JP2007533326A - RNAiベースの標的の同定及び検証 - Google Patents

RNAiベースの標的の同定及び検証 Download PDF

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Abstract

本発明は、生理的な疾病関連状況における薬物標的の同定及び検証のためのハイスループットスクリーニングにおいてRNAiを使用する方法を提供する。

Description

発明の背景
1.発明の属する技術分野
本発明は、生物学的に関連した経路の標的を同定し、そして検証するための方法に関する。より詳しく述べると、本発明は、哺乳動物病態モデルにてインビボ及びインビトロで薬物標的を同定し、そして検証するためのRNAiの使用に関する。
2.従来の技術
a.ドラッグデザイン
薬物を市場に売り出すまでの平均的な歳月は、ここ30年間で平均8.5年から13年を超えるまでに増加している。同時に、薬物を市場に売り出すまでの平均的な経費は、2003年現在で8億9000万ドルを超えるまでに増大している。60%を上回るこの憂慮すべき減速の割合は、治験のフェーズII、及び/又はフェーズIIIにおける有効性の不足、並びに作用機序に基づく毒性によって占められている。フェーズIIに失敗する薬物の平均経費は、5000万ドルを超えている。これ以上の失敗の可能性を減少させるために、特定の疾病において原因として関与する適切な特異的薬剤標的、及びこれらの原因を調節する因果関係、疾病に関連する分子標的を同定するための方法の必要性が残っている。
b.遺伝子機能の同定
2つの主要なストラテジーが、所定の生物における遺伝子機能を明確にするために使用される:「順遺伝学」は突然変異させた場合に十分に規定された表現型の変化を誘発する遺伝子の同定を利用し(表現型から遺伝子型へ)、これに対して「逆遺伝学」は既知DNA配列の発現若しくは機能の意図的な変更、そして結果として起こる表現型の観測に基づいている(遺伝子型から表現型へ)。順遺伝学的スクリーニングは、例えば酵母、キイロショウジョウバエ(Drosophila)、及びC.エレガンス(C. elegans)などのモデル生物に適している、なぜなら、彼らのゲノムは簡単、且つ、効率的に変更でき、多くの突然変異体からの所望の表現型を有する希少な個体の同定を可能にするからである。実際に、これらの生物において行われたランダム突然変異誘発は、細胞サイクル及び***のような基本的な生物学的過程、プログラムされた細胞死、並びに胚パターン形成に係わる遺伝子の発見につながった。
例えばマウスなどのより複雑な実験用生物において、遺伝子機能を明確にするために逆遺伝学的ストラテジーが伝統的に好まれてきた、なぜなら、これらの種のゲノムを操作すること、及び多数の突然変異体を得ることがより難しいからである。相同組換えによる遺伝子除去は、強力な逆遺伝学的手段であり、且つ、大規模な基盤で、例えば酵母などのいくつかの実験用生物において比較的容易に実施できる。しかしながら、その措置は、マウスにおいてより面倒、且つ、手間がかかるものであり、そして一度にたった1つの遺伝子の「ノックアウト」しか可能ではない。マウスのそれを含めた多くの主要な実験用生物の完全ゲノム配列が利用可能になっているので、何百又は何千もの遺伝子の機能アノテーションを可能にするハイスループットでの逆遺伝学的技術に関する需要が増大している。
c.RNAi
二本鎖RNA分子による配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングの発見は、遺伝子の発現及び機能を中断させる新規ストラテジーを提供する(Dykxhoorn et al.、Nat Rev Mol Cell Biol 4:457-67ページ、2003年;Hannon、Nature 418:244-251ページ、2002年;Zamore、Science 296:1265-1269ページ、2002年)。
1)原始生物
1998年の2つの大きな科学上の飛躍的進歩が、大規模な機能的ゲノム・スクリーニングの基礎を提供した:C.エレガンス・ゲノムが配列決定され、そしてRNAiが同じ生物において発見された(Fireら、Nature 391:806-811ページ、1998年)。その後すぐ、RNAiを誘発するために開発された初期のマイクロインジェクション・プロトコールが、より着実で効率的な手順:所望のdsRNAを過剰発現している細菌をワームに与える、によってすぐに置き換えられた(Timmonsら、Gene 2001年、263:103-112ページ;Timmonsら、Nature 1998年、395:854ページ)。これが、dsRNAライブラリの作製、及びRNAiベースのハイスループットの遺伝学的スクリーニングを可能にした(Kamathら、Methods 30:313-321ページ、2003年)。最初の大規模スクリーニングは、生存能力及び不稔性のような容易に検出可能な表現型の変化に焦点を合わせ、且つ、第I及び第III染色体上に位置する何百個もの遺伝子の生物学的役割を同定した(Gonczyら、Nature 2000年、408:331-336ページ;Fraserら、Nature 2000年、408:325-330ページ)。更に最近、予測される転写産物の86%を標的としたゲノム全般でのRNAiスクリーニングが、更に1,700個の遺伝子の機能アノテーションにつながった(Kamathら、Nature 2003年、421:231-237ページ)。これらの及び他のRNAiベースのスクリーニングは、マウス及びヒトにおけるオルソログを保存していて、且つ、脂肪代謝、ミトコンドリア機能、又は胚形成と同じくらいさまざまな過程に関与する遺伝子の役割を同定した(Leeら、Nat Genet 2003年、33:40-48ページ;Pianoら、Curr Biol 2000年、10:1619-1622ページ;Pianoら、Curr Biol 2002年、12:1959-1964ページ;Ashrafiら、Nature 2003年、421:268-272ページ)。
長い二本鎖RNA分子は、他のよく知られているモデル生物であるショウジョウバエの遺伝子発現もまた効率的に抑制することができる(Kennerdellら、Cell 1998年、95:1017-1026ページ;Misquittaら、Proc Natl Acad Sci USA 1999年、96:1451-1456ページ)。60%を超える疾病関連遺伝子がこの動物に対してホモログを持っているので、ヒトの生物学において、キイロショウジョウバエは特に関連がある。そのうえ、確立されたキイロショウジョウバエ細胞株は、培養液からdsRNAを容易に取り込むことができる(Caplenら、Gene 2000年、252:95-105ページ;Clemensら、Proc Natl Acad Sci USA 2000年、97:6499-6503ページ)。数年前のキイロショウジョウバエ・ゲノム・プロジェクトのこの観測、そして完了は、主に、Wnt、Hh、PI3K、及びMAPK経路のような重要なシグナル伝達カスケードに焦点を合わせた昆虫細胞系における体系的な機能喪失スクリーニングの創始を可能にした(Clemensら、2000年;Mudaら、Biochem J 2002年、366:73-77ページ)。最近、全ての既知のキナーゼ及びホスファターゼを含む、キイロショウジョウバエ遺伝子の43%を標的とするdsRNAライブラリが合成された(Lumら、Science 2003年、299:2039-2045ページ)。RNAiを使用する他のハイスループットスクリーニングにおいて、約1000個の予測される細胞形状制御分子が、160個の遺伝子のサイレンシングと相関関係がある十分に規定された形態学的表現型を検出するために標的とされた(Kigerら、J Biol 2003年、2:27ページ)。
要約すると、C.エレガンス及びキイロショウジョウバエにおけるゲノム全体のRNAiスクリーニングが、何百個もの遺伝子の機能アノテーションに適したアプローチになった。これらの生物がヒト遺伝子のホモログを発現する場合には、このアプローチが疾病関連遺伝子の作用の見込まれる様式に関する重要な洞察力を提供した。しかしながら、ヒト組織の正常及び病的な機能に関する実験台としてのC.エレガンス及びキイロショウジョウバエの使用は、脊椎動物のゲノム及び生理学のより高度な複雑さによって制限される。これは、哺乳動物細胞及び組織で遺伝子機能を直接アッセイするためにRNAiベースのストラテジーの開発を促した。
2)哺乳動物組織培養細胞におけるRNAiスクリーニング
哺乳動物細胞培養系へのRNAiの初期の適用は、長鎖dsRNA分子がタンパク質合成の広範囲の(非特異的な)停止をもたらす抗ウイルス応答を誘発するという事実によって妨げられた。約21〜23bpの長さの、いわゆる短鎖干渉RNA(siRNAs)がインターフェロン経路を活性化せずに配列特異的な遺伝子サイレンシングを誘発することができることの発見が、哺乳動物における機能的ゲノム学のためのRNAiの使用を可能にした(Elbashirら、Nature 2001年、411:494-498ページ;Caplenら、Proc Natl Acad Sci USA 2001年、98:9742-9747ページ)。
ハイスループットでのRNAiベースのスクリーニングは、細胞死の制御に関与する重要な経路の新規構成要素の同定を可能にするヒト細胞培養系において実施された。プラスミド媒介性shRNAデリバリーを使用し、そしてルシフェラーゼ・レポーターによって計測される(Brummelkampら、Nature 2003年、424:797-801ページ)NF-κBシグナル伝達の誘発を検出することによって脱ユビキチン化酵素が標的とされ、それが家族性円柱腫に関与する腫瘍抑制遺伝子の生物学的役割を特定した。他の研究において、380個のキナーゼを含む510個の遺伝子が、TRAIL誘発性アポトーシスにおけるそれらの役割を特定するために標的とされ(Aza-Blancら、MoI Cell 2003年、12:627-637ページ)、これまで知られていなかった、TRAIL誘発性アポトーシスを促進又は抑制する機能を有する遺伝子を同定した。およそ10,000個のヒト遺伝子及び5,000個を超えるマウス遺伝子を網羅するレンチウイルスRNAiライブラリが報告された(Paddisonら、2004年)。
これらの例は、哺乳動物細胞においてRNAiベースの表現型スクリーニングによって治療的に重要な遺伝子の同定が達成できることを実証する。しかしながら、細胞培養系は、複雑な生理学的条件をモデル化する際に適用できない。その結果、現在のRNAiスクリーニング法で同定される薬物標的は、薬品開発において上文で言及したものと同じ損耗率となる傾向にある。したがって、哺乳動物、特にヒトの疾病に関する薬物標的を同定して、そして検証する改良方法の開発についての必要性が引き続き存在している。
3)RNAiを使用したノックダウン・マウス
ハイスループットでの順遺伝学的スクリーニングが、例えば酵母、C.エレガンス、及びキイロショウジョウバエなどの下等生物において広範囲にわたって行なわれてきた一方で、このタイプのスクリーニングは哺乳動物、例えば好ましいヒト病態モデルであるマウス(M.musculus)などにおいてこれまで実現可能ではなかった。伝統的に、マウスの遺伝子操作は逆遺伝学によって主に行なわれてきた。特定の遺伝子の欠失は相同組換えによるノックアウト・マウスの作製を通じて行われ、特定のタンパク質の過剰発現はトランスジェニック・マウスの作製を通じて達成された。例えばCre-loxPなどの遺伝子組換えシステムの使用を含む、これらの方法の最近の多くの技術革新は、組織特異的及び条件付きノックアウト・マウス、組織特異的トランスジェニック・マウスなどの作製を可能にした。ハイスループット様式におけるマウスの生物学的過程に関与する遺伝子を同定するための別の試みは、Bakerら、2004年;Chenら、2004年;Coghillら、2002年;Hollriglら、2001年;Mikkers and Berns、2003年に記載されているように、マウス生殖細胞系列における偶発的な突然変異を誘発するN-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)によるランダム突然変異誘発;挿入性(遺伝子トラップ)突然変異誘発技術;及び多数の遺伝子を突然変異させるハイスループット方法を含む。これらの様々な方法の中で、ENU突然変異誘発スクリーニングだけが順遺伝学的アプローチであり、そしてそれは好ましい表現型を有するマウスの遺伝子変化を同定する技術的課題によって制限される。しかしながら、標準的な遺伝子工学技術における最近のあらゆる改良にもかかわらず、これらの方法は依然として扱いにくく、高価で、困難で、そして手間がかかる。
最近、RNAiの力とレトロウイルス介在性遺伝子デリバリー法の効率を組み合わせて、「ノックダウン」マウスが作製された。特異的RNAiは、得られたマウス子孫において標的タンパク質の安定したノックダウンをもたらす短鎖ヘアピン(sh)RNA発現レンチウイルスでの胚幹細胞の形質導入によってマウス生殖系列を通して提供された(Rubinsonら、2003年)。RNAiベースのノックダウン子孫は、相同組換えによる遺伝子ノックアウトの効果を表現型模写する(Kunathら、2003年)。更に、RNAiが、低次形態対立遺伝子の発生及びエピ対立遺伝子シリーズの遺伝子発現に有効であるとも証明され(Hemannら、2003)、完全なヌル対立遺伝子と比べた場合に、それは多数のヒト疾病の発症の根底にある遺伝子発現の変化をより正確にモデル化できる。RNAiは、哺乳動物組織培養系におけるハイスループットでの逆遺伝学を実施するのに有用な技術であるが、当該技術は疾病関連場面の哺乳動物におけるインビボでの薬物標的同定、そしてより一層重要なことには、薬物標的検証を実施するために使用されていなかった。
発明の概要
本発明は、生物学的経路の調節因子をコードする遺伝子を同定する方法であって、遺伝子集団の少なくとも一領域と実質的に同一であるdsRNA集団をコードする別のDNA分子集団を第1の哺乳動物モデル系の生物学的経路に導入することを含むものに関する。DNAは、生物学的経路の標的遺伝子の発現を調節するdsRNAをコードするDNA分子集団から同定され、それによって、標的DNAが予備検証(prevalidated)される。予備検証されたDNAは第2の哺乳動物モデル系に必要に応じて導入され、その結果、当該DNAが第2の哺乳動物モデル系の標的遺伝子の発現を調節することによって更に予備検証されるかもしれない。予備検証されたDNAを第3の哺乳動物モデル系の生物学的経路に導入することによって、予備検証されたDNAが生物学的経路の調節因子として確認される。
本発明の方法は、限定しないが、癌、糖尿病のような代謝異常、肥満、骨粗鬆症、炎症性疾病、リウマチ様関節炎、潰瘍性結腸炎、及び神経障害を含む疾病に関与する生物学的経路の調節因子をコードする遺伝子を同定するために使用できる。前記調節因子は、直接的又は間接的に生物学的経路に関与することができる。
本発明の方法は、細胞株又は哺乳動物である哺乳動物モデル系を使用することで実施されることができる。本発明の哺乳動物モデル系は、遺伝学的に規定されることもできる。本発明の哺乳動物モデル系は、限定しないが、トランスジェニック・マウスを含めたトランスジェニック哺乳動物であることもできる。
本発明のdsRNAは、shRNAであることができる。レトロウイルス集団は、dsRNA集団を含むことができる。前記レトロウイルスがレンチウイルスであることができる。
発明の詳細な説明
本発明は、特定の疾病に関与する分子機序を同定するための改良された方法、及び疾病に関連した、生理学的な状況におけるそれらの作用機序の明確な理解を提供する。本発明は、RNAiを使用した哺乳動物病態モデルにおける疾病関連標的遺伝子の同定、及び同時の生理学的検証に関する。
本発明は、着目の生物学的経路又は表現型の調節因子をコードする遺伝子を同定する方法であって、RNAiベースのライブラリで第1の哺乳動物モデル系をスクリーニングして、前記生物学的経路又は表現型を調節する標的遺伝子を同定し、そして機能的に検証することを含むものに向けられる。スクリーニングは、第1の哺乳動物モデル系で遺伝子集団の少なくとも一領域と実質的に同一のdsRNA集団をコードする別のDNA分子集団を導入し、そして着目の生物学的経路の標的遺伝子の発現を調節するdsRNAをコードするDNAを同定することによって実施されることができる。同定されたDNAは、第2の哺乳動物モデル系において必要に応じてスクリーニングされて、当該同定されたDNAが標的であることを更に検証されることができる。標的遺伝子が調節因子と確認され、そして経路又は表現型に関連する哺乳動物モデルを含む付加的な哺乳動物モデル系におけるRNAiベースのスクリーニングを実施することによって生理学的に検証される。図2は、インビボにおけるRNAiベースの標的同定及び検証のための本発明の好ましい態様のフロースキームを提供する。
本発明の方法は、哺乳動物の疾病標的の同定と検証に有用である。インビボにおける表現型促進スクリーニングにおけるRNAiライブラリの使用は、複雑な遺伝子相互作用の分析と、哺乳動物における標的遺伝子の効率的な機能アノテーションを可能にする順遺伝学と逆遺伝学の同時アプローチを提供する。生理学的な、疾病関連状況における標的遺伝子を検証することによって、標的遺伝子の機能が、遺伝子又はタンパク質の機能のどちらに関するかのいかなる先験的知識なしに高い確率で、且つ、改善された品質で同定できる。
RNAiスクリーニングに加えて、本発明のスクリーニングは、表現型変性剤の標的デコンボリューション及び経路マッピングを可能にするための小分子と組換えタンパク質を使用して実施されることができる。
1.ライブラリ
本発明は、哺乳動物病態モデルにおいてインビトロ及びインビボで遺伝子相互作用スクリーニングを実施するために使用されることができる標的特異的RNA干渉(RNAi)ライブラリの使用に関する。本発明のライブラリはdsRNAを含む。dsRNAは、siRNA、miRNA、又は好ましくはshRNA、あるいはその同等物であってもよい。dsRNAは、標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列、又はその変異体、あるいはそれに対する相補的配列を含む。「実質的に同一」は、dsRNAの配列が、標的遺伝子の10個以上の隣接ヌクレオチドと少なくとも約80%〜90%同一であり、より好ましくは標的遺伝子の15個以上の隣接ヌクレオチドと少なくとも約90〜95%同一であり、そしてより一層好ましくは標的遺伝子の19個以上の隣接ヌクレオチドと少なくとも約95〜99%同一であるか又は完全に同一であることを意味する。
dsRNAライブラリは、任意なサイズのライブラリであってよい。dsRNAライブラリは、ゲノムの各遺伝子、又はその一部分を標的とすることができる。dsRNAライブラリは、好ましくは約25〜10,000個の遺伝子、より好ましくは約50〜5,000個の遺伝子、そして最も好ましくは約100〜1,000個の遺伝子を標的とする。
ライブラリの作製における1つの検討材料は、dsRNAの最適な設計である。遺伝子のmRNAのあらゆる部分から選択されることができ、通常、RNAiを誘導するのに非常に効果的であって、原始生物において遺伝子を抑制するために使用される長鎖dsRNAとは対照的に、si/shRNAsは、哺乳動物のmRNAの非常に小さな領域だけを標的とし、そして標的遺伝子の転写を妨げるそれらの能力において大きな差を示す。特定の遺伝子を抑制するためのsi/shRNA配列を選択するための「規則」は、まだ十分に確立されておらず、最新のアルゴリズムは、約35%の場合でしか有効なサイレンシング配列を正しく予測しない。したがって、標的の大部分の効率的なノックダウンを確実にするために、dsRNAライブラリの好ましいサイズは標的遺伝子の数より4〜5倍大きい。代替ストラテジーは、dsRNAが翻訳後遺伝子サイレンシングを実施するのを確実にするようにdsRNAが検証されたライブラリを開発することであり、それは、限定しないが、RNAレベルの計測、リアルタイムPCR法、TaqMan、又はそれらに類似のものを含む方法によって、及び(例えば、ウエスタンブロッティング、免疫組織化学、又は他の方法によって)タンパク質レベルにて実施されてもよい。ライブラリ設計の結果に影響を及ぼす可能性がある的外れの効果を避けることもまた重要である。
a.フォーカスト・ライブラリ
本発明は、フォーカスト・ライブラリ、及びその製造方法にも関する。好ましい態様において、dsRNAライブラリは、特定の疾病に関連すると考えられる1又は複数の特定の経路の分子標的をコードする遺伝子を標的とすることにフォーカスされる。分子標的は、特定の経路の直接的なメンバーであるか、又は疾病に直接関連するか、あるいはそれらと間接的に関連するかもしれない。着目の経路又は疾病に間接的に関連する分子標的は、限定しないが、生物学的、分子病態学的、生物情報学的方法、及びプロテオミクス発現プロファイリング方法を含む基準によって同定されうる。生物情報学は、限定しないが、ENTREZ Blast及びPubMed検索を含む。図1は、そのようなアプローチを使用したRNAi標的ライブラリの作製に関する代表例を示す。
まず、着目の経路又は疾病が関連する、細胞及び生物レベルでの1又は複数の表現型を同定することによって、フォーカスト・ライブラリによって標的とされる遺伝子を同定することができる。それぞれの同定された表現型については、問題の表現型に対する、又は疾病によって調節される表現型若しくは機能に対する分子リンク、問題の疾病に対する表現型リンクがなければならない。代表例として、着目の疾病が癌抑制遺伝子PTENの機能喪失突然変異によって引き起こされた癌である場合、関連の表現型は、無秩序な増殖、生存率、血管新生、及び転移である。更に、無秩序なAktキナーゼ活性は、形質転換表現型の主要な発癌ドライバーである。更なる代表例として、着目の疾病が肥満又は糖尿病である場合、関連した表現型及び機能(いわゆる、表現型リンク)は、グルコース摂取、脂肪とタンパク質の代謝、及び特に、脂肪分解である。主要な分子リンクは、インスリン、IGF-1、及びPI3Kシグナル伝達を含む。
そして、問題の表現型、又は疾病によって調節される表現型若しくは機能に対する分子リンクが生物情報学に基づく検索のための検索基準として使用されて、検索に使用される分子リンク又は表現型と、最も広い意味で、機能的に、及び/又は物理的に「相互作用する」ことが知られているか、あるいは疑わしい遺伝子を含む最初の遺伝子リストが作成される。主要な分子リンク、例えば、PTEN誘発癌におけるAktの場合において、広範囲の検索が、ヒト及びマウスについて遺伝子記号(Akt)及び全ての別名(例えば、RAC-A、プロテインキナーゼBなど)に対してENTREZにおいて行なわれる。更に、共通配列、ドメイン検索、発現などのように、他の標準的方法が含まれる。並列アプローチとして、広範囲の検索が、同じ遺伝子記号及び別名に対してPubMed、Locusリンク、及び他の関連データベースにおいて行なわれる。更に、生物学的に重要な問題、疾病に関する生物学的知識、又は(ケースごとに特定の)他の特異的因子に基づいて必要とされる場合に、PubMed抄録、Blast、及び他のアクセス可能なデータベースが検索されることもできる。広範囲の検索から出てくる全ての遺伝子が、(NCBI Locus Linkウェブサイトにて利用可能な)ゲノム内に全ての既知遺伝子及びタンパク質を含む参照集合に対する簡単なテキスト・ベースの検索を通じて同定され、そして抽出されることができる。これらの並列アプローチに基づいて非重複遺伝子リストが作成され、これは次に、各遺伝子に関する参照の数に基づいて降順にランク付けされうる。
限定的な分子情報だけが着目の疾病に関して利用可能である状況において、当業者はその疾病に関連する主要な表現型とそれらの公表された関係によって着目の疾病と関連するかもしれない標的を同定できる。例として、着目の疾病が糖尿病である場合、当業者は、PI3K及びAktシグナル伝達経路を含むインスリン並びにIGF-I受容体シグナル伝達に関連する経路内の標的を同定できるか、あるいは、当業者は、変化したグルコース摂取、脂肪代謝、及び分布に関連した標的を含むことができ、後者は糖尿病に関連した表現型リンクの例である。
検索の品質の対照として、検索遺伝子と相互作用することが知られているか、又は予想されるアクセサリー遺伝子が同定されるべきである。そのような対照遺伝子の代表的な例は、限定しないが、ヒートショックタンパク質をコードする遺伝子を含む。更に、個々の遺伝子とクエリー分子との関連性のストリンジェンシーに関する手入力の、生物学的な、条件を満たす記載を可能にする別の欄が必要に応じて遺伝子リストの注釈に加えられることができる。そのような過程は、得られた遺伝子リスト中の遺伝子が生物学的基準を満たすことを確実にする。代表的な例は、限定しないが、物理的会合(Y/N)、物理的会合のタイプ(例えば、内因性タンパク質、過剰発現タンパク質、酵母の二重ハイブリッドなど)、転写制御(直接的/間接的な転写標的)、翻訳後制御(例えば、安定性、分解、リン酸化など)などを含む。
好ましい態様において、次に、追加の生物情報学ベースの検索は、最初の遺伝子リストのメンバーのそれぞれを同じように検索して、最初の遺伝子リストのメンバーとリンクする遺伝子を含む、2番目の遺伝子リストを作成することによって実施される。こうした相互参照は、問題の疾病又は表現型に関連する付加的な遺伝子を提供する。そして、抽出された遺伝子は、2番目の遺伝子リストの各メンバーによって参照される最初の遺伝子リストからの個々のヒット数に基づいて降順に格付けされることができる。言い換えれば、2番目の遺伝子リストのトップは、それぞれが最初の遺伝子リストの最多数の個々のメンバーを参照している遺伝子である。
本発明は、先の検索結果を使用して実施される多重検索を特に意図する。それぞれの付加的な検索の結果は、間接的に関連しそうな遺伝子と問題の表現型又は疾病との間の相関を拡大する。そのうえ、検索は反復様式で実施されてもよい。
1つの態様において、フォーカスト・ライブラリは、先に議論した1又は複数の遺伝子リストからの遺伝子標的を含む。遺伝子標的は、好ましくは特定の遺伝子リストのトップにあり、これは最も関連のある標的を提供することができる。
他の態様において、フォーカスト・ライブラリは、影響力のある学術誌で報告された1又は複数の遺伝子リスト由来の遺伝子標的を含む。これは、数回報告された、但し、影響力のある学術誌で報告された遺伝子がプールに含まれるのを確実にする。影響力のある学術誌の代表的な例は、限定しないが、Nature、Science、及びCellを含む。影響力のある学術誌は、化学引用索引の分類法、及び問題の疾病に関連する個々の基準に基づいてもよい。例えば、問題の疾病(例えば、ヒト癌に関与する発癌遺伝子)に関する分子的、生物化学的、及び細胞生物学的知識がある場合、インパクトファクターの高い学術誌には分子指向型の学術誌が含まれる。問題の疾病(例えば、尿失禁)に関して主として臨床の知識があり、且つ、限定的な分子の知識しかない場合、高いインパクトファクターの学術誌は上位の臨床の学術誌を含む。
他の態様において、フォーカスト・ライブラリは、最低限の回数、且つ、最近で最低限の期間以内に引用された1又は複数の遺伝子リストからの遺伝子標的を含む。これは、最近発見されたか又は研究された遺伝子標的のライブラリ内に存在することが現時点では問題の疾病に関連しているということを確実にする。引用回数は、約1〜約10回、好ましくは約3〜約5回でありうる。期間は、約3カ月〜約2年、好ましくは約1年でありうる。
他の態様において、本発明のフォーカスト・ライブラリは、上文で考察した個々のフォーカスト・ライブラリの併用を含む。
好ましい態様において、フォーカスト・ライブラリの個々のメンバーは、それらが新薬の開発につながるかどうかという可能性に基づいて選別され、これは一般に受け入れられている基準により決定することができる。代表的な例として、焦点が低分子阻害剤の開発にある場合、最も新薬の開発につながる可能性があると考えられる遺伝子は、キナーゼ、ホスファターゼを含む酵素、受容体、及びリガンドでありうる。あるいは、焦点が抗体開発にある場合、最も新薬の開発につながる可能性があると考えられる標的遺伝子は、そのような薬物に対する接近性に基づくかもしれない。
他の好ましい態様において、関係表示は、それを囲む第一世代の標的との主要な分子リンク、及び/又は表現型機能を使用して作成される。遺伝子リストは、迅速な視覚的評価のために、中心分子、及び/又は表現型リンクの周りに図表を用いて表示される。関係表示は、得られたリストが主要な検索分子の周りにルート様式(root fashion)で表示される場合には、他の遺伝子リストの1又は複数のメンバーの図表を用いた表示を反復するように拡張されてもよい。最終結果は、完全に統合された相関的なフォーカスト・ライブラリの分子メンバーの関係表示である。
2.哺乳動物モデル系へのdsRNAのデリバリー
本発明のdsRNAは、細胞、組織、又は臓器内の標的遺伝子の発現を調節できる。標的遺伝子の発現は、dsRNAを発現する動物細胞において遅れるか、抑制されるか、又は他の方法で低減されることができる。
dsRNAは、化学的に合成され、そして細胞内にトランスフェクトされることができる。好ましくは、dsRNAは、内因的に存在しているマイクロRNAs(miRNAs)によく似ているステムループ構造を有する発現された短鎖ヘアピンRNA(shRNA)前駆体からインビボで作り出される。これらのshRNAsは、プロモーターに作動的に連結される50〜70bpの長鎖DNA配列によってコードされてもよい。shRNAをコードするDNA配列は、センス又はアンチセンス方向でプロモーターに作動的に連結させてもよい。
本明細書中で「プロモーター」への言及は、その最も広い文脈で取られるべきであり、且つ、CCAATボックス配列及び付加的な調節要素(すなわち、上流の活性化配列、エンハンサ、及びサイレンサー)のあるなしにかかわらず、真核細胞における正確な転写開始に必要とされるTATAボックスを含む古典的なゲノム遺伝子の転写制御配列を含む。プロモーターは、通例、しかし必ずしもではないが、dsRNAをコードするDNA配列の上流又は5’側に配置される。更に、プロモーターを含む調節要素は、通常、dsRNAをコードするDNA配列の転写開始部位の2kb以内に配置される。
プロモーターは、発現が起こっている細胞、組織、若しくは臓器に対して、又は発現が起こっている発生段階に対して、あるいは、限定しないが、生理学的ストレス、病原菌、金属イオン、並びにテトラサイクリン、エクジソン、ミフェプリストン、U286などのような他の誘発剤を含めた外部刺激に対応して構成的に、且つ、個別にdsRNAの発現を制御できる。好ましくは、プロモーターは、少なくとも標的遺伝子がその中で発現されている期間中、そしてより好ましくは前記細胞、組織、又は臓器における標的遺伝子の検出可能な発現の開始の直前でも真核細胞、組織、又は臓器におけるdsRNAの発現を制御できる。
強い構成的プロモーターは、本発明の目的、あるいはウイルス感染又は標的遺伝子発現開始で誘発されうるプロモーターのために特に好まれる。好ましいプロモーターの例は、限定しないが、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレーター−プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモータ、SV40初期プロモータ、RSV-LTRプロモーター、及びCMV IEプロモーターを含む。当業者は、具体的に説明したもの以外の付加的なプロモータ配列に容易に気付くであろう。
dsRNAは、プラスミド骨格上に存在する場合には、限定しないが、一過性トランスフェクションを含む方法によって、又はウイルス骨格上に存在する場合には、感染によってデリバリーされることができる。例えば、Rubinsonら、2003年;Brummelkampら、Science 2002年、296:550-553ページ;Leeら、Nat Biotechnol 2002年、20:500-505ページ;Miyagishiら、Nat Biotechnol 2002年、20:497-500ページ;Paddisonら、Genes Dev 2002年、16:948-958ページ;Paulら、Nat Biotechnol 2002年、20:505-508ページ;Brummelkampら、Cancer Cell 2002年、2:243-247ページ;Diracら、J Biol Chem 2003年、278:11731-11734ページ;Abbas-Terkiら、Hum Gene Ther 2002年、13:2197-2201ページ;Qinら、Proc Natl Acad Sci USA 2003年、100:183-188ページ;及びTiscorniaら、Proc Natl Acad Sci USA 2003年、100:1844-1848ページを参照のこと、上記文献の内容を本明細書中に援用する。
多くの初代細胞はトランスフェクションに対して不応性であるが、ウイルスによって容易に形質導入されうる。結果として、ウイルス・ベクターは、多くの哺乳動物細胞型において遺伝子機能を研究するためにdsRNAをデリバリーするための最適な手段である。これらのウイルス・システムで最も人気があるものは、アデノウイルスとレトロウイルス・ベースである。アデノウイルスは、活性な細胞***の必要なしに幅広い細胞型を感染させることができて、且つ、非常に高い力価で製造できる。複製欠損性アデノウイルス・ベクターは、様々な細胞株、並びに脳及び肝臓のような臓器における遺伝子発現を効率的に抑制するように設計されている。これらのベクターの大部分は、Pol IIIプロモーターとshRNAsの配列を複製欠損性アデノウイルスのゲノム内に挿入することによって作製されている。アデノウイルス・ベースのRNAiベクターには、いくつかの制限がある:第1に、それらはゲノムと統合しないので、***細胞において単に一過性の様式でshRNA発現を提供し、そして第2に、それらは形質導入細胞の排除につながる強い免疫応答を誘発する。
レトロウイルスは、ゲノムと統合でき、抗ウイルス応答を引き起こさず、そしてさまざまな細胞型に形質導入することができる。更に、レトロウイルスのサブタイプであるレンチウイルスは、非周期細胞及び***終了細胞を感染させることができる。このため、shRNAsのための他のウイルス性デリバリー系を上回るレンチウイルス・ベクターの重要な利点は、それらが成熟細胞と胚幹細胞、及び単独細胞胚の両方に安定に形質導入できることである。このストラテジーは、最近、トランスジェニック・マウス及びラットの効率的な作製に利用された;したがって、より一般に、レンチウイルス・ベースのベクターが、ある組織内で、又は動物の全細胞内でshRNAsを発現する「ノックダウン」トランスジェニック動物の作製のために使用できる。
複製能力のない自己不活性化(SIN)レンチウイルス・ベクターが、本発明の実施において使用されてもよい。そのようなベクターの代表例が、De Palma及びNaldini、2002年;Follenzi及びNaldini、2002年において考察されている。例えば、LentiLox 3.7などの好ましいベクターは、様々なタイプの幹細胞、免疫細胞、及びニューロンに効率的に感染させることができて、且つ、そのような「ノックダウン」動物の作製に使用できる。Rubinsonら、Nat Genet 2003年、33:401-406ページを参照のこと、上記文献の内容を本明細書中に援用する。ベクターは、マウスU6プロモータの制御下でshRNAを発現することができる。ベクターは、感染細胞を追跡するためのマーカーとしてCMVプロモーターによって促進されるEnhanced Green Fluorescent Protein(EGFP)をコードする遺伝子も含むことができる。本発明のベクターを使用することによって、遺伝子発現は免疫細胞と造血幹細胞において抑制されることができる。そのうえ、ウイルスを感染させた胚幹細胞由来のトランスジェニック動物は、中枢及び末梢免疫臓器に存在する細胞内の標的遺伝子(CD8)の顕著に減少した発現を示す可能性がある。同様に、ベクターの接合体への感染は、成熟動物でも同様に維持される効果を有する胚の作製における様々な標的遺伝子の効果的なサイレンシングをもたらすことができる。
1つの態様において、コードされた短鎖dsRNAは、shRNAsの発現を促進するためのPol IIベースのU6又はH1プロモーター、あるいは古典的なPol IIIプロモーターの下流のステムループDNAとしてウイルス内にクローン化される。標的細胞へのRNAiのウイルス性デリバリーの代表的な例において、shRNA自身は、19ntの長さの、相補的な配列、及び短鎖ステムループを含む。これらのshRNAsは、標的細胞内で酵素的に処理されて、特異的なRNAiの作製をもたらすことができる。更に、ウイルスは、例えばGFPなどのマーカーを含むことができる。必要であれば、ウイルスは、限定しないが発癌遺伝子を含めた、疾病に関連するシグナル伝達経路に関係している疾病関連遺伝子である感作物質遺伝子(sensitizer gene)との同時発現又は融合によって二機能性にされることができる。ウイルスは、それらが誘発性siRNA発現、及び/又は誘発性遺伝子発現のいずれかを有することができるように、誘発性にされることもある(Czaudernaら、2003年;Guptaら、2004年)。最終的に、ウイルスは、成功したゲノムの組込みによって介在する遺伝子配列の除去又は反転を可能にする、例えばCre-loxPなどの組換えマーカーを担持することができる。レンチウイルスは、標準法に従って、例えばHEK-293細胞などの細胞内で発現され、そして作製されることができる。得られたレンチウイルス上清は、個別に、又は1又は複数の遺伝子に対して向けられたshRNAsから成るプールとして使用されることができる。
3.哺乳動物モデル系
哺乳動物モデル系は、特定の分子経路障害又は問題の特定の治療領域に合わせることができる。哺乳動物モデル系は、感作物質遺伝子の発現変化を含む細胞株又は無傷の哺乳動物でありうる。感作物質遺伝子は、突然変異を受けることができるか、あるいは着目の疾病又は表現型に関係する表現型をもたらす発現、機能、及び/又は活性の変化を伴う産物を有することができる遺伝子である。例としては、限定しないが、発癌遺伝子、癌抑制遺伝子、分化遺伝子、サバイバル遺伝子、細胞周期の進行に、代謝機能に、タンパク質分解に、タンパク質安定性に、タンパク質ターンオーバに、及び細胞遊走、転移などの制御に関与する遺伝子が含まれる。感作物質遺伝子の発現の変化は、標的組織の異常増殖を、他に、細胞生存の増強、分化の変化、細胞死、細胞増殖制御の変化、結合、遊走などをもたらすことができる。RNAiライブラリのための個々の標的遺伝子のノックダウンを通じて、感作物質遺伝子機能が、感作物質遺伝子機能を調節する遺伝子について体系的にスクリーニングされる。
哺乳動物モデル系は細胞株でありうる。哺乳動物モデル系は、限定しないが、キイロショウジョウバエ、C.エレガンス、アフリカツメガエル、ラット、ニワトリ、ゼブラフィッシュを含む多細胞生物でもあり、そして好ましくはマウスでありうる。本発明の実行において有用な哺乳動物モデル系は、できるだけ厳密に対応するヒト疾病を表すために選ばれた特定の、分子的に規定される病態モデルに基づくかもしれない。本発明の方法による哺乳動物モデル系の使用が、創薬における2つの重大な障害:治験のフェーズII、及び/又はフェーズIIIにおける有効性の不足と機序に基づく毒性試験、を克服することを可能にする。
好ましくは、哺乳動物モデル系は遺伝学的に規定される。「遺伝学的に規定された」哺乳動物モデル系は、意図的な特定の遺伝子操作、例えば標的組換え若しくはマイクロインジェクション、又は組換えウイルスの感染などによって直接的又は間接的に変化した又は受けた遺伝情報を担持する1又は複数の細胞を含むあらゆる細胞株あるいは無傷の哺乳動物を表し、そして組換えDNA分子によって変化した又はそれを受けた細胞を動物内に取込む。組換えDNA分子は、規定された遺伝子座に特異的にターゲティングされるか、染色体内にランダムに組込まれるか、又はそれはDNAの染色体外での複製でありうる。
感作物質遺伝子の発現の変化、並びに標的遺伝子のノックダウンは、動物個体、又は動物の生存及び生殖のために重要ではない1又は複数の特定の、識別可能な組織、若しくはその一部を標的とすることができる。そのような組織は、本明細書中で「標的組織」と呼ばれる。好ましい標的組織の例は、マウスの耳、一部の皮膚、血球細胞、肝臓、心臓、生殖器官、脳、及び他の臓器を含む。1つの好ましい態様において、感作物質遺伝子、及び/又は標的遺伝子の発現の変化は、標的組織の一部分、パッチ、セクター、又はドメインだけで起こる。これは、感作物質遺伝子の発現の変化を示す組織の一部で感作物質遺伝子の特異的機能を調節する標的遺伝子を同定することをより簡単にすることができる。例えば皮膚、血液、肝臓、心臓などのいくつかの組織であっても、その組織全部がなくても済むわけではない。よって、動物の生存率を維持するために、感作物質遺伝子又はRNAiの発現の変化が、例えば、皮膚のメラノサイト、又は血液のT細胞といった組織の一部又はセクターだけを標的とすることができる。標的組織は、視覚的に(例えば、固形腫瘍のサイズ又は皮膚色素の色の変化)、あるいは支援分析(例えば、Fluorescent Activated Cell Sorterを使用した血球細胞の分析)によって組織の細胞増殖レベルの変化を検出できるという点において、識別可能なものである。
動物組織の一部だけで感作物質遺伝子の発現が、モザイク、条件付き、及び/又は組織特異的な発現のためのさまざまな遺伝的方法の1つを使用した導入遺伝子を挿入することによって実施されることができる。例えば、部位選択的リコンビナーゼは、リコンビナーゼ標的部位にて部位選択的組換えを通じて遺伝子発現を制御するのに使用されるかもしれない。リコンビナーゼ:標的部位の例は、Plp:Frt(Golic及びLindquist、Cell(1989年)59(3):499-509ページ)、Cre:LoxP(Sauer及びHenderson、Nucleic Acids Res.(1989年)17:147-61ページ)、Kw:Kw RS(Ringroseら(1997年)Eur J Biochem 248:903-912ページ)、R:RS(Onouchiら、Nucleic Acids Res(1991年)19:6373-6378ページ)、及びphiC31リコンビナーゼ:attP/attB(Thorpe及びSmith、Proc Natl Acad Sci USA(1998年)95:5505-10ページ)を含む。導入遺伝子の発現を促進するための他の方法は、Gal4/UASシステムを使用する(Brand及びPerrimon、Development(1993年)118:401-415ページ)。通常、発現は、組織、及び/又は発生段階に特異的な調節要素(例えば、エンハンサ、及び/又はプロモーター)の制御下にある。マウスの調節要素の例は、皮膚における発現を促進するメラノサイト特異的チロシン関連タンパク質1(TRP-1)プロモーター(Hart、Semin Oncol(1996年)23(1):154-158ページ;Carreiraら、Mol. Cell Biol(1998年)18(9):5099-5108ページ)、耳軟骨における発現を促進するBMP5プロモーター(DiLeoneら、Genetics(1998年)148(1):401-408ページ)、及びT細胞における発現を促進するLckプロモーター(Wildinら、J Immunol(1995年)155(3):1286-1295ページ)を含む。他のプロモーター/エンハンサが、モデル生物における細胞又は組織に特異的な様式での導入遺伝子の制限された発現のために当該技術分野で周知であり、そして使用することができる。
好ましい態様において、感作物質遺伝子の発現の検出、及び/又はインタラクタ遺伝子(interactor gene)のRNAi定方向下方制御を通じて達成された調節作用の検出は、標的組織におけるマーカー遺伝子発現の存在又は不在によって促進される。あらゆる遺伝子が、トランスジェニック動物における信頼性があり、且つ、容易に得られる表現型の変化を引き起こすマーカーとして使用できる。
発癌遺伝子の過剰発現によるヌード又は放射線照射された同種マウスにおける腫瘍形成の代表的な例として、移植された造血幹細胞は、特定の発癌遺伝子が問題のヒト癌の発症に関与する癌についての予備スクリーニング・アッセイ(prescreen assay)になるかもしれない。培養下の肥満細胞又は脂肪細胞におけるインスリンで制御されたグルコース摂取が、糖尿病についての予備スクリーニング・アッセイであるかもしれず、ニューロンの生存又は軸索の伸長が、特定の神経疾患についての予備スクリーニング・アッセイであるかもしれず、あるいはPI3K-Akt経路活性のルシフェラーゼ・レポーター・アッセイが、PTEN誘発癌についての予備スクリーニング・アッセイでありうる。予備スクリーニング・アッセイは、遺伝学的に規定された細胞又は細胞株を使用することによっても更に調整することができる。問題のヒト疾病の主要な病原性要素を反映するその能力を用いた、より生理学的に関連があるアッセイほどより優れたアッセイである。
本発明の1つの態様において、感作物質遺伝子は、限定しないが、p53、Rb、p27、p15、p16、Bub-1、LATS、CyclinE、E2Fを含む細胞周期進行遺伝子(cell-cycle progression gene)、及びサイクリン依存性キナーゼをコードする遺伝子である。好ましくは、感作物質遺伝子は、スクリーニングで使用される後生動物の発癌遺伝子又は癌抑制遺伝子としてこれまでに同定されたか、あるいはヒト癌遺伝子又は癌抑制遺伝子のホモログ又はオルソログである。1種類以上のモデル生物でそのホモログが同定されたヒト癌遺伝子の例は、Akt、Abl-1、Bcl2、Ras、CDC25A、いくつかのサイクリン依存性キナーゼ、サイクリン、セリン/スレオニンキナーゼ、及び半数以上のヒト・チロシンキナーゼを含む(最近の総合的な概説のために(Blume-Jensen及びHunter、2001年;Hanahan及びWeinberg、2000年;Hunter、1997年;Rangarajan及びWeinberg、2003年;Vivanco及びSawyers、2002年)を参照のこと)。1種類以上のモデル生物でそのホモログが同定されたヒト腫瘍サプレッサ遺伝子の例は、限定しないが、BRCA1、Rb、p16、p53、VHL、及びβ-カテニンを含む。発癌遺伝子及び癌抑制遺伝子に関する総覧は、米国国立癌研究所の癌ゲノム分析プロジェクト(CGAP)に関するウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov//ncicgap/cgaptso.cgiで見ることができる。
本発明は、限定しないが、全ての主要な癌腫、肉腫、及び造血器悪性腫瘍を含めた固形腫瘍及び白血病を含むあらゆるタイプの癌に関して標的の同定及び検証に使用できる。例は:アプドーマ、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾病、(例えば、Walker、基底細胞、基底扁平上皮、Brown-Pearce、腺管、エーリッヒ腫瘍、in situ、クレブス2、メルケル細胞、粘液性、非小細胞肺、燕麦細胞、乳頭状、硬性癌、細気管支、気管支原性、扁平上皮細胞、及び移行上皮細胞)癌腫、組織球性疾病、白血病(例えば、B細胞、混合細胞型、ヌル細胞、T細胞、T細胞慢性、HTLV-II関連、急性リンパ性、緩性リンパ性、肥満細胞、及び骨髄性)、悪性組織球増加症、ホジキン病、免疫増殖性小腸疾患、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、細網内皮症、黒色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫、線維腫、線維肉腫、巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、滑膜性腫瘍、腺線維腫、腺リンパ腫、癌肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫、間葉組織腫瘍、中腎腫、筋肉肉腫、エナメル上皮腫、白亜質腫、歯牙腫、奇形腫、胸線腫、絨毛性腫瘍、腺癌、腺腫、胆管腫、コレステリン腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢胞腺腫、顆粒膜細胞腫、ギナンドロブラストーマ、肝細胞癌、汗腺腫、膵島細胞腫瘍、ライディッヒ細胞腫、乳頭腫、セルトリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋腫、筋肉肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、上衣細胞腫、神経節神経腫、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角化血管腫、木村氏病、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管外皮細胞腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫症、リンパ管肉腫、松果体腫、癌肉腫、軟骨肉腫、葉状嚢肉腫、線維肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、白血肉腫症、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、(例えば、ユーイング、実験、カポジ、及び肥満細胞)肉腫、(例えば、骨、***、消化器系、結腸直腸、肝臓、膵臓、脳下垂体、精巣、眼窩、頭頚部、中枢神経系、聴神経、骨盤、気道、及び泌尿生殖器)新生物、神経線維腫症、並びに子宮頚部異形成、そして細胞が不滅化されるか又は形質転換されるようになる他の条件から成る処置を含む。
4.標的遺伝子の同定と機能的予備検証
RNAiライブラリは、最初に、インビボの状況で、好ましくはハイスループット様式による標的遺伝子の同定と予備検証を可能にする哺乳動物モデル系においてスクリーニングされる。最初のスクリーニングは、問題の特定の分子経路又は特定の治療的領域に合わせられる。
好ましくは検証された、個々のRNAi種又はそのプールは、第1の哺乳動物モデル系においてスクリーニングされる。好ましくは、前記スクリーニングは、レトロウイルス・ベース、好ましくはレンチウイルス・ベースのRNAiライブラリをモデル系の個別の細胞、組織、又は身体各部に初めに感染させることによって実施される。表現型と表現型の変化の動態を観察することによって、ウイルス又はウイルスプールが、問題の表現型、又は表現型の動態の正の又は負の調節因子として同定され、そして機能的に予備検証されることができる。標的遺伝子は、限定しないが、ウイルスの保存領域に対するプライマーを使用した感染標的細胞からのゲノムDNAのPCR増幅を含む方法によって機能的に予備検証されたウイルスから同定できる。
表現型調節に関与する同定されたdsRNAは、必要に応じて、対応する個々のウイルス上清から発現される個々のdsRNAを哺乳動物モデル系、好ましくは同じ系に感染させることによって確認することができる。この確認ステップは、関与する表現型について個々のdsRNAの役割を同定するのに使用されるかもしれない。dsRNAは、様々なレベルの標的遺伝子サイレンシングを引き起こすことができ、それにより、特定の表現型、及び/又は病気の経過における標的遺伝子の役割を更に明らかにすることができる一連の低形質表現型を提供する。
5.標的遺伝子の付加的な機能的予備検証
前述の方法によって薬物標的として同定され、そして機能的に予備検証された標的遺伝子は、必要に応じて、付加的な哺乳動物モデル系において同定されたdsRNAの付加的なスクリーニングを実施することによって更に機能的予備検証されるかもしれない。好ましくは、同定されたshRNAを発現するレンチウイルスが、別の表現型読み出しを有する初代細胞、細胞株、及び他のモデル系において標的をノックダウンするために使用される。標的の過剰発現が実施され、そして経路におけるそれらの疑われる役割にしたがって特定の表現型アッセイによりそれらの役割を試験し、最終的に、正常組織及び罹患組織においてそれらの発現を試験することもできる。最初のスクリーニングで同定された標的の更なる機能的予備検証が、疾病進行及び疾病進行の調節に重要であるとして標的を確立する。
6.標的遺伝子の最終確認と生理学的検証
疾病表現型を調節する同定され、そして機能的に予備検証された標的は、問題の表現型に関するモデルである無傷の哺乳動物を含めた哺乳動物モデル系において関連dsRNAをスクリーニングすることによって確認され、そして生理学的に検証されることができる。標的遺伝子の最終確認は、標的遺伝子が、好ましくは問題のヒト疾病を模倣する関連疾病動物モデルにおいて疾病進行を調節する能力を実証する。
好ましくは、shRNA発現性レンチウイルス・ベクターが、哺乳動物、第一にマウスの生殖系列を通じて標的をノックダウンするために使用される。これは、培養された胚幹細胞、注射による接合体、桑実胚、胞胚のいずれかの直接的な形質導入を通じて、あるいはたとえ成長又は成熟哺乳動物の特定の組織/臓器内にであっても達成されることができる。「ノックダウン」マウスの作製におけるRNAiの使用は、Carmellら、"Germline transmission of RNAi in mice"、Nat Struct Biol 10:91-92ページ、2003年及びRubinsonら、"A lentivirus-based system to functionally silence genes in primary mammalian cells, stem cells and transgenic mice by RNA interference"、Nat Genet 33:401-406ページ、2003年の中で説明されており、上記文献の内容を本明細書中に援用する。
shRNA発現性レンチウイルス・ベクターは、好ましくは、胚発生中は胚発育に不可欠な遺伝子が発現されるのを許容し、その後成熟動物においてそれ以降それをノックダウンすることによって胚致死を回避するように誘発性構造物として作製される。構造物は、組織特異的プロモーターの制御下で発現させるdsRNAを持つことによって組織特異的にされてもよい。得られたキメラ子孫は、その後交雑させて、標的ノックダウン子孫を獲得することができる。標的ノックダウン子孫は、その後経路又は表現型関連性哺乳動物と交雑させることができる。得られた子孫は、最終的に、標的遺伝子を確認し、そして生理学的に検証するのに使用できる。
伝統的な遺伝子ターゲッティング技術は、退屈な同質遺伝子ゲノムDNAのクローニング、複雑なクローニング及び標的化ベクター構造物の作製、ES細胞のトランスフェクション及び相同組換え、ES細胞クローンの選別、サザンブロット法及びPCR法による標的化構造物の正しい挿入についての再試験を必要とするのに対して、当該方法はレンチウイルス・ベクター調製物による感染、そして標的遺伝子mRNA及びタンパク質の発現がノックアウトされている細胞の同定によるES細胞の選択しか必要としない。レンチウイルス構造物のGFP又は他のマーカーが形質導入細胞の簡単な顕微鏡同定を可能にし、そしてRT-PCR法、AmpliTaqベースの方法、又はウエスタンブロッティング法のような標準的な技術が標的遺伝子が下方調節されたES細胞の簡易鑑別を可能にするので、これは容易に達成される。先に触れた、RNAiベースの方法による他の利点は、当業者が標的タンパク質発現が部分的にしか低減されていないノックダウン・マウス、いわゆる低形質対立遺伝子の作製を可能にすることである。これは、多くの場合、効果が部分的でしかない小分子又は他の処置のための好適な薬物標的としての標的の検証に利点がある。
更に、同じ標的のトランスジェニック過剰発現が、過剰作用の場合のそれらの役割を試験するために作製されることができる。これは、レンチウイルス・ベクター骨格内への標的cDNAsのクローニングと、続くES細胞感染、又は接合体の前核注射によって行なわれるかもしれない。
7.標的遺伝子機能を調節する化合物の同定
ライブラリは、順化学ゲノミックスの細胞ベースのスクリーニングを実施するために使用されるかもしれない遺伝学的に規定された細胞株を作製するためにも、そして同じ未感作細胞から得られる遺伝学的に規定された細胞から成るライブラリにおける細胞ベースのスクリーニングのためにも使用できる。これは、非特異的又は全身毒性、あるいは機序ベースではない効果を引き起こす化合物又は分子を引き去ることを可能にすることができる。更に、これは、改善された標的デコンボリューション、及び関連疾病経路の欠陥の明確化を可能にすることができる。ライブラリを使用した全ての結果が、全く異なる領域における重複ベクター・セットのアノテーションを可能にするかもしれない。相互参照によって、外観上関連のない疾病環境において標的又は標的概念が同定されるかもしれない。
本発明は、以下の限定されない実施例で説明される多数の側面を含む。
実施例1
標的shRNAiライブラリの作製
定方向shRNAライブラリを、造血細胞におけるサイトカイン誘発性増殖及びアポトーシス・シグナル伝達経路のメンバーであることが知られているか、又は予測される増殖及びアポトーシス調節遺伝子の一覧に基づいて作製する。RNAiによる効率的な遺伝子サイレンシングの確率を高めるために、数個の異なるshRNAsを各遺伝子に利用してもよい。効率的なサイレンシング配列を同定するために、それぞれのRNAi標的化配列を確立された規則に基づいて選択する。
実施例2
shRNAiライブラリの検証
特定のレンチウイルス調製物による関連細胞への形質導入後の標的mRNA転写産物又は標的タンパク質のいずれの発現レベルを検証するかに基づいて、個々のshRNAsを検証するために異なる方法を利用する。検証を、関連細胞型からの内因性mRNAレベルのリアルタイムPCR法、細胞内の標的タンパク質をコードする、導入遺伝子を転写したmRNAのリアルタイムPCR法、細胞内の内因性又は過剰発現された標的タンパク質のウエスタンブロッティング検出を使用することで実施する。
実施例3
二機能性レンチウイルス・ベクターのライブラリの作成
二機能性レンチウイルス・ベクターを、発癌遺伝子の感作物質遺伝子であるAkt、及びshRNAsのライブラリを発現するように構築する。手短に言えば、レンチウイルスRNAiベクターを、構成型CMVエンハンサβ-アクチンプロモータ(CAG)の制御下で感作物質遺伝子の発現を促進するように調節する。
実施例1の検証されたshRNAsのそれぞれをコードするオリゴヌクレオチドを合成し、そしてU6プロモータの制御下でベクター内にクローニングする。各構造物を、制限マッピング及び配列決定によって検証する。
このベクターのライブラリを、それぞれ約20個のベクターから成るプール中に分配する。各プールは、4又は5つの別個の遺伝子に対する全部で4つの標的化構造物を含む。付加的なプールは、Green Fluorescent Protein(GFP)を含む非shRNAs又はshRNAs標的化種非関連性対照遺伝子(targeting species-unrelated control genes)を発現するベクターを含む。関連遺伝子による重複又は代償効果を避けるための試みにおいて、各プール中で、特異的遺伝子ファミリーの1種類のメンバーだけを標的とする。高力価のレンチウイルスを、293Tパッケージング細胞の一過性トランスフェクション、続く上清の超遠心分離によって製造する。
実施例4
腫瘍発生に対するRNAiの効果
実施例3のプール中に存在するベクターから産生された高力価レンチウイルスを、造血又は他の幹細胞に感染させるため使用し、その後、それらの細胞を致死的な放射線を照射されたマウスに投与する。造血又は他の腫瘍発生を毎日観察する。腫瘍の検出、又は健康状態の悪化に際して、マウスを屠殺し、そして胸腺、脾臓、及び骨髄、並びに腫瘍増殖に関する証拠を示している他の臓器を収集する。組織試料を組織学によって分析し、そして造血幹細胞の場合には、分化型造血系のマーカーに関する表現型に類別する。
急速な腫瘍発生を示すマウスは、感作物質遺伝子の負の調節因子に含まれる対応のshRNAsによって標的化される遺伝子を含む。対照的に、遅れた腫瘍発生を示すマウスは、感作物質誘発性腫瘍発生の正の調節因子であるshRNAsによって標的化される遺伝子を示す。この最初のスクリーニングからの結果は、インビボの状況において標的遺伝子を機能的に予備検証する。
実施例5
細胞株に対するRNAiの効果
実施例4のスクリーニングを受けた遺伝子を更に機能的に検証するために、対応するshRNA含有レンチウイルスを、選択された癌細胞株、及び初代ヒト癌細胞の同系標的遺伝子をノックダウンするのに使用する。これを、shRNA含有ウイルス単独について、並びにshRNAと問題の発癌遺伝子、例えばAktの両方を発現するベクターについての両方で行なう。共に後者の対照は、偽shRNAによるAkt単独の発現である。そして、誘発された細胞及び細胞株を、アポトーシス刺激、血清飢餓、化学療法、UV光、並びに増殖、生存、細胞量、細胞周期進行における他の侵襲、そして他の分析に対するそれらの抵抗性について調べる。実施例4からの結果と共に、これらの結果に基づいて、多数の標的が、同定され、そして哺乳動物疾病状況における最終確認のために機能的に検証される。
実施例6
哺乳動物病態モデルにおけるRNAiの効果
実施例4及び実施例5において癌標的として機能的に検証される標的遺伝子は、ここで、問題のオリジナルのヒト癌に関する疾病マウス・モデルにおいて最終的に確認される。Aktの場合、PTEN機能喪失(LOF)突然変異体マウスが、着目の疾病マウス・モデルである。誘導プロモータを含み、そしてあらゆる発癌遺伝子の同時発現は伴わないが標識遺伝子、例えばGFPの同時発現を伴うshRNA含有レンチウイルス・ベクターの使用によって、胚幹細胞に、問題の標的遺伝子のノックダウンを引き起こす特定のレンチウイルス上清を用いて形質導入するか、又は接合体に、これらのレンチウイルス上清を注射する。成熟動物において、標的遺伝子によってコードされた標的タンパク質を下方制御するか、又は完全にノックダウンさえするところの構造物の誘導能が、当業者が胚致死を回避して、生殖系列によってマウスを生み出すことができるようにする。
いったんマウスが産み出されると、それらを問題の疾病マウス・モデル、例えばPTEN LOF突然変異マウスと交雑させる。交配マウス子孫における別の腫瘍に対する腫瘍進行速度を、PTEN突然変異体マウス単独の腫瘍進行速度と比較する。これは、観血的に、又は、好ましくは、例えば、MRI、PET、CTスキャニングなどを使用して非観血的に行なうことができる。特定の標的ノックダウンと交配したPTEN LOF突然変異マウスが、1又は複数の組織で癌進行を顕著に遅らせる、及び/又は腫瘍スペクトルと浸透度を変化させる場合、これは、特定の標的の調節が実際の疾病環境でインビボにおいて抗癌効果を引き起こすことを示している。
生物情報学的アプローチを使用したRNAi標的ライブラリの作製のためのフロースキームを示す。 インビボにおけるRNAiベースの標的同定及び検証のプラットフォーム・フロースキームを示す。

Claims (1)

  1. 生物学的経路に対する調節因子をコードする遺伝子を同定する方法であって:
    (a)遺伝子集団の少なくとも1領域と実質的に同一であるdsRNA集団をコードする別のDNA分子集団を準備し;
    (b)前記DNA集団を、生物学的経路に関する第1の哺乳動物モデル系に導入し;
    (c)前記第1の哺乳動物モデル系の前記生物学的経路の中の標的遺伝子の発現を調節するdsRNAをコードするDNA分子集団からDNAを同定し、その結果、標的DNAを予備検証し;
    (d)必要に応じて、ステップ(c)にて同定した1又は複数の予備検証したDNAを用いて第2の哺乳動物モデル系において(a)〜(c)を実施し、それによって、前記第2の哺乳動物モデル系の前記標的遺伝子の発現を調節することによりDNAが更に予備検証され;
    (e)前記予備検証したDNAが前記生物学的経路を調節することを:
    (i)前記予備検証したDNAを、生物学的経路に関する第3の哺乳動物モデル系に導入し;そして
    (ii)前記第3の哺乳動物モデル系の前記生物学的経路の中の標的遺伝子の発現を調節するdsRNAをコードするDNAを同定し、その結果、前記生物学的経路を調節するDNAを確認すること、
    によって確認すること、
    を含む前記方法。
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