JP2008050355A - 造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させる医薬組成物および方法 - Google Patents

造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させる医薬組成物および方法 Download PDF

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浩一 服部
Heissig Beate Hattori
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Abstract

【課題】本発明は、造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、分化および/または循環系内に動員させる医薬組成物を提供する。また、本発明は、インビトロで造血幹細胞を増殖、および/または分化させる方法を提供するさらに、本発明は、血球減少状態を治療および/または予防するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明の医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる。また、本発明は、プラスミノーゲン活性化因子を含む培養培地中で培養する工程を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、分化および/または循環系内に動員させる医薬組成物に関する。また、本発明は、インビトロで造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、および/または分化させる方法に関する。さらに、本発明は、血球減少状態を治療および/または予防するための医薬組成物に関する。
幹細胞は、特殊化されたニッチ中に常在し、ここで自己再生を通じて維持され、そして循環内に動員され、そして子孫を産生することも可能であり、この子孫が最終分化を経る(非特許文献1−3)。したがって、造血幹細胞は、赤血球、白血球、および巨核球(血小板)等、全ての血液細胞に分化する能力を持った細胞である。血球系の細胞にはそれぞれ固有の寿命があるため、造血幹細胞はこれらの血球を供給し続けるために絶えず***・増殖を繰り返している。このように、造血幹細胞は、すべての血球系列の細胞に分化することが可能であるため、血球減少に対する予防および治療、あるいは再生医療に利用することが期待されている。
本発明者らは、以前、マトリックス・メタロプロテイナーゼ−9(MMP−9)に仲介されるKitLの放出が、骨髄(BM)ニッチからの幹細胞リクルート(recruitment)を調節することを立証した(非特許文献1)。したがって、これまでにMMP−9からKitLを通じて、造血幹細胞リクルートを起こすということが知られている。ここで、リクルートとは、造血幹細胞の再生増殖に関する意味で使用され、循環系内への動員とは異なる概念である。
これまでに幹細胞の動員等の幹細胞への有利な効果を示す物質としてはG−CSF等が知られている。しかしながら、これらの長期的な安全性は不明である。したがって、他に安全性が高く、幹細胞動員を引き起こす因子が探し求められていた。
プラスミンは、エンドプロテアーゼの1つであり、生理的には血管内に形成されたフィブリン等に働いてこれを分解することが知られている。また、プラスミンは、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)および他のセリンプロテアーゼによって、不活性プロ酵素であるプラスミノーゲン(Plg)から生成される(非特許文献4)。
tPAは内皮細胞(非特許文献5)、単球(非特許文献6)、巨核球(非特許文献7)およびマスト細胞(非特許文献8)によって合成される。tPAは、Plgを活性タンパク質分解型のプラスミンに変換する、古典的な線維素溶解因子であり、大きな副作用を示すことなく、心筋梗塞の治療に臨床的に使用されている(非特許文献9−10)。
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本発明は、造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、分化および/または循環系内に動員させる医薬組成物並びに方法を提供する。具体的には、該医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子および/またはこれをコードする核酸を含んでなる。さらに、本発明は、プラスミノーゲン活性化因子および/またはこれをコードする核酸を含む、血球減少状態を治療および/または予防するための医薬組成物を提供する。
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究に努めた結果、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)が、造血幹細胞を増殖、分化および/または循環内に動員させることを発見し、本発明を想到した。
具体的には、本発明は、マウスにtPAを投与することにより、プラスミン、MMP−9、KitLを介して、造血幹細胞等が増殖、分化および循環系内へ動員されたという知見に基づく。
阻害要因が多い生体内で上記の発明に想到したことは、当業者をして予想外であった。
(1)造血幹細胞を増殖、分化および/または循環内に動員させるための医薬組成物
(i)プラスミノーゲン活性化因子を用いる医薬組成物
本発明は、造血幹細胞を増殖、および/または分化および/または循環系内に動員させるためのプラスミノーゲン活性化因子を提供する。
本発明はまた、造血幹細胞を増殖、および/または分化および/または循環系内に動員させるためのプラスミノーゲン活性化因子の投与方法を提供する。
本発明は、造血幹細胞を増殖、および/または分化および/または循環系内に動員させるための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子を含んでなる。
本発明はまた、造血幹細胞を増殖、および/または分化および/または循環系内に動員させるための医薬組成物の投与方法を提供する。本発明の当該投与方法に用いる医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子を含んでなる。
本発明はまた、プラスミノーゲン活性化因子の、血球の減少状態を治療および/または予防するための、あるいは造血幹細胞または造血前駆体を循環系内に動員させるための医薬組成物の製造のための使用を提供する。
本発明は、例えば後述する実施例5、12および15等によって裏付けられる。
「造血幹細胞」とは、自己複製能および全ての血液細胞に分化する多分化能を持ち、数ヶ月以上の長期間にわたり造血を再構築する能力をもった細胞をいう。これまでの研究により、造血幹細胞は、骨髄、末梢血、および臍帯血にごく微量含まれていることが明らかとなっており、これらから採取することが可能である。現在までに、造血幹細胞をソーティングする方法は公知である。例えば、造血幹細胞が発現する細胞表面の抗原に基づいて、Lin−、c−kit+、sca−1+の細胞を骨髄、末梢血、および臍帯血からソーティングすることができる。上記Lin−、c−kit+、sca−1+の分画に造血幹細胞が存在することは確実視されている。また、「造血前駆体」とは、造血幹細胞から分化した細胞であって、赤血球および白血球などに未だ最終分化していない細胞をいう。これには、CFU−SおよびCFU−Cが含まれる。
「増殖する」とは、細胞が元の性質を失わずに細胞***により、細胞数を増加することをいう。細胞数の計数は、例えば細胞懸濁液に血球計数盤を用いることによって目視により計数することができる。また、種々の細胞計数装置および血球計算機が市販されており、これを使用することにより細胞を計数してもよい。
「分化する」とは、ある細胞種が他の細胞種に変化することをいう。したがって、赤血球、白血球およびリンパ球のような最終分化のみならず、完全には分化していない系統限定幹細胞(CFU−SおよびCFU−Cのような)への変化も分化の範疇である。一般に、血球細胞の分化状態は、細胞の形態および細胞表面の発現抗原により同定可能である。
「動員する」とは、造血幹細胞や造血前駆細胞が循環系内に移動することをいう。現在行われている造血幹細胞移植や造血幹細胞のin vitro増殖のための造血幹細胞は、骨髄からの採取、臍帯血からの採取、および末梢血からの採取により入手されている。これらのうち、患者に与える負担が少なく且つ十分量の造血幹細胞が入手可能であるため、末梢血からの採取が注目されている。しかしながら、造血幹細胞は通常骨髄中の幹細胞ニッチに存在し、末梢血中には存在しないために、造血幹細胞を循環系内に動員することが必要となる。本発明の医薬組成物によれば、造血幹細胞を循環系内に動員させることが可能となる。
本明細書でいう、「プラスミノーゲン活性化因子」とは、プラスミノーゲンをプラスミンに変換する機能を有すれば、任意のタンパク質を含みうる。例えば、プラスミノーゲン活性化因子は、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)が知られている。また、他のセリンプロテアーゼ(例えば、ストレプトキナーゼ)によっても、プラスミノーゲンはプラスミンに変換されることが知られている。
ヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、562アミノ酸からなる一本鎖糖タンパク質(シグナルペプチドを含む)であり、プラスミン等により限定的に分解されジスルフィド結合により結合した二本鎖型(活性化型)となることが知られている。一本鎖型および二本鎖型のいずれも、プラスミノーゲンをプラスミンに分解することが可能である。本発明では、tPAは、プラスミノーゲンをプラスミンに分解する機能を有することが重要である。したがって、本発明において、tPAという場合は、一本鎖型および二本鎖型のいずれも含まれる。また、tPAには、プラスミノーゲンをプラスミンに分解する機能を有するならば、容易に産生されるように改変された組換え体であってもよい。tPAの組換えタンパク質としては、モンテプラーゼ(製品名:クリアクター(エーザイ、日本東京))、アルテプラーゼ(製品名:アクチバシン(協和醗酵)、製品名:グルトパ(三菱ウェルファーマ))、パミテプラーゼ(製品名:ソリナーゼ(アステラス))、ナテプラーゼ(製品名:ミライザー(日本シェーリング)等が、また、tPAの細胞培養タンパク質としては、ナサルプラーゼ(製品名:トロンボリナーゼ(ベネシス、三菱ウェルファーマ))が、その他のtPAとしては、チソキナーゼ(製品名:プラスベータ(旭化成)、製品名:ハパーゼコーワ(興和))、バトロキソビン(製品名:デフィブラーゼ(東菱薬品工業))等が知られている。
ヒトウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)は、411アミノ酸残基からなる前駆体として産生される。その後、前駆体はプラスミン等により156番目の部位で切断を受け、切断部位のC末端側の鎖が活性型のuPAとなる。本発明では、uPAは、プラスミノーゲンをプラスミンに分解する機能を有することが重要である。したがって、本発明において、uPAという場合、前駆体型および切断後の活性型のいずれもが含まれる。また、uPAには、プラスミノーゲンをプラスミンに分解する機能を有するならば、容易に産生されるように改変された組換え体であってもよい。
本発明の好ましい態様において、プラスミノーゲン活性化因子はtPAである。
本発明のさらに好ましい態様において、tPAは以下のタンパク質からなる群より選択される:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質;および、
(c)配列番号1のアミノ酸配列に1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質。
ここで、プラスミノーゲン活性化作用とは、プラスミノーゲンをプラスミンに変換する作用のことをいう。また、配列番号1は、野生型ヒトtPAのアミノ酸配列である。配列番号1のアミノ酸配列は全長配列を表わしており、tPAの生理活性に不必要なシグナルペプチド(1−23のアミノ酸残基と考えられている)を含む。したがって、配列番号1の配列からシグナルペプチドを除いた配列も、tPAに含まれる。
また、本発明において、上述のようにtPAとは、プラスミノーゲンをプラスミンに変換する機能を有するタンパク質をいう。したがって、配列番号1に対して、95%以上の同一性を有するアミノ酸配列含み且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質、および1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質もまた、tPAの範疇である。
本発明においては、tPAのアミノ酸の1つまたは数個の置換は、好ましくは保存的置換により行われる。ここで保存的置換とは、あるアミノ酸残基が生物学的に類似した特性を持つアミノ酸残基に置換されることをいう。保存的置換の例は、1つの脂肪族残基(Ile、Val、Leu、またはAla)を別の脂肪族残基に置換すること、1つの極性残基を別の極性残基に置換すること(例えば、LysとArg;GluとAsp;またはGlnとAsn間で置換すること)、または1つの芳香族残基(Phe、Trp、またはTyr)を別の芳香族残基に置換することを含む。さらに、保存的置換の例は、活性ドメインの外側のアミノ酸の置換、およびtPAの二次および/または三次構造を変化させないアミノ酸の置換をも含む。当業者は、周知の遺伝子工学的手法により、Sambrookら, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press,(2001)等に記載の、例えば部位特異的突然変異誘発法を使用して、所望の欠失、挿入または置換を施すことが可能である。
本発明において、「数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列」の「数個」とは、2ないし9個をいい、好ましくは2ないし7個、さらに好ましくは2ないし5個、特に好ましくは2または3個をいう。
本発明の好ましい態様において、tPAは、プラスミノーゲン活性化作用を有し、配列番号1に80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する。
アミノ酸の同一性パーセントは、視覚的検査及び数学的計算により決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman,S.B.及びWunsch,C.D.(J.Mol.Biol.,48:443−453,1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff,SおよびHenikoff,J.G.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10915−10919,1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
当業者に用いられる配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl.Acids.Res.25.,p.3389−3402,1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。
同一の機能を有するタンパク質であっても、由来する品種の相違によって、そのアミノ酸配列に相違が存在しうることは当業者にとって周知の事実である。プラスミノーゲン活性化作用を有する限り、tPAは、配列番号1のアミノ酸配列のこのような相同体、変異体も含みうる。配列番号1のヒトtPA以外にも、例えばマウス(M. musculus)やニワトリ(Gallus gallus)、メダカ(Oryzias latipes)等で同様の活性を示すタンパク質をコードする遺伝子の存在が知られている。
本発明の医薬組成物は、好ましくは1またはそれより多くの医薬的に許容できる担体と共に投与可能である。医薬的に許容できる担体は、投与の経路について医薬的に許容できる希釈剤、増量剤、アジュバント、賦形剤、およびビヒクル、ならびに適した分散剤、湿潤剤、および懸濁剤を使用して処方される、水性のまたは油性の懸濁液であってよい。
医薬的に許容できる担体は、一般的に無菌であり、そして発熱性剤がなく、そして水、油、溶媒、塩、糖、および他の炭水化物、乳化剤、緩衝剤、抗菌剤、およびキレート剤を含んでよい。特定の医薬的に許容できる担体および担体に対する活性化合物の比は、組成物の溶解度および化学特性、投与の方式、ならびに標準の医薬実務により決定される。
本明細書に記載される組成物は、バイアル、ビン、チューブ、シリンジ吸入器または単一のもしくは複数の投与のために他の容器の中に含まれることが可能である。そのような容器は、ガラス、または例えばポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはポリビニルクロリドのようなポリマー材料から作られることが可能である。好ましい容器は、シール、または一回の用量を引き出すために針により貫通することができ、次いで針を引き抜くと再びシールされるゴムのストッパーのような封入システムを含んでよい。
プラスミノーゲン活性化因子またはそれをコードする核酸は、適切な方式で患者に投与される。例えば、プラスミノーゲン活性化因子またはそれをコードする核酸あるいはそれらを含む医薬組成物は、静脈内、経皮、皮内、腹腔内、筋内、鼻腔内、硬膜外、経口、局所、皮下、またはいずれかの他の適した技術により投与可能である。好ましくは、静脈内または腹腔内に投与される。最適な薬剤処方は、意図される投与経路、搬送形式および望ましい投薬量に応じて、当業者が容易に決定可能である。
本発明の医薬組成物中のtPAの量は、年齢、治療しようとする状態、体重、治療の望ましい期間、投与の方法、ならびに他のパラメーターに依存する。有効な用量は、医師または他の有資格の医学専門家により日常的に決定される。限定される訳ではないが、典型的な有効な用量は、およそ1x10IU/kgからおよそ5x10IU/kg体重である。好ましい態様において、腹腔内注射のための用量はおよそ1x10−5x10IU/kgである。また、好ましい態様において、静脈内注射のための用量は5x10−5x10IU/kgである。
なお、「IU」とは国際単位(インターナショナル・ユニット)を示す。
(ii)プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を用いる医薬組成物
本発明は、造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させるためのプラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を提供する。
本発明はまた、造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させるためのプラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を投与する方法を提供する。
本発明は、造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させるための医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を含んでなる。
本発明はまた、造血幹細胞を増殖、分化および/または循環系内に動員させるための医薬組成物を投与する方法を提供する。本発明の当該投与方法に用いる医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を含んでなる。
本発明はまた、プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸の、血球の減少状態を治療および/または予防するための、あるいは造血幹細胞または造血前駆体を循環系内に動員させるための医薬組成物の製造のための使用を提供する。
本発明の好ましい態様において、プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸は、tPAをコードする核酸である。
本発明のさらに好ましい態様において、tPAをコードする核酸は、以下の核酸からなる群より選択される:
(a)配列番号2の塩基配列を含む核酸;
(b)配列番号2の塩基配列と少なくとも95%の同一性を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;
(c)配列番号2の塩基配列から1つまたは数個の核酸の欠失、置換、および/または付加を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;および、
(d)配列番号2の塩基配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸。
ここで、配列番号2は、野生型ヒトtPAをコードする核酸配列である。配列番号2は、野生型ヒトtPAのcDNAの塩基配列を表わしており、tPAのプラスミノーゲンをプラスミンに変換する機能には無関係なシグナルペプチドをコードする配列(1−69の塩基配列と考えられている)を含む。したがって、配列番号2の配列からシグナルペプチドをコードする配列を除いた配列も、tPAをコードする核酸に含まれる。
また、本発明において、上述のようにtPAとは、プラスミノーゲンをプラスミンに変換する機能を有するタンパク質をいう。したがって、配列番号2に対して、95%以上の同一性を有する塩基配列含み且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸、1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸、並びに配列番号2の塩基配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる塩基配列を含み且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸もまた、tPAをコードする核酸の範疇である。
「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件を意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および例えば、約40℃−60℃、0.5−6×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件(及び洗浄条件)を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。
一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、最も好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション)および/または洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ65℃−68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPO、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間行う。
当業者に知られていて、以下にさらに記載したように、ハイブリダイゼーション反応と二本鎖の安定性を支配する基本原理を適用することによって望ましい度合いのストリンジェンシーを達成するためには、洗浄温度と洗浄塩濃度を必要に応じて調整することが可能であると理解すべきである(例えば、Sambrookら、2001を参照されたい)。核酸を未知配列の標的核酸へハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さはハイブリダイズする核酸のそれであると仮定される。既知配列の核酸をハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さは核酸の配列を並列し、最適な配列相補性をもつ単数または複数の領域を同定することによって決定可能である。50塩基対未満の長さであることが予測されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(T)より5−25℃低くなければならず、Tは、以下の等式により決定される。長さ18塩基対未満のハイブリッドに関して、T(℃)=2(A+T塩基数)+4(G+C塩基数)。18塩基対を超える長さのハイブリッドに関しては、T=81.5℃+16.6(log10[Na])+41(モル分率[G+C])−0.63(%ホルムアミド)−500/nであり、ここで、Nはハイブリッド中の塩基数であり、そして[Na]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(1×SSCの[Na]=0.165M)。好ましくは、こうしたハイブリダイズする核酸は各々、少なくとも8ヌクレオチド(または、より好ましくは、少なくとも15ヌクレオチド、または少なくとも20ヌクレオチド、または少なくとも25ヌクレオチド、または少なくとも30ヌクレオチド、または少なくとも40ヌクレオチド、または最も好ましくは少なくとも50ヌクレオチド)、またはそれがハイブリダイズする核酸の長さの少なくとも1%(より好ましくは少なくとも25%、または少なくとも50%、または少なくとも70%、そして最も好ましくは少なくとも80)である長さを有し、それがハイブリダイズする核酸と少なくとも50%(より好ましくは少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、または少なくとも99%、そして最も好ましくは少なくとも99.5%)の配列同一性を有する。ここで配列同一性は、上記により詳しく記載されるように、重複部分と同一性を最大化する一方、配列ギャップを最小化するように並列された、ハイブリダイズする核酸の配列を比較することによって決定される。
核酸の同一性パーセントは、視覚的検査および数学的計算によって決定することが可能である。あるいは、2つの核酸配列のパーセント同一性は、目視検査と数学的計算により決定可能であるか、またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マジソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereuxら、1984、Nucl.Acids Res.12:387)。この「GAP」プログラムの使用により、2つの核酸配列の比較の他に、2つのアミノ酸配列の比較、核酸配列とアミノ酸配列との比較を行うことができる。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide SequenceおよびStructure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、GribskovおよびBurgess,Nucl.Acids Res.14:6745,1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry,1993)により決定され;WoottonおよびFederhen,1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol.266:544−71も参照されたい)、または、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(Computers and Chemistry,1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul,1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
好ましい態様において、tPAをコードする核酸には、配列番号2の塩基配列から1つまたは数個の欠失、置換、および/または付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質を含む。「数個」とは、好ましくは、2ないし20個、より好ましくは2ないし10個、さらに好ましくは2ないし5個、最も好ましくは2または3個である。好ましい態様において、1つまたは数個の欠失および/または付加によって、コドンの読み枠がずれフレームシフトすることにより、タンパク質の二次構造以上の高次構造は変化しない。しかしながら、フレームシフトの起こる部位がtPAコード配列の3’末端に近く、タンパク質全体の構造および/または機能に与える影響が小さければフレームシフトを起こす欠失および/または付加も許容されうる。当業者は、周知の遺伝子工学的手法により、Sambrookら(2001)(上述)等に記載の、例えば部位特異的突然変異誘発法を使用して、所望の欠失、挿入または置換を施すことが可能である。
本発明の医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸をベクター中に挿入して投与することも可能である。本発明における「ベクター」とは、プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸を、造血幹細胞等に導入し、その細胞中に所望の遺伝子産物を発現させるものであればどのようなものであってもよい。
好ましい態様においては、ベクターは、プラスミド、ウイルスまたはファージ等であり、さらに好ましい態様においてはプラスミドまたはウイルスである。プラスミドは、核酸によりコードされているプラスミノーゲン活性化因子を発現できるものであればどのようなものでもよい。好ましい態様において、プラスミドは、構成的に発現するプロモーターまたは造血幹細胞等においてのみに発現するプロモーターを有する。このようなプラスミドを造血幹細胞等にインビトロで導入し、これを生体内に静脈注射等により配送することも可能である。プラスミドを造血幹細胞等にインビトロで導入する方法は広く知られており、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法またはエレクトロポレーション法などがある。リポフェクション法に使用される試薬は市販されており、例えば、Effectene(Qiagen)、LipofectAMINE(Invitrogen)等がある。
本発明の医薬組成物に適したプラスミドは、限定されるわけではないが、pcDNA3、pMXs−IRES−GFP、pMYs−IRES−GFP等があり、また適したプロモーターとしては、例えばCMVおよびLTR等がある。また、使用されうるウイルスも特に限定されない。しかしながら、好ましい態様において、ウイルスはアデノウイルス、レトロウイルスまたはレンチウイルス等公知のウイルスが使用される。このようなウイルスの作成方法は公知である。ウイルスは生体内に直接配送しても、インビトロで造血幹細胞等に導入し、その造血幹細胞を生体内に配送してもよい。
(2)CFU−S、CFU−Cおよび/またはこれらの細胞から分化可能な血球細胞を増殖、分化および/または循環系内へ動員させるための医薬組成物
本発明は、造血幹細胞から分化したCFU−S、CFU−C、CFU−GEMM、CFU−E、CFU−GM等の造血系細胞に分化し得る細胞、好ましくはCFU−S、CFU−Cおよび/またはこれらの細胞から分化可能な血球細胞を増殖、分化および/または循環系内へ動員させるための医薬組成物を提供する。本医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる。これは、マウスにtPAを投与することにより、末梢血中のCFU−SおよびCFU−Cの数が増加した、という本発明の知見に由来する。また、本発明は、実施例5、12および15等によっても裏付けられる。
本発明の医薬組成物において、「プラスミノーゲン活性化因子」および「プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸」は、「(1)造血幹細胞を増殖、分化および/または循環内に動員させるための医薬組成物」の定義と同じである。
「CFU−S(colony forming unit−spleen)」とは、造血幹細胞から分化した極初期の細胞であり、特定の血球細胞に分化する系統限定幹細胞である。また、CFU−Sは自己複製により増殖することも可能である。CFU−Sの子孫は多くの細胞種に分化可能であるために、CFU−Sは多能性を有すると考えられている。CFU−Sから分化可能な血球細胞は、具体的には、赤血球、血小板、顆粒球(好中球、好酸球および好塩基球)、マクロファージ並びにリンパ球などが含まれる。
「CFU−C(colony forming unit−culture)」とは、CFU−Sからさらに分化した細胞であり、複数の種類の血球細胞に分化可能な系統限定幹細胞である。CFU−Sと同様に、CFU−Cは自己複製により増殖することも可能である。CFU−Cから分化可能な血球細胞は、具体的には、顆粒球(好中球、好酸球および好塩基球)並びにマクロファージが含まれる。
本発明の医薬組成物によれば、CFU−SおよびCFU−Cの細胞数を増殖、分化および/または循環系内へ動員させることが可能であり、これらの細胞から分化可能な血球細胞を増加させることができることは、当業者が認めるであろう。
本発明の医薬組成物は、好ましくは、CFU−SをCFU−Cの細胞数を増加させる。
(3)インビトロで造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、および/または分化させる方法
本発明は、インビトロで造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、および/または分化させる方法を提供する。本方法は、細胞をプラスミノーゲン活性化因子を含む培養培地中で培養することを含む。本方法は、マウスからソーティングしたLin−細胞にtPAを添加することにより、CFU−Cの細胞数が劇的に増加したという、本発明の知見に基づく。また、本方法は実施例9、12および14等によっても裏付けられる。
本発明の方法において、「プラスミノーゲン活性化因子」および「プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸」は、「(1)造血幹細胞を増殖、分化および/または循環内に動員させるための医薬組成物」の定義と同じである。
「培養培地」とは、細胞を培養するための培養液をいう。造血幹細胞に使用可能な培養培地は、造血幹細胞の未分化性を維持することが求められる。このような培養培地は、当該技術分野では公知である。例えば、StemPro−34 Serum Free Medium(インビトロジェン)、X−VIVO−15等、任意の公知の培地が使用可能である。
「培養する」とは、細胞を培養培地中において維持・増殖させることをいう。造血幹細胞および未分化造血前駆細胞等の細胞を培養する培地および添加物、並びに培養方法は当該技術分野で公知である。しかしながら、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞を培養する場合、好ましくはこれらの細胞の未分化状態を維持したまま培養する。このような目的のために使用される添加物としては、SCF(stem cell factor)およびTPO(トロンボポエチン)等のサイトカインがある。また、所望によりFlt3リガンドおよび/またはIL−6等のサイトカインを添加してもよい。また、これらのサイトカインは、それらの生理的機能を有するならば容易に産生されるように改変された組換え体であってもよい。培養は、5%CO、37℃のCOインキュベーター中で行うことが望ましい。
本発明の一態様において、造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを、フィーダー細胞と共に培養することも可能である。このようなフィーダー細胞としては、間質細胞、好ましくはMS−5細胞が挙げられる。
本発明の方法によれば、図4Dが示すように、CFU−Cの細胞数が増加した。よって、好ましい態様において、本発明の医薬組成物はCFU−Cの細胞数を1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上、より好ましくは2.4以上増加させることが可能である。
(4)血球減少状態を治療および/または予防するための医薬組成物
本発明は、血球減少状態を治療および/または予防するための医薬組成物を提供する。本医薬組成物は、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる。
本発明の方法において、「プラスミノーゲン活性化因子」および「プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸」は、「(1)造血幹細胞を増殖、分化および/または循環内に動員させるための医薬組成物」の定義と同じである。
プラスミノーゲン活性化因子またはそれをコードする核酸を含む医薬組成物は、適切な方式で患者に投与される。例えば、プラスミノーゲン活性化因子またはそれをコードする核酸あるいはそれらを含む医薬組成物は、静脈内、経皮、皮内、腹腔内、筋内、鼻腔内、硬膜外、経口、局所、皮下、またはいずれかの他の適した技術により投与可能である。好ましくは、静脈内または腹腔内に投与される。最適な薬剤処方は、意図される投与経路、搬送形式および望ましい投薬量に応じて、当業者が容易に決定可能である。
本発明の医薬組成物により血球の減少状態が治療および/または予防される。血球の減少状態とは、例えば以下の状態からなる群よりなる:造血器腫瘍などに対する化学療法・放射線治療後の血球(白血球、赤血球および血小板)減少状態、並びに再生不良性貧血および骨髄異形成症候群などの造血不全症等の疾患。しかしながら、これらに限られず、通常よりも血球数が少ない状態であれば、本発明の医薬組成物により治療または予防される対象となる。
ここで、「治療および/または予防」とは、哺乳動物、特にヒトの上記疾病(血球の減少状態)の治療および/または予防を含み、例えば以下の(a)〜(c)を含む:
(a)疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
(b)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;
(c)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こすこと。
また、「(1)造血幹細胞を増殖、分化および/または循環内に動員させるための医薬組成物」において記載される態様および用量等は、本発明の治療および/または予防するための医薬組成物にも適用可能である。
本発明の医薬組成物により、血球が減少状態にある患者を治療することや、血球減少状態を予防することが可能になる。また、プラスミノーゲン活性化因子は、これまでに大きな副作用を示すことなく臨床的に使用されている古典的な線維素溶解因子である。そのため、副作用を引き起こすことなく上記効果を達成することが可能である。
以下、実施例によって本発明を説明するが、実施例は例証のためのものであり、本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲の記載に基づいて判断される。さらに、当業者は本明細書の記載に基づいて、容易に修正、変更を加えることが可能である。
実施例は、特に記載しない限り、以下の方法により行った。
統計分析
結果を平均±SEM(標準誤差平均)として表す。対応のない2テール・スチューデントt検定を用いてデータを分析した。<0.05のP値を有意と見なした。
材料および方法
動物。C57BL/6Jバックグラウンドに、21世代、戻し交配したマウスを、ヘテロ接合体交配することによって、年齢(6〜8週齢)および性別をマッチさせたPlg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを得た(非特許文献11)。CD1マウスに>10回戻し交配した後のMMP−9+/+マウスおよびMMP−9−/−マウスを用いた(非特許文献1)。ろ過した無菌空気Thorensten装置中でマウスを維持した。動物処置は順天堂大学の施設内動物実験委員会に認可された。
骨髄抑制モデル。Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスまたはMMP−9+/+マウスおよびMMP−9−/−マウスに、骨髄抑制剤5−FU(250mg/kg体重、協和発酵工業、日本・東京)を注射した。毎日、1.25x10 IU/kg体重の濃度で、ヒト組換えtPA(エーザイ、日本・東京のご好意により提供)またはPBSをマウスに腹腔内注射した。生存を毎日監視した。示した時点で血液を抜き取った。
BM移植研究。Plg+/+(Ly5.2)マウスまたはC57BL/6(Ly5.1)マウスのいずれかから得たBM細胞を、致死的に放射線照射した(9.5Gy)C57BL/6(Ly5.1)マウスに静脈内注射した。異なる時点で末梢血を抜き取って、そして末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。Ly5.1−PEおよびLy5.2−FITC(BD Biosciences Pharmingen)に関してPBMCを染色し、そして蛍光活性化細胞分取(FACS)によって分析した。
in vivoの増殖因子投与。100μlの0.5%BSAに再懸濁したSDF−1(400ng/マウス、Pepro Tech NJ、1日2回注射)またはVEGF(300ng/マウス、Pepro Tech NJ、1日1回注射)を、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに5日間腹腔内投与した。対照群には、100μlの0.5%BSAを同様に注射した。異なる時点で血液および血漿試料を収集した。
末梢血分析。示した時点で、ヘパリン処理毛細管を用いて、後眼窩出血によって、マウスから血液を収集した。白血球(WBC)数を測定した。Lympholyte−M(Cedarlane、カナダ・オンタリオ州)を用いて、不連続勾配上の遠心分離後、ヘパリン処理血液からPBMCを単離した。さらに分析するまで、血漿試料を−80℃で保存した。
CFU−Sアッセイ。組換えtPAでの処置の開始後、第1日、第2日、第3日、第5日および第10日に、動員されたPBMCを得た。各時点について、3匹のレシピエントの同系マウスに、137Cs γ線供給源から、〜0.90Gy/分の線量率で、9Gyを放射線照射して、内因性脾臓コロニーの産生を妨げた。放射線照射完了後、数時間以内に、10 PBMCを放射線照射マウスの尾静脈にi.v.注射した。マウスを12日後に屠殺し、そして脾臓を取り除き、そしてブアン固定液中で固定した。次いで、肉眼で見える脾臓コロニー数をスコアリングした(非特許文献12)。
組織学的評価。ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)またはMSB三色染色(コラーゲンは青に染まり、一方、細胞質および赤血球は赤/オレンジに染まり、そして核は黒に染まる)で、脱パラフィン処理したBM切片を染色した。さらに、記載されるように(非特許文献1)、MMP−9に関してもBM切片を染色した(7−11C)。フィブリン(フィブリノーゲン)に関してもまた、脱パラフィン処理したBM切片を染色し(非特許文献11)、その後、Alexa 488標識二次抗体(Molecular Probes, Inc)でも染色した。
また、BM切片をヒアルロニダーゼで前処理し、スキムミルクでブロッキングし、そしてウサギ抗ヒトPlgポリクローナル抗体(H−90、サンタクルズ、1/100希釈)で1時間インキュベートした。catalyzed signal amplification II system(Dako)の後に、スライドをDABで発現させ、H&Eで対比染色した。
競合移植実験
Plg+/+またはPlg−/−マウス由来の1x10BMMCを2x10 CD45.1細胞と混合し、そして造血に対する比較寄与を、CD45.2、GR−1、B220またはCD3に対する抗体を使用してPBMC中のドナー由来の3系統の寄与の%を解析することにより評価した。
他の実験においては、致死量の放射線を照射されたLy−5.1マウスに、Plg+/+およびPlg−/−マウス由来の10、50または100KSL(c−Kit+/Sca−1+/lin−)細胞(細胞濃縮当たり10レシピエントマウス)を、5x10 CD45.1正常BM競合細胞とともに投与した。そしてPB中のCD45.2の比率を、移植後7ヶ月後にアッセイした。
長期間移植
Plg+/+またはPlg−/−マウス(CD45.2+)由来の1x10、4x10または2.5x10BM細胞を、致死量の放射線(900cGy)を照射された遺伝的背景が同一なCD45.1マウスに尾静脈投与により移植した。もう1つの一連の実験では、CD45.1マウス由来の1x10、4x10または2.5x10BM細胞を、致死量の放射線を照射された遺伝的背景が同一なPlg+/+またはPlg−/−(CD45.2+)レシピエントマウスに移植した。ドナー寄与%を、移植後90日のレシピエントマウス中の末梢血白血球上のCD45.1およびCD45.2を計測することによって計算した。各レシピエントグループから6匹のマウスを解析した。処理群間の比較を、両側(two−tailed) Student’s t−testを用いて行い、そしてデータを平均(M)±標準誤差(SEM)としてプロットした。
インビボtPA投与
マウスに、全3日間の間、毎日1.25x10IU=1mg/kg(体重)の濃度でヒト組換えtPAを、またはPBSを腹腔内に投与した。(ヒトの臨床において組換えtPA用量は10mg/kgである)。血液および血漿試料を各時点で回収した。
in vitroアッセイ
Lin−細胞分離
大腿および脛骨をフラッシュ処理して、マウスからBM細胞を得た。Lin細胞分離のため、商業的に入手可能な抗体カクテル(Stem Cell Technologies、バンクーバー)を用いて、細胞を染色した。2MACSカラム(Miltenyi Biotec)に通した後、c−KitおよびSca−1に対する抗体を用いてLin−細胞を染色した。FACS分析によって、分離したLin−細胞の90%より多くが、c−Kit/Sca−1二重陽性細胞であることが明らかになった。
ネズミBM培養
5−FUを含み/含まず処置した後に単離した、Plg+/+およびPlg−/− BM細胞由来のネズミBM細胞(1x10)を、血清不含培地(X−VIVO−15)中、一晩置いた。酵素電気泳動法によって培養上清を分析した。
懸濁培養(間質細胞補助なし)
血清不含培地中、組換えKitL(2μg/ml、PeproTech)を加え/加えず、組換えtPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標)、エーザイ社、日本)の存在下/非存在下で、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来のBM由来Lin−細胞(1.0x10)を一晩培養した。次いで、細胞を採取し、c−Kit−FITC抗体(Becton Dickinson)で標識し、そしてFACSによってc−Kit発現に関して分析した。
間質細胞株培養
Plg+/+マウスのBM由来の1x10 Lin−細胞を、間質細胞(MS−5)の集密(confluent)層と一緒に、培養下に置いた。組換えtPA(5μg/ml)を培養に毎日添加した。KitL(2μg/ml)を培養に一日おきに添加した。7日後、トリプシン(Sigma)を用いて接着細胞を回収し、そして非接着細胞と一緒にプールした。造血細胞総数を計数した。次いで、細胞を造血前駆体アッセイに供した。
別のセットの実験では、Plg+/+マウスのBMから、1.2x10 Lin−細胞を単離し、そして組換えtPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標)、エーザイ社、日本)の存在下/非存在下で、c−Kitに対する遮断抗体(クローンASK、最終濃度0.5μg/ml)、SCF(KitL)に対する遮断抗体(最終濃度0.5μg/ml、R&D Systems)を含み/含まず、PAI−1(2μg/ml、Calbiochem)または毎日、最終濃度1nMのMMP阻害剤(CGS27023A、Novartis、スイス・バーゼル)を含み/含まず、MS−5間質細胞と共培養した。5日後、培養を終わらせ、そして接着細胞および非接着細胞を収集した。造血細胞を計数した後、細胞を造血前駆体アッセイに供した。
別のセットの実験では、MS−5間質細胞を、血清不含培地中、tPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標)、エーザイ社、日本)の存在下/非存在下で培養した。細胞上清を−30℃で保存し、そして次いでELISAによってKitL放出に関して分析した。
長期培養始原細胞アッセイ
20%ウマ血清(Gibco)、およびヒドロコルチゾン(10−6mol、Sigma)を含有する長期培養培地中の間質層(MS−5)培養に、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来のBM細胞を添加した。5日ごとに、培地の半分に新鮮な長期培養培地を補充した。培養3週間後、接着細胞および非接着細胞を収集し、造血細胞数を測定し、そして細胞を造血前駆細胞アッセイに供した。CFU−C数を測定した後、CFU−C総数を4で割ることによって、長期培養始原細胞の絶対数を計算した。
造血前駆体アッセイ
mIL−3(10ng/ml)、ネズミKitL(50ng/ml)、ヒトIL−6(10ng/ml)およびヒト・エリスロポエチン(3単位/ml)を含有する、商業的に入手可能なメチルセルロースに基づくアッセイ(Methocult、Stem Cell Technologies、バンクーバー)1ml中、PBMC(10細胞/プレート)またはLin−細胞(5x10細胞/プレート)を3つ組で蒔いた。第7日、倒立顕微鏡(40x倍率)でスコアリングを行った。
サイド・ポピュレーション細胞分析
以下のフィルターセット:Hoechstブルーを検出する405/30バンドパス(BP)、Hoechstレッドを検出する585/42BP、およびHoechstブルーからHoechstレッドを分離する440−ロングパス二色フィルターを含むMoFlo(DakoCytomation)を用いて、全BM細胞を蛍光活性化細胞分取(FACS;BD Biosciences)に供した。ベラパミルで処理した細胞サブセットが、SPゲートの同一性を確認した。
基質酵素電気泳動法(基質ザイモグラフィー)
5−FUを単回注射した後、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスからBM細胞(1x10)を収集し、そして血清不含培地中で一晩培養した。ゼラチン−アガロースビーズで上清を処理して、ゼラチナーゼを濃縮し、そして0.1%ゼラチンを含有するドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)を通じてプロセシングした。2.5%TritonX−100中、室温で1時間インキュベーションし、そして冷水中でリンスした後、低塩コラゲナーゼ緩衝液(50mmol/l Tris、pH7.6、0.2mol/l NaCl、5mmol/l CaCl、および0.2%体積/体積 Brij−35)中に、37℃で14〜18時間、ゲルを置いた。0.2%クーマシーブルー・ストック10mlおよび脱染剤(DW、メタノールおよび氷酢酸、6:3:1)190mlを含有する溶液でゲルを30分間染色し、そして室温で1時間放置した後、ゼラチン溶解活性のバンドが視覚化された。プロMMP−2標準(Oncogene Research Products、ケンブリッジ)を陽性対照として、そしてゼラチン溶解バンドの分子量を決定するために、用いた。
ウェスタンブロット分析
プラスミノーゲン抗体(クローンE−14、Santa Cruz)を用いてウェスタンブロットし、そしてECL化学発光(Amersham Pharmacia−Biotech)を用いて視覚化することによって、5−FU処置前および処置後に採取した、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来の血漿試料を分析した。
FACS分析
5−FU処置後のPlg+/+マウスおよびPlg−/−マウスのBM細胞をCD11b−FITC抗体およびGR1−PE抗体とインキュベーションし、そしてFACSによって分析した。細胞をエタノールで固定し、そしてヨウ化プロピジウムで標識した後、FACSを用いて、BM細胞倍数性を分析した。
細胞周期分析のため、全BM細胞をSca−1−FITCで標識した。標識したBM細胞を、氷冷エタノール中、30分間固定した。RNアーゼ(Sigma、ミズーリ州)処理後、ヨウ化プロピジウム(Molecular Probes、オレゴン州)で細胞を染色した。フローサイトメトリーによって、SCA−1+細胞のDNA含量を決定した(非特許文献1)。
もう1つの一連の実験において、Lin−細胞をBMから単離し、Sca−1−FITC染色をし、そして細胞周期解析をする前にヨウ化プロピジウムを実行した。サイドポピュレーション細胞解析のために、以下のフィルターセットを有するMoFloを使用して、全BM細胞を細胞活性化細胞選別(FACS;BD Bioscience)に供した:ヘキストブルーを検出するための405/30バンドパス(BP)、ヘキストレッドを検出するための585/42BP、およびヘキストレッドをヘキストブルーから分離するための440−long pass dichromicフィルター。ベラパミルで処理された細胞のサブセットは、SPゲートの同一性を確認した。
KitL、並びにプロMMP−9および活性MMP−9に関するイムノアッセイ
血漿または培養上清中、商業的に入手可能なELISA(R&D Systems)を用いて、KitL(SCF)およびプロMMP−9を測定した。MMP−9活性アッセイBiotrakTN系ELISA(Amersham Biosciences、英国)を用いて、活性MMP−9を分析した。
培養上清
(a)5−FU処理したPlg+/+およびPlg−/−マウス由来のBM細胞(1x10)を回収し、一晩無血清培地中で培養した。(b)MS−5細胞を6ウェルプレート(Falcon)中で集密になるまで増殖させ、そして次いで一晩無血清培地中tPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標))に暴露した。(c)Plg+/+マウス由来のBM由来lin+細胞(1x10)を、一晩無血清培地中で、組換えtPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標))の存在下/非存在下で培養した。これら培養物の培養上清を回収した。上清(a)−(c)を基質ザイモグラフィーまたはELISAにより解析した。
あるいは、集密MS−5細胞または初代集密間質細胞を、tPA(5μg/ml、クリアクター(登録商標))の存在下、PAI−1(2μg/ml、calbiochem)または1nMの終濃度でMMP阻害剤(CGS27023A、Novartis、バーゼル、スイス)ありで/なしで毎日培養した。細胞上清を−30℃で保存し、そしてついでELISAによりKitLの放出について解析した。
RNA抽出
全RNAを、Trizol試薬を使用して、酸グアニジンチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出により、4週齢のLTC間質およびMS−5細胞より抽出した。
RT−PCT解析
RT−PCTを、One Step RNA PCRキット(AMC)(タカラ酒造、日本)を製造業者の推奨する方法で使用して実行した。すべてのプローブを、全RNA抽出物の完全性を試験するために、βアクチンプライマー 5’−TGGAATCCTGTGGCATCCATGAAAC−3’(センス鎖)および5’−TAAAACGCAGCTCAGTAACAGTCCG−3’(アンチセンス鎖)を使用して、事前に選別した。これらのプライマーは、349bpの産物を生じた。tPAに対するプライマー配列は、5’−CTGAGGTCACAGTCCAAGCAATGT−3’(センスプライマー)、および5’−GCTCACGAAGATGATGGTGTAAAGA−3’(アンチセンスプライマー)であり、564bpの産物を生じる。プラスミノーゲンに対するプライマー配列は、5’−TGTGGGCTCTAAAGATGGAACTCC−3’(センスプライマー)、および5’−GACAAGGGGACTCGCTGGATGGCTA−3’(アンチセンスプライマー)であり、268bpの産物を生じる。
統計解析
結果を、平均±SEM(標準誤差)として表した。データを不対(unpaired)両側Student’s t−testを使用して解析した。<0.05のP値を有意とした。
実施例1
本実施例では、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを用い、Plgが幹細胞ニッチの非常に重要な構成要素であること、およびMMP活性化の潜在的な上流ターゲットであることを確認した。
本発明者らは、Plg遺伝子がホモ接合的に破壊されたマウス(非特許文献11)およびストレス造血のモデルを利用した。細胞周期細胞毒性薬剤である5−フルオロウラシル(5−FU)によって誘導された骨髄抑制は、活発に細胞周期が循環しているHSCおよび前駆細胞のアポトーシスを生じたが、G期のHSCには影響を及ぼさなかった(非特許文献13)。5−FUを投与されたPlg−/−マウスはすべて、5−FU注射の10日後までに死んだが、Plg+/+マウスは5−FU処置を受けても生き延びた(図1A)。循環白血球(WBC)および血小板は回復を示した(図1B、C)。総BM細胞CD11b+/GR−1+骨髄細胞、並びに2N期および4N期の未成熟巨核球前駆体の再生は、Plg+/+マウスでは起きたが、Plg−/−マウスでは起きなかった(図1D、E、F、G)。しかし、Plg−/−マウスでは、高倍数(>N16)のより分化した巨核球細胞が集積した(図1G)。これらのデータは、ストレスが誘導する巨核球細胞および骨髄細胞再生/成熟が、Plgの非存在下で遮断されたことを示す。
造血再生中、静止幹細胞(G/G)は細胞周期に進入する。安定状態条件下で、Plg−/−マウスは、より多くのBM由来Sca−1+細胞を有した。これは、野生型対応物に比較した際、細胞周期のG/G期にある幹細胞数の大まかな見積もりとなる(図1H)。骨髄抑制によって、野生型幹細胞分画は、細胞周期のS期にシフトし、それによって造血再生が促進された。しかしこの細胞周期遷移は、Plg欠損細胞では起きず(図1H)、Plg−/−マウスにおいて、BM再生が損なわれているのは、細胞周期進行が遮断されるためであることが暗示された。
実施例2
本実施例では、Plg以外の種類の遺伝子欠損マウスを用いて、Plgが幹細胞増殖等に重要であるか否かを検討した。
uPA、tPA(n=5、データ未提示)またはウロキナーゼ・プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)(n=6、データ未提示)単一欠損マウスを5−FUで処置した場合、Plg−/−マウスとは対照的に、マウスは死亡しなかった。しかし、u−PA/tPA二重欠損マウスの3分の1は、5−FU注射後、数日以内に死亡した(データ未提示)。BM回復は、tPAおよび/またはu−PAによる活性化を介して、静止幹細胞の細胞周期へのシフトを促進し、そして細胞特異的系譜への分化を補助するが、この間、Plgが必要であることが、これらのデータから示唆される。
実施例3
本実施例では、5−FU投与後のBM再生期におけるMMP−9およびKitL等の発現量の変化を検討した。
5−FU処置した野生型動物の血漿のウェスタンブロッティングによって、BM再生期中にPlgがプラスミンに変換されることが示された(図2A)。Plg活性化は、MMPの活性化を導くことも可能である。本発明者らは、5−FU処置の5日後および10日後のPlg+/+動物から得た培養BM細胞の上清において、プロ−MMP−2およびプロ−MMP−9の増加を、特に活性MMP−9の増加を見出した(図2B)。一方、これらはPlg−/−マウスでは同程度に高くはなかった。しかし、免疫反応性MMP−9およびMMP−9活性化は、5−FUで処置したPlg−/−マウスのBMでは減弱していた(図2B、C)。同様に、5−FUで処置したPlg+/+マウスの血漿において、Plg−/−マウスと比較して、高レベルの活性MMP−9およびプロMMP−9が検出可能であった(図2D、図5A)。これらのデータは、骨髄抑制後の再生期中のBM細胞におけるMMPの活性化と関連付けられる。
プラスミンがMMP類を活性化するのであれば、MMP−9に制御される幹細胞活性サイトカインであるKitL(非特許文献1)の血漿レベルは、5−FU処置後のPlg−/−マウスで低いはずである。これは実際そのとおりであった(図2E)。組換えKitLを毎日注射すると、骨髄抑制後のPlg−/−マウスの生存が部分的に回復し(図2F)、そしてBM細胞回復が促進された(図2G、H)。これにより、本発明者らは、Plg−/−マウスにおいて、造血回復が欠如していることを、KitL放出が損なわれていることに関連付けることが可能となった。したがって、Plg−/−マウスにおける造血回復欠損は、部分的に、造血ニッチを補充するのに必要な十分量の可溶性KitLが産生不能であることによって、説明可能である。
実施例4
本実施例では、活性MMP−9を増加させる因子を用い、PlgがMMPを介して幹細胞動員を引き起こしているかを検討した。
プラスミンがMMP類を活性化するのならば、Plg−/−マウスでは、これらの因子による幹細胞動員が損なわれているはずである。実際、Plg−/−マウスでは、組換えSDF−1が誘導する(非特許文献14)、活性MMP−9(図3A)、プロMMP−9(図5B)、WBC(図3B)および造血前駆体(図3C)の増加が欠損していた。同様に、血管新生因子VEGFを投与すると、先に報告されたように(非特許文献12)、Plg+/+マウスにおいては、血漿中のプロMMP−9(図5C)および活性MMP−9(図5D)が増加し、そしてWBC数(図3D)、造血前駆体(図3E)が増大したが、Plg−/−マウスではそれほどではなかった。MS−5間質細胞をVEGFと一晩インキュベーションすると、RT−PCRによれば、tPA遺伝子発現が上方制御された(データ未提示)。これらのデータによって、ケモカインおよび血管新生因子が、Plg(おそらくtPAを介して)およびMMP類の両方を活性化することによって、幹細胞動員を促進することが示唆される。
実施例5
本実施例では、マウスにtPAを投与することにより、造血幹細胞または前駆体を循環内に動員可能であるか、または造血幹細胞を増殖可能であるかを確認した。
野生型マウスに組換えtPAを毎日注射すると、造血前駆体(コロニー形成単位細胞、CFU−C)(図3F)およびより未成熟な造血幹細胞(CFU−脾臓、CFU−S)が循環内に動員され(図3G)、そしてBM細胞充実度(cellularity)が増加した(図3H)。これらのデータは、tPA処置がBM細胞増殖を増加させることを示唆する。実際、キャリアで処置した動物に比較して、tPAで処置したマウスのBMでは、より多くのBM Sca−1+細胞が細胞周期のS期に進入した(図3I)。Plgの非存在下では、in vivoで、G/G期からS期への細胞周期進行が妨げられた(図1H)。これらのデータは、tPA−Plg軸が造血細胞周期進行を調節することを示唆する。
実施例6
本実施例では、tPAが仲介する細胞動員がMMP−9活性化に依存していることを確認した。
具体的には、組換えtPAを投与すると、BM中のMMP−9が上方制御された(図3J)。しかし、MMP−9欠損マウスに、組換えtPAと同時に5−FUを投与すると、BM再生低下が示された(図3K)。合成広範囲MMP阻害剤(MPI)もまた、tPAが仲介する前駆体および幹細胞動員を遮断した(データ未提示)。これによって、tPAの効果が、プラスミン仲介性MMP−9活性化を介して仲介されることが示される。
実施例7
本実施例では、PlgがKitLの放出に重要であることを確認した。
PlgがKitL放出に重要であり、そしてtPAがPlgをプラスミンに変換するのならば、tPAで処置した動物では、KitL血漿レベルの増加が見出されるはずである。これは実際、Plg+/+マウスにおいて、tPA処置後に見られ(図3L)、一方、tPAで処置したPlg−/−マウスでは、KitL血漿レベルはわずかに上昇したのみであった(図5E)(図4N)。これらのデータによって、tPAは、プラスミノーゲン依存方式で、KitL放出を改善することが示唆される。Plg経路がBM幹細胞増殖および分化に重要であるならば、Plg−/−マウスには、欠陥が見られる可能性もある。Plg−/−マウスは、c−Kit発現Lin−細胞数が減少しており、これは、野生型対照に比較して、未成熟細胞が多いことを反映する(図4A)。Lin−(大部分c−Kit)発現細胞のc−Kit強度は、KitL処置後に有意に減少し、c−Kit発現細胞の集積を生じた。tPAで処置すると、lin−Plg+/+細胞上のc−Kit発現はわずかに減少したが、lin−Plg−/−細胞には影響はなかった。一方、lin−(大部分c−Kit)発現細胞をtPAおよびKitLとインキュベーションすると、Plg+/+細胞ではc−Kit強度が劇的に減少し、c−Kit発現細胞の集積を生じたが、Plg−/−細胞ではこうした現象はなかった。これらのデータは、プラスミノーゲンの活性化が、c−Kit/KitL発現およびシグナル伝達を改変し、おそらくそれによって幹細胞の運命を変化させることを初めて示す。
実施例8
本実施例では、Plg+/+およびPlg−/−マウスのサイド・ポピュレーション細胞を検討することにより、Plgの幹細胞数に与える影響を確認した。
本発明者らは、ネズミHSC数の測定値として、ネズミ・サイド・ポピュレーション細胞(SP細胞)を評価した。実際、Plg−/−マウス中のSP細胞数は、Plg+/+マウスにおけるよりも少なかった(図5F)。Plg−/−マウスにおける幹細胞欠損は、Plg−/− BM細胞が、野生型対応物よりも少ない長期培養始原細胞(initiating cell)(LTC−IC)を生じることを示すことによって、in vitroで確認された(図5G)。さらに、骨髄移植アッセイにおいて、白血球抗原Ly5.2を発現するまたはPlg−/− BM細胞が、Ly5.1を発現するBM細胞を含む移植と競合する、Ly5.1競合移植アッセイでは、移植の4週間後および17週間後に分析したLy5.1+/Ly5.2+細胞比は、野生型対照に比較して、Plg−/−マウスにおいて、より高かった(それぞれ、1.0、1.0対0.4および0.4)。これらのデータを総合すると、Plg−/−マウスにおけるHSC数は、Plg+/+対照におけるより少ないことが示される。
実施例9
本実施例では、tPAが、幹細胞数に影響を及ぼすのに加えて、幹細胞微小環境/幹細胞ニッチを調節するかどうかをインビトロで検討した。
DexterによってネズミBM用に開発された長期培養系(非特許文献15)は、微小環境の構成要素を決定する、古典的なアッセイである。長期培養において、原始的な造血細胞は、間質層と会合し、そして典型的には、適切な培養条件を用いると何週間も骨髄前駆体および成熟顆粒球を生成可能である。
tPAは、MS−5間質細胞株の存在下で、培養中のLin−細胞の生存および増殖を改善した(図4B)。tPAおよびKitLは、これらの間質細胞に基づく培養において、相乗作用して、前駆体数(細胞増殖)を増大させた。これらのデータを総合すると、tPAが、Plg依存方式で、間質由来因子(単数または複数)の放出を促進することによって、前駆細胞増大を調節可能であることが暗示される。
実施例10
本実施例では、BM細胞がPlgまたはPlg活性体を産生可能であるかを研究した。その結果、tPAの投与により、免疫反応性Plgおよび免疫反応性MMP−9が発現することを確認した。
Plg mRNAは肝臓細胞にのみ検出可能であり、新鮮なままで単離されたBM Lin−細胞またはlin+細胞あるいは培養BM間質には検出できなかった(図4H)。一方、tPAは、Plg+/+およびPlg−/−マウスの両方のBM間質細胞および培養MS−5間質細胞において強く発現し、そして新鮮なままで単離されたPlg+/+およびPlg−/−マウス両方のlin+細胞またはLin−細胞では弱く発現していた。
tPAがPlgを活性化可能であるので、本発明者らは、tPAは同様にBM間質細胞においてMMPを活性化可能であると結論づけた。活性化MMP−9およびMMP−2も、組換えtPAとインキュベートされたMS−5(図4I)およびPlg+/+の動物からの新鮮なままで単離されたlin+細胞(図4J)でのザイモグラフィーにより検出された。免疫反応性Plgは、洞様BM血管の非常に近くに組換えtPAを注射後1時間で検出可能であり(図4K)、一方、tPAで処理した動物のBMにおける造血細胞および間質細胞は、免疫反応性MMP−9を発現した(図4L)。
実施例11
本実施例では、tPA処理によりKitLの放出が増大することを確認した。
潜在的な間質由来因子の1つがKitLである。したがって、本発明者らは、KitLを発現する接着性間質細胞(MS−5)等(非特許文献1)を、血清不含培養中、tPAで処理した。tPA処理は、MS−5間質細胞(図4C)および初代BM間質細胞(図4M)からのKitL放出を有意に増大させた。tPAの天然阻害剤であるPAI−1でMS−5間質細胞を処理すると、KitL放出は、対照上清におけるより低かった。これらのデータによって、MS−5細胞はまた、tPAも発現して、KitLの安定した状態の放出を維持していることが示唆された。実際、RT−PCRによって、MS−5細胞中にtPA mRNAが見出された(データ未提示)。重要なことに、tPAが仲介する、間質細胞からのKitLの放出は、MMP活性化を介して起こった:MMP阻害剤を添加すると、間質細胞からのKitL放出は完全に阻害された。これらのデータは、tPAで処置した動物の血漿をKitLに関して分析することによって、tPAがKitLの放出をin vivoで促進することを示した、我々の初期のデータ(図5E)を裏付けた。
実施例12
本実施例では、tPAが造血増殖因子として作用可能であるかを評価するために、インビトロおよびインビボの両方でのHSPC(造血幹細胞/前駆細胞)増大を評価し、tPAの投与によりCFU−S等の細胞が増殖することを確認した。
インビボのtPA投与は、野生型コントロールにおけるBM細胞数を有意に増大させたが、これはPlg欠損およびMMP−9欠損マウスの両方で弱められた(図6A)。tPAは、処理動物の未熟な脾臓コロニー形成単位(CFU−S)(図6B)、および長期培養開始細胞(long−term culture−initiating cell)(LTC−IC、図6C)の数、およびBM細胞のc−Kit+/Sca−1+/lin−(KSL)細胞比率(図6D)を増やした。長期間のtPAの投与は、持続的に上記の定常値と同様のBM細胞数を維持した(図6E)。これらのデータは、tPAは、前駆体増殖および細胞分化に影響する造血増殖因子として作用しうることを示す。
tPA仲介造血細胞増殖および分化がインビボでKitLに依存するかを試験するために、本発明者らはKit−L欠損S1/S1マウスおよびWBB6F1+/+コントロールマウスをtPAで処理した。BM細胞充実度(図6F)および未熟CFU−S前駆細胞の数(図6G)は、WBB6F1+/+動物ではtPA投与後2日までに増加したが、S1/S1マウスでは増加しなかった。まとめると、これらの実験は、tPAが造血細胞分化および増殖をBM間質細胞/BMニッチ細胞により提供されるKitLを放出することにより促進することが示された。
実施例13
本実施例では、PlgおよびMMP−9がtPA仲介BM再構成に必要であるがどうかを検討し、tPAの造血再構成の効果にはPlgおよびMMP−9が必要であることを確認した。
tPA仲介性造血がPlgおよび/またはMMP−9を必要とするかという疑問を解決するために、本発明者らは、5−FUでPlgおよびMMP欠損マウスを処理し、そして毎日組換えtPAと共にまたはなしで処理した。しかしながら、tPAは、Plg欠損マウスにおける生存性(図7A)、またはWBCの回復(図7B)、そしてBM細胞の数(図7C)を改善しなかった。興味深いことに、組換えtPAをPlg野生型マウスの骨に近い領域、骨芽細胞ニッチに投与した後に、強いPlg/プラスミン染色が免疫組織化学により検出された(図7D)。
同様に、5−FU処理MMP−9欠損マウスにおいて、BM細胞(図7E)またはWBC(図3K)の回復は遅れ、そして組換えtPAを毎日投与することでレスキューすることはできなかった。造血回復が遅れ、そしてMMP−9−/−マウスの約70%の死をもたらしたが、これはtPAの投与により妨げることはできなかった(図7F)。したがって、骨髄抑制後のtPAの造血再構成に対する効果は、PlgおよびMMP−9の両方の存在を必要とする。
実施例14
本実施例では、造血細胞に対する観察されたtPAの効果が、tPAにより直接的にまたは非直接的(例えば、BMニッチ中の間質細胞を経由して)に仲介されるかどうかを解明するために、本発明者らはインビトロにおける造血細胞増大に対するtPAの効果を調べた。その結果、tPAは、間質細胞をフィーダー細胞として使用することにより、インビトロにおける造血幹細胞の増殖を引き起こすことを確認した。
tPAは、間質細胞に基づいた培養(MS−5フィーダー層)においてのみLin−細胞の増殖を改善したが(図8A)、フィーダー層なしでは改善しなかった(図8B)。相乗効果で、tPAとKitLは、これらの間質細胞に基づいた培養における前駆体の数を増大する。比較可能な数の前駆体コロニーが、Plg+/+またはPlg−/−lin細胞を用いた培養において現れた(図8A、図3JおよびK)。これらのデータは、tPAはKitLのような間質由来因子の放出を促進することにより、前駆体細胞の増大を調節しうることを示す。
実施例15
本実施例では、tPA処置後のc−Kit/KitLシグナル伝達が細胞増殖を促進するか否かを確認した。
tPA処置後のc−Kit/KitLシグナル伝達が細胞増殖を促進するのであれば、シグナル伝達を遮断すると、tPAが誘導する前駆体増大/増殖が妨げられるはずである。c−Kitおよび/またはKitLに対する中和抗体を添加すると、間質細胞に基づく培養において、tPAが仲介するLin−細胞からのCFU−C生成が妨げられた(図4D)。同様に、これらの培養にPAI−1を添加すると、tPAが仲介するCFU−C生成が消滅した。tPAは、BM間質細胞において、プラスミン生成を介してMMP類も活性化するため、tPAが仲介する幹細胞増殖がMMP活性化に依存するのかどうかという疑問が生じる。本発明者らのin vivoデータを裏付けることに、合成MPIを添加した場合、前駆体産生が完全に遮断され、そしてtPAが仲介する前駆体増大が妨げられた。これらのデータによって、tPAが、プラスミンが仲介するMMP類の活性化、およびKitL放出を介して、幹細胞の運命を調節可能であることが示唆される。
実施例16
本実施例では、tPAは間質細胞存在下で効果を有したので、Plg欠損マウスにおいて観察された造血欠損が間質/ニッチ欠損のためであるかを調べた。その結果、Plg−/−マウスにおける造血細胞分化および増殖の減少に、BMニッチにおけるPlgの存在が重要であることが示された。
CD45.1ドナー細胞をPlg+/+またはPlg−/−レシピエントに移植したとき、移植後80日でのPB白血球に対するドナー細胞の寄与は、Plg−/−マウスにおいてより低かった(図8C)。このことは、限定細胞希釈(limiting cell dilution)で特に明らかであり、そしてPlg−/−レシピエントマウスにおけるドナー細胞の移植後80日でのマウス生存の減少と関連した(図8Dおよび図8E)。これらのデータは、BMニッチ欠損におけるPlgの欠失が、Plg−/−マウスにおける造血細胞分化および増殖の減少に重要であることを示唆する。
実施例17
本実施例では、BM再構成のためには、BMニッチ中のPlgの存在が重要であることが示された。
Plg欠損微小環境における幹細胞の細胞増殖の減少の問題を解消するために、本発明者らはPlg−/−またはPlg+/+マウス由来の非常に多くのBM細胞(2x10細胞/マウス)を、致死量の放射線を放射されたPlg−/−またはPlg+/+マウス中に移植した。このような条件下で、すべてのマウスは生存し、そして白血球数により決定されるように4週後には移植体を示した(WTマウスに移植されたWT細胞は7933±945/μl(血液)、WTマウスに移植されたKO細胞は7133±1815、KOマウスに移植されたWT細胞は6400±1697、KOマウスに移植されたKO細胞は7700±1556/μl(血液))。次いで、キメラマウスを骨髄抑制剤5−FUで処理した。Plg+/+またはPlg−/−BMドナー細胞のいずれかを移植したPlg欠損マウスは、骨髄抑制の誘導後最初の2週間で死亡した(図8F;1グループにつきn=9)。反対に、Plg+/+またはPlg−/−BMドナー細胞を移植したすべてのPlg野生型マウスは生存し(1グループにつきn=9)、このことは非造血区画であるBMニッチにおけるPlgの重要な役割を強調する。次いで、本発明者らは、減少した生存性およびPlg欠損BMニッチ内の幹細胞の分化がKitLの産生の減少のためであり、これが細胞増殖および分化の減少をもたらすかどうかを調べた。興味深いことに、Plg+/+レシピエントコントロールと比較して、より低いKitLレベルがPlg−/−レシピエントキメラマウス中で検出された(図8G)。これらのデータは、5−FUでの骨髄抑制後のBM再構成のために、BMニッチのPlg成分からのKitL放出の重要性を強調する。
Plgのフィブリンへの結合は、Plg活性を増進する(非特許文献18および19)。骨髄抑制後の野生型動物由来のBM切片の免疫組織化学染色は、Plgと同様にフィブリンが、最近骨芽細胞ニッチと言われる領域である骨の内側の骨芽細胞の非常に近くに検出されたことを明らかにした(非特許文献20および21)(図8H)。フィブリンの沈着は、骨髄抑制ストレス後のPlg−/−のBM中で観察され、Plg+/+マウスでより少ない程度ではあるが観察された。これらのデータは、tPA、Plgおよびフィブリンが骨芽ニッチ内に共に会合し、例えば、骨髄抑制後に線溶複合体の規則正しい局所活性をもたらすことを示唆する(図8I)。この線溶複合体は、今度はMMPのような他のプロテアーゼのカスケードをさらに活性化可能であり、そして増殖因子を生物学的に利用可能にし、細胞リクルートおよび細胞分化を促進することを助ける。
実施例18
本実施例では、in vivoの長期造血を維持するために、どの細胞構成要素がPlgに依存しているのかを理解するため、本発明者らは、Plg−/−マウスまたはPlg+/+マウス由来のBMを、致死的に放射線照射したPlg−/−マウスまたはPlg+/+マウスに移植することによって、キメラを発展させた。
血球数によって決定されるように、5週間後、すべてのマウスが移植を示した。Plg+/+またはPlg−/− BMドナー細胞のいずれかを移植したPlg欠損マウス(群あたりn=3)の3分の2は、2ヶ月以内に死んだ。対照的に、Plg+/+またはPlg−/− BMドナー細胞のいずれかを移植したPlg野生型マウスはすべて生存し(群あたりn=3)、間質区画内の宿主Plgが非常に重要な役割を持つことが強調された。BM移植の5週間後、血漿KitLレベルは、移植細胞(Plg+/+ドナー細胞220ng/ml対Plg−/−ドナー細胞231ng/ml)とは独立に、Plg+/+レシピエント・マウスにおけるものと同様であった。一方、Plg−/−レシピエント・マウスにPlg+/+ドナー細胞(136ng/ml)またはPlg−/−ドナー細胞(156ng/ml)を移植した後、血漿KitLレベルはより低かった。これらのデータは、BM間質ニッチの調節を介した造血制御において、Plgが非常に重要な役割を有することを強調し、そしてtPAが、KitLのような増殖因子を放出させ、tPAとKitLの両方が幹細胞プールを調節することによって、幹細胞ニッチ/微小環境を調節可能であるという我々の現在のモデルと一致する。
実施例19
本実施例では、フィブリノーゲン/フィブリンとPlg/プラスミンの2つの系が幹細胞ニッチに与える影響を検討した。
tPAは、フィブリンの非存在下では、Plgの非効率的な活性化因子であるが、フィブリンの存在下では、Plgの活性化が非常に増強される(非特許文献18、19および22)。フィブリンは、BM表面に沿って沈着する(非特許文献22)。本発明者らは、骨髄抑制ストレス後、MSB三色染色によって決定されるように、Plg−/−のBM中に広範囲にフィブリンが沈着するが、Plg+/+マウスではより低い度合いであることを見出した(図4E)。骨髄抑制後、幹細胞が常在するBM領域中に、免疫組織化学染色によって、フィブリンが検出可能であった(図4F):初期回復期中(骨髄抑制の3日後)、幹細胞は骨芽細胞と近接して(骨芽細胞ニッチ)常在し、そして後の時点(骨髄抑制の>6日後)では、血管ニッチと称される(非特許文献20)、骨髄腔の中央領域により多く見られる。我々のデータは、BMにおけるフィブリノーゲン/フィブリン対Plg/プラスミンという2つの対抗する系の間のバランスが幹細胞プールを制御可能であることを示唆する。
造血微小環境内の細胞遊走は、血液形成および血液細胞機能に非常に重要である。本発明者らの結果によって、tPAによるプラスミノーゲン活性化が、造血細胞におけるこの機能の重要な制御因子であることが示される(図4G)。MMP類の連続活性化を伴う、tPAによるプラスミノーゲン活性化は、特に幹細胞遊走、増殖および分化に関して、ユニークな生理学的役割を果たす。本発明者らは、2つの別個のプロテアーゼ系の活性化を伴うカスケードが、幹細胞プールおよび幹細胞ニッチからのその脱出の調節に非常に重要な役割を果たすと結論付ける。
また、tPAはBM細胞により発現され、そしてPlgはフィブリンと類似のニッチに発見される(図8I)。フィブリンは、PlgおよびtPAを含む線溶複合体を、HSPCが存在すると考えられるBMニッチの領域に局在させる。Plg/プラスミン系の活性化は、もう1つの重要なプロテアーゼカスケード、即ちMMPを活性化しうる。MMP−9の活性化は、KitLのような増殖因子を放出し、今度はこれが幹細胞ニッチ内の細胞増殖および分化を促進する。この過程は、BM内の造血細胞および末梢血を補充するのに役立つ。成人の造血の制御における線溶系の関与は、病態生理学および癌治療および再生医療に対する重要な示唆を持つ新たなパラダイムを表す。
図1Aは、プラスミノーゲン(Plg)+/+マウス(n=9)およびPlg−/−マウス(n=9)に単回用量の骨髄抑制剤5−FUをi.v.投与した後の、マウスの生存の評価を示す。 図1Bは、プラスミノーゲン(Plg)+/+マウス(n=9)およびPlg−/−マウス(n=9)に単回用量の骨髄抑制剤5−FUをi.v.投与した後の、WBC数を示す。 図1Cは、プラスミノーゲン(Plg)+/+マウス(n=9)およびPlg−/−マウス(n=9)に単回用量の骨髄抑制剤5−FUをi.v.投与した後の、血小板数を示す。 図1Dは、プラスミノーゲン(Plg)+/+マウス(n=9)およびPlg−/−マウス(n=9)に単回用量の骨髄抑制剤5−FUをi.v.投与した後の、大腿あたりのBM単核細胞(BMMC)総数を示す。 図1Eは、プラスミノーゲン(Plg)+/+マウス(n=9)およびPlg−/−マウス(n=9)に単回用量の骨髄抑制剤5−FUをi.v.投与した後の、示した日でのBM切片のH&E染色を示す。倍率x200。 図1Fは、プラスミノーゲン(Plg)+/+マウス(n=9)およびPlg−/−マウス(n=9)に単回用量の骨髄抑制剤5−FUをi.v.投与した後に、骨髄マーカーCD11b−FITCおよびGr−1−PEに関してBM細胞を染色し、そしてFACSによって分析した図を示す(上部パネル)。大腿あたりのCD11b+/GR−1+ BM細胞の絶対数を示す(下部パネル;p<0.05)。 図1Gは、プラスミノーゲン(Plg)+/+マウス(n=9)およびPlg−/−マウス(n=9)に単回用量の骨髄抑制剤5−FUをi.v.投与した後の、細胞倍数性をFACSにより示す。 図1Hは、5−FU処置後、示した時点で、BM細胞のDNA含量を示す。(n=3/群および時点)。p<0.05。 図2Aは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに単回用量の5−FUをi.v.注射した(各群、n=12)後の、Plgおよびプラスミンをウェスタンブロット分析によって検出した結果を示す(1時点あたり3匹の動物由来のプールした血漿)。 図2Bは、5−FU注射後、異なる時点でBM細胞(1時点あたり3匹のマウス由来)を得て、そして血清不含培地中で一晩培養した後の、ゼラチン酵素電気泳動法による、プロMMP−9(103kDa)、活性MMP−9(86kDa)、並びにプロMMP−2(72kDa)および活性MMP−2(62kDa)の発現量を示す。 図2Cは、5−FU注射9日後のプロMMP−9に関するBM切片の免疫組織化学を示す。倍率x200。Plg+/+マウスのBM区画には陽性染色があるが、Plg−/−マウスでは陽性染色がない。 図2Dは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに単回用量の5−FUをi.v.注射した後の、末梢血(PB)から得た血漿における、活性MMP−9量を示す。 図2Eは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに単回用量の5−FUをi.v.注射した後の、末梢血(PB)から得た血漿における、KitL量を示す。 図2Fは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを未処置で放置する(n=8)か、または組換えKitLの毎日のi.v.注射と組み合わせて、これらのマウスに5−FUを単回i.v.注射した(n=6)。処置動物の生存を毎日決定した(n=6、p<0.05)。 図2Gは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを未処置で放置する(n=8)か、または組換えKitLの毎日のi.v.注射と組み合わせて、これらのマウスに5−FUを単回i.v.注射した(n=6)。大腿あたりのBM細胞総数を示す。 図2Hは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを未処置で放置する(n=8)か、または組換えKitLの毎日のi.v.注射と組み合わせて、これらのマウスに5−FUを単回i.v.注射した(n=6)。5−FU処置10日後のBM切片のH&E染色を示す。倍率x200。p<0.05。 図3Aは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに、第0日〜第5日、組換えSDF−1をi.p.注射した(各群、n=6匹のマウス)後の、血漿中の活性MMP−9を示す。 図3Bは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに、第0日〜第5日、組換えSDF−1をi.p.注射した(各群、n=6匹のマウス)後の、WBC数を示す。 図3Cは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに、第0日〜第5日、組換えSDF−1をi.p.注射した(各群、n=6匹のマウス)後の、動員されたCFU−C数を示す。(群あたりn=3)。動員されたPBMCをコロニーアッセイで評価した。 図3Dは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに、第0日〜第5日、組換えVEGFを毎日i.p.注射した(群あたりn=6匹のマウス)後の、WBC数を示す。 図3Eは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスに、第0日〜第5日、組換えVEGFを毎日i.p.注射した(群あたりn=6匹のマウス)後の、PBMC中のCFU−C数を示す。 図3Fは、C57BL/6マウスに、組換えtPAまたはキャリア対照を毎日i.p.注射した(群あたりn=9)後の、循環CFU−C数を示す。 図3Gは、C57BL/6マウスに、組換えtPAまたはキャリア対照を毎日i.p.注射した(群あたりn=9)後の、CFU−Sによって、動員細胞の多分化能を評価した。 図3Hは、C57BL/6マウスに、組換えtPAまたはキャリア対照を毎日i.p.注射した(群あたりn=9)後の、大腿あたりのBMMC数を示す。 図3Iは、C57BL/6マウスに、組換えtPAまたはキャリア対照を毎日i.p.注射した(群あたりn=9)後に、BM Lin−細胞をヨウ化プロピジウムで標識し、そして細胞周期を分析した結果を示す(2回の独立実験、5匹のマウス/時点)。 図3Jは、tPA処置開始2日後のBM切片中のMMP−9に関する免疫組織化学を示す(倍率x200)。 図3Kは、MMP−9+/+マウスおよびMMP−9−/−マウスに、5−FUの単回用量を注射した後、組換えtPAまたはキャリアを毎日注射した(群あたりn=6)後の、WBC数を示す。 図3Lは、C57Bl/6マウスに組換えtPAまたはキャリアを毎日i.p.注射した後の、血漿KitLレベルを示す(n=9)。p<0.05。 図4Aは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来のLin−細胞を、KitLを含み/含まず、tPAの存在下/非存在下で一晩培養した(n=3)後に、c−Kit抗体で細胞を染色し、そしてFACSによって分析した結果を示す。 図4BはPlg+/+マウス由来のLin−細胞を、MS−5間質細胞上、KitLを含み/含まず、tPAの存在下/非存在下で7日間培養した後に、細胞を採取し、そして前駆体アッセイに供した結果を示す(n=6)。 図4C:集密MS−5間質細胞を、血清不含培地中、組換えtPA、PAI−1またはCGS27023Aで24時間処理した。24時間後、ELISAによって、放出KitLに関して上清を分析した結果を示す(n=2)。 図4D:Plg+/+マウス由来のLin−細胞を、血清不含培地中、集密MS−5間質細胞上で培養した(n=3)。tPA、PAI−1、c−KitまたはKitLに対する抗体、あるいはMPI(CGS27023A)を培養に5日間添加した。次いで、細胞を収集し、そして前駆体アッセイに供した結果を示す。 図4Eは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスの5−FU処置10日後のBM切片のMSB三色染色(矢印:青色フィブリン沈着)を示す。倍率x200。 図4Fは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを第0日に5−FUでi.v.処置した後の、各マウス由来のBM切片におけるフィブリン(緑色蛍光)に関する免疫組織化学染色を示す。 図4G:図4Gは、本発明におけるシグナルカスケードの概要を示す。tPAはプラスミノーゲンをプラスミンに変換し、そしてMMP−2およびMMP−9の産生を促進し、それによってKitLが放出される。tPA/プラスミノーゲン経路の活性化は、KitL産生を増加させた。 図4Hは、肝臓(レーン1;tPAに対する正のコントロール)、4週齢のPlg+/+マウス(レーン2)およびPlg−/−マウス(レーン3)のBM間質、MS−5細胞(レーン4)、Plg+/+マウス(レーン5)またはPlg−/−マウス(レーン6)由来の新鮮なままで単離されたBM由来Lin−細胞、並びにPlg+/+マウス(レーン7)およびPlg−/−マウス(レーン8)由来の新鮮なままで単離されたBM由来lin+細胞におけるtPAおよびPlgに対するRT−PCRを示す。 MS−5細胞を無血清状態下tPAのあり/なしで一晩培養した。図4Iは、MMP−2およびMMP−9についてザイモグラフィーにより解析した図である。 Plg+/+マウス由来のlin+BMMCを無血清状態下tPAのあり/なしで一晩培養した。図4Jは、MMP−2およびMMP−9についてザイモグラフィーにより解析した図である。 図4Kは、tPA処理開始後3日後のPlg+/+マウスのBM切片におけるPlgに対する免疫組織化学を示す(倍率x200) 図4Lは、tPA処理開始後3日後のPlg+/+マウスのBM切片におけるMMP−9に対する免疫組織化学を示す(倍率x200) Plg+/+初代BM間質細胞を、tPAありでまたはなしで、組換えtPA、組換えPAI−1またはMPI(CGS27023A)の存在下で無血清培地中で培養した。図4Mは、この培養上清を回収し、ELISAによりKitLについて解析した図である。 Plg+/+およびPlg−/−マウスに、0−2日に単回のtPAまたはPBSを腹腔内に投与した。tPAの投与後、各時点で血液を回収した。血漿試料を、ELISAによりKitLについて解析した(n=6;ELISAは2回行った)。 図5Aは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを、第0日の単回注射によって5−FUで処置した後の、プロMMP−9を示す。 図5Bは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを、5日間、1日2回の組換えSDF−1で処置した後の、プロMMP−9を示す。 図5Cは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを、5日間、毎日、組換えVEGFで処置した後の、プロMMP−9を示す。 図5Dは、示した時点でVEGF注射した後、活性MMP−9に関して、血漿試料を分析した結果を示す(群および時点あたり、n=3)。 図5Eは、tPAまたはPBS対照のi.p.注射で、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウスを処置し、3日後、血液を抜き取った。ELISAによって、KitLに関して、血漿試料を分析した結果を示す(n=2)。 図5Fは、ベラパミル処理後、MoFloを用いて、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来の全BM細胞を分析して、SP細胞を検出した結果を示す(n=3、典型的な実験の1つを示す)。 図5Gは、Plg+/+マウスおよびPlg−/−マウス由来のBM細胞を長期培養(LTC)に供し、そして大腿あたりのLTC始原細胞(LTC−IC)数を測定した結果を示す。p<0.05。 図6Aは、Plg欠損マウス、MMP−9欠損マウスおよび同腹のコントロールマウスに、0−2日に腹腔内に組換えtPAを投与し(短期間効果)、BM細胞を数えた結果を示す。 図6Bは、Plg+/+およびPlg−/−細胞のBM細胞をCFU−Sアッセイで解析した結果を示す(n=9)。 図6Cは、Plg+/+およびPlg−/−細胞のBM細胞をLTC−ICアッセイで解析した結果を示す(n=9)。 図6Dは、Plg+/+およびPlg−/−細胞のBM細胞を、KSL細胞の存在確認のためFACSにより解析した結果を示す(n=9)。 図6Eは、Plg+/+およびPlg−/−マウスに、0−5日に組換えtPAを投与し(長期間効果)、そしてBM細胞数を数えた結果を示す(n=9)。 図6Fは、S1/S1マウスおよびWBB6F1マウスを、tPAありで/なしで処理したときの、大腿当たりのBM細胞数を示す(n=5)。 図6Gは、S1/S1マウスおよびWBB6F1マウスを、tPAありで/なしで処理したときの、10細胞当たりのCFU−Sの数を示す。 図7Aは、Plg+/+およびPlg−/−マウスを単回の5−FU投与に続き毎日組換えtPAまたは担体を投与したときの、Plg+/+(1グループにつきn=9)およびPlg−/−マウス(1グループにつきn=9)の生存率を示す。 図7Bは、Plg+/+およびPlg−/−マウスを単回の5−FU投与に続き毎日組換えtPAまたは担体を投与したときの、WBC数を示す。 図7Cは、Plg+/+およびPlg−/−マウスを単回の5−FU投与に続き毎日組換えtPAまたは担体を投与したときの、大腿当たりのBM細胞数を示す。 図7Dは、tPAを共投与したまたはしないPlg+/+マウスのBM切片を、5−FU処理の2日後にPlgについて染色した染色図を示す(茶色の染色)。BM領域のPlg染色は、骨芽細胞ニッチとも言われる。 図7Eは、MMP−9+/+およびMMP−9−/−マウスを単回の5−FU投与に続き毎日組換えtPAまたは担体を投与したときの、大腿当たりのBM細胞数を示す。 図7Fは、MMP−9+/+およびMMP−9−/−マウスを単回の5−FU投与に続き毎日組換えtPAまたは担体を投与したときの、生存率を示す。n=12。p<0.05。 Plg+/+マウス由来のLin−細胞を、MS−5ストローマ細胞上でKitLありで/なしで、tPAの存在下/非存在下で培養した。図8Aは、その7日後における前駆体アッセイの結果を示す(n=6)。 tPA仲介細胞および前駆体増殖は間質フィーダー層の存在なしで起こらなかった。Plg+/+マウス由来のLin−細胞を浮遊培養で、KitLありで/なしでtPAの存在/非存在において培養した。図8Bは、4日後に回収したときの、細胞数(左)および前駆体アッセイの結果を示す(n=3)。 CD45.1で遺伝的背景が同一なドナーマウスからBM細胞を、限定細胞希釈で致死量の放射線を照射されたPlg+/+またはPlg−/−CD45.2+レシピエントマウスに移植した(n=6)。図8Cは、移植後80日でのマウスPB細胞ドナ−の寄与(CD45.1+細胞)を評価した図である。 CD45.1で遺伝的背景が同一なドナーマウスからBM細胞を、限定細胞希釈で致死量の放射線を照射されたPlg+/+またはPlg−/−CD45.2+レシピエントマウスに移植した(n=6)。図8Dは、Plg+/+BM細胞を受けたCD45.1レシピエントマウスの生存率を示す(n=9)。 CD45.1で遺伝的背景が同一なドナーマウスからBM細胞を、限定細胞希釈で致死量の放射線を照射されたPlg+/+またはPlg−/−CD45.2+レシピエントマウスに移植した(n=6)。図8Eは、Plg−/−BM細胞を受けたCD45.1レシピエントマウスの生存率を示す(n=8)。 致死量の放射線を照射されたPlg+/+またはPlg−/−マウスに、5−FU投与前16日に、Plg+/+またはPlg−/−ドナーマウス由来のBM細胞を移植した(各グループで、n=9)。BM細胞移植後、0日目に単回の5−FUを投与した。図8Fは、移植されたマウスの生存率を示す(Plg+/+レシピエントマウスの生存率をPlg−/−と比べて、p<0.05)。 致死量の放射線を照射されたPlg+/+またはPlg−/−マウスに、5−FU投与前16日に、Plg+/+またはPlg−/−ドナーマウス由来のBM細胞を移植した(各グループで、n=9)。BM細胞移植後、0日目に単回の5−FUを投与した。そして、5−FU投与後各時点で血液を回収した。図8Gは、血漿試料のELISAによりKitLについて解析した結果である。 致死量の放射線を照射されたPlg+/+またはPlg−/−マウスに、5−FU投与前16日に、Plg+/+またはPlg−/−ドナーマウス由来のBM細胞を移植した(各グループで、n=9)。BM細胞移植後、0日目に単回の5−FUを投与した。そして、Plg+/+およびPlg−/−マウスを、0日に静脈内に5−FUを投与した。図8Hは、5−FUで処理したPlg+/+およびPlg−/−マウス由来のBM切片におけるフィブリン(緑色蛍光)およびPlg(茶色染色)の免疫組織化学の結果である。 PlgのtPA仲介活性化が、BMニッチ内での造血ストレスの誘導後にプラスミンの産生をもたらす。このことが、MMP特にMMP−9の活性化をもたらし、それによりKitLのようなケモカイン/サイトカインを放出(release)/放出(shed)する。これらの因子は、幹細胞リクルート、増殖を促進し、BM再構成を改善しうるだけでなく、細胞動員を制御しうる。p<0.05。

Claims (11)

  1. 造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、分化および/または循環系内へ動員させるための医薬組成物であって、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる医薬組成物。
  2. プラスミノーゲン活性化因子が、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である、請求項1の医薬組成物。
  3. プラスミノーゲン活性化因子が以下のグループより選択される、請求項1の医薬組成物:
    (a)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質;および、
    (c)配列番号1のアミノ酸配列に1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質。
  4. プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸が以下のグループより選択される、請求項1の医薬組成物:
    (a)配列番号2の塩基配列を含む核酸;
    (b)配列番号2の塩基配列と少なくとも95%の同一性を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;
    (c)配列番号2の塩基配列から1つまたは数個の核酸の欠失、置換、および/または付加を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;および、
    (d)配列番号2の塩基配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸。
  5. インビトロで造血幹細胞、CFU−SまたはCFU−Cを増殖、および/または分化させる方法であって、上記細胞をプラスミノーゲン活性化因子を含む培養培地中で培養することを含む、前記方法。
  6. プラスミノーゲン活性化因子が、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である、請求項5の方法。
  7. プラスミノーゲン活性化因子が、以下の配列からなるタンパク質より選択される、請求項5の方法:
    (a)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質;および、
    (c)配列番号1のアミノ酸配列に1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質。
  8. 血球減少状態を治療および/または予防するための医薬組成物であって、プラスミノーゲン活性化因子および/またはそれをコードする核酸を含んでなる、前記医薬組成物。
  9. プラスミノーゲン活性化因子が、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)である、請求項8の医薬組成物。
  10. プラスミノーゲン活性化因子が、以下の配列からなるタンパク質より選択される、請求項8の医薬組成物:
    (a)配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質;および、
    (c)配列番号1のアミノ酸配列に1つまたは数個のアミノ酸残基の欠失、置換、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質。
  11. プラスミノーゲン活性化因子をコードする核酸が、以下の配列からなる核酸より選択される、請求項8の医薬組成物:
    (a)配列番号2の塩基配列を含む核酸;
    (b)配列番号2の塩基配列と少なくとも95%の同一性有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;
    (c)配列番号2の塩基配列から1つまたは数個の核酸の欠失、置換、および/または付加を有する塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸;および、
    (d)配列番号2の塩基配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうる塩基配列を含み、且つプラスミノーゲン活性化作用を有するタンパク質をコードする核酸。
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