JP2007258031A - 高分子電解質膜−電極複合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高分子電解質膜-電極複合体の製造方法であって、工業的規模において燃料電池用多孔質電極層(触媒担体)を形成し得る方法を提供する。
【解決手段】炭素材料を、塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中に分散させ、この溶媒中で高分子電解質膜を陽極として電圧を印加し、陽極材表面上に炭素材料薄膜を形成せしめて、高分子電解質膜-電極複合体を製造する。被被覆材を陽極として電圧を印加し、陽極材の表面上に炭素材料を付着させるに際して、炭素材料を塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中に分散させることにより、炭素材料の溶媒中における分散性を向上させて、吸着性が良好な、換言すれば吸着量を増加させた炭素材料薄膜の形成が実現可能となる。
【解決手段】炭素材料を、塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中に分散させ、この溶媒中で高分子電解質膜を陽極として電圧を印加し、陽極材表面上に炭素材料薄膜を形成せしめて、高分子電解質膜-電極複合体を製造する。被被覆材を陽極として電圧を印加し、陽極材の表面上に炭素材料を付着させるに際して、炭素材料を塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中に分散させることにより、炭素材料の溶媒中における分散性を向上させて、吸着性が良好な、換言すれば吸着量を増加させた炭素材料薄膜の形成が実現可能となる。
Description
本発明は、高分子電解質膜-電極複合体(MEA)の製造方法に関する。さらに詳しくは、燃料電池の電極触媒層などとして有効に用いられる炭素材料薄膜電極を形成させた高分子電解質膜-電極複合体の製造方法に関する。
燃料電池の電極触媒層は、燃料電池の反応の起こる要の部分であり、炭素材料に保持した触媒、高分子電解質膜の溶液および結合剤とから形成され、それを形成させる方法として、高分子電解質膜に電極触媒層を直接塗布する方法が知られている。より具体的には、電極触媒層を形成する触媒担持カーボンを固体高分子電解質膜と同質の高分子樹脂溶液中に分散させたペーストを用いて薄膜を形成し、水素イオンを選択的に透過する固体高分子電解質膜に密着された電極触媒層を形成させる方法が提案されている。この方法では、固体高分子電解質膜と同質の高分子樹脂溶液がペースト分散液調製に用いられ、また触媒担持カーボンをその表面の芳香族環に結合した塩基性官能基が高分子樹脂溶液において陽イオンに変遷した状態で分散させることが必要とされている。
特許第3736545公報
また、燃料電池用のセルは、高分子電解質膜の両側の面に燃料極と空気極とを熱圧縮して、膜・電極接合体(MEA)として一般に作製されている。実際には、電極触媒層をシート状に膜成形し、同時にこれを高分子電解質膜にホットプレスする方法も一般的に行われているが、ホットプレスやヒートロールによる電極触媒層の膜成形時に適用される加熱および加圧により、高分子電解質膜に塑性変形が生ずるのを避けることができない。
一方、ホットプレスを行わずに触媒層を形成させる方法としては、電気泳動法を用いる方法があるが、この方法では電極間にセルを配して電気泳動を行うため、大量生産には不向きである。
J. of Electrochem. Soc. 151巻 (10) A 1733〜7頁 (2004)
J. of Electrochem. Soc. 151巻 (10) A 1733〜7頁 (2004)
本発明の目的は、高分子電解質膜-電極複合体(MEA)の製造方法であって、工業的規模において燃料電池用多孔質電極層(触媒担体)を形成し得る方法を提供することにある。
かかる本発明の目的は、炭素材料を、塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中に分散させ、この溶媒中で高分子電解質膜を陽極として電圧を印加し、陽極材表面上に炭素材料薄膜を形成せしめて、高分子電解質膜-電極複合体を製造する方法によって達成される。
被被覆材を陽極として電圧を印加し、陽極材の表面上に炭素材料を付着させるに際して、炭素材料を塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中に分散させることにより、炭素材料の溶媒中における分散性を向上させて、吸着性が良好な、換言すれば吸着量を増加させた炭素材料薄膜の形成が実現可能となる。このように、塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒に炭素材料、特にカーボンナノチューブを分散させ、この分散液中に電場をかけることにより、高分子電解質表面にカーボンナノチューブを吸着させることができる。
本発明方法によれば、高分子電解質膜にダメージを与えることなく触媒層を形成することができる。高分子電解質膜上に被覆されたカーボンナノチューブ等の炭素材料は導電性を有しており、またナノサイズの空間を有しているため、触媒層の担体として好適に使用し得る。さらに、高分子電解質膜を陽極として用いることができるので、連続生産が可能である。
炭素材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、黒鉛、カーボンファイバー、フラーレンなどが挙げられるが、好ましくは、優れた電気伝導性と熱伝導性の観点からカーボンナノチューブが、電気特性および嵩密度の観点からカーボンブラックまたは黒鉛が用いられる。これらは、溶液分散するものであれば特に制限なく使用することができ、カーボンナノチューブとしては単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブなどが、カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが、また黒鉛としては、人造黒鉛、天然黒鉛のいずれかが用いられる。
塩基性高分子型分散剤としては、分子量が数千〜数万であり、エステルを有する構造のものであれば特に制限なく使用することができ、脂肪酸エステルなど、好ましくはポリエステル酸アマイドアミン塩が用いられる。実際には、市販品、例えば楠本化成製品ディスパロンDA-703-50、DA-705、DA-725、DA-234等が用いられる。この他、ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩である同社製品ディスパロンDA-325等も用いられる。これらは、1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%の割合で、炭化水素系溶媒中に添加されて用いられる。この使用割合がこれ以下では、本発明の目的が達成されず、一方これ以上の割合で用いられると、形成した薄膜中に塩基性高分子型分散剤が多量に付着することとなり、好ましくない。
塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素溶媒中に分散させた炭素材料、好ましくはカーボンナノチューブの平均粒子径(湿式でのレーザー散乱法による50%粒子径)は、100〜1000nm、好ましくは500〜800nmに設定されることが好ましい。このような平均粒子径への調整は、ボールミルなどを用いても行われるが、好ましくは超音波ホモジナイザを用いて行われる。超音波ホモジナイザの代りに、超音波洗浄器を用いると、分散液中のカーボンナノチューブ凝集塊の平均粒子径は1000nm以上となり、またポット型ボールミルを用いると、カーボンナノチューブの破断などがみられることもある。
また、塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素溶媒中に分散させた炭素材料、特にカーボンナノチューブの平均粒子径を100〜1000nmの範囲に設定した場合には、上記カーボンシートを用いた場合と同様に、吸着量および吸着層中のカーボンナノチューブ重量割合をいずれも増加させることができる。このことは、吸着中に同時に吸着される塩基性高分子型分散剤の重量割合が減少し、その結果としてカーボンナノチューブの重量割合が増加することを意味し、カーボンナノチューブ吸着層の機能として求められる導電性が十分に得られ、電気抵抗を減少させるという効果を奏する。
炭化水素系溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒などが挙げられるが、好ましくはキシレンまたはトルエンが用いられる。これらの炭化水素溶媒は、炭素材料に対して一般に約100〜1000倍量程度用いられる。
被被覆材となる陽極としては、高分子電解質膜が用いられる。高分子電解質膜は、水素イオンに対するイオン交換基としてスルホン酸基(-SO3H)やカルボン酸基(-COOH)の如き酸性基を有し、水中で導電性を有する高分子膜であって、一般にはパーフルオロ系主鎖にスルホン酸基を置換したポリマーが用いられる。その膜厚は、約25〜500μm、好ましくは約50〜300μmのものが使用される。実際には、市販品であるデュポン社製品Nafion等が用いられる。また、薄膜の膜強度を補強するために、PTFE繊維やPTFE多孔質膜で補強したものなども用いられる。
炭素材料薄膜の形成は、炭素材料を塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中で、上記陽極に電圧を印加することにより陽極材上に付着(吸着)することにより行われる。ここで、印加される電圧は、1〜1000V、好ましくは5〜500Vであり、印加電圧がこれより低い場合には、炭素材料の付着量が少なくなってしまい、一方これより大きい場合には、炭素材料の付着膜が不均一となり、かつ電力効率が悪化するため好ましくない。また、印加時間は必要とする製膜量により異なるが、例えば1〜3000秒、好ましくは30〜1000秒あるいは周期的に印加することも可能である。このとき、炭素材料の沈降を防ぐべく、分散溶液を攪拌しながら製膜することも行われる。また、製膜時にマスキングを行うことで、導電性が必要な部分にのみ炭素材料を付着させることができる。
表面に炭素材料薄膜が製膜された陽極材は、分散溶液中から取り出した後、表面に製膜された炭素材料以外を取除くように洗浄され、乾燥される。
以上の工程を繰り返し行うことで、陽極材表面上に製膜される炭素材料の膜厚を厚くしていくことができる。すなわち、上記工程の繰り返し回数を設定することによって、製膜される炭素材料の膜厚を所望の厚み、例えば約1〜50μm程度の厚みに制御することが可能となる。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例
キシレン90mlに、ポリエステル酸アマイドアミン塩の50%キシレン溶液(楠本化成製品ディスパロンDA-703-50)10mlを加え、この溶液に気相成長法多層カーボンナノチューブ(日機装製品;繊維径10〜30nm、繊維長1〜100μm)500mgを添加し、超音波ホモジナイザ(BRANSON製 SONIFIER450)による出力300Wでの照射を12時間行い、多層カーボンナノチューブ分散液を得た。この分散液中の多層カーボンナノチューブの湿式でのレーザー散乱による平均粒子径は600nmであった。
キシレン90mlに、ポリエステル酸アマイドアミン塩の50%キシレン溶液(楠本化成製品ディスパロンDA-703-50)10mlを加え、この溶液に気相成長法多層カーボンナノチューブ(日機装製品;繊維径10〜30nm、繊維長1〜100μm)500mgを添加し、超音波ホモジナイザ(BRANSON製 SONIFIER450)による出力300Wでの照射を12時間行い、多層カーボンナノチューブ分散液を得た。この分散液中の多層カーボンナノチューブの湿式でのレーザー散乱による平均粒子径は600nmであった。
次に、陽極として高分子電解質膜(デュポン社製品Nafion 117;膜厚183μm)、陰極としてSUS304を用い、ミニクランプを用いて電極間が2cmとなるように設置し、200Vの電圧を5分間印加することにより、陽極材への製膜処理(製膜面積25cm2)を行った。製膜後、高分子電解質膜を室温条件下で乾燥させた。この高分子電解質膜を折り曲げてもカーボンナノチューブ薄膜の剥離は観測されず、カーボンナノチューブのファンデルワールス力と絡まりにより高分子電解質膜に吸着しているものと考えられる。
作製したカーボンナノチューブ薄膜の走査型電子顕微鏡による観察を行った結果、吸着層の膜厚は約20μmで、またカーボンナノチューブ薄膜の体積固有抵抗を4端子法で測定すると、3×101Ω・cmであった。
Claims (9)
- 炭素材料を、塩基性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中に分散させ、この溶媒中で高分子電解質膜を陽極として電圧を印加し、陽極材表面上に炭素材料薄膜を形成せしめることを特徴とする高分子電解質膜-電極複合体の製造方法。
- 炭素材料がカーボンナノチューブ、カーボンブラックまたは黒鉛である請求項1記載の高分子電解質膜-電極複合体の製造方法。
- 塩基性高分子型分散剤が、ポリエステル酸アマイドアミン塩である請求項1記載の高分子電解質膜-電極複合体の製造方法。
- 炭化水素系溶媒が芳香族炭化水素溶媒である請求項1記載の高分子電解質膜-電極複合体の製造方法。
- 塩素性高分子型分散剤を添加した炭化水素系溶媒中に分散させた炭素材料が100〜1000nmの平均粒子径(湿式でのレーザー散乱法による50%粒子径)を有する請求項1記載の高分子電解質膜-電極複合体の製造方法。
- 炭素材料がカーボンナノチューブである請求項5記載の高分子電解質膜-電極複合体の製造方法。
- 炭素材料の平均粒子径を100〜1000nmに調整することが超音波ホモジナイザを用いて行われる請求項5または6記載の高分子電解質膜-電極複合体の製造方法。
- 請求項1乃至7記載のいずれかの方法により製造された高分子電解質膜-炭素材料薄膜電極複合体。
- 炭素材料薄膜電極が燃料電池用電極触媒層として用いられる請求項8記載の複合体。
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JP2009211869A (ja) * | 2008-03-03 | 2009-09-17 | Dainippon Printing Co Ltd | 固体高分子形燃料電池用触媒層及びその製造方法 |
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