JP2008060520A - 誘電体膜の製造方法及び圧電素子の製造方法並びに赤外線加熱装置 - Google Patents

誘電体膜の製造方法及び圧電素子の製造方法並びに赤外線加熱装置 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶性に優れた誘電体膜を形成することができる誘電体膜の製造方法及び圧電素子の製造方法並びに赤外線加熱装置を提供する。
【解決手段】基板110の一方面側に有機金属化合物のゾルを塗布して誘電体前駆体膜71を形成する工程と、前記基板110の前記誘電体前駆体膜71に相対向する領域から当該誘電体前駆体膜71の吸収率の大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線を照射すると共に、前記基板110の他方面側から赤外線を照射して前記誘電体前駆体膜71を加熱焼成して結晶化する工程とを具備する。
【選択図】図4

Description

本発明は、誘電体膜の製造方法及び圧電素子の製造方法並びにこれらを製造する際に用いられる赤外線加熱装置に関し、特に、液体噴射ヘッドに用いられる誘電体膜の製造方法及び圧電素子の製造方法並びにこれらを製造する際に用いられる赤外線加熱装置に関する。
液体噴射ヘッド等に用いられる圧電素子は、電気機械変換機能を呈する圧電材料からなる誘電体膜を2つの電極で挟んだ素子であり、誘電体膜は、例えば、結晶化した圧電性セラミックスにより構成されている。
このような圧電素子を用いた液体噴射ヘッドとしては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある。インクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な誘電体膜からなる圧電体層を形成し、この圧電体層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けることによって圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
圧電素子を構成する圧電体層の製造方法としては、いわゆるゾル−ゲル法が知られている。すなわち、下電極を形成した基板上に有機金属化合物のゾルを塗布して乾燥およびゲル化(脱脂)させて圧電体層の前駆体膜を形成する工程を少なくとも一回以上実施し、その後、高温で熱処理して結晶化させる。そして、これらの工程を複数回繰り返し実施することで所定厚さの圧電体層(圧電体薄膜)を製造している。
また、圧電素子を構成する圧電体層(誘電体膜)の製造方法としては、いわゆるMOD(Metal-Organic Decomposition)法が知られている。すなわち、一般的に、金属アルコキシド等有機金属化合物をアルコールに溶解し、これに加水分解抑制剤等を加えて得たコロイド溶液を被対象物上に塗布した後、これを乾燥して焼成することで成膜される。
また、ゾル−ゲル法やMOD法等では、誘電体前駆体膜を加熱焼成して、結晶化させて誘電体膜を形成する際には、赤外線を照射することで加熱する赤外線加熱装置が用いられてきた。
赤外線加熱装置を用いた場合、一方面側に誘電体前駆体膜が設けられた基板の表面又は裏面の一方側から赤外線を照射しただけでは、所望の昇温レートが得られず、優れた結晶性の誘電体膜を形成することができない。このため、基板の表面及び裏面の両方から赤外線を照射することで、誘電体前駆体膜を所望の昇温レートで加熱焼成していた。
しかしながら、基板の誘電体前駆体膜側から当該誘電体前駆体膜に照射した赤外線は、誘電体前駆体膜でその多くが吸収されてしまい、誘電体前駆体膜を加熱してしまう。このため、誘電体前駆体膜の結晶化が始まる起点が、誘電体前駆体膜の表面側(下地とは反対側)又は誘電体前駆体膜の膜中となってしまい、結晶は下地側の配向、結晶粒サイズ等の結晶性を引き継がずに独立して成長し、柱状の結晶が立っている中に、それとは独立した結晶粒の大きな結晶が形成されてしまい、変位特性等の結晶性の悪い誘電体膜が形成されてしまうという問題がある。
また、ゾルを加熱して脱脂する際に、基板側から3μm〜5μmの波長を含む赤外線を照射する圧電体素子の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1では、ゾルに吸収され易い波長の赤外線を用いただけであり、また、赤外線の波長はゾルの脱脂工程で規定されているだけである。さらに、特許文献1では、赤外線の照射が基板側からだけであり、昇温レートを高くすることができず、優れた結晶特性の誘電体膜を形成することができないという問題がある。
特開2003−115619号公報(特許請求の範囲、第5頁、第6図)
本発明はこのような事情に鑑み、結晶性に優れた誘電体膜を形成することができる誘電体膜の製造方法及び圧電素子の製造方法並びに赤外線加熱装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、基板の一方面側に有機金属化合物のゾルを塗布して誘電体前駆体膜を形成する工程と、前記基板の前記誘電体前駆体膜に相対向する領域から当該誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線を照射すると共に、前記基板の他方面側から赤外線を照射して前記誘電体前駆体膜を加熱焼成して結晶化する工程とを具備することを特徴とする誘電体膜の製造方法にある。
かかる態様では、優れた結晶性の誘電体膜を形成することができる。すなわち、誘電体膜自体を赤外線で加熱することなく、誘電体膜の下地を加熱することができるため、誘電体膜の厚さが限定されることなく、誘電体膜を大粒結晶の形成を防止して、比較的粒径が小さく且つ均一な結晶で形成することができる。また、基板の両側から赤外線を照射することによって、昇温レートを高くして、優れた結晶性の誘電体膜を形成することができる。
ここで、前記誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線の照射が、赤外線を照射する熱源と、前記誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外するフィルタとを用いて行うことが好ましい。これによれば、所望の波長領域の赤外線を容易に照射することができ、誘電体膜自体を加熱することなく、誘電体膜の下地を確実に加熱して結晶化することができる。
また、前記誘電体前駆体膜を結晶化する工程の前に、前記誘電体前駆体膜を乾燥させる乾燥工程、乾燥した前記誘電体前駆体膜を脱脂する脱脂工程をさらに具備することが好ましい。これによれば、乾燥工程及び脱脂工程を行うことで、結晶性に優れた誘電体膜を得ることができる。
また、前記誘電体前駆体膜を加熱焼成して結晶化する工程では、100℃/sec以上の昇温レートで行うことが好ましい。これによれば、高い昇温レートで焼成することによって、優れた結晶性の誘電体膜を形成することができる。
さらに、本発明の他の態様は、前記基板上に下電極を形成する工程と、該下電極上に前記圧電体層を形成する工程と、該圧電体層上に上電極を形成する工程とを具備し、前記圧電体層を形成する工程が、上記態様の製造方法により製造された誘電体膜を製造する方法であることを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる態様では、結晶性に優れた誘電体膜を有する圧電素子を形成することができるため、変位特性に優れた圧電素子を得ることができる。
ここで、前記下電極が前記基板側に密着層を有すると共に、前記誘電体前駆体膜を加熱焼成して結晶化する工程では、前記基板の他方面側から赤外線を照射する色温度を、前記基板の一方面側から赤外線を照射する熱源の色温度よりも低くして行うことが好ましい。これによれば、密着層よりも基板側が加熱される温度を、密着層よりも圧電体層側が加熱される温度に比べて低くすることで、密着層を挟んで圧電体層側から基板側に向かって低くなる温度勾配をつけることができ、密着層が下電極中に拡散して基板と下電極との密着力が低下して下電極が剥離するのを防止することができる。
また、前記密着層が、チタンを主成分とする材料からなることが好ましい。これによれば、密着層としてチタンを用いることで、下電極と基板との密着力を向上することができると共に、チタンが下電極中に拡散するのを防止することができ、下電極と基板との密着力が低下して下電極が剥離するのを防止することができる。
さらに、本発明の他の態様は、一方面側に誘電体前駆体膜が設けられた基板の前記誘電体膜側に相対向する領域に設けられて、当該誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線を照射する第1の加熱手段と、前記基板の他方面側に設けられて、当該基板の前記他方面側に赤外線を照射する第2の加熱手段とを具備することを特徴とする赤外線加熱装置にある。
かかる態様では、赤外線加熱装置によって、誘電体膜自体を加熱することなく、誘電体膜の下地を確実に加熱して、優れた結晶性の誘電体膜を形成することができる。
また、前記第1の加熱手段が、赤外線を照射する熱源と、該熱源と前記基板との間に設けられて、前記誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外するフィルタとで構成されていることが好ましい。これによれば、所望の波長領域の赤外線を誘電体膜側に容易に照射することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路15は、インク供給路14の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(短手方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路15を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなり厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウム(ZrO)等からなり厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が積層形成されている。また、この絶縁体膜55上には、厚さが約0.1〜0.5μmの下電極膜60と、誘電体膜の一例であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなり厚さが例えば、約1.1μmの圧電体層70と、金、白金又はイリジウム等からなり厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部320が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用するが、弾性膜50、絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみを残して下電極膜60を振動板としてもよい。
また、本実施形態の圧電体層70としては、下電極膜60上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜が挙げられる。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)等を用いることができる。本実施形態では、圧電体層70として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
また、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上まで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。リザーバ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通の液体室となるリザーバ100を構成している。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。保護基板30は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
さらに、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図8を参照して説明する。なお、図3〜図8は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図3(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50となる二酸化シリコン膜51を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、厚さが約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
次いで、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、ジルコニウム(Zr)層を形成後、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図3(c)に示すように、例えば、白金又はイリジウムとからなる下電極膜60を絶縁体膜55の全面に亘って形成する。下電極膜60は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛に限定されず、例えば、リラクサ強誘電体(例えば、PMN−PT、PZN-PT、PNN-PT等)の他の圧電材料を用いてもよい。また、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図4(a)に示すように、下電極膜60上にPZT前駆体膜である誘電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、下電極膜60が形成された流路形成基板10上に金属有機化合物を含むゾル(溶液)を塗布する(塗布工程)。次いで、この誘電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。例えば、本実施形態では、誘電体前駆体膜71を150〜200℃で5〜15分間保持することで乾燥することができる。
次に、乾燥した誘電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。例えば、本実施形態では、誘電体前駆体膜71を300〜400℃程度の温度に加熱して約5〜10分保持することで脱脂した。なお、ここで言う脱脂とは、誘電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。
次に、図4(b)に示すように、誘電体前駆体膜71を赤外線加熱装置200によって所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、誘電体膜72を形成する(焼成工程)。
ここで誘電体前駆体膜71を加熱焼成する赤外線加熱装置200としては、図4(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の一方面側に設けられた誘電体前駆体膜71に相対向する領域に設けられて、誘電体前駆体膜71に当該誘電体前駆体膜71の吸収率の大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線を照射する第1の加熱手段201と、流路形成基板用ウェハ110の他方面側(裏面側)に相対向する領域に設けられて、流路形成基板用ウェハ110の他方面側に赤外線を照射する第2の加熱手段202とを具備する。
第1の加熱手段201は、赤外線が照射される熱源203と、熱源203と流路形成基板用ウェハ110との間に設けられたフィルタ204とを具備する。
また、第2の加熱手段202は、赤外線が照射される熱源205のみで構成されている。第1の加熱手段201及び第2の加熱手段202のそれぞれの熱源203、205は、遠赤外線を含む赤外線を照射するものである。
フィルタ204は、熱源203が照射した赤外線から、誘電体前駆体膜71の吸収率の大きい波長領域を除外するものであり、例えば、所定の波長領域の電磁波を反射する反射膜や、所定の波長領域を吸収する吸収膜などが設けられたガラス基板等が挙げられる。
ここで、フィルタ204によって除外する誘電体前駆体膜71の赤外線の吸収率の大きい波長領域とは、誘電体前駆体膜71自体が加熱されて、誘電体前駆体膜71の膜中を起点として結晶成長する範囲のことである。なお、誘電体前駆体膜71は、膜厚、材料及び組成比などによって、赤外線の吸収率の大きい波長領域が異なるため、フィルタ204によって除外する波長領域は、誘電体前駆体膜71の膜厚、材料及び組成比などによって適宜選択するのが好ましい。
また、誘電体前駆体膜71の赤外線の吸収率の大きい波長領域は、例えば、赤外線を透過する基板の一方面に誘電体前駆体膜71を形成し、誘電体前駆体膜71に赤外線を照射して、基板の他方面側で誘電体前駆体膜71を透過した赤外線の波長領域を測定することで、取得することができる。
このような第1の加熱手段201によって誘電体前駆体膜71を加熱すると、誘電体前駆体膜71の吸収率の大きい波長領域以外の波長領域の赤外線によって、誘電体前駆体膜71を直接加熱することなく、誘電体前駆体膜71の下地、すなわち、下電極膜60、絶縁体膜55、弾性膜50及び流路形成基板用ウェハ110を加熱することができ、誘電体前駆体膜71の膜中を起点として結晶成長させることなく、誘電体前駆体膜71を下地側を起点として結晶成長させることができる。これにより、下地側から配向及び結晶粒のサイズ等の結晶性を引き継いで、誘電体膜72を良好な結晶性で形成することができる。すなわち、誘電体膜72の膜厚を規定することなく、所望の膜厚の誘電体膜72を比較的粒径が小さく且つ均一な結晶で形成することができ、大粒結晶の形成を実質的に防止することができる。これにより、結晶性に優れた誘電体膜72を有する圧電素子300を形成することができ、圧電素子300の変位特性を向上することができる。
また、赤外線加熱装置200として、流路形成基板用ウェハ110の一方面側の誘電体前駆体膜71側から加熱する第1の加熱手段201と、流路形成基板用ウェハ110の他方面側(裏面側)から加熱する第2の加熱手段202とを用いることで、高い昇温レートで誘電体前駆体膜71を加熱して結晶化させて良好な結晶性を有する誘電体膜72を形成することができる。
なお、このような赤外線加熱装置200を用いて加熱する焼成工程では、誘電体前駆体膜71を600〜750℃に加熱するのが好ましく、本実施形態では、上述した赤外線加熱装置200によって、700℃で5分間加熱を行って誘電体前駆体膜71を焼成して誘電体膜72を形成した。また、焼成工程では、昇温レートを50℃/sec以上とするのが好ましく、100℃/sec以上が好適である。このように誘電体膜72の焼成時の昇温レートを50℃/sec以上とすることで、低温の昇温レートで長時間行うのに比べて短時間で行うことができると共に、誘電体膜72を比較的粒径が小さく且つ均一な結晶で形成することができ、大粒結晶の形成を実質的に防止することができる。
なお、上述した乾燥工程及び脱脂工程においても、焼成工程で用いる赤外線加熱装置200を用いることで、使用する装置の種類を減少させて製造コストを低減することができるが、乾燥工程及び脱脂工程では、赤外線加熱装置200とは別の装置、例えば、ホットプレート等を用いるようにしてもよい。
そして、図5(a)に示すように、下電極膜60上に誘電体膜72の1層目を形成した段階で、下電極膜60及び1層目の誘電体膜72を同時にパターニングする。なお、下電極膜60及び誘電体膜72のパターニングは、例えば、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
そして、パターニング後、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる誘電体膜形成工程を複数回繰り返すことで、図5(b)に示すように複数層の誘電体膜72からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。例えば、ゾルの1回あたりの膜厚が0.1μm程度の場合には、例えば、10層の誘電体膜72からなる圧電体層70全体の膜厚は約1.1μm程度となる。
そして、圧電体層70を形成した後は、図6(a)に示すように、例えば、イリジウムからなる上電極膜80を流路形成基板10の全面に形成した後、図6(b)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図6(c)に示すように、流路形成基板10の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
次に、図7(a)に示すように、パターニングされた複数の圧電素子300を保持する保護基板用ウェハ130を、流路形成基板10上に例えば接着剤35によって接合する。なお、保護基板用ウェハ130には、リザーバ部31、圧電素子保持部32等が予め形成されている。また、保護基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するシリコン単結晶基板からなり、保護基板用ウェハ130を接合することで流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次いで、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、さらにフッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、研磨及びウェットエッチングによって、流路形成基板用ウェハ110を、約70μmの厚さとなるように加工した。
次に、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図8に示すように、流路形成基板用ウェハ110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハ110の圧力発生室12が開口する面側のマスク膜52を除去し、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハ110等を、図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって上述した構造のインクジェット式記録ヘッドが製造される。
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態の圧電素子300の下電極膜60Aは、基板(流路形成基板10)側に密着層61を有する。
また、下電極膜60Aは、圧電体層70を形成する前に密着層61と、密着層61上に白金(Pt)からなる白金層と、白金層上に拡散防止層とが順次積層されて形成され、詳しくは後述する製造方法によって圧電体層70を焼成して結晶化させて形成した際に下電極膜60Aも同時に加熱処理されて合金化される。このように下電極膜60Aが加熱されて合金化された際に、密着層61が他の層(特に白金層)内に拡散する量を減少させて、下電極膜60Aと基板(本実施形態では、絶縁体膜55)との間に残留するようにしている。このため、密着層61が下電極膜60A内に拡散することによって、基板(本実施形態では、絶縁体膜55)と下電極膜60Aとの密着力が低下するのを防止している。
なお、密着層61としては、下電極膜60Aと基板との密着力を向上するものであれば、特に限定されず、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びタングステン(W)等が挙げられる。
ここで、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法について説明する。なお、図10は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の工程については、重複する説明は省略する。
上述した実施形態1と同様に、流路形成基板用ウェハ110上に弾性膜50、絶縁体膜55を形成した後、図10(a)に示すように、密着層61、白金層62及び拡散防止層63からなる下電極膜60Aを形成する。具体的には、まず、絶縁体膜55上に、密着層61を形成する。密着層61としては、例えば、厚さが10〜50nmのチタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。本実施形態では、密着層61として、厚さ20nmのチタン(Ti)を設けた。このように下電極膜60Aの最下層に密着層61を設けることによって、絶縁体膜55と下電極膜60Aとの密着力を高めることができる。次いで、密着層61上に白金(Pt)からなり厚さが50〜500nmの白金層62を形成する。本実施形態では、白金層62を130nmの厚さで形成した。そして、白金層62上に拡散防止層63を形成する。これにより、密着層61、白金層62及び拡散防止層63からなる下電極膜60Aが形成される。なお、拡散防止層63は、後の工程で圧電体層70を焼成して結晶化させて形成する際に、密着層61の成分が圧電体層70に拡散するのを防止すると共に圧電体層70の成分が下電極膜60Aに拡散するのを防止するためのものである。このような拡散防止層63としては、厚さが5〜20nmのイリジウム(Ir)、パラジウム(Pb)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)及びオスミウム(Os)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。本実施形態では、拡散防止層63として、厚さ10nmのイリジウム(Ir)を用いた。
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。具体的には、図10(b)に示すように、下電極膜60A上にPZT前駆体膜である誘電体前駆体膜71を成膜する。次に、乾燥した誘電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。
次に、図10(c)に示すように、誘電体前駆体膜71を赤外線加熱装置200Aによって所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、誘電体膜72を形成する(焼成工程)。
ここで誘電体前駆体膜71を加熱焼成する赤外線加熱装置200Aとしては、図10(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の一方面側に設けられた誘電体前駆体膜71に相対向する領域に設けられて、誘電体前駆体膜71に当該誘電体前駆体膜71の吸収率の大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線を照射する第1の加熱手段201Aと、流路形成基板用ウェハ110の他方面側(裏面側)に相対向する領域に設けられて、流路形成基板用ウェハ110の他方面側に赤外線を照射する第2の加熱手段202Aとを具備する。
第1の加熱手段201Aは、赤外線が照射される熱源203Aと、熱源203Aと流路形成基板用ウェハ110との間に設けられたフィルタ204とを具備する。
また、第2の加熱手段202Aは、赤外線が照射される熱源205Aのみで構成されている。第1の加熱手段201A及び第2の加熱手段202Aのそれぞれの熱源203A、205Aは、遠赤外線を含む赤外線を照射するものである。
ここで、第2の加熱手段202Aの熱源205Aの色温度は、第1の加熱手段201Aの熱源203Aの色温度に比べて低くしている。これにより、密着層61よりも基板(流路形成基板用ウェハ110)側が加熱される温度を、密着層61よりも誘電体膜72側が加熱される温度に比べて低くすることができる。したがって、密着層61を挟んで誘電体膜72側から基板(流路形成基板用ウェハ110)側に向かって低くなる温度勾配をつけることができる。
このため、誘電体膜72を焼成する際に、下電極膜60Aが同時に加熱されても、密着層61が下電極膜60A内に拡散される量を減少させて、下電極膜60Aと基板(本実施形態では絶縁体膜55)との間に密着層61を残留させることができる。これにより、密着層61が下電極膜60A内に拡散することによる下電極膜60Aと基板(絶縁体膜55)との密着力が低下するのを防止して、圧電素子300の駆動時に下電極膜60Aの剥離による圧電素子300の損傷を防止でき、印刷品質を維持することができると共に、信頼性を向上することができる。
なお、密着層61の拡散条件は、密着層61の濃度勾配と、加熱される温度勾配とによって決まる。このため、本実施形態のように温度勾配を制御することによって、密着層61の拡散を減少させることができる。
また、シリコンからなる流路形成基板用ウェハ110は、赤外線が通過して加熱されず、二酸化シリコン(SiO)からなる弾性膜50は2nmの波長を吸収するため、吸光発熱が高い。そして、温度勾配をつけずに加熱した場合、下電極膜60Aの下部側(密着層61側)から発熱し、下電極膜60Aの厚さ方向の下部側が上部側に比べて高い温度で加熱される。したがって、温度の高い側に設けられた密着層61は、温度の低い側の下電極膜60A内に拡散してしまう。本実施形態では、下電極膜60Aが温度勾配をつけて加熱されるようにしたため、密着層61が下電極膜60A内に拡散して、下電極膜60Aの密着力が低下するのを防止できる。
ちなみに、酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55は20nmの波長を吸収し、白金族金属からなる白金層62及び拡散防止層63は赤外線を反射する。また、PZTからなる誘電体膜72は20〜40nmの波長を吸収する。
また、誘電体前駆体膜71の赤外線の吸収率の大きい波長領域は、例えば、赤外線を透過する基板の一方面に誘電体前駆体膜71を形成し、誘電体前駆体膜71に赤外線を照射して、基板の他方面側で誘電体前駆体膜71を透過した赤外線の波長領域を測定することで、取得することができる。
さらに、本実施形態では、第1の加熱手段201Aの熱源203Aの色温度を、第2の加熱手段202Aの熱源205Aの色温度よりも高くしたため、誘電体膜72が直接加熱されて大粒径の結晶ができ易いが、本実施形態でも上述した実施形態1と同様に、第1の加熱手段201Aにフィルタ204を設けているため、誘電体前駆体膜71の吸収率の大きい波長領域以外の波長領域の赤外線によって、誘電体前駆体膜71を直接加熱することなく、誘電体前駆体膜71の下地を加熱することができる。したがって、誘電体前駆体膜71の膜中を起点として結晶成長させることなく、誘電体前駆体膜71を下地側を起点として結晶成長させることができ、下地側から配向及び結晶粒のサイズ等の結晶性を引き継いで、誘電体膜72を良好な結晶性で形成することができる。
また、赤外線加熱装置200Aとして、流路形成基板用ウェハ110の一方面側の誘電体前駆体膜71側から加熱する第1の加熱手段201Aと、流路形成基板用ウェハ110の他方面側(裏面側)から加熱する第2の加熱手段202Aとを用いることで、高い昇温レートで誘電体前駆体膜71を加熱して結晶化させて良好な結晶性を有する誘電体膜72を形成することができる。
なお、その後の工程については、上述した実施形態1と同様であるため重複する説明は省略する。
また、本実施形態では、密着層61、白金層62及び拡散防止層63を順次積層して下電極膜60Aを形成したが、下電極膜60Aは、基板(絶縁体膜55)側に密着層61を有するものであれば、その他の材料については、特に限定されるものではない。また、密着層61の材料についても、圧電体層70を形成する際の加熱によって下電極膜60A内に拡散されるものであれば、上述したものに限定されるものではない。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、インクジェット式記録ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1及び2では、白金又はイリジウムからなる下電極膜60や密着層61、白金層62及び拡散防止層63からなる下電極膜60Aを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、誘電体前駆体膜71を形成する前に、下電極膜60、60A上に誘電体膜72を結晶成長させる際の核となる種チタン等を設けるようにしてもよい。
また、上述した実施形態1及び2では、流路形成基板10及び流路形成基板用ウェハ110として、結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、結晶面方位が(100)面のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
なお、上述した実施形態1及び2では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、圧電素子を有する液体噴射ヘッドの製造方法に限定されるものではない。即ち、本発明は、誘電体膜からなる圧電体層の製造方法に限定されず、あらゆる誘電材料からなる誘電体膜の製造方法に適用できることは言うまでもない。
実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの要部断面図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
符号の説明
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60、60A 下電極膜、 61 密着層、 62 白金層、 63 拡散防止層、 70 圧電体層、 71 誘電体前駆体膜、 72 誘電体膜、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 110 流路形成基板用ウェハ、 120 駆動回路、 121 接続配線、 130 保護基板用ウェハ、 200、200A 赤外線加熱装置、 201、201A 第1の加熱手段、 202、202A 第2の加熱手段、 204 フィルタ、 300 圧電素子

Claims (9)

  1. 基板の一方面側に有機金属化合物のゾルを塗布して誘電体前駆体膜を形成する工程と、前記基板の前記誘電体前駆体膜に相対向する領域から当該誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線を照射すると共に、前記基板の他方面側から赤外線を照射して前記誘電体前駆体膜を加熱焼成して結晶化する工程とを具備することを特徴とする誘電体膜の製造方法。
  2. 前記誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線の照射が、赤外線を照射する熱源と、前記誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外するフィルタとを用いて行うことを特徴とする請求項1記載の誘電体膜の製造方法。
  3. 前記誘電体前駆体膜を結晶化する工程の前に、前記誘電体前駆体膜を乾燥させる乾燥工程、乾燥した前記誘電体前駆体膜を脱脂する脱脂工程をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2記載の誘電体膜の製造方法。
  4. 前記誘電体前駆体膜を加熱焼成して結晶化する工程では、100℃/sec以上の昇温レートで行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の誘電体膜の製造方法。
  5. 前記基板上に下電極を形成する工程と、該下電極上に前記圧電体層を形成する工程と、該圧電体層上に上電極を形成する工程とを具備し、前記圧電体層を形成する工程が、請求項1〜4の何れか一項に記載の製造方法により製造された誘電体膜を製造する方法であることを特徴とする圧電素子の製造方法。
  6. 前記下電極が前記基板側に密着層を有すると共に、前記誘電体前駆体膜を加熱焼成して結晶化する工程では、前記基板の他方面側から赤外線を照射する色温度を、前記基板の一方面側から赤外線を照射する熱源の色温度よりも低くして行うことを特徴とする請求項5記載の圧電素子の製造方法。
  7. 前記密着層が、チタンを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項6記載の圧電素子の製造方法。
  8. 一方面側に誘電体前駆体膜が設けられた基板の前記誘電体膜側に相対向する領域に設けられて、当該誘電体前駆体膜の吸収率が大きい波長領域を除外した波長領域の赤外線を照射する第1の加熱手段と、前記基板の他方面側に設けられて、当該基板の前記他方面側に赤外線を照射する第2の加熱手段とを具備することを特徴とする赤外線加熱装置。
  9. 前記第1の加熱手段が、赤外線を照射する熱源と、該熱源と前記基板との間に設けられて、前記誘電体前駆体膜の吸収率の大きい波長領域を除外するフィルタとで構成されていることを特徴とする請求項8記載の赤外線加熱装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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