本発明は、高エネルギー密度かつ高出力/高率充電特性を有する非水系二次電池に用いる非水系二次電池用負極及びその負極を具備する非水系二次電池に関する。
近年、地球環境の保全および省資源を目指したエネルギーの有効利用の観点から、深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システムなどが注目を集めている。その中、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)、あるいは燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、エンジンあるいは燃料電池が最大効率で運転するためには、一定出力での運転が必須であり、負荷側の出力変動あるいはエネルギー回生に対応するために、蓄電システム側には高出力放電特性および/または高率充電特性が要求されている。この要求に対応する為、蓄電システムにおいてはリチウムイオン電池の高出力化あるいは電気二重層キャパシタに代表されるキャパシタの高エネルギー密度化が検討されている。
高エネルギー密度二次電池の代表であるリチウムイオン電池は負極にはリチウムイオンのドープ・脱ドープ可能な黒鉛等の炭素材料が用いられてきた。リチウムイオン電池用負極材料として適用可能な材料としては、黒鉛、非晶質炭素材料が一般的であるが、昨今の高出力の非水系二次電池には、高出力放電特性/高率充電特性が黒鉛に比べ優れる、非晶質炭素材料の検討が進められている。
一方、リチウムイオンのドープ・脱ドープ可能な材料として炭素六角網面の周縁に水素が結合している材料群(最近、非特許文献1においてハイドログラフェンと総称されている)があり、例えば特許文献1に記載されている、炭素、水素および酸素から成る芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって、水素/炭素原子比が0.60〜0.15であり、ポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体がある。ポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体は非特許文献2にてPASと呼ばれ(PASはPolyacenic Semiconductorの略)、その特徴は、黒鉛の3倍程度のリチウムイオンをドープ/アンドープできることが非特許文献3に記載されている。また、このポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体を用い、リチウムを予め負極に担持(以下プリドープと呼ぶこともある)させて、高電圧を得て、高容量化した非水系二次電池が非特許文献4、特許文献2、非特許文献5、特許文献3に記載されているが、いずれもポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体(PAS)の特徴である高容量を活かした高エネルギータイプの電池へのアプローチであり、高エネルギー密度かつ高出力を有する非水系リチウムイオン電池への適用に関する記載はない。
炭素六角網面の周縁に水素が結合している材料(ハイドログラフェン)の他の例は、ピッチを主成分とする原料を熱反応に供することにより得られ、水素/炭素の原子比が0.35〜0.05である材料があり、上記PASを上回る1000mAh/g以上のリチウムをドープ・脱ドープ可能であることが記載されている(特許文献4、非特許文献6)。この材料について非特許文献6、非特許文献7ではPAHs(Polycyclic Aromatic Hydrocarbonsの略称)と呼び、代表的な炭素六角網面の形状が円盤状であることが記載されている。また、非特許文献8には、このPAHsを負極に用いたリチウム系二次電池が開示されており、市販リチウムイオン電池の2倍程度の容量を有する小型二次電池が得られているが、これもPAHsの特徴である高容量を活かした高エネルギータイプの電池へのアプローチであり、高エネルギー密度かつ高出力を有する非水系リチウムイオン電池への適用に関する記載はない。
最近、キャパシタの高エネルギー密度化が検討され始め、正極に活性炭、負極にリチウムイオンのドープ・脱ドープ可能な材料、電解液にリチウム塩を含むリチウム型キャパシタの開発も進められている(特許文献5)。また、非特許文献9および非特許文献10には上記PASを負極に用い、この負極にリチウムを予め担持させたリチウム系電解液を用いたキャパシタが開示されているが、そのエネルギー密度は20Wh/L(12Wh/kg)程度であり、上記要求を満たす為には、更なる高エネルギー密度化、高出力化が必要である。
T.Yamabe,M.Fujii,S.Mori,H.Kinoshita, S.Yata:Synth.Met.,145,31(2004)
特開昭59−3806号公報
S.Yata,Y.Hato,K.Sakurai,T.Osaki, K.Tanaka,T.Yamabe:Synth.Met., 18,645(1987)
S.Yata,H.Kinoshita,M.Komori,N.Ando, T.Kashiwamura,T.Harada,K.Tanaka, T.Yamabe:Synth.Met.,62,153(1994)
矢田静邦,工業材料,Vol.40,No.5,32(1992)
特開平3−233860号公報
S.Yata,Y.Hato,H.Kinoshita,N.Ando, A.Anekawa,T.Hashimoto,M.Yamaguchi, K.Tanaka,T.Yamabe:Synth.Met., 73,273(1995)
WO98/33227号公報
特開2000−251885号公報
S.Wang,S.Yata,J.Nagano,Y.Okano, H.Kinoshita,H.Kikuta,T.Yamabe :J.Electrochem.Soc.,147(7),2498(2000)
矢田静邦他:分子機能材料と素子開発,77(2004)
矢田静邦他:分子機能材料と素子開発,428(2004)
WO2002/41420号公報
安東信雄他,リチウムイオンキャパシタの開発(1) 「第46回電池討論会講演要旨集」,2005年11月,1C12,p294
田崎信一他、リチウムイオンキャパシタの開発(2) 「第46回電池討論会講演要旨集」,2005年11月,1C13,p296
蓄電システムにおける高エネルギー密度および高出力/高率充電特性への要求レベルは高く、例えば、従来にないエネルギー密度100Wh/Lかつ300Cを超える出力特性を有する超高出力デバイスの実現が希求されている。この超高出力デバイスの実現には、負極および正極ともに高容量かつ高出力/高率充電特性を兼ね備えた電極が必要となり、それぞれの重量あたり、あるいは、体積あたりの容量、出力特性に高いレベルが必要となる。このため、この超高出力デバイスの実現には、負極は、まず、活物質重量に対して数10A/g程度の電流密度で放電可能であり、それに加え電極密度が高く、負極活物質重量あたりの容量も高い必要がある。しかし、従来の、リチウムイオン電池用負極活物質では容量が重量あたり100〜300mAh/g程度、出力は負極厚みが実用的な厚み(例えば30μm以上)であるとき30Cレベルである。すなわち放電可能な電流密度は負極活物質重量あたり10A/g以下であり、上記要求を満たすものではない。従って、本発明はリチウムイオンがドープ・脱ドープ可能であり、容量に優れ、かつ、高エネルギー密度かつ従来にない高い出力特性を兼ね備えた非水系二次電池用負極及び高エネルギー密度・高出力非水系二次電池を提供することにある。
本発明者は、上記の様な従来技術の問題点に留意しつつ、研究を進めた結果、負極に結晶面002面の面間隔が3.6Å以上である不溶不融性基体を用い、該不溶不融性基体の粒子径、かつ、該不溶不融性基体に予め担持させるリチウム量を制御することにより、従来にない高出力放電(例えば40A/gの電流密度で放電させた時、負極活物質重量あたり30mAh/g以上の放電)が可能な負極を見出し、本発明を完成するに至った。
請求項1に記載の非水系二次電池用負極は、水素原子/炭素原子比が0.60〜0.05であり、かつ、結晶面002面の面間隔が3.6Å以上である不溶不融性基体を主成分とする非水系二次電池用負極において、不溶不融性基体の平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ不溶不融性基体の重量あたり500mAh/g以上のリチウムを予め担持させてあることを特徴としている。
請求項2に記載の非水系二次電池用負極は、電極密度が0.8g/cm3以上であることを特徴としている。
請求項3に記載の非水系二次電池用負極は、電極厚みが30μm以上であることを特徴としている。
請求項4に記載の非水系二次電池用負極は、不溶不融性基体の重量あたり40A/gの電流密度で放電させた時、不溶不融性基体の重量あたり30mAh/g以上の放電が可能であることを特徴としている。
上記請求項1から4の構成によれば高エネルギー密度かつ従来にない高い出力特性を兼ね備えた非水系二次電池用負極を得ることができる。
請求項5に記載の非水系二次電池は、正極、負極、セパレータおよびリチウム塩が非水溶媒に溶解されてなる非水系電解液を具備する非水系二次電池において、請求項1から4のいずれかに記載の負極を用いることを特徴としている。
上記請求項5によれば高エネルギー密度かつ高出力を兼ね備えた非水系二次電池を得ることができる。
本発明の非水系二次電池用負極は、水素原子/炭素原子比が0.60〜0.05であり、かつ、結晶面002面の面間隔が3.6Å以上である不溶不融性基体を主成分とし、該不溶不融性基体の平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ不溶不融性基体の重量あたり500mAh/g以上のリチウムを予め担持させてある。それゆえ、例えば、負極活物質重量あたり40A/g以上という非常に高い電流密度で放電可能な、高い出力特性及び高容量を有する非水系二次電池用負極を得ることができるという効果を奏する。また、この負極を用いることにより、高エネルギー密度かつ高出力を兼ね備えた非水系二次電池を得ることができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について、説明すれば以下の通りである。
本発明の非水系二次電池用負極は、水素原子/炭素原子比が0.60〜0.05であり、かつ、結晶面002面の面間隔が3.6Å以上である不溶不融性基体を主成分とし、不溶不融性基体の平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ不溶不融性基体の重量あたり500mAh/g以上のリチウムを予め担持させてあることを特徴とする。
本発明における不溶不融性基体は、例えば、次の様な芳香族系縮合ポリマーを熱処理することにより得られる。芳香族系縮合ポリマーは芳香族炭化水素化合物の縮合物であり、例えば、芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類の縮合物である。芳香族炭化水素化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等の如き、いわゆるフェノール類が好適である。例えば、メチレン・ビスフェノール類であることができ、或いはヒドロキシ・ビフェニル類、ヒドロキシナフタレン類であることもできる。これらの内、実用的にはフェノール類、特にフェノールが好適である。上記の芳香族系縮合ポリマーとしては、上記のフェノール性水酸基を有する芳香族炭化水素化合物の1部をフェノール性水酸基を有さない芳香族炭化水素化合物、例えば、キシレン、トルエン、アニリン等で置換した変性芳香族系縮合ポリマー、例えばフェノールとキシレンとホルムアルデヒドとの縮合物を用いることもでき、また、メラミン、尿素で置換した変性芳香族系縮合ポリマーを用いることもできる。また、フラン樹脂も好適である。また、上記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒドを使用することができるが、ホルムアルデヒドが好適である。フェノールホルムアルデヒド縮合物としては、ノボラック型又はレゾール型或はそれらの混合物のいずれであってもよい。また、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エボナイトなどの熱硬化性樹脂、椰子ガラ、木屑、竹等のセルロース系原料、ポリイミド等を熱処理することによっても得られる。本発明は不溶不融性基体の原料を限定するものではないが、本発明の不溶不融性基体は結晶面002面の面間隔が3.6Å以上と広いことを特徴とし、後述する熱処理時に液状化せずに、固相状態で不溶不融性基体に到る原料を選択すると、この構造が得られやすい。
また、本発明の不溶不融性基体は、例えば、上記に例示した原料を熱処理することにより得られ、特開昭59−3806号公報、特開昭60−170163号公報等に記載されているポリアセン系骨格構造を有する不溶不融性基体はその一例である。本発明の不溶不融性基体は、例えば、次のようにして製造することができる。上記に例示した原料を、非酸化性雰囲気下(真空も含む)中で、例えば、400℃〜800℃の適当な温度まで徐々に加熱することにより、水素原子/炭素原子の原子比(以下H/Cと記す)が0.60〜0.05の不溶不融性基体を得ることができる。H/Cは、好ましくは0.50〜0.05、より好ましくは0.35〜0.05、更に好ましくは0.35〜0.1であり、H/Cが上限を越える場合、芳香族系多環構造が充分に発達していないため、リチウムのドーピング、脱ドーピングがスムーズに行うことができず、電池を組んだ時、充放電効率が低下したり、本発明の目的である出力が充分に得られない。また、H/Cが下限以下の場合、不溶不融性基体の容量が低下することにより、これを用いた電池のエネルギー密度が低下したり、本発明の目的である出力が充分に得られない。
また、特開昭60−170163号公報等に記載されている方法で、600m2/g以上のBET法による比表面積を有する不溶不融性基体を得ることもできる。例えば、芳香族系縮合ポリマーの初期縮合物と無機塩、例えば塩化亜鉛を含む溶液を調製し、該溶液を加熱して型内で硬化する。かくして得られた硬化体を、非酸化性雰囲気下(真空も含む)で、350℃〜800℃の温度まで、好ましくは400℃〜750℃の適当な温度まで徐々に加熱した後、水あるいは希塩酸等によって充分に洗浄することにより、上記H/Cを有し、かつ、例えば600m2/g以上のBET法による比表面積を有する不溶不融性基体を得ることもできる。本発明における不溶不融性基体の比表面積は1000m2/g未満、好ましくは700m2/g未満であり、より好ましくは600m2/g未満であり、比表面積が1000m2/g以上の場合、不溶不融性基体を用いた負極密度が低下することにより、これを用いた電池のエネルギー密度が低下し好ましくない。
本発明に用いる不溶不融性基体は、X線回折(Cu−Kα)によれば、メイン・ピークの位置は2θで表して25°以下に存在し、また該メイン・ピークの他に41〜46°の間にブロードな他のピークが存在する。25°以下に存在するメイン・ピークは結晶面002面に由来する。本発明に用いる不溶不融性基体の結晶面002面の面間隔は3.6Å以上であり、好ましくは3.7Å以上である。面間隔が3.6Å未満の場合では面間隔が狭い為、本発明の特徴である出力特性が得にくくなる。上限については特に限定しないが、面間隔4.5Å以下とすることが望ましく、4.5Åを超える場合、芳香族系多環構造が未発達であり、リチウムをドープすることが難しくなる。また、本発明の不溶不融性基体はアモルファス構造を有しているおり、メイン・ピークの半価幅から求まる結晶面002面C軸方向の結晶子長さは、好ましくは15Å以下であり、下限については5Å以上であることが好ましい。本発明の不溶不融性基体は上述の様なアモルファス構造を有している為、リチウムを大量かつ安定にドーピングでき、高い出力特性を得ることができる。
かくして得られる上記不溶不融性基体は、リチウムイオンを従来高出力リチウムイオン電池用負極材料として検討されている黒鉛、炭素材料に比べ大量のリチウムをドープすることが可能であり、例えば、1000mAh/gを超えるリチウムをドープすることも可能であり、リチウムのドープ可能量幅の広い材料である。
高エネルギー密度かつ高出力/高率充電を有する非水系二次電池実現のためには、大量のLiイオンが負極と電解液の間を高速で移動することが望まれる。低出力/低率充電時の場合には負極電極内全体において均一に出力/充電が進むと考えられるが、高出力/高率充電には負極電極内および負極活物質粒子内のリチウムイオン濃度の瞬間的な不均一が予想される。超高出力非水系二次電池には、この瞬間的なリチウムイオン濃度の不均一を許容するようなリチウムのドープ可能量幅の広い負極活物質材料を選択する必要がある。また予めプリドープしておくリチウム濃度もこの不均一を許容するようでなければならず、リチウムのドープ可能量幅の広い負極活物質材料が制御しやすい。また負極活物質粒子界面における移動を促進するため、負極活物質粒子径が充分小さい必要がある。電極密度が高いことは電解液の電極内の保液量の低下から、負極活物質材料粒子界面から電解液へのリチウム移動には不利であるが、同じ出力特性であっても電極体積を低く抑えることが出力密度を高めることであり、電極密度が一定のレベル以上の条件下で高出力を得る必要がある。
本発明における不溶不融性基体の平均粒子径は2μm以下であり、好ましくは1μm以下である。下限については、小さければ小さいほど好ましいが、集電や電極成形を考慮した場合、実用的には0.05μm以上である。2μm以下の不溶不融性基体を得るには、例えば、所定の粒径となるまで、常法に従って、不溶不融性基体をボールミル、ジェットミル、ビーズミルなどの粉砕器で粉砕し、さらに必要ならば、分級する。平均粒子径が2μmを超える場合、本発明の目的である出力が充分に得られない。また、出力面から考えると不溶不融性基体の粒度分布における90%粒子径を10μm以下、好ましくは5μm以下にすることが望ましい。これら平均粒子径および粒度値は市販のレーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。本発明における不溶不融性基体の粉末形状は特に限定されるものではなく、球状、繊維状、不定形粒子等から適宜選択されるものである。
本発明の非水系二次電池用負極は上記不溶不融性基体を主成分とし、必要に応じ、導電材、バインダーを用いて成形する。バインダーの種類は、特に限定されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレンなどのフッ素系樹脂類、フッ素ゴム、SBR、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類などが例示される。バインダー量は、特に限定されず、不溶不融性基体の平均粒子径、形状等により適宜決定されるものであるが、例えば、不溶不融性基体の重量の1〜30%程度の割合とすることが好ましい。また、導電材の種類、量は、特に限定されるものではないが、不溶不融性基体の平均粒子径、形状、H/C等により適宜決定されるものであり、材料としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛が例示される。導電材量は、特に限定されず、例えば、不溶不融性基体の重量の1〜20%程度の割合とすることが好ましい。本発明の非水系二次電池に用いる負極は、上記不溶不融性基体を、必要に応じ、導電材、バインダーを用いて、塗布成形、プレス成形、ロール成形等一般的な電極成形法を用いて製造することが可能である。
本発明の非水系二次電池用負極の電極密度(電極合材層:集電体は含まない)は容量・出力を考慮し適宜決定されるものであるが、0.8g/cm3以上であることが好ましい。電極密度が0.8g/cm3未満の場合、この負極を用いた非水系二次電池においてエネルギー密度が低下することから好ましくない。また上限については特に限定されるものではないが、不溶不融性基体の真密度から考えると、1.8g/cm3以下である。
本発明の非水系二次電池用負極の電極厚さ(電極合材層厚み:集電体は含まない、集電体の両面に形成される場合はその片側の厚み)は容量・出力を考慮し適宜決定されるものであるが、30μm以上であることが好ましい。電極厚さが30μm未満の場合、この負極を用いた非水系二次電池において集電体およびセパレータの占める体積比率が相対増加することによりエネルギー密度が低下することから好ましくない。また上限については特に限定されるものではないが、出力を考慮した場合200μm以下である。
本発明の非水系二次電池用負極は、集電体上に形成する、あるいは、シート状に成形された電極を集電体に圧着あるいは導電層を介して接着することが可能である。この集電体の材質などは、特に限定されず、銅、鉄、ステンレス等が使用できる。集電体の形状は、金属箔あるいは金属の隙間に電極が形成可能である構造体を用いることができ、例えば、エキスパンドメタル、網材、パンチングメタルなどを集電体として用いることもできる。
本発明において、負極活物質である上記不溶不融性基体へ500mAh/g以上のリチウムを予め担持(プリドープ)させる。このプリドープ量については、負極活物質である上記不溶不融性基体へのリチウム担持量をCn(mAh)とし、初期充電時に正極から放出されてドーピング可能なリチウム量をCp(mAh)とし、負極の不溶不融性基体の重量をW(g)とする時、(Cn+Cp)/Wをプリドーピング量とする。プリドーピング量は負極の不溶不融性基体の重量あたり500mAh/g以上であり、好ましくは550mAh/g以上である。上限については、特に限定しないが、リチウム金属の析出を考慮して1300mAh/g以下とするのが好ましい。正極から放出されてドーピング可能なリチウムとは、電池組立時に正極中に含まれるリチウムであって、充電操作中に放出されて負極に取りこまれるリチウム量を意味する。例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4などのリチウム含有複合酸化物などが、正極中に含まれるリチウムを含有する正極材料の代表例である。
本発明の非水系二次電池用負極にリチウムを予め担持させる方法は、本発明では特に限定されるものではないが、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明の負極材料を電極に成形した後、電気化学的に行うことができる。本発明ではその方法について特に限定しないが、例えば、電池組立前に、対極としてリチウム金属を用いる電気化学システムを組み立て、後述の非水系電解液中においてプリドープする方法、電解液を含浸した負極にリチウム金属を貼り合わせる方法が挙げられる。また、電池組立後に、リチウムのプリドープを行うには、リチウム金属などのリチウム源と負極とを貼り合わせなどの方法により、電気的に接触させておき、電池内に電解液を注液することにより、リチウムをプリドープすることが可能である。
かくして得られる本発明における非水系二次電池用負極は、不溶不融性基体の重量あたり40A/gの電流密度で放電させた時、不溶不融性基体の重量あたり30mAh/g以上の放電が可能である。40A/gの電流密度で放電させた場合の負極の作動する電位範囲は、2.0V vs.Li/Li+以下であることが好ましく、より好ましくは1.0V vs.Li/Li+以下であり、この電位範囲で30mAh/gを得られることが好ましい。また負極の開放電位範囲は好ましくは1.0V vs.Li/Li+以下であり、より好ましくは0.5V vs.Li/Li+以下であることが好ましい。負極の作動する電位範囲の下限および開放電位範囲の下限については、当然のことながら0V vs.Li/Li+以上である。
負極の出力特性を評価するための対極として、便宜上、活性炭電極を使用することができる。以下に示す実施例においても活性炭電極を対極として本発明の非水系二次電池用負極を評価しているが、本発明の負極を用いた非水系二次電池の正極は、これに何ら限定されるものではない。
本発明の非水系二次電池用負極は正極、セパレータおよびリチウム塩が非水溶媒に溶解されてなる非水系電解液と組合わせ、本発明の非水系二次電池用負極を用いた非水系二次電池を構成することができる。
本発明における正極としては、リチウムをドープ・脱ドープ可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物、金属硫化物、リチウム複合金属酸化物、導電性高分子等があり、リチウム複合金属酸化物としてはリチウム複合コバルト酸化物、リチウム複合ニッケル酸化物、リチウム複合マンガン酸化物、リチウム複合燐酸鉄、或いはこれらの混合物、更にはこれら複合酸化物に異種金属元素を一種以上添加した系等を用いることができる。本発明の目的である高エネルギー密度かつ高出力を有する非水系二次電池を得る為には、例えば粒径の細かい酸化物を用いることが好ましい。
本発明の非水系二次電池は、リチウム塩が非水溶媒に溶解されてなる非水系電解液を用いる。本発明において用いる非水系電解液としては、リチウム塩を含む非水系電解液を用いることが可能であり、正極材料の種類、負極材料の性状、充電電圧などの使用条件などに対応して、適宜決定される。リチウム塩を含む非水系電解液としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4などのリチウム塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチルなどの1種または2種以上からなる有機溶媒に溶解したものを用いることができる。また、電解液の濃度は、特に限定されるものではないが、一般的に0.5〜2mol/l程度が実用的である。電解液は、当然のことながら、水分が100ppm以下のものを用いることが好ましい。
本発明における非水系二次電池のセパレータは特に限定されるものではなく、ポリエチレン微多孔膜、ポリプロピレン微多孔膜、あるいはポリエチレンとポリプロピレンの積層膜、セルロース、ガラス繊維、ポリアラミド繊維、ポリアクリルニトリル繊維などからなる織布、あるいは不織布などがあり、その目的と状況に応じ、適宜決定することが可能である。
本発明の非水系二次電池の形状は特に限定されるものではなく、コイン型、円筒型、角型、フィルム型等、その目的に応じ、適宜決定することが可能である。
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをさらに明確化するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
(1)フェノール樹脂硬化体を320gをステンレス製皿に入れ、この皿を角型炉(400×400×400mm)内に配置して、熱反応に供した。熱反応は、窒素雰囲気下で行い、窒素流量は5リットル/分とした。熱反応は、1℃/分の速度で、炉内温が室温から630℃となるまで昇温し、同温度で4時間保持した後、自然冷却により、60℃まで冷却し、皿を炉から取り出し、本発明の不溶不融性基体を得た。収量は192gであった。
(2)得られた不溶不融性基体を遊星型ボールミルを用いて平均粒度0.8μmまで粉砕した。得られた不溶不融性基体材料について、元素分析(測定使用機:パーキンエルマー社製元素分析装置「PE2400 シリーズII、CHNS/O)、およびBET法による比表面積(測定使用機:ユアサアイオニクス社製「NOVA1200」)の測定を行った。また、XRD(X線回折)法(測定使用機:マックサイエンス社製全自動X線回折装置「MXP3」、発生X線はCu−Kα線である)による結晶構造の解析を行った。元素分析は水素原子/炭素原子の原子比が0.27であり、比表面積が570m2/gであり、結晶面002面の面間隔が3.97Åであり、結晶面002面C軸方向の結晶子長さが10.2Åである不溶不融性基体(以下PAS)であった。X線回折パターンを図1の材料Aに示す。
(3)次いで、上記のPAS80重量部および導電材アセチレンブラック10重量部およびPVdF(ポリフッ化ビニリデン)10重量部をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)230重量部と混合し、負極合材スラリーを得た。このスラリーを厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥した後、プレス加工して電極を得た。電極密度および電極厚さについては表1に示す。
(4)上記で得られた電極を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライルーム中で作製した。リチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまでPAS重量あたり60mA/gの電流で行い、さらにリチウム電位に対して1mVの定電圧を印加して、PAS重量あたり600mAh/gドーピングを行い、リチウムを予め担持させた負極を得た。なお、この負極は上記操作においてリチウム電位に対して1mVの定電圧を12時間印加した後、60mA/gの電流で2.5Vまで放電した時の容量は540mAh/gと高い容量を有している。
(5)正極については、市販活性炭93重量部および導電材ケッチェンブラック7重量部およびPVdF17重量部をNMP355重量部と混合し、正極合材スラリーを得た。黒鉛系導電性塗料を予め塗布した厚さ30μmのアルミ箔に、正極合材スラリーを片面に塗布し、乾燥した後、プレス加工して電極を得た。本実施例では出力特性に優れた負極の評価をする目的で正極に活性炭を用いているが、本発明の請求項5の非水系二次電池について、正極が活性炭に限定されるものではない。
(6)上記で得られた負極と、上記で得られた厚さ84μmかつ密度0.60g/cm3の活性炭電極を正極として組み合わせ、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、負極評価用の電気化学セルをドライルーム中で作製した。
(7)セルをPAS重量あたり4.8A/gの電流で4.0Vまで充電した後、95mA/gの電流で2.0Vまで放電した。この時の容量はPAS重量に対し、84.9mAh/gであった。続いて、上記と同様の充電後、電流密度を変えながら出力特性を確認した。4.8A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、70.8mAh/gであった。9.5A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、63.6mAh/gであった。28.6A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、47.1mAh/gであった。47.7A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、33.1mAh/gであった。
(8)セルの交流抵抗について、0.1Hzで測定したところ、単位面積当たり9.5Ω・cm2であった。上記実施例1について、負極材料に用いた材料と粒径、予め担持させたリチウム量、電極物性、出力特性、交流抵抗について表1にまとめる。
(1)実施例1と同一の方法で得た電極を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライルーム中で作製した。リチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまでPAS重量あたり80mA/gの電流で行い、さらにリチウム電位に対して1mVの定電圧を印加して、PAS重量あたり800mAh/gドーピングを行い、リチウムを予め担持させた負極を得た。
(2)上記で得られた負極と、実施例1と同一の方法で得られた厚さ86μmかつ密度0.61g/cm3の活性炭電極を正極に、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、負極評価用の電気化学セルをドライルーム中で作製した。
(3)PAS重量あたり4.8A/gの電流で4.0Vまで充電した後、95mA/gの電流で2.0Vまで放電した。この時の容量はPAS重量に対し、90.7mAh/gであった。続いて、上記と同様の充電後、電流密度を変えながら出力特性を確認した。4.8A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、76.2mAh/gであった。9.5A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、68.8mAh/gであった。28.6A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、53.0mAh/gであった。47.7A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、39.5mAh/gであった。
(4)セルの交流抵抗について、0.1Hzで測定したところ、単位面積当たり8.5Ω・cm2であった。上記実施例2について、負極材料に用いた材料と粒径、予め担持させたリチウム量、電極物性、出力特性、交流抵抗について表1にまとめる。
(1)実施例1と同一の方法で得た電極を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライルーム中で作製した。リチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまでPAS重量あたり100mA/gの電流で行い、さらにリチウム電位に対して1mVの定電圧を印加して、PAS重量あたり1000mAh/gドーピングを行い、リチウムを予め担持させた負極を得た。
(2)上記で得られた負極と、実施例1と同一の方法で得られた厚さ86μmかつ密度0.59g/cm3の活性炭電極を正極として組み合わせ、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、負極評価用の電気化学セルをドライルーム中で作製した。
(3)PAS重量あたり4.5A/gの電流で4.0Vまで充電した後、90mA/gの電流で2.0Vまで放電した。この時の容量はPAS重量に対し、85.7mAh/gであった。続いて、上記と同様の充電後、電流密度を変えながら出力特性を確認した。4.5A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、70.8mAh/gであった。9.0A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、63.4mAh/gであった。26.9A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、48.3mAh/gであった。44.8A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、36.1mAh/gであった。
(4)セルの交流抵抗について、0.1Hzで測定したところ、単位面積当たり8.5Ω・cm2であった。上記実施例3について、負極材料に用いた材料と粒径、予め担持させたリチウム量、電極物性、出力特性、交流抵抗について表1にまとめる。
(比較例1)
(1)実施例1と同一の方法で得た電極を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライルーム中で作製した。リチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまでPAS重量あたり40mA/gの電流で行い、さらにリチウム電位に対して1mVの定電圧を印加して、PAS重量あたり400mAh/gドーピングを行い、リチウムを予め担持させた負極を得た。
(2)上記で得られた負極と、実施例1と同一の方法で得られた厚さ85μmかつ密度0.58g/cm3の活性炭電極を正極として組み合わせ、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、負極評価用の電気化学セルをドライルーム中で作製した。
(3)PAS重量あたり4.1A/gの電流で4.0Vまで充電した後、81mA/gの電流で2.0Vまで放電した。この時の容量はPAS重量に対し、69.1mAh/gであった。続いて、上記と同様の充電後、電流密度を変えながら出力特性を確認した。4.1A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、46.9mAh/gであった。8.1A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、39.6mAh/gであった。24.4A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、21.7mAh/gであった。40.6A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、9.9mAh/gであった。
(4)セルの交流抵抗について、0.1Hzで測定したところ、単位面積当たり14.6Ω・cm2であった。上記比較例1について、負極材料に用いた材料と粒径、予め担持させたリチウム量、電極物性、出力特性、交流抵抗について表1にまとめる。
(比較例2)
(1)実施例1と同様の方法で得られた不溶不融性基体を遊星型ボールミルを用いて平均粒度4.3μmまで粉砕した。得られた不溶不融性基体について、元素分析(測定使用機:パーキンエルマー社製元素分析装置「PE2400 シリーズII、CHNS/O)、およびBET法による比表面積(測定使用機:ユアサアイオニクス社製「NOVA1200」)の測定を行った。また、XRD(X線回折)法(測定使用機:マックサイエンス社製全自動X線回折装置「MXP3」、発生X線はCu−Kα線である)による結晶構造の解析を行った。元素分析は水素原子/炭素原子の原子比が0.27であり、比表面積が321m2/gの不溶不融性基体(PAS)であり、結晶面002面の面間隔が3.77Åであり、結晶面002面C軸方向の結晶子長さが12.7Åである不溶不融性基体(以下PAS)であった。X線回折パターンを図1の材料Bに示す。
(2)次いで、上記のPAS80重量部および導電材アセチレンブラック10重量部およびPVdF10重量部をNMP230重量部と混合し、負極合材スラリーを得た。このスラリーを厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥した後、プレス加工して電極を得た。電極密度および電極厚さについては表1に示す。
(3)上記で得られた電極を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライルーム中で作製した。リチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまでPAS重量あたり60mA/gの電流で行い、さらにリチウム電位に対して1mVの定電圧を印加して、PAS重量あたり600mAh/gドーピングを行い、リチウムを予め担持させた負極を得た。なお、この負極は上記操作においてリチウム電位に対して1mVの定電圧を12時間印加した後、60mA/gの電流で2.5Vまで放電した時の容量は490mAh/gと高い容量を有している。
(4)上記で得られた負極と、実施例1と同一の方法で得られた厚さ82μmかつ密度0.59g/cm3の活性炭電極を正極として組み合わせ、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、負極評価用の電気化学セルをドライルーム中で作製した。
(5)PAS重量あたり4.0A/gの電流で4.0Vまで充電した後、79mA/gの電流で2.0Vまで放電した。この時の容量はPAS重量に対し、71.9mAh/gであった。続いて、上記と同様の充電後、電流密度を変えながら出力特性を確認した。4.0A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、54.9mAh/gであった。7.9A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、47.2mAh/gであった。23.7A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、30.4mAh/gであった。39.5A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、14.8mAh/gであった。
(6)セルの交流抵抗について、0.1Hzで測定したところ、単位面積当たり15.3Ω・cm2であった。上記比較例2について、負極材料に用いた材料と粒径、予め担持させたリチウム量、電極物性、出力特性、交流抵抗について表1にまとめる。
(比較例3)
(1)比較例2と同一の方法で得られた電極を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライルーム中で作製した。リチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまでPAS重量あたり80mA/gの電流で行い、さらにリチウム電位に対して1mVの定電圧を印加して、PAS重量あたり800mAh/gドーピングを行い、リチウムを予め担持させた負極を得た。
(2)上記で得られた負極と、実施例1と同一の方法で得られた厚さ83μmかつ密度0.59g/cm3の活性炭電極を正極として組み合わせ、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、負極評価用の電気化学セルをドライルーム中で作製した。
(3)PAS重量あたり4.4A/gの電流で4.0Vまで充電した後、89mA/gの電流で2.0Vまで放電した。この時の容量はPAS重量に対し、87.8mAh/gであった。続いて、上記と同様の充電後、電流密度を変えながら出力特性を確認した。4.4A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、67.2mAh/gであった。8.9A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、56.8mAh/gであった。26.6A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、36.2mAh/gであった。44.3A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、17.7mAh/gであった。
(4)セルの交流抵抗について、0.1Hzで測定したところ、単位面積当たり15.0Ω・cm2であった。上記比較例3について、負極材料に用いた材料と粒径、予め担持させたリチウム量、電極物性、出力特性、交流抵抗について表1にまとめる。
(比較例4)
(1)比較例2と同一の方法で得られた電極を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライルーム中で作製した。リチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまでPAS重量あたり100mA/gの電流で行い、さらにリチウム電位に対して1mVの定電圧を印加して、PAS重量あたり1000mAh/gドーピングを行い、リチウムを予め担持させた負極を得た。
(2)上記で得られた負極と、実施例1と同一の方法で得られた厚さ86μmかつ密度0.60g/cm3の活性炭電極を正極として組み合わせ、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、負極評価用の電気化学セルをドライルーム中で作製した。
(3)PAS重量あたり3.9A/gの電流で4.0Vまで充電した後、78mA/gの電流で2.0Vまで放電した。この時の容量はPAS重量に対し、80.2mAh/gであった。続いて、上記と同様の充電後、電流密度を変えながら出力特性を確認した。3.9A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、64.2mAh/gであった。7.8A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、55.6mAh/gであった。23.5A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、38.7mAh/gであった。39.2A/gの電流で放電した場合、容量はPAS重量に対し、22.9mAh/gであった。
(4)セルの交流抵抗について、0.1Hzで測定したところ、単位面積当たり12.9Ω・cm2であった。上記比較例4について、負極材料に用いた材料と粒径、予め担持させたリチウム量、電極物性、出力特性、交流抵抗について表1にまとめる。
(比較例5)
(1)軟化点270℃の等方性ピッチを600gをステンレス製皿に入れ、この皿を角型炉(400×400×400mm)内に配置して、熱反応に供した。熱反応は、窒素雰囲気下で行い、窒素流量は10リットル/分とした。熱反応は、2℃/分の速度で、炉内温が室温から400℃となるまで昇温し、次いで1℃/分の速度で、炉内温が室温から665℃となるまで昇温し、同温度で12時間保持した後、自然冷却により、60℃まで冷却し、皿を炉から取り出した。得られた生成物は、原料の形状を留めておらず、不定形な不溶不融性基体であった。収量は485gであった。
(2)上記で得られた不溶不融性基体を遊星型ボールミルを用いて平均粒度0.9μmまで粉砕し、負極活物質材料を得た。得られた負極材料について、元素分析(測定使用機:パーキンエルマー社製元素分析装置「PE2400 シリーズII、CHNS/O)、およびBET法による比表面積(測定使用機:ユアサアイオニクス社製「NOVA1200」)の測定を行った。また、XRD(X線回折)法(測定使用機:マックサイエンス社製全自動X線回折装置「MXP3」、発生X線はCu−Kα線である)による結晶構造の解析を行った。元素分析は水素原子/炭素原子の原子比が0.19であり、比表面積が98m2/gの不溶不融性基体(以下PAHs)であり、結晶面002面の面間隔が3.44Åであり、結晶面002面C軸方向の結晶子長さが18.2Åであった。X線回折パターンを図1の材料Cに示す。
(3)次いで、上記のPAHs80重量部および導電材アセチレンブラック10重量部およびPVdF10重量部をNMP205重量部と混合し、負極合材スラリーを得た。このスラリーを厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥した後、プレス加工して電極を得た。電極密度および電極厚さについては表1に示す。
(4)上記で得られた電極を作用極とし、リチウム金属を対極に用い、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、電気化学セルをドライルーム中で作製した。リチウムのドーピングは、リチウム電位に対して1mVになるまでPAHs重量あたり60mA/gの電流で行い、さらにリチウム電位に対して1mVの定電圧を印加して、PAHs重量あたり600mAh/gドーピングを行い、リチウムを予め担持させた負極を得た。なお、この負極は上記操作においてリチウム電位に対して1mVの定電圧を12時間印加した後、60mA/gの電流で2.5Vまで放電した時の容量は753mAh/gと高い容量を有している。
(5)上記で得られた負極と、実施例1と同一の方法で得られた厚さ87μmかつ密度0.60g/cm3の活性炭電極を正極として組み合わせ、電解液としてエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した溶媒に1mol/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いて、負極評価用の電気化学セルをドライルーム中で作製した。
(6)PAHs重量あたり3.23A/gの電流で4.0Vまで充電した後、65mA/gの電流で2.0Vまで放電した。この時の容量はPAS重量に対し、61.1mAh/gであった。続いて、上記と同様の充電後、電流密度を変えながら出力特性を確認した。3.2A/gの電流で放電した場合、容量はPAHs重量に対し、42.2mAh/gであった。6.5A/gの電流で放電した場合、容量はPAHs重量に対し、35.1mAh/gであった。19.4A/gの電流で放電した場合、容量はPAHs重量に対し、21.2mAh/gであった。32.3A/gの電流で放電した場合、容量はPAHs重量に対し、8.4mAh/gであった。
(7)セルの交流抵抗について、0.1Hzで測定したところ、単位面積当たり17.8Ω・cm2であった。上記比較例5について、負極材料に用いた材料と粒径、予め担持させたリチウム量、電極物性、出力特性、交流抵抗について表1にまとめる。
実施例1〜3および比較例1〜5に係る不溶不融性基体に係る不溶不融性基体の重量あたりの放電電流(電流密度)と、不溶不融性基体の重量あたりの放電容量について図2に示す。本発明の不溶不融性基体の平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ不溶不融性基体の重量あたり500mAh/g以上のリチウムを予め担持させてある場合、図2の中にて斜線部に示すような不溶不融性基体の重量あたり40A/g以上の放電電流(電流密度)にて、不溶不融性基体の重量あたり30mAh/g以上の容量が得られ、本発明の不溶不融性基体は40A/g以上と非常に高い電流密度においても放電可能であることが明らかである。
本発明の非水系二次電池用負極の用途としては、例えば、ハイブリッド電気自動車、燃料電池電気自動車等の出力蓄電デバイスの用途等が挙げられる。特に、本非水系二次電池用負極は高エネルギー密度と従来にない高出力の両立を可能とすることができ、出力蓄電デバイスの小型、軽量化に貢献するものである。
本発明の実施例および比較例に用いた各不溶不融性基体のX線回折パターンである。図中材料Aは実施例1〜3および比較例1で用い、図中材料Bは比較例2〜4で用い、図中材料Cは比較例5に用いた。
実施例1〜3および比較例1〜5に係る不溶不融性基体の重量あたりの放電電流(電流密度)と、不溶不融性基体の重量あたりの放電容量について説明した図である。