JP2007247726A - 動圧流体軸受装置、スピンドルモータ及びこのスピンドルモータを備えた記録ディスク駆動装置 - Google Patents

動圧流体軸受装置、スピンドルモータ及びこのスピンドルモータを備えた記録ディスク駆動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】
起動停止時の摩擦損失と磨耗が小さく、安価で、安定性が高い動圧流体軸受装置装置を提供する。
【解決手段】
スリーブ2と、スリーブ2に対して相対的に回転自在であるシャフト1と、シャフト1とスリーブ2との間の間隙に充填された潤滑流体5とを備え、スリーブ2の内周面2aおよびシャフト1の外周面のいずれか一方には、対向する周面との間隔が大きい大間隙部10と対向する周面との間隔が小さい小間隙部12と分離溝18が形成されており、大間隙部10と分離溝18を合わせた凹部の周方向角度(θ)と小間隙部の周方向角度(θ)の比(θ/θ)が2.3から4.0の範囲に設定される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特に小型、薄型の動圧流体軸受装置、その動圧流体軸受装置を用いて構成されるスピンドルモータおよびそのスピンドルモータを用いて構成される記録ディスク駆動装置に関する。
ハードディスクをはじめとする記録ディスク駆動装置は、近年なお一層の小型化が図られ、従来の用途であったコンピュータ機器のみならず、携帯用視聴覚機器や携帯電話など、持ち運びを前提とした機器に取り付けられるようになり、可搬性、使用方向自在性、耐衝撃性、繰り返し起動停止、迅速立上、あるいは低消費電力などのユーザの使いやすさに直結した性能が強く要求されるようになってきた。ディスク駆動装置を小型化するということは、その記録ディスクを回転させるスピンドルモータも小型化、薄型化せねばならないということである。そこで、小さいスペースの中でさらに優れた性能を達成できるように、スピンドルモータでは、静音性、耐衝撃性、起動繰り返し寿命、軸受損失、信頼性等にすぐれた、小型で低コストな動圧流体軸受装置が求められている。
動圧流体軸受装置としては、回転方向に対して傾斜した魚の骨のような、放射状に相互に向かい合ったヘリングボーン溝を軸受面に設けた、動圧軸受が通常用いられている(特許文献1)。この軸受型式の動圧発生原理は、潤滑流体の有する粘性と、軸と受の相対速度差とで発生する粘性力により傾斜した溝に沿って潤滑流体を流動せしめ、相互に向かい合った溝に沿って移動した潤滑流体によって加圧するというメカニズムによるものである。したがって、その動圧発生原理上、相対速度差が小さい低速回転時には、潤滑流体を流動させる力が小さいため、正常な潤滑界面を形成しにくく軸受保持能力が低い。このため起動停止時には、摩擦損失が大きく、磨耗しやすいという弱点があり、多数回の起動停止によって寿命が短くなる可能性がある。また、微細で高精度なヘリングボーン溝を周方向・軸方向に多数設けることは、コストアップの要因であると同時に、小型・薄型のラジアル動圧流体軸受装置においては、加工面や検査面からも限界がある。
他の動圧流体軸受装置としては、ラジアル軸受の軸受間隙を周方向で変えることによって動圧効果を生じさせる、ステップ軸受、多円弧軸受、テーパ軸受、あるいはテーパフラット軸受などがある(特許文献2)。例えば、スリーブの内周面(またはシャフトの外周面)に大間隙部と小間隙部とが交互に配設されたものが知られている。大間隙部では、スリーブの内周面とシャフトの外周面との間隔は大きく、小間隙部では、スリーブの内周面とシャフトの外周面との間隔は小さくなっている。このような動圧流体軸受装置においてスリーブに対してシャフトを所定方向に回転させると、大間隙部領域に存在する潤滑流体は粘性力によって流動して小間隙部領域に流れ込み、これによって小間隙部領域における潤滑流体の流体圧力が高められ、圧力の高められた潤滑流体を介してシャフトが回転自在に支持されるというメカニズムである。これらの軸受型式は形状がシンプルなので、加工性、量産性に優れ低コストであるとの利点があり、スピンドルモータ用の小型・薄型のラジアル動圧流体軸受装置としての適用が研究されているが、まだ実用化には至っていない。
特開2004−56963号公報 特開平10−267029号公報 小野京右、朱 加生:磁気ディスクスピンドル用各種油軸受に関する特性比較研究;日本機械学会論文集(C編)、64、3155〜3162(1998)
上記のテーパ軸受、テーパフラット軸受、多円弧軸受あるいはステップ軸受などの方式においては、潤滑流体が小間隙部領域で圧力を高められた後、大間隙部領域に流動する際に急激に解放されるため圧力が低下し、特に高速回転時には負圧力が発生しやすいという、動圧発生機構上の弱点を有する。負圧力領域が発生すると、潤滑流体の油膜破断が生じ易くなり、軸受装置のラジアル剛性が低下して非再現性ランアウト(NRRO)の増加や、耐衝撃性、耐振動性特性の低下に繋がりやすい。
このような高速回転時における負圧発生を防止する方法として、小間隙部領域と大間隙部領域の境界部位に潤滑流体を流入案内する分離溝を回転軸方向に設ける方法があり、その最適寸法緒言が提示されている(特許文献2)。また、これら各種軸受の高速回転時における特性について研究が行われており、「半径剛性はヘリングボーン型軸受が、半径方向剛性・トルク比及び安定性はテーパフラット軸受が最も良い」という数値解析結果が論文発表されている(非特許文献1)。
しかし、これらは動圧効果によって十分な潤滑膜が形成された高速回転時における、略軸受中心で回転している条件での性能特性の比較や軸受寸法の最適化であって、動圧軸受共通の弱点である起動停止などの低速回転時における、しかも、略軸受壁面に接触した条件での摩擦、磨耗特性や、それをも考慮した最適仕様については明らかになっていない。テーパ軸受、テーパフラット軸受、多円弧軸受あるいはステップ軸受などは、大間隙部と小間隙部が不連続に繰り返し周方向に配置されているので、低速回転時の軸受壁面近傍における特性は、周方向位置によって大きく変わる可能性があり、特に水平状態で使用する場合には、大間隙部分で荷重を支持した状態で起動すると特性が悪化することが懸念され、取り付け方向自在性や起動停止繰り返し性を要求されるスピンドルモータ用の軸受としては、これらも考慮した軸受の選定と最適化が重要である。
本発明は、上述した現状の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、起動停止時の摩擦トルクと磨耗が小さく、高速回転時にも安定な、安価で小型の動圧流体軸受装置、スピンドルモータ及びこのスピンドルモータを備えた記録ディスク駆動装置を提供することである。
請求項1に記載の発明は、略円柱状のシャフトと、該シャフトが挿通される略円筒状のスリーブと、該シャフトと該スリーブとの間の間隙に充填された潤滑流体とを備え、前記シャフトは、前記スリーブによって前記スリーブ対して相対的に回転軸回りに回転自在に保持され、前記シャフトの外周面および前記スリーブの内周面の少なくともいずれか一方には、対向する周面との間隔が大きい大間隙部と、対向する周面との間隔が小さい小間隙部が周方向に交互に複数個所形成され、前記小間隙部は、前記対向する周面との間隔が周方向一様になるように形成され、前記大間隙部と前記小間隙部とは、階段状またはテーパ状に接続され、前記スリーブに対する前記シャフトの相対的回転方向に見た前記小間隙部の下流端から前記大間隙部の上流端に至る境界部位に、該境界部位に前記潤滑流体を案内して負圧発生を抑制する分離溝が前記回転軸の軸線方向に形成されている動圧流体軸受装置であって、
前記大間隙部の周方向角度と前記分離溝の周方向角度(θag)を合わせた凹部周方向角度(θ)と前記小間隙部の周方向角度(θ)の比(θ/θ)が、2.3から4.0の範囲にある。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の動圧流体軸受装置であって、前記大間隙部は、前記スリーブに対する前記シャフトの相対的回転方向に見た前記大間隙部の上流端から下流端に向けて、前記対向する周面に近接する方向にテーパ状に延びている。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の動圧流体軸受装置であって、前記大間隙部と前記小間隙部および前記分離溝は周方向に各3個形成され、前記凹部周方向角度(θ)と前記小間隙部の周方向角度(θ)の比(θ/θ)が2.3から3.0の範囲にある。
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の動圧流体軸受装置であって、前記大間隙部と前記小間隙部および前記分離溝は周方向に各4個もしくは各5個形成され、前記凹部周方向角度(θ)と前記小間隙部の周方向角度(θ)の比(θ/θ)が3.4から4.0の範囲にある。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の動圧流体軸受装置であって、前記凹部周方向角度(θ)と前記小間隙部の周方向角度(θ)を合わせた周方向ピッチ角度(2θ)に対する前記分離溝の周方向角度(θag)の比(θag/2θ)が0.1以下である。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の動圧流体軸受装置であって、前記分離溝の深さは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、
前記小間隙部と前記分離溝とが形成する境界壁の角部は面取りされ、該面取りアールの大きさ(ragc)が0.03mm以上で0.08mm以下である。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の動圧流体軸受装置であって、前記スリーブが焼結多孔質金属の型成型体から構成されている。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の動圧流体軸受装置であって、前記大間隙部と前記小間隙部および前記分離溝が前記スリーブに形成されている。
請求項9に記載の発明は、環状溝部を挟んで前記回転軸方向に離間した上下2箇所の位置に、上部側はn組の、下部側はm組の前記大間隙部と前記小間隙部および前記分離溝で構成された組が周方向に繰り返し配置され、各々の前記分離溝の一方の端が前記環状溝と連通した請求項1乃至8のいずれかに記載された動圧流体軸受装置であって、nとmが等しくかつ前記組の配置位相が上部側と下部側において前記周方向ピッチ角度(2θ)の半分(θ)だけずれているか、もしくは、nとmが不等でかつ1以外の共通約数を持たない数である。
請求項10に記載の発明は、電動式のスピンドルモータであって、回転軸の周囲に配置された界磁用磁石を有するロータ部と、前記界磁用磁石との間で前記回転軸を中心とするトルクを発生する電機子を有するとともに前記ロータ部を前記回転軸を中心に回転可能に支持するステータ部と、を備え、前記ロータ部および前記ステータ部の一方が、請求項1乃至9のいずれかに記載の動圧流体軸受装置を構成するスリーブを取り付けて備え、前記ロータ部および前記ステータ部の他方が、前記スリーブに挿入されるシャフトを備えている。
請求項11に記載の発明は、記録ディスク駆動装置であって、ハウジング内に、記録ディスクにデータを読み書きするヘッドと、該ヘッドをディスク面上で移動させるアクチュエータと、請求項10に記載されたスピンドルモータとを備える。
本発明の請求項1に記載された動圧流体軸受装置は、ラジアル動圧流体軸受装置を構成するシャフト外周面とスリーブ内周面との少なくとも一方の面に、小間隙部と大間隙部と分離溝が交互に複数個設けられている。小間隙部におけるシャフトとの隙間は一様で小さく、流出端での圧力の低下を防ぎ隙間内の発生圧力を高く保つことができるので、大きなラジアル剛性を得ることができる。また、圧力が急変する境界部に設けた負圧防止用の分離溝を通して周囲から境界部位に潤滑流体が流入可能な構成になっているので、境界部位に負圧力が発生しようとすると、周囲の潤滑流体が分離溝を通して境界部位に流入するようになり、これによって負圧力の発生が抑えられ、安定な高速回転が可能となる。さらに、大間隙部と分離溝で形成される凹部に対する小間隙部の周方向角度比を2.3〜4.0に設定することによって、取り付け位相角度による起動停止時の特性差、即ち摩擦損失及び磨耗量の変動を小さく抑えることができる。
本発明の請求項2に記載された動圧流体軸受装置は、請求項1の動圧流体軸受装置において大間隙部をテーパ形状にしたものであり、周方向の軸受間隙がテーパからフラットと漸次狭小変化する、所謂テーパ・フラット軸受である。即ち、相対的回転方向に見て大間隙部の上流端から下流端に向けて軸受隙間が小さくなる方向にテーパ状に延びており、大間隙部に存在する潤滑流体は、回転によってテーパ面に沿ってスムースに小間隙部に流動し、これによって小間隙部領域における潤滑流体の圧力が高められ、その結果、動圧流体軸受装置のラジアル剛性が高くなる。流動特性がスムースで効率が高いので、高速回転時において低損失で大きなラジアル剛性を得ることができる。
本発明の請求項3に記載された動圧流体軸受装置は、請求項1または2の動圧流体軸受装置において小間隙部と大間隙部と分離溝が各3個設置されたものであり、大間隙部と分離溝で形成される凹部に対する小間隙部の周方向角度比を、さらに好ましい2.3〜3.0に設定することによって、取り付け位相角度による起動停止時の特性差、即ち摩擦損失及び磨耗量の差異をさらに減少させ、摩擦損失及び磨耗量の最大値を小さくできる。
本発明の請求項4に記載された動圧流体軸受装置は、請求項1または2の動圧流体軸受装置において小間隙部と大間隙部と分離溝を各4個もしくは各5個設置されたものであり、大間隙部と分離溝の凹部に対する小間隙部の周方向角度比を、さらに好ましい3.4〜4.0に設定することによって、取り付け位相角度による起動停止時の特性差、即ち摩擦損失及び磨耗量の差異をさらに減少させ、摩擦損失及び磨耗量の最大値を小さくできる。
本発明の請求項5に記載された動圧流体軸受装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の動圧流体軸受装置において周方向ピッチ角度に対する前記分離溝の周方向角度を0.1以下に設定することによって、充分なラジアル剛性を確保しながら分離溝を形成することが可能であり、負圧の発生をさらに抑制し、高速回転安定性を向上することができる。
本発明の請求項6に記載された動圧流体軸受装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の動圧流体軸受装置において、前記分離溝の深さは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上とし、小間隙部と分離溝との境界壁角部を0.03mm以上で0.08mm以下のアール面取りをすることによって、さらに潤滑流体における負圧の発生を抑制して潤滑膜の状態は安定するので、高速回転安定性に対する製品の信頼性を向上することができる。
本発明の請求項7に記載された動圧流体軸受装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の動圧流体軸受装置において、スリーブを焼結多孔質金属で型成型するものであり、燒結多孔質金属は量産性に優れるので、コストダウンが可能である。さらに、潤滑流体として潤滑油を用いる場合には、多孔質部材に含油することができるので、耐磨耗性、耐焼き付き性などの面でも非常に有効である。
本発明の請求項8に記載された動圧流体軸受装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載の動圧流体軸受装置であって、大間隙部と小間隙部および分離溝がスリーブに形成されたものであり、燒結多孔質金属などの柔らかい材料で製造すればコイニングなどの加工により凹部を容易に形成することができるのでコストダウンが可能である。
本発明の請求項9に記載された動圧流体軸受装置は、請求項1乃至8のいずれかに記載された動圧流体軸受装置が環状溝部を挟んで上下2箇所に設置されている。大間隙部と小間隙部と分離溝で構成された組の数が上下部で同じ場合には、組の配置位相を周方向ピッチ角度の半分(θ)だけずらして配置され、組の数が上下部で異なる場合には、1以外の共通約数を持たない数に設定されているので、周方向の特性は更に均一化できる。また、軸受間距離が長いのでモーメント剛性が大きくなり、信頼性が向上する。
本発明の請求項10に記載された電動式のスピンドルモータは、請求項1乃至9のいずれかに記載の動圧流体軸受装置を備えたスピンドルモータであり、上記説明した本発明の動圧流体軸受装置の効果を発揮できるので、起動停止等の低速回転時の摩擦損失や磨耗量は小さく、安定高速回転性能が得られるので信頼性の向上が可能である。
本発明の請求項11に記載された記録ディスク駆動装置は、請求項10に記載されたスピンドルモータを備えているので、上記説明した本発明の動圧流体軸受装置、スピンドルモータの効果を発揮でき、信頼性の向上が可能である。
本発明の最良の実施の形態について図を参照しながら説明する。なお、本実施の形態の説明における上下左右などの方向に関する表現はいずれも、特別な記載がある場合を除いて図面上の方向を示している。したがって、実際の実施の方向を制限するものではない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明を実施した第1の実施形態にかかわる動圧流体軸受装置6及び動圧流体軸受装置6を備えるスピンドルモータの断面図であるが、スピンドルモータの回転駆動部分を構成する部材は省略されている。
本発明の動圧流体軸受装置6は、略円柱状のシャフト1と、シャフト1が挿通される略円筒状のスリーブ2と、シャフト1とスリーブ2との間に充填された潤滑流体5とで構成されている。スリーブ2の外径側側面は略カップ状の軸受ハウジング4の内径側側面に取り付けられ、シャフト1の上端部は径方向に延設された天板部3bを有するロータハブ3に取り付けられている。それらで囲まれた空間には、潤滑流体5が満たされている。スリーブ2は焼結多孔質金属製の型成型体である。軸受ハウジング4は、アルミニウム、ステンレス、真鍮、樹脂などで形成される。シャフト1はプレス又は切削によりロータハブ3と一体に形成される。
なお、スリーブ2と軸受ハウジング4は一体に形成されてもよい。例えば、アルミニウムやステンレス、真鍮などで一体に形成されたり、焼結多孔質体で一体に形成された後、外周面を封孔処理されてもよい。また、スリーブ2となる焼結多孔質体を樹脂でインサート成形されてもよい。
シャフト1の外周面1aとスリーブ2の内周面2aとは径方向に微少間隙を介して対向している。その径方向の微少間隙には潤滑流体5としてオイルが保持されている。また、スリーブ2の上端面及び軸受ハウジング4の上端面4aは、ロータハブ3の天板部3bの下面3aと軸方向に微少な間隙を介して対向する。その軸方向の微少な間隙には、径方向の微少間隙に保持されているのと同様のオイルが径方向微少間隙に連続して保持されている。オイルはシャフト1の下端部と軸受ハウジング4の底面との間にも連続的に保持されており、こうして軸受ハウジング4内はオイルが途切れなく満たされている。この状態をフルフィル状態という。
なお、ロータハブ3は軸受ハウジング4の最外周縁よりも外周に下垂周壁3cを有しており、この下垂周壁3cに取りつけられた抜け止め21の内周面と軸受ハウジング4の外周面との間にオイルと空気との界面17がただ一つ形成される。抜け止め21の内周面と軸受ハウジング4の外周面との間は、軸受の外部に向かうにつれて広げられるテーパ形状にされており、オイルが軸受外部に漏れ出すことが防がれている。また、軸受ハウジング4の外周面には周方向に段差が設けられ、ロータハブ3の下垂周壁3cに設けられた抜け止め21がその段差に対向して、シャフト1とスリーブ2の軸方向の一定以上の移動が規制される。
シャフト1がスリーブ2に対して回転されると、径方向微少間隙に保持されているオイルがシャフト1の外周面とスリーブ2の内周面との間で動圧を発生させ、ラジアル(径方向)の荷重支持圧が発生する。こうしてラジアル動圧流体軸受装置6が形成される。また、同様にシャフト1がスリーブ2に対して回転されると、軸方向微少間隙に保持されているオイルが軸受ハウジング4上端面と天板部3bの下面との間で動圧を発生させ、スラスト(軸方向)の荷重支持圧が発生する。こうしてスラスト動圧流体軸受装置13が形成される。
図2は、本発明に従うラジアル動圧流体軸受装置6の第1の実施形態を拡大して示す拡大断面図である。この実施形態では、図2に示すとおり、スリーブ2の内周面2aに動圧を発生させる大間隙部10と小間隙部12、及び負圧の発生を防止する分離溝18が設けられている。なお、本実施形態では動圧発生部を軸方向の一箇所にのみ設置した薄型の動圧流体軸受装置6を示しているが、軸線方向にスペースがあれば、一つのスリーブ2にその軸線方向(図2において上下方向)に間隔をおいて軸方向の二箇所に各々大間隙部10と小間隙部12、及び分離溝18で形成される動圧発生部を設けても良いし、別体のスリーブ2にそれぞれ大間隙部10と小間隙部12、及び分離溝18を設け、軸線方向(図2において上下方向)に間隔をおいて配置取り付けても良い。なお、それらにおいて、大間隙部10と小間隙部12、及び分離溝18の緒言は同一である必要はないし、異なる軸受型式を組み合わせて構成しても良い。
動圧流体軸受装置6は、スリーブ2の内周面2aにシャフト1との径方向隙間が大きい大間隙部10と、シャフト1との径方向隙間が小さい小間隙部12とが、周方向に交互に配設されている。一方、シャフト1は外形が円筒状であり、その一端から他端まで実質上同一形状に形成されている。図2における横断面図である図3aと、スリーブ2とシャフト1との間隙の展開図である図3bをも参照して説明する。図示の形態では、大間隙部10および小間隙部12は、それぞれ、周方向に3個設けられており、このように3個の大間隙部10および小間隙部12を設けることによって、構造が比較的簡単になるとともに、通常の運転状態であるスリーブ2の略中心位置で高速回転する場合の動圧流体軸受装置6のラジアル剛性は等方性となり、シャフト2を確実に支持することができる。
本実施形態においては、小間隙部12は、スリーブ2の内周面2aと同一面であり、シャフト1の外周面との隙間が一様になる円弧状の面を構成している。小間隙部12の周面とシャフト1の外周面との間隔h(図3b)は小さく、たとえば3μm程度に設定される。小間隙部12の周面は、相互に協働して円筒状の支持面を規定し、これらの支持面が潤滑流体5を介してシャフト1を回転自在に支持する。
また、大間隙部10は、スリーブ2の内周面2aから径方向に凹んだ形状をしている。大間隙部領域(大間隙部10が位置する領域であって、図3bおよび図4bにおいて領域B1で示す領域)においては、大間隙部10の周面とシャフト1の外周面との間隔h(図3b)は大きく、たとえば8μm程度に設定される。これら大間隙部10は潤滑流体5の溜部として作用する。
この動圧流体軸受装置においては、シャフト1は、スリーブ2に対して相対的に矢印14で示す方向に回転駆動される。すなわち、スリーブ2が固定される場合には、シャフト1が矢印14で示す方向に回転駆動され、シャフト1が固定される場合には、スリーブ2が矢印14で示す方向と反対方向に回転駆動される。シャフト1がこのように相対的に回転すると、スリーブ2とシャフト1との間に介在された潤滑流体5は、シャフト2のこの相対的回動によって、スリーブ2に対して矢印14で示す方向に流動する。この実施形態では、大間隙部領域B1においては、シャフト1の外周面との間隔が大きく、大間隙部10における、矢印14で示すシャフト1の回転方向に見て上流端から下流端に向けてシャフト1の外周面に近接する方向にテーパ状に延びている。したがって、大間隙部領域B1に存在する潤滑流体5は、矢印14で示す方向に小間隙部領域(小間隙部12が位置する領域であって、図3bおよび図4bにおいて領域B0で示す領域)に向けて流動し、小間隙部領域B0において潤滑流体5の圧力が高められ、圧力が高められた潤滑流体5を介してシャフト1を回転自在に支持する。
この動圧流体軸受装置においては、さらに、矢印14で示すシャフト1の相対的回転方向に見て、小間隙部12の下流端と大間隙部10の上流端との境界部位に、分離溝18(図3bおよび図4bにおいては省略している)が設けられている。分離溝18は、動圧流体軸受装置6を分割する作用を有し、これら分離溝18によって、動圧流体軸受6は周方向に3分割され、分割された各部分は1個の大間隙部10と1個の小間隙部12から構成される。分離溝18は、図2に示すとおり、動圧流体軸受装置部6を実質上貫通してスリーブ2の軸線方向(この軸線方向は、シャフト1の軸線方向と一致する)に延び、その両端は動圧流体軸受6の両側に存在する間隙(スリーブ2の内周面2aとシャフト1の外周面との間に規定される比較的大きい間隙)に連通している。
各分離溝18の周方向角度(θag)(図3a)は、周方向ピッチ角度(2θ)に対する比(θag/2θ)が0.1以下に設定され、周方向に各々3個の小間隙部12、大間隙部10、分離溝18を設けた本実施形態では、θagは12°に設定されている。この分離溝18の周方向の幅を大きくした場合には、小間隙部12の周方向の長さが小さくなり、したがって軸受装置のラジアル剛性が低下するおそれがある。一方、分離溝18の周方向の幅を小さくした場合には、分離溝18を通る潤滑流体5の流れが制限され、上記境界領域に後述する如く負圧力が発生するおそれがある。また、各分離溝18の深さhag(図3aおよび図4a)は、0.03mm以上、好ましくは0.05mm以上に設定される。分離溝18の深さを浅くした場合には、潤滑流体5が流れる間隙の断面積が小さくなって充分な潤滑流体5の流れが許容されず、上記境界領域に負圧力が発生するおそれがある。
このような動圧流体軸受装置6においては、シャフト1の相対的回転によって、潤滑流体5が小間隙部領域B0から大間隙部領域B1に流動すると、大間隙部領域B1に流動する際に、小間隙部12において高められた潤滑流体5の圧力が解放されてその圧力が著しく低下し、小間隙部12と大間隙部10との境界部位にて潤滑流体5に負圧力が発生する。このような負圧力が発生すると、潤滑流体5の油膜が破断され、膜状態が不安定となり、非再現性ランアウト、ラジアル剛性の低下の原因となる。これに対して、図示の形態の軸受装置のように分離溝18を設けた場合には、上記境界部位にて負圧力が発生すると、動圧流体軸受装置部6の両側に存在する潤滑流体5が分離溝18を通って上記境界部位に向けて流入し、かかる潤滑流体5の流入によって負圧力の発生が抑えられ、動圧流体軸受装置6は、分離溝18によって実質上3つの独立した部分軸受(1個の大間隙部10と1個の小間隙部12からなる部分軸受)に分割されたとみなされ、これら3つの独立した部分軸受によってシャフト1を回転自在に支持する。
なお、 図3a、図3bの動圧流体軸受装置6においては、大間隙部10はテーパ形状をしており、徐々に間隙がせばまり、円弧形状をした小間隙部12との接続部(境界部位)は滑らかに接続するようにテーパ状に形成されているが、図4a、図4bに示すように、大間隙部10を小間隙部12と半径が異なる円弧形状として、大間隙部10と小間隙部12との接続部(境界部位)をステップ状、換言すると段状に接続されるようにしても良い。このような形状にすることで、加工しやすくなり量産性が向上する。
また、大間隙部10、小間隙部12及び分離溝18は、各々周方向に2個、または4個以上交互に配設しても良い。各々5個を交互に配設した構造を図5に示す。
ここで、本発明の主要点である起動停止時の動圧型軸受の特性について検討する。ヘリングボーン型や多円弧型に代表される動圧流体軸受は、動圧を発生させるために周方向の軸受間隙は不連続になっており、例えば本実施例の如く、スリーブ2には不連続な凹部が形成されている。通常の使用状態では、高速回転によって生じる動圧によってシャフト1は浮上し、スリーブ2の略中心位置に保持されて回転するために、これらの凹部による周方向の軸受特性の方向性は無視される程小さいが、特に回転体を水平に置き、シャフト1の重力がスリーブ2の内壁面方向に付加した接触状態から起動する場合には、起動開始時の凹部との接触状態によって、起動特性が大きく変化するであろうことが予想できる。また、停止時の特性についても同様に、凹部の形状及び位相と重力の方向との影響を考慮する必要がある。
シャフト1とスリーブ2の接触状態を図6a、図6bに模式的に示す。これらの図では大間隙部10と小間隙部12との位置関係が理解しやすいように、大間隙部10と小間隙部12とがステップ状に接続された形状で表示してあるが、大間隙部10がテーパ形状で小間隙部12と滑らかに接続されている図3aに示す形状の場合でも同様である。図6aでは、シャフト1は小間隙部12と一箇所で点接触しており、シャフト1の重力Wと丁度逆方向に同じ力F(=W)の反力が発生し、その直角方向に摩擦力μF(μ:摩擦係数)が生じ、この摩擦力μFとシャフト1の半径rを掛け合わせた値が摩擦モーメントM(=μFr)となる。これに対し、図6bでは、シャフト1は小間隙部12の両コーナ部となる二点で接触しており、シャフト1の重力Wと角度を有する方向にF,F(Fcosθ+Fcosθ=W)の反力が発生し、各々の直角方向に摩擦力μ,μ(μ,μ:摩擦係数)が生じ、この摩擦力μ,μとシャフト1の半径rを掛け合わせた合計値が摩擦モーメントMZ12(=(μ+μ)r)となり、起動時におけるシャフト1とスリーブ2との接触状態によって、起動特性が異なることが理解できる。
なお、F+F>F=Wであるので、摩擦係数が荷重によらず一定であるならば、図6bの接触状態の場合の方が図6aの接触状態の場合よりも摩擦モーメントが大きくなること、あるいは図6bの接触状態ではシャフト1がスリーブ2の凹部に入り込み、小間隙部12の形成する円弧面を超えて偏芯している(即ち、偏芯率1以上に相当する)ので浮上しにくいことなどがわかる。ただし、実際には、摩擦係数は荷重によって変化するので、非常に複雑な変化を呈する。このように凹部と重力との方向差、及び大間隙部10、小間隙部12の幅比が、起動時におけるシャフト1の浮上特性を左右して摩擦損失、磨耗量を変化させるので、これらのパラメタの影響に特に着目する必要がある。
そこで、上述した第1の形態の動圧流体軸受装置6における大間隙部10、小間隙部12及び分離溝18の効果を、解析モデルを用いた数値解析によって確認した。起動停止時におけるシャフト1とスリーブ2との固体接触及び潤滑流体5が介在した境界潤滑状態などの過渡的な挙動も詳細に解析できるように、動圧流体軸受装置6の特性は、有限要素法によって、平均流れレイノルズ方程式と軸受表面における微細な凹凸部の弾塑性変形を考慮した圧力方程式をたてて、回転体の運動方程式と連立することによって求めた。なお、数値解析は、周方向及び軸線方向に各々数10分割して詳細に行った。
この数値解析のモデルと記号を図7に示す。分離溝18の周方向角度をθag、大間隙部10と分離溝18を合わせた凹部周方向角度をθ、小間隙部12の周方向角度をθ、これら1ピッチ分の周方向角度を2θ、その中央部とX軸のなす周方向角度をγとし、X軸方向に重力が加わっているものとした。なお、図7は大間隙部10、小大間隙部12、分離溝18を周方向に各々3個配置した図であるが、個数が異なる場合も同じ配置と定義であり、また、へリングボーン軸受の場合は、溝の傾き角度の補角がβで、その他はθを溝部の周方向角度、θを丘部の周方向角度と読み変えればよい。なお、この数値解析においては、シャフト1の直径を2.5mmと、動圧流体軸受装置部の軸線方向の幅を2.5mmと、小間隙部の周面とシャフトの外周面との間隔h(図3b)を2.5μmと、大間隙部の周面とシャフトの外周面との間隔h(図3b)を7.5μmと、また潤滑流体5の油粘性係数を0.013Pa・sとした。
起動時における特性解析結果を図8〜図12に示す。図8は起動後のシャフト1の中心位置の軌跡(ε,ε)を示す。ヘリングボーン軸受(図中の記載を含め、以下、HBと略す)が略スリーブ2の内壁面に沿って移動しながら浮上していくのに対し、小間隙部12の中央部から起動した場合(図中の記載を含め、以下、@Lと記載)には、HBと略同様の挙動を示しながら、より早くスリーブ2の壁面から離れて浮上している。なお、ε,εはシャフト1とスリーブ2との平均半径隙間で無次元化した値であり、表面粗さの分だけ少ない偏芯量である約0.85〜0.90から起動している。大間隙部10の凹部の中央から起動した場合(図中の記載を含め、以下、@Gと記載)には、略垂直に浮上するが、大きな偏芯状態から浮上するために時間がかかることがわかる。
図9は、荷重方向の角度差γに対する起動摩擦トルクm の変化を解析した結果である。本実施形態の動圧流体軸受装置6では、荷重方向によって起動摩擦トルクm が変化することがわかる。また、HBにおいても、溝と丘との関係から若干の方向性が見られるが、その値は小さい。
図10は、図9の解析結果を、1ピッチの周方向角度2θに対する凹部の周方向角度θの比θ =θ/2θで整理し、拡大して表示したものである。@Lと@Gの条件によって起動摩擦トルクm の大きさと凹部の周方向角度比θ に対する傾向が異なっているが、@Lと@Gの値が一致する(即ち方向性がなくなる)凹部の周方向角度比θ が存在することがわかる。そのθ の値は、ピッチ数によって若干異なるが、0.7〜0.8程度であることが理解できる。
図11は、起動後の低速回転域における無次元摩擦損失を解析した結果である。HBは浮上回転数が高く、摩擦損失が大きいこと、本実施形態の動圧流体軸受装置6では、低速回転で浮上し、摩擦損失が小さいことがわかる。なお、ピッチ数が3個の場合の方が、5個の場合よりも摩擦損失は小さいことがわかる。
図12は、起動時におけるスリーブ2の無次元磨耗量V を計算した結果であり、図11と同様に、凹部の周方向角度比θ に対する変化を図示している。無次元磨耗量V に対しても、@Lと@Gの条件によって大きさ及び傾向が異なるが、@Lと@Gの値が一致する(即ち方向性がなくなる)凹部の周方向角度比θ が存在すること、及びその時の無次元磨耗量V はHBの数分の一と小さいことがわかる。そのθ の値は、ピッチ数によって若干異なるが、同様に0.7〜0.8程度であることが理解できる。なお、図には表示していないが、降速時の場合も同様な傾向が得られており、起動時よりも磨耗量は大きくなることがわかっている。
以上の解析結果から、起動時の摩擦損失、磨耗量に荷重方向性がなく、どの方向にとりつけても摩擦損失、磨耗量が小さい最適な凹部の周方向角度比θ は、全体としては0.70〜0.80が良く、さらに詳細にピッチ数毎に見れば、ピッチ数が3の場合には0.70〜0.80、さらに好ましくは0.70〜0.75が良く、また、ピッチ数が4又は5の場合には0.75〜0.85、さらに好ましくは0.77〜0.80が良いということが言える。なお、これらの値は、凹部周方向角度θと小間隙部の周方向角度θとの比θ/θで示すと、全体としては2.3〜4.0の範囲が良く、さらに詳細にピッチ数毎に見れば、ピッチ数が3の場合には2.3〜4.0、さらに好ましくは2.3〜3.0が良く、また、ピッチ数が4又は5の場合には3.0〜5.7、さらに好ましくは3.4〜4.0が良いということと同一である。
次に、高速回転(4200rpm)時における特性解析結果を図13、図14に示す。図13は、周方向ピッチ角度2θに対する分離溝18の周方向角度θagの比θag/2θを0.1にした条件で、分離溝18の深さhagを変えた場合に発生する負圧の値を解析した結果を示す。この解析結果から、分離溝18の深さhagが浅くなると急激に負圧が生じ易くなるので、分離溝18の深さhagは0.03mm以上、好ましくは0.05mm以上必要であることが理解できる。
図14は、分離溝18と小間隙部12との境界部のコーナーアールの大きさragcを変えた場合に発生する負圧の値を解析した結果を示す。この解析結果から、ragcは0.03mm以上必要であることがわかる。なお、この面取り部が大きくなるということは、小間隙部の周方向の幅が狭くなるということでもあり、ラジアル剛性などの特性を低下させてしまう。従って、コーナーアールの大きさragcは0.08mm以下に抑えることが好ましい。
(第2の実施形態)
図14は、本発明に従う第2の実施形態を示している。特別の記載がない事項は、第1の実施形態と同じである。
図14の動圧流体軸受装置においては、焼結合金製スリーブ102の内周面102aに、その軸線方向(図14において上下方向)に環状溝部100を挟んだ形で一対の動圧軸受部106、108が設けられている。動圧軸受部106、108は基本的には同一の構成である。動圧軸受部106及び108は、スリーブ部材102の内周面102aから半径方向内側に幾分突出しており、この突出する動圧軸受部106、108に各々大間隙部110と小間隙部112とが、周方向に交互に配設されている。一方、シャフト101は外形が円筒状であり、その一端から他端まで実質上同一形状に形成されている。大間隙部110および小間隙部112は、動圧軸受部106には各々周方向に3個、動圧軸受部108には各々周方向に5個として、1以外に共通の約数を持たない互いに素である個数が設けられている。
小間隙部112は、スリーブ102の内周面102aからシャフト101の外周面に向けて幾分大きく突出しており、この小間隙部112においては、小間隙部112の周面とシャフト101の外周面との間隔は小さく設定される。小間隙部112の周面は、相互に協働して円筒状の支持面を規定し、これらの支持面が潤滑流体105を介してシャフト101を回転自在に支持する。
また、大間隙部110は、スリーブ102の内周面2aからシャフト101の外周面に向けて小さく突出し、その突出量は小間隙部112よりも小さく、隣接する小間隙部112間に凹部を規定する。大間隙部110においては、大間隙部110の周面とシャフト101の外周面との間隔は大きく設定される。これら大間隙部110は潤滑流体の溜部として作用する。
また、矢印114で示すシャフト101の相対的回転方向に見て、小間隙部112の下流端と大間隙部110の上流端との境界部位に、分離溝118が設けられている。分離溝118は、動圧軸受部106あるいは108を分割する作用を有し、これら分離溝118によって、動圧軸受部106は周方向に3分割、動圧軸受部108は周方向に5分割され、分割された各部分は1個の大間隙部110と1個の小間隙部112から構成される。分離溝118は、図15に示すとおり、動圧軸受部106と108を各々貫通して、各分離溝118の一端はスリーブ102の両側に存在する間隙の一方の側に、各分離溝118の他方の端は動圧軸受部106と108の間に環状に形成された環状溝部100に連通している。
なお、大間隙部110、小間隙部112、分離溝118の周方向角度、深さ等は、第一の実施形態に示した最適緒言に各々設定されている。
荷重位相による特性の方向性が小さくなるように各々最適化された2つの動圧軸受106及び108の大間隙部110、小間隙部112及び分離溝118が、互いに1以外の共通の約数を持たない個数ずつ形成配列されているので、さらに周方向における特性は均一化され、起動停止時の摩擦、磨耗は小さく抑えられる。また、二つの動圧軸受部の回転軸方向の配置間距離が長いので、モーメント剛性は大きくなり、回転安定性、耐衝撃性に優れた特性を得ることができる。
さらに、内径側に凸となる形状で動圧軸受部が構成されているので、焼結合金製スリーブ102を回転軸方向に圧縮して内径側に突出変形させることによって大間隙部110及び小間隙部112を精度良く加工する成型法を採用することが可能となり、低コストで量産性に優れた動圧流体軸受装置を得ることができる。
なお、上記では大間隙部110、小間隙部112及び分離溝118の個数を2つの動圧軸受部106及び108で相違させたが、同一個数にして、各々を配置する周方向の位相を2つの動圧軸受部106及び108で配置ピッチ角2θの半分であるθだけずらすことにより、動圧流体軸受装置としての全体の特性を平均化、均一化しても良い。
なお、加工組み立ての都合上、2つの動圧軸受部106及び108を別体として構成しても良い。
(第3の実施形態)
図15は、本発明を実施したスピンドルモータ30及び記録ディスク駆動装置50の断面図である。
この記録ディスク駆動装置50は、記録ディスク51と、記録ディスク51を回転させるスピンドルモータ30と、記録ディスク51に対して情報のアクセスを行なうヘッド52と、それら全体を収容するハウジング53とを備える。
スピンドルモータ30は、第1乃至第2の実施形態によって説明された動圧流体軸受装置300を備えている。スピンドルモータ30はハウジング53の一部をその基板とし、その基板上にステータ31と回路基板(不図示)とが固定される。一方、ロータハブ303に固定されたロータマグネット33はステータ31と径方向に対向され、動圧流体軸受装置306によって基板部材、ステータ31に対して回転自在に支持される。ステータ31は複数のコイル32を備えており、それらコイル32への通電は制御回路によって制御される。
スピンドルモータ30のロータハブ303には記録ディスク51が載置され、ロータハブ303と一体に回転される。制御回路によって、ステータ31のコイル32に通電されると、スピンドルモータ30が回転を始める。動圧流体軸受装置306が回転側と静止側とを非接触に支持し、スピンドルモータ30の振動が抑えられる。これにより、記録ディスク51への書きこみエラーなどが抑制され、信頼性の向上と高速化が達成される。また、記録ディスク駆動装置50の静音化も図られ、携帯機器や音響機器などに搭載されても、耳障りな騒音が発生しにくい。
また、本発明の動圧流体軸受装置306は、起動停止時の摩擦損失や磨耗量は小さく、かつ安定高速回転性能が得られるので、特に起動停止回数が多く、使用方向の自由度が高い携帯機器などの用途に有効である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
第1の実施形態における動圧流体軸受装置及び動圧流体軸受装置を備えるスピンドルモータの断面図である。 第1の実施形態における動圧流体軸受装置を拡大して示す断面図である。 第1の実施形態における動圧流体軸受装置の軸線直角方向の簡略断面図である。 第1の実施形態における動圧流体軸受装置の大間隙部領域および小間隙部を展開して示す展開図である。 第1の実施形態における他の動圧流体軸受装置の軸線直角方向の簡略断面図である。 第1の実施形態における他の動圧流体軸受装置の大間隙部領域および小間隙部を展開して示す展開図である。 第1の実施形態における他の動圧流体軸受装置の軸線直角方向の簡略断面図である。 第1の実施形態における起動時の動圧流体軸受装置の状態を示す軸線直角方向の模式断面図である。 第1の実施形態における起動時の動圧流体軸受装置の他の状態を示す軸線直角方向の模式断面図である。 第1の実施形態における解析モデルと記号の説明図である。 第1の実施形態におけるシャフト軸心の軌跡の解析結果図である。 第1の実施形態における荷重方向と摩擦トルクの関係の解析結果図である。 第1の実施形態における大間隙部の周方向角度比と摩擦トルクの関係の解析結果図である。 第1の実施形態における起動時の回転数と摩擦損失の関係の解析結果図である。 第1の実施形態における大間隙部の周方向角度比と磨耗量関係の解析結果図である。 第1の実施形態における分離溝の溝深さと発生する負圧の関係の解析結果図である。 第1の実施形態における分離溝と小間隙部のなすコーナ部の面取り部の大きさと発生する負圧の関係の解析結果図である。 第2の実施形態における動圧流体軸受装置を拡大して示す断面図である。 第3の実施形態における記録ディスク駆動装置の断面図である。
符号の説明
1、101 シャフト
2、102 スリーブ
2a スリーブ内周面
3、303 ロータハブ
4 軸受ハウジング
5 潤滑流体
6、306 動圧流体軸受装置部
10、110 大間隙部
12、112 小間隙部
13 スラスト軸受部
15 循環溝
17 界面
18、118 分離溝
21 抜け止め
30 スピンドルモータ
31 ステータ
32 コイル
33 ロータマグネット
50 記録ディスク駆動装置
51 磁気ディスク
52 ヘッド
53 アクチエータ
100 環状溝部
106、108 動圧軸受部
B0 小間隙部領域
B1 大間隙部領域

Claims (11)

  1. 略円柱状のシャフトと、該シャフトが挿通される略円筒状のスリーブと、該シャフトと該スリーブとの間の間隙に充填された潤滑流体とを備え、
    前記シャフトは、前記スリーブによって前記スリーブ対して相対的に回転軸回りに回転自在に保持され、
    前記シャフトの外周面および前記スリーブの内周面の少なくともいずれか一方には、対向する周面との間隔が大きい大間隙部と、対向する周面との間隔が小さい小間隙部が周方向に交互に複数個所形成され、
    前記小間隙部は、前記対向する周面との間隔が周方向一様になるように形成され、
    前記大間隙部と前記小間隙部とは、階段状またはテーパ状に接続され、
    前記スリーブに対する前記シャフトの相対的回転方向に見た前記小間隙部の下流端から前記大間隙部の上流端に至る境界部位に、該境界部位に前記潤滑流体を案内して負圧発生を抑制する分離溝が前記回転軸の軸線方向に形成されている動圧流体軸受装置であって、
    前記大間隙部の周方向角度と前記分離溝の周方向角度(θag)を合わせた凹部周方向角度(θ)と前記小間隙部の周方向角度(θ)の比(θ/θ)が、2.3から4.0の範囲にあることを特徴とする動圧流体軸受装置。
  2. 前記大間隙部は、前記スリーブに対する前記シャフトの相対的回転方向に見た前記大間隙部の上流端から下流端に向けて、前記対向する周面に近接する方向にテーパ状に延びていることを特徴とする請求項1に記載の動圧流体軸受装置。
  3. 前記大間隙部と前記小間隙部および前記分離溝は周方向に各3個形成され、
    前記凹部周方向角度(θ)と前記小間隙部の周方向角度(θ)の比(θ/θ)が2.3から3.0の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の動圧流体軸受装置。
  4. 前記大間隙部と前記小間隙部および前記分離溝は周方向に各4個もしくは各5個形成され、
    前記凹部周方向角度(θ)と前記小間隙部の周方向角度(θ)の比(θ/θ)が3.4から4.0の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の動圧流体軸受装置。
  5. 前記凹部周方向角度(θ)と前記小間隙部の周方向角度(θ)を合わせた周方向ピッチ角度(2θ)に対する前記分離溝の周方向角度(θag)の比(θag/2θ)が0.1以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の動圧流体軸受装置。
  6. 前記分離溝の深さは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、
    前記小間隙部と前記分離溝とが形成する境界壁の角部は面取りされ、
    該面取りアールの大きさ(ragc)が0.03mm以上、0.08mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の動圧流体軸受装置。
  7. 前記スリーブが焼結多孔質金属の型成型体から構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の動圧流体軸受装置。
  8. 前記大間隙部と前記小間隙部および前記分離溝が前記スリーブに形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の動圧流体軸受装置。
  9. 環状溝部を挟んで前記回転軸方向に離間した上下2箇所の位置に、上部側はn組の、下部側はm組の前記大間隙部と前記小間隙部および前記分離溝で構成された組が周方向に繰り返し配置され、各々の前記分離溝の一方の端が前記環状溝と連通した請求項1乃至8のいずれかに記載された動圧流体軸受装置であって、
    nとmが等しくかつ前記組の配置位相が上部側と下部側において前記周方向ピッチ角度(2θ)の半分(θ)だけずれているか、もしくは、
    nとmが不等でかつ1以外の共通約数を持たない数であることを特徴とした動圧流体軸受装置。
  10. 電動式のスピンドルモータであって、
    回転軸の周囲に配置された界磁用磁石を有するロータ部と、
    前記界磁用磁石との間で前記回転軸を中心とするトルクを発生する電機子を有するとともに前記ロータ部を前記回転軸を中心に回転可能に支持するステータ部と、
    を備え、
    前記ロータ部および前記ステータ部の一方が、請求項1乃至9のいずれかに記載の動圧流体軸受装置を構成するスリーブを取り付けて備え、
    前記ロータ部および前記ステータ部の他方が、前記スリーブに挿入されるシャフトを備えたことを特徴とするスピンドルモータ。
  11. ハウジング内に、記録ディスクにデータを読み書きするヘッドと、該ヘッドをディスク面上で移動させるアクチュエータと、請求項10に記載されたスピンドルモータとを備える記録ディスク駆動装置。
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WO2010134322A1 (ja) * 2009-05-21 2010-11-25 日本発條株式会社 組み付け構造、カップ状部材、その成形方法、及びディスク駆動装置
CN107103821A (zh) * 2017-07-05 2017-08-29 石河子大学 一种流体一维雷诺方程实验装置及其实验方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010134322A1 (ja) * 2009-05-21 2010-11-25 日本発條株式会社 組み付け構造、カップ状部材、その成形方法、及びディスク駆動装置
CN107103821A (zh) * 2017-07-05 2017-08-29 石河子大学 一种流体一维雷诺方程实验装置及其实验方法

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