JP2007262542A - 金属膜形成方法、金属膜形成用基板、金属膜積層体、金属パターン形成方法、金属パターン形成用基板、金属パターン材料、及び、ポリマー前駆体層形成用塗布液組成物 - Google Patents

金属膜形成方法、金属膜形成用基板、金属膜積層体、金属パターン形成方法、金属パターン形成用基板、金属パターン材料、及び、ポリマー前駆体層形成用塗布液組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】多大なエネルギーを必要とせず、平滑な基板との密着性に優れる金属膜、或いは、金属パターンを簡便な工程により形成しうる金属膜形成方法及び金属パターン形成方法、それにより得られた平滑な基板との密着性に優れる金属膜積層体、金属パターン材料及びそれらの形成に好適に用いられる金属膜形成用基板、金属パターン形成用基板、及び、ポリマー前駆体層形成用塗布液組成物を提供する。
【解決手段】メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを、基板に直接化学結合させてポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、該ポリマー層上にメッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒等付与工程と、該メッキ触媒またはその前駆体を付与したポリマー層にメッキを行うメッキ工程と、を有することを特徴とする金属膜形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属膜形成方法、該金属膜形成方法を利用した金属パターン形成方法、これらにより得られた金属膜積層体、金属パターン材料及びそれらの形成に用いられる金属膜形成用基板、金属パターン形成用基板、ポリマー前駆体層形成用塗布液組成物に関する。
基板上に形成された金属膜は、パターン状にエッチングされることで様々な電化製品に、配線などとして使用されている。基板上に形成された金属膜(金属基板)は、基板表面を凹凸処理してアンカー効果により基板と金属層との密着性向上を図っていた。その結果、形成された金属膜は、基板界面部が凹凸状となり、電気配線として使用する際には、高周波特性が悪くなるという問題点があった。更に、基板表面を凹凸処理するために、クロム酸などの強酸で基板を処理するという煩雑な工程が必要であり、改良が望まれていた。
この問題を解決する為に、基板にモノマーを含む塗布液を塗布し、電子線やUV光を照射することにより、基板上に表面グラフトポリマーを導入し、無電解メッキにより金属膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、基板表面に凹凸を形成することなく、金属膜を形成しうるが、グラフトポリマーの形成にあたっては、基板に液状のモノマーを塗布し、液状のモノマーが存在している状態で電子線やUV光を照射する工程を必要としており製造上のハンドリングが困難であることが予想される。また、ここでは、実際の基板表面の状態や、基板と金属層との密着性について詳細な検討は未だなされていなかった。
また、基板上にグラフトポリマーを導入して基板と金属層との密着性を向上する手法に関しては、ポリイミド基板にプラズマ処理を行って、ポリイミド基板表面に重合開始基を導入し、この重合開始基からモノマーを重合させてグラフトポリマーを基板上に導入し、当該グラフトポリマー上に金属層(銅層)を形成することで、ポリイミド基板と銅層との密着性を改良する方法が開示されている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。しかし、この方法には、プラズマ処理という大掛かりな処理が必要であり、処理には大きなエネルギーが必要であり、より簡便な方法が求められていた。
特開昭58−196238号公報 En Tang Kang,Yan Zhang,"Advanced Materials",20,p1481−p1494 N.Inagaki,S.Tasaka,M.Matsumoto,"Macromolecules",29,p1642−p1648
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、多大なエネルギーを必要とせず、平滑な基板との密着性に優れる金属膜、或いは、金属パターンを簡便な工程により形成しうる金属膜形成方法及び金属パターン形成方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、簡便な工程で、多大なエネルギーを用いることなく製造された、平滑な基板との密着性に優れる金属膜積層体、金属パターン材料を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、金属膜積層体、金属パターン材料の形成に好適に用いられる金属膜形成用基板、金属パターン形成用基板、及び、ポリマー前駆体層形成用塗布液組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
本発明者等は、鋭意検討の結果、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上のpH条件下において加水分解しないポリマーを基板と直接化学結合させ、該ポリマーにメッキを行うことで、簡便、少エネルギー、かつ、容易に基板表面に表面グラフトポリマーを導入でき、また、基板界面の凹凸が少ない場合であっても、密着性に優れた金属膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の金属膜形成方法は、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを、基板に直接化学結合させてポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、該ポリマー層上にメッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒等付与工程と、該メッキ触媒またはその前駆体を付与したポリマー層にメッキを行うメッキ工程と、を有することを特徴とする。
本発明において、ポリマー層に付与するメッキ触媒またはその前駆体は、無電解メッキ触媒またはその前駆体であり、付与後に行われるメッキ工程が無電解メッキ工程であることが好ましい。
なお、この金属膜形成方法においては、この無電解メッキの後に、更に電気メッキを行う電気メッキ工程を有することがより好ましい態様である。
また、この無電解メッキ工程の後、或いは、それに引き続き行われる電気メッキ工程の後、さらに、乾燥工程を実施することができる。
ここで、ポリマー層形成工程に代えて、ポリマー層の形成を基板表面全面に行わず、所定のパターン状にエネルギーを付与することでパターン状にポリマー層を形成し(ポリマーパターン)、その後、触媒等付与工程、メッキ工程を実施することで、金属パターンを形成することができる。
即ち、本発明の請求項11に係る金属パターン形成方法は、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上でも加水分解しないポリマーを基板にパターン状に直接化学結合させるポリマーパターン形成工程と、該ポリマーパターン上にメッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒等付与工程と、該メッキ触媒またはその前駆体を付与したポリマーパターンにメッキを行うメッキ工程と、を有することを特徴とする。
これらの方法により形成された金属膜、或いは、金属パターンは、基板との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましく、さらに好ましくは、0.4kN/m以上である。
本発明の金属膜形成方法及び金属パターン形成方法には、表面の凹凸が500nm以下である基板を好適に用いることができる。即ち、本発明の方法によれば、このような表面凹凸の小さい基板を用いた場合でも、基板と金属膜、金属パターンとの優れた密着性を達成することが可能である。
また、基板の好ましい態様としては、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、基板の好ましい他の態様としては、1GHzにおける誘電率が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板が挙げられる。
また、詳細には、金属膜形成方法における前記ポリマー形成工程が、(1)基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(2)該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを直接化学結合させる工程と、を有することが好ましい。
さらに、前記(2)工程が、該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを接触させた後、エネルギーを付与することにより、前記基板表面全体に当該ポリマーを直接化学結合させる工程であることが好ましい。
また、本発明の金属パターン形成方法において、前記ポリマーパターン形成工程が、(i)基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(ii)該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーをパターン状に直接化学結合させる工程と、を有することが好ましい。
さらに、前記(ii)工程が、該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを接触させた後、パターン状にエネルギーを付与することにより、前記基板表面に当該ポリマーをパターン状に直接化学結合させる工程であることが好ましい。
ここで、本発明における基材とは、金属膜或いは金属パターンを形成するための支持部材となりうるエポキシ樹脂等の材料そのものを指す。
また、本発明における基板とは、以下に詳述するグラフトポリマーが、その上に直接化学的に結合しうるものを指す。例えば、基材上に重合開始層等の中間層を設けてその上にポリマー層或いはポリマーパターンを形成する場合であれば、基板とは、基材及び該基材上に設けられた中間層(例えば、重合開始層)を包含したものを指し、また、基材上にポリマー層を直接生成する場合であれば、基板とは基材そのものを指す。
そのため、本発明においては、基板が、基材と該基材上に設けられた中間層とからなる場合には、その中間層の表面の凹凸が500nm以下となることが好ましい。
本発明の金属膜形成用基板或いは、金属パターン形成用基板は、表面の凹凸が500nm以下の基板と、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが前記基板上に直接化学結合してなるポリマー層或いはポリマーパターンと、を有することを特徴とする。
また、本発明の方法により得られた金属膜或いはパターン状の金属膜である金属パターンは、表面の凹凸が500nm以下の基板と、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが前記基板上に直接化学結合してなるポリマーと、を有し、該ポリマー層の内部、及び、上部にメッキ層を有することを特徴とする。
本発明の金属膜、金属パターンは、基板との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましく、さらに好ましくは、0.4kN/m以上である。
また、前記ポリマー層或いはポリマーパターンは、メッキ触媒及びメッキにより析出した金属から選ばれる少なくとも1種の微粒子を分散する領域(ポリマー層の内部のメッキ層)を、前記ポリマー層と前記金属膜との界面から前記基板方向に0.05μm以上有することが好ましい。
本発明の金属膜形成方法或いは金属パターン形成方法に用いられる金属膜形成用基板などは、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーと、該ポリマーを溶解しうる溶剤とを含有するポリマー前駆体層形成用塗布液組成物を、任意の支持基板、好ましくは、表面に重合開始層を有する基材からなる基板表面に塗布することで容易に得ることができる。
本発明の作用は明確でないが、以下のように推定される。
本発明において、金属膜が形成される基板(すなわち、本発明の金属膜形成用基板或いは金属パターン形成用基板)は、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、pH=12以上でも加水分解しないポリマーにより表面改質され、その表面に全面或いはパターン状にポリマー層が形成されていることから、基板と金属膜との界面では、前記ポリマー(ポリマー層)とメッキ層とのハイブリッド状態が形成される。このため、基板表面が平滑であっても金属膜(メッキ層)と基板との密着性が高いものと考えられる。
また、本発明の金属膜形成方法、金属パターン形成方法において生成するポリマー層、ポリマーパターンは、ポリマー自体の高い運動性により、メッキ液がポリマー層の内部に浸透し易いという利点を有する。そのため、メッキ工程において、メッキがポリマー層内部や上部で進行し、該メッキ層と、基板に直接結合しているポリマー(ポリマー層)と、の間でハイブリッド状態が形成され易い。その結果、金属膜(メッキ層)と基板との密着性の向上に寄与しているものと推測される。
また、本発明においては、ポリマー層或いはポリマーパターンの形成に用いられるポリマーが、pH=12以上のpH条件下においても加水分解が起きないポリマーを使用しているため、メッキ工程において所望されないポリマー構造の分解が生じなくなり、膜強度のアルカリの影響による低下が抑制されて、より強固なポリマー層中にメッキ層がハイブリッドされるため、より高い密着性が発現するものと推測される。
本発明の金属膜形成方法及び金属パターン形成方法における好適な態様は、基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を用いる態様である。このように、基材上に、重合開始剤を含有する重合開始層を設けてなる基板を用いることにより、UV光などの汎用的に使用されている露光源で照射するだけで、基板表面に発生するラジカル種の量が増加し、より多くのポリマーを基板に結合させることができる。そのため、メッキ層とポリマー(ポリマー層)とのハイブリッド状態がより多く形成され易くなる。その結果、基板と金属膜(メッキ層)との密着性がより一層向上するものと推測される。
基板上にポリマー層を設ける方法は上述の通りであるが、前記基板、好ましくは、表面の凹凸が500nm以下の基板上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが前記基板上に直接化学結合してなるポリマー層を有する材料を有する金属膜形成用基板、或いは、表面の凹凸が500nm以下の基板上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが前記基板上にパターン状に直接化学結合してなるポリマーパターンを有する材料を有する金属パターン形成用基板を用いることで、基板との密着性に優れた金属膜や金属パターンを有する材料を容易に得ることができる。
前記した金属膜形成用基板や金属パターン形成用基板は、適切な基板上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーあるいはその材料と、該ポリマー或いはその材料を溶解しうる溶剤とを含有するポリマー前駆体層形成用塗布液組成物を塗布して、グラフトポリマー前駆体層を形成し、金属膜、或いは、金属パターンを形成しようとする領域にエネルギーを付与してポリマーを生成させることにより得ることができる。即ち、本発明の請求項21に記載のポリマー前駆体層形成用塗布液組成物を用いることで、上記ポリマーが結合できる基板表面に容易に密着性に優れた金属膜、或いは、金属パターンの原料となるポリマー層、ポリマーパターンを形成することができる。
本発明によれば、多大なエネルギーを必要とせず、粗面化やエッチングを行なっていない平滑な基板表面に、基板との密着性に優れた金属膜、或いは、所望の領域に微細なパターン状の金属膜、即ち金属パターンの形成が可能な金属膜形成方法及び金属パターン形成方法を提供する。
また、本発明によれば、簡便な工程で、多大なエネルギーを用いることなく製造された、平滑な基板との密着性に優れる金属膜積層体、金属パターン材料を提供することができる。
さらに、本発明によれば、金属膜積層体、金属パターン材料の形成に好適に用いられる金属膜形成用基板、金属パターン形成用基板、及び、そのような基板を任意の基材をもちいて形成しうるポリマー前駆体層形成用塗布液組成物を提供することができる。
本発明により得られた金属膜、或いは、金属パターンは、粗面化していない平滑な基板表面において、基板との間に安定した密着性が得られるため、形成された金属膜或いは金属パターンは高周波特性に優れる金属配線の形成に好適に用いられるという利点をも有するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の金属膜形成方法は、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを、基板に直接化学結合させてポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、該ポリマー層上にメッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒等付与工程と、該メッキ触媒またはその前駆体を付与したポリマー層にメッキを行うメッキ工程と、を有することを特徴とする。
本発明の金属パターン形成方法は、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上でも加水分解しないポリマーを基板にパターン状に直接化学結合させるポリマーパターン形成工程と、該ポリマーパターン上にメッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒等付与工程と、該メッキ触媒またはその前駆体を付与したポリマーパターンにメッキを行うメッキ工程と、を有することを特徴とする。
つまり、基板の全面にポリマーを結合させた場合には金属膜(本発明の金属膜積層体)が形成され、基板の所望の領域のみにパターン状にポリマーを結合させた場合には金属パターン(本発明の金属パターン材料)が形成される。
以下、基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを生成させて、ポリマー層を形成する工程を、適宜「ポリマー層形成工程」と称し、パターン状にポリマーを生成させて、ポリマーパターンを形成する工程を、「ポリマーパターン形成工程」と称する。
また、該基板に直接結合したポリマーにメッキ触媒またはその前駆体を付与する工程を、適宜「触媒等付与工程」と称し、その後、メッキを行う工程を、適宜「メッキ工程」と称する。
なお、このメッキ工程は、無電解メッキ工程であることが好ましく、従って、形成されたポリマー層やポリマーパターンに付与されるメッキ触媒またはその前駆体としては、無電解メッキ触媒またはその前駆体であることが好ましい。
これらの工程について、順次説明する。
<ポリマー層形成工程、ポリマーパターン形成工程>
本工程では、基板上に、該基板表面に直接結合し、且つ、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを生成させて、グラフトポリマー層を形成する。このようなグラフトポリマーは、一般的に、表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて生成される。
表面グラフト重合とは、一般に、固体表面を形成する高分子化合物鎖上に活性種を与え、この活性種を起点として別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。
本発明では、基板表面にメッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有する重合性化合物を接触させ、そこにエネルギーを付与することで、基板表面に活性点を発生させて、この活性点と重合性化合物の重合性基とが反応し、表面グラフト重合反応が引き起こされる。このエネルギー付与を基板の全面にわたり行うことでポリマー層が形成され、エネルギー付与をパターン状に行うことでポリマーパターンが形成される。
また、エネルギーを付与し基板表面に活性点を発生させてから、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有する重合性化合物を、その基板表面に接触させてもよい。
この接触は、該重合性化合物を含有する液状組成物中に、基板を浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、前記液状組成物を基板表面に塗布する、又は、その塗膜を乾燥させてグラフトポリマー前駆体層を形成する方法を用いることが好ましい。
また、基板の両面にこのようなグラフトポリマー層を形成させる場合には、上記のような表面グラフト重合を用いて表裏同時にグラフトポリマーを生成させてもよいし、片面に対して先ずグラフトポリマーを生成させた後に、もう片面に対してグラフトポリマーを生成させてもよい。
本発明を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法のいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135には、表面グラフト重合法として、光グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報、及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
光グラフト重合法は、上記記載の文献の他に、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)記載のように、フィルム基板の表面に光重合性組成物を塗布し、その後、ラジカル重合化合物を接触させ光を照射させて、グラフトポリマーを得ることができる。
(メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマー)
本発明においては、基板上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(以下、適宜、相互作用性基)及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマー(以下、適宜、特定重合性ポリマーと称する)を形成することが重要である。即ち、メッキ工程、好ましくは無電解メッキ工程を行う場合、ポリマー層が形成された基板をメッキ浴中に浸漬するが、メッキ液のpHが高い場合、形成されたポリマーの一部が加水分解され、メッキ触媒またはその前駆体を吸着するグラフトポリマー自体の強度が低下する懸念がある。このため、ここで生成されたポリマーがpH12の条件下で加水分解しないものを使用することでこのような事態の発生を抑制し、十分な量のメッキ触媒またはその前駆体を安定に吸着し、十分な強度を有し、空隙のない高密度のメッキ膜の形成を可能としたものである。
ここで用いる重合性化合物としては、高pHのアルカリ水中において耐分解性に優れたモノマーを使用する必要がある。通常、使用される(メタ)アクリレート系モノマーはエステル結合を有しているが、このエステル結合が、アルカリ水溶液による耐加水分解が低いため、本発明で用いる重合性化合物は、その構造内にエステル結合を有しないもの、pH12以上のアルカリ条件下でも、分解しない安定な結合のみで形成された重合性化合物を用いることが必要である。
(pH12以上で安定な官能基)
本発明で使用される重合性化合物は、炭素−炭素結合、炭素−炭素2重結合、炭素−炭素3重結合、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、ニトロ基、エーテル結合、カルボニル基、フェニル基、スルフィド基、フェノール基、アルデヒド基、アミド基、シアノ基、チオール基、スルホン基、ウレア基等から選択される結合構造、官能基により構成され、構造内にエステル結合を有しない重合性化合物であることが好ましい。このような重合性化合物を原料とすることで、本発明において基板上に形成されるポリマーは、pH12以上のアルカリ条件下でも、安定なポリマーとなる。
エステル結合を有さず、重合性化合物の原料として使用できる化合物の具体例としては、アクリルアミド化合物、もしくは、ビニル化合物系のモノマーを挙げることができる。より具体的には、例えば、下記構造の共重合成分を含むポリマーが好ましく挙げられる。
Figure 2007262542
前記構造中、R1は2価の有機基であり、R2〜R4は互いに独立に水素原子または1価の有機基であり、無置換でも置換されていてもよい。また、これらの共重合成分が2種類以上共重合されていてもよい。ここで、R1で示される2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が挙げられ、アルキレン基であることが好ましい。また、R2〜R4としては、水素原子、メチル基などが挙げられ、水素原子が好ましい。
なお、これら化合物で、且つ、相互作用性基を有するモノマーを1種以上用いて得られるホモポリマー、コポリマーに、重合性基を導入したものを基板に結合しうるポリマーとして用いることができる。
本発明に係る特定重合性ポリマーに導入される重合性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリルアミド基などのエチレン付加重合性不飽和基が挙げられる。
また、このような本発明の特定重合性ポリマーを合成するために用いられる、相互作用性基を有するモノマーとしては、以下に示されるものが挙げられる。
すなわち、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドンなどのカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩や4級アンモニウム塩、水酸基、アミド基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが挙げられる。これらのモノマーは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも吸着能の観点から解離性基を有する、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが好ましい。
本発明における特定重合性ポリマーは、以下に示す合成方法を用いることで合成することができる。
合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を特定位置に有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基及び反応性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。
上記3手法の中で好ましいのは、合成適性の観点から、ii)、iii)の方法である。
前記i)の合成方法で用いられる重合性基を有するモノマーとしては、以下の化合物などが挙げられる。
Figure 2007262542
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては下記式で表される化合物などが挙げられる。
Figure 2007262542
(上記式中、A1は重合性基を有する有機団、R1〜R3は水素原子、及び/又は、1価の有機基、X、Zは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりZまたはXが引き抜かれ、XまたはZが脱離するものである。)
具体的には以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2007262542
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、X、Zで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりZを引き抜き、Xが脱離する反応を使用する。
Figure 2007262542
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1、8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(X、Zで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
前記iii)の合成方法において、相互作用性基及び反応性基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、ポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
すなわち、ポリマーの反応性基とモノマーの官能基の好ましい組合せとしては、水酸基を有するポリマーとエポキシ基を有するモノマーとの組合せ、水酸基を有するポリマーとイソシアネート基を有するモノマーとの組合せ、或いは、エポキシ基を有するポリマーと水酸基を有するモノマーとの組合せ、イソシアネート基を有するポリマーと水酸基を有するモノマーとの組合せ等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
Figure 2007262542
また、本発明における特定重合性ポリマー形成材料の溶剤(水)溶解性を高める目的で、ポリマー中にカルボン酸基(相互作用性基)を有している場合には、カルボン酸塩構造に変換してもよい。カルボン酸塩構造としてはアルカリ金属塩構造が好ましく、更に好ましくはナトリウム塩構造である。
また、カルボン酸基をカルボン酸塩構造に変換する試薬としては無機塩基、有機塩基を使用することができるが、好ましくは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムである。
これらの特定重合性ポリマーのpH=12以上の液中における挙動は、pH=12以上の水液中でポリマーが加水分解するか否かを検知することで確認することができ、具体的には、pH12の水溶液(60℃)中で反応時間2時間を経過させた後、ポリマー中の結合の解除がNMRにて認められないポリマーをpH=12以上で加水分解しないポリマーであると判断する。
以上のようにして得られた特定重合性ポリマーを形成するためのポリマー前駆体層形成用塗布液組成物に使用する溶剤は、組成物の主成分である特定重合性ポリマー形成材料などが溶解可能ならば特に制限はない。また、溶剤には、更に、界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、水などが挙げられる。
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
本発明における特定重合性ポリマーを基板(重合開始層)に接触させる方法としては、任意の方法で行うことができるが、具体的には、特定重合性ポリマーを含有する液状の組成物中に基板を浸漬する方法や、特定重合性ポリマーを含有する組成物を基板(重合開始層)上に塗布する方法が挙げられる。
また、取り扱い性や製造効率の観点からは、特定重合性ポリマーを含有する組成物を基板(重合開始層)上に塗布・乾燥させて、グラフトポリマー前駆体層を形成する態様が好ましい。
このように特定重合体ポリマーを形成する機能を有する、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーやその材料と、該ポリマーやその材料を溶解しうる溶剤とを含有する本発明のポリマー前駆体層形成用塗布液組成物を用いて、任意の基板表面にグラフトポリマー前駆体層を形成することができる。この基板表面にグラフトポリマー前駆体層を有する積層体表面にエネルギーを付与することで、メッキ触媒やその前駆体を吸着しうる、基板に直接結合してなるグラフトポリマーを任意の領域に容易に形成することができるものであり、このポリマー前駆体層形成用塗布液組成物、或いは、基板上にグラフトポリマー前駆体層を有する積層体は、金属パターンや金属膜形成用の材料として有用である。
塗布法を用いる場合の、グラフトポリマー前駆体層の塗布量は、十分なメッキ触媒またはその前駆体との相互作用性、及び、均一な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
浸漬法を用いる場合には、基板が完全に浸漬しうるほどのグラフトポリマー前駆体層塗布液を準備して浸漬する。
(エネルギー付与)
重合開始層へのエネルギー付与方法としては、重合開始パート(部位)にもよるが、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。また、g線、i線も使用される。
また、エネルギー付与をパターン状に行うこともでき、この場合は、紫外線、可視光線などによる走査露光や、所定のマスクパターンを介した全面露光などを行えばよい。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜10分の間である。
以上説明したポリマー層形成工程、或いは、ポリマーパターン形成工程により、基板上に、特定重合性ポリマーを直接結合させて、ポリマー層或いはポリマーパターンを形成することができる。
なお、ポリマー層形成工程により本発明の金属膜形成用基板が作製され、ポリマーパターン形成工程により金属パターン形成用基板が作製される。
〔基板〕
次に、本発明において用いられる基板について説明する。本発明における基板は、寸度的に安定な板状物であり、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用でき、使用目的に応じて適宜選択される。
基板として具体的には、ポリイミド樹脂、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などを成型したものや、シリコーン基板、紙、プラスチックがラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等を挙げることができる。
また、本発明で得られる導電膜を用いてプリント配線板を作製する場合には、基板として絶縁性樹脂を用いることが好ましい。
このような絶縁樹脂としては、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテル、シアネートエステル化合物、エポキシ化合物などの樹脂が挙げられ、これらの樹脂の1種以上を含む熱硬化性樹脂組成物により形成される基板が好ましく用いられる。これらの樹脂を2種以上組み合わせて樹脂組成物とする場合の好ましい組み合わせとしては、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとシアネートエステル化合物、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとシアネートエステル化合物とエポキシ化合物などの組み合わせが挙げられる。
このような熱硬化性樹脂組成物により多層プリント配線板の基板を形成する場合には、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群より選ばれる無機充填剤を含まないことが好ましく、また、臭素化合物又はリン化合物を更に含む熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい
また、プリント配線板の基板として好ましい、その他の絶縁樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂が挙げられ、このような樹脂については、例えば、天羽悟ら著、「Journal
of Applied Polymer Science」第92巻、p1252−1258(2004年)に詳細に記載されている。
更に、クラレ製のベクスターなどの名称で市販品としても入手可能な液晶性ポリマーやポリ4フッ化エチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂なども好ましく挙げられる。
これらの樹脂のうち、フッ素樹脂(PTFE)は高分子材料の中でもっとも高周波特性に優れる。ただし、Tgが低い熱可塑性樹脂であるために熱に対する寸法安定性に乏しく、機械的強度なども熱硬化性樹脂材料に比べて劣る。また、形成性や加工性にも劣るという問題がある。また、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂などとのアロイ化を行なって用いることもできる。例えば、PPEとエポキシ樹脂、トリアリルイソシアネートとのアロイ化樹脂、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化樹脂としても使用することができる。
エポキシ樹脂はそのままでは誘電特性が不十分であるが、かさ高い骨格の導入などで改善が図られており、このようにそれぞれの樹脂の特性を生かし、その欠点を補うような構造の導入、変性などを行った樹脂が好ましく用いられる。
例えば、シアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、「電子技術」、2002年第9号、p35に記載されており、これらの記載もまた、このような絶縁樹脂を選択する上で参照することができる。
本発明で得られる導電膜を用いてプリント配線板を形成する場合、大容量データを高速に処理するという観点で、信号の遅延と減衰とを抑制するためには、誘電率及び誘電正接のそれぞれ低くすることが有効である。低誘電正接材料の採用については、「エレクトロニクス実装学会誌」第7巻、第5号、P397(2004年)に詳細に記載されているとおりであり、特に低誘電正接特性を有する絶縁材料を採用することが高速化の観点から好ましい。具体的には、基板は、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.0以下である絶縁性樹脂からなることが好ましく、且つ、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなることが更に好ましい。絶縁樹脂の誘電率、誘電正接は、常法、例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法を利用した測定器(極薄シート用εr、tanδ測定器・システム、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
〔基板表面或いは中間層〕
本発明における基板は、上述のように、グラフトポリマーが化学的に直接結合できるような表面を有するものである。本発明においては、基板の表面自体がこのような特性を有していてもよく、このような特性を有する中間層を基板表面に設けてもよい。
中間層としては、特に、光グラフト重合法によりグラフトポリマーを合成する場合には、有機表面を有する層であることが好ましく、特に有機ポリマーの層であることが好ましい。また、有機ポリマーとしてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、フォルマリン樹脂などの合成樹脂、ゼラチン、カゼイン、セルロース、デンプンなどの天然樹脂のいずれも使用することができる。光グラフト重合法などではグラフト重合の開始が有機ポリマーの水素の引き抜きから進行する場合もあり、その場合には、水素が引き抜かれやすいポリマー、特に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂などを使用することが、特に製造適性の点で好ましい。
〔重合開始能を発現する層〕
本発明においては、グラフト重合の際に活性点を効率よく発生させるという観点から、基板表面に設けられる中間層としては、エネルギーを付与することにより重合開始能を発現する化合物を含有する重合開始能を発現する層であることが好ましい。この重合開始能を発現する層としては、重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合性層と、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマー(以下、特定重合開始ポリマーと称する。)を架橋反応により固定化してなる重合開始層と、の2つの態様が存在する。
この2つの態様の重合開始能を発現する層について順次説明する。
(重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合性層)
本発明における重合性層は、重合性化合物及び重合開始剤等の必要な成分を、それらを溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基板表面上に設け、加熱又は光照射により硬膜し、形成することができる。
(a)重合性化合物
重合性層に用いられる重合性化合物は、基板との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により相互作用性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーが付加し得るものであれば特に制限はないが、中でも、分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーが好ましい。
このような疎水性ポリマーとしては、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリぺンタジエンなどのジエン系単独重合体、アリル(メタ)アクリレー卜、2−アリルオキシエチルメタクリレー卜などのアリル基含有モノマーの単独重合体;
更には、前記のポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンタジエンなどのジエン系単量体又はアリル基含有モノマーを構成単位として含む、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどとの二元又は多元共重合体;
不飽和ポリエステル、不飽和ポリエポキシド、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリル、高密度ポリエチレンなどの分子中に炭素−炭素二重結合を有する線状高分子又は3次元高分子類;などが挙げられる。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
重合性化合物の含有量は、重合性層中、固形分で0〜100質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%の範囲が特に好ましい。
(b)重合開始剤
本発明における重合性層には、エネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有することが好ましい。ここで用いられる重合開始剤は、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、熱重合よりも反応速度(重合速度)が高い光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、重合性層に含まれる重合性化合物と、相互作用性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーと、を重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができる。
そのような光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2'−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4'−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類、などが挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合性層中、固形分で0.1〜70質量%の範囲が好ましく、1〜40質量%の範囲が特に好ましい。
重合性化合物及び重合開始剤を塗布する際に用いる溶媒は、それらの成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
重合性層を基板上に形成する場合の塗布量は、充分な重合開始能の発現、及び、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点からは、乾燥後の質量で、0.1〜20g/m2が好ましく、更に、1〜15g/m2が好ましい。
上記のように、基板表面上に上記の重合性層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて重合性層を形成するが、このとき、加熱及び/又は光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、基板上にグラフトポリマーが生成した後に重合性層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。ここで、予備硬化に光照射を利用するのは、前記光重合開始剤の項で述べたのと同様の理由による。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
加熱乾燥後に所望により行われる光照射は、光源として、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。その他の光源としては、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。引き続き行われるグラフトパターンの形成と、エネルギー付与により実施される重合性層の活性点とグラフト鎖との結合の形成を阻害しないという観点から、重合性層中に存在する重合性化合物が部分的にラジカル重合しても、完全にはラジカル重合しない程度に光照射することが好ましく、光照射時間については光源の強度により異なるが、一般的には30分以内であることが好ましい。このような予備硬化の目安としては、溶剤洗浄後の膜残存率が10%以上となり、且つ、予備硬化後の開始剤残存率が1%以上であることが、挙げられる。
(特定重合開始ポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層)
本発明における重合開始層は、特定重合開始ポリマーを含んで構成されていてもよい。この特定重合開始ポリマーは、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーである。このため、その特定重合開始ポリマーにおいて、重合開始基がポリマー鎖に結合しており、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化された形態の重合開始層を形成することができる。このような重合開始層の表面にグラフトポリマーを生成させる場合、例えば、親水性基を有するモノマーを含有する溶液を接触させても、その溶液中に重合開始層中の開始剤成分が溶出することを防止することができる。また、重合開始層の形成に際しては、通常のラジカルによる架橋反応のみならず、極性基間の縮合反応や付加反応を使用することも可能であるため、より強固な架橋構造を得ることができる。その結果、重合開始層中の開始剤成分が溶出することをより効率良く防止することができ、重合開始層表面と直接結合をしていないホモポリマーの副生が抑えられることにより、重合開始層表面には直接結合したグラフトポリマーのみが生成されることになる。
ここで用いられる特定重合開始ポリマーは、特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0158〕に記載にものが挙げられる。特定重合開始ポリマーの特に好ましいものの具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2007262542
Figure 2007262542
−重合開始層の成膜−
本発明における重合開始層は、上述の特定重合開始ポリマーを適当な溶剤に溶解し、塗布液を調製し、その塗布液を基板上に塗布などにより配置し、溶剤を除去し、架橋反応が進行することにより成膜する。つまり、この架橋反応が進行することにより、特定重合開始ポリマーが固定化される。この架橋反応による固定化には、特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法、及び架橋剤を併用する方法があり、架橋剤を用いることが好ましい。特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法としては、例えば、架橋性基が−NCOである場合、熱をかけることにより自己縮合反応が進行する性質を利用したものである。この自己縮合反応が進行することにより、架橋構造を形成することができる。
また、架橋剤を併用する方法に用いられる架橋剤としては、山下信二編「架橋剤ハンドブック」に掲載されているような従来公知のものを用いることができる。
特定重合開始ポリマー中の架橋性基と架橋剤との好ましい組み合わせとしては、(架橋性基,架橋剤)=(−COOH,多価アミン)、(−COOH,多価アジリジン)、(−COOH,多価イソシアネート)、(−COOH,多価エポキシ)、(−NH2,多価イソシアネート)、(−NH2,アルデヒド類)、(−NCO,多価アミン)、(−NCO,多価イソシアネート)、(−NCO,多価アルコール)、(−NCO,多価エポキシ)、(−OH,多価アルコール)、(−OH,多価ハロゲン化化合物)、(−OH,多価アミン)、(−OH,酸無水物)が挙げられる。中でも、架橋の後にウレタン結合が生成し、高い強度の架橋が形成可能であるという点で、(官能基,架橋剤)=(−OH,多価イソシアネート)が、更に好ましい組み合わせである。
本発明における架橋剤の具体例としては、以下に示す構造のものが挙げられる。
Figure 2007262542
このような架橋剤は、重合開始層の成膜の際、上述の特定重合開始ポリマーを含有する塗布液に添加される。その後、塗膜の加熱乾燥時の熱により、架橋反応が進行し、強固な架橋構造を形成することができる。より詳細には、下記のex1.で示される脱水反応やex2.で示される付加反応により架橋反応が進行し、架橋構造が形成される。これらの反応における温度条件としては、50℃以上300℃以下が好ましく、更に好ましくは80℃以上200℃以下である。
Figure 2007262542
また、塗布液中の架橋剤の添加量としては、特定重合開始ポリマー中に導入されている架橋性基の量により変化するが、架橋度合や、未反応の架橋成分の残留による重合反応への影響の観点から、通常、架橋性基のモル数に対して0.01〜50当量であることが好ましく、0.01〜10当量であることがより好ましく、0.5〜3当量であることが更に好ましい。
また、重合開始層を塗布する際に用いる溶媒は、上述の特定重合開始ポリマーが溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%が適当である。
重合開始層の塗布量は、表面グラフト重合の開始能や、膜性の観点から、乾燥後の重量で、0.1〜20g/m2が好ましく、更に、1〜15g/m2が好ましい。
〔重合開始能を有する基板〕
更に、本発明においては、基板自体が重合開始能を有していてもよい。このような基板としては、例えば、骨格中に重合開始部位を有するポリイミド(以下、適宜、特定ポリイミドと称する。)を含む基板が好適である。
本発明における重合開始能を有するポリイミド基板は、次の<1>〜<3>をこの順に行うことにより作製することができ、具体的には特開2005−281350で開示のポリイミド基板を使用する事ができる。
<1>ポリイミド前駆体化合物の作製
<2>ポリイミド前駆体の成形
<3>加熱処理によるポリイミド前駆体のポリイミド構造へ変化
以下に、ポリイミド基板に好適に用いられる特定ポリイミドの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2007262542
Figure 2007262542
以上のようにして、特定ポリイミドを含む基板(重合開始能を有するポリイミド基板)が得られる。
本発明の金属膜形成方法、金属パターン形成方法においては、以上説明したポリマー層形成工程、或いは、ポリマーパターン形成工程に次いで、「触媒等付与工程」及び「メッキ工程」が行われ、基板表面には、その基板との密着性に優れた金属膜、或いは、金属パターンが形成される。
以下、触媒等付与工程、及び、メッキ工程について、詳細に説明する。
〔触媒等付与工程〕
触媒等付与工程においては、前記ポリマー層形成工程等により形成されたポリマー層或いはポリマーパターンに、より具体的には、基板に化学結合して形成されたグラフトポリマー中の相互作用性基に、メッキ触媒またはその前駆体が付与される。
ここで、メッキ触媒またはその前駆体としては、後述するメッキ工程におけるメッキの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、メッキ触媒またはその前駆体は、メッキ工程におけるメッキの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるメッキ触媒またはその前駆体は、無電解メッキ触媒またはその前駆体であることが好ましい。
(無電解メッキ触媒)
本工程において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性基に固定する手法としては、例えば、ポリマー層中の相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層中の相互作用性基と相互作用させると、相互作用性基は主に極性基である為に、ポリマー層に選択的に金属コロイド(無電解メッキ触媒)を吸着させることができる。
(無電解メッキ触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、ポリマー層へ付与した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよいし、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
実際には、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でポリマー層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
無電解メッキ触媒である金属コロイド、或いは、無電解メッキ前駆体である金属塩をポリマー層に付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をポリマー層上に塗布するか、或いは、その溶液中にポリマー層が形成された基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、ポリマー層中の相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、或いは、ポリマー層中に金属イオンを含浸させることができる。このような吸着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は、0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
(その他の触媒)
本発明において、後述のメッキ工程において、ポリマー層に対して、無電解メッキを行わず直接電気メッキを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、特に、Pd、Ag、Cuが、その取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。
0価金属を、ポリマー層の相互作用性基に固定する手法としては、例えば、ポリマー層中の相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層中の相互作用性基と相互作用させると、相互作用性基は主に極性基であるために、ポリマー層に選択的に金属コロイド(メッキ触媒)を吸着させることができる。
以上説明した触媒等付与工程を経ることで、ポリマー層中の相互作用性基とメッキ触媒またはその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
〔メッキ工程〕
メッキ工程では、無電解メッキ触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層或いはポリマーパターンに対し、メッキを行うことで、金属膜或いは金属パターンが形成される。形成された金属膜、金属パターンは、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるメッキの種類は、無電解メッキ、電気メッキ等が挙げられ、前記触媒等付与工程において、ポリマー層との間に相互作用を形成したメッキ触媒またはその前駆体の機能によって、メッキ方法を選択することができる。
つまり、本工程では、メッキ触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対し、電気メッキを行ってもよいし、無電解メッキを行ってもよい。
中でも、本発明においては、ポリマー層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解メッキを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のメッキ層を得るために、無電解メッキの後に、更に電気メッキを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるメッキについて説明する。
(無電解メッキ)
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解メッキは、例えば、無電解メッキ触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体が付与された基板を、無電解メッキ触媒前駆体がポリマー層に吸着又は含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解メッキ浴中へ浸漬される。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここで使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH34)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される金属膜及び金属パターンの膜厚は、メッキ浴の金属塩又は金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、或いは、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
以上のようにして得られた金属膜及び金属パターンは、SEMによる断面観察により、ポリマー層中に無電解メッキ触媒やメッキ金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更にポリマー層上にメッキ金属が析出していることが確認された。基板と金属膜(メッキ層)との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒またはメッキ金属)との界面の凹凸差が500nm以下であっても、密着性が良好であった。この断面状況の詳細は、前述の本発明の金属膜の説明において詳述した通りである。
(電気メッキ)
本工程おいては、前記触媒等付与工程において付与されたメッキ触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対して、電気メッキを行うことができる。このようにメッキ触媒を付与して、無電解メッキを行わずに電気メッキを行う場合は、導通が確保できるだけの金属を基板表面に吸着させる方法でとる必要があるため、メッキ触媒としては、主に金属粒子が用いられる。
また、前述の無電解メッキの後、形成された金属膜を電極とし、更に、電気メッキを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた金属膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解メッキの後に、電気メッキを行うことで、金属の厚みを目的に応じて形成しうるため、本発明の金属膜及び金属パターンを種々の応用に適用するのに好適である。
本発明における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。ここで、金属パターンに電気メッキをする場合には全てのパターンに電気が通るように電極を形成する必要がある。
なお、本工程の電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
また、電気メッキにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
〔乾燥工程〕
本発明においては、前記メッキ工程を行うことで、ポリマー層及びポリマーパターン上に金属製のメッキ層が形成された後、乾燥工程を行うことが密着性向上の観点から好ましい。
乾燥工程における乾燥処理は如何なる手段であってもよく、具体的には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥、送風乾燥などの手段により行うことができる。これらの中でも、乾燥に起因するポリマー層の変質を抑制するという観点からは、常温又はその近傍の温度条件で乾燥処理を行うことが好ましい。具体的には、前記メッキ工程又は前記無電解メッキ工程に引き続き所望により実施される電気メッキ工程終了後に、金属膜形成後の材料を、常温下に保存する自然乾燥、常温条件下での減圧乾燥、及び常温送風乾燥の各乾燥処理が好ましい。
加温を行うことなく水分を可能な限り除去するという観点からは、これらの乾燥処理を、1時間以上、更には24時間以上実施することが好ましい。乾燥処理条件は、必要とされる密着性などを考慮して適宜選択すればよいが、具体的には、金属膜形成後の材料を、例えば、25℃前後の温度雰囲気下で1〜3日程度、1〜3週間程度、或いは、1〜2ヶ月程度保存して乾燥する方法、通常の真空乾燥機による減圧下に1〜3日程度、或いは、1〜3週間程度、保存して乾燥する方法等が挙げられる。
このような乾燥処理を行うことにより、基板と金属膜との密着性が向上する作用は明確ではないが、充分な乾燥を行うことにより、密着性を低下させる要因である水分が金属膜とポリマー層との界面に保持されるのを防ぐことで、水分に起因する密着性の低下を抑制しうるものと推定している。
また、乾燥中における銅等からなる金属膜表面の酸化防止のために、乾燥工程の前に、酸化防止剤を金属膜表面に塗布することが好ましい。酸化防止剤としては、一般的に使用されるものが適用でき、例えば、アジミドベンゼン等が使用できる。
以上のような本発明の金属膜形成方法により本発明の金属膜積層体が得られ、また、本発明の金属パターン形成方法により本発明の金属パターン材料が得られる。
このようにして得られる金属膜積層体(本発明の金属膜積層体)における金属膜、或いは、金属パターン材料(本発明の金属パターン材料)における金属パターンは、運動性の高いグラフトポリマーに吸着された無電解メッキ触媒に対して無電解メッキを行い形成されるものであり、メッキ液はグラフトポリマーからなる層内部にも浸透すると考えられることから、金属膜(金属パターン)と基板との界面は、グラフトポリマーと無電解メッキ触媒や析出したメッキ金属とのハイブリッド状態になっているものと予想される。このような金属膜を、SEMにより断面を観察すると、グラフトポリマーからなる層中に無電解メッキ触媒やメッキ金属の微粒子が分散していることが確認された。
この結果に示されるように、界面がグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態で構成されているため、基板(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒またはメッキ金属)との界面の凹凸差が500nm以下、更に、好ましい態様である100nm以下であるような平坦な状態であっても、金属膜の密着性が良好であった。更に詳細に説明すると、無電解メッキ触媒、無電解メッキ触媒前駆体に由来する金属塩、及び/又は、無電解メッキにより析出した金属からなる微粒子が分散しているおり、微粒子の分散状態は、金属膜との界面で高密度となっていた。
また、グラフトポリマーからなる層中において、このような微粒子が高密度で存在する領域としては、金属膜との界面から基板方向へ深さ0.05μm以上の領域で存在することが好ましく、0.1μm以上の領域で存在することがより好ましく、更に0.2μm以上の領域で存在することが好ましく、特に0.3μm以上の深さまで存在することが好ましい。
本発明では、ポリマーパターン形成工程において、エネルギー付与をパターン状に行って任意のパターン状にポリマー層を形成させ、そこに金属膜を形成することにより金属パターンを形成することもできるが、このエネルギー付与を基板全面に実施して、基板表面の全面にわたり金属膜を形成し、つまり、本発明の金属膜形成方法を用いて基板表面の全面にわたり金属膜を形成し、該金属膜を加工して所望の金属パターンを形成することもできる。以下、金属膜より金属パターンを形成する方法について説明する。
上記手法で形成した金属膜を用いた金属パターン形成方法としては、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディブ法が用いられる。
サブトラクティブ法とは、形成した金属膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液で金属層を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などが簡便で好ましい。エッチング液として、例えば塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
セミアディティブ法とは、形成した金属膜上にドライフィルムレジスト層を儲けパターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジソトパターンをマスクとして電気メッキを行い、ドライフィルムレジソトパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、金属層をパターン状に除去する事で、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジソト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気メッキ手法としては前記記載の手法が使用できる。
このよう、本発明の金属膜形成方法により得られた金属膜、該金属膜から形成された金属パターン、或いは、金属パターン形成方法により得られた金属パターンは、平滑な基板上に形成され、且つ、基板に直接結合してなるポリマー層との間にハイブリット状態で金属膜が形成されていることから、基板と金属膜との密着性が高く、また、基板の平滑性にも優れることから、導電材料として用いた場合、高周波特性に優れるため、その応用範囲は広い。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔基板1の作製〕
(重合開始剤塗布液1の調製)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量176、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート825)5g、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライトLA−7052、不揮発分62%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)2g、フェノキシ樹脂MEKワニス(東都化成(株)製、YP−50EK35、不揮発分35%)10.7g、重合開始剤として下記化合物(1)2.3g、MEK(メチルエチルケトン)5.3g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.053gを混合し、攪拌して完全に溶解させて重合開始層塗布液1を作製した。
Figure 2007262542
上記エポキシ樹脂を含む重合開始剤塗布液組成物1を、基材である、厚さ128μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン500H)上にバー塗布し、170℃で、30分乾燥させて、重合開始層を形成し、基板1を得た。得られた重合開始層の膜厚は10μmであった。
また、このようにして得られた基板1の表面の凹凸を、Nanopicks1000(セイコーインスツルメンツ社製)にて測定したところ、Rz=15nmであった。
〔基板2の作製〕
基材であるポリイミドフィルム(製品名:カプトン500H、東レデュポン社製)上に、下記組成の重合開始層塗布液2を、ロッドバー18番を用いて塗布し、80℃で2分間乾燥させた。
次に、この塗布されたフィルムを、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用し、10分間照射し、予備硬化させて、基材上に重合開始層を形成し、基板2を得た。得られた重合開始層の膜厚は6.5μmであった。
また、このようにして得られた基板2の表面の凹凸を、基板1と同様の方法で測定したところ、Rz=12nmであった。
(重合開始層塗布液2)
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(東亞合成(株)M210)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
〔基板3の作製〕
(ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成)
窒素下にてN−メチルピロリドン(30ml)中にジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(28.7mmol)を溶解させ室温にて約30分間撹拌した。この溶液に3,3’,4,4”−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(28.7mmol)を0℃にて加え5時間撹拌した。反応液を再沈してポリイミド前駆体1を得た。生成物は1H−NMR、FT−IRによりその構造を確認した。
(基板の成形)
上記手法で合成したポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を、DMAc(和光純薬(株)社製)に溶かし、30質量%のポリイミド前駆体溶液とした。
得られたポリイミド前駆体溶液をロッドバー#36を用いてガラス基板上に塗布、100℃で5分間乾燥後、250℃で30分間加熱して固化させた。その後、得られた膜を、ガラス基板から剥がすことで、重合開始基がポリマー主鎖構造中に含まれるポリイミド樹脂からなる基板3を得た。
また、このようにして得られた基板3の表面の凹凸を、基板1と同様の方法で測定したところ、Rz=30nmであった。
〔基板4の作製〕
基材であるポリイミドフィルム(製品名:カプトン500H、東レデュポン社製)の上に、下記組成の重合開始層塗布液4を、ロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は9.3μmであった。
また、このようにして得られた基板4の表面の凹凸を、基板1と同様の方法で測定したところ、Rz=15nmであった。
(重合開始層塗布液4)
・下記重合開始ポリマーA 0.4g
・TDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート) 0.16g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.6g
(重合開始ポリマーAの合成)
300mlの三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを加え75℃に加熱した。そこに、[2−(Acryloyloxy)ethyl](4−benzoylbenzyl)dimethyl ammonium bromide8.1gと、2−Hydroxyethylmethaacrylate9.9gと、isopropylmethaacrylate13.5gと、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.43gと、MFG30gと、の溶液を2.5時間かけて滴下した。その後、反応温度を80℃に上げ、更に2時間反応させ、下記に示す構造を有する重合開始ポリマーAを得た。なお、下記の構造式に付されている数値は、各繰り返し単位におけるモル共重合比を示す。
Figure 2007262542
〔特定重合性ポリマーの合成〕
前記ii)の合成方法を用い、下記のようにして、特定重合性ポリマーを合成した。
(モノマーAの合成)
1Lの三口フラスコに、エチレンジアミン30gを入れ、更に酢酸エチル500mlを加え、撹拌した。そこへ、ピリジン94.9g、p−メトキシフェノール0.03gを添加した後に、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、3−クロロプロピオニルクロライド153gを滴下ロートにて30分かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに3時間撹拌した。反応混合液を水1Lに投入し、1時間撹拌した。析出物をろ別し、アセトニトリルにて再結晶化を行った。次に、1Lの三口フラスコに先ほど合成した化合物を60g、更にジメチルアセトアミド500mlを加え、撹拌した。そこへ、トリエチルアミンを26g添加し、24時間攪拌を行った。攪拌終了後、酢酸エチル1.5Lにて抽出を行い、エバポレーターにて溶媒を除去した後にカラムクロマトグラフィーにてモノマーAを精製した。モノマーAは7g得られた。
なお、下記に示す構造のモノマーAは、前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーの1つである。
Figure 2007262542
次に、1000mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド30gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。上記モノマーA6.14g、アクリル酸(相互作用性基を有するモノマー)8.65g、V−601(和光純薬製)0.35gのN,N−ジメチルアセトアミド20g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO 0.25gを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド340gを加え、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、トリエチルアミン38gを滴下ロート用いて、滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに2時間撹拌した。反応液に、水16.9gにメタンスルホン酸39.6gを溶解させた液を添加し、4時間攪拌した。攪拌の後、酢酸エチル再沈を行い、固形物を濾取し、酢酸エチルで洗浄、乾燥して、特定重合性ポリマー1を7g得た。
この特定重合性ポリマーをpH12の水溶液(60℃)中で反応時間2時間を経過させた後もポリマー中の結合の解除がNMRにて認められかったため、ここで用いられるポリマーはpH=12以上で加水分解しないものであることが確認された。
[実施例1]
<ポリマー層形成工程>
基板1に、下記組成からなるポリマー前駆体層形成用塗布液組成物を、ロッドバー#18を用いて塗布し、乾燥させてグラフトポリマー前駆体層を形成した。これにより得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は、1.6μmだった。
(ポリマー前駆体層形成用塗布液組成物)
・前記特定重合性ポリマー1 0.25g
・炭酸水素ナトリウム 0.15g
・蒸留水 3.0g
次に、グラフトポリマー前駆体層を有する基板表面に対し、フォトマスクを介して1.5kW高圧水銀灯を使用し、40秒間パターン露光を行った。その後、表面を1wt%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄し、特定重合性ポリマー1がパターン状にグラフト重合した基板Aを得た。
<触媒等付与工程、及び、無電解メッキ工程>
得られた基板Aを、硝酸銀(和光純薬製)1質量%の水溶液に5分間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。
その後、以下の組成からなる無電解メッキ浴(液温:60℃)にて、20分間無電解メッキし、グラフトポリマーの生成領域に金属膜が形成された金属パターン材料1を得た。
(無電解メッキ浴の組成)
・蒸留水 176g
・硫酸銅・5水和物 1.9g
・EDTA・2Na 5.54g
・NaOH 1.58g
・PEG(分子量1000) 0.019g
・2,2−ビピリジル 0.18mg
・ホルムアルデヒド水溶液 1.01g
[実施例2]
実施例1で得られた金属パターン材料1に対し、更に、下記組成の電気メッキ浴にて20分間電気メッキ(電気メッキ工程)し、金属パターン材料2を作製した。
(電気メッキ浴の組成)
・硫酸銅・五水和物 135g
・濃硫酸 342g
・塩酸 0.25g
・カッパーグリームST−901C 9mL
(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)
・水 234g
[実施例3]
<ポリマー層形成工程>
基板2に、実施例1で使用したポリマー前駆体層形成用塗布液組成物をロッドバー#18を用いて塗布し、乾燥させてグラフトポリマー前駆体層を形成した。これにより得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は、1.5μmだった。
次に、グラフトポリマー前駆体層を有する基板表面に対し、フォトマスクを介して1.5kW高圧水銀灯を使用し、40秒間パターン露光を行った。その後、表面を1wt%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄し、特定重合性ポリマー2がパターン状にグラフト重合した基板Bを得た。
<触媒等付与工程、及び、メッキ工程>
得られた基板Bを、実施例1と同様な手法で、触媒等付与工程、及び金属膜形成工程を行い、ポリマーパターン形成領域に金属膜を有する金属パターン材料3を得た。
[実施例4]
<ポリマー層形成工程>
基板3に、実施例1で使用したポリマー前駆体層形成用塗布液組成物をロッドバー#18を用いて塗布し、乾燥させた。これにより得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は、1.5μmだった。
次に、ポリマー前駆体層を形成した基板表面に対し、フォトマスクを介して1.5kW高圧水銀灯を使用し、40秒間パターン露光を行った。その後、表面を1wt%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄し、特定重合性ポリマー3がパターン状にグラフト重合した基板Cを得た。
<触媒等付与工程、及び、メッキ工程>
得られた基板Cを、実施例1と同様な手法で、触媒等付与工程、及び、無電解メッキ工程程を行い、ポリマーパターン形成領域に金属膜を有する金属パターン材料4を得た。
[実施例5]
<ポリマーパターン形成工程>
基板4に、実施例1で使用した塗布液をロッドバー#18を用いて塗布し、乾燥させた。これにより得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は、1.5μmだった。
次に、ポリマー前駆体層が形成された基板表面に対し、フォトマスクを介して1.5kW高圧水銀灯を使用し、40秒間パターン露光を行った。その後、表面を1wt%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄し、特定重合性ポリマー4がパターン状にグラフト重合した基板Dを得た。
<触媒等付与工程、及び、メッキ工程>
得られた基板Dを、実施例1と同様な手法で、触媒等付与工程、及び無電解メッキ工程を行い、ポリマーパターン形成領域に金属膜を有する金属パターン材料5を得た。
[実施例6]
<ポリマー層形成工程>
基板1に、実施例1と同様にして1.6μmのポリマー前駆体層を形成した。
次に、グラフトポリマー前駆体層を有する基板表面に対し、1.5kW高圧水銀灯を使用し、40秒間全面露光を行った。その後、表面を1wt%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄し、特定重合性ポリマーが全面にグラフト重合したポリマー層を有する基板Eを得た。
<触媒等付与工程、及び、無電解メッキ工程>
得られた基板Eを、硝酸銀(和光純薬製)1質量%の水溶液に5分間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。
その後、実施例1で用いたのと同様の無電解メッキ浴(液温:60℃)にて、20分間無電解メッキし、基板表面全面に金属膜が形成された金属膜積層体6を得た。
[実施例7]
実施例6で得られた金属膜積層体6に対し、更に、実施例2で用いたのと同様の電気メッキ浴にて20分間電気メッキ(電気メッキ工程)し、金属膜積層体7を作製した。
[実施例8(A)]
ポリマー層形成工程において用いた基板1に代えて基板2を用いた他は、実施例7と同様にして金属膜積層体8を作製した。
[実施例9(B)]
ポリマー層形成工程において用いた基板1に代えて基板3を用いた他は、実施例7と同様にして金属膜積層体9を作製した。
[実施例10(C)]
ポリマー層形成工程において用いた基板1に代えて基板4を用いた他は、実施例7と同様にして金属膜積層体10を作製した。
[実施例11]
前記実施例7で得られた全面に金属膜が形成された導電性材料(銅基板:金属膜積層体7)を用いて、微細配線を作製した。
上記金属膜形成7の表面に、感光性ドライフィルム(富士写真フイルム製)をラミネートし、所望の導体回路パターンが描画されたマスクフィルム(金属パターン部分が開口部、金属パターン非形成部がマスク部)を通して紫外線露光させ、画像を焼き付け、現像を行った。次に、塩化第二銅エッチング液を用いてレジストが除去された部分の金属膜(銅薄膜)を除去した。その後ドライフィルムを剥離することにより、銅微細パターンを得た。パターンの形状を測定した。
[実施例12]
前記実施例6で得られた導電性材料(銅基板)を用いて、微細配線を作製した。
上記金属膜積層体6の表面に、感光性ドライフィルム(富士写真フイルム製)をラミネートし、所望の導体回路パターンが描画されたマスクフィルム(金属パターン部分がマスク部、金属パターン非形成部が開口部)を通して紫外線露光させ、画像を焼き付け、現像を行った。次に、実施例2と同様の方法で電気メッキを20分間行い、その後ドライフィルムを除去し、塩化第二銅エッチング液を用いてレジストが除去された部分の金属膜(銅薄膜)を除去した。
形成された導電性パターンを以下のように評価した。
(パターン形成性)
光学顕微鏡(ニコン製、OPTI PHOTO−2)を用いて細線幅を測定したところ、実施例8では55μm、実施例9では40μmの金属パターンが形成されていることが確認された。
[比較例1]
(比較重合性ポリマーの合成)
前記ii)の合成方法を用い、下記のようにして、比較重合性ポリマーを合成した。
(モノマーBの合成)
500mlの三口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアククリレート55.6gを入れ、アセトン250mlを加え、撹拌した。ピリジン38.2g、p−メトキシフェノール0.1gを添加した後に、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、2−ブロモイソブタン酸ブロミド112.5gを滴下ロートにて3時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに3時間撹拌した。反応混合液を水750mlに投入し、1時間撹拌した。水混合液を分液ロートを用いて、酢酸エチル500mlで3回抽出した。有機層を1M塩酸500ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500ml、飽和食塩水500mlで順次洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム100gを入れ、脱水乾燥した後、濾過した。溶媒を減圧留去し、下記構造のモノマーBを86gを得た。
Figure 2007262542
次に、1000ml三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド80gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。モノマーB11.4g、メタクリル酸33.28g、V−601(和光純薬製)0.99gのN,N−ジメチルアセトアミド40g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記、反応液に4−ヒドロキシTEMPO 0.82gを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド800gを加え、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、1、8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)180.8gを滴下ロート用いて、滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに8時間撹拌した。反応液に水49gにメタンスルホン酸114mlを溶解させた液を添加し、4時間攪拌した。攪拌の後、水再沈を行い比較ポリマー1を濾取、水で洗浄、乾燥し16g得た。
この比較重合性ポリマーをpH=12の水溶液中で60℃、2時間反応させたところ、ポリマーの分解がNMR解析で認められたため、ここで用いられるポリマーはpH=12以上で加水分解するものであることが確認された。
<金属膜の形成>
以下の塗布液を使用した他は、実施例6と同様の手法で無電解メッキ工程を実施し金属膜積層体H−1を形成した。その後、実施例7と同様の手法で電気メッキ工程を実施して金属膜積層体H−2を形成した。
(グラフトポリマー前駆体層塗布液組成物2)
・比較重合性ポリマー 0.25g
・蒸留水 3.0g
<評価>
(断面形状観察)
金属膜積層体6と金属膜積層体H−1とを、ミクロトーム(ライカ製)を用いてダイヤモンドカッター(製品名:スミナイフ)にてカットし、きれいなメッキ断面を有する試料を調整した。得られた試料をSEMで観察したところ、いずれも、ポリマー層中の金属膜との界面近傍に、無電解メッキ触媒、無電解メッキにより析出した金属の1種以上からなると考えられる微粒子が高密度で存在することが確認された。
(密着性)
まず初めに実施例1〜12、比較例1で得られた金属膜を60℃1時間→−10℃1時間のヒートサイクルを2回繰返し、以下の試験を行った。
(1.ポリマーパターンにより形成された金属パターンの密着性)
実施例2で得られた金属パターン材料2については、幅1cmのパターン部の端を剥がし、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行った(実験器:テンシロン剥離機、(株)オリエンテック製)。
実施例1、3〜5で得られた金属パターン材料1、3〜5については、幅1cmのパターン部を実施例2と同条件で電気メッキした後に、パターン部の端を剥がし、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行った(実験器:テンシロン剥離機、(株)オリエンテック製)。
(2.金属膜の密着性)
基板全面に金属膜を形成した実施例6乃至10については、得られた金属膜を、幅1cmにカッターで切れ込みを形成し、該当箇所を一部剥離させ、JIS C6481に基づき90度剥離実験を行った。
(3.金属膜をパターニングして得られた金属パターンの密着性)
実施例11及び12で得られた金属パターン材料については、幅1cmのパターン部の端を剥がし、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行った(実験器:テンシロン剥離機、(株)オリエンテック製)。
これらの結果を下記表1に示す。また、金属パターンについては、形成されたラインの幅を併記する。
Figure 2007262542
上記表1の結果によれば、実施例1〜12で得られた各金属膜、金属パターンは、そのいずれも密着力が良好であった。これは、基板との金属膜との界面が、グラフトポリマーからなるポリマー層とメッキ及びメッキ触媒層(無機成分)とのハイブリット状態を形成しており、更に、メッキ浴中でグラフトポリマーがアルカリによる損傷を受けにくく、ポリマーの強度、金属材料と密着性に優れるためと推測される。また、本発明によれば、密着性に優れ、且つ、線幅25〜55μmという高精細の金属パターンを得られることがわかった。

Claims (21)

  1. メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを、基板に直接化学結合させてポリマー層を形成するポリマー層形成工程と、該ポリマー層上にメッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒等付与工程と、該メッキ触媒またはその前駆体を付与したポリマー層にメッキを行うメッキ工程と、を有することを特徴とする金属膜形成方法。
  2. 前記メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが、分子内にエステル結合を有しないことを特徴とする請求項1に記載の金属膜形成方法。
  3. 前記メッキ工程が無電解メッキを実施する無電解メッキ工程であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属膜形成方法。
  4. 前記無電解メッキ工程の後に、さらに電気メッキを行う電気メッキ工程を有することを特徴とする請求項3に記載の金属膜形成方法。
  5. 前記基板表面の凹凸が500nm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金属膜形成方法。
  6. 前記ポリマー層形成工程が、(1)基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(2)該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上でも加水分解しないポリマーを直接化学結合させる工程と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の金属膜形成方法。
  7. 前記(2)該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上でも加水分解しないポリマーを直接化学結合させる工程が、該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを接触させた後、エネルギーを付与することにより、前記基板表面に当該ポリマーを直接化学結合させる工程であることを特徴とする請求項6に記載の金属膜形成方法。
  8. 前記メッキ工程の後に、さらに乾燥工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の金属膜形成方法。
  9. 表面の凹凸が500nm以下の基板と、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが前記基板上に直接化学結合してなるポリマー層と、を有することを特徴とする金属膜形成用基板。
  10. 表面の凹凸が500nm以下の基板と、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが前記基板上に直接化学結合してなるポリマー層と、を有し、該ポリマー層の内部、及び、上部にメッキ層を有することを特徴とする金属膜積層体。
  11. メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上でも加水分解しないポリマーを基板にパターン状に直接化学結合させるポリマーパターン形成工程と、該ポリマーパターン上にメッキ触媒またはその前駆体を付与する触媒等付与工程と、該メッキ触媒またはその前駆体を付与したポリマーパターンにメッキを行うメッキ工程と、を有することを特徴とする金属パターン形成方法。
  12. 前記メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上でも加水分解しないポリマーが分子内にエステル結合を有しないことを特徴とする請求項11に記載の金属パターン形成方法。
  13. 前記メッキ工程が無電解メッキを実施する無電解メッキ工程であることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の金属パターン形成方法。
  14. 前記無電解メッキ工程の後に、さらに、電気メッキを行う電気メッキ工程を有することを特徴とする請求項13に記載の金属パターン形成方法。
  15. 前記基板の表面の凹凸が500nm以下であることを特徴とする請求項11乃至請求項4のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
  16. 前記ポリマーパターン形成工程が、(i)基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(ii)該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーをパターン状に直接化学結合させる工程と、を有することを特徴とする請求項11乃至請求項15のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
  17. 前記(ii)重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーをパターン状に直接化学結合させる工程が、該重合開始層上に、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーを接触させた後、パターン状にエネルギーを付与することにより、前記基板表面に当該ポリマーをパターン状に直接化学結合させる工程であることを特徴とする請求項16に記載の金属パターン形成方法。
  18. 前記メッキ工程の後に、さらに、乾燥工程を有することを特徴とする請求項11乃至請求項17のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
  19. 表面の凹凸が500nm以下の基板と、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが、該基板上にパターン状に直接化学結合してなるポリマーパターンと、を有することを特徴とする金属パターン形成用基板。
  20. 表面の凹凸が500nm以下の基板と、メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーが、前記基板上にパターン状に直接化学結合してなるポリマーパターンと、を有し、該ポリマーパターンの内部、及び、上部にメッキ層を有することを特徴とする金属パターン材料。
  21. メッキ触媒またはその前駆体と相互作用する官能基及び重合性基を有し、pH=12以上で加水分解しないポリマーと、該ポリマーを溶解しうる溶剤とを含有するポリマー前駆体層形成用塗布液組成物。
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