JP2008146737A - ディスクリートトラック媒体の製造方法および製造装置 - Google Patents

ディスクリートトラック媒体の製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】両面に磁気特性に劣化のない磁性パターンが形成され、表面の平坦性が良好なディスクリートトラック媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】基板の両面に、凸状の磁性パターンと磁性パターン間の凹部を充填する非磁性体とを含むディスクリートトラック媒体を製造する方法であって、前記磁性パターン間の凹部を充填するように第1の非磁性体を成膜し、前記第1の非磁性体の表面を改質し、前記基板を冷却し、前記第1の非磁性体上に第2の非磁性体を成膜し、前記第2および第1の非磁性体をエッチバックすることを特徴とするディスクリートトラック媒体の製造方法。
【選択図】 図2

Description

本発明はディスクリートトラック媒体の製造方法および製造装置に関する。
近年、ハードディスクドライブ(HDD)に組み込まれる磁気記録媒体において、隣接トラック間の干渉によりトラック密度の向上が妨げられるという問題が顕在化している。特に記録ヘッド磁界のフリンジ効果による書きにじみの低減は重要な技術課題である。
このような問題に対して、磁気記録層を加工して記録トラック間を物理的に分離するディスクリートトラック型パターンド媒体(DTR媒体)が提案されている。DTR媒体では、記録時に隣接トラックの情報を消去するサイドイレース現象、再生時に隣接トラックの情報を読み出すサイドリード現象などを低減できるため、トラック密度を高めることができる。したがって、DTR媒体は高記録密度を提供しうる磁気記録媒体として期待されている。
DTR媒体を浮上ヘッドで記録再生するためには、DTR媒体の表面を平坦にすることが好ましい。すなわち、現状のDTR媒体で隣接するトラック間を完全に分離するためには、たとえば厚さ約4nmの保護層と厚さ約20nmの強磁性記録層とを除去し、約24nmの深さの溝を形成して磁性パターンを形成する。一方、浮上ヘッドの設計浮上量は10nm程度であるため、深い溝が残っているとヘッドの浮上が不安定になる。このため、磁性パターン間の溝を非磁性体で充填し、媒体表面を平坦にしてヘッドの浮上安定性を確保することが行われている。
従来、磁性パターン間の溝を非磁性体で充填する際に、2段階のバイアススパッタを行う方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、DTR媒体の表面を平坦化するのに有効である。しかし、本発明者らの検討によれば、バイアススパッタ法を用いてDTR媒体の磁性パターン間の溝を非磁性体で充填した場合、基板バイアスに伴う温度上昇によって磁気記録層(磁性パターン)の磁気特性が劣化することがわかった。
基板バイアスに伴う記録層の温度上昇は、基板を強制冷却することによって回避できる。しかし、基板を強制冷却するには、基板の裏面をチラーに密着させる必要があるため、基板の裏面が傷つく。このため、バイアススパッタ法を用いると、原理的に基板の両面にパターンが形成されたDTR媒体を作製することができないことがわかった。基板の両面を加工できない場合、DTR媒体を搭載したHDDの記録容量は半減することになる。
特許第3686067号明細書
本発明の目的は、両面に磁気特性に劣化のない磁性パターンが形成され、表面の平坦性が良好なディスクリートトラック媒体の製造方法および製造装置を提供することにある。
本発明の一態様に係るディスクリートトラック媒体の製造方法は、基板の両面に、凸状の磁性パターンと磁性パターン間の凹部を充填する非磁性体とを含むディスクリートトラック媒体を製造する方法であって、前記磁性パターン間の凹部を充填するように第1の非磁性体を成膜し、前記第1の非磁性体の表面を改質し、前記基板を冷却し、前記第1の非磁性体上に第2の非磁性体を成膜し、前記第2および第1の非磁性体をエッチバックすることを特徴とする。
本発明の他の態様に係るディスクリートトラック媒体の製造装置は、両面に凸状の磁性パターンが形成された基板を鉛直に保持して搬送するキャリアと、前記磁性パターン間の凹部を充填するように第1の非磁性体を成膜するチャンバーと、前記第1の非磁性体の表面を改質するチャンバーと、前記基板を冷却するチャンバーと、前記第1の非磁性体上に第2の非磁性体を成膜するチャンバーと、前記第2および第1の非磁性体をエッチバックするチャンバーとを具備したことを特徴とする。
本発明によれば、両面に磁気特性に劣化のない磁性パターンが形成され、表面の平坦性が良好なディスクリートトラック媒体の製造方法および製造装置を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るディスクリートトラック媒体の製造方法を説明する。なお、図1(a)〜(f)および図2(g)〜(l)の断面図では、簡略化のために、基板の片面でのみ媒体膜を加工するように図示しているが、上述したように本発明においては基板の両面にパターンを形成する。
図1(a)に示したように、ガラス製のディスク基板1上に、たとえば厚さ120nmのCoZrNbからなる軟磁性下地層、厚さ20nmのRuからなる配向制御層、厚さ20nmのCoCrPt−SiO2からなる垂直記録層2、厚さ4nmのカーボンからなる保護層3を順次成膜する。ここでは、簡略化のために、軟磁性下地層および配向制御層は図示していない。保護層3上にレジスト4としてたとえば厚さ100nmのSOG(スピン・オン・グラス)をスピンコーティングする。
図3に縦置き両面スピンコーターを示す。図3は、ディスク基板の両面にレジストを塗布している状態を上方から見た斜視図である。図3に示すように、ディスク基板1をスピンドルモータ21に取り付けて鉛直に保持し、ディスク基板1の両面にディスペンサーノズル22を配置してレジストをスピンコートする。具体的には、ディスク基板1の内径をチャックして回転させる。回転数は6000rpmまで任意に変更できる。たとえば500rpmの低速回転中に、ディスペンサーノズル22をディスク基板1の内径にレジストが当たる位置まで動かし、レジストを噴射する。その後、レジストを噴射しながらディスク外周までディスペンサーノズル22を動かし、レジスト噴射を止める。その後、回転数を6000rpmまで上げ、レジストの振り切り乾燥を行う。
図1(b)に示すように、レジスト4に対向させて、金型(図5図示)に取り付けたモールド30を配置する。このモールド30を用いてインプリントを行う。
図4に示すように、このモールド30の表面には記録領域31とサーボ領域32が形成されている。記録領域31は記録トラックのパターンを含む。サーボ領域32はプリアンブル、アドレス、バーストのパターンを含む。
図5はディスク基板1とその両面に配置された金型41、42を上方から見た斜視図である。金型41、42の内側の面にはゴム系接着剤によりモールド(図1(b)図示)が装着されている。金型41、42はディスク基板1の全面に均一な荷重がかかるように専用設計されている。表面の金型41にはセンターピン41aが突出して形成され、裏側の金型42にはセンターピン41aを受け入れる穴42aが設けられている。裏側の金型42の穴42aに円滑にセンターピン41aが挿入されるように、センターピン41aには若干のテーパをつけることが好ましい。ディスク基板1を挟み込むように2枚のモールドを密着させ、30tプレス機でインプリントを行う。
図1(c)に示すように、インプリント後にモールド30をリリースし、レジスト4にモールド30の凹凸パターンを転写する。
図1(d)以降のプロセスは、図6に示した製造装置を用いて行う。このような製造装置は、たとえばキヤノンアネルバ製C3010スパッタ成膜装置を改造することによって作製できる。図6は本発明の実施形態に係る製造装置を上方から見た上面図である。この製造装置は、ロード/アンロード(L/UL)チャンバー100、ICP(誘導結合プラズマ)エッチングチャンバー101、ECR(電子サイクロトロン共鳴)イオンガンチャンバー102、ICPエッチングチャンバー103、スパッタリングチャンバー104、ECRイオンガンチャンバー105、冷却チャンバー106、スパッタリングチャンバー107、ECRイオンガンチャンバー108、保護層形成チャンバー109を有する。通常の状態では、すべてのチャンバーは高真空(1.0×10-4Pa以下)に保たれる。
図7に、製造装置内でディスク基板を搬送するために用いるキャリア50を示す。図7はキャリアを正面から見た正面図である。キャリア50の中央にはディスク基板1がセットされる孔が形成され、ディスク基板1の周縁部を両側から爪51で把持できるようになっている。ディスク基板1はキャリア50によって鉛直に保持された状態で搬送される。
図6の製造装置のL/ULチャンバー100にディスク基板1をセットし、キャリア50を用いてディスク基板1をまずICPエッチングチャンバー101へ搬送する。ICPエッチングチャンバー101では、チャンバー内にO2、CF4などのガスを導入し、コイルによって誘導結合プラズマ(ICP)を発生させ、基板を載置した陰極(プラテン)によりプラズマ中のイオンやラジカルを引き寄せることによって反応性イオンエッチング(RIE)を行う。図1(d)に示すように、ICPエッチングチャンバー101において、レジスト4の凹部の底に残っているレジスト残渣を除去する。たとえば、プロセスガスとしてCF4を用い、チャンバー圧を2mTorrとし、コイルRFおよびプラテンRFをそれぞれ100Wとしてプラズマを発生させ、30秒間エッチングする。
次に、基板を図6の製造装置のECRイオンガンチャンバー102へ搬送する。ECRイオンガンチャンバー102では、ECR(電子サイクロトロン共鳴)により発生させたプラズマ中でAr、O2、CF4などのガスをイオン化し、グリッドで加速して基板表面に原子を衝突させてエッチングする。図1(e)に示すように、ECRイオンガンチャンバー102で、レジストパターンを耐エッチングマスクとして保護層3および垂直記録層2をエッチングして磁性パターンを形成する。たとえば、プロセスガスとしてArを流し、ECRイオンガンを用いて、マイクロ波パワー800W、加速電圧500VでArイオンを3分間照射してエッチングする。こうして、磁性パターン(および保護層3)を分断する深さ24nmの凹部を形成する。
次に、基板を図6の製造装置のICPエッチングチャンバー103へ搬送する。このICPエッチングチャンバー103はICPエッチングチャンバー101と同様の機能を有する。図1(f)に示すように、ICPエッチングチャンバー103で、レジスト(SOG)4を剥離する。たとえば、プロセスガスとしてCF4を用い、チャンバー圧を100mTorrとし、コイルRFおよびプラテンRFをそれぞれ100Wとしてプラズマを発生させ、30秒間エッチングする。
以上の図1(a)〜(f)はDTR媒体の製造方法として一般的な工程を示している。以下の図2(g)〜(l)は本発明の特徴的な工程を含んでいる。
図2(g)は第1の非磁性体を成膜する工程を示している。基板を図6の製造装置のスパッタリングチャンバー104へ搬送し、磁性パターン間の凹部に非磁性体5を埋め込む。非磁性体5は特に限定されないが、ここではSiOCを用いる場合について説明する。チャンバー内にSiCターゲットを設置し、Ar流量80sccmおよびO2流量20sccm(酸素混合比20%)でスパッタリングガスを導入してチャンバー内の圧力を7Paに設定し、スパッタ時間140秒で厚さ100nmのSiOCを成膜する。非磁性体5の埋め込み膜厚は30〜100nmが好適である。埋め込み膜厚が24nm以下になると、後の工程において垂直記録層にダメージを与える可能性があるので好ましくない。図2(g)に示すように、この工程では、非磁性体5の表面は平坦にならず、凹部の深さは約24nmのままであるが、凹部の幅は狭くなる。凹部に欠陥なく非磁性体を埋め込むためには高圧スパッタリングを行うことが好適である。これは、高圧スパッタリングを行うと、スパッタ粒子が様々な方向から凹部に入射し、凹部側壁のカバレッジがよくなるためである。しかし、高圧スパッタリングによって埋め込まれた非磁性体の表面は粗くなる。すなわち、加工前および加工後の垂直記録層(および保護層)の表面粗さは約0.6nmであるが、埋め込み後の非磁性体の表面粗さは1〜2nm程度に増加する。
図2(h)は非磁性体の表面を改質する工程を示している。基板を図6の製造装置のECRイオンガンチャンバー105へ搬送し、非磁性体5の表面を改質する。たとえば、ECRイオンガンを用いて、マイクロ波パワー800W、加速電圧500VでArイオンを60秒照射する。この条件は、SiOCを50nmエッチングする条件である。この結果、非磁性体5の表面粗さは0.6nm(加工前の垂直記録層の表面粗さと同等)まで減少する。また、非磁性体5表面の凹部の深さが約12nmまで減少する。このように、表面改質を経ることによって、表面粗さが減少し、凹部の深さが半減する。この工程は媒体表面を改質するのが目的であるため、ECRイオンガンによるプロセス時間はそれほど重要なパラメータにはならない。イオン照射時間を長くするほど、表面粗さを低減させる効果と凹部の深さを減少させる効果は増すが、その分、第1の非磁性体を成膜する工程(g)で非磁性体を厚く成膜する必要がある。
プロセスガスとして、Ar単独の代わりに、Arと酸素の混合ガスを用いてもよい。この場合、Ar単独の場合と比較して、表面粗さを低減させる効果は劣るが、凹部の深さを減少させる効果は大きくなる。第1の非磁性体を成膜する工程(g)で、SiOC、SiO2、SiC、SiNなどのSi系非磁性体を用いた場合には、プロセスガスとしてArとCF4などのフッ素系ガスの混合ガスを用いることができる。この場合にも、Ar単独の場合と比較して、表面粗さを低減させる効果は劣るが、凹部の深さを減少させる効果は大きくなる。
図2(i)は基板を冷却する工程を示している。基板を図6の製造装置の冷却チャンバー106へ搬送して冷却する。ここで、冷却チャンバー106を高真空(1.0×10-4Pa以下)に保持して基板を放置するという方法で冷却を行うと、輻射による冷却効果しか期待できないため冷却時間が非常に長くかかる。そこで、冷却チャンバー106にガス導入ラインを設け、ArまたはN2を冷却チャンバー106に導入して圧力を10〜1Paにする。こうすれば、輻射による冷却効果に加え、ガス分子の伝導による冷却効果も期待できる。また、ガス導入ラインとは別にアルコール導入ラインを設けてもよい。アルコール導入ラインから、メタノール、エタノールなどの揮発性の高いアルコールを導入すると、断熱膨張で急激に冷却チャンバー106の内部を冷却することができる。この現象を利用することにより、さらに高スループットで基板を冷却することができる。図2(i)の工程では、たとえば冷却チャンバー106にArを100sccmの流量で導入してチャンバー圧力を7Paになるように調整し、30秒保持することによって基板を冷却する。
なお、特開平11−203734号公報には、表面に微細な凹凸が形成された冷却ブロックを基板に接近するように設け、冷却ブロックと基板との間にヘリウムまたは水素を導入する冷却機構が記載されている。これに対して、本発明の製造装置には、このような冷却ブロックを設ける必要はない。特開平11−203734号公報では安全上問題のある水素や高価なヘリウムを用いているため量産性を考慮すると好ましくないが、本発明ではArもしくはN2またはメタノールやエタノールなどのアルコールを用いるので量産性に有利である。
図2(j)は第2の非磁性体を成膜する工程を示している。基板を図6の製造装置のスパッタリングチャンバー107へ搬送し、第1の非磁性体5上に第2の非磁性体6を成膜する。非磁性体6は特に限定されないが、ここではSiOCを用いる場合について説明する。たとえば、チャンバー内にSiCターゲットを設置し、Ar流量80sccmおよびO2流量20sccm(酸素混合比20%)でスパッタリングガスを導入してチャンバー内の圧力を0.52Paに設定し、スパッタ時間70秒で厚さ50nmのSiOCを成膜する。
低圧スパッタリングにより非磁性体を成膜すると、表面粗さを増大させることがない。このため、表面改質工程(h)で表面粗さを低減させた媒体表面に、この工程で第2の非磁性体6を成膜することにより、媒体表面粗さを大幅に低減できる。なお、この工程を高圧スパッタリングで行ってもよいが、その場合には第2の非磁性体6の膜厚を薄くすることが重要になる。これは、高圧スパッタリングで50nm以上の厚膜を成膜すると表面粗さが増大するためである。このような理由で、第2の非磁性体6の膜厚は50nm以下が好適であるが、この限りではない。表面改質工程(h)で凹凸高さがあまり低くならない場合は厚膜を形成するのが好ましい。ただし、50nm以上の厚膜に成膜した場合、表面粗さが大きくなる傾向があるため、できる限り薄膜を形成するのがよい。
第2の非磁性体6の材料は、第1の非磁性体5の材料と同一でもよいし同一でなくてよい。たとえば、第1の非磁性体5としてSiO2を用い、第2の非磁性体6としてカーボン(C)を用いてもよい。SiO2はRFスパッタリングで形成するのが一般的であるが、RFスパッタリングではプロセスダストが多くなりがちなため、表面粗さの小さな厚膜を形成するのが非常に困難である。そこで、第1の非磁性体5としてSiO2を成膜し、表面改質工程で表面粗さを低減させた後、第2の非磁性体6として表面粗さをそれほど増大させることがないカーボンを成膜することにより、表面粗さの小さなDTR媒体を得ることができる。
通常、凹部を充填する非磁性体としては、凸部の磁性パターンと磁気的結合(交換結合や反強磁性結合)を生じることがなく、かつ合金化しないように、酸化物が好まれる。しかし、SiO2のような酸化物はRFスパッタリングで成膜する必要があり、上述したように表面粗さの小さな厚膜を形成するのが難しい。一方、金属系の材料は表面粗さが小さな厚膜を形成するのが容易であり、特にCu、Al、Ag、Auのようにリフローする金属材料を用いると、表面を平坦化することがさらに容易になる。ただし、金属材料を用いた場合、磁性パターンとの合金化や磁気的結合が生じるため埋め込み剤として不適当であると考えられていた。しかし、本発明においては、第2の非磁性体として、金属材料たとえばTi、Ta、W、Pt、Pd、Ru、Rhなどや、リフロー金属Cu、Al、Ag、Auを用いることができる。これは、磁性パターン間の凹部には、第1の非磁性体が充填されたままであるからである。
図2(k)は第2および第1の非磁性体をエッチバックする工程を示している。基板を図6の製造装置のECRイオンガンチャンバー108へ搬送し、ECRイオンガンを用いて、余分な第2の非磁性体6および第1の非磁性体5をエッチバックする。たとえばプロセスガスとしてArを用い、マイクロ波パワー800W、加速電圧700Vでエッチングする。エッチバック終点検出はQ−MASS(四重極式質量分析計)を用いて、表面のCoが検出されるまで行う(約3分間)。本発明の製造方法では、表面改質工程(h)でどの程度非磁性体がエッチングされるか正確にわからないため、この工程でのエッチング時間は目安にしかならない。Q−MASSまたは他のエッチング終点検出器(たとえばSIMS:二次イオン質量分析器)でエッチバック終点を検出することで、高精度なエッチバックが可能となる。
図2(l)は保護層を形成する工程を示している。基板を図6の製造装置の保護層形成チャンバー109へ搬送し、保護層7を形成する。原料ガスにC24などを用いたCVD(化学気相堆積法)によってカーボン保護層を成膜するのが好適だが、簡便なDCスパッタリングでカーボン保護層を成膜してもよい。
さらに、保護層7上に潤滑剤を塗布することによって、本発明に係るDTR媒体を製造する。
本発明の方法によれば、第1の非磁性体成膜工程(g)および表面改質工程(h)と、第2の非磁性体成膜工程(j)およびエッチバック工程(k)との間に、冷却工程(i)を行うことにより、磁性パターンが過度に加熱することがなくなり、その磁気特性の劣化を防止できる。同様に、磁性パターン間に充填される非磁性体も過度に過熱に加熱することがなくなり、非磁性体の膜剥がれもなくなる。
図2(g)〜(i)に示した、第1(または第2)の非磁性体の成膜工程、第1(または第2)の非磁性体の表面改質工程、および基板の冷却工程は2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回繰り返すことによって、表面における凹部の深さおよび表面粗さをより減少することができる。これらの工程を4回以上繰り返すと、表面は非常に平坦になる。
図2(g)〜(i)の工程を複数回繰り返す場合は、図2(i)の工程まで経た基板を保持したキャリアを冷却チャンバー106からスパッタリングチャンバー104へ戻し、再び図2(g)〜(i)の工程を行う。
実施例1
図1(a)〜(f)および図2(g)〜(l)に示した方法に従ってDTR媒体を作製した。モールドとして、図4に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト)と記録トラックが凹凸パターンで形成されたものを用いた。
第1の非磁性体成膜工程(g)において高圧(7.0Pa)下でSiOCを100nm成膜し、表面改質工程(h)においてECRイオンガンを用いマイクロ波パワー800W、加速電圧500VでArイオンを60秒照射し、SiOCをエッチングすることによって表面改質した。冷却工程(i)において、冷却チャンバー106にArを100sccmの流量で導入してチャンバー圧力を7.0Paに調整し30秒保持することによって基板を冷却した。第2の非磁性体成膜工程(j)において低圧(0.52Pa)下でSiOCを50nm成膜し、エッチバック工程(k)においてECRイオンガンによるエッチバックを終点検出器によって表面のCoを検出するまで行い、余剰なSiOCを除去した。保護層形成工程(l)においてスパッタリングにより厚さ4nmのカーボン保護層を成膜してDTR媒体を得た。
カー(Kerr)測定装置でこのDTR媒体の磁気特性を評価したところ、保磁力(Hc)が4.8kOe、残留保磁力(Hn)が2.0kOe、飽和磁界が8.0kOeであった。これらの磁気特性は、加工前の垂直記録層の値と変わらず、磁気特性に変化がないことがわかった。また、DTR媒体の外周部ミラー面(パターンのない部分)を光学顕微鏡で観察したところ、膜剥がれらしきものは観測されなかった。
比較例1
冷却工程(i)を行わなかった以外は実施例1と同様の工程でDTR媒体を作製した。カー測定装置でこのDTR媒体の磁気特性を評価したところ、保磁力(Hc)が5.2kOe、残留保磁力が(Hn)1.8kOe、飽和磁界(Hs)が10.0kOeであった。このように、加工前の垂直記録層と比べて、HcおよびHsの増大が認められた。これは、第1の非磁性体成膜工程(g)、表面改質工程(h)、第2の非磁性体成膜工程(j)、およびエッチバック工程(k)を連続的に行ったため、基板が過熱されて磁性パターンを形成する強磁性体の磁気特性が変化したのが原因であると思われる。
現行の記録ヘッドでは、媒体のHsが8kOe程度であれば飽和記録が可能である。しかし、比較例1の媒体ではHsが10kOeと大きいので、現行の記録ヘッドでは良好な記録(飽和記録)ができないおそれがある。
比較例1のDTR媒体の外周部ミラー面(パターンのない部分)を光学顕微鏡で観察したところ、膜剥がれらしきものは観測されなかった。
実施例2
図2(g)〜(i)の工程を4回繰り返したこと以外は実施例1と同様の工程でDTR媒体を作製した。冷却工程(i)において、冷却チャンバー106にArを100sccmの流量で導入してチャンバー圧力を7.0Paに調整し30秒保持することによって基板を冷却した。このDTR媒体を断面TEMで観測したところ、表面が非常に平坦になっていた。カー測定装置でこのDTR媒体の磁気特性を評価したところ、Hcが4.8kOe、Hnが2.0kOe、Hsが8.0kOeであった。これらの磁気特性は、加工前の垂直記録層の値と変わらず、磁気特性に変化がないことがわかった。また、DTR媒体の外周部ミラー面(パターンのない部分)を光学顕微鏡で観察したところ、膜剥がれらしきものは観測されなかった。
比較例2
冷却工程(i)を行わなかった以外は実施例2と同様の工程でDTR媒体を作製した。このDTR媒体を断面TEMで観測したところ、表面が非常に平坦になっていた。カー測定装置でこのDTR媒体の磁気特性を評価したところ、Hcが2.0kOe、Hnがゼロ、Hsが4.0kOeであった。このDTR媒体は磁気特性が加工前の垂直記録層と比較して著しく劣化している。すなわち、Hnがゼロということは、垂直記録方式で記録が時間ととともに消失してしまうことを意味しており、磁気記録媒体として適さない。これは、比較例1と同様に、プロセス中に基板が過熱されるのが原因である。より具体的には、冷却なしにイオンビーム照射工程を計5回行ったことから、熱が蓄積され磁性パターンの磁気特性を劣化させたと推測される。
また、DTR媒体の外周部ミラー面(パターンのない部分)を光学顕微鏡で観察したところ、膜剥がれらしきものが観測された。これは、ミラー部に形成された非磁性体(SiOC)は大きな応力がかかった状態で密着していると推測されるが、この部分が過熱されて応力緩和が生じ、膜剥がれにつながったと考えられる。
実施例3
図2(g)〜(i)の工程を4回繰り返したこと以外は実施例1と同様の工程でDTR媒体を作製した。ただし、冷却工程(i)において、冷却チャンバー106にArを100sccmの流量で導入してチャンバー圧力を7.0Paに調整し、冷却時間を300秒まで変化させた。そして、図2(l)の工程の直後に基板温度を測定した。
図8に、冷却時間と基板温度との関係を示す。図8から以下のことがわかる。冷却を行わない場合には基板温度が350℃を超える。しかし、短時間でも冷却工程を行うと、基板温度は急激に低下する。3秒以上の冷却時間で200℃以下、10秒以上の冷却時間で100℃以下まで基板温度を低下できることがわかる。磁性パターンの磁気特性の変化は基板温度が200℃以上で生じるため、3秒以上の冷却工程を行うことが有効であることがわかった。図8のグラフの傾きは冷却時間が10秒以上では緩やかになっており、10秒までの冷却時間で十分大きな冷却効果が得られ、10秒を超えて冷却してもそれほど有効な冷却効果は得られないことがわかる。冷却時間を長くするとDTR媒体の製造スループットが低下するため、可能な限り冷却時間を短くするのが好適である。このため、冷却時間は10秒程度が好ましい。
実施例4
実施例3と同様の工程でDTR媒体を作製した。所定の冷却時間で複数枚のDTR媒体を作製し、外周部膜剥がれの頻度を調べた。
図9に冷却時間と膜剥がれ確率との関係を示す。図9から以下のことがわかる。冷却を行わない場合には、ほとんど全てのDTR媒体で外周部膜剥がれが生じた。冷却時間を3秒とした場合、外周部膜剥がれが見られたのは10試料中3試料となった。冷却時間を100秒とした場合、外周部膜剥がれは全く見られなかった。冷却時間を10秒以上とすることにより、膜剥がれ確率が10%以下になることがわかった。磁気特性変化の防止とスループットの観点では冷却時間が10秒であることが好適であるが、10枚中1枚に外周部膜剥がれが生じることから歩留りが悪い。量産性を考慮すると、膜剥がれが完全に生じなくなる100秒の冷却時間が好適である。冷却時間をこれ以上長くすると、スループットの低下につながる。
実施例3および4の結果から、以下のことを結論できる。磁気特性変化、外周部膜剥がれ、スループットを考慮する、最適な冷却時間範囲は3秒〜100秒である。現実的には30秒程度の冷却時間が好適である。また、歩留りが低下しても、スループットが高ければ問題ないので、この観点からは、冷却時間は10秒程度が好ましいと考えられる。
なお、以上の例では、冷却チャンバーにArを導入したが、N2を用いた場合にも同様の結果が得られた。
実施例5
冷却工程において、1.0×10-4Pa以下の高真空に保持した冷却チャンバーに微量のエタノールを噴霧させたこと以外は実施例1と同様にしてDTR媒体を作製した。冷却時間(チャンバー内での保持時間)を特に設けず、次の工程を行った。カー測定装置で得られたDTR媒体の磁気特性を評価したところ、加工前の垂直記録層の磁気特性から変化がないことがわかった。外周部を光学顕微鏡で観察したが、外周部膜剥がれは見られなかった。
また、実施例2と同様に図2(g)〜(i)の工程を4回繰り返してDTR媒体を作製した。得られたDTR媒体は、磁気特性変化が認められず、外周部膜剥がれも生じなかった。
エタノールは真空へ導入されたことによって揮発し、断熱膨張で急激に周囲を冷却する。この効果によって基板が急冷されたと思われる。エタノールの代わりにメタノールを用いた場合にも同様の効果が得られた。
以上においてはDTR媒体の製造方法について説明したが、本発明は径方向および円周方向に分断された記録セルを有するビットパターンド媒体にも応用できる。
次に、本発明において用いられる好適な材料について説明する。
<基板>
基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化表面を有するSi単結晶基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アモルファスガラスおよび結晶化ガラスが用いられる。アモルファスガラスとしては、汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスが挙げられる。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスが挙げられる。セラミック基板としては、汎用の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの繊維強化物などが挙げられる。基板としては、上述した金属基板や非金属基板の表面にメッキ法やスパッタ法を用いてNiP層が形成されたものを用いることもできる。
<軟磁性下地層>
軟磁性下地層(SUL)は、垂直磁磁気記録層を磁化するための単磁極ヘッドからの記録磁界を水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、磁界の記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる作用を有する。軟磁性下地層には、Fe、NiまたはCoを含む材料を用いることができる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金、FeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどを挙げることができる。Feを60at%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。軟磁性下地層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Co合金には80at%以上のCoが含まれることが好ましい。このようなCo合金は、スパッタ法により製膜した場合にアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示すとともに、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNbおよびCoZrTa系合金などを挙げることができる。
軟磁性下地層の下に、軟磁性下地層の結晶性の向上または基板との密着性の向上のために、さらに下地層を設けてもよい。こうした下地層の材料としては、Ti、Ta、W、Cr、Pt、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。軟磁性下地層と記録層との間に、非磁性体からなる中間層を設けてもよい。中間層は、軟磁性下地層と記録層との交換結合相互作用を遮断し、記録層の結晶性を制御する、という2つの作用を有する。中間層の材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。
スパイクノイズ防止のために軟磁性下地層を複数の層に分け、0.5〜1.5nmのRuを挿入することで反強磁性結合させてもよい。また、CoCrPt、SmCo、FePtなどの面内異方性を持つ硬磁性膜またはIrMn、PtMnなどの反強磁性体からなるピン層と軟磁性層とを交換結合させてもよい。交換結合力を制御するために、Ru層の上下に磁性膜(たとえばCo)または非磁性膜(たとえばPt)を積層してもよい。
<磁気記録層>
垂直磁気記録層としては、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、さらに酸化物を含む材料を用いることが好ましい。垂直磁気記録層は、必要に応じて、Crを含んでいてもよい。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化チタンが好適である。垂直磁気記録層は、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)が分散していることが好ましい。この磁性粒子は、垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造であることが好ましい。このような構造を形成することにより、垂直磁気記録層の磁性粒子の配向および結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)を得ることができる。このような構造を得るためには、含有させる酸化物の量が重要となる。
垂直磁気記録層の酸化物含有量は、Co、Cr、Ptの総量に対して、3mol%以上12mol%以下であることが好ましく、5mol%以上10mol%以下であることがより好ましい。垂直磁気記録層の酸化物含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁気記録層を形成した際、磁性粒子の周りに酸化物が析出し、磁性粒子を分離させ、微細化させることができるためである。酸化物の含有量が上記範囲を超えた場合、酸化物が磁性粒子中に残留し、磁性粒子の配向性、結晶性を損ね、さらには、磁性粒子の上下に酸化物が析出し、結果として磁性粒子が垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。酸化物の含有量が上記範囲未満である場合、磁性粒子の分離、微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)が得られなくなるため好ましくない。
垂直磁気記録層のCr含有量は、0at%以上16at%以下であることが好ましく、10at%以上14at%以下であることがより好ましい。Cr含有量として上記範囲が好ましいのは、磁性粒子の一軸結晶磁気異方性定数Kuを下げすぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるためである。Cr含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子のKuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子の結晶性、配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。
垂直磁気記録層のPt含有量は、10at%以上25at%以下であることが好ましい。Pt含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁性層に必要なKuが得られ、さらに磁性粒子の結晶性、配向性が良好であり、結果として高密度記録に適した熱揺らぎ特性、記録再生特性が得られるためである。Pt含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性、配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。Pt含有量が上記範囲未満である場合、高密度記録に適した熱揺らぎ特性に十分なKuが得られないため好ましくない。
垂直磁気記録層は、Co、Cr、Pt、酸化物のほかに、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進し、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性、配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
垂直磁気記録層としては、CoPt系合金、CoCr系合金、CoPtCr系合金、CoPtO、CoPtCrO、CoPtSi、CoPtCrSi、ならびにPt、Pd、Rh、およびRuからなる群より選択された少なくとも一種を主成分とする合金とCoとの多層構造、さらに、これらにCr、BおよびOを添加したCoCr/PtCr、CoB/PdB、CoO/RhOなどを使用することもできる。
垂直磁気記録層の厚さは、好ましくは5ないし60nm、より好ましくは10ないし40nmである。この範囲であると、より高記録密度に適した磁気記録再生装置を作製することができる。垂直磁気記録層の厚さが5nm未満であると、再生出力が低過ぎてノイズ成分の方が高くなる傾向がある。垂直磁気記録層の厚さが40nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。垂直磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。垂直磁気記録層の垂直角型比は、0.8以上であることが好ましい。垂直角型比が0.8未満であると、熱揺らぎ耐性に劣る傾向がある。
<保護層>
保護層は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ目的で設けられる。保護層の材料としては、たとえばC、SiO2、ZrO2を含むものが挙げられる。保護層の厚さは1ないし10nmとすることが好ましい。これにより、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。カーボンは、sp2結合炭素(グラファイト)とsp3結合炭素(ダイヤモンド)に分類できる。耐久性、耐食性はsp3結合炭素のほうが優れるが、結晶質であることから表面平滑性はグラファイトに劣る。通常、カーボンの成膜はグラファイトターゲットを用いたスパッタリング法で形成される。この方法では、sp2結合炭素とsp3結合炭素が混在したアモルファスカーボンが形成される。sp3結合炭素の割合が大きいものはダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれ、耐久性、耐食性に優れ、アモルファスであることから表面平滑性にも優れるため、磁気記録媒体の表面保護層として利用されている。CVD(chemical vapor deposition)によるDLCの成膜は、原料ガスをプラズマ中で励起、分解し、化学反応によってDLCを生成させるため、条件を合わせることで、よりsp3結合炭素に富んだDLCを形成することができる。
次に、本発明における、各工程の好適な条件について説明する。
<インプリント>
基板の表面にレジストをスピンコート法で塗布し、モールドを押し付けることにより、レジストにモールドのパターンを転写する。レジストとしては、たとえば一般的なノボラック系のフォトレジストや、スピンオングラス(SOG)を用いることができる。サーボ情報と記録トラックに対応する凹凸パターンが形成されたモールドの凹凸面を、基板のレジストに対向させる。このとき、ダイセットの下板にモールド、基板、バッファ層を積層し、ダイセットの上板で挟み、たとえば2000barで60秒間プレスする。インプリントによってレジストに形成されるパターンの凹凸高さはたとえば60〜70nmである。この状態で約60秒間保持することにより、排除すべきレジストを移動させる。また、モールドにフッ素系の剥離材を塗布することで、モールドをレジストから良好に剥離することができる。
<残渣除去>
RIE(反応性イオンエッチング)により、レジストの凹部の底に残存している残渣を除去する。このとき、レジストの材料に応じて適切なプロセスガスを用いる。プラズマソースは、低圧で高密度プラズマを生成可能なICP(Inductively Coupled Plasma)が好適であるが、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマや、一般的な平行平板型RIE装置を用いてもよい。
<磁気記録層のエッチング>
残渣を除去した後、レジストパターンをエッチングマスクとして用い、磁気記録層を加工する。磁気記録層の加工には、Arイオンビームを用いたエッチング(Arイオンミリング)が好適であるが、Clガス、またはCOとNH3の混合ガスを用いたRIEでもよい。COとNH3の混合ガスを用いたRIEの場合、エッチングマスクにはTi、Ta、Wなどのハードマスクを用いる。RIEを用いた場合、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付着しにくい。いかなる材料でもエッチング可能なArイオンミリングで磁気記録層を加工する場合、たとえば加速電圧を400Vとし、イオン入射角度を30°、70°と変化させてエッチングを行うと、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付着しにくい。ECRイオンガンを用いたミリングにおいては、静止対向型(イオン入射角90°)でエッチングすると、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付着しにくい。
<レジスト剥離>
磁気記録層をエッチングした後、レジストを剥離する。レジストとして一般的なフォトレジストを用いた場合、酸素プラズマ処理を行うことによって容易に剥離することができる。具体的には、酸素アッシング装置を用い、たとえばチャンバー圧を1Torr、パワーを400Wとし、処理時間を5分としてフォトレジストを剥離する。レジストとしてSOGを用いた場合、フッ素系ガスを用いたRIEでSOGを剥離する。フッ素系ガスとしてはCF4やSF6が好適である。なお、フッ素系ガスが大気中の水と反応してHF、H2SO4などの酸が生じることがあるため、水洗を行うことが好ましい。
<非磁性体の埋め込み>
レジスト剥離後、磁性パターン間の凹部に非磁性体を埋め込む。非磁性体は、プロセスダストが生じにくい通常のスパッタ法で成膜することが好ましい。非磁性体としては、SiOC、SiO2、TiOx、SiO2、Al23などの酸化物;Si34、AlN、TiNなどの窒化物;TiCなどの炭化物;BNなどの硼化物;C、Siなどの単体などから幅広く選択できる。
<非磁性体エッチバック>
磁性パターンが露出するまでエッチバックを行う。このエッチバックプロセスは、たとえばArイオンミリングを用いて行うことができる。SiO2などのシリコン系の非磁性体を用いた場合には、フッ素系ガスを用いたRIEによりエッチバックを行ってもよい。また、ECRイオンガンを用いて非磁性体をエッチバックしてもよい。
<保護層形成および後処理>
エッチバック後、カーボン保護層を形成する。カーボン保護層は、CVD法、スパッタ法、または真空蒸着法により成膜することができる。CVD法によれば、sp3結合炭素を多く含むDLC膜が形成される。保護層の膜厚は、2nm未満だとカバレッジが悪くなり、10nmを超えると磁気ヘッドと媒体との磁気スペーシングが大きくなってSNRが低下するので好ましくない。保護層上に潤滑剤を塗布する。潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
本発明に係るDTR媒体の製造方法を示す断面図。 本発明に係るDTR媒体の製造方法を示す断面図。 ディスク基板の両面にレジストを塗布している状態を上方から見た斜視図。 モールド表面の凹凸パターンを示す平面図。 ディスク基板とその両面に配置された金型を上方から見た斜視図。 本発明に係るDTR媒体の製造装置を上方から見た上面図。 キャリアを正面から見た正面図。 冷却チャンバーでの冷却時間と基板温度との関係を示す図。 冷却チャンバーでの冷却時間と膜剥がれ確率との関係を示す図。
符号の説明
1…ディスク基板、2…垂直記録層、3…保護層、4…レジスト、5…第1の非磁性体、6…第2の非磁性体、7…保護層、21…スピンドルモータ、22…ディスペンサーノズル、30…モールド、31…記録領域、32…サーボ領域、41、42…金型、41a…センターピン、42a…穴、50…キャリア、51…爪、100…ロード/アンロード(L/UL)チャンバー、101…ICPエッチングチャンバー、102…ECRイオンガンチャンバー、103…ICPエッチングチャンバー、104…スパッタリングチャンバー、105…ECRイオンガンチャンバー、106…冷却チャンバー、107…スパッタリングチャンバー、108…ECRイオンガンチャンバー、109…保護層形成チャンバー。

Claims (6)

  1. 基板の両面に、凸状の磁性パターンと磁性パターン間の凹部を充填する非磁性体とを含むディスクリートトラック媒体を製造する方法であって、
    前記磁性パターン間の凹部を充填するように第1の非磁性体を成膜し、
    前記第1の非磁性体の表面を改質し、
    前記基板を冷却し、
    前記第1の非磁性体上に第2の非磁性体を成膜し、
    前記第2および第1の非磁性体をエッチバックする
    ことを特徴とするディスクリートトラック媒体の製造方法。
  2. 前記第1または第2の非磁性体を成膜し、前記第1または第2の非磁性体の表面を改質し、前記基板を冷却する操作を2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1に記載のディスクリートトラック媒体の製造方法。
  3. 前記基板を冷却する時間は3秒以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクリートトラック媒体の製造方法。
  4. 前記基板が保持された真空チャンバー内にArまたは窒素を導入することによって、前記基板を冷却することを特徴とする請求項1に記載のディスクリートトラック媒体の製造方法。
  5. 前記基板が保持された真空チャンバー内でメタノールまたはエタノールを揮発させることによって、前記基板を冷却することを特徴とする請求項1に記載のディスクリートトラック媒体の製造方法。
  6. 両面に凸状の磁性パターンが形成された基板を鉛直に保持して搬送するキャリアと、
    前記磁性パターン間の凹部を充填するように第1の非磁性体を成膜するチャンバーと、
    前記第1の非磁性体の表面を改質するチャンバーと、
    前記基板を冷却するチャンバーと、
    前記第1の非磁性体上に第2の非磁性体を成膜するチャンバーと、
    前記第2および第1の非磁性体をエッチバックするチャンバーと
    を具備したことを特徴とする請求項1に記載のディスクリートトラック媒体の製造装置。
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