JP2008076394A - ナトリウム利尿ペプチド、および胎盤増殖因子(PlGF)/可溶性VEGF受容体が妊婦における心疾患に関連した心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別する - Google Patents

ナトリウム利尿ペプチド、および胎盤増殖因子(PlGF)/可溶性VEGF受容体が妊婦における心疾患に関連した心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別する Download PDF

Info

Publication number
JP2008076394A
JP2008076394A JP2007242442A JP2007242442A JP2008076394A JP 2008076394 A JP2008076394 A JP 2008076394A JP 2007242442 A JP2007242442 A JP 2007242442A JP 2007242442 A JP2007242442 A JP 2007242442A JP 2008076394 A JP2008076394 A JP 2008076394A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plgf
sflt
level
natriuretic peptide
cardiac dysfunction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007242442A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4734306B2 (ja
Inventor
Georg Hess
ヘス ゲオルグ
Andrea Horsch
ホルシュ アンドレア
Dietmar Zdunek
ズドゥネク ディートマール
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
F Hoffmann La Roche AG
Original Assignee
F Hoffmann La Roche AG
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by F Hoffmann La Roche AG filed Critical F Hoffmann La Roche AG
Publication of JP2008076394A publication Critical patent/JP2008076394A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4734306B2 publication Critical patent/JP4734306B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6893Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids related to diseases not provided for elsewhere
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2800/00Detection or diagnosis of diseases
    • G01N2800/32Cardiovascular disorders
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2800/00Detection or diagnosis of diseases
    • G01N2800/36Gynecology or obstetrics
    • G01N2800/368Pregnancy complicated by disease or abnormalities of pregnancy, e.g. preeclampsia, preterm labour

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】妊婦が心機能不全に罹患した場合の診断方法などに関する。
【解決手段】該方法は以下のステップ:(a)サンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するステップ、ならびに(b)サンプル中のP1GFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベルを測定するステップを含み、ここで、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつP1GFもしくはその変異体レベルが低下しているか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇していることが、胎盤に関連した心機能不全の存在を示すものであり、あるいは、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつP1GFもしくはその変異体レベルが低下していないか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇していないことが、心疾患に関連した心機能不全の存在を示すものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、妊婦における心機能不全を診断するためのバイオマーカーの使用に関する。具体的には胎盤関連心機能不全と心疾患に関連した心機能不全とを区別するためのバイオマーカーの使用に関する。
子癇前症は、もっとも一般的な妊娠疾患の一つであり、妊娠の約5%に影響を及ぼしている。この疾患は、妊婦死亡および罹患、周産期死亡、早産、ならびに子宮内成長制限の主要な原因となっている。子癇前症では、高血圧、浮腫、およびタンパク尿といった一連の症状がみられる。その症状は、妊娠20週目以降に現れ、通常その女性の血圧と尿の日常的なモニタリングによって検出される。妊婦が高血圧(少なくとも6時間あけて測定された2つの独立した測定値で140/90もしくはそれ以上)と24時間尿サンプル中の300mgのタンパク質(タンパク尿)を発症した場合、子癇前症と診断される。また、子癇前症は、既に高血圧、糖尿病もしくは腎臓病を患っている女性、子癇前症の家族歴を持つ女性、および多胎妊娠(双子、三つ子、およびそれ以上)を有する女性で、より発症しやすい。
主要な知見は、後に続く母体循環系での血管増殖因子の濃度減少および胎盤組織片の増大(母体炎症反応を生じる)と共に、免疫適応不全により生じる表層性胎盤形成の病因モデルもしくは病原モデルを支持している。リスクのある女性は、疫学的なおよび臨床的なリスク因子に基づいて特定されるが、子癇前症の診断基準は依然として不明確である。
妊娠は、新しい血管の協調的形成、すなわち血管新生として知られるプロセスを伴う。いくつかの増殖因子と特異的受容体、例えば、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)、胎盤増殖因子(Placenta Growth Factor:PlGF)および可溶性Flt−1(sFlt−1)は、このプロセスで、必須の役割を果たしている。子癇前症は、妊婦の血液サンプルで測定可能なこれらの分子の異常な発現と関連している。
VEGFは、内皮細胞特異的マイトジェン、血管新生誘導因子、および血管透過性メディエーターである。VEGFは、糸球体毛細血管修復に重要なことが明らかにされている。VEGFは、膜貫通型チロシンキナーゼ受容体であるfms様チロシンキナーゼ(fms-like tyrosine kinase:Flt−1)のホモ二量体に結合する。このキナーゼは、多くの異なる組織から得られる内皮細胞中でそれぞれ異なって発現している。Flt−1は、胎盤の発育に寄与する栄養膜細胞で多量に発現している。PlGFは、細胞栄養芽層、および合胞体栄養細胞層で発現し、内皮細胞の増殖、移動、および活性化を誘導することができる。PlGFは、Flt−1受容体にホモ二量体として結合する。PlGFとVEGFは双方とも、胎盤の発育に重要なマイトジェン活性と血管新生に寄与する。sFlt−1は、受容体の膜貫通ドメインと細胞質ドメインを欠失したFlt−1受容体のスプライシング変異体である。このsFlt−1は、VEGFに高い親和性で結合するが、内皮細胞の有糸***誘発を刺激することはできない。sFlt−1は、胎盤組織のほかにヒト臍帯静脈内皮細胞でも発現している。sFlt−1は、VEGFシグナル伝達経路をダウンレギュレートすると考えられている。
いくつかの研究から、子癇前症を発症する女性は、生存中に心臓血管系の合併症リスクがあることが示唆された。子癇前症の多数のリスク因子や病態生理学的な異常は、冠動脈疾患のそれに類似している。インスリン耐性は、それらの共通因子として関係している。インスリン耐性と関連する微小血管機能障害は、冠心疾患と子癇前症の双方の素因となり得る。
胎盤が心機能不全を誘発する一方で、原発性心機能不全もまた、妊婦の心機能不全の原因として考慮することができる。原発性心機能不全の主要な原因は、先天的および後天的心臓弁膜症、ならびに心筋症である。
サンプル中のsFlt−1、VEGFまたはPlGFポリペプチドのレベルを測定することにより妊婦における子癇前症をモニターする方法が、US2004/0126828 A1に開示されている。該出願人らは、sFlt−1レベルが子癇前症の女性から採取した血液サンプルで上昇していることを記載している。sFlt−1は、高い親和性でVEGFおよびPlGFに結合し、これらの増殖因子のマイトジェン活性および血管新生活性を阻害する。該出願人らは、子癇前症を有する患者の体内で循環するsFlt−1が血管弛緩を阻害し、それが高血圧の一因となっているかもしれないと示唆している。
さらに、US2005/0025762 A1では、sFlt−1レベルを低減する化合物、およびVEGFまたはPlGFのsFlt−1への結合を阻害する化合物を使用することにより子癇前症と子癇を治療する方法が開示されている。しかし、それらの血管新生増殖因子の測定だけでは、妊婦の心機能不全を依然検出できないと思われる。
DE102004051847では、PlGFおよびsFlt−1のレベルを測定することによってアテローム硬化症を診断する方法が開示されている。この方法は、PlGFとsFlt−1の関係を見出す方法を含んでいる。心筋梗塞に罹患している患者のPlGFレベルの上昇は、さらなる血管イベントのリスクの増大と関連している。しかし、該出願人らは、請求の範囲に記載された方法ではアテローム硬化性の病因をもつ血管性疾患のみに言及することを想定しており、子癇前症または子癇については請求の範囲に記載された方法から除外している。
さらに、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が子癇前症に罹患している妊婦での生化学的マーカーとして使用できるかどうかを決定しようと試みられている。Resnikら(American Journal of Obstetrics and Gynecology (2005) 193, 450-4)は、正常妊娠と比べて、重度の子癇前症でBNPレベルが上昇していることを発見した。著者らは、心室ストレス、および/または無症候心機能不全が子癇前症に関係していると推測している。しかし、Resnikは、妊婦の心機能不全が子癇前症によって生じるかどうか、またはその症状が他の既存の心臓イベントによるものかどうかについては記載していない。
また一方で、ナトリウム利尿ペプチドの測定のみでは、妊婦の心機能不全の要因を証明したことにはならない。なぜなら、胎盤機能不全のような他の原因を検出していないためである。それ故、現在のところ妊婦の心機能不全が胎盤関連心機能不全に起因するものかどうか、または原発性心疾患に起因するものかどうかを区別することのできる診断方法は、当該技術分野では知られていない。
したがって、妊婦における心機能不全のよりよい診断のための方法および手段を提供すること、具体的には胎盤関連心機能不全と原発性心機能不全とを区別するための方法および手段を提供することが本発明の目的である。
本発明は、妊婦が心機能不全に罹患している場合の診断方法であって、以下のステップ:(a)サンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するステップ、(b)サンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベルを測定するステップを含み、ここで、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下しているか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇している場合は、胎盤関連心機能不全であることが示され、あるいは、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下していないか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇していない場合は、心疾患に関連した心機能不全であることが示される方法に関する。
さらに、本発明は、(a)妊婦のサンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベル測定のための、ならびに(b)妊婦のサンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベル測定のための、ナトリウム利尿ペプチドに、特にNT−proBNPまたはその変異体に特異的に結合するリガンド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体に対するリガンドを含むアレイであって、ナトリウム利尿ペプチド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定することによって、特に心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための、心疾患のインビトロ診断のためのアレイを含む。
さらに、本発明は、心機能不全に罹患している妊婦の考え得る治療に関する意思決定支援方法であって、妊婦に心疾患に関連する心機能不全の症状が見られ、以下のステップ、(a)サンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するステップ、(b)サンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベルを測定するステップ、(c)ここで、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下しているか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇している場合は、胎盤に関連した心機能不全であることが示され、あるいは、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下していないか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇していない場合は、心疾患に関連した心機能不全であることが示されるものであり、(d)任意により、心臓専門医による妊婦の検査を開始するステップ、(e)ステップ(c)による評価が心疾患に関連する心機能不全であることを示す場合、治療開始を勧めるステップ、を含んでなる方法に関する。
第1の実施形態において、前記目的は、以下のステップを含む、心機能不全に罹患している妊婦での診断方法によって達成される:
(a)サンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するステップ、(b)サンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベルを測定するステップ、
ここで、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下しているか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇している場合は、胎盤関連心機能不全であることが示され、
あるいは、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下していないか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇していない場合は、心疾患に関連した心機能不全であることが示される。
本発明はまた、心機能不全に罹患している妊婦で、胎盤関連心機能不全と心疾患に関連する心機能不全とを区別することも可能にする。
同様に、本発明はまた、心機能不全の症状がみられる妊婦で、心機能不全を診断するための、ナトリウム利尿ペプチドの測定レベル、ならびにPlGFおよび/またはsFlt−1の測定レベルを組み合わせた情報の使用、特に心疾患に関連する心機能不全および/または胎盤関連心機能不全に関する。このような使用は、同様に本明細書および実施例で開示される他の全ての他の特徴、ならびに好ましい実施形態に適合させることができる。
本方法はまた、例えば体液または組織サンプルといったサンプルを妊婦から採取するステップを含んでいてもよい。本発明では、体液または組織サンプルの採取を、好ましくは非医療従事者(すなわち、医業を行う上で必要な教育を受けていない者)が行うことができる。これは、特にサンプルが血液である場合に適用される。
本発明で組織サンプルとは、死亡したかまたは生きているヒトもしくは動物の体から得られるあらゆる種類の組織を指す。組織サンプルは、例えば生検または掻爬といった当業者に公知のいずれの方法によっても得ることができる。
本発明によれば、体液としては、血液、血清、血漿、リンパ液、脳髄液、唾液、硝子体液、および尿が挙げられる。特に、体液には、血液、血清、血漿、および尿が含まれる。体液サンプルは、当該技術分野のいずれかの公知の方法で得ることができる。
本発明はまた、心機能不全に罹患している妊婦の診断での安全性の改善をもたらす。上記のように、本発明の中で、ナトリウム利尿ペプチドレベルの上昇、ならびにPlGFもしくはその変異体レベルの低下および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルの上昇は、胎盤関連心機能不全であることを示し、またナトリウム利尿ペプチドレベルの上昇、ならびにPlGFもしくはその変異体レベルの低下が見られないことおよび/またはsFlt−1もしくはその変異体のレベルの上昇が見られないことは、心疾患に関連する心機能不全であることを示すことが見出された。
本発明の中で、ナトリウム利尿ペプチドの測定、特にNT−proBNPの測定だけでは、心機能不全が心疾患に関連するものであるか、または胎盤関連心機能不全に関連するものであるかを区別することができないことがわかった。ナトリウム利尿ペプチドの測定と、PlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体の測定の組合せは、誤診、特に緊急時における誤診を回避するのに役立ち得る。
本発明は、いくつかの「バイオマーカー」(または単に「マーカー」)を用いる。より具体的には、生化学的マーカーまたは分子マーカーを用いる。「バイオマーカー」、「生化学的マーカー」および「分子マーカー」という用語は、当業者に公知である。具体的に生化学的マーカーまたは分子マーカーとは、ある症状、疾患もしくは合併症の存在下または非存在下で、それぞれ異なって発現される(アップレギュレートもしくはダウンレギュレートされる)遺伝子発現産物である。通常、分子マーカーは、核酸(例えばmRNA)として定義されるのに対し、生化学的マーカーは、タンパク質またはペプチドである。適切なバイオマーカーのレベルは、症状もしくは疾患の有無を示すことができるので、診断を可能にする。
本発明は、特に胎盤増殖因子(PlGF)、sFlt−1およびその変異体を、ならびにナトリウム利尿ペプチド、特にNT−proANPおよびNT−proBNPを、バイオマーカーとして、特に生化学的マーカーとして利用する。
NT−proANPおよびNT−proBNPは、ナトリウム利尿ペプチドのグループに属する(例えば、Bonow, R.O. (1996). New insights into the cardiac natriuretic peptides. Circulation 93: 1946-1950を参照されたい)。NT−proANPおよびNT−proBNPは、タンパク質分解切断によって前駆体分子であるプレプロペプチドから生成される。この前駆体分子から、結果的に活性ホルモン(ANPまたはBNP)と対応するN末端断片(それぞれNT−proANPおよびNT−proBNP)が生じる。
プレプロペプチド(pre−proBNPの場合には134アミノ酸)は、短いシグナルペプチドを含む。このシグナルペプチドは、酵素的に切断されてプロペプチド(proBNPの場合には108アミノ酸)が放出される。プロペプチドは、さらにN末端プロペプチド(NT−proペプチド、NT−proBNPの場合には76アミノ酸)および活性ホルモン(BNPの場合には32アミノ酸、ANPの場合には28アミノ酸)に切断される。
異なる切断産物は、いくつかの異なる性質を示す。BNPは、主に(限定はしないが)心室で生成され、壁張力が増大する際に放出される。一方、ANPは、専ら心房で生成され、そこから放出される。ANPおよびBNPは活性ホルモンであり、それぞれの不活性対応物であるNT−proANPおよびNT−proBNPよりも短い半減期を有する。BNPは血液中で代謝されるのに対し、NT−proBNPは血液中を完全分子として循環し、そのままで腎臓で***される。NT−proBNPのインビボでの半減期は120分であり、20分であるBNPのそれよりも長い(Smith MW, Espiner EA, Yandle TG, Charles CJ, Richards AM. Delayed metabolism of human brain natriuretic peptide reflects resistance to neutral endopeptidase. J Endocrinol. 2000; 167: 239-46.)。
本発明で「ナトリウム利尿ペプチド」とは、ANPおよび/もしくはBNPまたはそれらの断片、あるいは/ならびにNT−proBNPおよび/もしくはNT−proANPまたはそれらの変異体を包含する。したがって、「ナトリウム利尿ペプチド」とは、ANP、BNPまたはそれらの断片、NT−proBNP、NT−proANPまたはそれらの変異体からなるグループを含む。さらに、「ナトリウム利尿ペプチド」はNT−proBNPまたはその変異体を含む。
したがって、本発明の好ましい実施形態は、ナトリウム利尿ペプチドの測定、好ましくはANPおよび/もしくはBNPまたはそれらの断片の測定、より好ましくはNT−proBNPおよび/もしくはNT−proANPまたはそれらの変異体の測定、最も好ましくはNT−proBNPまたはその変異体の測定である。
胎盤増殖因子(PlGFまたはPGFとも表される)は、当業者には周知である。この因子は血管透過性因子(vascular permeability factor:VPFまたはVEGF)に関連するタンパク質である。このタンパク質は、149アミノ酸長であり、VPFの血小板由来増殖因子様領域とは53%の同一性がある。PlGFは、発生期間中、成人期のある期間中、および腫瘍形成中に、血管新生に関与すると思われる。
妊娠初期の間、子宮において、ナチュラルキラー細胞は侵入する栄養膜細胞の周囲に高密度浸潤物として蓄積する。ヒトの胎盤形成は妊娠約20週で完了するので、妊娠中期以降、前記キラー細胞は、細胞栄養芽層侵入と同時に徐々に消失する。子宮のナチュラルキラー細胞は、いくつかのサイトカインを産生する。それらのサイトカインは、PlGF、VEGF(血管内皮増殖因子)およびアンジオポエチン2を包含し、血管新生、および血管安定化にかかわる。健常な妊娠の場合、血管内栄養膜と脱落膜白血球、特にナチュラルキラー細胞との間での適切な相互作用により、相当量のPlGFとVEGFの放出がもたらされる。
子癇前症では、PlGFとVEGFのアンタゴニストである胎盤由来のsFlt−1(可溶性fms様チロシンキナーゼ、可溶性VEGF受容体としても知られている)がアップレギュレートされる。これは、sFlt−1の全身量の増加(送達後に減少する)につながる。子癇前症での循環sFlt−1の上昇は、遊離状態にある循環PlGFおよびVEGFの濃度の低下と関連し、結果的に、内皮機能不全をもたらす。sFlt−1の増加の大きさは、病気の重症度と相関している。
正常妊娠の期間中、NT−proBNPレベルの中央値は、上昇することなく、妊娠期間を通して安定している。妊婦の正常NT−proBNP値は、125pg/mL未満、特に76pg/mL、さらに特には50pg/mLのNT−proBNPの血漿レベルに対応する。
子癇前症妊婦のNT−proBNPの高レベルは、その疾患の重症度と関連している。
本発明によれば、NT−proBNPの上昇レベルは、125pg/mL〜300pg/mLのNT−proBNPの血漿レベルに相当する。また、NT−proBNPの高上昇レベルは、300pg/mL〜500pg/mLを超えるNT−proBNPの血漿レベルに相当し、これは、原発性心疾患に関連する心機能不全であるか胎盤関連心機能不全に関連する心機能不全であるかを示す。
本発明で「PlGFレベルが低下していない場合、ならびに/またはsFlt−1レベルおよび/もしくはsFLt−1/PlGF比が上昇していない場合」とは、健康な参照集団の対照サンプルのレベルをいう。この参照集団には、子癇前症や原発性心疾患に罹患していない健康な妊婦のサンプルが含まれる。
本発明によれば「PlGFレベルが低下している場合、および/もしくはsFlt−1レベルが上昇している場合またはsFLt−1/PlGF比のレベルが変化している場合」とは、その値が好ましくは90パーセンタイルから逸れることにより、より好ましくは95パーセンタイルから逸れることにより、そしてもっとも好ましくは99パーセンタイルから逸れることにより、健康な参照集団と異なる場合を示す。
本発明の中で、ナトリウム利尿ペプチドの測定、特にNT−proBNPの測定だけでは、心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別できないことが明らかとなった。本発明によれば、ナトリウム利尿ペプチドと、PlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体の測定の組み合せにより、心疾患に関連した心機能不全と胎盤関連心機能不全との区別が可能になる。
正常妊娠中のPlGFレベルおよびsFlt−1レベルは、妊娠第2期〜第3期には低下しないか、低下してもほんのわずかである。これらのデータについては、本発明の図2で示している。
妊娠第2期〜第3期の間に測定されたナトリウム利尿ペプチドレベルの上昇、ならびにPlGFレベルの低下および/またはsFlt−1レベルの上昇は、子癇前症に罹患した胎盤関連心機能不全の存在を示している。これらのデータは、本発明の表1で実証されている。当該表では、妊婦9人中8人でPlGFレベルが100pg/mL未満であったことが示されている。さらに、これら8人の妊婦は、125〜1000pg/mLのNT−proBNPの血漿レベルに相当するNT−proBNPの上昇レベルを有している。
妊娠第2期〜第3期の間のナトリウム利尿ペプチドレベルの上昇、かつPlGFレベルが低下していないことおよび/またはsFlt−1レベルもしくはその変異体レベルが上昇していないことは、原発性心疾患に罹患している心疾患に関連した心機能不全の存在を示している。これらのデータは、本発明の表1の患者番号92316544について、NT−proBNPレベルが上昇しているが、PlGFレベルおよびsFlt−1レベルは正常であることを示していることから実証される。
「変異体」という用語は、ナトリウム利尿ペプチド(特にNT−proANP、NT−proBNP)、PlGF、およびsFlt−1に実質的に類似するペプチドに関する。「実質的に類似する」とは、当業者には十分に理解される。特に、変異体は、ヒト集団内で最も一般的なペプチドアイソフォームのアミノ酸配列と比較した場合、アミノ酸の変化が見られる、アイソフォームもしくは対立遺伝子であってもよい。実質的に類似するペプチドが、最も一般的な該ペプチドのアイソフォームに対して少なくとも80%の、好ましくは少なくとも85%の、より好ましくは少なくとも90%の、最も好ましくは少なくとも95%の配列類似性を有することが好ましい。また、実質的に類似するとは、診断方法により、またはそれぞれの全長ペプチドに対するリガンドにより、まだなお認識される分解産物、例えばタンパク質分解産物である。
「変異体」はまた、例えばグリコシル化ペプチドのような翻訳後修飾されたペプチドに関する。「変異体」はまた、例えばペプチドに、標識(特に放射線標識または蛍光標識)を共有結合または非共有結合することで、サンプル回収後に修飾されたペプチドである。サンプル回収後に修飾されたペプチドレベルの測定は、元の非修飾ペプチドのレベルの測定と理解される。
NT−proANPおよびNT−proBNPの特定の変異体の例、ならびにそれらの測定方法は、公知である(Ala-Kopsala, M., Magga, J., Peuhkurinen, K.ら(2004), Molecular heterogeneity has a major impact on the measurement of circulating N-terminal fragments of A-type and B-type natriuretic peptides. Clinical Chemistry, vol. 50(9), 1576-1588)。
「診断」という用語は、当業者には公知である。診断は、あらゆる病状を認識すること、特に心機能不全を認識することであると解される。診断はまた、「鑑別診断」に関する。すなわち、同一のもしくは類似の症状をもつ異なる病状を区別することに関する。特に、鑑別診断は心疾患に関連した心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別することを含む。
本発明による手段および方法によって得られた診断情報は、訓練を積んだ医師によって解釈されることが好ましい。個々の患者のさらなる治療に関するいかなる決定もまた、訓練を積んだ医師によってなされることが好ましい。適当と判断すれば、医師はさらなる診断法を決定するであろう。
本発明で「妊婦」は、好ましくは妊娠個体に関する。該個体は、心臓血管系疾患の既往歴がなくてもよい。好ましくは、本発明で「妊婦」とは、心疾患に関連する心機能不全により発生し得るまたは胎盤関連心機能不全に関する心機能不全の症状を示す妊娠個体に関する。
本発明は、妊婦における心機能不全の診断と広範囲に関係する。「心機能不全」とは、当業者には公知である。それは、あらゆる種類の心臓機能不全症に、さらに特にはポンプ能に影響する心臓機能不全症に関する。さらに特には、それは急性および慢性の心臓イベントに関する。
心疾患に罹患している患者は、安定狭心症(SAP)に罹患している個体、および急性冠症候群(ACS)を伴う個体であってもよい。ACS患者は、不安定狭心症(UAP)を呈する可能性があり、あるいはこのような個体は、既に心筋梗塞(MI)に罹患している。MIは、ST上昇MIまたは非ST上昇MIの可能性がある。MIの発生は、左心室機能不全(LVD)に続いて起こり得る。最終的に、LVD患者は、死亡率約15%の鬱血性心不全(CHF)を起こす。本発明に係る心疾患はまた、冠動脈心疾患、心臓弁膜症(例えば、僧帽弁膜症)、拡張型心筋症、肥大型心筋症、および心調律障害(不整脈)も含む。
心疾患に関連する心機能不全に罹患している妊婦では、ナトリウム利尿ペプチドレベルの上昇、ならびにPlGFもしくはその変異体のレベルが低下していないことおよび/またはsFlt−1もしくはその変異体のレベルが上昇していないことが示される。
「心疾患に関連する心機能不全」という用語は、十分量の酸素を含んだ血液を末梢組織に適応なしに供給する心臓の能力に関連し得る。心機能不全は、症候性、もしくは無症候である可能性があり、また心臓拡張機能不全もしくは心臓収縮機能不全またはその両方と関連する可能性がある。
胎盤関連心機能不全に関連する心機能不全に罹患している妊婦では、ナトリウム利尿ペプチドレベルの上昇、ならびにPlGFもしくはその変異体レベルの低下および/またはsFlt−1またはその変異体レベルの上昇が見られる。
「胎盤関連心機能不全」という用語は、胎盤機能不全および関連する異常に発生起源をもち、心疾患を原発としない心機能不全に関する。
症候的に、心疾患は、「心不全」を生じる可能性がある。「心不全」という用語は、当業者にはよく知られている。好ましくは、心不全は、血液を十分に循環するための心臓の能力の低下、特に酸素化の必要性が増す条件下、例えば運動中での、前記能力の低下に関する。心不全は、十分な血液を安定して拍出できないもの(前方不全)、および十分な静脈還流を安定して回収できないもの(後方不全)の両方を含む。
心不全を、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association:NYHA)による心臓血管系疾患用に定められた機能的分類体系にしたがって分類することができる。クラスIの患者では、心臓血管系疾患のはっきりした症状がない。身体活動の制限はなく、また通常の身体活動で過度の疲労、動悸または呼吸困難(息切れ)は生じない。クラスIIの患者では、軽度の身体活動制限がある。このクラスの患者は、安静時には不快感はないが、通常の身体活動で疲労、動悸または呼吸困難を生じる。クラスIIIの患者では、著しい身体活動制限が見られる。このクラスの患者は、安静時には不快感はないが、通常より軽い活動でも、疲労、動悸または呼吸困難を引き起こす。クラスIVの患者は、あらゆる身体活動に不快感を伴う。このクラスの患者は、安静時にも心不全の症状が見られる。どのような身体活動を行う場合でも、不快感が増大する。
心不全のもう一つの指標は、「駆出分画率」としても知られる「左心室駆出分画率(left ventricular ejection fraction:LVEF)」である。普通、健常な心臓を有する人は、通常約50%といわれる健常なLVEFを有している。症候性の収縮心機能不全を有する人の多くは、40%以下のLVEFを有する。
「心代償不全」という用語は、当業者にはよく知られている。「心代償不全」とは、通常、最も重篤なレベルの心不全を言う。心代償不全の間、血液を十分に循環するための心臓能力が、身体のストレス反応によってポンプ能の欠損を補えないレベルにまで低下している。心代償不全の症状は、当業者には公知である。具体的には、「心代償不全」の症状を示す患者は、NYHAクラスII、III、IVまたはそれよりも重篤な症状を示す。より具体的には、患者はNYHAクラスIII、IVまたはそれよりも重篤な症状を示す。より具体的には、NYHAクラスIVまたはそれよりも重篤な症状を示す。最も具体的には、その患者は、血液循環を安定化しまたは維持するための医療支援を必要とする。
「上昇しない(非上昇)」および「上昇した」、ならびに「低下した」レベルという用語は、心機能不全がないこと、特に心疾患に関連する心機能不全または胎盤関連心機能不全がないことを示す既知レベルと比較した時の妊婦で測定されたバイオマーカーのレベルを言う。
当業者は、既知レベル(または、例えば比率)を決定することができる。例えば、既知レベルは、心疾患に罹患していない個体集団の測定レベルの中央値もしくは平均値としてもよい。さらなる個体群または患者群における、例えばコホート研究におけるレベルの上昇は、既知レベルまたは既知比率をより正確にする上で役立つ可能性がある。同様に、それはまた、存在する心機能不全が、心疾患に関連するかまたは胎盤関連心機能不全に関連するかを示す参照レベルを規定するか、および/またはより正確にすることができる。
前記既知レベルは、「参照値」であってもよい。当業者は、バイオマーカーの「参照値」(または「正常値」)の概念を熟知している。特に、参照値という用語は、一以上の対照サンプルにおけるレベルの実測値に関連してもよく、あるいは一以上の対照サンプルにおける実測レベルに由来する値に関連してもよい。好ましくは少なくとも2個体、より好ましくは少なくとも5個体、より好ましくは少なくとも50個体、さらに好ましくは少なくとも100個体、最も好ましくは少なくとも500個体の被験体サンプルを解析して、参照値を決定する。
最も単純なケースでは、参照値は、対照サンプルで測定されたレベルまたは多数の対照サンプルで測定されたレベルの平均と同一である。また一方で、参照値は、1より多い対照サンプルから算出することもできる。例えば、参照値は、対照の状態(例えば、健常状態、特定の状態または特定の疾患状態)を示す対照サンプルにおけるレベルの相加平均であってもよい。参照値は、複数の同程度の対照サンプル(同一もしくは類似の疾患状態を示す対照サンプル)で見られ得る値の範囲、例えば、平均標準偏差の1倍または数倍に関連することが好ましい。同様に、参照値はまた、他の統計学的パラメータまたは統計学的方法によって算出することもできる。例えば、複数の対照サンプルで見出されたレベルの所定のパーセンタイルとして、例えば90、95、97.5または99パーセンタイルとして、算出することもできる。特定の参照値の選択は、所望の感度、特異性または統計学的有意性にしたがって決定することができる(一般には、感度が高くなれば特異性が低くなり、その逆も同様)。計算は、当業者に公知かつ適当と思われる統計学的方法によって実行することができる。
「対照」または「対照サンプル」という用語は、当業者には公知である。好ましくは「対照」は、基準を提供するために行われる実験もしくは試験に関し、該基準に対して実験結果(例えば、患者で測定したレベル)を評価することができる。本文中で基準とは、好ましくは特定の健康状態または疾患状態と関連する目的のバイオマーカーのレベルに関する。したがって、「対照」は、そのような基準を提供するために採用されるサンプルであることが好ましい。例えば、対照サンプルは、1以上の健康な被験体由来であってもよく、または1以上の特定の疾患状態を示す患者由来であってもよい。
本発明中で、特定の疾患状態を示す患者は、特に心疾患に関連する心機能不全または胎盤関連心機能不全に関連する心機能不全に罹患している妊婦を含む。この患者グループの全ての測定は、妊娠第2期および/または第3期に行う。子癇前症に罹患していない健常妊婦を含む対照サンプルについても、妊娠第2期および/または第3期に行う。したがって、本発明の一実施形態は、全ての測定を妊娠第2期および/または第3期に行う。
既知のレベルもしくは比率についての例は、以下でさらに述べる。前記レベルもしくは比率をさらに正確にすることも可能であろう。本明細書に記載した特定の既知レベルもしくは比率を、診断のガイドラインとすることができる。当該技術分野で既知、かつ十分に認められている場合、個々の被験体における実際の診断は、医師による個々の分析を通して、例えば個々の被験体の体重、年齢、一般的な健康状態、および既往歴に依存して、行われることが好ましい。
既に述べたように、妊婦の心機能不全の根本的原因は、胎盤関連心機能不全の存在に関連する可能性がある。例えば、子癇前症に罹患している妊婦である。さらに、妊婦は、心疾患に関連する心機能不全に罹患している可能性がある。例えば、心機能が妊娠開始以前に既に低下している妊婦である。
したがって、本発明による方法は、好ましくは、妊娠期間中に心機能不全の症状を示す以下の2つの患者群を扱うことができる。すなわち、
(1)原発性心疾患
(2)子癇前症に起因する胎盤関連心機能不全
に罹患している妊婦である。
本発明の中で、原発性心疾患の症状を呈する妊婦(上述の患者グループ1)では、ナトリウム利尿ペプチド、特にNT−proBNPのレベルの上昇が見られるが、PlGFのレベルは低下せず、またsFlt−1のレベルの増加は見られないことがわかっている。
さらに、本発明の中で、胎盤関連心機能不全に関連する心機能不全の症状を呈する妊婦(上述の患者グループ2)では、NT−proBNPレベルの上昇、さらにPlGFのレベルの低下、およびsFlt−1のレベルの上昇が見られることがわかっている。
本発明で「NT−proBNPのレベルが上昇していないこと」とは、好ましくは、125pg/mL未満の、特に76pg/mL未満の、さらに特には50pg/mL未満の、NT−proBNPの血漿レベルに相当する。
子癇前症妊婦のNT−proBNPレベルの上昇は、疾患の重症度と関連している。
本発明によれば、NT−proBNPの上昇レベルは、125pg/mL〜300pg/mLのNT−proBNPの血漿レベルに相当する。NT−proBNPの高上昇レベルは、300pg/mL〜500pg/mLより高いNT−proBNPの血漿レベルに相当する。
ナトリウム利尿ペプチドならびにPlGFおよび/またはsFlt−1からの組み合わせられた情報を、別の方法で表してもよいことは明らかである。
一般に、心疾患の症状を呈する妊婦のサンプルにおいてNT−proBNPのPlGFに対する測定比率がより高い場合、その患者が子癇前症に起因する胎盤関連心機能不全に罹患している可能性が高いことを示す。
さらに、当業者は、血漿以外のサンプルに関する対応レベルを定義することができる。
実施例を見てもわかるように、少なくとも1つの追加の時点でPlGF、sFlt−1、およびナトリウム利尿ペプチド(特にNT−proANPおよびNT−proBNP)のレベルを測定することにより、追加診断情報がもたらされる。例えば、NT−proBNPの測定は、心疾患の程度を過小評価することを避けるのに役立つ可能性がある。したがって、好ましい実施形態では、PlGF、sFlt−1およびナトリウム利尿ペプチド(特にNT−proANPおよびNT−proBNP)のレベルを少なくとも1つの追加サンプルで測定する。サンプルを最初の測定後、短時間内で採取することが好ましい。適切な時間は、例えば、最初のサンプル採取後、例えば2〜12時間以内、好ましくは4〜12時間以内である。
他の好ましい実施形態では、心疾患の追加の診断パラメータが測定される。該パラメータは特に、(a)左心室駆出分画率(LVEF)、(b)心エコー像、(c)既往歴(治療歴)、特に狭心症についてのもの、(d)心電図、(e)甲状腺または腎機能のパラメータ、(f)血圧、特に動脈性高血圧、(g)タリウムシンチグラム、(h)血管造影法、(i)カテーテル法からなる群より選択される。
これらの追加の診断パラメータは、PlGF、sFlt−1およびナトリウム利尿ペプチドを測定する前に、測定した後にまたは測定と並行して測定することができる。追加の診断パラメータは、心機能不全の疑いがあることを立証でき、または測定された特定のレベルもしくは比率の診断上の妥当性をさらに評価するのに役立ち得る。
PlGF、sFlt−1、およびナトリウム利尿ペプチドの測定は、並行してまたは連続して行うことができる。測定を並行して行うことが好ましい。本明細書で「並行して」とは、同時に、好ましくは2時間未満あけて、より好ましくは1時間未満あけて、採取したサンプルを使用することに関する。本明細書で「並行して」とは、最も好ましくは、同一サンプルを使用することに関する。サンプル中のペプチドの量または濃度を測定することも、同時に行うことが好ましい。
他の好ましい実施形態では、さらに、少なくとも1つの子癇前症のバイオマーカーを測定する。子癇前症のバイオマーカーは、当業者には公知である。そのようなマーカーは、妊婦が子癇前症であることを示す。健常な妊娠期間中に母体循環系で見られる多くの胎盤因子が、子癇前症では上昇している。これらは、母体の炎症応答を刺激する因子を含むいくつかの炎症性サイトカイン、コルチコトロピン放出ホルモン、フリーラジカル分子種およびアクチビンAを包含する。
子癇前症のバイオマーカーの例は、α2−マクログロブリン、CD40リガンド、ウロテンシンIIおよび他のものを含む。
生化学的マーカーまたは分子マーカーのレベルは、タンパク質(ペプチドもしくはポリペプチド)または対応する転写産物の濃度を測定することで測定することができる。本明細書では、「測定する」とは、好ましくは、レベルの定量的測定または半定量的測定に関する。
前記レベルは、ペプチドもしくはポリペプチドの量または濃度を測定することによって測定することが可能である。前記レベルは、所与のサンプル中の濃度として測定することが好ましい。本発明の目的上、絶対的レベルを測定する必要はない。適当な対照のレベルと比較した相対的レベルを測定すれば十分である。目的のペプチドもしくはポリペプチドに特異的な誘導体または断片を、例えば核酸もしくはタンパク質消化物中の特異的断片を測定することによって、測定を行うこともできる。
核酸の測定、特にmRNAの測定は、当業者に公知かつ適当と思われるいずれかの方法によって実行することができる。
RNAの測定に関する例は、ノザン・ハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ、in situハイブリダイゼーション、および、例えばセファデックス結合RNAリガンドといったアプタマーを包含する(Srisawat,C., Goldstein,I.J.およびEngelke,D.R.(2001) Sephadex-binding RNA ligands: rapid affinity purification of RNA from complex RNA mixtures. Nucleic Acids Research, vol. 29, no. 2 e4)。
さらに、RNAを、cDNAに逆転写することもできる。それにより、DNA測定方法をRNAの測定にも同様に用いることができ、そのような測定方法とは、例えば、サザン・ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR) (例えば、Cao, W. (2004) Recent developments in ligase-mediated amplification and detection. Trends in Biotechnology, vol. 22 (1), p. 38-44を参照されたい)、RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、定量的RT−PCR、およびマイクロアレイ・ハイブリダイゼーション(例えば、Frey, B., Brehm, U.およびKubler, G.,ら (2002) Gene expression arrays: highly sensitive detection of expression patterns with improved tools for target amplification. Biochemica, vol. 2, p. 27-29を参照されたい)である。
DNAとRNAの測定は、例えば、分子ビーコン、ペプチド核酸(PNA)またはロックド核酸(LNA)(例えば、Demidov,V.V. (2003) PNA and LNA throw light on DNA. Trends in Biotechnology, vol.21(1), p.4-6を参照されたい)を用いて、溶液中で行うこともできる。
タンパク質またはタンパク質断片の測定は、目的のペプチドまたはポリペプチドの測定に関する公知のいずれかの方法によって行うことができる。当業者は、適当な方法を選択することができる。
当業者は、ペプチドまたはポリペプチドのレベルを測定する別の方法を熟知している。「レベル」という用語は、サンプル中のペプチドまたはポリペプチドの量または濃度に関する。
測定は、直接的にまたは間接的に行うことができる。直接的な測定には、細胞応答、リガンドの結合、標識または酵素反応産物の測定が含まれる。
測定は、当該技術分野で公知のいずれかの方法で行うことができる。例えば、細胞アッセイ、酵素アッセイまたはリガンドの結合に基づくアッセイ等が挙げられる。一般的な方法を以下で説明する。
一実施形態において、目的のペプチドまたはポリペプチドのレベルを測定する方法は、以下のステップ、(a)ペプチドまたはポリペプチドを、適当な基質と適切な時間、接触させるステップ、(b)生成物の量を測定するステップ、を含む。
他の実施形態において、目的のペプチドまたはポリペプチドのレベルを測定する方法は、以下のステップ、(a)ペプチドまたはポリペプチドを、特異的に結合するリガンドと接触させるステップ、(b)(任意により)非結合リガンドを除去するステップ、(c)結合したリガンドの量を測定するステップ、を含む。
他の実施形態において、目的のペプチドまたはポリペプチドのレベルを測定する方法は、以下のステップ、(a)(任意により)サンプルのペプチドまたはポリペプチドを断片化するステップ、(b)(任意により)ペプチドもしくはポリペプチドまたはそれらの断片を1以上の生化学的または生物物理学的性質によって(例えば、固体表面への結合、またはクロマトグラフ装置での移動度によって)分離するステップ、(c)1以上のペプチド、ポリペプチドまたは断片の量を測定するステップ、ならびに(d)ステップ(c)の1以上のペプチド、ポリペプチドまたは断片が何であるかを質量分析により決定するステップを含む。質量分析法の概説は、例えば、Richard D. Smith (2002) Trends in mass spectrometry instrumentation for proteomics. Trends in Biotechnology, Vol.20, No.12 (Suppl.) pp.S3-S7に記載されている。
他の一般的な測定方法は、目的のペプチドまたはポリペプチドに特異的に結合するリガンドの量を測定することを含む。本発明で結合とは、共有結合および非共有結合の双方を含む。
本発明でリガンドとは、ペプチド、ポリペプチド、核酸または目的のペプチドもしくはポリペプチドに結合するその他の物質のいずれかであり得る。ペプチドまたはポリペプチドは、それがヒトもしくは動物の体から採取されまたは精製されたものならば、例えばグリコシル化により修飾されている可能性があることは、よく知られている。本発明の適当なリガンドは、ペプチドまたはポリペプチドに、そのような部位を通して結合するものでもよい。
好ましくは、リガンドは、測定対象のペプチドまたはポリペプチドに特異的に結合しなければならない。本発明で「特異的に結合」とは、リガンドが、調べられるサンプル中に存在する他のペプチド、ポリペプチド、または物質と実質的に結合(「交差反応」)してはならないことを意味する。好ましくは、特異的に結合したタンパク質、またはアイソフォームは、他の同等のペプチドまたはポリペプチドのいずれよりも、少なくとも3倍高い、より好ましくは10倍高い、そしてより一層好ましくは少なくとも50倍高い親和性で結合すべきである。
特に、調べるペプチドもしくはポリペプチドが、例えばそのサイズによる分離により(例えば、電気泳動により)、またはサンプル中に比較的多量に存在することにより、まだ区別可能であり、かつ明確に測定できるのであるならば、非特異的結合を許容することができる。
リガンドの結合を、当該技術分野で公知のいずれの方法によっても測定することができる。その方法は半定量法または定量法であることが好ましい。適当な方法を、以下で説明する。
第1に、リガンドの結合を、例えば、NMRまたは表面プラズモン共鳴によって直接的に測定することができる。
第2に、リガンドが、目的のペプチドまたはポリペプチドの酵素活性の基質としても働くのであれば、酵素反応生成物を測定してもよい(例えば、プロテアーゼの量は、例えばウェスタンブロット上で、切断された基質の量を測定することによって測定できる)。酵素反応生成物の測定については、基質の量が飽和していることが好ましい。基質を、反応前に検出可能な標識で標識化することもできる。サンプルを、基質と適切な時間、接触させることが好ましい。適切な時間とは、検出可能な、好ましくは測定可能な生成物量を生成するのに必要な時間を言う。生成物量を測定する代わりに、所与の(例えば検出可能な)生成物量の出現に必要な時間を測定することができる。
第3に、リガンドを、共有結合または非共有結合によって、リガンドの検出および測定を可能にする標識に連結することができる。標識は、直接的または間接的方法で行うことができる。直接標識は、標識の連結を直接的に(共有結合または非共有結合で)リガンドに対して行うことを伴う。間接的標識は、一次リガンドに二次リガンドを(共有結合または非共有結合で)結合させることを伴う。二次リガンドは、一次リガンドに特異的に結合しなければならない。前記二次リガンドは、適当な標識と結合させるか、かつ/または二次リガンドに結合する三次リガンドの標的(受容体)であってもよい。二次、三次、またはより高次のリガンドの使用は、しばしばシグナルを増強するのに利用される。適当な二次およびより高次のリガンドは、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジン−ビオチンシステム(Vector Laboratories Inc.)を含むことができる。
リガンドまたは基質は、当該技術分野で公知の1以上のタグで「タグ付け」することもできる。このようなタグを、その後、高次リガンドの標的とすることができる。適当なタグとしては、ビオチン、ジゴキシゲニン、Hisタグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、mycタグ、A型インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)、マルトース結合タンパク質等が挙げられる。ペプチドまたはポリペプチドの場合には、タグがN末端および/またはC末端にあることが好ましい。
適切な標識は、適当な検出方法で検出可能ないずれかの標識である。代表的な標識は、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素活性標識、放射性標識、磁気標識(例えば「磁気ビーズ」、常磁性および超常磁性標識を含む)および蛍光標識を含む。
酵素活性標識としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼおよびそれらの誘導体が挙げられる。検出に適した基質としては、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’−5,5’テトラメチルベンジジン、NBT−BCIP(4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリドおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−リン酸、Roche Diagnosticsの既製ストック溶液として入手可能)、CDP−StarTM(Amersham Biosciences)、ECFTM(Amersham Biosciences)が挙げられる。酵素−基質の適切な組み合わせが、呈色反応生成物、蛍光または化学発光をもたらしてもよい。それらは当該技術分野で公知の方法によって(例えば、感光フィルムもしくは適当なカメラシステムを用いて)測定することができる。酵素反応の測定について、上記基準が同様に適用される。
代表的な蛍光標識としては、蛍光タンパク質(例えば、GFPおよびその誘導体)、Cy3、Cy5、Texas Red、フルオレセイン、およびAlexa色素(例えば、Alexa568)が挙げられる。さらなる蛍光標識が、例えば、Molecular Probes(Oregon)から入手可能である。また、量子ドットの利用も蛍光標識として考慮される。
代表的な放射性標識には、35S、125I、32P、33P等が含まれる。放射性標識は、公知かつ適当ないずれかの方法で検出することができる。例えば、感光フィルム、またはホスホルイメージャーが挙げられる。
本発明による適当な測定方法はまた、沈降(特に免疫沈降)、電気化学発光(電気生成化学発光)、RIA(放射免疫アッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着法)、サンドイッチ酵素免疫テスト、電気化学発光サンドイッチ免疫アッセイ(ECLIA)、解離促進ランタニド蛍光免疫アッセイ(dissociation-enhanced lanthanide fluoro immuno assay:DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(scintillation proximity assay:SPA)、比濁法(nephelometry)、比濁分析法(nephelometry)、ラテックス増強比濁法もしくはラテックス増強比濁分析法(latex-enhanced turbidimetry or nephelometry)、固相免疫テスト、および、例えば、SELDI−TOF、MALDI−TOF、またはキャピラリー電気泳動・質量分析法(CE−MS)といった質量分析法等も含む。当該技術分野で公知のさらなる方法(例えば、ゲル電気泳動、二次元ゲル電気泳動、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、ウェスタン・ブロッティング)を、単独で、または上記の標識もしくはその他検出方法と組み合わせて使用することができる。
さらに、適切な方法としては、マイクロプレートELISAベース法、完全自動化もしくはロボット化免疫アッセイ(例えば、ElecsysTMまたはCobasTMアナライザで利用できる)、CBA(酵素的コバルト結合アッセイ、例えば、Roche−HitachiTM アナライザで利用できる)、およびラテックス凝集アッセイ(例えば、Roche−HitachiTMアナライザで利用できる)が挙げられる。
好ましいリガンドとしては、抗体、核酸、ペプチドもしくはポリペプチド、およびアプタマー(例えば、核酸アプタマー、またはペプチドアプタマー)が挙げられる。このようなリガンドに対する方法は、当該技術分野では周知である。例えば、適当な抗体またはアプタマーの同定および生成は、民間供給業者によっても提供されている。当業者は、より高い親和性および特異性を有する前記リガンドの誘導体を開発する方法に精通している。例えば、ランダム突然変異を核酸、ペプチドまたはポリペプチドに導入することができる。これらの誘導体は、その後、結合を当該技術分野で公知のスクリーニング方法、例えばファージディスプレイによってテストすることができる。
本明細書で使用する際、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両者、ならびにそのフラグメント、例えば抗原またはハプテンを結合することができるFv、FabおよびF(ab)断片を含む。
別の好ましい実施形態では、前記リガンドは、好ましくは核酸、ペプチド、ポリペプチドよりなる群、より好ましくは核酸、抗体またはアプタマーよりなる群から選択され、アレイ上に存在する。
前記アレイは、目的のペプチド、ポリペプチド、または核酸に対するものであり得る少なくとも1つの追加のリガンドを含む。該追加リガンドは、本発明の中で特に目的としないペプチド、ポリペプチドまたは核酸に対するものでもよい。好ましくは少なくとも3つの、好ましくは少なくとも5つの、より好ましくは少なくとも8つの、本発明の中で目的とするペプチドまたはポリペプチドに対するリガンドが該アレイ上に含まれる。
アレイ上でのリガンドの結合は、公知のいずれかの読取り方法または検出方法により検出することができる。例えば、光学的方法(例えば蛍光)、電気化学的方法もしくは磁気シグナルまたは表面プラズモン共鳴が挙げられる。
他の好ましい実施形態において、本発明は、心疾患診断用の診断キット製造のための、特に心機能不全に罹患している妊婦で心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための診断キット製造のための、ナトリウム利尿ペプチド、特にNT−proBNPもしくはその変異体に特異的に結合するリガンド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体に対するリガンドの使用に関する。さらに、子癇前症のバイオマーカーに特異的に結合するリガンドを、前記キットの製造に使用することができる。
本発明によれば、「アレイ」とは、一次元、二次元もしくは三次元配置で少なくとも2つの化合物が付着もしくは結合している固相またはゲル様担体をいう。そのようなアレイ(「遺伝子チップ」、「タンパク質チップ」、抗体アレイ等を包含する)は、通常、当業者には公知であり、一般的には顕微鏡用スライドグラス、特にポリカチオン、ニトロセルロースもしくはビオチンコーティングスライド等のコーティングスライドグラス上に、カバースリップ上におよび例えばニトロセルロースベースメンブレンもしくはナイロンベースメンブレン等のメンブレン上に、作製されている。アレイは、結合したリガンドまたは少なくとも1つのリガンドをそれぞれ発現する少なくとも2つの細胞を含むことができる。
「サスペンジョンアレイ」を本発明のアレイとして使用することも意図される(Nolan JP, Sklar LA. (2002). Suspension array technology: evolution of the flat-array paradigm. Trends Biotechnol. 20(1):9-12)。そのようなサスペンジョンアレイでは、例えばマイクロビーズまたはマイクロスフェアといった担体が、懸濁液中に存在している。本アレイは、様々なリガンドを担持し、場合によっては標識された種々のマイクロビーズまたはマイクロスフェアからなる。
別の好ましい実施形態では、本発明は、ナトリウム利尿ペプチド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定することによる、心疾患のインビトロ診断のための、特に心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための、(a)妊婦のサンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベル測定のために、ならびに(b)妊婦のサンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベル測定のために、ナトリウム利尿ペプチド、特にNT−proBNPもしくはその変異体に特異的に結合するリガンド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体に関するリガンドを含むアレイに関する。
本発明は、さらに他のリガンドに加えて、少なくとも1つのリガンドを担体物質に結合させた上記で規定したアレイを生産する方法に関する。
例えば、固相化学および感光保護基に基づいて前記アレイを生産する方法は、一般的に知られている(US5,744,305)。このようなアレイを、物質または物質ライブラリーと接触させることもでき、また、相互作用について、例えば結合もしくは構造の変化について試験することもできる。したがって、上記で規定したペプチドまたはポリペプチドを含むアレイは、前記ペプチドまたはポリペプチドに特異的に結合するリガンドを同定するのに用いることができる。
ペプチドまたはポリペプチド(タンパク質)は、組織、細胞および体液サンプルで、すなわち好ましくはインビトロで、測定することができる。目的のペプチドまたはポリペプチドは、体液サンプル中で測定するのが好ましい。
一部のサンプル、例えば尿サンプルは、目的のペプチドまたはポリペプチドの分解産物、特に断片のみを含む場合がある。しかし、上記のように、レベルの測定は、断片が目的のペプチドまたはポリペプチドに対して特異的である限り、依然として可能である。
必要ならば、サンプルを測定前にさらに処理することができる。例えば、核酸、ペプチドまたはポリペプチドを、濾過、遠心分離またはクロロホルム/フェノール抽出等の抽出法を含む当該技術分野で公知の方法によりサンプルから精製することができる。
さらに、いわゆるポイントオブケア(point-of-care:診療現場臨床検査)デバイス、またはラブオンチップ(lab-on-a-chip)デバイスを、サンプルを得るために、および目的のペプチドもしくはポリペプチドを測定するために使用することが意図される。このようなデバイスを、血中グルコース測定に使用するデバイスに対して同じように設計することが可能である。したがって、患者は、訓練を受けた医師や看護師の緊急の介助なしにサンプルを採取し、かつ目的のペプチドまたはポリペプチドを測定することが可能となるであろう。
別の好ましい実施形態では、本発明は、(a)妊婦のサンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するための手段もしくはデバイス、ならびに(b)妊婦のサンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定するための手段またはデバイスを含んでなるキットであって、心疾患のインビトロ診断ための、特に心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するためのキットに関する。
(a)に係る手段は、ナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合するリガンドであり、および/または(b)に係る手段は、PlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体に特異的に結合するリガンドであることが好ましい。さらに、該キットは、患者由来のサンプル中の子癇前症のバイオマーカーのレベルを測定するための手段またはデバイス、特に特異的な結合リガンドを含むことができる。
別の好ましい実施形態では、本発明は、心機能不全の症状に罹患した妊婦での心疾患のインビトロ診断のための、特に心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための、前記キットの使用に関する。
別の好ましい実施形態は、心機能不全に罹患している妊婦のナトリウム利尿ペプチド、PlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体の測定レベルのデータ解釈のためのキットのパッケージ内説明書を、心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するために包含することである。
本発明のさらに好ましい実施形態は、免疫学的迅速試験である。本試験は、ナトリウム利尿ペプチド、PlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体に対する特異的な抗体を、(a)妊婦のサンプル中のナトリウム利尿ペプチドもしくはその変異体のレベルを測定するため、ならびに(b)妊婦のサンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定するために使用することを特徴とし、ナトリウム利尿ペプチド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定することによる、心疾患のインビトロ診断のための、特に心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための試験である。
本発明の「免疫学的迅速試験」は、免疫学的に検出可能な物質についての迅速試験であり、長い間多数の異なるパラメータについて知られている。例えばそれらは、WO97/06439、EP0 291 194、US5,591,645、US4,861,711、US5,141,850、US6,506,612、US5,458,852、US5,073,484により知られている。これらの場合には、免疫学的検出試薬(原則的には標識されたおよび未標識の抗体もしくは抗原)は、通常、液体サンプル(特に、血液、血清、血漿、尿、唾液等の体液)の輸送を可能にする支持体上にまたは支持体内に、乾燥形態で提供される。本目的のため、支持体は、キャピラリー活性のある支持体、例えばメンブレンまたはキャピラリー流路をもつプラスチック支持体であることが好ましい。専門家の間で、それらはしばしば免疫クロマトグラフィー・テストストリップまたはテストデバイスと呼ばれている。
Elecsys(登録商標)NT−proBNPテストは、中央検査室(Central laboratory)でのみ行うことができるので、定期時間外にNT−proBNPを迅速に測定することは難しい。したがって、仮に定期時間外でも救急病棟で直接実行できる迅速試験が利用できるならば、救急病棟用には特に有利である。しかしながら、この迅速試験は、実際に行われた試験タイプからは独立した結果の良好な比較可能性を確保するために、中央検査室での参照方法として(Elecsys(登録商標)NT−proBNP)、同一の参照範囲およびカットオフ値を確保すべきである。
細胞培養上清、血清、血漿および尿中のヒト胎盤増殖因子(PlGF)濃度の定量的測定は、R&D Systemsから販売されているヒトPlGF免疫アッセイ「Quantikine」(カタログ番号:DPG00)を用いることで実行できる。ヒト可溶性血管内皮増殖因子受容体1(sVEGF R1)の濃度の定量的測定は、R&D Systemsから販売されているヒト可溶性VEGF R1/Flt−1免疫アッセイ「Quantikine」(カタログ番号:DVR100B)を用いることで実行できる。しかしながら、この迅速試験は、PlGFおよびVEGF R1/Flt−1について、上記で引用した参照方法と同様に、実際に行われた試験タイプからは独立に結果の良好な比較可能性を確保するために、同一の参照範囲およびカットオフ値を確保すべきである。
本発明はまた、心機能不全に罹患している妊婦の考え得る治療についての意思決定支援の方法に関する。患者が一度診断されれば、その診断はそれ以降の治療にも影響を及ぼし得る。本発明の方法によって患者に心疾患が見られることが示された場合、その後、治療を開始するかまたはその状況に合わせることができる。妊婦のナトリウム利尿ペプチド、特にNT−proBNPおよびNT−proANP、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベル、ならびに/あるいは比率を、一定の間隔でモニタリングすることができる。さらに、被験体を、心臓専門医に公知の方法に従い、本明細書で上記のように、例えば心電図検査または心エコー図検査といったさらなる診断によって徹底的に調べることができる。治療は、通常、心機能の改善または回復に関連するいずれの措置も含むことができる。
心疾患に関連する心機能不全の治療は、妊婦における胎盤関連心機能不全の治療と異なり得る。本発明による方法が、心疾患に関連する心機能不全の存在を示す場合、その後、治療の重点を、ACEインヒビター、利尿薬、βブロッカー、ジゴキシンその他の投与に置けばよい。
本発明による方法が、妊婦において胎盤関連心機能不全の存在を示す場合、その後、心臓治療の有無にかかわらず、治療の重点を、初期段階のアスピリン、ステロイドの送達に置くことができる。
より具体的には、さらなる実施形態では、本発明は心機能不全に罹患している妊婦の考え得る治療に関する意思決定支援方法であって、妊婦に心疾患に関連する心機能不全の症状があり、以下のステップ、(a)サンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するステップ、(b)サンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベルを測定するステップ、(c)ここで、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下しているか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇している場合は、胎盤に関連した心機能不全であることが示され、あるいは、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下していないか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇していない場合は、心疾患に関連した心機能不全であることが示されるものであり、(d)任意により、心臓専門医による妊婦の検査を開始するステップ、ならびに(e)ステップ(c)による評価が心疾患に関連する心機能不全であることを示す場合、治療開始を勧めるステップ、を含んでなる方法に関する。
本方法により妊婦に心疾患に関連する心機能不全の存在が示された場合には、心臓専門医による検査、および/または治療の開始を勧めるのが好ましい。本方法は、本明細書に上記の全ての疾患および症状に関連する。
55人の妊婦のコホートを、胎盤関連心機能不全の存在、または心疾患に関連する心機能不全の存在について臨床的に調べた。妊娠第2期(N=9)、および妊娠第3期(N=46)に分類される妊婦(N=55)のsFlt−1、PlGF、およびNT−proBNPについての参照値を測定した。高NT−proBNP値(>125pg/mL)を有する妊婦のsFlt−1およびPlGFの値を表1に示す。
妊婦の血液サンプルを、Elecsys NT−proBNPTMアッセイ(Roche Diagnostics)により、NT−proBNP濃度について解析した。sFlt−1の濃度を、R&D Systemsから販売されているヒト可溶性VEGF R1/Flt−1免疫アッセイ「Quantikine」(カタログ番号:DVR100B)を用いて解析した。ヒト胎盤増殖因子(PlGF)濃度の定量的測定を、R&D Systemsから販売されているヒトPlGF免疫アッセイ「Quantikine」(カタログ番号:DPG00)を用いて解析した。
Figure 2008076394
表1は、高NT−proBNP値を有する妊婦のsFlt−1およびPlGFのレベルを示す。表1で示した妊婦55人中9人が、125pg/mLより高い高レベルのNT−proBNP値を有する。さらに、これら9人の妊婦のうち8人(患者番号6、17、1、16、2、2、5、16)で、子癇前症に罹患している胎盤関連心機能障害の存在を示すPlGFレベルの減少が見られた。子癇前症の妊婦のNT−proBNPレベルの上昇は、その疾患の重症度と関連する。
9人の妊婦のうち1人(患者番号92316544)については、NT−proBNPレベルの上昇が見られるが、PlGFのレベルは正常である。この結果は、原発性心疾患に罹患している心疾患に関連した心機能障害であることを示している。
Figure 2008076394
表2は、1323人の外見上健康な18〜44.9歳の血液ドナーのコホートのNT−proBNPについての参照値を含む。血液ドナーの年齢中央値は、33歳である。508人の女性の血液サンプルを、NT−proBNP濃度について解析した。0、2.5、5、10、25、50、75、90、95、97.5、および100パーセンタイル値を示す。
NT−proBNP濃度に関する参照値のボックスプロットを示している。Nは、患者数を示す。第1カラムは、18〜44.9歳の外見上健康な508人の女性ドナーから得た血液のNT−proBNP濃度を示している。この参照値を、妊娠第2期の9人の女性と妊娠第3期の46人の女性に分類される55人の妊婦のNT−proBNP濃度と比較する。これらのグループ間では見かけ上NT−proBNP濃度の有意な差異はない。さらに、中央値、ならびに75、95、5、および25パーセンタイル値を示す。 46人の妊婦においてsFlt−1濃度およびPlGF濃度に関して測定された参照値のボックスプロットを示している。これら46人の妊婦のNT−proBNP濃度は、125pg/mL未満であり、そのグループは、妊娠第2期の14人の女性と妊娠第3期の32人の女性に分類される。PlGFおよびsFlt−1の濃度は、妊娠第2期から妊娠第3期までに、ほんのわずか減少している。さらに、ボックスプロットはsFlt−1/PlGF比を示している。sFlt−1/PlGF濃度比は妊娠第2期から妊娠第3期までに増大している。さらに、中央値、ならびに75、95、5、および25パーセンタイル値を示す。

Claims (17)

  1. 妊婦が心機能不全に罹患している場合の診断方法であって、以下のステップ:
    (a)サンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するステップ、
    (b)サンプル中の胎盤増殖因子(PlGF)および/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベルを測定するステップ
    を含み、
    ここで、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下しているか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇している場合は、胎盤関連心機能不全であることが示され、
    あるいは、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下していないか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇していない場合は、心疾患に関連した心機能不全であることが示される、上記方法。
  2. ナトリウム利尿ペプチド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体の測定を並行して行う、請求項1に記載の方法。
  3. ナトリウム利尿ペプチドがBNP型ペプチドまたはその変異体である、請求項1または2に記載の方法。
  4. ナトリウム利尿ペプチドがNT−proBNPまたはその変異体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. ナトリウム利尿ペプチドがANP型ペプチドまたはその変異体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. サンプルが、血液サンプル、好ましくは血漿もしくは血清、および/または尿サンプルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 測定を妊娠第2期または第3期に行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. NT−proBNPの上昇レベルが125pg/mL〜300pg/mLのNT−proBNPの血漿レベルに相当し、NT−proBNPの高上昇レベルが300pg/mL〜500pg/mLを超えるNT−proBNPの血漿レベルに相当する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. NT−proBNPの非上昇レベルが125pg/mL未満の血漿レベルに相当する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. ナトリウム利尿ペプチド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベルを少なくとも1つのさらなるサンプルで測定する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. さらに少なくとも1つの子癇前症用のバイオマーカーを測定し、該バイオマーカーは、好ましくはα2マクログロブリン、CD40リガンド、ウロテンシンIIおよび他のものからなる群より選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. (a)妊婦のサンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するための手段またはデバイス、ならびに(b)妊婦のサンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定するための手段またはデバイスを含んでなるキットの使用であって、心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための、心疾患のインビトロ診断のための上記キットの使用。
  13. 心機能不全に罹患している妊婦のナトリウム利尿ペプチド、PlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体の測定レベルのデータ解釈用のパッケージ内説明書を包含することを特徴とする、心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための、請求項12に記載のキットの使用。
  14. ナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合するリガンド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のリガンドの使用であって、心機能不全に罹患している妊婦において心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための心疾患診断用の診断キットの製造のための、上記リガンドの使用。
  15. (a)妊婦のサンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベル測定のための、ならびに(b)妊婦のサンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベル測定のための、ナトリウム利尿ペプチドに特異的に結合するリガンド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体に対するリガンドを含むアレイであって、ナトリウム利尿ペプチド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定することによる、心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための、心疾患のインビトロ診断用の上記アレイ。
  16. ナトリウム利尿ペプチド、PlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体に特異的な抗体を用いる免疫学的迅速テストであって、(a)妊婦のサンプル中のナトリウム利尿ペプチドまたはその変異体のレベルを測定するための、ならびに(b)妊婦のサンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定するための、ナトリウム利尿ペプチド、ならびにPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体を測定することによる、心疾患に関連する心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための、心疾患のインビトロ診断用の上記テスト。
  17. 心機能不全に罹患している妊婦の考え得る治療に関する意思決定支援方法であって、
    妊婦に心疾患に関連する心機能不全の症状があって、以下のステップ、
    (a)サンプル中のナトリウム利尿ペプチドのレベルを測定するステップ、
    (b)サンプル中のPlGFおよび/もしくはsFlt−1またはそれらの変異体のレベルを測定するステップ、
    (c)ここで、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下しているか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇している場合は、胎盤に関連した心機能不全であることが示され、
    あるいは、ナトリウム利尿ペプチドレベルが上昇し、かつPlGFもしくはその変異体レベルが低下していないか、および/またはsFlt−1もしくはその変異体レベルが上昇していない場合は、心疾患に関連した心機能不全であることが示されるものであり、
    (d)任意により、心臓専門医による妊婦の検査を開始するステップ、
    (e)ステップ(c)による評価が心疾患に関連する心機能不全であることを示す場合、治療開始を勧めるステップ、
    を含んでなる、上記方法。
JP2007242442A 2006-09-20 2007-09-19 ナトリウム利尿ペプチドおよび胎盤増殖因子/可溶性vegf受容体を用いた、妊婦での心疾患に関連した心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための方法 Expired - Fee Related JP4734306B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP06019669A EP1903339B1 (en) 2006-09-20 2006-09-20 Natriuretic peptides and placental-growth factor/soluble VEGF-receptor discriminate cardiac dysfunction related to heart disease from a placenta-associated cardiac dysfunction in pregnant woman
EP06019669.8 2006-09-20

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008076394A true JP2008076394A (ja) 2008-04-03
JP4734306B2 JP4734306B2 (ja) 2011-07-27

Family

ID=37635722

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007242442A Expired - Fee Related JP4734306B2 (ja) 2006-09-20 2007-09-19 ナトリウム利尿ペプチドおよび胎盤増殖因子/可溶性vegf受容体を用いた、妊婦での心疾患に関連した心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための方法

Country Status (8)

Country Link
US (1) US20090081702A1 (ja)
EP (1) EP1903339B1 (ja)
JP (1) JP4734306B2 (ja)
CN (1) CN101196516A (ja)
AT (1) ATE476665T1 (ja)
CA (1) CA2601959A1 (ja)
DE (1) DE602006015964D1 (ja)
ES (1) ES2350255T3 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013510289A (ja) * 2009-11-03 2013-03-21 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 循環系事象と虚血性事象を鑑別するためのNT−proANPおよびSFlt−1

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1731910A1 (en) * 2005-06-07 2006-12-13 F. Hoffmann-La Roche Ag Use of NT-proANP and NT-proBNP for diagnosing cardiac diseases
EP1816477A1 (en) * 2006-02-06 2007-08-08 F. Hoffmann-la Roche AG The use of natriuretic peptides and placenta growth factor levels for risk stratification of individuals elected for cardiac stress testing
WO2012106152A1 (en) * 2011-02-03 2012-08-09 Abbott Laboratories Methods of prognosis and diagnosis in chronic heart failure
EP2490027A1 (en) * 2011-02-15 2012-08-22 Roche Diagnostics GmbH Means and methods for diagnosing pregnancy complications based on GDF-15 and PlGF/sFlt1
US20150164404A1 (en) * 2012-05-23 2015-06-18 Convergent Engineering, Inc. System and method for detecting preeclampsia
CN107884570A (zh) * 2016-09-29 2018-04-06 韦彦余 一种孕妇先兆子痫检测试剂盒

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006030182A (ja) * 2004-07-07 2006-02-02 F Hoffmann La Roche Ag 1型および2型糖尿病に対する多重マーカーパネル
JP2006030183A (ja) * 2004-07-07 2006-02-02 F Hoffmann La Roche Ag 1型および2型糖尿病に対する、p1gfに基づく多重マーカーパネル
JP2006508367A (ja) * 2002-11-16 2006-03-09 デイド・ベーリング・マルブルク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング 心血管疾患における生化学的マーカーの組合せとしてのsCD40L,PAPP−Aおよび胎盤増殖因子(PlGF)
WO2006045593A1 (de) * 2004-10-25 2006-05-04 Dade Behring Marburg Gmbh Pigf und flt-1 als prognostische parameter bei kardiovaskulären erkrankungen

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002089657A2 (en) * 2001-05-04 2002-11-14 Biosite, Inc. Diagnostic markers of acute coronary syndromes and methods of use thereof
AUPS169202A0 (en) * 2002-04-11 2002-05-16 Goetze, Jens Peter Neuropeptide assay
DK1575416T3 (da) * 2002-07-19 2014-01-13 Beth Israel Hospital Fremgangsmåder til diagnosticering af præeklampsi
US7335362B2 (en) * 2002-07-19 2008-02-26 Beth Israel Deaconess Medical Center Methods of treating pre-eclampsia or eclampsia
WO2005043123A2 (en) * 2003-10-31 2005-05-12 Queststar Medical, Inc. System and apparatus for body fluid analysis using surface-textured optical materials
CN101163970A (zh) * 2004-12-21 2008-04-16 耶鲁大学 先兆子痫的诊断
US20070111326A1 (en) * 2005-11-14 2007-05-17 Abbott Laboratories Diagnostic method for proteinaceous binding pairs, cardiovascular conditions and preeclampsia

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006508367A (ja) * 2002-11-16 2006-03-09 デイド・ベーリング・マルブルク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング 心血管疾患における生化学的マーカーの組合せとしてのsCD40L,PAPP−Aおよび胎盤増殖因子(PlGF)
JP2006030182A (ja) * 2004-07-07 2006-02-02 F Hoffmann La Roche Ag 1型および2型糖尿病に対する多重マーカーパネル
JP2006030183A (ja) * 2004-07-07 2006-02-02 F Hoffmann La Roche Ag 1型および2型糖尿病に対する、p1gfに基づく多重マーカーパネル
WO2006045593A1 (de) * 2004-10-25 2006-05-04 Dade Behring Marburg Gmbh Pigf und flt-1 als prognostische parameter bei kardiovaskulären erkrankungen

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013510289A (ja) * 2009-11-03 2013-03-21 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 循環系事象と虚血性事象を鑑別するためのNT−proANPおよびSFlt−1

Also Published As

Publication number Publication date
US20090081702A1 (en) 2009-03-26
EP1903339A1 (en) 2008-03-26
EP1903339B1 (en) 2010-08-04
ATE476665T1 (de) 2010-08-15
DE602006015964D1 (de) 2010-09-16
ES2350255T3 (es) 2011-01-20
CN101196516A (zh) 2008-06-11
JP4734306B2 (ja) 2011-07-27
CA2601959A1 (en) 2008-03-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4828600B2 (ja) 心疾患の診断のためのnt−プロanpおよびnt−プロbnpの使用
JP4828550B2 (ja) 心機能障害を診断するためのNT−proANP/NT−proBNP比の使用
JP4731525B2 (ja) 心因性と肺因性の急性呼吸窮迫を鑑別する手段と方法
JP4734306B2 (ja) ナトリウム利尿ペプチドおよび胎盤増殖因子/可溶性vegf受容体を用いた、妊婦での心疾患に関連した心機能不全と胎盤関連心機能不全とを区別するための方法
JP5715641B2 (ja) 急性胸痛を伴い、心筋梗塞を伴わない患者において、心虚血を診断およびモニターするための方法
WO2009087190A1 (en) Means and methods for assessing the risk of patients presenting to emergency units based on gdf-15
US20200333360A1 (en) NT-proANP AND NT-proBNP FOR THE DIAGNOSIS OF STROKE
JP2009539080A (ja) 急性冠状動脈症候群のリスクを有する個体の識別のためのmrp8/14レベルの使用
JP2013527453A (ja) 急性炎症における生存および回復を推定するためのgdf−15に基づく手段および方法
EP2496946A1 (en) NT-pro ANP AND SFlt-1 FOR THE DIFFERENTIATION BETWEEN CIRCULATORY AND ISCHEMIC EVENTS
KR20210049829A (ko) 심방 세동의 사정에서 및 뇌졸중의 예측을 위한 순환하는 fgfbp-1 (섬유모세포 성장 인자-결합 단백질 1)
JP2007286058A (ja) 息切れの心臓原因および肺原因を鑑別するための手段および方法
KR102112945B1 (ko) 일반 집단에서 lvh 로의 진행자 확인을 위한 가용성 st2
EP2367006A1 (en) PLGF-based means and methods for diagnosing cardiac causes in acute inflammation

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091124

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100224

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100831

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20101122

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20101126

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20101222

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20101228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110131

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110222

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110311

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110405

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110425

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140428

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees