JP2007321169A - 成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.0005〜0.04、Si:0.01〜1.0、Mn:0.8〜3.0、P:0.003〜0.15、S:0.015以下、Al:0.005〜0.5、N:0.006以下、Nb:0.003〜0.1、Ti:0.003〜0.1を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼スラブを、(Ar3変態点-50)〜950℃の仕上温度で熱延し、750℃以下の巻取温度で巻取り、圧下率50%以上で冷延し、式(1)を満たす焼鈍温度T1℃に加熱し、T1℃から400℃までを平均1〜30℃/sで冷却する1回目の焼鈍を行い、酸洗後、(Ac1変態点-30)℃以上、(Ac1変態点+30)℃又はT1℃のうち低い方の温度以下の焼鈍温度に加熱する2回目の焼鈍を行い、溶融亜鉛めっき処理を施す製法;0.2×A3変態点+0.8×Ac1変態点≦T1≦0.8×A3変態点+0.2×Ac1変態点・・(1)。
【選択図】図1
Description
0.2×A3変態温度+0.8×Ac1変態温度≦T1≦0.8×A3変態温度+0.2×Ac1変態温度・・・(1)
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、さらに、質量%で、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有する鋼スラブを用いることができる。
C:0.0005〜0.04%
Cは、高強度化に有効であり、440MPa以上のTSを得るにはC量を0.0005%以上とする必要がある。しかし、C量が0.04%を超えると1.5以上のr値が得られなくなるので、C量は0.04%以下、好ましくは0.03%以下にする必要がある。
Siは、フェライト変態を促進させ未変態オーステナイト中のC含有量を上昇させてフェライト相とマルテンサイト相などの硬質相との複合組織を形成させやすくするほか、固溶強化の効果を有する。こうした効果を得るためには、Si量は0.01%以上、好ましくは0.05%以上にする必要がある。一方、Si量が1.0%を超えると熱間圧延時に赤スケールが発生し、鋼板の表面外観を悪くし、また、溶融亜鉛めっきを施す場合にはめっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招く。したがって、Si量は1.0%以下、好ましくは0.7%以下にする必要がある。
Mnは、高強度化に有効であるとともに、焼鈍加熱後の低温変態相が得られる臨界冷却速度を低くする作用があり、マルテンサイト相などの硬質相の形成を促すため、要求される強度レベルおよび焼鈍時の冷却速度に応じてその量を調整する必要がある。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止するのに有効な元素である。このような観点から、Mn量は0.8%以上、好ましくは1.2%以上にする必要がある。一方、Mn量が3.0%を超えるとr値や溶接性を劣化させるので、Mn量の上限は3.0%とする。
Pは、固溶強化の効果がある。しかし、P量が0.003%未満ではその効果が現れないだけでなく、製鋼時の脱りんコストの上昇を招く。したがって、P量は0.003%以上、好ましくは0.01%以上にする必要がある。一方、P量が0.15%を超えると、Pが粒界に偏析して耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、Pはめっき層と鋼板の界面におけるFeの拡散を抑制して合金化処理性を劣化させる。そのため、高温での合金化処理が必要となり、パウダリングやチッピングなどのめっき剥離が生じやすくなる。したがって、P量の上限は0.15%とする。
Sは、0.015%を超えて含有されると熱間割れの原因になるほか、鋼中で介在物として存在して鋼板の諸特性を劣化させる。したがって、S量は0.015%以下にする必要があるが、できるだけ低減することが好ましい。
Alは、鋼の脱酸元素として有用であるほか、固溶NをAlNとして析出させ耐常温時効性を向上させる作用があり、この効果を得るためAl量は0.005%以上にする。一方、多量に添加してもその効果は飽和し、合金コスト増を招くばかりでなく表面欠陥の誘発も招くので、Al量は0.5%以下にする必要がある。
Nが多量に存在すると耐常温時効性を劣化させるため、その分多量のAlやTiの添加が必要となる。したがって、N量は0.006%以下にする必要があるが、できるだけ低減することが好ましい。
Nbは、熱延組織を微細化するのに効果的な元素であり、この微細化を通して高r値化に寄与し、また、熱間圧延後NbCとして析出して固溶C量を減少させて高r値化に寄与する。このような観点から、Nb量は0.003%以上にする必要がある。一方、本願では、1回目の焼鈍時の冷却過程でマルテンサイト相などの硬質相を形成させる必要があるが、過剰のNb添加はこれを妨げることになるので、Nb量の上限は0.1%とする。
Tiは、SやNを析出物として固定し、また、炭化物として析出して固溶C量を減少させて高r値化に寄与する。さらに、Nbほどではないが熱延組織を微細化する効果も有する。このような観点から、Ti量は0.003%以上にする必要がある。一方、本発明では、1回目の焼鈍時の冷却過程でマルテンサイト相などの硬質相を形成させる必要があるが、過剰のTi添加はこれを妨げることになるので、Ti量の上限は0.1%とする。
Mo、Cr、Cu、Niは、Mn同様、マルテンサイト相などの硬質相が得られる臨界冷却速度を低くする作用を有し、1回目の焼鈍時の冷却過程で硬質相の形成を促す元素であり、高強度化に効果がある。また、MoはCを析出させる作用を有し高r値化にも寄与する元素でもあり、Cu、Niはめっき性への影響が少ない元素でもある。こうした効果を得るためには、Mo、Cr、Cu、Ni量はそれぞれ0.05%以上にすることが好ましい。しかしながら、過剰のMo、Cr、Cu、Ni添加はこれらの効果を飽和させるだけでなく、合金コスト増を招き、また、Cuは表面性状を悪化させるため、Mo、Cr、Cu、Ni量はそれぞれ0.5%以下にすることが好ましい。
Bは、鋼の焼入性を向上させる元素であり、必要に応じて含有できる。この効果を得る上では0.0003%以上とすることが好ましい。しかし、その量が0.01%を超えるとその効果が飽和するため、B量は0.01%以下とすることが好ましい。
本発明の製造方法では、上記組成を有する鋼スラブを用いる。本発明で用いる鋼スラブは、成分のマクロ偏析を防止すべく連続鋳造法により製造することが望ましいが、造塊法などで製造することもできる。また、スラブを製造した後、いったん室温まで冷却し、その後再度加熱する従来法に加え、室温まで冷却せずに加熱炉に装入し熱間圧延する直送圧延法、あるいはわずかの保熱を行った後に直ちに熱間圧延する直送・直接圧延法などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
加熱後のスラブは粗圧延と仕上圧延により熱間圧延されるが、仕上圧延における圧延終了温度である仕上温度が(Ar3変態温度-50)℃未満だとフェライト域の圧延となり、熱延組織が粗大化し、冷延焼鈍後に1.5以上のr値が得られない。また、仕上温度が950℃を超えるとγ粒が粗大化し、冷延焼鈍後に1.5以上のr値が得られないのみならず、スケール欠陥などを誘発する。したがって、仕上温度は(Ar3変態温度-50)〜950℃とする必要がある。ここで、Ar3変態温度は従来公知の方法で求めればよく、例えば、後述する方法により求めればよい。
なお、仕上圧延に先立つ粗圧延の条件は特に規定する必要はない。例えば、鋼スラブの加熱温度を低くして、その分粗圧延後のシートバーをシートバーヒーターで加熱することも可能である。
また、熱間圧延時の圧延荷重を低減するため仕上圧延の一部または全部のパス間で潤滑圧延を行うことができる。潤滑圧延を行うと鋼板形状の均一化や材質の均質化にとって有効である。潤滑圧延の際の摩擦係数は0.10〜0.25の範囲とするのが好ましい。さらに、熱間圧延の操業安定性の観点から、相前後するシートバー同士を接合し、連続的に仕上圧延する連続圧延プロセスを適用することもできる。
熱間圧延後の鋼板は巻取られるが、このとき巻取温度が750℃を超えると熱延組織が粗大化し強度低下が起こるとともに、冷延焼鈍後に1.5以上のr値が得られない。したがって、巻取温度は750℃以下とする必要があり、好ましくは550〜680℃とする。
なお、巻取温度を750℃以下とすることは、巻取り時にNbやTiの炭化物の析出を促進するので、冷延焼鈍後の高r値化にとって好ましい。
熱間圧延後の鋼板は、常法に従い酸洗によりスケールを除去した後、冷間圧延される。冷間圧延時の圧下率は、50%未満では{111}再結晶集合組織が発達せず、1.5以上のr値を得ることが困難となるので、50%以上、より望ましくは60%以上とする必要がある。一方、本発明では圧下率を90%までの範囲では高くするほどr値が上昇するが、90%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、圧延時のロールへの負荷も高まるため、圧下率の上限は90%とすることが好ましい。
上述したように、冷間圧延後の鋼板には、マルテンサイト相などの硬質相を含む複合組織を形成させるために1回目の焼鈍が行われる。図1に、表1に示す成分を有する鋼Aを用いて、1回目の焼鈍温度以外の条件は本発明範囲内として、1回目の焼鈍温度を変化させて製造した溶融亜鉛めっき鋼板の1回目の焼鈍温度と引張強度TSおよび穴拡げ率λとの関係を示す。ここで、TSおよびλは次のようにして求めた。
引張強度TS:鋼板の圧延方向に対して90°方向にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行ってTSを求めた。
穴拡げ率λ:150mm角の鋼板中央部に、板厚の15%のクリアランスで10mmφの穴を打抜き、バリを外側にして頂角60°の円錐台ポンチを用い穴拡げ試験を行った。そして、割れが板厚を貫通した時点で試験を終了し、その時点での穴径d(mm)を測定して、次の式により穴拡げ率λ(%)を求めた。
λ=100×(d-10)/10
図1に示すように、焼鈍温度の上昇に伴い引張強度TSは大きくなり、また、穴拡げ率λは焼鈍温度に対して極大値をとり、ある温度範囲で良好となることがわかった。発明者らは図1の結果などをもとに、穴拡げ率λ、引張強度TSと1回目の焼鈍温度との関係について詳細に検討した。ここで、組織観察の結果、良好なλが得られる場合は、マルテンサイト相などの硬質相を含む複合組織が形成されており、発明者らは、このような複合組織を形成させるためには、焼鈍温度としては、フェライトとオーステナイトの2相域温度とすることが重要と考えた。また、焼鈍温度が2相域温度のなかで、どのような温度範囲に位置するかにより、硬質相の量や硬度などの特性が変化し、穴拡げ率に影響するものと考えた。そこで、2相域の下限温度と考えられるAc1変態温度と、上限温度と考えられるA3変態温度に着目し、これらの温度をもとに良好な穴拡げ率が得られる焼鈍温度T1について検討した。
その結果、1回目の焼鈍温度を上記式(1)を満足するT1℃したときに複合組織を形成して440MPa以上のTSと100%以上のλが得られることがわかった。1回目の焼鈍温度T1が(0.2×A3変態温度+0.8×Ac1変態温度)未満では、マルテンサイト相などの硬質相を含む複合組織を形成させることが難しく、高強度と優れた穴拡げ性を両立させることが困難である。また、1回目の焼鈍温度T1が(0.8×A3変態温度+0.2×Ac1変態温度)を超えると硬質相が硬質化し過ぎ、2回目の焼鈍で硬質相を適度に軟化できなくなり優れた穴拡げ性が得られなくなる。ここで、A3変態温度およびAc1変態温度は、鋼Aと同じ成分組成の鋼についてフォーマスター試験機により、5℃/sで加熱したときの熱膨張率の変化から評価した。
なお、1回目の焼鈍で、焼鈍温度に加熱後は、マルテンサイト相などの硬質相を含む複合組織を形成させるためにT1℃から400℃までの温度域を平均冷却速度を1℃/s以上で冷却する必要がある。また、硬質相が過度に硬質化しないように、該平均冷却速度は30℃/s以下とする必要がある。
酸洗後の鋼板は、1回目の焼鈍で形成された硬質相を軟化させて局部伸びを高め、穴拡げ性を向上させるために2回目の焼鈍を行う必要がある。このとき、Si、Mn、Pなどの元素が鋼板表面に再濃化しないように、1回目の焼鈍温度T1℃以下の温度で焼鈍する必要がある。また、図2に、表1に示す成分を有する鋼Aを用いて、2回目の焼鈍温度以外の条件は本発明範囲内として、2回目の焼鈍温度を変化させて製造した溶融亜鉛めっき鋼板の2回目の焼鈍温度と引張強度TSおよび穴拡げ率λとの関係を示したが、2回目の焼鈍温度が(Ac1変態温度-30)℃以上(Ac1変態温度+30)℃以下の範囲で100%以上のλが得られることがわかる。2回目の焼鈍温度が(Ac1変態温度-30)℃未満では硬質相の軟化が不十分で局部伸びが低く、(Ac1変態温度+30)℃を超えると新たに硬質相が増えて硬化し過ぎて強度・延性のバランスが悪化する。
なお、2回目の焼鈍温度の上限は、Si、Mn、Pなどの元素の表面濃化の観点からは1回目の焼鈍温度T1℃以下に、穴拡げ性の観点からは(Ac1変態温度+30)℃以下にする必要があるので、どちらか低い方の温度以下にする必要がある。
なお、上記2回目の焼鈍および溶融亜鉛めっき処理あるいはさらに合金化処理は、連続溶融亜鉛めっきラインにて連続して行うことが好ましく、また、2回目の焼鈍の前に行う1回目の焼鈍後の酸洗も連続溶融亜鉛めっきライン内に設置される酸洗設備にて行うことが、生産効率の上から好ましい。
r値:鋼板の圧延方向、圧延方向に対し45°方向、圧延方向に対し90°方向からJIS5号引張試験片を採取し、10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を測定し、JIS S 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を次の式から算出し、これをr値とした。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
ここで、r0、r45、r90は、それぞれ圧延方向に対し0°、45°、90°方向から採取した試験片で測定した塑性歪比である。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.0005〜0.04%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.8〜3.0%、P:0.003〜0.15%、S:0.015%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.006%以下、Nb:0.003〜0.1%、Ti:0.003〜0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、(Ar3変態温度-50)〜950℃の仕上温度で熱間圧延し、750℃以下の巻取温度で巻取り後、50%以上の圧下率で冷間圧延し、下記の式(1)を満足する焼鈍温度T1℃に加熱し、次いで前記焼鈍温度T1℃から400℃までの温度域を1〜30℃/sの平均冷却速度で冷却する1回目の焼鈍を行い、酸洗後、(Ac1変態温度-30)℃以上、(Ac1変態温度+30)℃または前記T1℃のうち低い方の温度以下の焼鈍温度に加熱する2回目の焼鈍を行い、引き続き溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
0.2×A3変態温度+0.8×Ac1変態温度≦T1≦0.8×A3変態温度+0.2×Ac1変態温度・・・(1) - 前記鋼スラブが、さらに、質量%で、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記鋼スラブが、さらに、質量%で、B:0.01%以下を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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