図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態を示すものである。本実施形態において、工具本体1は、鋼材等により一体に形成されて、前後に延びる中心軸線Oを中心とした外形が多段の概略円柱状をなしており、その後端側(図2および図3において右側)には当該工具本体1を複合加工機等の工作機械の主軸に取り付けるためのシャンク部2が形成されるとともに、このシャンク部2の前端側(図2および図3において左側)にはシャンク部2よりも一段拡径したフランジ部3が形成されている。
ここで、本実施形態では、このシャンク部2は後端側に向けて漸次縮径する円錐台状の外周面を有する筒状とされ、その内部に主軸の取付孔に設けられた引込機構が挿入されて、この引込機構によって取付孔に引き込まれつつ上記外周面が僅かに拡径させられることにより、この外周面と取付孔内周面および上記フランジ部3の後端面と主軸の先端面とが密着させられて該主軸に工具本体1を支持する、HSKタイプのシャンクとされている。また、フランジ部3の外周には、工具本体1を上記主軸に着脱する際に工作機械のATCのアームによって把持される環状溝3aと、工具本体1が主軸に装着されたときの回転位置を位置決めする切欠部3bとが形成されている。
さらに、このフランジ部3から前端側に向けて工具本体1は、その外周面が、フランジ部3よりも一段縮径し、次いで前端側に向かうに従い漸次僅かに縮径した後、前端部で一段拡径し、さらに前端側に向かうに従い漸次僅かに拡径しつつ前端面1aで上記フランジ部3よりは小さな径となるように形成されており、この拡径した前端部の外周側にインサート取付座4が形成されている。ただし、前端部の外径がフランジ部3より大きくてもよい。ここで、本実施形態では、この工具本体1の前端部外周に、中心軸線Oに直交する断面においてこの前端部外周をL字状に切り欠くようにして後端側に延びるチップポケット5が形成されており、工具本体1の周方向を向くこのチップポケット5の2つの内壁面のうち一方の内壁面5aの前端外周の角部に上記インサート取付座4が形成されている。
このインサート取付座4は、上記内壁面5aから一段凹んで工具本体1の前端部の外周面と前端面1aとに開口する凹所として形成されており、内壁面5aに対して平行に一段後退する底面4aと、この底面4aから垂直に屹立して上記内壁面5aに至る前端側を向く壁面4bおよび外周側を向く壁面4cとを備えている。なお、上記底面4aの略中央部には図示されない止まり孔が穿設されている。そして、このインサート取付座4は後述する切削インサート6の平面形状に合わせて、本実施形態ではその底面4aが工具本体1の前端外周側と後端内周側とに鋭角角部を有する菱形状に形成され、従って上記壁面4b,4cも互いに鋭角に交差する方向に延設されることになる。
なお、内壁面5aは、工具本体1の拡径した上記前端部の部分では後端側に向かうに従い漸次***する傾斜平面状とされるとともに、これよりも後端側では図3に示すように凹所5bを介して、凹曲面状をなして外周側に切れ上がるように形成されている。従って、インサート取付座4の底面4aも同様に後端側に向かうに従い漸次***する傾斜平面状とされる。また、この内壁面5aに周方向に対向するチップポケット5の他方の内壁面5cは、一方の内壁面5aに交差する部分では該内壁面5aに略直交する平面とされるとともに、工具本体1の上記前端部の前端外周側の部分では、工具本体1の前端内周側から後端外周側に延びる稜線Lを介して、上記平面に鈍角に交差して前端外周側に向かうに従い漸次後退するように曲折する平面とされている。
さらに、上記インサート取付座4に取り付けられる切削インサート6は、本実施形態では超硬合金等の硬質材料により菱形平板状に形成されたものであって、一対の菱形面とその周囲に直交して配置される4つの側面とを有し、これらの菱形面と側面との交差稜線部に、該菱形面の一対の鋭角角部をコーナ部とする切刃7が形成されたネガティブ切削インサートとされている。従って、この切削インサート6は、上記一対の菱形面の各2つの鋭角角部をそれぞれコーナ部として合計4回の使い回しが可能となる。より詳しくは、本実施形態の切削インサート6は、上記コーナ部における鋭角角部の角度が80°で逃げ角は0°、インサート精度は焼結肌のままのいわゆるM級でチップブレーカを備えないCNMGタイプのインサートとされており、従ってインサート取付座4の上記壁面4b,4cも80°で交差する方向に形成されている。
そして、このような切削インサート6は、上記一対の菱形面のうち一方がすくい面6aとして工具本体1の周方向の上記内壁面5a側に向けられるとともに他方が着座面6bとして底面4a側に向けられ、このすくい面6aの一対のコーナ部のうち一方のコーナ部が上記壁面4b,4cの交差する角部に向けられて、該コーナ部に交差する2つの側面が該壁面4b,4cに当接するようにインサート取付座4に着座させられる。一方、すくい面6aの他方のコーナ部は工具本体1の前端外周に位置させられて、このコーナ部に交差する切刃7が旋削に供されることとなり、従ってこれらの切刃7に連なる2つの側面が逃げ面6cとされる。なお、この切削インサート6には、こうして着座させられた切削インサート6を固定するための取付孔6dが、当該切削インサート6を貫通して上記一対の菱形面の中央に開口するように形成されている。
また、本実施形態では、この切削インサート6の上記着座面6bとインサート取付座4の底面4aとの間に、シート部材8が介装されている。このシート部材8は、本実施形態では切削インサート6と同様に超硬合金により形成されていて、切削インサート6の菱形面と合同な一対の菱形面を有する菱形平板状をなし、ただしその厚さは切削インサート6より薄くされていて、これら一対の菱形面を上記着座面6bと底面4aとに密着させるとともに、該菱形面の一方の鋭角角部に交差する2つの側面を壁面4b,4cに当接させて介装されている。
なお、このシート部材8にも、その一対の菱形面の中央に開口するように図示されない取付孔が貫設されていて、この取付孔は、上述のようにシート部材8の2つの側面を壁面4b,4cに当接させるとともに一対の菱形面の1つをインサート取付座4の底面4aに密着させた際に、この底面4aに形成された上記止まり孔に連通するように形成されている。そして、こうして連通した止まり孔と取付孔に半円筒状のシート止めピンを嵌挿することにより、シート部材8はインサート取付座4に取り付けられる。
さらに、このシート部材8を介してインサート取付座4に着座させられた切削インサート6は、インサート取付座4の後端側の上記内壁部5a上に備えられたクランプ手段9によって固定される。このクランプ手段9は、本実施形態ではクランプ駒9aとクランプネジ9bおよび図示されないコイルスプリング等の弾性部材により構成され、クランプ駒9aは、その前端部がインサート取付座4に着座させられた切削インサート6のすくい面6aに開口する上記取付孔6dに達するとともに、後端部は内壁面5aの上記凹所5b内に位置するように内壁面5a上に配置され、その間の中央部には前後に延びる長孔状の貫通孔が形成されたている。また、クランプネジ9bは、このクランプ駒9aの上記貫通孔に挿通されて内壁面5aに形成されたネジ孔にねじ込まれることによりクランプ駒9aを内壁面5a側に押圧するものであり、さらに上記弾性部材は、このクランプネジ9bの外周に巻回されて内壁面5aとクランプ駒9aとの間に圧縮された状態で介装されている。
また、上記凹所5bには、インサート取付座4の壁面4b,4cの交差角を二等分する二等分線方向に略沿って後端側に向かうに従い上記ネジ孔の中心線に直交する平面に対して漸次後退する傾斜平面が形成されるとともに、この傾斜平面には上記二等分線方向に沿って延びる長孔状の凹孔が穿設されている。一方、クランプ駒9aの後端部は、凹所5b側に向けられる下面が、クランプネジ9bによってクランプ駒9aが押圧されたときに上記傾斜平面と密着して摺接可能な傾斜平面とされるとともに、この下面には上記凹孔に挿入される図示されない突起が形成されている。
さらに、クランプ駒9aの前端部には、インサート取付座4に着座させられた切削インサート6の上記すくい面6aに対向するその下面に、該すくい面6aに開口した上記取付孔6dに挿入される図示されない凸部が形成されている。そして、この凸部を取付孔6dに、上記突起を凹孔にそれぞれ挿入した状態で、クランプ駒9a中央部の上記貫通孔は、上記二等分線方向に沿って延びるように配設される。
このようなクランプ手段9において、クランプネジ9bをねじ込んでクランプ駒9aを内壁面5a側に押圧すると、クランプ駒9aは、この内壁面5a側に接近して切削インサート6をシート部材8ごとインサート取付座4の底面4a側に押圧するとともに、凹所5bの傾斜平面にクランプ駒9a後端部下面の傾斜平面が摺接することにより上記二等分線方向に後退させられ、これに伴いクランプ駒9a前端部下面の凸部が切削インサート6の取付孔6dの内周縁に係合して、さらに切削インサート6を上記二等分線方向に沿って引き込むように押圧する。
従って、本実施形態のクランプ手段9によれば、クランプネジ9bのねじ込み操作により、インサート取付座4に着座させられた切削インサート6を底面4a側と壁面4b,4c側とに押圧して容易にクランプすることができる。また、クランプネジ9bを緩めると、圧縮された上記弾性部材によりクランプ駒9aが浮き上がって上記凸部の係合が解かれるので、切削インサート6の着脱も容易である。
なお、こうしてクランプされた切削インサート6の上記旋削に供される切刃7は、工具本体1の前端外周に位置させられたコーナ部から後端側に延びる切刃7が後端側に向かうに従い内周側に向かうように、またこのコーナ部から内周側に延びる切刃7は内周側に向かうに従い後端側に向かうように、それぞれ僅かに傾斜させられているとともに、各切刃7に連なる逃げ面6cには逃げ角が与えられるように切削インサート6は取り付けられている。また、工具本体1の前端面1aは、このうち内周側に延びる切刃7の傾斜に合わせて内周側に向かうに従い漸次後退するように、かつ該切刃7に連なって前端側を向く逃げ面6cの逃げ角に合わせてインサート取付座4から離間するに従いやはり漸次後退するように傾斜させられている。
さらに、工具本体1内には、上記シャンク部2の内部を通して工作機械側から圧送される切削油剤を前端側に供給する供給孔1bが形成されており、この供給孔1bは、凹所5bおよびクランプ駒9aを避けて、インサート取付座4に着座させられた切削インサート6の上記旋削に供されるコーナ部周辺の切刃7に切削油剤が供給されるように、本実施形態では上記内壁面5aの凹曲面状をなす部分の外周側に、前端外周側に向けて開口させられている。
そして、工具本体1の前端部には、このようなインサート取付座4およびクランプ手段9、さらにはチップポケット5が、周方向に間隔をあけてそれぞれ複数ずつ形成されていて、特に3つ以上の奇数(本実施形態では3つ)のインサート取付座4等が中心軸線O回りの周方向に等間隔に形成されており、このうち少なくともインサート取付座4は、工具本体1を中心軸線O回りに所定の割り出し角度(本実施形態では120°)回転させたときに互いに一致するように、回転対称に形成されている。なお、本実施形態ではチップポケット5やクランプ手段9も同様に回転対称となるように形成、配設されている。
さらに、これらのインサート取付座4には、互いに外形寸法が等しい切削インサート6がそれぞれ取り付けられており、すなわちこれらの切削インサート6は切刃長と内接円の直径、および厚さが互いに等しくされている。さらにまた、本実施形態では、工具本体1のすべてのインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6が同一種のものとされている。
このように構成されたインサート着脱式旋削工具は、上述のようにシャンク部2を介して複合加工機等の工作機械の主軸に取り付けられ、同じく工作機械に取り付けられて回転する被削材に対し、工具本体1が中心軸線O回りに回転することなく被削材の回転軸線方向に機械送りされることにより、複数の切削インサート6のうち1つの切削インサート6の上記旋削に供される切刃7によって旋削加工を行う。ここで、工作機械が複合加工機の場合には、主軸が回転させられて所定の割り出し位置で固定されることにより、上記1つの切削インサート6の切刃7が所定の位置に位置決めされ、被削材に対して切込みと送りが与えられて切削が行われる。
そして、このように旋削加工が行われることにより上記1つの切削インサート6の切刃7に摩耗や欠損等が生じた場合に、上記構成のインサート着脱式旋削工具では、複数のインサート取付座4が中心軸線O回りに回転対称に形成されるとともに、これらのインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6が互いに等しい外形寸法とされているので、主軸とともに工具本体1を中心軸線O回りに上記所定の割り出し角度回転させて次の割り出し位置で固定することにより、次の他の1つの切削インサート6を元の1つの切削インサート6の位置に配設することができる。さらに、このとき旋削に供される切刃7も元の1つの切削インサート6の切刃7と同じ位置に配置されるので、そのまま元の1つの切削インサート6による旋削と同様の旋削加工を続行することができる。
従って、上記インサート着脱式旋削工具によれば、こうして1つの切削インサート6の切刃7に摩耗や欠損が生じた際に、取り付けられた複数の切削インサート6の上記旋削加工に供される切刃7がすべて使用し尽くされるまでは、工具自体を交換したりする必要がなく、よって必要以上に多くの交換用の工具を用意しておく必要もない。このため、例えば複合加工機による長時間の無人運転を行うような場合でも、少ない数の工具で効率的かつ経済的な切削加工を促すことが可能となる。
また、このように回転対称に形成されたインサート取付座4に外形寸法が互いに等しい切削インサート6が取り付けられているので、その旋削に供される切刃7の位置も複数の切削インサート6同士で高精度に回転対称位置に配設することができる。従って、いずれか1つの切削インサート6の切刃7について、工具本体1の基準位置からの中心軸線O方向の距離と該中心軸線Oからの径方向の距離とを測定して工具長補正をしておけば、残りの切削インサート6の切刃7に対しては工具長補正を省略することもできる。なお、この切刃7の中心軸線Oからの径方向の距離については、工具本体1の前端部の外径がフランジ部3より小さい場合でも、このフランジ部3の中心軸線Oからの径方向の距離より大きくされていてもよい。
しかも、こうしてインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6は、旋削に供される切刃7を取り替えるために上記菱形面の中心線回りに180°回転したり、表裏反転したり、あるいは新しい切削インサート6と交換したりしたときでも、切刃7の位置の再現性が高く、このため一旦工具長補正をしておけば、以降の補正を不要とすることもできる。従って、上記構成のインサート着脱式旋削工具によれば、工具本体1に切削インサート6を取り付けて加工に使用可能とするまでの段取り時間の短縮を図ることができ、これによっても効率的な切削加工を促すことが可能となる。
なお、本実施形態のインサート着脱式旋削工具では、シャンク部2からフランジ部3を介してインサート取付座4が形成される前端部までが一体の工具本体1として形成されており、このような工具本体1のインサート取付座4に切削インサート6が着座させられて固定されるため、該切削インサート6に高い取付剛性と取付精度を確保することができ、これによっても切削に供される切刃7を再現性よく高精度で回転対称に配設することができるので、さらに確実に工具長補正の簡略化を促すことができる。この点、例えば特許文献5のように切削インサートがカートリッジ等を介して工具本体に取り付けられていると、切刃7の位置のバラつきが大きくなり、加工精度の悪化の一要因となるが、本実施形態ではインサート取付座4が工具本体2に直接的に形成されて切削インサート6が取り付けられているので、上述のように取付精度を確保して加工精度の向上を図ることができ、さらにはカートリッジを要さないため工具コストの低減を図ることもできる。加えて、本実施形態では、上記クランプ手段9によって切削インサート6がインサート取付座4の底面4aと壁面4b,4c側とに押圧させられてクランプされるので、取付剛性および取付精度の一層の向上を図ることができる。
さらに、本実施形態のインサート着脱式旋削工具においては、回転対称に形成されたインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6が同一種のものであるので、1つの切削インサート6に摩耗等が生じたときに工具本体1を回転させて他の切削インサート6を旋削に使用する場合でも、切削条件等は変更することなく連続して加工を行うことができる。また、このように回転対称のインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6が1種であるので、これらの切削インサート6の管理も容易になるという利点も得られる。
ただし、このように回転対称のインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6は、必ずしも同一種すなわち完全に同形同大のものでなくても、その外形寸法すなわちコーナ角を含めたインサート形状と切刃長および内接円の直径、さらには厚さとが互いに等しいものであれば取付可能であり、そのようなものでも切削に供される切刃7の位置は回転対称に配設することができるので、上記と同様に連続して旋削加工に使用することができる。
そこで、これら回転対称に形成された複数のインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6は、外形寸法が互いに等しければ、ブレーカ溝の有無や、チップブレーカ形状、ホーニング等の刃先処理、厚さや内接円の許容差といったインサート精度、およびインサート材種のうち少なくとも1つが異なる複数種のものであってもよい。そして、このように複数種の切削インサート6を回転対称のインサート取付座4に取り付けた場合には、上述のように旋削加工を連続して行うことができるほかに、個々の切削インサート6によってその種類に応じた旋削加工を行うことが可能となる。
例えば、上述のようなブレーカ溝を備えない切削インサート6によって被削材の粗加工を行った後に、ブレーカ溝が形成された切れ味の鋭い切削インサート6によって中粗加工や、さらに仕上げ加工を行うようにしてもよく、また被削材の外周旋削や内周旋削、あるいは端面旋削や倣い旋削などの加工形態に適したチップブレーカをそれぞれ有する複数種の切削インサート6を取り付けて、これらの切削インサート6を順次割り出しながら上記各種の旋削を連続して行うようにしてもよい。さらに、切刃7にホーニングが施された切削インサート6やインサート精度が比較的粗い切削インサート6によって粗加工した後に、ホーニングが施されていないシャープエッジの切削インサート6や精度の比較的高い切削インサート6によって仕上げ加工を施すようにしてもよい。
また、例えば鋼、ステンレス、鋳鉄など、異なる材質の被削材を順に加工する場合や被削材が部分的に材質の異なる複合材料である場合などには、それぞれの材質に適した複数種のインサート材種の切削インサート6によって旋削を行うことも可能である。なお、この場合のインサート材種は、切削インサート6全体の材種が異なるものでも、切刃7部分の材種のみが異なるものでもよく、例えば1つの切削インサート6は切刃7を含めた全体が超硬合金で形成されたものとしておいて、他の切削インサート6は、この1つの切削インサート6と外形寸法が等しいインサート本体のコーナ部周辺の切刃7部分にダイヤモンドやcBN等の超高硬度焼結体を備えた切刃チップを接合したものとしたりしてもよい。
次に、図6ないし図10は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、上述した第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を配して説明を省略する。すなわち、この第2の実施形態のインサート着脱式旋削工具においては、回転対称に形成されたインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6が、コーナ角が例えば55°と、第1の実施形態よりも小さい菱形平板状のものである点で第1の実施形態と異なっており、これに伴いシート部材8およびインサート取付座4の底面4aの形状や壁面4b,4cの交差角、工具本体1の前端面1aの傾斜角等も第1の実施形態と異なるものとされている。また、この第2の実施形態では、シート部材8が切削インサート6と同一厚みとされている点と、切削油剤の供給孔1bが、チップポケット5の上記他方の内壁面5cに開口させられている点でも、第1の実施形態と異なっている。
このような第2の実施形態のインサート着脱式旋削工具においても、複数のインサート取付座4が工具本体1の中心軸線O回りに回転対称に形成されて、互いに等しい外形寸法を有する切削インサート6が取付可能とされることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、これらの切削インサート6における切刃7のコーナ角が小さいので、特に倣い旋削等において被削材の外周面から拡径する端面を切削する場合などでも、これら外周面と端面とが交差する角隅部を被削材との干渉を防ぎつつ、より奥まで旋削することができるという利点も得られる。
一方、これら第1、第2の実施形態では、工具本体1の前端部外周に形成されるインサート取付座4の数が3以上の奇数(実施形態では3つ)とされていて、これらのインサート取付座4を中心軸線O回りに等間隔に配設することにより、これらのインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6の切刃7もこの中心軸線O回りの周方向に等間隔に配置されている。従って、例えば図11ないし図13に示す第1の実施形態の変形例のインサート着脱式旋削工具による旋削加工のように、複合加工機のチャックCに保持されて回転軸線X回りに回転方向Tに回転させられる被削材Wの外周旋削を行う場合において、この被削材Wの回転軸線Xに対して工具本体1の中心軸線Oが直交する位置にあっても、旋削に供される切削インサート6(図11、図13において左側に位置する切削インサート6。図12においては中心軸線O上に位置する切削インサート6)以外の他の切削インサート6が被削材Wと干渉するのは避けることができる。
すなわち、こうして奇数のインサート取付座4を、例えばこの変形例のように等間隔に配置することにより、これらのインサート取付座4のうちいずれか1つのインサート取付座4に取り付けられた1つの切削インサート6に対して中心軸線Oを挟んだ周方向の反対側には、図13に示すように他のインサート取付座4や他の切削インサート6が配設されることがなくなり、図12に示すように他のインサート6は上記1つの切削インサート6の切刃7により旋削された被削材Wの外周面と間隔をあけて配置されることになる。このため、図11に示すように工具本体1を被削材Wの回転軸線X方向に送り出して外周旋削を行う場合に、この送り方向(回転軸線X方向)の旋削可能長さを、上記旋削に供される切削インサート6の切刃7から中心軸線Oまでの長さFよりは勿論、この切刃7から他の切削インサート6の切刃7までの送り方向の長さSよりも長く、この旋削に供される切刃7がチャックCに接触する直前まで被削材Wの外周旋削を行うことが可能となる。
なお、これら図11ないし図13に示した変形例による旋削加工は、工具本体1を被削材Wの回転軸線Xに平行に送り出す所謂長手切削であるが、例えば被削材Wの外周面をチャックC側の外径が大きく、これとは反対の被削材Wの端面(図11において右側の端面)が小径となるような円錐面状に切削する所謂テーパ加工や、或いは通常の外ネジ加工、溝加工などでも、上述の効果により被削材Wに他の切削インサート6の切刃7を干渉させることなく、被削材Wの全長に亙って旋削加工を施すことが可能である。また、複数のインサート取付座4は必ずしも等間隔に配設されていなくても、上述のように上記1つのインサート取付座4に対して中心軸線Oを挟んだ周方向の反対側に他のインサート取付座4が配設されないようにすることは可能である。なお、上記変形例のインサート着脱式旋削工具は、第1の実施形態に対して、工具本体1のフランジ部3からチップポケット5までの長さが長く、またインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6のすくい面6aが向く工具本体1の周方向の向きが逆となっている点(所謂、勝手違いとなっている点)で異なっている。
ところで、これら第1、第2の実施形態やその変形例では、工具本体1に形成された複数のインサート取付座4がすべて中心軸線O回りに回転対称とされ、かつこれらのインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6もすべてが外形寸法の等しいものとされているが、本発明は、このようなインサート取付座4および切削インサート6以外に、中心軸線O回りに回転対称とならないインサート取付座を形成したり、外形寸法の異なる切削インサートを取り付けたりすることを妨げるものではない。すなわち、外形寸法の等しい切削インサート6が取付可能な回転対称とされたインサート取付座4と異なる、例えば溝入れやねじ切りなどのインサートが取付可能な他のインサート取付座が工具本体1に1または複数形成されていてもよい。
また、第1、第2の実施形態では、複数のインサート取付座4に取り付けられる切削インサート6がすべて旋削加工用のインサートとされているが、当該インサート着脱式旋削工具が上述のように複合加工機の主軸に装着されて使用される場合には、例えば特許文献1〜4に記載されているのと同様に転削加工用のインサートを取り付けて、工具本体1を中心軸線O回りに回転させつつ固定した被削材に対して送りと切込みを与えて転削加工に使用することも可能である。なお、この場合には、上記インサート取付座4以外に、特許文献2〜4に記載のように転削加工用インサートが取り付けられる複数のインサート取付座を形成してもよいが、上記実施形態ではすべての切削インサート6の切刃7の中心軸線O回りの回転軌跡が一致させられることになるので、これらの切削インサート6を転削加工に用いることも可能である。