JP2008001798A - ポリエステルの製造方法およびそれにより得られたポリエステル - Google Patents

ポリエステルの製造方法およびそれにより得られたポリエステル Download PDF

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Abstract

【課題】リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、製造工程で留出するグリコールを循環再使用する場合に該留出グリコールに含まれるリン化合物により引き起こされるポリエステル品質の低下を回避することができるその方法及び均質なポリエステルを提供する。
【解決手段】少なくともアルカリ土類金属原子およびリン原子を含んでなるポリエステルをジカルボン酸とグリコールなるスラリーをスラリー調製槽で調製して該スラリーをエステル化反応槽に連続的に供給し、2槽以上の反応槽を直列に繋いだ複数個のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行い引き続き重縮合を行うことにより連続的に製造する方法において、特定化された方法で該ポリエステルの製造工程で留出するグリコールを回収し循環再使用するポリエステルの製造方法。また、上記方法で製造された溶融比抵抗が0.5×108Ω・cm以下であるポリエステル。
【選択図】なし

Description

本発明はポリエステルの連続製造方法ならびに該製造方法で製造されたポリエステルに関する。さらに詳しくは、経済的に実施することができて、高品質で、かつ均質なポリエステルを安定して生産することができるポリエステルの製造方法ならびに該製造方法で製造されたポリエステルに関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性および化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用、磁気テープ用、光学用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。
現在、これらのポリエステルは、反応性を高めるために酸成分に対してグリコール成分を過剰に用いて、エステル化反応あるいはエステル交換反応により両末端にグリコールが縮合されたオリゴマーとして、これを高温、減圧下でエステル交換による脱グリコール反応、いわゆる重縮合反応により高分子量のポリエステルを得る2段階反応の方法がとられている。また、近年、製造コストが安いことより、芳香族ジカルボン酸とグリコールを原料とする、いわゆる直接エステル化法が主流になってきている。そして、それぞれ別の反応槽が用いられており、エステル化反応および重縮合反応ともに均一に段階的に反応を進行させるために、これらの反応装置はそれぞれ複数の反応槽を有している。
直接エステル化法においては、ポリエステルの製造は芳香族ジカルボン酸とグリコールをスラリー調合槽でスラリーを調合しエステル化反応槽に供給されエステル化反応が行われる。芳香族ジカルボン酸が固体でありグリコールに不溶であることより、これらの原料はスラリー状でエステル化反応槽に供給されるが、このスラリーの流動性を確保するため、理論必要量以上のグリコールを原料として供給し、過剰部分を回収する方法が一般的である。また、エステル化されたオリゴマーは重縮合反応槽で脱グリコール反応によりポリエステルが生成される。これらの過剰使用のグリコールや重縮合反応により生ずるグリコールは回収され再使用する必要がある。これらのグリコールの回収、再使用の方法はポリエステルの製造コストに大きく影響を及ぼすので、各種方法が開示されている。
エステル化反応槽の留出液の低沸点留分を精留除去しスラリー調合槽に循環し再使用する方法(特許文献1参照)、エステル化反応槽から排出されるエチレングリコールの低沸点留分を精留除去しエチレングリコール貯槽に供給するとともに、この一部を重縮合反応槽に設けられた湿式コンデンサーの循環液として用い凝縮液をエチレングリコール貯槽に供給し、該エチレングリコール貯槽に滞留したエチレングリコールをスラリー調合用に再使用する方法(特許文献2参照)、重縮合反応槽より発生する留出液を湿式コンデンサーにて凝縮し、エステル化反応槽に設けられた蒸留塔へ送り低沸点留分を除いた後、スラリー調合槽に戻して再使用する方法(特許文献3参照)、重縮合反応槽で発生する留出液を連続的に単蒸留し、この連続単蒸留缶の底部抜き出し液を回分式単蒸留缶に送液して単蒸留を行い、初留部分を除いた蒸留液を重縮合反応ガスの凝縮用冷媒液の一部と使用する方法(特許文献4参照)、エステル化反応槽留出液および重縮合反応槽留出液の一部は低沸点留分を精留除去し、重縮合反応槽留出液の残りの一部は低沸点留分と高沸点留分を除去し、スラリー調合に循環し再使用する方法(特許文献5参照)、エステル化反応2段階目の反応槽から排出される留出液を蒸留精製せずに直接、原料の一部、または全量として再使用する方法(特許文献6参照)、重縮合反応槽からの留出液をフラッシュ蒸留により低沸点留分を精留除去して原料グリコールの一部として再使用する方法(特許文献7参照)が開示されている。
特開昭53−126096号公報 特開昭55−56120号公報 特開昭60−163918号公報 特開平8−325363号公報 特許第3424755号公報 特開平10−279677号公報 WO01/083582号公報
一方、ポリエステルの製造においては、エステル化やエステル交換反応触媒に用いられる金属化合物の封鎖、ポリエステル製造工程で例えば金属化合物との反応により微粒子を析出させるいわゆる内部粒子法あるいはポリエステルに静電密着性を付与するために添加する金属化合物の封鎖や静電密着特性の向上のため等にリン化合物が添加される場合が多い。これらのリン化合物はその一部が留出グリコールに混入する。該留出グリコールに混入したリン化合物は再使用の際に上記反応に影響するのでその混入を阻止あるいは制御する必要があるが、上記の特許文献において開示された技術では、循環再使用されるグリコールへのリン化合物の混入に関しては全く配慮がなされていない。
例えば、特定構造のリン化合物を用いた内部粒子法によるポリエチレンテレフタレートの製造方法おいて、リン化合物の一部がエチレングリコールと共に系外に留出し、このエチレングリコールを再使用すると、エステル交換反応や析出粒子の粒子径や粒子量が変化しフィルムとした時、望みの表面特性を与えるポリエステルが再現よく得られないという課題が知られている。該課題を解決する方法として、ポリエステルの製造工程より留出したエチレングリコールをアルカリ化合物の存在下で加熱処理後蒸留したエチレングリコールを使用する方法(特許文献8)、留出エチレングリコールを同容量以上の水を加えて加熱して、混入したリン化合物を水と共に留去させて得たエチレングリコールを使用する方法(特許文献9参照)および留出エチレングリコールに対して0.2〜10wt%の水を添加し加熱処理した後、蒸留して回収したエチレングリコールを使用する方法(特許文献10参照)が開示されている。
特開昭57−14619号公報 特開昭57−14620号公報 特開昭59−96124号公報
上記方法はリン化合物の回収エチレングリコールに混入を阻止する方法としては有効な方法であるが、経済性の点で不利であるという問題を有する。
従って、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、ポリエステルの品質を低下させることなく、ポリエステルの製造工程で留出されるグリコールを経済性の高い方法で循環再使用できる方法の確立が強く嘱望されている。
一方、一般に直接エステル化法によるポリエステルの製造は、エステル化反応と重縮合反応の2段階で行われる。ポリエチレンテレフタレートの製造において、製造工程を安定化させるためには、エステル化反応によって得られる中間体である低重合体のカルボキシル末端基とヒドロキシル末端基の比率(以下「末端基比」と記載)を調整することが重要とされている。
例えば、末端基比が大きく変動すると重縮合工程において重縮合反応の進行速度が変動するために、エチレングリコール除去の負荷変動を生じたり、ポリマーが所定の重合度に到達しない等の問題が発生する。品質においてはポリマーの色相が変化するような現象が生じる。
一般にポリエステル製造方法においては、得られるポリエステルのカルボキシル末端基濃度が高くなるとポリエステルの加水分解性等の安定性が悪化することや該ポリエステルのカルボキシル末端基濃度は、ポリエステルの製造において重縮合反応工程へ供給される最終エステル化反応生成物であるオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の影響を大きく受けることより、該オリゴマーのカルボキシル末端基濃度を低くした状態で重縮合工程に供給することにより製造されている。例えば、エステル化反応率が90〜98%になるように、エステル化反応時の温度、圧力、滞留時間およびエチレングリコール供給量からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応条件を調節し、重縮合反応後のポリエステルのカルボキシル末端基濃度を20〜50eq/tonの範囲内の一定量となるように制御する方法(特許文献11参照)、エステル化反応率が92〜98%の範囲であり、かつ全末端基中のカルボキシル末端基の割合が35%以下のオリゴマーとし、これを減圧下に重縮合反応させてポリエステル中のカルボキシル末端基濃度を35eq/ton以下にする方法(特許文献12参照)、第1段重縮合反応時の温度、滞留時間及びエチレングリコール供給量からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応条件を調節するか、もしくはエステル化反応物のエステル化反応率と共に第1段重縮合反応条件を調節し、重縮合反応後のポリエステルのカルボキシル末端基量を15〜50eq/tonの範囲内の一定値となるように制御する方法(特許文献13参照)、最終反応容器へ供給されるポリエステル低重合体のカルボキシル末端基濃度を9〜30eq/tonとする方法(特許文献14)が開示されている。
特開平10−176043号公報 特開平10−251391号公報 特開平11−106498号公報 特開2001−329058号公報
しかしながら、ポリエステル製造に用いられる重縮合触媒系の種類やポリエステルを限定された用途に用いる場合に、上記した方法が必ずしも最適でなく、重縮合反応工程に供給される最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を高くした方法が、重縮合活性が高かったり、あるいは高品質のポリエステルが得られるということがある。これらの場合においては、上記方法に比べてオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が後続の重縮合反応の反応進行やポリエステル品質に対して極めて大きく影響するために、該オリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動をより高精度に抑制する必要がある。
一方、製品ポリマーの色調を測定し、その測定値の目標値に対する偏差に応じてエステル化工程でのエステル化率を調節する方法、製品ポリマーの色調を測定し、その測定値の目標値に対する偏差に応じて第1重縮合反応時の滞留時間を調節する方法および製品ポリマーの色調および極限粘度を測定してその測定値の目標値に対する偏差に応じて第1段重縮合反応缶へのエチレングリコールの供給量を調節することにより、製造されるポリエステルの色調(b値)の標準偏差が平均値の0.05倍以内に保ち、かつ極限粘度の標準偏差が平均値の0.005倍以内に保つ方法が開示されている(特許文献15〜17参照)。
特許3375403号公報 特開2004−75955号公報 特開2004−75957号公報
しかし、上記の方法では、製品ポリマーの色調を測定した時点では、すでに重縮合反応が進行しているので、エステル化率の調節が遅れるために、上記問題が解消されているとはいえない。
上記課題を解決する方法として、エステル化反応生成物の電気伝導度をオンライン測定してその結果によりエステル化反応を制御する方法が開示されている(例えば、特許文献18〜21等参照)。該方法は、エステル化反応生成物の電気伝導度とエステル化反応度が比例することを利用してエステル化反応を制御する方法であり、エステル化反応度を直接測定している点で、前記した方法よりは一歩前進した制御方式である。しかしながら、該方法は、エステル化反応により生ずる水や未反応のエチレングリコールの影響でエステル化反応生成物の電気伝導度に変動を与える等の外乱の影響が大きいという課題を有している。
特公昭51−41679号公報 特開昭48−103537号公報 特開昭52−19634号公報 特公平5−32385号公報
上記課題を解決する方法として、ポリエステルの製造工程中の原料、反応中間生成物または最終生成物のうち1種以上についての近赤外線特性を連続的に測定し、得られた分光スペクトルから測定物中の物性を解析し、解析データに基づいて製造工程中の反応条件を制御する方法が開示されている(特許文献22参照)該特許文献において、ポリエステル連続製造工程の重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口に近赤外線吸収スペクトルの検出端子を設置して、常時抜き出し口を通過するポリエステルのカルボキシル末端基濃度を連続的に測定すると供に、第2エステル化反応槽の出口にも近赤外線吸収スペクトルの検出端子を設置して、該検出端子部を通過するポリエステルオリゴマーのエステル化率を連続測定し、目標エステル化率になるように第2エステル化反応槽温度調節器へフィードバックし、生成ポリエステルのカルボキシル末端基濃度変化を抑制する方法や、赤外線分光吸収を連続測定し反応を制御する方法(特許文献23参照)が開示されている。これらの方法は、ポリエステルのカルボキシル末端基濃度を安定化する制御方法としては有効な方法であるが、長期にわたり連続生産をした場合は、検出器の汚染や検出部の温度や圧力等の環境変化等により測定の変動が発生する等の課題があり長期連続運転における信頼性が劣ことがあるという課題を有する。そのために、より単純化された制御方法で精度よく、かつ長期運転した時の信頼性の高い方法の構築が嘱望されている。
特開平11−315137号公報 特開平5−222178号公報
該単純化された制御方法として、ポリエステルの製造工程へ供給するテレフタル酸とエチレングリコールとからなるスラリーの密度や濃度を連続測定して、該測定値より求められるスラリー中のテレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比に基づいてエステル化反応を制御する方法やスラリー濃度の変化に応じてスラリー中のテレフタル酸とエチレングリコールとの比率の変動を制御する方法が開示されている(特許文献24および25参照)。例えば、特許文献24において、5日運転した時の、供給スラリーのエチレングリコール/テレフタル酸のモル比の変動が1.51±0.66%に制御され、結果として第1段エステル化後のエステル化反応率が85.0±1.0%に、第2段エステル化後のエステル化反応率が95.0±0.5%になることが開示されている。
特開平6−247899号公報 特開2004−75956号公報
これらの方法はエステル化反応の変動を抑制する方法として有効な方法であり、エステル化反応率に関しては高い精度で制御が可能であるが、エステル化反応率はポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度とヒドロキシル末端基濃度の両方より求められ、エステル化反応においては、一般には、該カルボキシル末端基濃度とヒドロキシル末端基濃度の変化は連動しており、エステル化反応率の変動率はカルボキシル末端基濃度単独の変動率よりも小さくなる。従って、ポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の安定化の要求に関しては、該スラリー密度制御のみでは不十分な場合がある。特に、前述したカルボキシル末端基濃度が高められたオリゴマーを用いて重縮合をする製造方法においては該オリゴマーの特性の変動を目標範囲内に抑制することは困難な場合がある。また、該方法は、長時間の連続運転を行う場合には、スラリー濃度検出器部がスラリー中の固形分であるジカルボン酸により閉塞する事態の生ずる場合があり、前記方法の課題が完全に解決するに至っていない。例えば、特許文献24において、スラリー濃度計を並列に2式備え、それらのいずれかを使用するように切り替え可能として、一定時間毎に交互に使用する方法が開示されている。
さらに、前記の特許文献11〜25において開示されているポリエステルの品質安定化の技術においては、ポリエステル製造コストや品質に大きく影響を及ぼす前記した回収グリコールの使用による影響に関しては考慮がなされていない。
本発明は従来技術の問題を背景になされたもので、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルの製造工程で留出するグリコールを循環再使用する場合に課題となる該留出グリコールに含まれるリン化合物により引き起こされるポリエステル品質の低下を経済性の高い方法で回避し、高品質で、かつ均質なポリエステルを安定して生産することができるポリエステルの製造方法を提供するものである。また、本発明は低コストで製造でき、かつ高品質、特に静電密着性に優れ、かつ品質変動の少ない均質なポリエステルを提供するものである。
本発明は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は、スラリー調製槽で調製されたジカルボン酸とグリコールからなるスラリーをエステル化反応槽に連続的に供給し、2槽以上の反応槽を直列に繋いだ複数個のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行い、引き続き重縮合を行うことによりポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルは少なくともアルカリ土類金属原子およびリン原子を含んでなり、かつ下記要件(1)、(2)を同時に満たすことを特徴とするポリエステルの製造方法。
(1)上記ポリエステルの製造工程で留出するグリコールを該ポリエステルの製造装置に直結した蒸留塔で低沸点留分を分留除去した残留液を回収グリコールとして循環再使用すること。
(2)回収グリコール中のリン化合物含有量を、新規のリン化合物の供給量から低減させて、必要量のリン化合物を供給すること。
この場合において、上記ポリエステルの製造工程に供給する新規のリン化合物の供給量を調整することにより得られるポリエステル中のリン原子の含有量を設定値±10%以内に制御することが好ましい。
また、この場合において、上記蒸留塔を少なくとも2基設けて、第1エステル化反応槽から留出するグリコールと第2エステル化反応槽以降で留出するグリコールとを区分して分留することが好ましい。
また、この場合において、第2エステル化反応槽以降で留出するグリコールの分留残留液を第1エステル化反応槽から留出するグリコールを分留する蒸留塔に供給し、該第1エステル化反応槽から留出するグリコールを分留する蒸留塔の分留残留液を回収グリコール成分として循環再使用することが好ましい。
また、この場合において、上記回収グリコール中の水分量を1質量%以上で、かつX±2.0質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)を同時に満足する範囲を満たすように制御することが好ましい。
また、この場合において、上記蒸留塔の塔底より抜出した残留液の一部を、それぞれの蒸留塔に循環することが好ましい。
また、この場合において、上記回収グリコールの一部を第2エステル化反応槽以降のエステル化反応槽に供給することが好ましい。
また、この場合において、上記ポリエステルがアルカリ金属を含んでなることが好ましい。
また、この場合において、新規のリン化合物の供給を少なくとも2箇所に分割して行うことが好ましい。
また、この場合において、上記の新規リン化合物の供給量の調整を分割供給の最後の供給分で行うことが好ましい。
また、この場合において、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値の±10%以内に制御することが好ましい。
また、本発明は上記ポリエステルの製造方法で得られたポリエステルであって、該ポリエステルの溶融比抵抗が0.5×10Ω・cm以下であることを特徴とするポリエステルである。
本発明によるポリエステルの製造方法は、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルの製造工程で留出するグリコールを循環再使用する場合に課題となる該留出グリコールに含まれるリン化合物により引き起こされるポリエステル品質の低下を経済性の高い方法で回避しているので、原料費、運転経費の削減と設備の簡略化が達成できポリエステルの製造コストを大幅に低減することができるという利点を有する。また、該製造方法において、高品質、特に静電密着性の優れたポリエステルが安定して製造できる。さらに、ポリエステルの品質変動が抑制されているので、極めて均質なポリエステルが安定して生産することができるという極めて顕著な効果を奏する。また、本発明のポリエステルは安価である上に、高品質、特に静電密着性が優れており、かつ、品質変動が少なく均質性に優れているので、例えば、フィルム等の成型体の原料樹脂として好適であるという利点を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸と、炭素数2〜4のアルキレングリコールのいずれか1種を主成分とするグリコールを原料としたポリエステルである。
また、本発明のポリエステルの製造は、経済性の点より、上記原料を用いて、エステル化反応を行い、次いで重縮合反応を行う、いわゆる直接エステル化法で、かつ連続法で行うのが好ましい。
本発明で用いられる芳香族ジカルボン酸としては、例えばオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルジカルボン酸、4、4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などが挙げられる。
また、全ジカルボン酸に対して30モル%以下であればジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5―ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸を併用してもよい。
また、本発明のポリエステルには、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール等の三官能以上の多官能化合物あるいは安息香酸、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物等の化合物を全ジカルボン酸に対して5モル%以下の範囲で用いることができる。
炭素数2〜4のアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールが挙げられる。
また、全グリコールの30モル%以下であれば、炭素数2〜4のアルキレングリコール以外のグリコールとしては、例えばエチレングリコール(主たるグリコールがエチレングリコール以外のとき)、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール(主たるグリコールが1,3−プロパンジオール以外のとき)、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール(主たるグリコールが1,4−ブタンジオール以外のとき)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール成分は、1種のみで用いても、あるいは2種以上を併せて用いてもよい。また、当然ながら、炭素数2〜4のアルキレングリコールが全グリコール成分に対して100モル%であってもよい。
これらグリコール以外に、全グリコールの5モル%以下であれば多価アルコールを併用しても良い。該多価アルコールとしては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸を併用しても良い。該ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3―ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p―(2―ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4―ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、環状エステルの併用も許容される。該環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
本発明のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンナフタレート(PPN)が好ましく、これらのうちPETが特に好ましい。
本発明のポリエステルの製造は重縮合触媒の存在下で行われる。
本発明において使用される重縮合触媒は、限定されないが、アンチモン化合物やゲルマニウム化合物等のリン化合物による重縮合活性の低下が少ない化合物の使用が好ましい。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが好適であり、特に好ましくは三酸化アンチモンである。また、ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが好適であり、特に好ましくは二酸化ゲルマニウムである。二酸化ゲルマニウムとしては、結晶性のものと非晶性のものもいずれもが使用できる。
本発明においては、上記化合物とともに、チタン化合物、スズ化合物およびアルミニウム化合物等の重縮合触媒を併用してもかまわない。
チタン化合物としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンとケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステル、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸および塩基からなる反応生成物などが挙げられ、このうちチタンとケイ素の複合酸化物、チタンとマグネシウムの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物が好ましい。
またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
また、アルミニウム化合物としては、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩が挙げられる。これらのうちカルボン酸塩が特に好ましい。
このような触媒を供給する位置や供給方法については、特に限定されるものではなく、製造条件に対応して適宜決定すればよい。
本発明では、リン化合物の使用が必須である。リン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
本発明においては、アルカリ土類金属化合物の使用が好ましい。さらに、アルカリ金属化合物の併用がより好ましい。
アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Csであり、特に好ましくはNaまたはK化合物の使用である。アルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、特に高度な静電密着性を付与するためには、Mg化合物またはCa化合物を使用することが好ましい。
上記のアルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属などの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルが着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。
従って、本発明で好適に使用することのできるアルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物としては、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属などの金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
上記のアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物およびリン化合物を添加することにより、ポリエステルの静電密着性を向上させることができる。ポリエステルの静電密着性とは、例えば、ポリエステルをフィルムやシートに溶融押出し法で成型する場合のキャスティング時に必要な特性である。すなわち、押出口金から溶融押出したフィルム状物を回転冷却ドラムで急冷する際、該フィルム状物の表面に静電荷を析出させ、フィルム状物を冷却ドラムの表面に静電力で密着させる静電密着法が知られている。しかし、この方法においては、生産能力を高めるために冷却ドラムの回転速度を上げるとフィルム状物と冷却ドラムとの密着力が減少し、フィルム状物と冷却ドラムとの間に気体を噛み込むようになるピンナーバブルの発生がおこり、厚み斑や外観不良発生の原因となる。静電密着性とは、この静電密着法において、大きな静電密着力が付与でき、高速でキャスティングしても厚み精度の高い製膜製品が得られるポリエステル樹脂の特性である。
近年ポリエステルフィルムやシートに対する品質に対する要求特性はますます厳しくなり、それに伴い厚み精度を向上させることが必要な条件となってきており、ポリエステルの重要な特性の一つである。
この静電密着性はポリエステルの溶融比抵抗と相関しており、ポリエステルの溶融比抵抗により静電密着キャスト法においてピンナーバブルの発生を抑制しながらキャストできる最高のキャスティング速度、すなわち静電密着性が変化する。溶融比抵抗が低ポリエステルほど、高速でキャスティングすることが可能となり、フィルム生産性の面から非常に重要である。
ポリエステルの溶融比抵抗は、0.5×10Ω・cm以下であることが好ましい。溶融比抵抗が0.5×10Ω・cmより高ければ、静電密着性が悪化し、キャスティング速度が遅くなり生産性が悪くなる。好ましくは、0.4×10Ω・cm以下、さらに好ましくは、0.3×10Ω・である。一方、耐熱性や着色の点から、下限値は0.05×10Ω・cmとすることが好ましく、特に好ましくは0.09×10Ω・cmである。
ポリエステルに溶融比抵抗に付与する方法としては、上記のアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物およびリン化合物をポリエステルに添加し、これらの原子の原子比を特定範囲にすることが好ましい実施態様である。この場合、リン原子の量によりポリエステルの溶融比抵抗が大きく変化するので厳密な制御が必要である。
アルカリ土類金属化合物は、アルカリ土類金属原子の残存量として、ポリエステルに対し3〜200ppmとなるように反応系に添加することが好ましい。アルカリ土類金属原子の残存量が3ppm未満では、ポリエステルの溶融比抵抗が大きくなり、静電密着性が悪化しやすくなる。一方、200ppmを超えた場合は、ポリエステルの熱安定性が低下しやすくなり、ポリエステルの着色が増大しやすくなる。
ポリエステル中のアルカリ土類金属原子の残存量は、静電密着性の点から、下限値を5ppmに制御することがより好ましく、さらに好ましくは10ppm、特に好ましくは15ppmに制御する。一方、熱安定性の点から、上限値を160ppmに制御することがより好ましく、さらに好ましくは120ppm、特に好ましくは100ppmに制御する。
また、アルカリ金属化合物は、アルカリ金属原子の残存量として、ポリエステルに対し0.5〜20ppmとなるように反応系に添加することが好ましい。アルカリ金属原子の残存量が0.5ppm未満では、ポリエステルの溶融比抵抗が大きくなり、静電密着性が悪化しやすくなる。さらに、副反応であるグリコール成分同士の縮合反応が増加し、例えば、グリコール成分としてエチレングリコールを用いた場合は、ジエチレングリコールの副生が増大する。該副反応の増大により、ポリエステルの融点低下や熱酸化安定性等の品質が低下しやすくなる。一方、50ppmを超えた場合は、ポリエステルの溶融比抵抗の低下やグリコール成分同士の縮合反応の抑制効果が頭打ちになり、かつポリエステルの着色が増大により色調の低下が起こりやすくなる。
ポリエステル中のアルカリ金属原子の残存量は、静電密着性、副生成物による融点低下や熱酸化安定性の点から、下限値を1ppmに制御することがより好ましく、さらに好ましくは2ppm、特に好ましくは3ppmに制御する。一方、色調の点から、上限値を40ppmに制御することがより好ましく、さらに好ましくは30ppm、特に好ましくは20ppmに制御する。
また、リン化合物の必要量は、ポリエステル中の残存量として、リン原子/アルカリ土類金属原子の原子比で0.1〜5.0の範囲となるように、添加量を制御することが好ましい。ここで原子比とは、原子の数の比を表し、以下原子比と記した場合、同様である。
リン原子/アルカリ土類金属原子(残存原子比)が、0.10未満ではポリエステルの熱安定性が低下しやすくなる。一方、リン原子/アルカリ土類金属原子(原子比)が5.0を超えた場合は、ポリエステルの溶融比抵抗が大きくなり、静電密着性が悪化しやすくなる。リン原子/アルカリ土類金属原子(残存原子比)は、熱安定性の点から、下限値を0.15に制御することがより好ましく、特に好ましくは0.20に制御する。一方、静電密着性の点から、上限値を4.0に制御することがより好ましく、特に好ましくは3.0に制御する。
本発明におけるポリエステルの製造方法は連続式重縮合法であることが好ましい。連続式重縮合法は回分式重縮合法に比して品質の均一性や経済性において有利である。
本発明においては、該連続式重縮合法において、2槽以上の反応槽を直列に繋いだ複数個のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を実施するのが好ましい。該方法によりエステル化反応におけるエステル化反応の変動抑制ができ、均質なポリエステルを得る点で有利である。
代表例として、ポリエチレンテレフタレートの製造法を以下に例示する。
テレフタル酸1モルに対して1.02〜1.5モル、好ましくは1.03〜1.4モルのエチレングリコ−ルを含むスラリ−を調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
エステル化反応は、複数のエステル化反応槽を直列に連結した多段式装置を用いて、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は常圧〜0.29MPa、好ましくは0.005〜0.19MPaである。最終段階のエステル化反応の温度は通常250〜290℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜0.15MPa、好ましくは0〜0.13MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段の反応条件と最終段階の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配することが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜2000程度の低縮合物が得られる。
引き続き、上記低縮合物を重縮合反応槽に移送し重縮合を行う。一般には初期重縮合、中期重縮合および後期重縮合の3段階方式が取られている。重縮合反応条件は、第1段階の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は0.065〜0.0026MPa、好ましくは200〜30Torrである。また、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は0.0013〜0.000013MPa、好ましくは0.00065〜0.000065MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配することが好ましい。
本発明においては、上記ポリエステルの製造工程で留出するグリコールを該ポリエステル製造装置に直結した蒸留塔で低沸点留分を分留除去した残留液を回収グリコールとして循環再使用することが好ましい。該対応により、新規グリコールの使用量を大幅に低減することができるので、ポリエステルの製造コストを大幅に低減することができる。
本発明においては、上記の分留において留出物から分離される低沸点物としては、グリコールとしてエチレングリコールを使用した場合は、水、アセトアルデヒド、2−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルセロソルブあるいはこれらの化合物以外の沸点が165℃以下のものが主たる対象となる。グリコールとして1,3−プロパンジオールを使用した場合は、水、アリルアルコール、アクロレイン、3−エトキシ−1−プルパノールあるいはこれらの化合物以外の沸点が165℃以下のものが主たる対象となる。グリコールとして1,4−ブタンジオールを使用した場合は、テトラヒドロフラン、水あるいはテトラヒドロフラン以外の沸点が165℃以下の化合物が主たる対象となる。
上記方法により回収される回収グリコール中に共通して存在する水はポリエステルの製造において、例えばエステル化反応の進行に影響し、結果としてポリエステルの品質や生産性に影響が及ぶ。従って、該水分量を制御しないと高品質のポリエステルを安定して生産することができない。該課題を回避する方法としては、上記の蒸留塔の性能を高めて実質的に水分が含まれないグリコールを得る方法がある。従来技術においては、品質重視の観点より殆ど実質的に無水の状態で回収されていた。該方法は、ポリエステルの反応や品質を安定化させる点では有効であるが、高性能の蒸留塔が必要となり経済性の点で不利となる。一方、水分量が高くなるとグリコールの回収の経済性は向上するが、ポリエステルの品質の安定化に関しては不利になる。
本発明者等は、該回収グリコールの最適な水分量について鋭意検討して、回収グリコール中の水分量をX±2.0質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)以内%に制御して蒸留することが好ましい。X±1.5質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)以内がより好ましく、X±1.0質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)以内がさらに好ましい。一方、変動範囲の下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.03質量%が好ましく、±0.05質量%がより好ましい。該方法で実施することにより、スラリー調製に用いるグリコールに占める該回収グリコールの混合比率が50〜66質量%という広い範囲で変動させても、スラリーの水分調整をしなくてもスラリー中の水分量を前記した本発明の好ましい範囲に保つことが可能となり、スラリー中の水分量の管理の安定化に繋げることができる。また、回収グリコール中の水分量のXを2〜3質量%で制御することは、水分量をそれより低くする方法に比べて回収コスト低減になるので上記範囲で制御することがコストパフォーマンスにおいて最上であることを見出した。上記水分量の変動範囲は±1.5質量%以内がより好ましく、±1.0質量%以内がさらに好ましい。一方、変動範囲の下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.1質量%が好ましく、±0.3質量%がより好ましい。該方法で実施することにより、上記した水分量によるエステル化反応への影響の安定化と回収コストのバランスが取れる。さらに、その上に、該回収グリコール中の水分によりカルボン酸とグリコールよりなるスラリーの流動性が向上し、エステル化反応の安定化に繋がり、結果としてポリエステルの品質の安定化に繋がるという効果が発現される。すなわち、ポリエステルの製造を新規グリコールのみで製造あるいは、回収グリコールの水分量を実質的に無水状態にして回収して製造する場合に比べて、回収グリコール中の水分によりスラリーの流動性が向上し、該スラリーのエステル化反応槽への供給精度が向上し工程や品質の安定化に繋げることができる。また、スラリー調製時のグリコール使用量を低くしてもスラリーの供給安定性が確保できるのでスラリー中のグリコール量比を下げてとも安定生産が可能となり経済的に有利となる。すなわち、設定値が3質量%を超えた場合は、スラリーの流動性の向上効果が飽和する上に、エステル化反応が不安定になりポリエステルオリゴマーの特性変動が大きくなり、結果として最終ポリエステルのカルボキシル末端基濃度や色調等の品質変動が大きくなるので好ましくない。逆に設定値が2質量%未満では、回収コストが上がり、かつスラリーの流動性が悪化するので好ましくない。また、変動範囲が±2質量%を超えた場合は、エステル化反応が不安定になりポリエステルオリゴマーの特性変動が大きくなり、結果として最終ポリエステルのカルボキシル末端基濃度や色調等の品質変動が大きくなるので好ましくない。
上記の回収グリコール中の水分量を上記範囲にする方法は限定されないが、蒸留塔の圧力および温度の制御を行い、蒸留塔底部より取り出される分留の残留分中の水分量を制御するのが好ましい。
蒸留塔の圧力は限定されないが、該蒸留塔に供給されるグリコールの発生源であるエステル化反応槽の圧力設定と連動して設定するのが好ましい。該エステル化反応槽の圧力との連動および蒸留効率と蒸留に要するエネルギーとのバランス等を総合的なパフォーマンスより微加圧状態で実施するのが好ましい。
上記のエステル化反応槽の圧力設定と連動して設定する方法においては、蒸留塔は塔頂圧力を10〜300kPa(ゲージ圧)に保つことが好ましい。全蒸留塔を該圧力範囲で制御してもよい。20〜250kPa(ゲージ圧)がより好ましく、80〜200kPa(ゲージ圧)がさらに好ましい。10kPa(ゲージ圧)未満では、大気圧変動による圧力変動の影響を受け、蒸留塔の温度管理精度の低下に繋がる。また、大気圧の変動により、エステル化反応槽の圧力が変化しエステル化反応の変動増大に繋がるので好ましくない。一方、300kPa(ゲージ圧)を超えた場合は、分留精度の低下に繋がる。また、該塔頂圧力でエステル化反応槽の圧力調整をする方法においては、エステル化反応工程におけるジエチレングリコールの副生が増大に繋がるので好ましくない。さらに、エステル化反応槽の圧力の増大により、圧力変動によるエステル化反応に対する影響度が大きくなるためにエステル化反応の変動が増大するので好ましくない。
上記の蒸留塔の塔頂圧力の制御方法は限定されない。例えば、蒸留塔のベント配管に調圧弁を設置し、該調圧弁で調整する方法や該ベント配管を水封し、該水封の液面あるいは水封部分の配管の位置変更で調整する方法などが挙げられる。
本発明は、グリコールとしてエチレングリコールを用いたポリエステルの製造方法に適用するのが好ましい。該グリコールとしてエチレングリコールを用いる場合は、上記分留において、残留分を回収グリコールとしてスラリー調製槽の戻すラインを有する蒸留塔の中段温度を106±3℃に制御することが好ましい。該制御は上記の圧力制御と連動して実施することが好ましい。一般に蒸留塔の制御は蒸留塔の塔頂温度で管理されるが、本発明の分留においては、該塔頂温度で管理して、蒸留塔の底部より取り出される残留分中の水分量に制御するには、極めて範囲の狭い温度制御をする必要がある。一方、例えば、特許文献10で開示されている塔底部の温度で管理した場合は、塔頂温度が成り行き任せとなり、塔頂より取り出される水を主体とした低沸点留分中のエチレングリコール量の変動が大きくなる。一般に、該低沸点留分は廃棄処分されるので該低沸点留分中のエチレングリコール量の変動が大きくなると廃液の処理負荷の変動に繋がり、環境負荷が増大するので好ましくない。蒸留塔中段の温度管理をすることにより、上記課題のバランスが取れる。なお、中段温度とは、蒸留塔の棚段のほぼ中央部を意味している。すなわち、棚段数が奇数段の場合は中央の棚段部に、偶数の場合は、2分割した各分割部の中央側の棚段のいずれかの部分の温度を指す。該温度範囲は106±2℃がより好ましい。該温度が103℃未満では、残留分中の水分量が上記範囲より多くなるので好ましくない。一方、110℃を超えた場合は、残留分中の水分量が上記範囲より少なくなり、かつ低沸点留分中のエチレングリコール量が増大し、該低沸点留分を廃液処理する場合の負荷が増大するので好ましくない。
また、本発明においては、上記の回収グリコール中の水分量を上記範囲に制御する方法としては近赤外線分光光度計を用いて回収グリコール中の水分量を計測し、該計測値を上記の蒸留塔の温度設定値にフィードバックして制御し、水分量制御精度を向上させてもよい。例えば、蒸留塔底部あるいは、該蒸留塔底部よりスラリー調製槽に至る回収グリコールの送液ラインに近赤外線分光光度計の検出器を設置して該回収グリコール中の水分量をオンライン計測し、該計測値を蒸留塔の温度設定値にフィードバックして制御する方法が挙げられる。
近赤外線分光光度計を用いて定量することによりオンライン計測する場合の計測装置および測定波長は限定されない。
計測器はオンラインで連続的に測定可能な近赤外分光光度計であれば、特に限定されない。例えば、NIRSシステムズ社(ニレコ社)、BRAN LUEBBEおよび横河電機社製の近赤外オンライン分析計等の市販品を使用してもよいし、本目的のためにシステム化した装置を製作して対応してもよい。
測定波長は限定されない。水分既知のグリコールサンプルを用いて、感度が高く、かつ外乱の少ない波長を調査して適宜設定して検量線を作成して計測するのが好ましい。例えば、1922nmの波長を用いるのが好ましい。また、複数の波長を組み合わせた検量線より算出してもよい。
本発明においては、蒸留塔の本数は限定されないが少なくとも2基を設けて、第1エステル化反応槽から留出するグリコールと第2エステル化反応槽以降で留出するグリコールとを区分して分留することがより好ましい実施態様である。
本発明における2槽以上の反応槽を直列に繋いだ複数個のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行う方法においては、エステル化反応槽から留出するグリコールおよび該グリコールに含まれる水分量は後段になるに従い少なくなる。また、重縮合工程で発生するグリコールは水分含有量がさらに少なくなる。特に、第1エステル化反応槽からグリコールはポリエステルの製造工程で発生するグリコールの約70%以上を占めることが多く、かつ水分量も圧倒的に多い。従って、第1エステル化反応槽よりから留出グリコールと第2エステル化反応槽以降で留出するグリコールとは区分してそれぞれ別個の蒸留塔で分留した方が留出液の全量を1基の蒸留塔で分留する前記特許文献2や3で開示されている方法よりもコストパフォーマンスを高めることができる。すなわち、蒸留塔を分割することにより、それぞれの反応槽で発生するグリコール量および水分量に見合った性能とサイズが設定できるのでトータルの蒸留塔の設備投資や、分留のランニングコストの低減に繋げられるので経済的に有利である。また、回収グリコールの品質安定化の点でも有利である。該蒸留塔の塔数は限定されないが2基が好ましい。3基以上でも構わない。
本発明の2基以上の蒸留塔で分割分留する場合は、第1エステル化反応槽よりの留出グリコールは水を主体とした低沸点留分を分留除去した残留分をスラリー調製槽に戻して再使用するのが好ましい。一方、第2エステル化反応槽以降の反応槽より留出するグリコールは水を主体とした低沸点留分を分留除去した残留分をスラリー調製槽に戻して再使用してもよいし、第1エステル化反応槽の留出グリコールを分留する蒸留塔に供給して第1エステル化反応槽からの留出グリコールの残留分と合わせて再分留をしてスラリー調製槽の戻してもよい。また、両者を併用してもよい。特に、第2エステル化反応槽以降の反応槽より留出するグリコールは水を主体とした低沸点留分を分留除去した残留分を第1エステル化反応槽の留出グリコールを分留する蒸留塔に供給して第1エステル化反応槽からの留出グリコールの残留分と合わせて再分留してスラリー調製槽に戻す方法は、分留の精度が向上することができる。さらに、前述した回収グリコール中の水分量の制御が一箇所になり、制御が簡略化されるという2重の効奏が発揮される。
上記方法に用いられる蒸留塔の性能は限定されないが、8〜18段が好ましい。9〜15段がより好ましい。蒸留塔を複数設けて実施する場合は、全蒸留塔を同じ性能のものを用いてもよいし、それぞれの性能を変えてもよい。第2エステル化反応槽以降の留出分の分留物を第1エステル化反応槽の留出分の分留用蒸留塔に供給し再分留する場合は第1エステル化反応槽に設置する蒸留塔より第2エステル化反応槽に設置する蒸留塔は段数を低くしてもよい。
上記のグリコール回収方法においては、エステル化反応槽からの留出物の低沸点留分の分留除去は、留出物自体が有する熱により連続的に行うことが好適である。このことにより、運転経費の節減と設備の簡略化をより高めることができる。必要に応じて、配管の加熱や熱交換により補助加熱してもよい。
一方、重縮合反応槽からの留出物は、湿式コンデンサーで冷却凝縮して回収されるので、加熱して蒸留塔に供給することが必要となる。
また、エステル化反応槽より留出するグリコールの場合は、該グリコールに含まれる固形分は融点が低く、エステル化反応工程で反応系に溶解、反応してポリエステルに取り込まれるので除去する必要はない。ただし、前述した蒸留塔液循環法等による固形分析出による蒸留残留分の送液ラインの詰り防止を行うことが好ましい。
一方、重縮合反応槽より留出する留分に含有される固形分は融点が高く、回収グリコールに含有されてポリエステル製造工程に循環されるとポリエステル製造工程でポリエステルに反応せずに異物の発生に繋がる場合があるので好ましくない。従って、該固形分を回収グリコールに混入させない方策を取り入れるのが好ましい。該方策は限定されないが湿式コンデンサーで冷却凝縮して回収された凝縮液中の固形分を除去し蒸留塔に供給するのが好ましい。該固形分の除去方法も限定されない。例えば、濾過、遠心分離あるいは自然沈降等およびこれらを組み合わせた方法で実施するのが好ましい。
本発明においては、上記蒸留塔の底部より抜き出した残留分の一部を該蒸留塔に循環させること(以下、蒸留塔液循環法と称する)が好ましい実施態様である。該方法の実施により、該残留分の送液ラインのライン詰りの発生が抑制され、長期の安定生産が可能となる。ポリエステル製造工程で留出するグリコール中には、飛沫同伴等によりポリエステルのオリゴマー類等よりなるグリコールに難溶性あるいは不溶性の固形分が含まれる。該固形分は、当然のことであるが上記蒸留において、蒸留塔残留分中に含まれポリエステル製造工程に循環される。従って、ポリエステルの製造を長期に渡り連続して実施した場合に、該残留分の送液ラインにおいて、残留分中に存在する固形分あるいは送液ライン中で析出する固形分により該送液ラインの送液性の低下やライン詰まりが発生し安定運転が困難な場合があるという課題を有しておりその改善が嘱望されていた。本発明は上記の極めて単純な方法で該課題を解決したものである。上記蒸留塔液循環法の実施により上記課題が解決される理由は明確でないが、残留分の送液流量および流速の増加、液温度維持、該温度変動抑制および残留分の蒸留塔内の滞留延長による固形分の構造変化等の複数の要因の総和により固形分の析出が抑制されることにより引き起こされるものと推察される。ここで、構造変化は、化学変化と物理変化の両方の効果が加味されていると推察される。すなわち、化学変化としては、固形分中のオリゴマーのグリコリシスによる低分子量化によりグリコールへの溶解性の向上および結晶性低下等が、また、物理変化としては固形分の結晶性等の等の変化が考えられる。また、蒸留塔液循環法の実施は、ライン詰りの抑制に加えて分留精度の向上にも繋がる。
従って、残留分の液温および該温度範囲の設定、蒸留塔底部の残留分の貯留容量、循環液の戻し位置および循環量等が重要となる。該条件は限定されないが、以下の方法が好ましい。例えば、循環液の戻し位置は、蒸留塔の中段から蒸留塔底部の残留分の貯留部の最上部が好ましい。蒸留精度向上の点では蒸留塔の中段への戻しが好ましいが、温度管理の点では不利になる。両者のバランスにおいて適宜決定される。また、該循環液の蒸留塔への供給は該液を噴霧状態で供給するのが好ましい。該対応により分留効率の増進や蒸留塔トレイの飛沫同伴による汚染防止効果が付加される上に該供給液の供給量の安定化ができ、循環液の流量変動による循環ラインの詰まり発生が抑制できる。さらに、該循環ライン内での詰まり発生防止のために該循環ラインの配管内面をバフ研磨、または電解研磨処理をしたり、該配管の曲がり半径を大きくする等の対応をするのが好ましい。循環に用いるポンプはリバース形とノンリバース形のどちらでもよいが、リバース形が好ましい。貯留量は循環量に対し25〜70質量%に保つことが好ましい。該循環量は残留分の30〜75質量%が好ましい。
また、蒸留塔の液面の制御について例えば、エステル化反応槽から留出するグリコールの他に蒸留塔に加えるグリコールの流量を制御することが考えられる。蒸留塔に加えるグリコールは新規グリコール、重合工程で発生し回収したグリコール、他の蒸留塔から留出したグリコール、別の系から回収したグリコールのいずれを用いてもよい。蒸留塔に加えるグリコールの流量は直接的制御する必要は無く、グリコール貯留槽やその前工程の液面や温度などを制御することにより間接的に流量を一定範囲内で規定するものであってもよい。また、蒸留塔からの抜き出し量により液面制御することも考えられる。この場合、抜き出し量は先にも述べたように貯留量を循環量に対し25〜70質量%に保ち、該循環量を残留分の30〜75質量%に保つ範囲内であることが好ましい。抜き出し量は直接的に流量制御する必要は無く、抜き出した液が流入する工程やその後工程の液面や温度などにより間接的に流量を一定範囲内に規定するものであってもよい。
また、循環液温度は、160〜180℃がより好ましい。164〜178℃がより好ましく、168〜175℃がさらに好ましい。該温度維持および温度制御のために循環ラインに温度調整機能を付加するのが好ましい。該温度が160℃未満の場合は、ライン詰り頻度が高くなる。逆に、180℃を超えた場合は、エネルギーロスの増加に繋がり経済的に不利となる。また、蒸留精度の低下に繋がる。
上記のエステル化反応槽より留出するグリコールの場合は、該グリコールに含まれる固形分は融点が低く、エステル化反応工程で反応系に溶解、反応してポリエステルに取り込まれるので除去する必要はない。ただし、前述した蒸留塔液循環法等による固形分析出による蒸留残留分の送液ラインの詰り防止を行うことが好ましい。
一方、重縮合反応槽からの留出物は、湿式コンデンサーで冷却凝縮して回収されるので、加熱して蒸留塔に供給することが必要となる。また、重縮合反応槽より留出する留分に含有される固形分は融点が高く、回収グリコールに含有されてポリエステル製造工程に循環されるとポリエステル製造工程でポリエステルに反応せずに異物の発生に繋がる場合があるので好ましくない。従って、該固形分を回収グリコールに混入させない方策を取り入れるのが好ましい。該方策は限定されないが湿式コンデンサーで冷却凝縮して回収された凝縮液中の固形分を除去し蒸留塔に供給するのが好ましい。該固形分の除去方法も限定されない。例えば、濾過、遠心分離あるいは自然沈降等およびこれらを組み合わせた方法で実施するのが好ましい。
上記方法で回収されたグリコールの再使用方法は限定されない。グリコール貯槽に蓄えた後に、ポリエステル製造用のグリコールとして再使用するのが好ましい。
本発明においては、必要に応じて、工程内、外において未精製あるいは精製グリコールを濾過等の処理を行いポリエステルオリゴマー等の固形分を除去し、配管詰りを回避したり、純度を向上させる等の方法を取り入れることも好ましい実施態様である。
回収グリコールの使用割合は制限がなく、適宜設定して使用することができる。
本発明においては、前記したポリエステル製造工程への新規のリン化合物の供給を少なくても2箇所以上に分割して供給するのが好ましい。該対応により得られるポリエステルの静電密着性が向上する。
本発明のポリエステル製造方法のように、ポリエステルの製造工程にリン化合物を供給するポリエステルの製造においては、該供給するリン化合物の一部が該ポリエステルの製造工程より留出するグリコールと共に留出する。該グリコールとともに留出するリン化合物は、ポリエステルの製造工程において化学変化を起こし、新規添加のリン化合物とはその構造が変化しており、一般にはグリコールよりも高沸点の化合物になっているので、ポリエステルの製造工程で留出するグリコールを循環再使用する本発明の方法においては、該リン化合物は除去されずに回収グリコールに含まれた形で存在する。従って、上記方法で回収されたグリコールを循環再使用した場合には該回収グリコール中に含まれるリン化合物により、該回収グリコールを使用しない場合と異なり、生産の進行に従いリン化合物の蓄積が進みポリエステル製造工程に供給されるリン化合物の量が増大し、リン化合物による静電密着性向上効果や重縮合触媒の活性に対する作用効果が変化する。特に、静電密着性に対する効果は大きく静電密着性が大幅に低下するので回避する必要がある。該課題を回避する方法として、上記分留の精度を上げて、リン化合物を分留除去しリン化合物を含まない回収グリコールを得る方法が挙げられるが回収コストの上昇に繋がるので好ましくない。
そこで、本発明者等は、グリコールの回収コストを上昇させることなく、かつ上記課題を回避する方法について検討し、下記方法により該課題の回避ができることを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明においては、上記方法で回収された回収グリコール中のリン化合物に見合う量の新規リン化合物の供給量を低減させて供給するのが好ましい。該対応により回収グリコールを循環再使用しない場合に近い静電密着性のポリエステルが得られる。
本発明においては、前述したごとくポリエステル製造工程への新規のリン化合物の供給を少なくても2箇所以上に分割して供給するのが好ましいが、上記の新規のリン化合物の供給量の低減は、該分割供給の最後の供給分で調整するのが好ましい。該分割供給の最後の供給分とは、工程の後の方で供給するリン化合物の供給分を指しており、例えば、リン化合物の添加を第2エステル化反応槽と第3エステル化反応槽に供給する場合においては、第3エステル化反応槽に供給する分を指す。
上記対応により回収グリコールによる静電密着性の低下および変動の増大が抑制される。
また、本発明においては、回収グリコールはスラリー調製槽に供給されるが、その一部を第2エステル化反応槽以降のエステル化反応槽に供給することが好ましい。該供給量は限定されないが、製造工程全体におけるグリコール成分の全添加量の2〜10質量%を添加するのが好ましく、4〜8質量%添加することがより好ましい。該対応により得られるポリエステルの静電密着性の変動を抑制されることがある。
以上の対応により、回収グリコールによる静電密着性の低下および変動の増大が抑制される理由は明確でないが、これらの対応により、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物およびリン化合物の反応生成物が微妙に変化をして静電密着性に対する効果が変化することにより引き起こされているものと推察している。
上記方法において、新規リン化合物の供給量の調整は、回収グリコール中のリン化合物の濃度の尺度であるリン原子の含有量を測定して、該測定値に見合った量のリン化合物を供給するようにフィードバック制御するのが好ましい。しかし、該方法で実施する場合は、該フィードバック制御システムが必要となり工程管理が複雑になるという課題を有する。本発明者等はこの課題解決について検討し、ポリエステルの工程条件を本発明の範囲で制御することにより、回収グリコール中のリン原子の含有量はほぼ一定で安定化できるので、回収グリコールの循環再使用をしない状態でポリエステルの製造を開始し、該方法による製造が安定した時点で回収グリコール中のリン原子含有量を測定して、該回収グリコールとして循環されるリン原子の含有量分だけ新規に供給するリン化合物の供給量を減じて供給することで、ほぼ回収グリコールの循環再使用をしない状態で得られるポリエステルに近い静電密着性を有したポリエステルを得ることができることを見出した。ただし、長期に渡って連続生産する場合は、1〜2回/日程度の頻度で回収グリコール中のリン原子含有量を計測して該回収グリコール中のリン原子含有量の変動を補正するように新規のリン化合物の供給量の微調整をするのがより好ましい実施態様である。すなわち、得られるポリエステル中のリン原子の含有量を該ポリエステルの製造工程に供給する新規のリン化合物の供給量を調整することにより設定値の±10%以下に制御することが好ましい。該得られるポリエステル中のリン原子の含有量の変動幅は±8%以下がより好ましく、±5%以下がさらに好ましい。該対応により回収グリコールを循環再使用しない場合に近い静電密着性のポリエステルが得られ、かつその変動を抑制することができる。
上記の新規のリン化合物の供給量の微調整においても、前述した分割供給の最後の供給分で調整するのが好ましい実施態様である。
本発明におけるエステル化条件や生成物のオリゴマーの特性および重縮合反応条件は、ポリエステルの品質や生産性を考慮し適宜設定すればよいが、本発明においては、回収グリコールを循環し再使用するので、該回収グリコール中の水分量を上記範囲に制御したとしても、従来公知の回収グリコールを循環し再使用しない製造方法に比べて、エステル化反応の変動が増大することがあるので、エステル化反応の変動抑制を取り入れるのが好ましい。
本発明においては、ジカルボン酸とグリコールとからなるスラリーをスラリー調製槽で調製して該スラリーをエステル化反応槽に連続的に定量供給し、複数のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行い引き続き重縮合を行いポリエステルを連続的に製造する方法において、第1エステル化反応層出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値の±10%以内に制御することが重要である。
前記した特許文献等で開示されている技術においては、ポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基は重縮合工程に供給されるポリエステルオリゴマーの値に注目されその制御がなされている。該重縮合工程に供給されるポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度により、後続の重縮合反応の進行やポリエステル品質に対して大きな影響を及ぼすことより当然の帰結である。
本発明者等は、最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を抑制する方法について鋭意検討し、該最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動は、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度によりほぼ支配されることおよび該第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度は、第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量の影響を大きく受け、該熱量を制御することにより、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が抑制でき、結果として後続の重縮合反応やポリエステル品質に対して大きな影響を及ぼす最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度変動が抑制されることを見出して本発明を完成した。当然のことであるが、第1エステル化反応槽以降のエステル化反応条件により最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度が変化するので、該反応条件は一定範囲に制御する必要があるが、該制御は従来公知の方法を適用し制御するレベルで、本発明方法で得られる高度なカルボキシル末端基濃度の制御が可能となる。
すなわち、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値±10%以内に抑制するのが重要である。±9%以内が好ましく、±8%以内がより好ましく、±6%以内がさらに好ましい。該範囲にすることにより最終エステル化反応槽出口のオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を好ましい範囲に抑制することが可能となり、後続の重縮合反応や得られるポリエステルの品質の安定化に繋げることができるので好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.5%が好ましく、±1.0%がより好ましい。
上記第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の設定値は限定されないが、前記した最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度や第2エステル化反応槽以降のエステル化反応槽の反応条件により適宜設定すればよい。後述のごとく、一般に最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度は設定値で150〜900eq/tonの範囲が好ましい。該範囲にするには、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の設定値は800〜3700eq/tonの範囲にするのが好ましい。1000〜3400eq/tonがより好ましく、1200〜3000eq/tonがさらに好ましい。第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の設定値が3700eq/tonを超えた場合は、該オリゴマーによる移送ライン等の配管詰りが発生することがある。
該第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーカルボキシル末端基濃度を上記範囲に設定する方法が限定されない。例えば、エステル化反応装置の構造等の製造装置要因や、エステル化反応槽に供給するスラリーのジカルボン酸とグリコールの組成比、エステル化反応温度、エステル化反応圧、エステル化反応時間等のエステル化反応条件等を適宜設定することにより行えばよい。また、エステル化反応工程に水を添加して調整してもよい。
もう一つの重要条件である第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量の変動範囲は±1.7%以内がより好ましく、±1.4%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。
上記第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量の制御方法は限定されない。例えば、以下に示すような方法が挙げられる。
その第1の方法は、第1エステル化反応槽内に滞留する反応物温度および流量、スラリー温度および流量を計測し、第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量が一定になるようにスラリーの持ち込む単位時間当たりの熱量を制御することにより行うのが好ましい。該方法において、スラリーの持ち込む単位時間当たりの熱量の制御方法としては、スラリー温度、スラリー供給量および両者を制御する方法があるが、スラリー供給量を変更すると第1エステル化反応槽の液面変動等のエステル化反応に影響を及ぼす要因の変動を引き起こすことになるので、スラリー流量は一定になるようにして、スラリー温度を制御するのが好ましい。該方法で実施する場合は、スラリー供給量を設定値±3%以内に制御することが好ましい。±2.5%以内がより好ましく、±2.0%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。該スラリーの供給量の制御方法は限定されない。例えば、流量計を用いて設定流量になるように送液ポンプ回転数を変更する方法、送液ラインの送液ポンプの後に、スラリー調合槽に戻るバイパスラインを設け、送液ポンプの回転数を一定回転とし、送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるようにバイパスラインに設けたコントロール弁の開度を調整する方法、スラリー調製槽と第1エステル化反応槽の位置に高低差を設けて、ヘッド圧でスラリーの送液を行い、該送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるように送液ラインに設けたコントロール弁の開度調整により行う等が挙げられる。流量計の種類は限定されない。例えば、ローター流量計、ローターピストン流量計、オーバル流量計およびマイクロモーション流量計等が挙げられる。また、第1エステル化反応槽の液面レベルが一定になるように調整してもよい。また、反応槽内に滞留する反応物温度は、反応槽の底部の缶壁より200〜400mm内部の温度を測定するのが好ましい。
また、第1エステル化反応槽を通過する反応物の通過量は高温用の流量計を用いて第1エステル化反応槽出口の反応物流量を計測する、あるいは該第1エステル化反応槽に供給されるスラリー供給量と第1エステル化反応槽の液面レベルより算出する方法等が挙げられる。
第2の方法は、第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の温度および液面レベルをそれぞれ設定値の±3.0%以内および±0.2%以内になるように制御した上で、エステル化反応槽に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量を設定値の±2.0%以内になるように制御する方法である。
第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動は第1エステル化槽の温度および滞留時間(限定されたポリエステル製造ラインにおいては、反応槽の液面レベル)の影響を受けるので、該要因は上記範囲に制御するのが好ましい。例えば、温度は設定値±2.0%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。また、液面レベルは設定値±0.2%以内が好ましく、±0.1%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.02%が好ましく、±0.05%がより好ましい。該液面レベルの制御は前記のスラリー流量制御を上記範囲にすることにより制御が可能である。
上記要件を満たした上で、エステル化反応槽に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量を設定値の±2.0%以内になるように制御するのが好ましい。±1.7%以内がより好ましく、±1.4%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。
上記の第1エステル化反応槽内に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量の制御方法は限定されない。例えば、第1エステル化反応槽に供給するスラリーの温度およびスラリー流量を計測し、スラリー温度および/またはスラリー流量を制御する方法が挙げられるが、スラリー流量を制御する方法は第1エステル化反応槽内の反応物の液面変動等のエステル化反応に影響する要因の変動に繋がるので、スラリー流量は一定になるようにして、スラリー温度を制御するのが好ましい。該方法で実施する場合は、スラリー供給量を設定値±3.0%以内に制御することが好ましい。±2.5%以内がより好ましく、±2.0%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。該スラリーの供給量の制御方法は限定されない。例えば、流量計を用いて設定流量になるように送液ポンプ回転数を変更する方法、送液ラインの送液ポンプの後に、スラリー調合槽に戻るバイパスラインを設け、送液ポンプの回転数を一定回転とし、送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるようにバイパスラインに設けたコントロール弁の開度を調整する方法、スラリー調製槽と第1エステル化反応槽の位置に高低差を設けて、ヘッド圧でスラリーの送液を行い、該送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるように送液ラインに設けたコントロール弁の開度調整により行う等が挙げられる。流量計の種類は限定されない。例えば、ローター流量計、ローターピストン流量計、オーバル流量計およびマイクロモーション流量計等が挙げられる。また、第1エステル化反応槽の液面レベルが一定になるように調整してもよい。
第3の方法は、第2の方法と同様に第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の温度および液面レベルをそれぞれ設定値の±3.0%以内および±0.2%以内になるように制御した上で、第1エステル化反応槽内に滞留している反応物温度と第1エステル化反応槽供給されるスラリー温度との温度差とスラリー流量およびスラリー比熱より求められ該第1エステル化反応槽供給されるスラリーの単位時間当たりの熱量を設定値の±2.0%以内になるように制御することが好ましい。該上記方法で求められる第1エステル化反応槽内に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量の変動範囲は±1.7%以内がより好ましく、±1.4%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。
該方法は、第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動は第1エステル化反応槽内に滞留している反応物温度で近似でき、かつ該熱量の変動は第1エステル化反応槽内に滞留している反応物温度と第1エステル化反応槽供給されるスラリー温度との温度差とスラリー流量およびスラリー比熱より求められ該第1エステル化反応槽供給されるスラリーの単位時間当たりの熱量変動を小さくすることで抑制できることを見出したことに基づいている。すなわち、第1エステル化反応槽へ供給されるスラリーにより持ち込まれる熱量の変動を抑制すれば第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動抑制ができるとともに、該第1エステル化反応槽へ供給されるスラリーにより持ち込まれる熱量の変動が大きくなると第1エステル化反応槽の温度制御の過応答が起こることがあり、第1エステル化反応槽内に滞留している反応物温度制御が困難となるがあるが、該方法により該過応答の回避に繋がり、第1エステル化反応槽におけるエステル化反応の変動が抑制され、第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が抑制される。
上記方法における第1エステル化反応槽内に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量の制御方法は限定されない。例えば、第1エステル化反応槽内に供給するスラリーの温度およびスラリー流量を計測し、スラリー温度および/またはスラリー流量を制御する方法が挙げられるが、スラリー流量を制御する方法は第1エステル化反応槽内の反応物の液面変動等のエステル化反応に影響する要因の変動に繋がるので、スラリー流量は一定になるようにして、スラリー温度を制御するのが好ましい。該方法で実施する場合は、スラリー供給量を設定値±3.0%以内に制御することが好ましい。±2.5%以内がより好ましく、±2.0%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。該スラリーの供給量の制御方法は限定されない。例えば、流量計を用いて設定流量になるように送液ポンプ回転数を変更する方法、送液ラインの送液ポンプの後に、スラリー調合槽に戻るバイパスラインを設け、送液ポンプの回転数を一定回転とし、送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるようにバイパスラインに設けたコントロール弁の開度を調整する方法、スラリー調製槽と第1エステル化反応槽の位置に高低差を設けて、ヘッド圧でスラリーの送液を行い、該送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるように送液ラインに設けたコントロール弁の開度調整により行う等が挙げられる。流量計の種類は限定されない。例えば、ローター流量計、ローターピストン流量計、オーバル流量計およびマイクロモーション流量計等が挙げられる。また、第1エステル化反応槽の液面レベルが一定になるように調整してもよい。
上記方法で実施する場合のスラリー温度の制御方法は限定されない。例えば、上記スラリー調製槽の温度および/またはテレフタル酸温度を検出し、該調製槽に供給されるグリコール温度にフィードバックし制御するのが好ましい。また、スラリー温度制御はスラリー調製槽やスラリーの移送ラインに熱交換器を設置して制御してもよい。また、スラリー調製槽に循環ラインを設けてスラリー調製槽中のスラリーを循環させて温度制御の精度向上を図ってもよい。該方法の場合は、循環ラインにも温度制御機能を付加するのが好ましい。以上の方法を単独でおこなってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。また、スラリー調製槽出口からエステル化反応槽供給するまでの間にスラリー貯留槽を設けてスラリー温度制御の精度を高めてもよい。該方法の場合に、スラリー貯留槽に温度制御機構を付加してもよい。該スラリー貯留槽を設ける方法はスラリー調製槽におけるスラリー調整はバッチ式で実施してもよい。バッチ式スラリー調製法は、スラリー調製における重要工程管理項目であるスラリーのジカルボン酸とグリコールとの組成比の管理が容易となるので該管理の制御系を簡略化することができるという利点にも繋がる。また、該方法の場合は、スラリー貯留槽において、上記のジカルボン酸とグリコールとの組成比の調整が実施できるので、該組成比の変動抑制に繋げることもできるという利点を有する。該方法においては、スラリー調製を連続法やセミバッチ法で実施してもよい。また、該方法と前者の方法を組み合わせて実施してもよい。
上記のスラリー温度の設定値は限定されないが室温から180℃が好ましい。本発明においては、インプラントで回収された回収グリコールが循環再使用される。該回収グリコールは、エネルギー効率の点より加温状態で循環するのが好ましい。従って、回収グリコールは加温状態にあるので、該設定温度は加温状態が好ましく70〜150℃がより好ましい。本発明においては、該循環再使用される回収グリコールの温度変動はスラリー温度変動に影響する。従って、該回収グリコールの温度管理や供給量管理は重要管理項目となる。
本発明においては、第1エステル化反応槽圧力を設定値±4%以内になるように制御するのが好ましい。±3%以内がより好ましい。±2%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。該第1エステル化反応槽圧力が設定値±4%を超えた場合は、前記制御をしても第1エステル化反応槽出口のオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が後述の範囲を超えることがあるので好ましくない。
上記第1エステル化反応槽圧力の設定値は限定されないが、前述のごとく大気圧〜300kPaが好ましい。20〜280kPaが好ましく、40〜260kPaがさらに好ましく、蒸留塔の塔頂圧力調整法で調整するのが好ましい。
また、該スラリーの中のジカルボン酸とグリコールとのモル比もエステル化反応に影響するので一定範囲に制御することが好ましい。該変動範囲は、前記した公知技術の範囲で十分である。設定値±0.3%以内が好ましい。設定値±0.25%以内がより好ましく、設定値±0.2%以内がさらに好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.01%が好ましく、±0.02%がより好ましい。
第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値±10%以内に抑制するのが重要である。±9%以内が好ましく、±8%以内がより好ましく、±6%以内がさらに好ましい。該範囲にすることにより最終エステル化反応槽出口のオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動を好ましい範囲に抑制することが可能となり、後続の重縮合反応や得られるポリエステルの品質の安定化に繋げることができるので好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.5%が好ましく、±1.0%がより好ましい。
なお、本発明においては、回収PETボトルの化学分解回収法で得られたテレフタル酸、ジメチルテレフタレートあるいはエチレングリコール等のリサイクル原料を用いることは、省資源や環境保護に役立つので好ましい実施態様である。
本発明方法により得られたポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス気流下でポリエステル樹脂を加熱し、さらに重縮合を進めたり、該ポリエステル樹脂中に含まれている環状3量体等のオリゴマーやアセトアルデヒド等の副生成物を除去する等の手段を取ることも何ら制約を受けない。また、例えば超臨界圧抽出法等の抽出法でポリエステル樹脂を精製し前記の副生成物等の不純物を除去する等の処理を行うことを取り入れても良い。
本発明のポリエステル中には、有機系、無機系、及び有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤などを含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色をさらに優れたレベルにまで抑えることができる。また他の任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルの成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは対象とするポリエステルの構造や得られるポリエステルの要求性能に応じてそれぞれ適宜選択すれば良い。
本発明の製造法で得られたポリエステルは常法の溶融紡糸法により繊維を製造することが可能であり、紡糸・延伸を2ステップで行う方法及び1ステップで行う方法が採用できる。さらに、捲縮付与、熱セットやカット工程を備えたステープルの製造方法やモノフィラメントなど公知の繊維製造方法がすべて適用できるものである。
また得られた繊維は異型断面糸、中空断面糸、複合繊維、原着糸等の種々繊維構造となすことができ、糸加工においても例えば混繊、混紡、等の公知の手段を採用することができる。
更に上記ポリエステル繊維は織編物或いは不織布、等の繊維構造体となすことができる。
そして上記ポリエステル繊維は、衣料用繊維、カーテン、カーペット、ふとん綿、ファイバーフィル等に代表されるインテリア・寝装用繊維、タイヤコード、ロープ等の抗張力線、土木・建築資材、エアバッグ等の車輛用資材、等に代表される産業資材用繊維、各種織物、各種編物、ネット、短繊維不織布、長繊維不織布用、等の各種繊維用途に使用することができる。
本発明のポリエステルの製造方法で得られたポリエステルは、中空成形体として好適に用いられる。
中空成形体としては、ミネラルウオーター、ジュース、ワインやウイスキー等の飲料容器、ほ乳瓶、瓶詰め食品容器、整髪料や化粧品等の容器、住居および食器用洗剤容器等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエステルの持つ衛生性及び強度、耐溶剤性を活かした耐圧容器、耐熱耐圧容器、耐アルコール容器として各種飲料用に特に好適である。中空成形体の製造は、溶融重合や固相重合によって得られたポリエステルチップを真空乾燥法等によって乾燥後、押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって成形する方法や、溶融重合後の溶融体を溶融状態のまま成形機に導入して成形する直接成形方法により、有底の予備成形体を得る。さらに、この予備成形体を延伸ブロー成形、ダイレクトブロー成形、押出ブロー成形などのブロー成型法により最終的な中空成形体が得られる。もちろん、上記の押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって得られた成形体を最終的な中空容器とすることもできる。
このような中空成形体の製造の際には、製造工程で発生した廃棄樹脂や市場から回収されたポリエステル樹脂を混合することもできる。このようなリサイクル樹脂であっても、本発明のポリエステル樹脂は劣化が少なく、高品質の中空成型品を得ることができる。
さらには、このような容器は、中間層にポリビニルアルコールやポリメタキシリレンジアミンアジペートなどのガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。また、蒸着やCVD(ケミカルベーパーデポジット)等の方法を用いて、容器の内外をアルミニウムなどの金属やダイヤモンド状カーボンの層で被覆することも可能である。
なお、中空成形体の口栓部等の結晶性を上げるため、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加することもできる。
また、本発明のポリエステルの製造方法で得られたポリエステルは押し出し機からシ−ト状物に押し出し、シートとすることもできる。このようなシートは、真空成形や圧空成形、型押し等により加工し、食品や雑貨用のトレイや容器、カップ、ブリスタ−パック、電子部品のキャリアテープ、電子部品配送用トレイとして用いる。また、シートは各種カードとして利用することもできる。
これら、シートの場合でも、上述のような中間層にガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。
また、同様にリサイクル樹脂を混合することもできる。さらには、結晶性の耐熱性容器とすることを目的に、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加し、結晶性を高めることできる。
本発明のポリエステルの製造方法で得られたポリエステルは、フィルムに用いることができる。その方法は、ポリエステルを溶融押出しし、T−ダイスより冷却回転ロール上にシート状に成型し、未延伸シートを作成する。この際、例えば特公平6−39521号公報、特公平6−45175号公報に記載の技術を適用することにより、高速製膜性が可能となる。また、複数の押出し機を用い、コア層、スキン層に各種機能を分担させ、共押出し法により積層フィルムとしても良い。
本発明のポリエステルの製造方法で得られたポリエステルは、配向ポリエステルフィルムに用いることができる。配向ポリエステルフィルムは、公知の方法を用いて、ポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度未満で、少なくとも一軸方向に1.1〜6倍に延伸することにより得ることができる。
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムを製造する場合、縦方向または横方向に一軸延伸を行い、次いで直交方向に延伸する逐次二軸延伸方法、縦方向及び横方向に同時に延伸する同時二軸延伸する方法、さらに同時二軸延伸する際の駆動方法としてリニアモーターを用いる方法のほか、横・縦・縦延伸法、縦・横・縦延伸法、縦・縦・横延伸法など、同一方向に数回に分けて延伸する多段延伸方法を採用することができる。
さらに、延伸終了後、フィルムの熱収縮率を低減させるために、(融点−50℃)〜融点未満の温度で30秒以内、好ましくは10秒以内で熱固定処理を行い、0.5〜10%の縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが好ましい。
前述のごとく本発明のポリエステルは優れた静電密着性を有しているので、該フィルムの製造時のキャスティング工程には静電密着法を採用するのが好ましい実施態様である。
得られた配向ポリエステルフィルムは、厚みが1μm以上1000μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上200μm以下である。1μm未満では腰が無く取り扱いが困難である。また1000μmを超えると硬すぎて取り扱いが困難である。
また、接着性、離型性、制電性、赤外線吸収性、抗菌性、耐擦り傷性、などの各種機能を付与するために、配向ポリエステルフィルム表面にコーティング法により高分子樹脂を被覆してもよい。また、被覆層にのみ無機及び/又は有機粒子を含有させて、易滑高透明ポリエステルフィルムとしてもよい。さらに、無機蒸着層を設け酸素、水、オリゴマーなどの各種バリア機能を付与したり、スパッタリング法などで導電層を設け導電性を付与することもできる。また、配向ポリエステルフィルムの滑り性、走行性、耐摩耗性、巻き取り性などのハンドリング特性を向上させるために、ポリエステルの重合工程で、無機及び有機塩粒子又は耐熱性高分子樹脂粒子を添加して、フィルム表面に凹凸を形成させてもよい。また、これらの粒子は無機・有機又は親水・疎水等の表面処理がされたもの、されていないもの、どちらを使っても良いが、例えば分散性を向上させる等の目的で、表面処理した粒子を用いる方が好ましいケースがある。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート等が挙げられる。
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他に、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
上記不活性粒子を基材フィルムとなるポリエステル中に含有させる方法は、限定されないが、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で不活性粒子をスラリー状に分散処理し、該不活性粒子スラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフィルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステル樹脂に分散処理した不活性粒子の水スラリーを添加する方法、(c)ポリエステル樹脂と不活性粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステル樹脂と不活性粒子のマスターレジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
重合反応系に添加する方法の場合、不活性粒子のジオールスラリーを、エステル化反応またはエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、不活性粒子のジオールスラリーを調製する際には、高圧分散機、ビーズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
分散安定化処理としては、例えば無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的な反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合にはトリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
また、不活性粒子のジオールスラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重合反応系へ添加した際のヒートショック(スラリーと重合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
本発明の配向ポリエステルフィルムは、好ましくは帯電防止性フィルム、易接着性フィルム、カード用、ダミー缶用、農業用、建材用、化粧材用、壁紙用、OHPフィルム用、印刷用、インクジェット記録用、昇華転写記録用、レーザービームプリンタ記録用、電子写真記録用、熱転写記録用、感熱転写記録用、プリント基板配線用、メンブレンスイッチ用、プラズマディスプレイ用、タッチパネル用、マスキングフィルム用、写真製版用、レントゲンフィルム用、写真ネガフィルム用、位相差フィルム用、偏光フィルム用、偏光膜保護(TAC)用、プロテクトフィルム用、感光性樹脂フィルム用、視野拡大フィルム用、拡散シート用、反射フィルム用、反射防止フィルム用、導電性フィルム用、セパレータ用、紫外線防止用、バックグラインドテープ用などに用いられる。
帯電防止用フィルムとしては、例えば特許第2952677号公報、特開平6−184337号公報に記載の技術を用いることができる。易接着性フィルムとしては、例えば特公平07−108563、特開平10−235820、特開平11−323271号公報に、カード用としては例えば特開平10−171956、特開平11−010815号公報に記載の技術を本発明のフィルムに適用できる。ダミー缶用としては例えば特開平10−101103号公報に記載のシート状筒体の替わりに、本発明のフィルム上に意匠を印刷し筒状、半筒状にしたものを用いることができる。建材用、建材用化粧版、化粧材用としては、例えば特開平05−200927号公報に記載の基材シート、特開平07−314630号公報に記載の透明シートとして本発明のフィルムを用いることができる。OHP用(オーバーヘッドプロジェクタ用)としては特開平06−297831号公報に記載の透明樹脂シート、特開平08−305065号公報に記載の透明高分子合成樹脂フィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。インクジェット記録用としては、例えば特開平05−032037号公報に記載の透明基材として本発明のフィルムを用いることができる。昇華転写記録用としては例えば特開2000−025349号公報に記載の透明なフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。レーザービームプリンタ用、電子写真記録用としては例えば特開平05−088400号公報に記載のプラスチックフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。熱転写記録用としては例えば特開平07−032754号公報に感熱記録用としては特開平11−034503号公報にそれぞれ記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。プリント基板用としては例えば特開平06−326453号公報に記載のポリエステルフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。メンブレンスイッチ用としては例えば特開平05−234459号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。光学フィルタ(熱線フィルタ、プラズマディスプレイ用)としては、例えば特開平11−231126号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。透明導電性フィルム、タッチパネル用としては例えば特開平11−224539号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。マスキングフィルム用としては、例えば特開平05−273737号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。写真製版用としては例えば特開平05−057844号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。写真用ネガフィルムとしては例えば特開平06−167768号公報の段落番号(0123)に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。位相差フィルム用としては例えば特開2000−162419号公報に記載のフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。セパレータ用としては、例えば特開平11−209711号公報の段落番号(0012)に記載のフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。紫外線防止用としては例えば特開平10−329291号公報に記載のポリエステルフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。農業用フィルムとしては、特開平10−166534号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明のフィルムを適用することにより得ることができる。粘着シートとしては例えば特開平06−122856号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明の配向ポリエステルフィルムを適用することにより得られる。
これら、シートの場合でも、上述のような中間層にガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。
また、同様にリサイクル樹脂を混合することもできる。さらには、結晶性の耐熱性容器とすることを目的に、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加し、結晶性を高めることできる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、評価法は以下の方法で実施した。
1、固有粘度(IV)の測定
フェノール/テトラクロロエタン(60:40、重量比)混合溶媒を用いて、30℃で測定した。
2、ポリマー溶融比抵抗(ρi)
275℃で溶融したポリエステル中に2枚の電極板を置き、120Vの電圧を印加した時の電流値(i)を測定し、比抵抗値ρiを次式により求める。
ρi(Ω・cm)=A/l×V/ i
ここで、A=電極面積(cm)、l=電極間距離(cm)、V=電圧(V)である。
3、静電密着性
押出機の口金部と冷却ドラムの間にタングステンワイヤー製の電極を設け、電極とキャスティングドラム間に10〜15KVの電圧を印加してキャスティングを行い、得られたキャスティング原反の表面を肉眼で観察し、ピンナーバブルの発生が起こり始めるキャスティング速度で評価する。キャスティング速度が大きいポリマー程、静電密着性が良好である。
4、回収エチレングリコールの組成分析
試料液に30容量%のジメチルスルホキサイドを添加し、H−NMRおよびC−NMR測定を行い評価した。
5、回収エチレングリコール中のリン原子含有量の定量
試料を硝酸マグネシウム共存下、550℃で灰化後、1.2M塩酸溶液としてから高周波プラズマ発光分析法により定量した。
6、回収グリコール中の水分量
試料中の水分量に見合った量の試料をマイクロシリンジあるいは注射器で採取し、電子天秤で精秤した後、KF水分率計(京都電子工業(株)製、MKC−210)を用いて水の量を測定し、試料に対する質量%として算出した。
実施例1
エステル化反応装置として、攪拌装置、蒸留塔、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を使用し、テレフタル酸を2トン/hrとし、エチレングリコールをテレフタル酸1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してアンチモン原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で255℃で反応させた。次に、上記第1エステル化反応缶内の反応性生物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるエチレングリコールを生成ポリマー(生成PET)に対し8重量%供給し、さらに、生成PETに対してマグネシュウム原子が80ppmとなる量の酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液、生成PETに対してナトリウム原子で5ppmとなる量の酢酸ナトリウムのエチレングリコール溶液および生成PETに対してリン原子が30ppmのとなる量のトリエチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で260℃で反応させた。次に、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してリン原子が39ppmとなる量のトリエチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で260℃で反応させた。
なお、上記エステル化反応工程において、第1エステル化反応槽内に滞留する反応物温度および反応物の通過量および反応物の比熱より第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量を算出し、該熱量が一定になるように、該第1エステル化反応槽に供給されるスラリーの単位時間当たりの熱量を制御した。なお、反応槽内に滞留する反応物温度は、反応槽の底部の缶壁より300mm内部に入った位置で測定した。また、第1エステル化反応槽の反応物の通過量は第1反応槽に供給されるスラリー供給量と第1エステル化反応槽の液面レベルより算出した。また、スラリー熱量は、スラリー供給量の変動をロータリーピストン流量計を用いて送液ポンプの回転数を変えて設定値の±2.0%以内になるように制御した上でスラリー温度を調整することにより行った。該スラリー温度制御はスラリー調製槽内温度と該調製槽に供給するグリコール温度を連続的に監視しながら、フィードバック回路により連続的にグリコール添加温度を熱交換器を用いて変更することとスラリー調製槽に温度調整機能を付加してスラリー温度調整精度を上げる方法で実施した。第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動は±1.9%であった。なお、第1エステル化反応槽に供給するスラリー温度は110℃を中心値として熱量制御をした。また、熱量計算の単位時間は1時間当たりで算出した。また、エチレングリコール及びテレフタル酸をモル比は、±0.25%以内に制御した。該モル比の調整は、近赤外線分光光度計を用いてスラリーのテレフタル酸量を計測して、スラリー調製槽に供給するエチレングリコール量を調整することにより行った。また、第1エステル化反応槽の圧力変動は±1.3%以内に制御した。また、第1エステル化反応槽の液面レベルの変動は±0.2%以内であった。
上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行いPETを得た。
上記ポリエステル製造工程におけるエチレングリコールの流れを図1に示す。
スラリー調合槽2へ供給される新規エチレングリコールと回収エチレングリコールは質量比で0.4:0.6である。
第1エステル化反応槽3より留出する留出分は段数が15段の泡鐘タイプの蒸留塔9に、第2エステル化反応槽4、第3エステル化反応槽5および重縮合反応槽6〜8より留出する留分は段数が9段の泡鐘タイプの蒸留塔10に供給され水を主体として低沸点留分を除去する。3基の重縮合反応槽6〜8よりから留出する留出分は減圧系で発生するため各反応槽に設置された湿式コンデンサーで凝縮させてエチレングリコール凝縮液貯槽16〜18に供給された後に蒸留塔10に供給される。該供給液は熱交換器22で蒸留のための熱量が供給される。この時、湿式コンデンサーに噴霧されるエチレングリコール液の温度の上昇を抑えるために冷却器19〜21で冷却し湿式コンデンサーに供給される。この凝縮液は各湿式コンデンサーで凝縮された凝縮液自体の自己循環で実施されるが、必要に応じて新規エチレングリコールを供給してもよい。また、上記凝縮液はエチレングリコール凝縮液貯槽16〜18に設置した金網で固形分を分離して蒸留塔10に供給した。両蒸留塔ともに、底部より取り出される残留分の一部をそれぞれの蒸留塔の中間部に循環させた。該循環液の温度は168℃近辺で安定していた。該循環により蒸留塔底部より取り出される残留液(本実施例の場合は回収エチレングリコール)の送液ラインの詰まりは発生しなかった。蒸留塔9は、7段目に設置した温度検出器で検出した温度が106±2℃になるよう制御した。得られた残留分はエチレングリコール貯層15に供給される。得られた回収エチレングリコール中の水分量は3±0.5質量%に制御されていた。また、蒸留塔10は5段目の空間の温度は126±2℃で制御し、得られた残留分は蒸留塔9の中段に供給した。また、前述のごとく該残留分の一部を第2エステル化反応槽に供給した。得られた残留分中の水分量は0.5±0.5質量%であった。なお、エステル化反応槽3〜5からの留出分に関しては、蒸留に必要な熱は留出分自体が有する熱量で足りるので加熱の必要はない。なお、蒸留塔の塔頂の圧力を100kPa±2%以内(ゲージ圧)に制御した。該圧力は蒸留塔ベント配管に設置した調圧弁で制御した。
該製造のスタートは、上記回収グリコールはスラリー調製槽に戻すことなくポリエステル製造系外に取り出した。反応が安定化した時点で上記のような回収グリコールの循環再使用を開始した。該循環再使用の開始と同時に第3エステル化反応缶に供給するトリエチルリン酸のエチレングリコール溶液の供給量を生成PETに対してリン原子が30ppmとなるように供給量を低減した。
反応が安定した時点のPETの極限粘度は0.62、溶融比抵抗は0.18×10Ω・cmであり、最大キャスチング速度は65m/分であった。
回収グリコールを循環再使用し始めてからは12時間に1回の割合で得られるポリエステル中のリン原子含有量を測定して、該リン原子含有量が60ppmになるように第3エステル化反応缶に供給するトリエチルリン酸のエチレングリコール溶液の供給量を調整した。
以上の方法により連続的にPETを生産し、時間の異なる代表サンプルを採取した。そのサンプルの極限粘度、オリゴマー酸価、ポリマー酸価および溶融比抵抗を測定した。そのサンプル間の平均値、変動幅を表1に示す。いずれの測定値も良好で安定に推移し、品質変動の小さいポリエステルが得られた。また、長期にわたり安定性生産ができた。
なお、表1に示した値は、12時間毎にサンプリングした50個のサンプル(25日分)の評価結果である。また、変動幅は、50個のサンプルの最大値、最小値および平均値より下記式(1)で求めた。
[{(最大値―最小値)×1/2}/平均値]×100(%)・・・・(1)
比較例1
実施例1の方法において、回収グリコールの循環再使用後も第3エステル化反応缶に供給するトリエチルリン酸のエチレングリコール溶液の供給量の変更および制御を行わずに一定量を供給するように変更する以外は、実施例1と同様の方法でPETを得た。本比較例においては、回収グリコール中にリン化合物が含まれており、製造の時間の経過に伴いPET中のリン原子含有量が増加して行き静電密着性が段々悪化して行くので好ましくない。例えば、回収グリコールの循環再使用を開始して48時間が経過後のPETの溶融比抵抗は0.88×108Ω・cmと高く、最大キャスチング速度は28m/分であり、静電密着性が著しく劣っていた。
(実施例2)
実施例1の方法において、第1エステル化反応槽に供給するスラリー流量の変動幅を設定値±1.0%に向上するように変更する以外は、実施例1同様の方法でポリエステルを得た。第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動は±1.1%に向上した。結果を表1に示す。実施例1よりもさらに品質変動が抑制された。
(実施例3)
実施例1の方法において、スラリー調製槽からエステル化反応槽への移送ラインの途中に攪拌機および温度調整機能を有したスラリー貯留槽を設けて、該スラリー貯留槽においてもスラリーの温度制御を行いスラリー温度の調整精度を上げるように変更する以外は、実施例1同様の方法でポリエステルを得た。第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動は±0.6%に向上した。結果を表1に示す。実施例1や実施例2よりもさらに品質変動が抑制された。
(実施例4)
実施例1の方法において、蒸留塔9および10温度制御精度を±1%に向上させてかつ、スラリー中の水分量管理を近赤外線分光光度計を用いて行うように強化することにより、スラリー中の水分量が1.8±0.1%以内になるように変更する以外は、実施例1同様の方法でポリエステルを得た。結果を表1に示す。実施例1よりもさらに品質変動が抑制された。
(実施例5)
実施例1の方法において、第1エステル化反応槽内に滞留している反応物の温度および液面レベルの変動を±1.3%以内および±0.2%以内に制御し、実施例1と同様の方法で第1エステル化反応槽に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量変動を±1.9%になるように制御するように変更する以外は、実施例1同様の方法でPETを得た。結果を表1に示す。実施例1で得られたものと同等であり高品質であった。なお、熱量計算の単位時間は1時間当たりで算出した。
(実施例6)
実施例1の方法において、第1エステル化反応槽内に滞留している反応物の温度および液面レベルの変動を±1.3%以内および±0.2%以内に制御し、第1エステル化反応槽内に滞留している反応物温度と第1エステル化反応槽に供給されるスラリー温度を計測してこれらの温度差とスラリー流量およびスラリー比熱より算出される該スラリーにより持ち込まれる単位時間当りの熱量が一定になるように実施例1と同様の方法でスラリー温度を制御することにより、第1エステル化反応槽に供給するスラリーの単位時間当たりの熱量変動を±1.7%に制御するように変更する以外は、実施例1同様の方法でPETを得た。結果を表1に示す。実施例1で得られたものと同等であり高品質であった。なお、熱量計算の単位時間は1時間当たりで算出した。また、反応槽内に滞留する反応物温度は、反応槽の底部の缶壁より300mm内部に入った位置で測定した。
(実施例7)
実施例1の方法において、第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量が一定になる制御およびスラリー温度の制御を取りやめる以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを得た。第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動は±4.9%であった。結果を表1に示す。実施例1に比べて品質変動はやや悪化したが、比較例1のような静電密着性の大幅悪化は見られなかった。
(実施例8)
実施例1の方法において、スラリー調製時のエステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量が一定になる制御を止め、単に、スラリー調製槽内温度と該調製槽に供給するグリコール温度を連続的に監視しながら、フィードバック回路により連続的にグリコール添加温度を熱交換器を用いて変更しスラリー調製槽内のスラリー温度が一定になるように調整するのみに変更する以外は、実施例1と同様の方法でPETを得た。第1エステル化反応槽内に滞留する反応物の単位時間当たりの熱量変動は±3.5%であった。結果を表1に示す。実施例1に比べて品質変動はやや悪化したが、比較例1のような静電密着性の大幅悪化は見られなかった。
(実施例9)
実施例1において、蒸留塔9および10の棚段数を7段として、温度検出器の位置を4段目の空間に変更し、該温度を106±5℃で管理するよう変更する以外は、実施例1同様の方法でポリエステルを得た。回収エチレングリコール中の水分量は3±2.2質量%であった。結果を表2に示す。実施例1に比べて品質変動はやや悪化したが、比較例1のような静電密着性の大幅悪化は見られなかった。
(実施例10)
実施例1の方法において、第3エステル化反応缶に供給するトリエチルリン酸のエチレングリコール溶液の供給量を調整を行わず、全製造期間に渡り、一定量を供給する以外は、実施例1と同様の方法でPETを得た。結果を表2に示す。実施例1よりは静電密着性の変動が増大したが、比較例1のような大幅悪化は見られなかった。
(比較例2)
比較例1の方法において、蒸留塔9および10に設けた蒸留塔底部より抜き出した残留分の蒸留塔への循環ラインを取り外し、該循環を取りやめて残留分の全量をそれぞれの供給先に送液するように変更した。本比較例で実施した場合は、比較例1の方法の課題に加えて、蒸留塔底部から抜き出した残留分の送液ラインにおいて、時々固形分析出によるライン詰りが起こり、長期に渡り安定生産をすることができなかった。
Figure 2008001798
Figure 2008001798
以上、本発明のポリエステルの製造方法について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
本発明によるポリエステルの製造方法は、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルの製造工程で留出するグリコールを循環再使用する場合に課題となる該留出グリコールに含まれるリン化合物により引き起こされるポリエステル品質の低下を経済性の高い方法で回避しているので、原料費、運転経費の削減と設備の簡略化が達成できポリエステルの製造コストを大幅に低減することができるという利点を有する。また、該製造方法において、高品質、特に静電密着性の優れたポリエステルが安定して製造できる。さらに、ポリエステルの品質変動が抑制されているので、極めて均質なポリエステルが安定して生産することができるという極めて顕著な効果を奏する。また、本発明のポリエステルは安価である上に、高品質、特に静電密着性が優れており、かつ、品質変動が少なく均質性に優れているので、例えば、フィルム等の成型体の原料樹脂として好適であるという利点を有するので産業界に寄与することが大である。
実施例1および2におけるポリエステル製造工程のエチレングリコールの流れ図である。 比較例2におけるポリエステル製造工程のエチレングリコールの流れ図である。
符号の説明
1:計量タンク
2:スラリー調合槽
3:第1エステル化反応槽
4:第2エステル化反応槽
5:第3エステル化反応槽
6:第1重縮合反応槽
7:第2重縮合反応槽
8:第3重縮合反応槽
9、10:蒸留塔
11〜13:湿式コンデンサー
14:エチレングリコール貯槽
15〜17:エチレングリコール凝縮液貯槽
18〜20:冷却器
21:熱交換器
22〜37:ポンプ

Claims (12)

  1. スラリー調製槽で調製されたジカルボン酸とグリコールからなるスラリーをエステル化反応槽に連続的に供給し、2槽以上の反応槽を直列に繋いだ複数個のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行い、引き続き重縮合を行うことによりポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルは少なくともアルカリ土類金属原子およびリン原子を含んでなり、かつ下記要件(1)、(2)を同時に満たすことを特徴とするポリエステルの製造方法。
    (1)上記ポリエステルの製造工程で留出するグリコールを該ポリエステルの製造装置に直結した蒸留塔で低沸点留分を分留除去した残留液を回収グリコールとして循環再使用すること。
    (2)回収グリコール中のリン化合物含有量を、新規のリン化合物の供給量から低減させて、必要量のリン化合物を供給すること。
  2. 上記ポリエステルの製造工程に供給する新規のリン化合物の供給量を調整することにより、得られるポリエステル中のリン原子の含有量を設定値±10%以内に制御することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. 上記蒸留塔を少なくとも2基設け、第1エステル化反応槽から留出するグリコールと第2エステル化反応槽以降で留出するグリコールとを区分して分留することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
  4. 第2エステル化反応槽以降で留出するグリコールの分留残留液を第1エステル化反応槽から留出するグリコールを分留する蒸留塔に供給し、該第1エステル化反応槽から留出するグリコールを分留する蒸留塔の分留残留液を回収グリコール成分として循環再使用することを特徴とする請求項3に記載のポリエステルの製造方法。
  5. 上記回収グリコール中の水分量を1質量%以上で、かつX±2.0質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)を同時に満足する範囲を満たすように制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  6. 上記蒸留塔の塔底より抜出した残留液の一部を、それぞれの蒸留塔に循環することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  7. 上記回収グリコールの一部を第2エステル化反応槽以降のエステル化反応槽に供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  8. 上記ポリエステルがアルカリ金属を含んでなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  9. 新規のリン化合物の供給を少なくとも2箇所に分割して行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  10. 上記の新規リン化合物の供給量の調整を分割供給の最後の供給分で行うことを特徴とする請求項9に記載のポリエステルの製造方法。
  11. 第1エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を設定値の±10%以内に制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法で得られたポリエステルであって、該ポリエステルの溶融比抵抗が0.5×10Ω・cm以下であることを特徴とするポリエステル。
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