JP2008050355A - 造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させる医薬組成物および方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる。また、本発明は、プラスミノーゲン活性化因子を含む培養培地中で培養する工程を含む。
【選択図】なし
Description
B. Heissig et al., Cell 109, 625 (May 31, 2002) F. Arai et al., Cell 118, 149 (Jul 23, 2004) L. M. Calvi et al., Nature 425, 841 (Oct 23, 2003) K. Dano et al., Adv Cancer Res 44, 139 (1985) E. G. Levin, D. J. Loskutoff, J Cell Biol 94, 631 (Sep, 1982) P. H. Hart, G. F. Vitti, D. R. Burgess, D. K. Singleton, J. A. Hamilton, J Exp Med 169, 1509 (Apr 1, 1989) C. Brisson−Jeanneau, L. Nelles, E. Rouer, Y. Sultan, R. Benarous,Histochemistry 95, 23 (1990) C. Sillaber et al., J Immunol 162, 1032 (Jan 15, 1999) R. G. Wilcox, Am J Cardiol 78, 20 (Dec 19, 1996) H. R. Andersen et al., N Engl J Med 349, 73 3 (Aug 21, 2003) T. H. Bugge, M. J. Flick, C. C. Daugherty, J. L. Degen, Genes Dev 9, 794 (Apr 1, 1995) K. Hattori et al., J Exp Med 193, 1005 (May 7, 2001) K. Hattori et al., Nat Med 8, 841 (Aug, 2002) K. Hattori et al., Blood 97, 3354 (Jun 1, 2001) T. M. Dexter, T. D. Allen, L. G. Lajtha, J Cell Physiol 91, 335 (Jun, 1977) Yepes, et al (2002). J Clin Invest 109, 1571−1578 Hu, K., et al (2006) J Biol Chem 281, 2120−2127 S. M. Camiolo, S. Thorsen, T. Astrup, Proc.Soc.Exp.Biol.Med. 138, 277 (Oct,1971) M. Hoylaerts, D. C. Rijken, H. R. Lijnen, D. Collen, JBiol Chem 257,2912(Mar 25, 1982) B. Heissig et al., Hematology 10, 247 (Jun, 2005) J. Zhang et at (2003). Nature 425, 836−841. S. Thorsen, P. Glas−Greenwalt, T. Astrup, Thromb Diath Haemorrh 28, 65(Aug 31, 1972) A.L.Copley,Biorheology 21,135(1984)
(1)造血幹細胞を増殖、分化および/または循環内に動員させるための医薬組成物
(i)プラスミノーゲン活性化因子を用いる医薬組成物
本発明は、造血幹細胞を増殖、および/または分化および/または循環系内に動員させるためのプラスミノーゲン活性化因子を提供する。
本発明は、造血幹細胞を増殖、および/または分化および/または循環系内に動員させるための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子を含んでなる。
「造血幹細胞」とは、自己複製能および全ての血液細胞に分化する多分化能を持ち、数ヶ月以上の長期間にわたり造血を再構築する能力をもった細胞をいう。これまでの研究により、造血幹細胞は、骨髄、末梢血、および臍帯血にごく微量含まれていることが明らかとなっており、これらから採取することが可能である。現在までに、造血幹細胞をソーティングする方法は公知である。例えば、造血幹細胞が発現する細胞表面の抗原に基づいて、Lin−、c−kit+、sca−1+の細胞を骨髄、末梢血、および臍帯血からソーティングすることができる。上記Lin−、c−kit+、sca−1+の分画に造血幹細胞が存在することは確実視されている。また、「造血前駆体」とは、造血幹細胞から分化した細胞であって、赤血球および白血球などに未だ最終分化していない細胞をいう。これには、CFU−SおよびCFU−Cが含まれる。
本発明のさらに好ましい態様において、tPAは以下のタンパク質からなる群より選択される:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質;および、
(c)配列番号1のアミノ酸配列に1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質。
(ii)プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を用いる医薬組成物
本発明は、造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させるためのプラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を提供する。
本発明は、造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させるための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を含んでなる。
本発明のさらに好ましい態様において、tPAをコードする核酸は、以下の核酸からなる群より選択される:
(a)配列番号2の塩基配列を含む核酸;
(b)配列番号2の塩基配列と少なくとも95%の同一性を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;
(c)配列番号2の塩基配列から1つまたは数個の核酸の欠失、置換、および/または付加を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;および、
(d)配列番号2の塩基配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸。
本発明は、造血幹細胞から分化したCFU−S、CFU−C、CFU−GEMM、CFU−E、CFU−GM等の造血系細胞に分化し得る細胞、好ましくはCFU−S、CFU−Cおよび/またはこれらの細胞から分化可能な血球細胞を増殖、分化および/または循環系内へ動員させるための医薬組成物を提供する。本医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる。これは、マウスにtPAを投与することにより、末梢血中のCFU−SおよびCFU−Cの数が増加した、という本発明の知見に由来する。また、本発明は、実施例5、12および15等によっても裏付けられる。
(3)インビトロで造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、および/または分化させる方法
本発明は、インビトロで造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、および/または分化させる方法を提供する。本方法は、細胞をプラスミノーゲン活性化因子を含む培養培地中で培養することを含む。本方法は、マウスからソーティングしたLin−細胞にtPAを添加することにより、CFU−Cの細胞数が劇的に増加したという、本発明の知見に基づく。また、本方法は実施例9、12および14等によっても裏付けられる。
本発明は、血球減少状態を治療および/または予防するための医薬組成物を提供する。本医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる。
(a)疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
(b)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;
(c)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こすこと。
統計分析
結果を平均±SEM(標準誤差平均)として表す。対応のない2テール・スチューデントt検定を用いてデータを分析した。<0.05のP値を有意と見なした。
動物。C57BL/6Jバックグラウンドに、21世代、戻し交配したマウスを、ヘテロ接合体交配することによって、年齢(6〜8週齢)および性別をマッチさせたPlg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを得た(非特許文献11)。CD1マウスに>10回戻し交配した後のMMP−9+/+マウスおよびMMP−9−/−マウスを用いた(非特許文献1)。ろ過した無菌空気Thorensten装置中でマウスを維持した。動物処置は順天堂大学の施設内動物実験委員会に認可された。
Plg+/+またはPlg−/−マウス由来の1x107BMMCを2x107 CD45.1細胞と混合し、そして造血に対する比較寄与を、CD45.2、GR−1、B220またはCD3に対する抗体を使用してPBMC中のドナー由来の3系統の寄与の%を解析することにより評価した。
Plg+/+またはPlg−/−マウス(CD45.2+)由来の1x105、4x104または2.5x104BM細胞を、致死量の放射線(900cGy)を照射された遺伝的背景が同一なCD45.1マウスに尾静脈投与により移植した。もう1つの一連の実験では、CD45.1マウス由来の1x105、4x104または2.5x104BM細胞を、致死量の放射線を照射された遺伝的背景が同一なPlg+/+またはPlg−/−(CD45.2+)レシピエントマウスに移植した。ドナー寄与%を、移植後90日のレシピエントマウス中の末梢血白血球上のCD45.1およびCD45.2を計測することによって計算した。各レシピエントグループから6匹のマウスを解析した。処理群間の比較を、両側(two−tailed) Student’s t−testを用いて行い、そしてデータを平均(M)±標準誤差(SEM)としてプロットした。
マウスに、全3日間の間、毎日1.25x106IU=1mg/kg(体重)の濃度でヒト組換えtPAを、またはPBSを腹腔内に投与した。(ヒトの臨床において組換えtPA用量は10mg/kgである)。血液および血漿試料を各時点で回収した。
Lin−細胞分離
大腿および脛骨をフラッシュ処理して、マウスからBM細胞を得た。Lin−細胞分離のため、商業的に入手可能な抗体カクテル(Stem Cell Technologies、バンクーバー)を用いて、細胞を染色した。2MACSカラム(Miltenyi Biotec)に通した後、c−KitおよびSca−1に対する抗体を用いてLin−細胞を染色した。FACS分析によって、分離したLin−細胞の90%より多くが、c−Kit/Sca−1二重陽性細胞であることが明らかになった。
5−FUを含み/含まず処置した後に単離した、Plg+/+およびPlg−/− BM細胞由来のネズミBM細胞(1x106)を、血清不含培地(X−VIVO−15)中、一晩置いた。酵素電気泳動法によって培養上清を分析した。
血清不含培地中、組換えKitL(2μg/ml、PeproTech)を加え/加えず、組換えtPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標)、エーザイ社、日本)の存在下/非存在下で、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来のBM由来Lin−細胞(1.0x105)を一晩培養した。次いで、細胞を採取し、c−Kit−FITC抗体(Becton Dickinson)で標識し、そしてFACSによってc−Kit発現に関して分析した。
Plg+/+マウスのBM由来の1x105 Lin−細胞を、間質細胞(MS−5)の集密(confluent)層と一緒に、培養下に置いた。組換えtPA(5μg/ml)を培養に毎日添加した。KitL(2μg/ml)を培養に一日おきに添加した。7日後、トリプシン(Sigma)を用いて接着細胞を回収し、そして非接着細胞と一緒にプールした。造血細胞総数を計数した。次いで、細胞を造血前駆体アッセイに供した。
20%ウマ血清(Gibco)、およびヒドロコルチゾン(10−6mol、Sigma)を含有する長期培養培地中の間質層(MS−5)培養に、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来のBM細胞を添加した。5日ごとに、培地の半分に新鮮な長期培養培地を補充した。培養3週間後、接着細胞および非接着細胞を収集し、造血細胞数を測定し、そして細胞を造血前駆細胞アッセイに供した。CFU−C数を測定した後、CFU−C総数を4で割ることによって、長期培養始原細胞の絶対数を計算した。
mIL−3(10ng/ml)、ネズミKitL(50ng/ml)、ヒトIL−6(10ng/ml)およびヒト・エリスロポエチン(3単位/ml)を含有する、商業的に入手可能なメチルセルロースに基づくアッセイ(Methocult、Stem Cell Technologies、バンクーバー)1ml中、PBMC(105細胞/プレート)またはLin−細胞(5x103細胞/プレート)を3つ組で蒔いた。第7日、倒立顕微鏡(40x倍率)でスコアリングを行った。
以下のフィルターセット:Hoechstブルーを検出する405/30バンドパス(BP)、Hoechstレッドを検出する585/42BP、およびHoechstブルーからHoechstレッドを分離する440−ロングパス二色フィルターを含むMoFlo(DakoCytomation)を用いて、全BM細胞を蛍光活性化細胞分取(FACS;BD Biosciences)に供した。ベラパミルで処理した細胞サブセットが、SPゲートの同一性を確認した。
5−FUを単回注射した後、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスからBM細胞(1x106)を収集し、そして血清不含培地中で一晩培養した。ゼラチン−アガロースビーズで上清を処理して、ゼラチナーゼを濃縮し、そして0.1%ゼラチンを含有するドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)を通じてプロセシングした。2.5%TritonX−100中、室温で1時間インキュベーションし、そして冷水中でリンスした後、低塩コラゲナーゼ緩衝液(50mmol/l Tris、pH7.6、0.2mol/l NaCl、5mmol/l CaCl2、および0.2%体積/体積 Brij−35)中に、37℃で14〜18時間、ゲルを置いた。0.2%クーマシーブルー・ストック10mlおよび脱染剤(DW、メタノールおよび氷酢酸、6:3:1)190mlを含有する溶液でゲルを30分間染色し、そして室温で1時間放置した後、ゼラチン溶解活性のバンドが視覚化された。プロMMP−2標準(Oncogene Research Products、ケンブリッジ)を陽性対照として、そしてゼラチン溶解バンドの分子量を決定するために、用いた。
プラスミノーゲン抗体(クローンE−14、Santa Cruz)を用いてウェスタンブロットし、そしてECL化学発光(Amersham Pharmacia−Biotech)を用いて視覚化することによって、5−FU処置前および処置後に採取した、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来の血漿試料を分析した。
5−FU処置後のPlg+/+マウスおよびPlg−/−マウスのBM細胞をCD11b−FITC抗体およびGR1−PE抗体とインキュベーションし、そしてFACSによって分析した。細胞をエタノールで固定し、そしてヨウ化プロピジウムで標識した後、FACSを用いて、BM細胞倍数性を分析した。
血漿または培養上清中、商業的に入手可能なELISA(R&D Systems)を用いて、KitL(SCF)およびプロMMP−9を測定した。MMP−9活性アッセイBiotrakTN系ELISA(Amersham Biosciences、英国)を用いて、活性MMP−9を分析した。
(a)5−FU処理したPlg+/+およびPlg−/−マウス由来のBM細胞(1x106)を回収し、一晩無血清培地中で培養した。(b)MS−5細胞を6ウェルプレート(Falcon)中で集密になるまで増殖させ、そして次いで一晩無血清培地中tPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標))に暴露した。(c)Plg+/+マウス由来のBM由来lin+細胞(1x105)を、一晩無血清培地中で、組換えtPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標))の存在下/非存在下で培養した。これら培養物の培養上清を回収した。上清(a)−(c)を基質ザイモグラフィーまたはELISAにより解析した。
全RNAを、Trizol試薬を使用して、酸グアニジンチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出により、4週齢のLTC間質およびMS−5細胞より抽出した。
RT−PCTを、One Step RNA PCRキット(AMC)(タカラ酒造、日本)を製造業者の推奨する方法で使用して実行した。すべてのプローブを、全RNA抽出物の完全性を試験するために、βアクチンプライマー 5’−TGGAATCCTGTGGCATCCATGAAAC−3’(センス鎖)および5’−TAAAACGCAGCTCAGTAACAGTCCG−3’(アンチセンス鎖)を使用して、事前に選別した。これらのプライマーは、349bpの産物を生じた。tPAに対するプライマー配列は、5’−CTGAGGTCACAGTCCAAGCAATGT−3’(センスプライマー)、および5’−GCTCACGAAGATGATGGTGTAAAGA−3’(アンチセンスプライマー)であり、564bpの産物を生じる。プラスミノーゲンに対するプライマー配列は、5’−TGTGGGCTCTAAAGATGGAACTCC−3’(センスプライマー)、および5’−GACAAGGGGACTCGCTGGATGGCTA−3’(アンチセンスプライマー)であり、268bpの産物を生じる。
結果を、平均±SEM(標準誤差)として表した。データを不対(unpaired)両側Student’s t−testを使用して解析した。<0.05のP値を有意とした。
本実施例では、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを用い、Plgが幹細胞ニッチの非常に重要な構成要素であること、およびMMP活性化の潜在的な上流ターゲットであることを確認した。
本実施例では、Plg以外の種類の遺伝子欠損マウスを用いて、Plgが幹細胞増殖等に重要であるか否かを検討した。
本実施例では、5−FU投与後のBM再生期におけるMMP−9およびKitL等の発現量の変化を検討した。
本実施例では、活性MMP−9を増加させる因子を用い、PlgがMMPを介して幹細胞動員を引き起こしているかを検討した。
本実施例では、マウスにtPAを投与することにより、造血幹細胞または前駆体を循環内に動員可能であるか、または造血幹細胞を増殖可能であるかを確認した。
本実施例では、tPAが仲介する細胞動員がMMP−9活性化に依存していることを確認した。
本実施例では、PlgがKitLの放出に重要であることを確認した。
PlgがKitL放出に重要であり、そしてtPAがPlgをプラスミンに変換するのならば、tPAで処置した動物では、KitL血漿レベルの増加が見出されるはずである。これは実際、Plg+/+マウスにおいて、tPA処置後に見られ(図3L)、一方、tPAで処置したPlg−/−マウスでは、KitL血漿レベルはわずかに上昇したのみであった(図5E)(図4N)。これらのデータによって、tPAは、プラスミノーゲン依存方式で、KitL放出を改善することが示唆される。Plg経路がBM幹細胞増殖および分化に重要であるならば、Plg−/−マウスには、欠陥が見られる可能性もある。Plg−/−マウスは、c−Kit高発現Lin−細胞数が減少しており、これは、野生型対照に比較して、未成熟細胞が多いことを反映する(図4A)。Lin−(大部分c−Kit高)発現細胞のc−Kit強度は、KitL処置後に有意に減少し、c−Kit低発現細胞の集積を生じた。tPAで処置すると、lin−Plg+/+細胞上のc−Kit発現はわずかに減少したが、lin−Plg−/−細胞には影響はなかった。一方、lin−(大部分c−Kit高)発現細胞をtPAおよびKitLとインキュベーションすると、Plg+/+細胞ではc−Kit強度が劇的に減少し、c−Kit低発現細胞の集積を生じたが、Plg−/−細胞ではこうした現象はなかった。これらのデータは、プラスミノーゲンの活性化が、c−Kit/KitL発現およびシグナル伝達を改変し、おそらくそれによって幹細胞の運命を変化させることを初めて示す。
本実施例では、Plg+/+およびPlg−/−マウスのサイド・ポピュレーション細胞を検討することにより、Plgの幹細胞数に与える影響を確認した。
本実施例では、tPAが、幹細胞数に影響を及ぼすのに加えて、幹細胞微小環境/幹細胞ニッチを調節するかどうかをインビトロで検討した。
本実施例では、BM細胞がPlgまたはPlg活性体を産生可能であるかを研究した。その結果、tPAの投与により、免疫反応性Plgおよび免疫反応性MMP−9が発現することを確認した。
本実施例では、tPA処理によりKitLの放出が増大することを確認した。
潜在的な間質由来因子の1つがKitLである。したがって、本発明者らは、KitLを発現する接着性間質細胞(MS−5)等(非特許文献1)を、血清不含培養中、tPAで処理した。tPA処理は、MS−5間質細胞(図4C)および初代BM間質細胞(図4M)からのKitL放出を有意に増大させた。tPAの天然阻害剤であるPAI−1でMS−5間質細胞を処理すると、KitL放出は、対照上清におけるより低かった。これらのデータによって、MS−5細胞はまた、tPAも発現して、KitLの安定した状態の放出を維持していることが示唆された。実際、RT−PCRによって、MS−5細胞中にtPA mRNAが見出された(データ未提示)。重要なことに、tPAが仲介する、間質細胞からのKitLの放出は、MMP活性化を介して起こった:MMP阻害剤を添加すると、間質細胞からのKitL放出は完全に阻害された。これらのデータは、tPAで処置した動物の血漿をKitLに関して分析することによって、tPAがKitLの放出をin vivoで促進することを示した、我々の初期のデータ(図5E)を裏付けた。
本実施例では、tPAが造血増殖因子として作用可能であるかを評価するために、インビトロおよびインビボの両方でのHSPC(造血幹細胞/前駆細胞)増大を評価し、tPAの投与によりCFU−S等の細胞が増殖することを確認した。
本実施例では、PlgおよびMMP−9がtPA仲介BM再構成に必要であるがどうかを検討し、tPAの造血再構成の効果にはPlgおよびMMP−9が必要であることを確認した。
本実施例では、造血細胞に対する観察されたtPAの効果が、tPAにより直接的にまたは非直接的(例えば、BMニッチ中の間質細胞を経由して)に仲介されるかどうかを解明するために、本発明者らはインビトロにおける造血細胞増大に対するtPAの効果を調べた。その結果、tPAは、間質細胞をフィーダー細胞として使用することにより、インビトロにおける造血幹細胞の増殖を引き起こすことを確認した。
本実施例では、tPA処置後のc−Kit/KitLシグナル伝達が細胞増殖を促進するか否かを確認した。
本実施例では、tPAは間質細胞存在下で効果を有したので、Plg欠損マウスにおいて観察された造血欠損が間質/ニッチ欠損のためであるかを調べた。その結果、Plg−/−マウスにおける造血細胞分化および増殖の減少に、BMニッチにおけるPlgの存在が重要であることが示された。
本実施例では、BM再構成のためには、BMニッチ中のPlgの存在が重要であることが示された。
本実施例では、in vivoの長期造血を維持するために、どの細胞構成要素がPlgに依存しているのかを理解するため、本発明者らは、Plg−/−マウスまたはPlg+/+マウス由来のBMを、致死的に放射線照射したPlg−/−マウスまたはPlg+/+マウスに移植することによって、キメラを発展させた。
本実施例では、フィブリノーゲン/フィブリンとPlg/プラスミンの2つの系が幹細胞ニッチに与える影響を検討した。
Claims (11)
- 造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、分化および/または循環系内へ動員させるための医薬組成物であって、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる医薬組成物。
- プラスミノーゲン活性化因子が、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である、請求項1の医薬組成物。
- プラスミノーゲン活性化因子が以下のグループより選択される、請求項1の医薬組成物:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質;および、
(c)配列番号1のアミノ酸配列に1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質。 - プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸が以下のグループより選択される、請求項1の医薬組成物:
(a)配列番号2の塩基配列を含む核酸;
(b)配列番号2の塩基配列と少なくとも95%の同一性を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;
(c)配列番号2の塩基配列から1つまたは数個の核酸の欠失、置換、および/または付加を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;および、
(d)配列番号2の塩基配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸。 - インビトロで造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、および/または分化させる方法であって、上記細胞をプラスミノーゲン活性化因子を含む培養培地中で培養することを含む、前記方法。
- プラスミノーゲン活性化因子が、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である、請求項5の方法。
- プラスミノーゲン活性化因子が、以下の配列からなるタンパク質より選択される、請求項5の方法:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質;および、
(c)配列番号1のアミノ酸配列に1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質。 - 血球減少状態を治療および/または予防するための医薬組成物であって、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる、前記医薬組成物。
- プラスミノーゲン活性化因子が、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である、請求項8の医薬組成物。
- プラスミノーゲン活性化因子が、以下の配列からなるタンパク質より選択される、請求項8の医薬組成物:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質;および、
(c)配列番号1のアミノ酸配列に1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質。 - プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸が、以下の配列からなる核酸より選択される、請求項8の医薬組成物:
(a)配列番号2の塩基配列を含む核酸;
(b)配列番号2の塩基配列と少なくとも95%の同一性有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;
(c)配列番号2の塩基配列から1つまたは数個の核酸の欠失、置換、および/または付加を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;および、
(d)配列番号2の塩基配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸。
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Family Applications (1)
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-
2007
- 2007-08-21 JP JP2007214534A patent/JP2008050355A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20140121454A (ko) * | 2012-01-27 | 2014-10-15 | 유니버시떼 드 몬트리얼 | 피리미도[4,5-b]인돌 유도체 및 조혈 줄기 세포의 증식에서의 이의 용도 |
JP2015504902A (ja) * | 2012-01-27 | 2015-02-16 | ユニヴェルスィテ・ドゥ・モントリオール | ピリミド[4,5−b]インドール誘導体及び造血幹細胞の増殖におけるその使用 |
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KR102098122B1 (ko) | 2012-01-27 | 2020-04-07 | 유니버시떼 드 몬트리얼 | 피리미도[4,5-b]인돌 유도체 및 조혈 줄기 세포의 증식에서의 이의 용도 |
JP2017513897A (ja) * | 2014-04-22 | 2017-06-01 | ウニヴェルシテ ド モントリオールUniversite De Montreal | 化合物および造血幹細胞および/または造血前駆細胞の増大におけるその使用 |
US10647718B2 (en) | 2014-04-22 | 2020-05-12 | Universitéde Montréal | Compounds and use thereof in the expansion of hematopoietic stem cells and/or hematopoietic progenitor cells |
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