JP2008105415A - エンボス加飾射出成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクリル樹脂フィルムからなる表面層と、表面層の内側に積層された印刷層と、印刷層の内側に積層された接着剤層と、射出樹脂層とを有する射出成形品であって、該射出成形品の正面部及び側面部の該表面層の表面にエンボス加工による凹凸模様を有することを特徴とするエンボス加飾射出成形品及びその製造方法である。
【選択図】図1
Description
この凹凸模様を設ける方法として、電離放射線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の基材フィルムに熱圧を加えるエンボス加工を施して凹凸模様を賦形した加飾シートを製造し、それを射出成形品の内部凹凸模様賦形に用いる方法が知られている。(例えば、特許文献1参照)
また、硬化性樹脂を基材フィルムに塗工した後、硬化せしめて凹凸模様を賦形した凹凸フィルムを用いて射出成形品の表面に凹凸模様を設ける方法も提案されている。(例えば、特許文献2及び3参照)
しかしながら、硬化性樹脂を塗工した基材フィルムの外側表面に凹凸模様を賦形した加飾シートを射出成形に用いる場合は、硬化性樹脂の硬化度が低過ぎると真空成形工程にて加飾シートを予備成形する時の熱圧及びその後の射出成形工程での熱圧によって、エンボスされた凹凸模様の凹凸形状が消失し易く、また高過ぎると、凹凸模様に歪みや亀裂等が生じ易く、真空成形工程や射出成形工程の作業性も悪くなるという問題があった。
また、射出成形金型のキャビティ面をシボ加工することによって射出成形品の表面に凹凸模様を賦形することも可能であるが、射出成形金型の正面部と側面部とのなす角度が直角に近いと射出成形品の型抜きが困難になるという問題があり、射出成形金型を加工するので、多種少量生産に向かないというデメリットもある。
そこで、射出成形品の表面に簡便に凹凸模様を賦形する技術が求められていた。
すなわち、本発明の要旨は、
1.アクリル樹脂フィルムからなる表面層と、表面層の内側に積層された印刷層と、印刷層の内側に積層された接着剤層と、射出樹脂層とを有する射出成形品であって、該射出成形品の正面部及び側面部の該表面層の表面にエンボス加工による凹凸模様を有することを特徴とするエンボス加飾射出成形品、
2.印刷層が、着色ベタ層を有する上記1に記載のエンボス加飾射出成形品、
3.印刷層が、さらに絵柄層を有する上記2に記載のエンボス加飾射出成形品、
4.印刷層が、光反射層を有する上記1〜3のいずれかに記載のエンボス加飾射出成形品、
5.射出成形品の正面部と側面部とのなす角度から90°を引いた角度θが0°を超え5°以下である上記1〜4のいずれかに記載のエンボス加飾射出成形品、
6.アクリル樹脂フィルムからなる表面層と、表面層の内側に積層された印刷層と、印刷層の内側に積層された接着剤層とからなる加飾シートと加飾シートの内側に形成された射出樹脂層とを有する射出成形品の製造方法であって、該加飾シートの該表面層に150℃以上の温度でエンボス加工して凹凸模様を賦形する工程と、該表面層が射出成形金型側になるように該加飾シートを90〜110℃の温度で真空成形する工程と、真空成形された該加飾シートに樹脂を射出して射出樹脂層を形成する工程とを含むエンボス加飾射出成形品の製造方法、
7.印刷層が、着色ベタ層を有する上記6に記載のエンボス加飾射出成形品の製造方法、
8.印刷層が、さらに絵柄層を有する上記7に記載のエンボス加飾射出成形品の製造方法、
9.印刷層が、光反射層を有する上記6〜8のいずれかに記載のエンボス加飾射出成形品の製造方法、及び
10.射出成形金型の正面部と側面部とのなす角度から90°を引いた角度θが0°を超え5°以下である上記6〜9のいずれかに記載のエンボス加飾射出成形品の製造方法である。
図1にあるように、本発明のエンボス加飾射出成形品1は、表面側から、表面層11、印刷層12、接着剤層13及び射出樹脂層20の順に積層されている。これらの内、表面層11、印刷層12及び接着剤層13から加飾シート10が構成されている。
表面層11の表面にエンボス加工による凹凸模様が付与されている。表面層11の表面の凹凸模様により凹部31及び凸部32が形成される。本発明のエンボス加飾射出成形品1は、その正面部及び側面部の表面にエンボス加工による凹凸模様を有する。正面部の表面だけでなく側面部の表面にもエンボス加工による凹凸模様を有することにより、より高級感のある立体意匠性が付与された射出成形品が得られる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう〕を単体又は2種以上の混合物として、単層又は2層以上の積層体のフィルムとして用いる。なお、表面層11は半透明であってもよいが、透明であることが印刷層12の着色を鮮やかにして好ましい。透明である場合は、無色透明の他に、着色透明でもよい。また、表面層11の樹脂フィルム中には、必要に応じて、適宜、上述の艶消し剤、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の滑剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、微粒子酸化セリウム系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、可塑剤、安定剤、着色剤等の各種添加剤を、物性調整の為に添加してもよい。
着色ベタ層及び絵柄層としては、バインダーの樹脂を特定の樹脂から構成し、所望する色彩を得るための適当な着色剤を配合する他は、基本的には特に制限は無い。着色ベタ層及び絵柄層は、通常は、印刷インキでグラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法で形成すればよい。また、着色ベタ層は、ロールコート等の公知の塗工法でもよい。
ここで、アクリル樹脂としては、上述の表面層11のところで列記したものと同様のものの中から適宜選択する他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させて得られるアクリルポリオールを用いることも出来る。
また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。必要に応じ、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体にさらにマレイン酸、フマル酸等のカルボン酸を共重合させてもよい。アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合比は、アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体=1/9〜9/1(質量比)程度である。この他、副成分の樹脂として、必要に応じて、適宜その他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン等の樹脂を混合してもよい。
また、インキ(あるいは塗液)に含有させる着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、キナクリドンレッド、ペリレンレッド等の有機顔料、アルミニウム、真鍮等の金属の粉末又は鱗片等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母の粉末又は鱗片等の真珠光沢(パール)顔料、あるいは染料等が用いられる。
所望により、印刷層12が、光反射層、磁性体層、導電性層等の機能性層等を有していてもよい。ここで、光反射層としては、例えば、樹脂フィルムの表面に金属(アルミニウム、クロム、銀等)を蒸着して全面あるいは部分的に形成した金属薄膜層、あるいは表面に反射率が優れた白色塗膜又は金属光沢塗膜(アルミニウム、クロム、銀等の金属含有インキを用いる)を有する樹脂フィルム等が挙げられる。光反射層が印刷層12の全面に形成される場合は着色ベタ層となり、印刷層12の部分的に形成される場合は絵柄層となる。磁性体層には磁性体が含まれ、導電性層には導電性材料が含まれる。
接着剤層13は、これら樹脂による接着剤を、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工法により形成する。また、接着剤層13の厚さは特に制限は無いが、通常は1〜20μm程度、好ましくは1〜10μmである。
なお、射出樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用してもよい。着色剤には、上記の印刷層12で述べた如き公知の着色剤を使用すればよい。また、射出樹脂には、必要に応じ適宜、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機物粉末、ガラス繊維等の充填剤、安定剤、滑剤等の公知の各種添加剤を含有させてもよい。
エンボス加工は、凹凸模様の意匠性が高まるように適宜深さを調整して行なわれる。従って、表面層11の厚みの範囲内の深さで行なってもよいし、印刷層12及び接着剤層13にまで凹凸模様が付与される深さで行なってもよい。
たとえ、加飾シート10の接着剤層13面にまでエンボス加工が深く施され、射出樹脂が高温である場合でも、接着剤層13面の凹部に直ちに射出樹脂が満たされるので、エンボスされた凹凸模様の凹凸形状が保持される。また、射出樹脂が高温の場合の加飾シート10に移動する熱は、すぐに射出成形金型に逃げるので、加飾シート10の表面層11の温度は射出樹脂の温度と比較して低く保たれ、加飾シート10の表面層11面の凹凸模様の凹凸形状も保持される。
実施例1
アクリル樹脂(メチルメタクリレート樹脂)からなる樹脂フィルム(膜厚125μm)の裏面に、ポリブチルメタクリレート/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(質量比:2/1)組成物からなる絵柄層をグラビア印刷し、絵柄層が印刷されていない部分の一部に金属光沢塗膜をグラビア印刷し光反射層とし、絵柄層と同じ組成物に高隠蔽性顔料(チタン白及び着色顔料)を含有させた着色ベタ層をロールコートにより塗工し、さらに、アクリル樹脂からなる接着剤層をロールコートにより塗工した後、乾燥して加飾シートを得た。
この加飾シートの表面層側に、金属製エンボスローラーを用いて、賦形直前のシート温度を200〜240℃に、エンボス版温度を約90℃に制御し、平均エンボス深さ70μmの木目模様の凹凸模様を賦形した。
この加飾シートを100℃に加熱し、射出成形金型(金型温度60℃)内で真空成形し、射出成形金型(雌型)に成形品の正面部及び側面部の双方にエンボス加工による凹凸模様を有するように密着させた。その後、射出成形工程で、樹脂圧350kg/cm2、樹脂温度230℃にてABS樹脂を射出し、加飾シートに熱と圧力をかけた。これにより、樹脂が金型に接触した瞬間に、樹脂熱が金型に逃げるため、加飾シート表面は100℃であった。冷却後、射出成形金型からエンボス加飾射出成形品を取り出した。射出成形品の抜き角θは1°であったが良好な型抜けであった。得られたエンボス加飾射出成形品の外観を目視にて評価した。
実施例1のエンボス加飾射出成形品は、成形品の正面部及び側面部の双方に木目模様の凹凸模様が立体的に表出し、模様が浮き出た感じで高級感を漂わせるものであった。
実施例で得られた平均エンボス深さ70μmの木目模様の凹凸模様が賦形された加飾シートを80℃に加熱し、射出成形金型(金型温度60℃)内で真空成形し、射出成形金型(雌型)に成形品の正面部及び側面部の双方にエンボス加工による凹凸模様を有するように密着させた。その後、射出成形工程で、樹脂圧350kg/cm2、樹脂温度230℃にてABS樹脂を射出し、加飾シートに熱と圧力をかけた。これにより、樹脂が金型に接触した瞬間に、樹脂熱が金型に逃げるため、加飾シート表面は80℃であった。射出成形時の加飾シート表面が80℃であったので、加飾シートが伸びないため金型に沿わず射出成形時に割れが発生した。従って、所望するエンボス加飾射出成形品が得られなかった。
実施例で得られた平均エンボス深さ70μmの木目模様の凹凸模様が賦形された加飾シートを140℃に加熱し、射出成形金型(金型温度60℃)内で真空成形し、射出成形金型(雌型)に成形品の正面部及び側面部の双方にエンボス加工による凹凸模様を有するように密着させた。その後、射出成形工程で、樹脂圧350kg/cm2、樹脂温度230℃にてABS樹脂を射出し、加飾シートに熱と圧力をかけた。これにより、樹脂が金型に接触した瞬間に、樹脂熱が金型に逃げるため、加飾シート表面は140℃であった。冷却後、射出成形金型からエンボス加飾射出成形品を取り出し。射出成形品の抜き角θは1°であったが良好な型抜けであった。得られたエンボス加飾射出成形品の外観を目視にて評価した。
比較例2の加飾射出成形品は、加飾シートが高温であったため木目模様の凹凸模様がほとんどなく意匠性が劣るものであり、エンボス加飾射出成形品とは呼べないものであった。
10 加飾シート
11 表面層
12 印刷層
13 接着剤層
20 射出樹脂層
31 表面層の表面の凹部
32 表面層の表面の凸部
41 射出成形金型(雄型)
42 射出成形金型(雌型)
43 吸引孔
44 射出樹脂
45 シートクランプ
46 金型の正面部
47 金型の側面部
Claims (10)
- アクリル樹脂フィルムからなる表面層と、表面層の内側に積層された印刷層と、印刷層の内側に積層された接着剤層と、射出樹脂層とを有する射出成形品であって、該射出成形品の正面部及び側面部の該表面層の表面にエンボス加工による凹凸模様を有することを特徴とするエンボス加飾射出成形品。
- 印刷層が、着色ベタ層を有する請求項1に記載のエンボス加飾射出成形品。
- 印刷層が、さらに絵柄層を有する請求項2に記載のエンボス加飾射出成形品。
- 印刷層が、光反射層を有する請求項1〜3のいずれかに記載のエンボス加飾射出成形品。
- 射出成形品の正面部と側面部とのなす角度から90°を引いた角度θが0°を超え5°以下である請求項1〜4のいずれかに記載のエンボス加飾射出成形品。
- アクリル樹脂フィルムからなる表面層と、表面層の内側に積層された印刷層と、印刷層の内側に積層された接着剤層とからなる加飾シートと加飾シートの内側に形成された射出樹脂層とを有する射出成形品の製造方法であって、
該加飾シートの該表面層に150℃以上の温度でエンボス加工して凹凸模様を賦形する工程と、
該表面層が射出成形金型側になるように該加飾シートを90〜110℃の温度で真空成形する工程と、
真空成形された該加飾シートに樹脂を射出して射出樹脂層を形成する工程とを含むエンボス加飾射出成形品の製造方法。 - 印刷層が、着色ベタ層を有する請求項6に記載のエンボス加飾射出成形品の製造方法。
- 印刷層が、さらに絵柄層を有する請求項7に記載のエンボス加飾射出成形品の製造方法。
- 印刷層が、光反射層を有する請求項6〜8のいずれかに記載のエンボス加飾射出成形品の製造方法。
- 射出成形金型の正面部と側面部とのなす角度から90°を引いた角度θが0°を超え5°以下である請求項6〜9のいずれかに記載のエンボス加飾射出成形品の製造方法。
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