を液槽内の純水に15分間浸して行われ、洗浄工程のスループットが向上するという点で他の方法よりも有利である。
第2レジストパターン47を除去してから時間をおかずにこのような水洗をすることにより、大部分のエッチング生成物42xが強制的に水と反応させられて除去され、エッチング生成物42xから発生する塩酸によってキャパシタ誘電体膜42aの側面に変質層が形成されるのを防止できる。
但し、第2レジストパターン47に起因する炭素がエッチング生成物42x中に含まれている場合、上記の水洗ではその炭素を十分に除去することができない恐れがある。
そこで、次の工程では、図6(b)に示すように、シリコン基板をアッシングチャンバに入れ、酸素含有雰囲気にキャパシタ誘電体膜42aを曝すことにより、エッチング生成物42x中の炭素成分を酸化して除去する。以下、このようなアッシングのことを補償アッシングと呼ぶ。
この補償アッシングの条件は特に限定されないが、本実施形態では基板温度を200℃に維持しながら、流量が1800sccmの酸素ガスと流量が200sccmの窒素ガスとをアッシングチャンバに入れてこのアッシングを行う。
また、この補償アッシングは、図1のアッシングチャンバ74を用いて行ってもよいし、これとは別のアッシングチャンバで行ってもよい。
次いで、図7(a)に示すように、キャパシタ誘電体膜42aを再び水洗することにより、上記したエッチング生成物42xを略完全に洗い落とす。以下ではこの水洗のことを補償水洗と呼ぶ。
次に、図7(b)に示すように、上部電極43aと第1導電膜41のそれぞれの上に下部電極形状の第3レジストパターン48を形成する。そして、この第3レジストパターン48をマスクにして第1導電膜41をドライエッチングし、エッチング後に残った第1導電膜41を下部電極41aとする。その下部電極41aにおいて、キャパシタ誘電体膜42aからはみ出た部分はコンタクト領域CRとして機能する。
その後に、第3レジストパターン48を除去することで、図8(a)に示すように、下部電極41a、キャパシタ誘電体膜42a、及び上部電極43aで構成される強誘電体キャパシタQが第1アルミナ膜37上に形成される。
次に、図8(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、水素等の還元性雰囲気からキャパシタQを保護し、キャパシタ誘電体膜42aの劣化を防止するための第2アルミナ膜50をシリコン基板20の上側全面に形成する。その第2アルミナ膜50は、例えばスパッタ法により厚さ約50nmに形成する。
そして、エッチングやスパッタリング等によってここまでの工程でキャパシタ誘電体膜42aが受けたダメージを回復させるため、ファーネス内の酸素100%の雰囲気中で基板温度650℃、処理時間90分の条件で、キャパシタ誘電体膜42aに対して回復アニールを行う。
次に、TEOSガスを反応ガスとするプラズマCVD法により、第2アルミナ膜50の上に酸化シリコン膜51を厚さ約1500nmに形成する。その酸化シリコン膜51の上面には、キャパシタQを反映した凹凸が形成される。そこで、この凹凸を無くすために、酸化シリコン膜51の上面をCMP法により研磨して平坦化し、第2アルミナ膜50の平坦面上での酸化シリコン膜51の厚さを約1000nmにする。
その後、この酸化シリコン膜51の脱水処理として、酸化シリコン膜51の表面をN2Oプラズマに曝す。このようなN2Oプラズマ処理に代えて、炉の中で酸化シリコン膜51をアニールして脱水してもよい。
次いで、後の工程で発生する水素や水分からキャパシタQを保護するための第3アルミナ膜52を、酸化シリコン膜51の上にスパッタ法により厚さ約50nmに形成する。更に、この第3アルミナ膜52の上に、プラズマCVD法で酸化シリコン膜53を厚さ約200nmに形成する。
ここまでの工程により、キャパシタQの上には、酸化シリコン膜51、53と第3アルミナ膜52とで構成される第2層間絶縁膜54が形成されたことになる。
次に、図9(a)に示すように、第2層間絶縁膜54の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像することにより、ホール形状の第1、第2窓55a、55bを備えた第4レジストパターン55を形成する。
そして、上記の第1、第2窓55a、55bを通じて第2層間絶縁膜54とその下の第2アルミナ膜50をエッチングすることにより、上部電極43aの上に第1ホール54aを形成すると共に、下部電極41aのコンタクト領域CR上に第2ホール54bを形成する。
この後に、第4レジストパターン55は除去される。
次いで、図9(b)に示すように、第2層間絶縁膜54の上にフォトレジストを再び塗布し、それを現像して、第1〜第3導電性プラグ32a〜32cのそれぞれの上に第3〜第5窓57c〜57eを備えた第5レジストパターン57を形成する。
更に、第3〜第5窓57c〜57eを通じて第2層間絶縁膜54、第1、2アルミナ膜37、50、及び酸化シリコン膜36bをエッチングすることにより、各導電性プラグ32a〜32cの上に第3〜第5ホール54c〜54eを形成する。このようなエッチングは、C4F8、Ar、O2、及びCOの混合ガスをエッチングガスとする平行平板プラズマエッチング装置で行われ、酸窒化シリコン膜36aがこのエッチングにおけるストッパ膜となる。
この後に、第5レジストパターン57は除去される。
次に、図10(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、不図示の平行平板プラズマエッチング装置内にシリコン基板20を入れ、エッチングガスとしてCHF3、Ar、及びO2の混合ガスをそのエッチング装置に供給する。これにより、第3〜第5ホール54c〜54eの下の酸窒化シリコン膜36aがエッチングされ、これらのホールに第1〜第3導電性プラグ32a〜32cが露出すると共に、第1、第2ホール54a、54b内の異物が除去されて、上部電極43aと下部電極41aの上面が清浄化される。
このように、キャパシタQ上の浅い第1、第2ホール54a、54bを形成する工程とは別の工程において、第1〜第3ソース/ドレイン領域23a〜23c上の深い第3〜第5ホール54c〜54eを形成することで、浅い第1ホール54aの下の上部電極43aがエッチング雰囲気に長時間曝されるのを防ぐことができ、その下のキャパシタ誘電体膜42aが劣化するのを抑制することが可能となる。
更に、第1〜第3導電性プラグ32a〜32cは、本工程が終了するまで、酸化防止膜36を構成する酸窒化シリコン膜36aによって覆われているので、各導電性プラグ32a〜32cを構成するタングステンが酸化してコンタクト不良を起こすのが防止される。
次に、図10(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、第1〜第5ホール54a〜54eの内面を清浄化するために、高周波電力でプラズマ化されたアルゴン雰囲気に各ホール54a〜54eの内面を曝し、その内面をスパッタエッチングする。そのエッチング量は、例えば、酸化シリコン膜の膜厚換算で約10nmとされる。そして、第1〜第5ホール54a〜54eの内面と第2層間絶縁膜54の上面とに、スパッタ法によりグルー膜として窒化チタン膜を厚さ約75nmに形成する。
続いて、CVD法によりグルー膜の上にタングステン膜を形成し、そのタングステン膜で第1〜第5ホール54a〜54eを完全に埋め込む。
その後に、第2層間絶縁膜54の上面上の余分なグルー膜とタングステン膜とをCMP法により研磨して除去し、これらの膜を各ホール54a〜54eの中に残す。第1、第2ホール54a、54b内に残されたこれらの膜は、それぞれ上部電極43aと下部電極41aコンタクト領域CRに電気的に接続される第4、第5導電性プラグ60a、60bとされる。また、第3〜第5ホール54c〜54e内に残されたこれらの膜は、第1〜第3導電性プラグ32a〜32cと電気的に接続される第6〜第8導電性プラグ60c〜60eとされる。
次に、図11に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、第2層間絶縁膜54と第6〜第8導電性プラグ60c〜60eのそれぞれの上に、厚さが約60nmのチタン膜と厚さが約30nmの窒化チタン膜をこの順にスパッタ法により形成し、これらをバリアメタル層とする。次いで、金属積層膜として、スパッタ法により銅含有アルミニウム膜、チタン膜、及び窒化チタン膜をこの順にそれぞれ厚さ約360nm、5nm、70nmにバリアメタル層上に形成する。
次いで、この金属積層膜の上に、不図示の酸窒化シリコン膜を反射防止膜として形成した後、フォトリソグラフィにより上記の金属積層膜とバリアメタル層とをパターニングして、一層目金属配線62a〜62cと導電性パッド62dとを形成する。
続いて、第3層間絶縁膜63としてプラズマCVD法により酸化シリコン膜を形成した後、CMP法によりその第3層間絶縁膜63を平坦化する。その後に、フォトリソグラフィにより第3層間絶縁膜63をパターニングして導電性パッド62dの上にホールを形成し、そのホール内にタングステン膜を主に構成される第9導電性プラグ64を形成する。
この後は、2層目〜5層目金属配線や、これらの金属配線の間に層間絶縁膜を形成する工程に移るが、その詳細については省略する。
以上により、本実施形態に係るプレーナ型のFeRAMの基本構造が完成したことになる。
上記した本実施形態によれば、図6(a)で説明したように、第2レジストパターン47を除去してからなるべく時間をおかずにキャパシタ誘電体膜42aの側面を水洗することにより、強誘電体膜42のエッチング時に発生したエッチング生成物42xを強制的に水と反応させて除去し、大気中の水分とエッチング生成物42xとの反応によって生成される塩酸でキャパシタ誘電体膜42aが腐食されるのを極力防止した。
本願発明者は、第2レジストパターン47を除去してから水洗を行うまでに許容し得る時間間隔を調べるため、図13に示すような調査を行った。
図13における各平面図は、この調査で使用された二つのサンプルA、BのSEM(Scanning Electron Microscope)による像を基にして描いた図であって、上部電極43aの上から見た場合の平面図に相当する。
この調査では、各サンプルA、Bについて第2レジストパターン47の除去まで行い、サンプルAについては更に大気中に0.5時間放置し、サンプルBについては大気中に8時間放置した。その後、サンプルAについては、図6(a)で説明した洗浄条件に従い、キャパシタ誘電体膜42aの側面を水で洗浄した。
図13に示されるように、サンプルAでは、大気中に0.5時間だけ放置してもキャパシタ誘電体膜42aの側面の形状が崩れていない。これは、大気中での放置時間が短いため、エッチング生成物42x(図5(b)参照)と大気中の水分との反応で生成した塩酸が微量であり、キャパシタ誘電体膜42aの側面が殆ど腐食されなかったためである。
一方、サンプルBでは、大気中に8時間も放置したことで、エッチング生成物42xが大気中の水分を吸収し、該キャパシタ誘電体膜42aの側面から突出するように異常成長してしまっている。
このようにエッチング生成物42xが異常成長すると、エッチング生成物42xと大気中の水分との反応によって大量の塩酸が発生し、その塩酸によってキャパシタ誘電体膜42aの側面にPZTの変質層が厚く形成される。
その変質層は、キャパシタ誘電体膜42aの側面においてリークパスを形成し、キャパシタQのリーク電流を増大させて半導体装置の歩留まりを低下させる一因となる。
従って、半導体装置の歩留まりを向上させるには、サンプルBのようにエッチング生成物42xがキャパシタ誘電体膜42aの側面から突出するように異常成長する前に、図6(a)で説明した洗浄を行うのが好ましい。
本願発明者の調査によれば、大気中に放置した状態でキャパシタ誘電体膜42aの側面からエッチング生成物42xが突出するようになるのは、図5(b)の第2レジストパターン47の除去工程から1時間を経過したときである。
よって、第2レジストパターン47を除去してから、図6(a)の水洗を行うまでの間において、キャパシタ誘電体膜42aが大気に曝されている時間を1時間以内にすることにより、キャパシタQのリーク電流を抑えることが可能となる。
比較例
次に、上記した図6(a)の水洗工程を省き、且つ大気中にキャパシタ誘電体膜42aを長時間曝す比較例について説明する。
図14(a)〜(c)は、比較例に係る半導体装置の製造途中の断面図である。
この比較例では、まず、上記した図2(a)〜図5(b)の工程を行い、図14(a)の断面構造を得る。
但し、この比較例では、図5(b)のように第2レジストパターン47を除去した後、補償アッシングを行うまでの間キャパシタ誘電体膜42aが大気中に長時間曝される。
その結果、図14(a)に示すように、エッチング生成物42xが大気中の水分を吸収して異常成長する。そして、このエッチング生成物から出た塩酸によってキャパシタ誘電体膜42aの側面が腐食され、該側面にPZTの変質層42yが形成される。
続いて、図14(b)に示すように、図6(b)で説明した補償アッシングを行うことにより、エッチング生成物42xの除去を試みる。
しかし、この補償アッシングの前の水洗を省き、且つキャパシタ誘電体膜42aを大気中に長時間放置したため、キャパシタ誘電体膜42aの側面には異常成長したエッチング生成物42xが多く付着しており、補償アッシングではそのエッチング生成物42xを除去しきれない。
次に、図14(c)に示すように、図7(a)で説明した補償水洗を行い、エッチング生成物42xを除去する。この補償水洗では、エッチング生成物42xは除去されるものの、変質層42yは除去されない。
このように、本比較例では、本実施形態の水洗(図6(a))を省き、補償アッシングが行われるまでキャパシタ誘電体膜42aを大気中に長時間放置したため、エッチング生成物42xが異常成長する。その結果、エッチング生成物42xから多量の塩酸が発生し、その塩酸との反応によって形成された変質層42yが、補償アッシング(図14(b))や補償水洗(図14(c))によっても除去することができず、変質層42yによるリークパスの形成を抑制することができない。
以下に、本発明の特徴を付記する。
(付記1) 半導体基板の上方に下地絶縁膜を形成する工程と、
前記下地絶縁膜の上に、第1導電膜、強誘電体膜、及び第2導電膜を順に形成する工程と、
前記第2導電膜をパターニングして上部電極にする工程と、
前記強誘電体膜の上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクにしながら、ハロゲンガスを含むエッチングガスを用いて前記強誘電体膜をエッチングすることにより、キャパシタ誘電体膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
前記キャパシタ誘電体膜の側面を水洗する工程と、
前記第1導電膜をパターニングして下部電極にし、該下部電極、前記キャパシタ誘電体膜、及び前記上部電極でキャパシタを構成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記2) 前記キャパシタ誘電体膜の側面を水洗する工程は、前記レジストパターンを除去した後、前記強誘電体膜をエッチングしたときに発生したエッチング生成物が前記強誘電体膜の前記側面から突出して成長する前に行われることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記3) 前記レジストパターンを除去する工程を行ってから、前記キャパシタ誘電体膜の側面を水洗する工程を行うまでの間において、前記キャパシタ誘電体膜が大気に曝されている時間を1時間以内にすることを特徴とする付記2に記載半導体装置の製造方法。
(付記4) 前記キャパシタ誘電体膜の側面を水洗する工程は、高圧ジェット洗浄、超音波洗浄、及びバッチ洗浄のいずれかにより行われることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記5) 前記レジストパターンを除去する工程は、前記強誘電体膜をエッチングする工程の後、前記キャパシタ誘電体膜を大気に曝さないで行われることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記6) 前記レジストパターンを除去する工程は、前記半導体基板を加熱しながら酸素含有雰囲気に前記レジストパターンを曝し、該レジストパターンを灰化して行われることを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7) 前記キャパシタ誘電体膜を形成する工程において、前記ハロゲンガスとして塩素ガスを使用することを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記8) 前記キャパシタ誘電体膜の側面を水洗する工程の後に、前記半導体基板を加熱しながら、酸素含有雰囲気に前記キャパシタ誘電体膜を曝す工程を更に有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9) 前記酸素含有雰囲気に前記キャパシタ誘電体膜を曝す工程の後に、前記キャパシタ誘電体膜の側面を再び水洗する工程を行うことを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
20…シリコン基板、41…第1導電膜、41a…下部電極、42…強誘電体膜、42a…キャパシタ誘電体膜、43…第2導電膜、43a…上部電極、21…素子分離絶縁膜、22…pウェル、23a〜23c…第1〜第3ソース/ドレイン領域、24a〜24c…第1〜第3ソース/ドレインエクステンション、25a、25b…ゲート電極、26…絶縁性サイドウォール、27…高融点金属シリサイド層、28…ゲート絶縁膜、29…窒化シリコン膜、30…酸化シリコン膜、31…第1層間絶縁膜、32a〜32c…第1〜第3導電性プラグ、36…酸化防止膜、36a…酸窒化シリコン膜、36b…酸化シリコン膜、37…第1アルミナ膜、45…マスク材料膜、45a…補助マスク、46…第1レジストパターン、47…第2レジストパターン、48…第3レジストパターン、50…第2アルミナ膜、51…酸化シリコン膜、52…第3アルミナ膜、53…酸化シリコン膜、54…第2層間絶縁膜、54a〜54d…第1〜第5ホール、55…第4レジストパターン、55a、55b…第1、第2窓、57…第5レジストパターン、57c〜57d…第3〜第5窓、60a〜60e…第4〜第8導電性プラグ、62a〜62c…一層目金属配線、62d…導電性パッド、64…第9導電性プラグ、70…半導体製造装置、71…トランスファチャンバ、72…ロードロックチャンバ、73…ICPエッチングチャンバ、74…アッシングチャンバ、75〜77…ゲートバルブ、78…搬送ロボット、80…スクラバー、81…スピンナーテーブル、82…ノズル。