JP2007300817A - 細菌の検出方法、検出用試薬及び検出用キット。 - Google Patents

細菌の検出方法、検出用試薬及び検出用キット。 Download PDF

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Abstract

【課題】高病原性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌又は感受性黄色ブドウ球菌を簡便かつ迅速に検出することのできる細菌の検出方法、検出用試薬及び検出用キットを提供する。
【解決手段】生体試料から分離されたPanton−Valentine ロイコシジン又は粘着因子を検出する。好ましくは、生体試料中のPanton−Valentine ロイコシジン又は粘着性因子の検出を免疫化学的方法により行う。免疫化学的方法は、逆受身ラテックス凝集法、酵素免疫化学的方法またはイムノクロマト法のいずれかを用いることができ、好ましくは、逆受身ラテックス凝集法が用いられる。
【選択図】なし

Description

本発明は、細菌の検出方法、検出用試薬及び検出用キットに関する。さらに詳しくは、高病原性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌又は感受性黄色ブドウ球菌の血清学的迅速検出方法、検出用試薬及び検出用キットに関する。
ヒトの鼻腔や皮膚などの体表面に常在するグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌は、通常は無害であるが、ヒトの膿腫等の様々な表皮感染症や食中毒、また肺炎、髄膜炎、敗血症等、致死的となるような感染症の起因菌のひとつである。この黄色ブドウ球菌は抗菌薬耐性の観点から、メチシリン耐性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin Resistant Staphylococcus aureus、以下、MRSA)と、従来のメチシリン感受性のメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Methicillin Susceptible Staphylococcus aureus、以下、MSSA)とに分けられる。
とくに、MRSAはメチシリンのみでなく、多くの薬剤に耐性能を有し、その出現は抗生物質の多用等が背景になっている。そして、MRSAは、1980年代から1990年代にかけて猛威をふるった病院感染の主要な病原菌である。現在でも、MRSA等による院内感染は深刻で、その死亡数は米国ではエイズ、肺癌、交通事故の死亡数に匹敵する。また、1997年から1999年にかけて米国で壊死性肺炎や敗血症による小児死亡例が多発、新たに市中感染型の高病原性MRSAが同定された。近年、市中感染型の高病原性MRSAは世界的に広がりを見せ、さらに院内感染が急増していることから、様々な方向から対策が検討されている。
市中感染型の高病原性MRSAの特徴は、Panton−Valentineロイコシジン(Panton−Valentine Leukocidin、以下、PVL)を産生し、かつコラーゲンなどのヒト組織に強い粘着性を有する点にある。
PVLは白血球破壊毒素であり、白血球系細胞に特異的に作用し、その活性発現にlukPVS(S成分)とlukPVF(F成分)の2成分を必要とする2成分性膜孔形成毒素である。これらをコードする遺伝子(luk PV SF)はオペロンを形成している。S型成分が標的細胞への認識に関与し、白血球膜上のモノシアロガングリオシドGM1がレセプターであると考えられている。そしてF型成分と共に標的細胞膜に結合して複合体を形成し、構造変化を起こしながらヘテロ7量中間体を経て水不溶性の膜孔を形成する。膜孔はさらにプロテインキナーゼAによるS成分のリン酸化が重要で、リン酸化があって初めて細胞崩壊が成立する。PVL陽性の黄色ブドウ球菌は、小児や青年期の皮膚・軟部組織疾患に関連すると考えられている。現在、日本においてPVL陽性株の報告は非常に少ない。皮膚・軟部組織疾患だけを調べた場合でも陽性率は0.9%程度である。しかし、米国、欧州、オーストラリアなどではPVL陽性黄色ブドウ球菌が高頻度に分離される。PVL陽性株はせつで陽性率が高く、続いて蜂窩織炎、膿瘍、ひょう疽という順に低くなっている。ここで、「せつ」とは、毛穴(毛包)が細菌感染(深在性の化膿性感染症)により炎症が起こることをいう。ニキビや、オデキに相当する病名を指す。毛穴1つの場合は「せつ」となり、近接する毛穴2つ以上の場合は「よう;癰」とよぶ。
また、PVLは深部感染にも関連しており、骨髄炎や市中肺炎からも分離されている。そして、多くの細菌は宿主の細胞表面に特異的に、あるいは非特異的に粘着することにより、宿主細胞に定着する。特異的に粘着する場合、菌体表層成分(粘着因子)が関係している。黄色ブドウ球菌の場合、粘着因子としてコラーゲンを標的としたcna(コラーゲン結合タンパク)や骨シアロプロテインを標的としたbbp(骨シアロプロテイン結合タンパク)などがある。これらの粘着因子を保有している菌株は、宿主細胞へ効率よく粘着・感染できるため強毒株と考えられる。
このような高病原性因子の迅速診断法として、現在はreal−timePCRなどのDNA診断法が開発済みである(非特許文献1)。
Saori Nakagawa,Ikue Taneike, et al., Gene sequences and specific detection for Panton-Valentine leukocidin., "Biochemical and Biophysical Research Communications" 2005;328:p.995-1002.
しかし、DNAを増幅して検出する方法は、PCR装置などの設備と熟練した技術者を必要とし、また、結果が出るまで時間がかかるため、迅速性に欠けるという問題がある。したがって、特別な装置や設備も必要せず、熟練した技術も必要とせずに検査できる簡便なMRSA及びMSSAの高病原性因子の検出法の開発が求められている。
そこで、本発明は、高病原性MRSAとMSSAの病原性因子であるPVL及び粘着因子の抗体を作成し、免疫化学的方法、とくに逆受身ラテックス凝集法により、高病原性MRSAとMSSAを迅速に検出するための血清学的迅速検出用試薬の開発に着手し、細菌、とくに高病原性MRSAとMSSAを簡便かつ迅速に検出することのできる血清学的迅速検出方法、検出用試薬及び検出用キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行い、抗PVL抗体または抗粘着因子抗体を用いた逆受身ラテックス凝集法を開発し、簡便かつ迅速な生体試料中のPVL及び粘着因子の測定を可能にすることで、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の請求項1記載の細菌の検出方法は、生体試料から分離されたPVL又は粘着因子により細菌を検出することを特徴とする。
請求項2記載の細菌の検出方法は、生体試料から分離されたPVL又は粘着因子の産生量を定量化し、細菌の毒力レベルの判定を行うことにより細菌を検出する。
請求項3記載の細菌の検出方法は、請求項1又は2において、前記生体試料がヒトの血液、感染部位の膿や拭い液、組織である。
請求項4記載の細菌の検出方法は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記細菌がPanton−Valentine ロイコシジンを産生する細菌又は粘着因子を有する細菌である。
請求項5記載の細菌の検出方法は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記細菌が高病原性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌又は感受性黄色ブドウ球菌である。
請求項6記載の細菌の検出方法は、請求項1〜5のいずれかにおいて、PVL又は粘着因子の検出を免疫化学的方法により行なう。
請求項7記載の細菌の検出方法は、請求項6において、前記免疫化学的方法が逆受身ラテックス凝集法、酵素免疫化学的方法またはイムノクロマト法のいずれかである。
請求項8記載の細菌の検出方法は、請求項7において、前記免疫化学的方法が逆受身ラテックス凝集法である。
請求項9記載の細菌の検出用試薬は、抗PVL抗体又は抗粘着因子抗体を含む。
請求項10記載の細菌の検出用試薬は、固相化抗PVL抗体又は固相化抗粘着因子抗体及び標識抗PVL抗体又は標識抗粘着因子抗体を含む。
請求項11記載の細菌の検出用試薬は、請求項9又は10において、抗体がモノクローナル抗体である。
請求項12記載の細菌の検出用キットは、請求項9〜11のいずれかに記載の細菌の検出用試薬により構成されている。
本発明の細菌の検出方法、検出用試薬及び検出用キットによれば、PVLと粘着因子に対する抗体を用いることにより、細菌、とくに高病原性MRSAとMSSAの簡便で迅速な検出が可能となる。したがって、世界中のあるいはわが国のすべての感染症検査機関、病院検査室がこの検出用キットを用いて、患者の高病原性MRSA又はMSSA感染を検査し、感染、流行の監視を行うことができる。また同時に、PVL及び粘着因子といった病原因子の産生量を定量することにより、細菌の毒力レベルの判定も行うことができる。さらに、キットの特性上、診断成績を標準化することができ、他施設の成績と比較解析することもできる。
本発明の細菌の検出方法は、生体試料から分離されたPVL又は粘着因子により細菌を検出することを特徴とするものである。
また、生体試料から分離されたPVL又は粘着因子の産生量を定量化し、細菌の毒力レベルの判定を行うことにより細菌を検出することができる。
本発明において、生体試料としては、ヒトの血液、感染部位の膿や拭い液、組織を用いることができる。この操作は、注射針による採血や滅菌綿棒等により患部を拭うなど、色々な方法がある。適宜、常法に従って行うことができる。
本発明の細菌の検出方法において対象となる細菌は、Panton−Valentine ロイコシジンを産生する細菌又は粘着因子を有する細菌である。
また、その細菌としては、高病原性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌又は感受性黄色ブドウ球菌があげられる。
PVL又は粘着因子の検出方法は、特定の方法に限定されるものではないが、免疫化学的方法が好適に用いられる。
免疫化学的方法としては、特定の方法に限定されるものではないが、例えば、逆受身ラテックス凝集法、酵素免疫化学的方法、イムノクロマト法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、比濁法、酵素センサー電極法、免疫電気泳動法、ウエスタンブロット法などを用いることができる。これらの中では、感度が高いことから、逆受身ラテックス凝集法、酵素免疫化学的方法、またはイムノクロマト法が好ましく用いられる。
逆受身ラテックス凝集法(Reversed Passive Latex Agglutination、RPLA)は、抗体感作ラテックス粒子と抗原との凝集反応を利用した方法である。原理は、ポリクローナル抗体あるいは数種類のモノクローナル抗体を感作したラテックス粒子に抗原を含む測定サンプルを混和すると、粒子上の抗体と抗原が反応し、別の粒子上の抗体がその抗原の別のエピトープを認識し結合する。すると、抗原を挟んでラテックス粒子同士が結合する形になる。そして、粒子の表面にはまんべんなく抗体が結合しているため、次々と抗原を介したラテックス粒子同士の結合が起こり大きな凝集塊を形成する。この反応をV字型底マイクロプレート中で一晩静置反応することにより、陰性の場合ラテックス粒子はそのまま転がり、V字方型底に集まる。陽性(凝集塊を形成)の場合、ラテックス粒子は斜面を転がることができず、沈殿してV字底の斜面全体に付着する形になる。プレートを上から見ると陰性はラテックス粒子がウェルの中央に集まり小さな点として観察され、陽性ではウェル底全体にラテックス粒子が拡散している様に観察される。したがって、この方法を用いて、抗PVL抗体感作ラテックス粒子とPVL、又は抗粘着因子抗体感作ラテックス粒子と粘着因子との免疫反応で生じたラテックス粒子の凝集の程度を測定することにより、PVL又は粘着因子濃度を測定することができる。なお、従来、ラテックス粒子を使用する代わりに抗原として赤血球を用いる受身赤血球凝集法が存在した。しかし、現在では逆受身ラテックス凝集法が一般的となっているため、逆受身を省略し、逆受身ラテックス凝集法をラテックス凝集法と呼ぶこともある。
酵素免疫化学的方法としては、競合法であってもよく、非競合法であってもよい。なかでも、非競合法の一種であるサンドイッチ型酵素免疫測定法は簡単な操作でより高感度かつ精密にPVL又は粘着性因子濃度を測定できることから、より好ましく用いられる。
サンドイッチ型酵素免疫測定法は、PVL又は粘着因子に存在している異なったエピトープを認識する2種類の抗体、すなわち、固相化抗PVL抗体及び標識抗PVL抗体との間にPVLを挟み込み、又は固相化抗粘着因子抗体及び標識抗粘着因子抗体との間に粘着因子を挟み込む。そして、PVL又は粘着因子と結合した標識抗体の酵素量を測定することにより、PVL又は粘着因子濃度を測定するものである。
イムノクロマト法は、すべての免疫化学反応系が保持されたシート状のキャリアを用いるものである。この方法は、特別な測定機器が不要であることから、病院外での判定、救急などで迅速な判定が求められる場合に有利な方法である。また、この方法は、任意に設定した濃度、すなわちカットオフ値以上のPVL又は粘着因子の存否を定性的に検出するのに適している。
イムノクロマト法では、生体試料から精製された検体をキャリアに滴下すると、生体試料中のPVL又は粘着因子と金コロイドなどで標識された抗PVL抗体又は抗粘着因子抗体とが免疫反応して、免疫複合体が形成される。この複合体がキャリア上を展開し、キャリア上の特定箇所に固相化された別のエピトープを認識する抗PVL抗体又は抗粘着因子抗体に捕捉され、標識物が集積する。そして、この集積の度合いを目視で観察することにより、PVL又は粘着因子濃度を測定するものである。
本発明の細菌の検出方法は、免疫化学的方法のなかでも、より簡便かつ迅速な検出が可能であることから、とくに逆受身ラテックス凝集法がより好ましく用いられる。
本発明の細菌の検出用試薬は、本発明の細菌の検出方法を免疫化学的方法により実施することができるように、PVL又は粘着因子を認識して特異的に反応する抗PVL抗体又は抗粘着因子抗体を含むものである。
本発明において用いられる抗体は、通常の方法により製造できる。ポリクローナル抗体は、PVL又は粘着因子でウサギ、マウス、ヤギ、ウマなどの動物を免疫することで得ることができる。また、モノクローナル抗体は、このようなPVL又は粘着因子で免疫された動物の脾臓細胞とミエローマとを融合させ、クローニングを行ってハイブリドーマを選択し、これを培養することにより得ることができる。
さらに、本発明の検出用試薬が、酵素免疫化学的方法の非競合法の一種であるサンドイッチ型酵素免疫測定法又はイムノクロマト法に基づく場合、固相化抗PVL抗体又は固相化抗粘着因子抗体及び標識抗PVL抗体又は標識抗粘着因子抗体が含まれる。酵素免疫化学的方法、イムノクロマト法を用いた試薬はこの分野において一般的であり、前述のようにして得られた抗PVL抗体又は抗粘着因子抗体をこれらの試薬に適用することにより製造することができる。
また、抗PVL抗体又は抗粘着因子抗体としては、ポリクローナル抗体であってもよいが、厳密な特異性を有し、均質なものを安定して供給できることから、モノクローナル抗体がより好ましく用いられる。
本発明の検出用キットは、以上のような細菌の検出用試薬により構成されている。
以下に具体例を挙げて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの具体例により何ら制限されるものではない。以下の実施例では、MRSA及びMSSA、黄色ブドウ球菌の検出方法を示したが、PVLを産生する細菌又は粘着因子を有する細菌であれば、以下の方法と同様にして検出することが可能である。
(患者材料、分離細菌等、測定用サンプルの調製方法)
MRSA及びMSSA、黄色ブドウ球菌感染が疑われる患者の血液、感染部位の膿や拭い液、組織などを採取する。この操作は注射針による採血や滅菌綿棒等により患部を拭うなど、色々な方法がある。適宜、常法に従って行うことができる。
採取した患者材料を(I)液体培養(ブレインハートインフュージョン(BHI)液体培地;栄研化学社製)あるいは(II)MRSA用選択培地(オキサシリン加マンニット食塩(MSO)寒天培地;日水製薬社製)あるいは黄色ブドウ球菌用選択培地(マンニット食塩寒天培地;日水製薬社製)で一晩培養しMRSAまたは黄色ブドウ球菌を分離する。(I)の場合は、その一晩培養液を遠心法(3,000rpm、20分間)により遠心上清を測定サンプルとする。(II)の場合は、選択培地上で疑われる集落を液体培養にて更に培養後、その培養液を(I)と同様に調整し、測定サンプルとする。
A.病原性遺伝子配列から抗原エピトープを推定し、ハプテンに結合させて抗原を作製する方法
(1)病原性遺伝子配列の決定
LISA384システム(島津製作所社製)を用いたサンガー法によりシーケンスを行い、病原性遺伝子配列を決定する。
(2)病原性遺伝子配列からの抗原エピトープの推定方法
抗原部位解析は、コンサルティングソフト(シグマアルドリッチジャパン社製)により行う。
解析手順は、まず、病原性遺伝子配列より病原性因子のアミノ酸配列を導き、親水性部位を選定する。次にターン構造を確認し、タンパク質分子表面に存在する部分を推定する。そして、リン酸化特異配列や糖鎖付加特異配列等の、修飾を受ける可能性の部位をなるべく除外する。その後、ペプチド合成が容易な配列を選定する。
(3)ハプテンに結合させて抗原を作製する方法
まず、推定抗原エピトープ配列の末端にシステイン残基が付加されるようにペプチドを合成する。次に、システイン残基をチオール化し、チオール基を付加する。その後、キャリアープロテインとしてKeyhole−limpet hemocyanin;KLH(ヘモシアニン)を用い、架橋剤としてMaleimidobenzoic acid−N−hydroxy succinimide;MBSを加え結合させる。
(4)作製した抗原の動物への免疫方法
1.抗原の調製
ガラスシリンジの一方にフロイントのアジュバンド(初回はIncomplete Freund‘s Adjuvant、次回からComplete Freund’s Adjuvant)を入れ、もう一方のシリンジに抗原溶液を入れ、双方をジョイントでつなぎ、交互にシリンジを押してエマルジョン化させる。
2.抗原投与
ウサギを補てい箱に入れた後、ウサギ(日本白色種、雌、体重2.1−2.5kg)前腕側の背部皮膚を持ち上げ、21Gのシリンジで皮下注射を行う。ペプチドは、初回200μg、次回から100μgを10ヶ所に投与する。抗原投与は一週間毎に6回行う。
(5)抗体産生後の特異抗体の取得方法
1.全採血
ウサギの耳から留置針を用い全採血後、冷蔵庫で一晩放置し、遠心操作により、血清を分離する。
2.特異抗原固相化カラムによる精製
用いる試薬は、AF−トレシルトヨパール650(東ソー社製)、吸着バッファーとしては、0.1M 炭酸系バッファーに0.5M 塩化ナトリウム溶液を加え、pH8.0及びpH8.5に調製して用いる。溶出バッファーとしては、pH2.5の0.1M Gly−塩酸を用い、ブロッキングバッファーとしては、0.1M Tris−塩酸と0.5M 塩化ナトリウム溶液を混合し、pH8.0に調製して用いる。
a.特異抗原のゲルへの固定化操作
ペプチドを5mg秤量し、吸着バッファーに溶解させ、素早くゲルを加える。次に、ローテーターにより、室温で一晩転倒混和する。そして、0.5M 塩化ナトリウム溶液で未吸着のペプチドを除去するためにゲルを洗浄する。その後、Blockingバッファーにて室温で1時間転倒混和し、ブロッキングする。
b.特異抗体精製方法
血清を40%硫安にて沈殿後、PBSにて透析を行なう。透析後の血清を加え、ローテーターを用い室温で1時間吸着させる。ゲルを静置沈降後、未吸着抗体を除去するためにPBSにて洗浄する。0.1M Gly−塩酸(pH2.5)1/2カラム容量を丁寧に重層し、カラムから滴下する溶液が酸性でないことをpH試験紙にて確認後、さらに、0.1M Gly−塩酸(pH2.5)を0.5mLずつ重層し、抗体を溶出させ、 1.0M Tris−塩酸(pH8.0)50uLが入ったチューブに各フラクションを氷上にて0.5mlずつ分取する。
その後、各フラクションを分光光度計(280nm)で測定し、0.2以上のフラクションを回収し、PBSで数回バッファーを交換しながら透析し、これを特異抗体とする。
(6)この特異抗体を用いた抗原の検出方法
(RPLA法)
抗体は、5、10、20、50mg/mlに調製して用いる。ラテックス粒子は、ポリエステル製の粒径0.77μm、0.5%のものを用いる。
a.感作方法
抗体とラテックス粒子は、抗体:0.5%ラテックス粒子=1:1で混和し、37℃で1時間インキュベートする。次に、50℃で30分間インキュベートする。そして、5%BSA−PBSバッファーを1/10量加え、4℃で一晩静置する。その後、0.5% BSA−PBSに上清を置換したものを、感作ラテックスとする。
b.操作方法
96ウェル V型プレートに陽性コントロールとして既知の濃度の抗原とPVL陽性菌株の培養上清をそれぞれ2倍段階希釈する。希釈後の全てのウェルに感作ラテックスを滴下し混和する。一晩静置後、凝集しているウェルを観察し、何段階目のウェルまで凝集しているかを観察する。その際、コントロールと比較することで、検体原液の抗原量が定量出来る。つまり、病原因子の抗原産生量の定量をすることができ、毒力レベルを判定することができる。
B.病原性遺伝子配列からHis−tagを付加したタンパク質を合成、精製し、得られたタンパク質を抗原とする方法
(1)病原性遺伝子配列からHis−tagを付加したタンパク質を合成し、精製する方法
1.PVL−S、PVL−F遺伝子のPCR法による増幅
PVL−S、PVL−F遺伝子増幅のための標的遺伝子内に存在しない制限酵素サイトを付加したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを設計、合成する。そして、PVL陽性黄色ブドウ球菌より抽出したDNAと、合成したプライマー、Pfu−turboポリメラ―ゼを用いてPCRを行う。その後、PCR産物をアガロース電気泳動によりサイズ、収量を確認し、QIA quick PCR purification kit(キアゲン社製)にて精製する。
2.PCR産物のクローニング
ベクターをプライマーに付加した配列を認識する制限酵素にて消化し、QiA quick gel extraction kit(キアゲン社製)により精製する。PCR産物をベクター同様に制限酵素で消化し、QIA quick PCR purification kit(キアゲン社製)にて精製する。そして、Takara ligation kit(タカラバイオ社製)を用いてリゲイションする。リゲイションゾルをコンピテントセル(XL1blue)に形質転換する。その後、コンピテントセルを寒天平板上に培養し、コロニーをピックアップし、QIAprep SpinMiniprep kit(キアゲン社製)によりプラスミドDNAを精製する。
3.インサートDNAの確認
精製プラスミドDNAを制限酵素消化によりインサートDNAが目的の遺伝子サイズで切り出されるか電気泳動で確認する。切出し確認されたクローンについて最大3クローンについてシークエンス解析(両端のみ)を行う。
4.発現確認
目的の遺伝子がシークエンスで確認されたプラスミドDNAを発現用ホストセルBL21(DE3)RILに形質転換し、小スケール(4ml culture)でIPTG(−、+)誘導し、native & denature conditionにてNi−NTAバッチ精製後、SDS−PAGEにより、発現可溶性画分かの確認をする。
5.ラージスケール培養&精製
2Lで培養、発現誘導後、溶菌し、遠心上清を回収しNi−NTAクロマトグラフィーに吸着後、イミダゾールのグラジェントにて目的タンパクを溶出させる。そして、SDS−PAGEにより目的タンパクを多く含み、かつ非特異的吸着タンパクの少ないフラクションを回収し透析後、これをHis−tagを付加したタンパク質とする。
(2)このタンパク質を抗原とし、抗体を作製する方法
A−(4)、(5)と同様に行う。
(3)この特異抗体を用いた抗原の検出方法
(RPLA法)
A−(6)と同様に行う。
C.
(1)上記抗原に対するモノクローナル抗体の作製方法
A抗原に関してはペプチドであるため、それに対する抗体そのものがモノクローナル抗体である。Bに関してはPVL−S、PVL−Fそれぞれのタンパク全体を抗体としているため、数種類のエピトープが含まれており、これから作られる抗体はポリクローナル抗体となる。B抗原からモノクローナル抗体を作製する場合はB抗原のポリクローナル抗体より、ある1つのエピトープ以外に対する抗体を吸収する事より、ある1つのエピトープに対する抗体のみを精製することができる。
(2)このモノクローナル抗体を用いた抗原の検出方法
(RPLA法)
A−(6)と同様に行う。

Claims (12)

  1. 生体試料から分離されたPanton−Valentine ロイコシジン又は粘着因子により細菌を検出することを特徴とする細菌の検出方法。
  2. 生体試料から分離されたPanton−Valentine ロイコシジン又は粘着因子の産生量を定量化し、細菌の毒力レベルの判定を行うことにより細菌を検出することを特徴とする細菌の検出方法。
  3. 前記生体試料がヒトの血液、感染部位の膿や拭い液、組織であることを特徴とする請求項1又は2記載の細菌の検出方法。
  4. 前記細菌がPanton−Valentine ロイコシジンを産生する細菌又は粘着因子を有する細菌であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細菌の検出方法。
  5. 前記細菌が高病原性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌又は感受性黄色ブドウ球菌であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の細菌の検出方法。
  6. Panton−Valentine ロイコシジン又は粘着因子の検出を免疫化学的方法により行なうことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の細菌の検出方法。
  7. 前記免疫化学的方法が逆受身ラテックス凝集法、酵素免疫化学的方法またはイムノクロマト法のいずれかである請求項6記載の細菌の検出方法。
  8. 前記免疫化学的方法が逆受身ラテックス凝集法である請求項7記載の細菌の検出方法。
  9. 抗Panton−Valentine ロイコシジン抗体又は抗粘着因子抗体を含む細菌の検出用試薬。
  10. 固相化抗Panton−Valentine ロイコシジン抗体又は固相化抗粘着因子抗体及び標識抗Panton−Valentine ロイコシジン抗体又は標識抗粘着因子抗体を含む細菌の検出用試薬。
  11. 抗体がモノクローナル抗体である請求項9又は10記載の細菌の検出用試薬。
  12. 請求項9〜11のいずれかに記載の細菌の検出用試薬により構成されている細菌の検出用キット。
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JPN6010061825, 感染制御, 2005, Vol.1, No.3, p.269−274 *
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