JP2007277585A - 化成処理性に優れた高強度熱延鋼板 - Google Patents

化成処理性に優れた高強度熱延鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】高強度化を期してMoを添加したものであっても、安定して優れた化成処理性を有する高強度熱延鋼板を提供すること。
【解決手段】熱延鋼板の表面性状が、凹凸の最大深さ(Ry)で10μm以上、且つ該凹凸の平均間隔(Sm)で30μm以下という特性を満足する他、表面凹凸の負荷長さ率(tp40)が20%以下という特性と、該負荷長さ率(tp60)と同(tp40)の差が60%以上という特性のいずれか一方、より好ましくは両特性を満足する、化成処理性の高められた高強度熱延鋼板を開示する。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度を有すると共に、リン酸塩処理などの化成処理性に優れた熱延鋼板に関するものである。
最近、自動車などの軽量化に伴う燃費向上、更には排ガス低減の観点から、鋼材の一層の高強度化が求められており、特に冷延鋼板についてはハイテン化(高強度化)が急速に進んできている。しかし半面、衝突安全性の観点から剛性強化用として厚物高強度鋼板に対する要求も少なくない。こうした要望に対しては、設備面やコスト面から冷延鋼板による対応が困難であり、熱延鋼板で対応することが必要となる。
そして熱延鋼板を使用する場合でも、製品形状に加工する際には冷延鋼板と同様にプレス成形されるので、高強度化を指向するにしても伸びなどの延性を軽視することはできない。しかし、熱延鋼板に限らず素材一般の性質として、高強度化すればするほど延性が低下し加工性が悪くなる。そこで鉄鋼材では、延性を低下させることなく強度を高めることのできる合金元素の添加が検討されている。
中でもMoは、延性をそれほど低下させることなく強度を高める有用な元素として注目されている。しかもMoは、熱延終了後の冷却過程で生じるフェライト組織の生成を抑えて高強度化に寄与するベイナイト組織の生成を助長し、熱延前のスラブ加熱温度を高めたり低温巻取りを採用したりするといったプロセス制御の必要もないことから、高強度熱延鋼板用の添加合金元素としても注目されている。
ところが、合金元素としてMoを添加すると鋼板の化成処理性が悪化し、ひいては電着塗装後の塗膜の密着不良などによって仕上り製品の外観や耐食性などに悪影響を及ぼす。
他方、鋼板の化成処理性を改善するため、鋼板素材の表面性状(たとえば、微視的凹凸パターンなど)を改善する方法は幾つか提案されている。
例えば特許文献1には、鋼板表面の微視的形状を規定することによって化成処理性を高めた熱延酸洗鋼板が開示されている。この技術は、高エネルギー密度ビームで鋼板表面に凹凸模様を形成したロール(ダルロール)を用いてスキンパス圧延し、ロール表面の該凹凸模様を鋼板表面に転写することにより表面性状を整えるものである。しかしこの方法は、ロールのダル加工やスキンパス圧延といった工程付加によるコストアップが避けられず、しかも、特にMo添加鋼に対しては満足のいく効果が得られない。
また特許文献2には、Ti添加熱延高張力鋼板の平均結晶粒径を3.0μm以下に抑えると共に、表面粗さ(Ra)を1.5μm以下に抑えることで化成処理性を高める方法が開示されている。しかしこの方法も、Mo添加鋼に対しては意図する様な効果が得られない。
更に特許文献3には、鋼板表面の微視的凹凸パターンを制御する技術が開示されている。しかしこの技術は、鋼板の塗装鮮映性とプレス加工性の向上を目的とするもので、その凹凸パターンは、凸部の直径を50〜200μmの範囲に制御するものであって、本発明で化成処理性に影響を及ぼす因子として注目するリン酸亜鉛の結晶サイズである数μmよりもはるかに大きいため、化成処理性の向上には殆ど寄与しない。
特開平2−187202号公報 特開2002−226944号公報 特開平5−293503号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、Moを含まない高強度熱延鋼板は勿論のこと、高強度化を期してMoを添加した熱延鋼板であっても、安定して優れた化成処理性を発揮し得る様な高強度熱延鋼板を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る高強度熱延鋼板は、390MPaレベル以上、更には780MPaレベル以上の引張強度を有する高強度熱延鋼板であって、該鋼板表面に存在する凹凸の最大深さ(Ry)が10μm以上、該凹凸の平均間隔(Sm)が30μm以下という要件を満たす他、
1)表面凹凸の負荷長さ率(tp40)が20%以下、および
2)表面凹凸の負荷長さ率(tp60)と同(tp40)の差が60%以上、
という2つの要件のうちいずれか1方の要件を満たし、より好ましくは、これら1),2)の要件を同時に満たす化成処理性に優れた高強度熱延鋼板である。
本発明に係る上記鋼板の成分組成は、要求強度に応じて任意に変更できるが、好ましいのは、基本成分としてC:0.03〜1.0%、Si:2%以下(0%を含む)、Mn:0.3〜4.0%、Al:0.005〜0.5%を満たし、好ましくは更に、高強度化のため、Mo:0.05〜1.0%を含み、あるいは、必要に応じて更にCr:1.5%以下(0%を含まない)、Ti:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)、Cu:1.0%以下(0%を含まない)、Ni:1.0%以下(0%を含まない)、B:0.002%以下(0%を含まない)、Ca:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むもので、残部は鉄と不可避不純物からなる鋼である。
また、本発明に係る高強度熱延鋼板の強度レベルは、用途・目的によっても変わってくるので一律に定めることはできないが、汎用的な強度レベルは引張強度で390MPa以上を有するものである。また、最近における鋼板の高強度化の要請に応えるには、780MPa以上の引張強度を有するものが好ましく、この場合は、Moを0.05〜1.0%含有させると共に、Crを1.5%以下の含有率で含有させるのがよく、更に900MPa以上の引張強度を有する高強度鋼板を得るには、Mo含量を0.05〜1.0%、Cr含量を0.3〜1.5%とし、且つ金属組織の85%以上をベイナイトとするのがよい。
本発明によれば、熱延鋼板の表面に存在する凹凸の最大深さ(Ry)と該凹凸の平均間隔(Sm)を規定すると共に、当該表面凹凸の負荷長さ率(tp40)および/または該負荷長さ率(tp40)と同(tp60)の差を特定することによって、化成処理性を著しく改善することができ、Moを含まない熱延鋼板はもとより、化成処理性を劣化させるMoを高強度化のため適量含有させた高強度鋼板であっても優れた化成処理性を保証し、強度と化成処理性を兼ね備えた高強度熱延鋼板を安価に提供できる。
本発明者らは前述した様な解決課題の下で、特に高強度化の手段としてMoを添加した熱延鋼板を対象として、Mo添加による化成処理性低下の問題を改善すべく鋭意研究を進めてきた。
その結果、熱延鋼板表面の凹凸の最大深さ(Ry)を「10μm以上」、該凹凸の平均間隔(Sm)を「30μm以下」に特定すると共に、表面凹凸の負荷長さ率(tp40)を20%以下に、および/または該凹凸の負荷長さ率(tp60)と同(tp40)の差[(tp60)−(tp40)]を60%以上に調整してやれば、Moを含まない熱延鋼板はもとより、適量のMoが添加された熱延鋼板であっても化成処理性の低下が可及的に抑えられ、優れた化成処理性と強度を兼ね備えた熱延鋼板が得られることをつき止めた。
本発明で規定する表面凹凸の上記最大深さ(Ry)とは、例えば図1に示す如く表面粗さ曲線の最高山頂(Rt)と最深谷底(Rb)との間隔を意味し、該凹凸の平均間隔(Sm)とは、例えば図2に示す如く表面粗さ曲線における平均線の山から谷に変わる点を変化点として、変化点から次の変化点までの間隔(S,S……S)の平均値を意味する。また負荷長さ率(tp)とは、例えば図3に示す如く表面粗さ曲線をある切断線レベル(p)で切断したときの切断部分長さ(l,l……l)の測定長さ(L)に対する百分率を意味し、上記切断線レベル(p)が最高山頂(Rt)であるものは0(ゼロ)で(tp0)、最深谷底(Rb)であるものは100で(tp100)と表わされる。そして、該切断線レベル(p)が「40」または「60」であるときの上記切断部分長さ(l+l+l+……l)の測定長さ(L)に対する百分率が、(tp40)または(tp60)で表わされる値である。
そして、上記表面凹凸の最大深さ(Ry)が「10μm以上」、平均間隔(Sm)が「30μm以下」で、且つ、上記表面凹凸の負荷長さ率(tp40)が20%以下、および/または同負荷長さ率(tp60)と同(tp40)の差[(tp60)−(tp40)]が60%以上であるものは、Moを含まない鋼材は勿論のこと、適量のMoを含有する熱延鋼板であっても安定して優れた化成処理性を発揮し得ることが確認されたのである。
本発明においては、上記の様に表面凹凸の最大深さ(Ry)が相対的に深く、且つ該凹凸の平均間隔(Sm)が相対的に小さいほど、表面凹凸が微細で且つ深くリン酸亜鉛結晶の核生成サイトとしての機能が高まり、全面にリン酸亜鉛結晶が生成、成長し易くなって化成処理性が高まるものと考えられる。
また上記表面凹凸の負荷長さ率(tp40)が「20%以下」(即ち、相対的に小さい)ということは、表面に突出した凸部よりも窪んだ凹部の領域(面積)が相対的に多いことを意味しており、該凹部が同様にリン酸亜鉛結晶の核生成サイトとなってリン酸亜鉛結晶の生成、成長を促し、更に、上記負荷長さ率(tp60)と同(tp40)の差[(tp60)−(tp40)]が「60%以上」(即ち、tp60とtp40の差が相対的に大きい)ということは、凸部の頂部から凹部の底部に渡る斜面が、底部方向に直線状の傾斜面を有しているのではなく湾上に窪んでいることを表わしており、該湾状に窪んだ斜面部分が結晶析出サイトとして機能することでリン酸亜鉛結晶の生成、成長を促し、化成処理性の一層の向上に寄与しているものと考えられる。
いずれにしても本発明では、後記実施例でも明らかにする如く、上記表面凹凸の最大深さ(Ry)を「10μm以上」、平均間隔(Sm)を「30μm以下」にする他、これまでは化成処理性の観点から全く認識されたことのない負荷長さ率(tp40)を「20%以下」、および/または同負荷長さ率(tp60)と同(tp40)の差[(tp60)−(tp40)]を「60%以上」に定めることによって、安定して優れた化成処理性を得ることができたのである。
化成処理性を高める上でより好ましいのは、平均間隔(Sm)が20μm以下、負荷長さ率(tp40)が15%以下、負荷長さ率の差[(tp60)−(tp40)]が70%以上のものである。尚、付加長さ率(tP60)の値は特に規定しないが、化成処理性を高める上で好ましいのは60%以上、より好ましくは70%以上である。
上記の様な表面性状とすることで、化成処理によって鋼板表面に析出するリン酸塩結晶はより微細なものとなり、またリン酸塩の健全性の指標であるP比、即ちPhosphophyllite(ホスフォフェライト:P)とHopeite(ホパイト:H)の比(P/P+H)はより1に近づき、化成処理性が向上する。またMo添加鋼では、化成処理液中で自然電位が貴な方向に進むため化成処理性が低下するが、上記の様な表面性状にしてやれば、Moによる化成処理性の劣化を補って余りある優れた化成処理性を得ることができる。
上記の様な表面性状の熱延鋼板を得るための方法は特に制限されないが、本発明者らの実験によれば、酸洗処理時間を厳しくすることで上記表面性状に近づけることができることを確認している。即ち熱間圧延工程で鋼板表面に生成した酸化物(所謂スケール)を除去するための酸洗は、通常10〜20%程度の塩酸水溶液を用いて50〜85℃程度で10〜30秒程度行なわれるが、本発明で意図する上記表面性状を得るには、酸洗液の塩酸濃度を高めに、酸洗温度を高めに、あるいは酸洗時間を長めに設定することで達成できる。より具体的には、酸洗液の塩酸濃度をA(%)、酸洗温度をB(℃)、酸洗時間(浸漬時間)をC(秒)とした時、これらが下記(I)式の関係
(A/100)×B×C≧40000……(I)
を満たす様に制御(例えば、11%HCl−75℃−80秒、15%HCl−80℃−50秒、16%HCl−85℃−40秒など)し、より好ましくは更に、酸洗浴中を走行する鋼板の表面に1.0〜5.0m/秒程度の流速で酸洗液を供給し、あるいは酸洗液をノズルから吹き込み、鋼板表面で酸洗液を高速乱流状態としてやれば、前述した様な表面性状が得られ易くなることを確認している。
次に、本発明で使用する鋼材の好ましい成分組成を定めた理由は下記の通りである。
C:0.03〜1.0%
Cは、熱延鋼板の強度を高める上で重要な元素であり、0.03%未満ではCの大部分がフェライトに固溶してしまうため、高強度化に寄与する炭化物(基本的には鉄の炭化物であるセメンタイト、あるいは、必要に応じて添加されることのあるNb,Ti,Vなどの炭化物)の生成が不十分で、本発明で意図するレベルの強度が得られ難くなる。より好ましくは0.05%以上含有させるのがよい。しかし多過ぎると、成形加工性が悪くなるほか溶接性にも悪影響が現れてくるので、多くとも1.0%以下、より好ましくは0.23%以下に抑えるのがよい。
Si:2%以下(0%を含む)
Siは、鋼を溶製する際に脱酸性元素として有効に作用する他、鋼材の高強度化にも寄与する元素であるが、多過ぎると成形加工性を劣化させるばかりでなく、表面欠陥を生じ易くなり、酸洗性や塗装性にも悪影響を及ぼす様になるので、多くとも2%以下、好ましくは1.5%以下に抑えるのがよい。
Mn:0.3〜4.0%
Mnは、強度を高める効果を有する他、鋼中に混入して脆化要因となるSをMnSとして固定する上でも重要な元素である。これらの作用を有効に発揮させるには、少なくとも0.3%以上、好ましくは0.5%以上含有させるのがよい。しかし多過ぎると、延性を低下させて加工性に悪影響を及ぼすばかりでなく溶接性も低下させるので、多くとも4.0%以下、好ましくは2.5%以下に抑えるのがよい。
Al:0.005〜0.5%
Alは脱酸元素として不可欠の元素であり、その効果を有効に発揮させるには0.001%以上含有させねばならず、好ましくは0.005%以上含有させるのがよい。しかし多過ぎると、酸化物系介在物量の増大により靭性が劣化する他、表面欠陥を生じ易くなるので、多くとも0.5%以下、好ましくは0.3%以下に抑えるのがよい。
Mo:1.0%以下
Moは、固溶強化による熱延鋼板の高強度化を進めるうえで重要な元素であり、その効果は0.05%以上含有させることで有効に発揮される。但し、要求強度が390MPaレベル未満の場合は、敢えてMoを含有させるまでもない。Mo量は要求される熱延鋼板の強度レベルにもよるが、その効果がより確実に発揮されるのは0.1%以上である。しかし、1.0%を超えると、高強度化への寄与以上に延性(加工性)に与える悪影響が顕著で、強度−伸びバランスが急激に悪くなるので、上限を1.0%と定めた。より好ましくは0.5%以下に抑えるのがよい。なお本発明は、先にも述べた様にMo添加により劣化する化成処理性を表面性状の改善で補うところに最大の特徴を有するものであるが、表面性状による化成処理性改善効果は、Moを含まない高強度熱延鋼板についても有効に発揮される。
Cr:1.5%以下
Crは、少ない添加量で熱延鋼板の強度を高める作用を有しており、特に780MPaレベル以上の引張強度が求められる場合は、少なくとも0.1%程度以上含有させるのがよく、900MPaレベル以上の引張強度が求められる場合は0.3%以上含有させるのがよい。しかし、Cr含量が多過ぎると、Moと同様に高強度化への寄与以上に延性(加工性)が大幅に劣化するので、多くとも1.5%以下、好ましくは1.0%以下に抑えるのがよい。
尚、求められる引張強度が390〜780MPaレベルの範囲であれば、上記元素のうちC,Si,Mn,Moの含有率を調整するだけで、Crを添加せずとも目標の引張強度を得ることができる。しかしその様な強度レベルの熱延鋼板を得る場合でも、Cr添加量を微調整するだけで強度を容易にコントロールできるので、Crの添加は実用上極めて有効である。その様な観点から、より好ましいCr含量は0.1%以上、1.5%以下である。
本発明で使用する鋼の構成元素は上記の通りであり、残部は実質的にFeである。ここで「実質的に」とは、鋼原料もしくはその製造工程で混入し得る不可避不純物元素の含有を許容し、或いは前述した各成分元素の作用効果を阻害しない範囲で、更に他の元素が少量含まれていてもよいことを意味する。その様な不可避不純物元素としては、例えばP,S,N,Oなどが挙げられ、またその他の元素としては、Ti,Nb,V,Cu,Ni,B,Caなどが例示される。しかしこれらの元素は、多過ぎると大なり小なり延性や表面性状を劣化させ、化成処理性にも悪影響を及ぼすので、Tiは0.2%以下、Nbは0.1%以下、Vは0.1%以下、Cuは1.0%以下、Niは1.0%以下、Bは0.002%以下、Caは0.005%以下に、夫々抑えるべきである。
尚、本発明に係る熱延鋼板の強度は、用途に応じてC,Si,Mn,Mo,Crなどの含有率を変えることで390MPaレベル以上、780MPaレベル以上、更には900MPaレベル以上の任意の強度に調整できるが、900MPaレベル以上の高強度熱延鋼板を得たい場合は、Mo以外の強化元素としてCrも必須的に添加し、且つ熱処理条件を工夫する(例えば、熱間圧延の仕上げ温度を[Ac点]以上とし、その後の冷却速度を30℃/秒以上とし、350〜550℃で巻き取るなど)ことによって、鋼組織をベイナイトリッチ(好ましくは85%以上)にするのがよい。
本発明は以上の様に構成されるが、高強度鋼板を対象として化成処理性を改善し、特に強化元素として有用なMoを添加した高強度熱延鋼板であっても、表面性状を適正にコントロールすることで、Mo添加に伴う現実的な問題点として指摘されていた化成処理性の劣化を防止し、高強度と優れた化成処理性を兼ね備えた熱延鋼板を提供し得ることになった。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例
下記表1に示す化学成分の鋼材1〜15を溶製し、鋳造によりスラブを製造した。このスラブをAc点以上に再加熱し、表2に示す条件で熱間圧延を行って厚さ3.2mmの熱延鋼板を得た。得られた熱延鋼板の機械的特性と縦断面組織中のベイナイト面積率を表2に併記した。
得られた各熱延鋼板を表3,4に示す条件で酸洗し(なお酸洗液の流速とは、酸洗槽の出入り口に配設したスリット状の噴流ノズルから鋼板表面に向けて吹き込む酸洗液の流速を意味する)、得られた酸洗鋼板の表面性状を、レーザー顕微鏡(レーザーテック社製、型番「1LM21W」)により50倍の対物レンズを用いて観察し、無作為に選択した10箇所について、1箇所当り0.16mm×0.22mmの面積を走査することによって、表面凹凸の平均間隔(Sm)、最大深さ(Ry)、負荷長さ率(tp40)および(tp60)の値とその差を各々平均値として求めると共に、下記の方法で化成処理性を評価した。なお一部の試料については、酸洗処理の後、所定の圧下率でスキンパスを行ってから化成処理性を評価した。結果を表3,4に一括して示す。
化成処理性:
各供試鋼板の表面を下記の条件で化成処理した後、鋼板表面を1000倍でSEM観察し、無作為に選択した10視野についてリン酸亜鉛結晶の付着状況を調べ、下記の基準で化成処理性を評価した。
化成処理液…日本パーカライジング社製の化成処理液「パルボンドL3020」を使用
化成処理工程…脱脂(日本パーカライジング社製の脱脂液「ファインクリーナー」を用い、45℃で120秒)→水洗(30秒)→表面調整(日本パーカライジング社製の表面調整液「プレパレンZ」に15秒浸漬)→化成処理(上記化成処理液に43℃で120秒浸漬)
評価基準
スケ:10視野全てにおいて均一に付着しているもの:◎、10視野中で5%以下のスケが認められたものが3視野以下であるもの:(○)、それ以外:(×)。
粒径:各視野の中から大きなものを10個選択し、その平均径で評価する。
10μm以上:×、7μm以上〜10μm未満:○、
4μm以上〜7μm未満:◎、4μm未満:●。
P比:化成処理後の鋼板表面をX線回折によりホスホフェライト(p)とホパイト(H)に相当するピークを測定し、その比(P/P+H)(n=5の平均値)によって評価する。P比=P/(P+H)で、0.85未満:×、0.85以上〜0.93未満:○、0.93以上〜0.96未満:◎、0.96以上:●。
判定は、上記スケと粒径およびP比から、下記の様に総合評価した。
スケが◎、粒径が●、P比が●であるものは、総合で●(ベスト)、
スケが◎、粒径とP比が◎以上で、上記以外のものは、総合で◎(優)、
スケ、粒径、P比が○以上で上記以外のものは、総合で○(良)、
スケ、粒径、P比のどれか1つでも×であるものは、総合で×(不良)。
上記表1〜4から次の様に考えることができる。
試料No.1,5,9,14は、表面性状が本発明の規定要件を外れる比較例であり、いずれも化成処理性が悪い。また試料No.13は、試料No.11の酸洗処理後にスキンパス処理を施したものであるが、スキンパスによって表面性状が本発明の規定範囲外になったため化成処理性が悪くなっている。
試料No.16は、酸洗条件がやや緩慢であるため本発明で規定する表面性状が得られておらず、化成処理性が十分とは言えない。
試料No.20は、酸洗温度が相対的に低く且つ浸漬時間が相対的に短い上に、鋼板に向けて噴射する酸洗液の流速が相対的に遅く表面性状が十分に改善されていないため、化成処理性がやや不十分である。
試料No.24は、酸洗処理後のスキンパスで最大深さ(Ry)が規定範囲外となったため、化成処理性がやや不足気味となっている。
試料No.28は、酸洗処理後のスキンパスで特に表面凹凸の平均間隔(Sm)が好適範囲を外れる様になった例であり、化成処理性が劣悪である。
試料No.31は、酸洗処理条件が不適切であるためか適正な表面性状が得られておらず、化成処理性がやや不足気味になっている。
試料No.36は、酸洗処理性が適切で表面性状も良好であるが、用いた鋼材が規定値を超える量のMoを含んでいるため、化成処理性が悪い。
これらに対し試料No.2〜4,6〜8,10〜12,15,17〜19,21〜23,25〜27,29,30,32〜35,37は、いずれも本発明の規定要件を満足する実施例であり、いずれも優れた化成処理性が得られている。
なお試料No.16,20,24,31は、表面の負荷長さ率に関する要件は本発明の規定要件を満たしていないが、鋼中にMoが含まれていないため、それなりに良好な化成処理性が得られている。
鋼板表面に存在する凹凸の最大深さ(Ry)の定義を説明するための図である。 鋼板表面に存在する凹凸の平均間隔(Sm)の定義を説明するための図である。 鋼板表面に存在する凹凸の負荷長さ率(tp40),(tp60)の定義を説明するための図である。

Claims (8)

  1. 鋼板表面に存在する凹凸の最大深さ(Ry)が10μm以上、該凹凸の平均間隔(Sm)が30μm以下で、且つ表面凹凸の負荷長さ率(tp40)が20%以下であることを特徴とする、化成処理性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 鋼板表面に存在する凹凸の最大深さ(Ry)が10μm以上、該凹凸の平均間隔(Sm)が30μm以下で、且つ表面凹凸の負荷長さ率(tp60)と同(tp40)の差が60%以上であることを特徴とする、化成処理性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. 鋼板表面に存在する凹凸の最大深さ(Ry)が10μm以上、該凹凸の平均間隔(Sm)が30μm以下であり、表面凹凸の負荷長さ率(tp40)が20%以下で、且つ表面の負荷長さ率(tp60)と同(tp40)の差が60%以上であることを特徴とする、化成処理性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. 鋼が、C:0.03〜1.0%(化学成分の場合は質量%を意味する、以下同じ)、Si:2%以下(0%を含む)、Mn:0.3〜4.0%、Al:0.001〜0.5%を満たし、残部が実質的に鉄で、引張強度が390MPa以上である請求項1〜3のいずれかに記載の化成処理性に優れた高強度熱延鋼板。
  5. 鋼がMo:0.05〜1.0%を含む請求項4に記載の化成処理性に優れた高強度熱延鋼板。
  6. 鋼がMo:0.05〜1.0%を含み、引張強度が780MPa以上である請求項5に記載の化成処理性に優れた高強度熱延鋼板。
  7. 鋼が、更に他の元素として、
    Cr:1.5%以下(0%を含まない)、
    Ti:0.2%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.1%以下(0%を含まない)、
    V:0.1%以下(0%を含まない)、
    Cu:1.0%以下(0%を含まない)、
    Ni:1.0%以下(0%を含まない)、
    B:0.002%以下(0%を含まない)、
    Ca:0.005%以下(0%を含まない)、
    よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むものである請求項4〜6のいずれかに記載の化成処理性に優れた高強度熱延鋼板。
  8. 鋼が、Mo:0.05〜1.0%とCr:0.3〜1.5%を含み、金属組織の85%以上がベイナイトで、引張強度が900MPa以上である請求項4〜7のいずれかに記載の高強度熱延鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020537716A (ja) * 2017-10-27 2020-12-24 バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド 低降伏比・超高強度コイルドチュービング用鋼及びその製造方法

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