JP2008094058A - インクジェット印刷方法 - Google Patents

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祐介 清水
Isao Tsuru
功 津留
Ryuma Mizushima
龍馬 水島
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Abstract

【課題】高印字濃度の印刷物を得ることができるインクジェット印刷方法、及びインクセットを提供する。
【解決手段】(1)記録媒体に、着色剤を含有する水系インクをインクジェット記録方式により印刷した後、その印刷した部分に、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子を含む塗工インクをインクジェット記録方式により重ねて印刷する印刷方法、及び(2)着色剤を含有する水系インクと、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子を含む塗工インクから構成されるインクセットであって、インクジェット記録方式により記録媒体上に該水系インクを印刷し、その印刷部分に該塗工インクを重ねて印刷する、インクセットである。
【選択図】なし

Description

本発明は、普通紙等に印刷する際に印字濃度の優れた印刷物を得ることができる、インクジェット印刷方法及びインクセットに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、記録部材として普通紙が使用可能で、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
インクジェット印刷方法に関しては、例えば特許文献1及び2が知られている。
特許文献1には、水及び着色剤の他、樹脂エマルジョン及び/又は無機酸化物コロイドを含み特定の表面張力を有するインク組成物を記録媒体に付着させる工程と、その上に、多価金属塩又はポリアリルアミン誘導体を含み特定の表面張力を有する反応液を塗布する工程を有する方法が開示されている。この方法によれば、インク組成物中の着色剤成分と反応液との反応から、記録媒体上で凝集物が形成され、その結果、印字濃度が高くカラーブリードがない高品位なカラー画像が得られるとされている。
特許文献2には、水及び着色剤を含んでなる第一液と、増粘剤としてタンパク質、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、又はカチオン活性剤等を含む第二液を印字することで、良好な画像が得られるという方法が開示されている。
インクジェット記録用インクに関しては、例えば特許文献3には、淡色又は白色の水不溶性微粒子(樹脂エマルジョン)、水溶性有機溶媒及び水を含有する液体組成物と、着色剤、水溶性有機溶媒及び水を含有するインクとを含むインクが開示されている。
また、インクセットに関しては、例えば特許文献4には、カラーインク組成物とクリアインク組成物の二液を印字するインクセットが開示されている。
しかしながら、上記特許文献に開示されたインクジェット印刷方法やインク、インクセットでは、普通紙に印字した際の印字濃度が未だ十分ではなかった。
特開平11−115303号公報 特開平3−240558号公報 特開2000−034432号公報 特開2003−286428号公報
発明は、印字濃度に優れた印刷物を得ることができるインクジェット印刷方法及びインクセットを提供することを課題とする。
本発明者らは、二液を印字するインクジェット印刷方法において、着色剤を含有する水系インクを印刷する工程と、特定の粒径及び屈折率を有する粒子(イ)を含む塗工インクを印刷する工程を組み合わせることにより、印字濃度に優れた印刷物を得ることができることを見出した。
すなわち本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)水系インク及び塗工インクを用いて、記録媒体に下記工程1及び2を順次施すインクジェット印刷方法。
工程1:記録媒体の全部又は一部に、着色剤を含有する水系インクをインクジェット記録方式により印刷する工程
工程2:工程1で得られた記録媒体上の印刷した部分に、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)を含む塗工インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する工程
(2)着色剤を含有する水系インクと、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)を含む塗工インクから構成されるインクセットであって、インクジェット記録方式により記録媒体上に該水系インクを印刷し、その印刷部分に該塗工インクを重ねて印刷する、インクセット。
本発明のインクジェット印刷方法、及びインクセットによれば、記録媒体として普通紙又はコピー用紙を用いても、印字濃度の優れた印刷物(印字物、写真)を得ることができる。
本発明者等は、インクジェット記録方式により高印字濃度を達成するには、(1)印刷面表面からの反射光を減少させればよいこと、(2)二液印字による印刷方法において、記録媒体に印刷した着色剤の上に、特定の粒径と屈折率を有する粒子を被覆又は積層することにより、効果的に反射光を減少させ印字濃度を向上しうることを見出した。
本発明のインクジェット印刷方法は、水系インク及び塗工インクを用いて、記録媒体に下記工程1及び2を順次施すことが特徴である
工程1:記録媒体の全部又は一部に、着色剤を含有する水系インクをインクジェット記録方式により印刷する工程
工程2:工程1で得られた記録媒体上の印刷した部分に、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)を含む塗工インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する工程
以下に、本発明の印刷方法で用いる各成分について説明する。
〔平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)〕(以下、単に「粒子(イ)」ともいう。)
本発明者等は、印字面表面からの光の反射率を低減させるためには、着色剤表面での光の表面散乱を低減させて着色剤への光の吸収率を向上させることが有効であることを考慮し、インクジェット記録方式において高印字濃度を達成するために、粒子の屈折率や平均粒径の最適範囲を見出した。
本発明においては、印字物からの反射光を効率的に減少させ印字濃度を向上させる観点から、屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)が用いられる。
本発明に用いられる粒子(イ)の屈折率は1.0以上であり、好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.3以上であり、その上限は2.2以下であり、好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.7以下、特に好ましくは1.65以下、最も好ましくは1.6以下である。上記観点から、粒子(イ)の屈折率は、好ましくは1.0〜1.8、より好ましくは1.1〜1.7、更に好ましくは1.2〜1.65、特に好ましくは1.3〜1.6である。
屈折率は、後述する光干渉式膜厚測定装置(大日本スクリーン株式会社製、製品名:ラムダエース VM-1000)により測定することができる。粒子(イ)が粉体の場合には、粒子(イ)1重量部に対して約0.01重量部のポリアクリル酸塩(例えば、花王株式会社製、ポイズ530A)で水やエタノール等の分散媒に分散させた分散体を、前記測定法に適用することができる。
本発明で用いられる粒子(イ)の平均粒径は、反射光を効率的に減少させ、印字濃度、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、更に好ましくは50nm以上、特に好ましくは70nm以上であり、その上限は400nm以下、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下、より更に好ましくは280nm以下、特に好ましくは250nm以下である。上記観点から、粒子(イ)の平均粒径は、30〜400nm、好ましくは30〜350nm、より好ましくは30〜300nm、更に好ましくは50〜300nm、特に好ましくは50〜280nm、最も好ましくは70〜250nmである。
粒子(イ)の平均粒径は、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定することができる。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力する。測定溶液の濃度は、通常5×10-3重量%程度で行う。
本発明においては、粒子(イ)と着色剤(特に顔料)とを含有する水系インクをインクジェット記録方式により、記録媒体上に印刷した場合、印刷されたインクの微小部位において、粒子(イ)の集合体が、印字物の着色剤を被覆して、印字物の反射防止膜と同等の働きをすることで、印字濃度を向上することができると考えられる。
一般に、異なる屈折率の物質が存在する場合、空気の屈折率をn0、着色剤の屈折率をn2、着色剤上に存在する物質の屈折率をn1とした場合、反射率Rは下記式で表される。
反射率R=〔(n02 - n11)/(n02 + n11)〕2
ここで、空気の屈折率n0を1.00とすると、印字濃度を向上させるには反射率Rを最小にすればよく、前記式の値を最小にするには、n1=√n2 とすることが好ましい。
キナクリドン系顔料の屈折率が2程度であり、フタロシアニン系顔料の屈折率が1.4程度であることを考慮すると、本発明に用いられる粒子(イ)の屈折率は前記の範囲が適当であることがわかる。
また、反射光の強度を最も弱めるのは、着色剤の表面で反射する光と、着色剤上に存在する物質表面で反射する光の位相を逆にすればよいので、着色剤上に存在する物質の膜厚dは、光の波長をλとすると、下記式となることが好ましい。
膜厚d=λ/〔(2+2√2)×n1
なお、膜厚dは、光の入射角が45°、受光角が0°(マクベス濃度計の測定条件)での計算値である。
マゼンタの測定波長(λ)が536nm(半値幅±20nm)、シアンの測定波長(λ)が624nm(半値幅±20nm)、イエローの測定波長(λ)が432nm(半値幅±20nm)であり、前述のn1を考慮すると、本発明に用いられる粒子(イ)の平均粒径は前記の範囲が適当であることがわかる。
粒子(イ)は、有機粒子、無機粒子のいずれであってもよいが、無機粒子及び/又はポリマー粒子が好ましく、無機粒子、ポリスチレン粒子及びフッ素原子を有するポリマー粒子からなる群から選ばれる1種以上であることが更に好ましい。
無機微粒子としては、酸化珪素(以下、シリカという)、酸化アルミニウム(以下、アルミナという)、フッ化マグネシウム、酸化マンガン、酸化マグネシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、アルミナホワイト、タルク、クレー、雲母チタン、これら微粒子の表面をカルボキシ基やアミノ基等の官能基で修飾又は表面改質したもの、又は界面活性剤で複合粒子化したもの等が挙げられる。これらの中では、分散性の観点から、金属酸化物粒子が好ましく、コロイダル粒子が更に好ましく、コロイダルシリカ、及びコロイダルアルミナからなる群から選ばれる1種以上が特に好ましく、中でも、ケイ酸水溶液から生成させる製法により得られるコロイダルシリカが最も好ましい。
ポリマー粒子としては、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ケイ素−(メタ)アクリルエステル共重合体、フッ素−(メタ)アクリルエステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンポリマー等からなる粒子が挙げられる。これらの中では、ポリスチレン粒子や、低屈折率を有する観点から、フッ素−(メタ)アクリルエステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を有するポリマーからなる粒子が好ましい。
ポリマー粒子を構成するポリマーのガラス転移温度(Tg)は、20℃以上が好ましく、30℃以上が更に好ましく、その上限は特に制限はないが、250℃以下が好ましい。上記観点から、該ポリマーのTgは20〜250℃が好ましく、30〜250℃が更に好ましい。該ポリマーのTgが20℃以上の範囲であれば、印刷後のインクの乾燥工程で受ける熱によってもポリマー微粒子が皮膜化し難く、着色剤上に粒子状で存在させることができる。ポリマーのTgの測定は、実施例記載の方法による。
また、該ポリマーの重量平均分子量は、記録媒体の光沢性の観点から、5,000〜500,000が好ましく、10,000〜400,000が更に好ましく、10,000〜300,000が特に好ましい。ポリマーの重量平均分子量は、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
該ポリマー粒子を構成するポリマーの構成単位と、後述する着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子(ロ)を構成するポリマーの構成単位とは、同一でも異なっていてもよいが、粒子(イ)は、着色剤を含有するものではない。
〔塗工インク〕
本発明における塗工インクとは、粒子(イ)、水、及び好ましくは水溶性有機溶媒を含んでなる水を主成分とする液体組成物であり、必要により湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤等の添加剤を含有することができる。これらの各成分の混合方法に特に制限はない。塗工インク中の粒子(イ)の含有量は分散安定性、吐出安定性の点から0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上が更に好ましく、2重量%以上が特に好ましく、その上限は、20重量%以下が好ましく、15重量%以下が更に好ましく、10重量%以下が特に好ましい。それらの観点から、0.1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%が更に好ましく、2〜10重量%が特に好ましい。また、塗工インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。また、塗工インクの表面張力(20℃)は23〜50mN/mが好ましく、23〜40mN/mが更に好ましく、23〜30mN/mが特に好ましい。
〔着色剤〕
着色剤は、疎水性染料、顔料のいずれも使用することができる。また、両者を任意の比率で組み合わせて用いることもできる。中でも、近年要求が強い高耐候性の発現には、顔料を用いるのが好ましい。
本発明において顔料とは、有機顔料及び/又はカーボンブラックを意味する。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー 13, 17, 74, 83, 97, 109, 110, 120, 128, 139, 151, 154, 155, 174, 180;C.I.ピグメント・レッド 48, 57: 1, 122, 146, 176, 184, 185, 188, 202;C.I.ピグメント・バイオレット19, 23;C.I.ピグメントブルー15, 15: 1, 15: 2, 15: 3, 15: 4, 16, 60;C.I.ピグメント・グリーン7, 36等が挙げられる。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
染料としては、疎水性染料が、水不溶性ポリマー中に含有させることができるため好ましく用いられる。疎水性染料の例としては、油性染料、分散染料等が挙げられる。疎水性染料の有機溶媒に対する溶解度は、水不溶性ポリマーに効率よく染料を含有させる等の観点から、水分散体の製造時に疎水性染料を溶解させるために使用される有機溶媒に対して、2g/L以上が好ましく、20〜500g/L(25℃)がより好ましい。
油性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、C.I.ソルベント・オレンジからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
分散染料としては、例えば、C.I.ディスパーズ・イエロー、C.I.ディスパーズ・オレンジ、C.I.ディスパーズ・レッド、C.I.ディスパーズ・バイオレット、C.I.ディスパーズ・ブルー、C.I.ディスパーズ・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。これらの中では、イエローとしてC.I.ソルベント・イエロー29及び30、シアンとしてC.I.ソルベント・ブルー70、マゼンタとしてC.I.ソルベント・レッド18及び49、ブラックとしてC.I.ソルベント・ブラック3及び7、及びニグロシン系の黒色染料が好ましい。
上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
〔着色剤を含有する水系インク〕
本発明における水系インクとは、着色剤、水、及び好ましくは水溶性有機溶媒を含んでなる水を主成分とする液体組成物であり、必要により湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤等の添加剤を含有することができる。これらの各成分の混合方法に特に制限はない。
水系インク中の着色剤の含有量は、分散安定性、印字濃度等を高める点から1〜20重量%が好ましく、3〜10重量%が更に好ましい。
本発明においては、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子を用いることが好ましく、この場合、印字濃度を高める等の観点から、水不溶性ポリマーと着色剤の重量比〔着色剤/水不溶性ポリマー〕は、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは50/50〜80/20、更に好ましくは55/45〜78/22である。また、水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。また、水系インクの表面張力(20℃)は23〜50mN/mが好ましく、23〜40mN/mが更に好ましく、23〜30mN/mが特に好ましい。
(水不溶性ポリマー)
水不溶性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーとしては、水不溶性ビニルポリマー、水不溶性エステル系ポリマー、水不溶性ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらの中では、水分散体の安定性の観点から、水不溶性ビニルポリマーが好ましい。
ここで水不溶性ポリマーとは、105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下であるポリマーをいう。上記溶解量は、水不溶性ポリマーが塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、水不溶性ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマーは、十分な印字濃度、分散安定性の向上の観点から、マクロマー(b)由来の構成単位を含む水不溶性グラフトポリマーであることが好ましい。特に、水不溶性ポリマーは、塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位と、疎水性モノマー(c)由来の構成単位を含むポリマーを主鎖に有し、マクロマー(b)由来の構成単位を側鎖に有する、水不溶性グラフトポリマーであることが好ましい。
このような水不溶性グラフトポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)(以下「(a)成分」ということがある)、マクロマー(b)(以下「(b)成分」ということがある)、及び疎水性モノマー(c)(以下「(c)成分」ということがある)を含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ということがある)を共重合してなる水不溶性ビニルポリマーが好ましい。
(塩生成基含有モノマー(a))
(a)成分は、得られる分散体の分散安定性を高める等の観点から用いられるものであり、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。具体的には、特開平9−286939号公報第5頁第7欄24行〜同頁第8欄29行に記載されているもの等を用いることができる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられ、これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミドが好ましい。
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコネート等が挙げられる。
不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、分散安定性、吐出信頼性等の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸がより好ましい。
(マクロマー(b))
(b)成分は、水不溶性ポリマー粒子の分散安定性を高めると共に、印字濃度向上等の観点から用いられ、数平均分子量が500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000で、片末端に不飽和基等の重合性官能基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。
なお、(b)成分の数平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用い、溶媒として50ミリモル/Lの酢酸を含有するテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる。
(b)成分のマクロマーとしては、具体的には、下記(b−1)スチレン系マクロマー、(b−2)アルキル(メタ)アクリレート系マクロマー、(b−3)芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマー、(b−4)シリコーン系マクロマー等が挙げられる。
(b−1)スチレン系マクロマー
スチレン系マクロマーとは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー(b−1 モノマーという)を有するマクロマーを意味する。スチレン系モノマーの中ではスチレンが好ましい。
スチレン系マクロマーは、例えば、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体、及び片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。片末端に存在する重合性官能基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、これらを共重合させることで、スチレン系マクロマー由来の構成単位を有する水不溶性グラフトポリマーを得ることができる。他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、後記のアルキル(メタ)アクリレート(b−2 モノマー)、及びスチレン以外の芳香環含有(メタ)アクリレート(b−3 モノマー)等が挙げられる。
側鎖中、又はスチレン系マクロマー中、スチレン系モノマー由来の構成単位の含有量は、高印字濃度性の観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
(b−2)アルキル(メタ)アクリレート系マクロマー
アルキル(メタ)アクリレート系マクロマーとは、ヒドロキシ基を有していてもよい、炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有する、アルキル(メタ)アクリレート(b−2 モノマー)を有するマクロマーを意味する。
b−2 モノマーとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
b−2 モノマー由来の構成単位を含む側鎖は、片末端に重合性官能基を有するアルキル(メタ)アクリレート系マクロマーを共重合することにより得られ、例えば、メチルメタクリレート系マクロマー、ブチルアクリレート系マクロマー、イソブチルメタクリレート系マクロマー、ラウリルメタクリレート系マクロマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート系マクロマーは、片末端に重合性官能基を有するアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体、及び片末端に重合性官能基を有する、アルキル(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、重合性官能基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。他のモノマーとしては、前記のスチレン系モノマー(b−1 モノマー)、後記のスチレン以外の芳香環含有(メタ)アクリレート(b−3 モノマー)等が挙げられる。
側鎖中、又はアルキル(メタ)アクリレート系マクロマー中、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、最も多く、高印字濃度の観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
(b−3)芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマー
芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマーとは、芳香環含有(メタ)アクリレート(b−3 モノマー)を有するマクロマーを意味する。芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、下記式(1)で表されるモノマーが好ましい。
CH2=CR2COOR3 (1)
(式中、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は置換基を有していてもよい、炭素数7〜22のアリールアルキル基又は炭素数6〜22のアリール基を示す。)
具体的には、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、フタルイミドメチル(メタ)アクリレート、p−ニトロフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルフタレート等が挙げられる。これらの中では、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
芳香環含有(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む側鎖は、片末端に重合性官能基を有する芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する芳香環含有(メタ)アクリレートの単独重合体、及び片末端に重合性官能基を有する、芳香環含有(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、重合性官能基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。他のモノマーとしては、前記のスチレン系モノマー(b−1 モノマー)、(メタ)アクリル酸エステル(b−2 モノマー)等が挙げられる。
側鎖中、又は芳香環含有(メタ)アクリレート系マクロマー中、芳香環含有(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量は最も多い。
(b−4)シリコーン系マクロマー
本発明で用いられる水不溶性グラフトポリマーは、オルガノポリシロキサン鎖を側鎖として有していてもよい。この側鎖は、例えば、好ましくは下記式(2)で表される、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
CH2=C(CH3)−COOC36−〔Si(CH32−O〕t−Si(CH33 (2)
(式中、tは8〜40の数を示す)
本発明に用いられるポリマーが、水不溶性グラフトポリマーである場合、[主鎖/側鎖]の重量比は、保存安定性等を向上させる観点から、1/1〜20/1であることが好ましく、3/2〜15/1が更に好ましく、2/1〜10/1が特に好ましい。なお、重合性官能基は側鎖に含有されるものとしてその重量比を計算する。
上記の中では、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーが顔料との親和性が高く、保存安定性を向上させる観点から好ましい。
(疎水性モノマー(c))
(c)成分は、印字濃度等の向上の観点から用いられ、アルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、芳香環含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)セチル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、(イソ)ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数3〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらの中では、炭素数3〜22、好ましくは炭素数3〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが、分散安定性の観点から好ましい。
芳香環含有モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー(c−1)、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアリールエステル、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等の炭素数6〜22の芳香族基含有ビニルモノマー(c−2)が好ましく挙げられる。これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
なお、本明細書にいう「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
(c)成分としては、印字濃度向上等の観点から、芳香環含有モノマーが好ましい。
上記(a)〜(c)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記(a)、(b)、(c)各成分を含むモノマー混合物は、さらに、水酸基含有モノマー(d)(以下「(d)成分」ということがある)を含有することが好ましい。
(d)成分は、分散安定性を高めるものである。(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルカンジイル基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
上記モノマー混合物は、さらに、下記式(3)で表されるモノマー(e)(以下「(e)成分」ということがある)を含有することができる。
CH2=C(R4)COO(R5O)p6 (3)
(式中、R4は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、R5はヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R6はヘテロ原子を有していてもよい、炭素数1〜30の1価の炭化水素基、pは平均付加モル数を示し、1〜60、好ましくは1〜30の数である。)
(e)成分は、水性インクの吐出信頼性を高め、連続印字してもヨレの発生を抑制する等の優れた効果を発現するものである。
式(3)において、R5又はR6が有してもよいヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子又は硫黄原子が挙げられる。
5又はR6で示される基の代表例としては、炭素数6〜30の芳香族基、炭素数3〜30のヘテロ環基、炭素数1〜30のアルカンジイル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。これらの基は2種以上を組み合わせたものであってもよい。置換基としては、芳香族基、ヘテロ環基、アルキル基、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
上記R5としては、炭素数1〜24の置換基を有していてもよいフェニレン基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルカンジイル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルカンジイル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルカンジイル基が好ましく挙げられる。R5O基の特に好ましい具体例としては、オキシエチレン基、オキシ(イソ)プロピレン基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基又はこれらオキシアルカンジイル基の1種以上からなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基やオキシフェニレン基が挙げられる。
上記R6としては、フェニル基、炭素数1〜30、好ましくは分岐鎖を有していても良い炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基又はヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が好ましく挙げられる。R6のより好ましい例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、(イソ)ブチル基、(イソ)ペンチル基、(イソ)ヘキシル基等の炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
(e)成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(上記式(3)におけるpが1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(p=1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(p=1〜30)(メタ)アクリレート、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(p=1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(p=1〜30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(p=1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(p=1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(p=1〜30、その中のエチレングリコール部分は1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、メトキシポリエチレングリコール(p=2〜20)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(p=2〜20)(メタ)アクリレートが好ましい。
商業的に入手しうる(d)、(e)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社の多官能性アクリレートモノマー(NKエステル)M−40G、同90G、同230G、EH―4E、日本油脂株式会社のブレンマーシリーズ、PE−90、同200、同350,PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B等が挙げられる。
上記(d)成分及び(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水不溶性ポリマー製造時における、上記(a)〜(e)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は水不溶性ポリマー中における(a)〜(e)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性等の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性、印字濃度向上等の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜35重量%である。
(c)成分の含有量は、印字濃度等の観点から、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。
(a)成分の含有量と、(b)成分と(c)成分の合計含有量との重量比((a)/[(b)+(c)])は、得られる水系インクの長期保存安定性、吐出信頼性等の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.7、更に好ましくは0.05〜0.5である。
(d)成分の含有量は、再分散性、分散安定性の観点から、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、更に好ましくは3〜15重量%である。
(e)成分の含有量は、吐出信頼性、分散安定性等の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜30重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
(a)成分と(d)成分との合計含有量は、水中での安定性、耐水性等の観点から、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。
また、(a)成分と(e)成分の合計含有量は、水中での分散安定性、吐出信頼性等の観点から、好ましくは5〜75重量%、より好ましくは7〜50重量%、更に好ましくは10〜40重量%である。
(a)成分と(d)成分と(e)成分との合計含有量は、水中での分散安定性及び吐出信頼性の観点から、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%、更に好ましくは10〜40重量%である。
(水不溶性ポリマーの製造)
水不溶性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、前記モノマー混合物を共重合させることによって製造されるが、これらの重合法の中では、溶液重合法の場合に、特に高光沢性や高印字濃度等の効果が好適に得られる。
溶液重合法で用いる溶媒としては、水不溶性ポリマーと親和性の高い極性有機溶媒が好ましく、水に対する溶解度が20℃において、50重量%以下のものが好ましく、5重量%以上のものが好ましい。極性有機溶媒としては、例えば、ブトキシエタノール等の脂肪族アルコール;トルエン、キシレン等の芳香族類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ブトキシエタノール、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、tert−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知の重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加することができる。
モノマー混合物の重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は30〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
得られる水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、着色剤の分散安定性、耐水性、吐出信頼性等の観点から5,000〜500,000が好ましく、8,000〜400,000がさらに好ましく、10,000〜300,000が特に好ましい。なお、水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
上記水不溶性ポリマーは、塩生成基含有モノマー(a)由来の塩生成基を有している場合は、中和剤により中和して用いる。中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができ、例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
塩生成基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらに20〜180%、特に50〜150%であることが好ましい。ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価(HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から算出することができるが、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して滴定する方法を用いて求めることもできる。
〔着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子(ロ)〕
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子(ロ)は、次の工程(1)及び(2)により、水分散体として得ることが好ましい。
工程(1):水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、水及び必要により中和剤を含有する混合物を、分散処理する工程
工程(2):前記有機溶媒を除去する工程
前記工程(1)では、まず、前記水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、前記有機溶媒に加えて混合し、水中油型の分散体を得ることが好ましい。
前記混合物中、着色剤は、5〜50重量%が好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、水は、10〜70重量%が好ましい。水不溶性ポリマーが塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましいが、中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ビニルポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられ、水に対する溶解度が20℃において、50重量%以下でかつ10重量%以上のものが好ましい。
アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
中和剤としては、水不溶性ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。
中和剤としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の塩基が挙げられる。
前記工程(1)における混合物の分散方法に特に制限はない。好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行うことが好ましい。工程(2)で、所望の平均粒径の水不溶性ポリマー粒子が得られるように微粒化させる。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、特殊機化工業株式会社、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック株式会社、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中では、混合物に含まれている顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散体から有機溶媒を留去して水系にすることで、所望の平均粒径を有する着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得ることができる。水分散体に含まれる有機溶媒の除去は、減圧蒸留等による一般的な方法により行うことができる。得られた水不溶性ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下である。得られた水不溶性ポリマー粒子を含む水分散体をろ過することで、粗大粒子を除去することが好ましい。粗大粒子は、存在しないか、存在してもわずかであるが、プリンターのノズルが詰まらないようにするために、フィルターの粒径は、好ましくは1〜10μm、更に好ましくは3〜7μmとする。
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、着色剤を含有する水不溶性ポリマーの固体分が水を主媒体とする中に分散しているものである。ここで、着色剤を含む水不溶性ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも着色剤と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、水不溶性ポリマーに着色剤が内包された粒子形態、水不溶性ポリマー中に着色剤が均一に分散された粒子形態、水不溶性ポリマー粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれる。
着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の平均粒径は、分散安定性、吐出性の観点から、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは70〜170nm、特に好ましくは90〜150nmである。着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子のD90(散乱強度の頻度分布における、小粒子側から計算した累積90%の値)は、粗大粒子を減らして、分散体の保存安定性を高める観点から、350nm以下が好ましく、300nm以下が更に好ましく、270nm以下が特に好ましい。下限は、製造のし易さから、100nm以上が好ましい。着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子のD10(散乱強度の頻度分布における、小粒子側から計算した累積10%の値)は、印字濃度の観点、製造のし易さから、10nm以上が好ましく、20nm以上がさらに好ましく、30nm以上が特に好ましい。
なお、平均粒径、D90、D10は、前記大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定することができる。測定条件は、前記と同じである。
〔記録媒体〕
本発明で用いる記録媒体は、インクジェット記録方式に適用できるものであれば特に制限はなく、紙、プラスチック、及びそれらの複合物等が挙げられる。
記録媒体は、空隙型インク受容層やアルミナ系インク受容層を有する、通常、光沢紙、写真用紙と言われるものであってもよいが、本発明の効果を発揮させるにはインク受容層を有しない、通常、普通紙又はコピー紙と言われるものが好適である。
ここでインク受容層とは、アルミナ、シリカ等の多孔質無機粒子と水溶性樹脂(バインダー)から構成された空隙型インク受容層を意味し、かかるインク受容層を有する記録媒体は、例えば、「インクジェットプリンターの応用と材料」(株式会社シーエムシー2002年発行)のp174〜p181に記載されている。
本発明で好適に使用し得る記録媒体の具体例としては、例えば、ゼロックス社製の商品名、ゼロックス4024、キヤノン株式会社製のPB用紙、株式会社リコー製のPPC用紙マイペーパー等の市販の普通紙が挙げられる。
〔インクジェット印刷方法〕
本発明のインクジェット印刷方法は、水系インク及び塗工インクを用いて、記録媒体に下記工程1及び2を順次施すことを特徴とする。
工程1:記録媒体の全部又は一部に、着色剤を含有する水系インクをインクジェット記録方式により印刷する工程
工程2:工程1で得られた記録媒体上の印刷した部分に、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)を含む塗工インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する工程
記録媒体への塗工体積比〔粒子(イ)の体積(cm3)/着色剤の体積(cm3)〕とは、記録媒体単位面積当たりの粒子(イ)と着色剤との存在量比を体積比で表したものであり、粒子(イ)の被覆性、及び記録媒体のしわ防止の観点から、1/4以上が好ましく、更に好ましくは1/3以上であり、特に好ましくは1/2以上である。その上限は、4/1以下であり、3/1以下が好ましく、2/1以下が更に好ましい。それらの観点から、1/4〜4/1が好ましく、1/3〜3/1が更に好ましく、1/2〜2/1が特に好ましい。
本発明においてインクジェット記録方式は制限されないが、特にピエゾ方式のインクジェットプリンタに好適である。
〔インクセット〕
本発明のインクセットは、着色剤を含有する水系インクと、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)を含む塗工インクから構成されるインクセットであって、インクジェット記録方式により記録媒体上に該水系インクを印刷し、その印刷部分に該塗工インクを重ねて印刷する、インクセットである。
インクセットは、前記水系インクとして、2種以上の異なる色、好ましくは有彩色のインクを備えている。ここで、「異なる色」とは、日本電色工業株式会社の分光式色差計SE−2000等を用いて、印刷物をD65/2の光の波長で反射光を測定し、L***表色系で表示したとき、a*(赤−緑方向の色度)とb*(黄−青方向の色度)が同一でない色をいう。例えば、シアン、イエロー、マゼンタ、ライトシアン、ダークイエロー、及びライトマゼンタからなる群から選ばれる2種以上の有彩色等が挙げられる。
本発明のインクセットは、これらの有彩色から選ばれる2色以上の水系インクの組み合わせを含むことが好ましく、3色インクセット、4色インクセット、5色インクセット、6色インクセット、7色インクセット以上のいずれであってもよい。
より好ましくは、減法混色の3原色であるマゼンタインク、イエローインク及びシアンインクから選ばれる2色以上の異なる色の水系インクを備えたインクセットであり、これら3色のインクを備えたインクセットが特に好ましい。本発明のインクセットは、更に、自己分散型カーボンブラック等のブラックインクを備えていてもよい。
以下の製造例、調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。
製造例1(顔料を分散させるための水不溶性ポリマーの製造)
反応容器内に、メチルエチルケトン20部及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、表1に示すモノマー混合物200部のうち10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマー混合物の残りの90%を仕込み、前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン60部及びラジカル重合開始剤(2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記ラジカル重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
なお、表1に示す化合物の詳細は、以下のとおりである。
・スチレンマクロマー:東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクロイルオキシ基、純分50%
・ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシド平均付加モル数=9):新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルM−90G 末端:水素原子
・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシド平均付加モル数=9):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−500 末端:水素原子
Figure 2008094058
製造例2(顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体の製造)
合成例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をメチルエチルケトン70部に溶かし、その中に中和剤(5N水酸化ナトリウム水溶液)4.1部(中和度75%)及びイオン交換水230部を加えて塩生成基を中和し、更にジメチルキナクリドン顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19、クラリアントジャパン株式会社製、商品名:Hostaperm Red E5B02)75部を加え、ディスパー翼で20℃で1時間混合した。得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics 社製、商品名)で200MPaの圧力で10パス分散処理した。
得られた分散液に、イオン交換水250部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が20%の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。顔料含有ビニルポリマー粒子の平均粒径は、110nmであった。
調製例1(水系インクの調製)
製造例1で得られた顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散体40部に、トリエチレングリコールモノブチルエーテル7部、サーフィノール465(日信化学工業株式会社製、ノニオン性活性剤)1部、プロキセルXL2(アビシア株式会社製、抗菌剤)0.3部を混合し、20℃のE型粘度が4mPa・sとなるようにグリセリンとイオン交換水を添加、よく攪拌して、合計が100部になるように調整した。得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより、水系インクを得た。
調製例2(塗工インクの調製)
コロイダルシリカ MP−1040(日産化学工業株式会社製、商品名、平均粒径110nm)15部(純分換算値6部)に、トリエチレングリコールモノブチルエーテル7部、前記サーフィノール465 1部を混合し、20℃のE型粘度が4mPa・sとなるようにグリセリンとイオン交換水を添加、よく攪拌して、合計が100部になるように調整した。得られた混合液を調製例1と同様に濾過し、塗工インクを得た。
実施例1
調製例1で得られた水系インクを、インクジェット記録方式により、セイコーエプソン株式会社製プリンター(型番:EM−930C、ピエゾ方式)を用いて、市販の普通紙(XEROX株式会社製、商品名:4024)にベタ印字〔印字条件=用紙種類:普通紙、モード設定:フォト(4パス)〕した後、調整例2で得られた塗工インクを同じ条件で、記録媒体上の印刷した部分に重ねて印刷した。
実施例2
コロイダルシリカ MP−1040の代わりに、コロイダルシリカ MP−2040(日産化学工業株式会社製、商品名、平均粒径210nm)純分換算値6部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
実施例3
コロイダルシリカ MP−1040の代わりに、コロイダルシリカ SI−45P(触媒化成工業株式会社製、カタロイドSI−45P、平均粒径60nm)純分換算値6部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
実施例4
調製例2におけるコロイダルシリカ MP−1040の代わりに、コロイダルシリカ SI−50(触媒化成工業株式会社製、カタロイドSI−50、平均粒径30nm)純分換算値6部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
実施例5
調製例2におけるコロイダルシリカ MP−1040の代わりに、ポリスチレン(日本ゼオン株式会社製、PS、平均粒径120nm)純分換算値3部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
実施例6
調製例2におけるコロイダルシリカ MP−1040の代わりに、フッ素系ポリマーエマルジョン(日信化学工業株式会社製、商品名:ビニブランFJ−310、平均粒径180nm、Tg35℃)純分換算値4.4部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
実施例7
調製例2におけるコロイダルシリカ MP−1040の代わりに、ポリテトラフルオロエチレン(旭硝子株式会社製、PTFE、商品名:AD911、平均粒径270nm)純分換算値4.3部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
実施例8
調製例2におけるコロイダルシリカ MP−1040の代わりに、フッ化マグネシウム(MgF2、平均粒径190nm)純分換算値9部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
比較例1
調製例2におけるコロイダルシリカ MP−1040の代わりに、コロイダルシリカ MP−4540M(日産化学工業株式会社製、商品名:、平均粒径460nm)純分換算値6部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
比較例2
調製例2におけるコロイダルシリカ MP−1040の代わりに、酸化チタン(日本アエロジル株式会社製、SiO2、商品名:AEROXIDE−P25、平均粒径220nm)純分換算値11部を使用し、調製例2と同様の工程により塗工インクを調製した。得られた塗工インクを、実施例1で使用した塗工インクの代わりに用いて、実施例1と同様の印刷処理を行った。
比較例3
実施例1における印刷工程において、水系インクによる印刷のみを行い、塗工インクによる印刷処理を行わなかったものを比較例3とした。
(1)印字濃度
印刷処理を行った印刷物を25℃で24時間放置した後、印字濃度をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:RD914)で印刷物(5.1cm×8.0cm)の中心及び四隅の計5点を測定し、その平均値を求めた。
(2)屈折率の測定方法
粒子(イ)を分散させた液をスピンコートして、薄膜(約100μm)を作成したのち、減圧乾燥機(105℃、−8000Pa、10時間乾燥)で分散媒を除去し、光干渉式膜厚測定装置(製品名:ラムダエース VM−1000、大日本スクリーン株式会社製)によりJIS K7142−1996(B法)で測定(測定波長589nm)を行った。
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定方法
本発明において、ポリマーのTgは、示差走査熱量計〔セイコーインスツルメンツ株式会社、DSC6200〕を用いて測定した値をいう。具体的には、下記の連続する温度プログラム1〜4の条件で測定を行い、温度プログラム3で測定された値をTgとした。前記の昇温、冷却の温度プログラムにおいて測定を行い、温度プログラム3の測定値を用いるのは、測定値の再現性を確保するためである。
温度プログラム:
1.30 〜 250℃:昇温速度 30℃/min,保持時間 1min
2.250〜−100℃:冷却速度 30℃/min,保持時間30min
3.−100〜250℃:昇温速度 5℃/min,保持時間 1min
4.250 〜 30℃:冷却速度 30℃/min,保持時間 2min
(4)E型粘度計の測定方法
E型粘度の測定条件は、東機産業株式会社製のRE80を用い、測定温度20℃、測定時間1分、回転数100rpm、ロータは標準(1°34′×R24)を使用した。
(5)塗工体積比の測定方法
本実施例の印刷工程における、記録媒体への塗工体積比〔粒子(イ)の体積(cm3)/着色剤の体積(cm3)〕は、塗工インクと水系インクの吐出量(重量)は同じとみなせるので、〔塗工インク1g当たりの粒子(イ)の体積(cm3/g)/水系インク1g当たりの着色剤の体積(cm3/g)〕の体積比から、求めることができる。
塗工インク1g当たりの粒子(イ)の体積(cm3/g)=塗工インク中の粒子(イ)の含有量(g/g)/粒子(イ)の真密度(g/cm3
水系インク1g当たりの着色剤の体積(cm3/g)=水系インク中の着色剤の含有量(wt%)/着色剤の真密度(g/cm3
調整例1に記載する水系インク中の顔料の含有量は6重量%であり、この顔料の真密度は2.0(g/cm3)であることから、水系インク1g当たりの顔料の体積は0.03(cm3/g)になる。
一方、実施例1の塗工インク中の粒子(イ)の含有量は6重量%であり、この粒子(イ)の真密度は2.1(g/cm3)であることから、塗工インク1g当たりの粒子(イ)の体積は0.029(cm3/g)になる。
従って、実施例1の塗工体積比は、0.029/0.03=0.97となる。
Figure 2008094058
表2の結果から、着色剤を含有する水系インクを印刷した後、塗工インクによる印刷処理を行った実施例1〜8は、塗工インクによる処理を行わなかった比較例3と比べ、いずれも印字濃度が向上していることがわかる。また、塗工インク中の粒子(イ)の屈折率が約1.4、粒径が約100nmで印字濃度が最も高くなっていることが確認できた。
また、比較例1では粒子(イ)の粒径が高すぎるため、比較例2では粒子(イ)の屈折率が高すぎるため、いずれも印字濃度向上効果が得られなかった。

Claims (7)

  1. 水系インク及び塗工インクを用いて、記録媒体に下記工程1及び2を順次施すインクジェット印刷方法。
    工程1:記録媒体の全部又は一部に、着色剤を含有する水系インクをインクジェット記録方式により印刷する工程
    工程2:工程1で得られた記録媒体上の印刷した部分に、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)を含む塗工インクを、インクジェット記録方式により重ねて印刷する工程
  2. 粒子(イ)が無機粒子及び/又はポリマー粒子である、請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
  3. 塗工インク中の粒子(イ)の含有量が0.1〜20重量%である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷方法。
  4. 記録媒体への塗工体積比〔粒子(イ)の体積(cm3)/着色剤の体積(cm3)〕が1/4〜4/1である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
  5. 水系インクにおける着色剤が水不溶性ポリマー粒子(ロ)に含有されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
  6. 水不溶性ポリマー粒子(ロ)を構成する水不溶性ポリマーが、塩生成基含有モノマー(a)由来の構成単位と、疎水性モノマー(c)由来の構成単位を含むポリマーを主鎖に有し、マクロマー(b)由来の構成単位を側鎖に有する、水不溶性グラフトポリマーである、請求項5記載のインクジェット印刷方法。
  7. 着色剤を含有する水系インクと、平均粒径が30〜400nmで屈折率が1.0〜2.2である粒子(イ)を含む塗工インクから構成されるインクセットであって、インクジェット記録方式により記録媒体上に該水系インクを印刷し、その印刷部分に該塗工インクを重ねて印刷する、インクセット。
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