JP2007277628A - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】1000℃以上の高温環境下における酸化性雰囲気の条件下での使用においても優れた耐酸化特性を示すオーステナイト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】C:0.04〜0.15%、Si:1.5〜3.0%、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:15〜30%、Ni:8〜15%、Al:0.05〜0.20%、B:0.001〜0.010%、N:0.15〜0.30%、Ca及び/又はREM:0.01〜0.10%、残部Fe及び不純物からなり、(1)式により規定されるNi(bal)が-1.0〜+2.0であり、Al及びNが(2)式を満足するオーステナイト系ステンレス鋼である。
Ni(bal)=30×(C+N)+Ni+0.5×Mn−1.1×(Cr+1.5×Si)+8.2 ・・・・・(1)
log(Al×N)≧-1.845 ・・・・・(2)

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼に関し、例えば、1000℃以上の高温環境下における酸化性雰囲気の条件下での使用においても優れた耐酸化特性を示すオーステナイト系ステンレス鋼に関する。
特に近年に至り、地球環境保全の観点から各種排出ガス中のNOx、SOxさらにはCO等の有害ガスの濃度を低減することが強く要望されている。一方、従来より、化石エネルギー資源の有効活用の面から効率的なエネルギー利用の必要性が強調されている。これら両者の要望を満足させるために、火力発電、化学工業あるいは鉄鋼製造などの各産業分野では、1000℃を超えるようなより高温での操業を行う必要性が高まっており、そのための高温装置用材料には、より優れた耐酸化性が要求されている。
従来、このような高温用途には、オーステナイト系ステンレス鋼が多用されている。例えば、SUS304に代表される18Cr−8Ni系、SUS310Sを代表とする25Cr−20Ni系、Alloy800として知られる20Cr−32Ni鋼等の高Cr−高Ni鋼がある。また、高Si化により高温特性の向上を図ったステンレス鋼としてAlSI302B、JISXM15J1、AISI314鋼等が知られている。
一般に、18Cr−8Ni系は溶接性及び経済性に優れるものの、耐酸化性や、高温強度等の高温特性に劣る。高Cr−高Ni鋼は高温強度を確保できるが、1000℃を超える環境下での耐酸化性が不芳である。さらに、コスト面からも、Ni含有量が高いことは問題である。
これまでにも、高温装置用材料の高温特性を改善するために、例えば、特許文献1〜22の各公報により開示された発明が知られている。特許文献1〜22により開示された発明では、Si含有量を増加することにより高温特性を改善できるとするものが多く、その他、Mo、Cu、N、TiさらにはNb等の合金元素の添加により改善できるとするものもある。
さらに、特許文献23には、800℃以上の高温環境下での耐酸化性を改善する発明が開示されている。
特開昭53−90167号公報 特公昭53−43370号公報 特公昭54−12890号公報 特公昭54−33207号公報 特公昭56−17424号公報 特公昭56−25507号公報 特公昭57−16187号公報 特公昭57−42701号公報 特公昭57−54543号公報 特公昭57−59299号公報 特公昭58−2268号公報 特公昭58−42264号公報 特開昭59−185763号公報 特開昭60−92454号公報 特開昭63−69949号公報 特開昭63−213643号公報 特開昭63−69950号公報 特開昭63−69951号公報 特開昭63−157840号公報 特開昭63−213643号公報 特公平1−8695号公報 特開平1−159351号公報 特開平8−319541号公報
特許文献1〜22に開示されるように、確かに、高Si化を図ることにより耐酸化性を大幅に向上させることが可能であるが、1000℃を超える環境下での使用では、耐酸化性は十分ではない。また、特許文献23により開示された発明によっても、1000℃を超える酸化性雰囲気下における環境では耐酸化性に問題があり、実用化には至ってない。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特許文献23により開示された発明において、Niバランス及び(Al×N)積の関係を規定することにより、1000℃以上の高温環境下における酸化性雰囲気の条件下での使用においても優れた耐酸化特性を得られることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
本発明は、C:0.04〜0.15%(本明細書では特にことわりがない限り組成に関する「%」は「質量%」を意味する)、Si:1.5〜3.0%、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:15〜30%、Ni:8〜15%、Al:0.05〜0.20%、B:0.001〜0.010%、N:0.15〜0.3%、Ca及び/又はREM:0.01〜0.10%、残部Fe及び不純物からなり、(1)式により規定されるNi(bal)が−1.0〜+2.0であるとともに、Al及びNが(2)式を満足することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼である。なお、(1)及び(2)式における元素記号はそれぞれその元素の含有量(質量%)を示す。
Ni(bal)=30×(C+N)+Ni+0.5×Mn−1.1×(Cr+1.5×Si)+8.2 ・・・・・(1)
log(Al×N)≧-1.845 ・・・・・(2)
この本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、さらに、Cu:2.0%以下、及び/又は、Mo:1.0%以下を含有することが望ましい。
本発明により、1000℃以上の高温環境下における酸化性雰囲気の条件下での使用においても優れた耐酸化特性を示すオーステナイト系ステンレス鋼を提供できる。
以下、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼を実施するための最良の形態を、説明する。
はじめに、本実施の形態のオーステナイト系ステンレス鋼の組成、Niバランス値、Al及びNの関係、及び初期結晶粒径について説明する。
C:0.04%以上0.15%以下
Cは、オーステナイト形成元素であり、オーステナイト組織の安定化を促進するとともに母相の高温強度及びクリープ破断強度を高めるのに有効な元素である。Cの低減は、鋼板強度低下を招くため、特に1000℃超える高温環境下での強度を確保するためにC含有量の下限は0.04%とする。一方、C含有量が0.15%を超えると、熱間加工性を阻害する。そこで、本発明では、C含有量は0.04%以上0.15%以下と限定する。好ましい範囲は、0.06%以上0.12%以下である。
Si:1.5%以上3.0%以下
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として添加されるが、フェライト形成元素でありオーステナイト相中へのδ−フェライトの析出に有効な元素である。また、生成される酸化皮膜と合金との界面にSi系内部酸化物を形成し、酸化皮膜の密着性を高め耐食性を向上させることから、Si含有量は高いほうが望ましい。特に1000℃超える高温環境下でのδ―フェライト析出による結晶粒成長抑制と耐酸化性とを高めるためにSi含有量の下限を1.5%とする。しかし、Si含有量が3.0%を超えると、溶接性及び熱間加工性が低下する。そこで、本発明では、Si含有量は1.5%以上3.0%以下と限定する。好ましい範囲は、1.8%以上2.5%以下である。
Mn:2.0%以下
Mnは、オーステナイト形成元素であり、オーステナイト組織の安定化とともにNiの代替としても含有される。しかし、Mn含有量が2.0%を超えると、加熱初期の酸化皮膜に含まれるMn量が増加し、耐水蒸気酸化性を劣化させる。そこで、Mn含有量は2.0%以下と限定する。好ましい範囲は、1.2%以下である。
P:0.04%以下
Pは、鋼中において偏析して溶接性及び熱間加工性を阻害する元素のひとつであるので、P含有量は0.04%以下と限定する。好ましくは0.02%以下である。
S:0.03%以下
Sは、Pと同様に、鋼中に偏析して溶接性及び熱間加工性を阻害する。そのため、S含有量の上限を0.03%とする。好ましくは0.01%以下である。
Cr:15%以上30%以下
Crは、フェライト形成元素でオーステナイト相中へのδ−フェライトの析出に有効な元素であるとともに耐酸化性、耐高温磨耗性及びクリープ強度の向上に有効な元素である。Cr含有量が15%未満ではこのような効果を得られず、一方30%を超えると熱間加工性を劣化させる。そこで、本発明では、Cr含有量は15%以上30%以下と限定する。特に1000℃を超える高温環境下でのδ―フェライト析出による結晶粒の成長抑制と耐酸化性の向上とを図るためには、Cr含有量は24%以上26%以下であることが望ましい。
Ni:8%以上15%以下
Niは、オーステナイト形成元素であり、オーステナイト組織の安定化とともに耐酸化性及びクリープ強度の向上に重要な元素である。Ni含有量が8%未満ではこのような効果が得られず、他方Ni含有量が15%を越えると溶接性を阻害するとともに、高温での使用中に粗大なCrNの析出を促進し、クリープ破断強度が低下する。そこで、Ni含有量は8%以上15%以下と限定する。好ましくは11%以上15%以下である。
Al:0.05%以上0.20%以下
Alは、Cr、Siと同様に合金の耐酸化性を改善する元素でもあり、またSi同様に鋼の溶製時に脱酸剤としても含有される。Alは、また鋼中のNと結合して生成したAlNの微粒子として鋼中に微細分散することから結晶粒の細粒化と、特に1000℃超える高温環境下で起こる結晶粒の粗大化に対して結晶粒の成長抑制の釘付けに有効な元素である。同様な元素としてTi、Nbがあるが鋼中のC、Nとの化合物Ti(C,N)、Nb(C,N)は900℃以下の環境では有効であるが、これを超える温度ではこれら化合物の分解から異常酸化の原因ともなり有効な元素とはいえない。
0.30%以下のNの共存においてAl含有量が0.05%未満ではAlNの生成量から結晶粒の成長抑制の釘付けに不十分であり、一方0.20%を超える含有は、表面欠陥の増加を招く。そこで、本発明では、Al含有量は0.05%以上0.20%以下と限定する。好ましくは0.05%以上0.10%以下である。
B:0.001%以上0.010%以下
Bは、0.001%以上含有することにより、クリープ強度およびフェライトとオーステナイト相が共存した状態で熱間加工を行う場合にBが結晶粒界に優先析出することから異相間の結合力を高めて熱間加工性の向上に有効な元素である。しかし、B含有量が0.010%を超えると、かえって金属間化合物を形成することにより熱間加工性を阻害する。そこで、B含有量は0.001%以上0.010%以下と限定する。好ましい範囲は、0.001%以上0.007%以下である。
N:0.15%以上0.3%以下
Nは、オーステナイト形成元素であり、オーステナイト組織の安定化とともにクリープ強度の向上に有効な元素である。また、Alの含有によりAlNとして合金母相中に微細分散し、特に1000℃超える高温環境下で起こる結晶粒の粗大化に対して結晶粒の成長抑制の釘付け作用を奏する。1.5%以上のSiおよび0.15%以下のCの共存において0.15%未満ではクリープ強度の向上に寄与せず、また、AlNの微細分散析出に対して不十分であり、一方0.3%超える含有は顕著なクリープ強度の向上が見られないばかりか、δ―フェライト析出による結晶粒の成長抑制効果も期待できなくなり、さらに熱間加工性を阻害する。そこで、N含有量は0.15%以上0.3%以下と限定する。
Caおよび/またはREM:0.01%以上0.10%以下
Cr、SiOおよびAlは、緻密であるが脆く密着性に乏しい。Caおよび、Y、La、Ce等の希土類元素(REM)の含有は、これらの酸化物の機械的性質(塑性変形能など)の向上、耐クラック性の改善と密着性の向上に有効であり、これらの元素を1種もしくは2種以上を含有する。これら元素の含有は、合計で0.01%未満ではその効果を発揮し得ず、一方0.10%を超える含有は熱間加工性及び溶接性を阻害する。そこで、Caおよび/またはREMは、合計で0.01%以上0.10%以下含有する。
Cu:2.0%以下、及び/又は、Mo:1.0%以下
本発明では、Cu及びMoはいずれも任意添加元素であり、必要に応じて含有される。
Cuはオーステナイト形成元素であり、オーステナイト組織の安定化とともにクリープ強度の向上に有効な元素であり、また本発明ではNiの一部を置換する形で必要に応じて含有される。含有量が2.0%を超えると熱間加工性及び溶接性を著しく阻害する。そこで、Cuを含有する場合には、その含有量は2.0%以下と限定することが望ましい。一方、Cu含有量が0.05%以上であると上述した効果を確実に得られるので、さらに望ましくは0.05%以上2.0%以下であり、よりいっそう望ましくは0.10%以上1.80%以下である。
一方、Moはフェライト形成元素でオーステナイト相中へのδ−フェライトの析出に有効な元素である。また、Moは、耐食性の向上に有効であるとともに高温保持中に炭窒化物となって微細に分散し高温強度を上昇させるため必要に応じて含有される。含有量が1.0%を超えると、1000℃以上の高温では低融点の揮発性の高い酸化物MoOが生成する危験があり、また800〜900℃の温度域では硬くて脆いσ相の析出感受性を高める。そこで、Moを含有する場合には、その含有量は1.0%以下と限定することが望ましい。一方、Mo含有量が0.01%以上であれば上述した効果を確実に得られるので、さらに望ましくは0.01%以上1.0%以下である。
これら以外の残部は、Fe及び不純物である。
(1)式により規定されるNi(bal):−1.0〜+2.0
Ni(bal)=30×(C+N)+Ni+0.5×Mn−1.1×(Cr+1.5×Si)+8.2 ・・・・・(1)
(1)式における元素記号はそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
(1)式により規定されるNiバランス値は、冶金学的には凝固組織におけるオーステナイト相の安定度を示すが、Niバランス値が小さくなるとδーフェライト相がオーステナイト相中に生成することを意味する。オーステナイト相に微細析出したδ―フェライト相は、結晶粒の微細化と、1000℃を超える温度域でのオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する釘付けとして作用し、Crが結晶粒界を通って外方へ拡散することを促進することにより早期にCrが生成されて耐酸化性を向上させる効果がある。また、適度の析出はP、Sをδ−フェライトに吸収させることから溶接性、熱間加工性の向上にも有効となる。しかし、過度の析出は高温強度及びクリープ強度を低下させる。他方、Niバランス値が大きくなるとオーステナイト単相組織となりP、Sがオーステナイト結晶粒界に偏析することから溶接性、熱間加工性を悪化させる。そこで、本発明では、高温特性、溶接性及び熱間加工性の面から考慮して、Niバランス値の範囲を−1.0以上+2.0以下とする。
Al及びNが(2)式を満足すること
log(Al×N)≧-1.845 ・・・・・(2)
(2)式における元素記号はそれぞれその元素の含有量(質量%)を示す。
(2)式の左辺はAlNの溶解度積を表し、この値が大きいと高温でAlNが安定であることを示す。すなわち、AlN析出物の釘付け効果によりオーステナイト結晶粒の成長を抑制する効果が大きくなる。この値が−1.845以上であれば、1000℃を超える高温においてもAlNが安定で存在し、δフェライト相と同様に、1000℃を超える温度域でのオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する釘付けとして作用し、結晶粒界を通って外方へのCrの拡散を促進し、早期にCrが生成され耐酸化性を向上させる効果がある。好ましくは−0.173以上である。
初期結晶粒経:40μm以上200μm以下
高温強度及びクリープ強度の面からは、ある程度結晶粒経が大きいほうがよい。一方、耐高温腐食性及び耐高温酸化性には細粒組織であるほうが有利となる。高温強度とクリープ強度を配慮し、耐高温腐食性と耐高温酸化性の確保を両立させる観点から、熱間圧延後の固溶化熱処理を合金内部の平均結晶粒経が40μm以上200μm以下となるように調整した鋼板とすることが望ましい。
本実施の形態のオーステナイト系ステンレス鋼の組成、Niバランス値、Al及びNの関係、及び初期結晶粒径は、以上のとおりである。
次に、本実施の形態のオーステナイト系ステンレス鋼により、1000℃以上の高温環境下における酸化性雰囲気の条件下での使用においても優れた耐酸化特性が得られる理由を説明する。
1000℃を超える温度域における耐酸化性の劣化原因は、素地界面に生成する酸化皮膜の生成と結晶粒の粗大化とが同時に進行するため、素地界面に生成した酸化皮膜が粒成長に伴ってクラックや剥離現象を誘発し、安定した保護皮膜にならないことにあると考えられる。つまり、1000℃を超える高温環境下では結晶粒が粗大化するため、これによるCrの結晶粒界を通っての外方への拡散の遅れによるCrの生成の遅れ、結晶粒の粗大化による生成した酸化皮膜におけるクラックの発生や剥離等を生じるため、十分な耐酸化性が得られない。
そこで、Crリッチな酸化皮膜が素地界面に生成し安定して密着する間、素地界面の結晶粒の成長を抑制できれば、酸化皮膜と素地界面で発生する酸化皮膜と結晶粒の粗大化による熱膨張差によって生ずる応力差に起因して、酸化皮膜のクラック発生や剥離等による急速な異常酸化の進行を防止でき、耐酸化性の維持向上を図ることができる。同時に、結晶粒の微細化は、結晶粒界を通ってのCrの外方への拡散を促進することからCrリッチな酸化皮膜を素地表層部に早期に生成させることに有効である。このため、1000℃を超える温度域では、結晶粒の細粒化維持と粗大化抑制とを図ることによって、耐酸化性を向上させて優れた高温酸化特性を得ることができる。結晶粒の微細化維持及び成長抑制を図るには、高温域でも安定で分解しない第二相を金属結晶内に微細分散させることが有効である。
本実施の形態のオーステナイト系ステンレス鋼は、上述した組成、Niバランス値、Al及びNの関係、及び初期結晶粒径を有するので、
(a)δ−フェライトを第二相としてオーステナイト結晶粒界に析出させることができ、これにより、結晶粒の細粒化及び粗大化防止を図れること、さらに
(b)AlNを第二相として金属組織内に微細分散析出させることができ、これにより、結晶粒の細粒化及び粗大化防止を図れることにより、1000℃を超える高温環境下における酸化性雰囲気の条件下においても、耐酸化性を向上させて優れた高温酸化特性、具体的には、後述する実施例においても説明するように、加熱前に予め3個の試験片の寸法(板厚、巾、長さ)と重量とを測定しておき、大気雰囲気で1200℃×200時間連続加熱を行い、連続加熱終了後の試験片を脱スケールした後の重量測定値との差を単位表面積当りに換算した平均値として求められる腐食減量が、50mg/cm以下の範囲にあるという、これまでにはない優れた高温での耐酸化性を得られる。
さらに、本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
(1)供試材の製作
高周波電気炉(真空溶解)により溶製した17Kg鋼塊を板厚20mmに熱間鍛造した後に板厚14mmに冷間圧延し、1100℃、30分の熱処理後水冷することによって、表1に示す化学組成(質量%、残部Fe)を有する本発明鋼(又は比較鋼からなる評価用試験片を製造した。
Figure 2007277628
(2)耐酸化性試験方法及び結果
これらの試験片に対して、下記試験方法によって試験を行い、下記結果を得た。
(a)試験方法
大気雰囲気で1200℃×200時間連続加熱を行い、腐食減量を測定し、耐酸化性を評価した。腐食減量は、加熱前に予め3個の試験片の寸法(板厚、巾、長さ)と重量とを測定しておき、連続加熱終了後の試験片を脱スケールした後の重量測定値との差を単位表面積当りに換算した平均値として、求めた。結果を表2にまとめて示す。
Figure 2007277628
(b)試験結果:
(i)Al添加による結晶粒の粗大化抑制効果について
Alを積極的に添加した試料No.7と、Alを積極的に添加しなかった試料No.8および9に、1200℃に30分間保持後に水冷する熱処理を行って得られた供試材の金属組織を調べた。その結果、Alを積極的に添加した試料No.7は結晶粒径に殆ど変化がなかったのに対し、Alを積極的に添加しなかった試料No.8及び9は、いずれも、結晶粒が著しく粗大化していた。
以上の結果から、Al添加によって生成したAlNが金属組織内で微細に分散析出することにより、結晶粒の成長温度域における結晶粒の粗大化を有効に抑制できることがわかる。
(ii)耐酸化性試験結果
表3に1200、1250℃の連続加熱200時間大気酸化試験の平均腐食減量の測定結果を示す。
Figure 2007277628
表3に示す結果から、Alを積極的に添加した試料No.7は、AlN微細析出による結晶粒の粗大化の抑制効果により平均腐食減量は、Alを積極的に添加しなかった試料No.8及び9に比較して約1/2であり、また1200と1250℃においても殆ど重量変化がなく、良好な耐酸化性を確保できたことがわかる。
また、熱処理温度と平均腐食減量との関係では、より高温側で熱処理したほうが良好な結果を得られることがわかる。これは、より高温での熱処理のほうが加熱中の結晶粒の粒成長の割合を低く抑えられることによる。
以上の結果から、Al添加によるAlNの金属組織内への微細分散析出が、結晶粒成長温度域の酸化雰囲気に対して酸化皮膜直下の結晶粒の細粒維持と粗大化抑制に効果的に作用し、酸化皮膜の早期生成と密着安定化に有効に作用することがわかる。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.04〜0.15%、Si:1.5〜3.0%、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:15〜30%、Ni:8〜15%、Al:0.05〜0.20%、B:0.001〜0.010%、N:0.15〜0.3%、Ca及び/又はREM:0.01〜0.10%、残部Fe及び不純物からなり、(1)式により規定されるNi(bal)が−1.0〜+2.0であるとともに、Al及びNが(2)式を満足することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
    Ni(bal)=30×(C+N)+Ni+0.5×Mn−1.1×(Cr+1.5×Si)+8.2 ・・・・・(1)
    log(Al×N)≧-1.845 ・・・・・(2)
    (1)及び(2)式における元素記号はそれぞれその元素の含有量(質量%)を示す。
  2. さらに、質量%で、Cu:2.0%以下、及び/又は、Mo:1.0%以下を含有する請求項1に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼。
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