本発明の第1の実施形態に係る車両用マフラ構造が適用された車両用マフラ10について、図1乃至図5に基づいて説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、各図に適宜矢印FRにて示す方向を車両用マフラ10の前方向、矢印REにて示す方向を後方向、矢印UPにて示す方向を上方向、矢印Wにて示す方向を幅方向ということとする。
図1(A)には、車両用マフラ10の全体構成が一部切り欠いた平面図にて示されており、図1(B)には、図1(A)の1B−1B線に沿った断面図が示されている。これらの図に示される如く、車両用マフラ10は、それぞれマフラ前後方向に長手とされると共に、上下方向に扁平した扁平マフラとされている。
具体的には、車両用マフラ10は、前後方向に開口する扁平筒状のシェル12と、シェル12の前後の開口端を閉止するアウタプレート14、16とで、その外郭が構成されている。図1(B)に示される如く、シェル12は、幅(長径)Wに対し高さ(短径)Hが小さい略楕円形状断面を有して上記した扁平筒状を成している。また、シェル12は、その長手方向の全長Lが幅Wに対し十分に長い(L>>W)平面しく形状を成している。前後のアウタプレート14、16は、それぞれシェル12のとの間にガスUターン用の空間14A、16Aを形成するように、シェル12の開口端に接合される周縁部に対し中央部が膨出した形状を成している。
この車両用マフラ10の外郭を成すシェル12の内部は、隔壁としての横仕切板18、20によって前後方向に複数(この実施形態では3つ)の隔室R1、R2、R3に仕切られている。横仕切板18、20は、上下方向及び幅方向に延在する平板状とされており、それぞれの周縁部から前後方向に延設された接合フランジ18A、20Aがシェル12の内周面に溶接等によって接合されている。
図1(A)に示される如く、シェル12の長手方向における各隔室R1、R2、R3の長さL1、L2、L3は、それぞれ異なる長さ(この実施形態では、L3>L1>L2)とされている。これにより、車両用マフラ10は、各隔室R1、R2、R3の共振周波数f1、f2、f3がそれぞれ異なる設定とされている。各隔室R1、R2、R3の共振周波数は、それぞれの長さL1、L2、L3に反比例することから、この実施形態では、f3<f1<f2となっている。図2(A)は、シェル12の長手方向における振動モードを想像線にて示しており、各隔室R1、R2、R3の一次振動(共振)の波長が長さL1、L2、L3に略一致すること、すなわち各隔室R1、R2、R3の共振周波数がf3<f1<f2の関係となることがわかる。なお、図2の実線は、非振動時の車両用マフラ10の構造を模式的に示している。
そして、この実施形態では、横仕切板18を挟んで隣り合う隔室R1の共振周波数f1と隔室R2の共振周波数f2とは100Hz以上異なり(離間し)、横仕切板20を挟んで隣り合う隔室R2の共振周波数f2と隔室R3の共振周波数f2とは100Hz以上異なる設定とされている。したがって、各隔室R1、R2、R3の長さL1、L2、L3を異ならせる横仕切板18、20の配置が本発明の剛性差付与構造に相当する。
また、各隔室R1、R2、R3を区画する横仕切板18、20は、単体での共振周波数fpが両側に位置する隔室の高い方の共振周波数よりも高く設定されており、それぞれを挟んで隣り合う隔室R1、R2、R3間の振動伝達(連成)を遮断(抑制)するようになっている。すなわち、車両用マフラ10は、横仕切板18、20の剛性設定による振動遮断構造を有し、上記した隣り合う隔室1、R2、R3間の共振周波数差が確保される構成である。
特に、共振周波数差が比較的小さい隔室R1、R2を区画する横仕切板18は、共振周波数fpをより高く設定して隔室R1、R2間の振動伝達を遮断するように、補強板部としての補強プレート22にて補強(補剛)されている。補強プレート22は、横仕切板18と重ね合わされて二重板構造を成しており、周縁部から延設された接合フランジ22Aがシェル12の内周面に溶接等によって接合されている。接合フランジ22Aは、横仕切板18の接合フランジ18Aとは前後方向の反対側に延設されている。これにより、重ね合わされた横仕切板18、横仕切板20は、接合フランジ18A、22Aによって厚み方向の両側でシェル12に接合されており、二重板構造による隔壁単体(振動膜)としての剛性向上の他に、シェル12への結合剛性の向上が図られている。
さらに、この実施形態では、シェル12の内部すなわち各隔室R1、R2、R3は、縦仕切板24にて略全長に亘って幅方向に区画されている。具体的には、縦仕切板24は、上下端に形成された接合フランジ24Aにおいて、シェル12における上側の扁平面12A及び下側の扁平面12Bにそれぞれ接合されており、上下の扁平面12A、12Bを連結している。そして、縦仕切板24(接合フランジ24A)と上下の扁平面12A、12Bとの接合部位は、シェル12の周方向振動(一次共振)の振幅の節位置とされている。なお、図2(B)は、シェル12の周方向振動モードを想像線にて示しており、縦仕切板24がシェル12における周方向振動の振幅の腹位置に接合されていることがわかる。
また、車両用マフラ10は、内部に排気ガスを導入するためのインレットパイプ26と、排気ガスを外部に排出するためのアウトレットパイプ28とを備えている。アウトレットパイプ28は、前端がアウタプレート14において前向きに開口しており、中間部が横仕切板18、補強プレート22、及び横仕切板20を貫通して、後端が隔室R3内で開口している。アウトレットパイプ28は、縦仕切板24を挟んでインレットパイプ26とは幅方向の反対側に配置されている。このインレットパイプ26は、前端が隔室R1にて開口しており、中間部が横仕切板18、補強プレート22、及び横仕切板20を貫通して、後端がアウタプレート16において後向きに開口している。
以上により、車両用マフラ10では、図1(A)に矢印にて示される如く、インレットパイプ26、隔室R3における縦仕切板24のインレットパイプ26側、アウタプレート16内のガスUターン用の空間16A、縦仕切板24に対するアウトレットパイプ28側の隔室R3、R2、R1、アウトレットパイプ28の順で排気ガスを流通させる排気ガス経路が形成されている。したがって、横仕切板18、20、補強プレート22には、少なくとも縦仕切板24に対するアウトレットパイプ28側で、隣り合う隔室間の排気ガスの流通を許容するための図示しない複数の透孔(パンチ孔)が形成されている。
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
上記構成の車両用マフラ10では、上記した排気ガス経路に沿って排気ガスを流通させることで、排気ガスの音響エネルギを吸収して排気音を消音する。
ここで、車両用マフラ10では、シェル12における横仕切板18、横仕切板20によって区画された隔室R1、R2、R3の共振周波数f1、f2、f3がそれぞれ100Hz以上異なるため、一つの隔室の共振によって他の隔室が同期して振動する(振動が増幅される)ことが抑制され、すなわち各隔室R1、R2、R3の連成振動(共振)の振幅が抑えられる。これより、シェル12の表面振動に起因する放射音が抑制される。以下、より具体的に説明する。
図3(A)には、車両用マフラ10の長手方向における各隔室R1、R2、R3を構成するシェル12表面の振動特性が模式的に示されている。この図に示される如く隔室R1、R2、R3は、それぞれの共振周波数f1、f2、f3における振幅目標(上限)ラインTLを下回っており、独立した共振では、機能上問題のない(車内音・車外音共に殆ど問題のない)振動レベルが実現されている。ここで、振幅目標ラインTLは、車種毎に異なり、振幅目標ラインTLすなわち周波数毎の目標振幅[m]は、目標音圧[dB]に応じて定まる。目標音圧M[dB]は、振動加速度の実効値をa、基準振動加速度をa0とすると、M=20×log(a/a0)であるから、この式から振動加速度の実効値aの上限値を得ることができる。
例えば目標音圧が100[dB]の場合、振動加速度の実効値aは、既知の基準振動加速度a0(=10−5[m/s2])を用いてa100=1[m/s2]となり、目標音圧が80[dB]の場合、振動加速度の実効値aは、a80=0.1[m/s2]となる。そして、振幅(片振幅)をYm[m]、周波数をf[Hz]とすると、加速度に対する周波数と振幅との関係式は、a=(2πf)2×Ymであるから、目標音圧に応じて周波数毎の目標振幅を得ることができ、これを結ぶと上記振幅目標ラインTLを描くことができる。例えば、目標音圧100[dB]の場合、目標振幅Ymは、100[Hz]で2.5[μm]、1[KHz]で0.025[μm]となる。また例えば、目標音圧80[dB]の場合、目標振幅Ymは、100[Hz]で0.25[μm]、1[KHz]で0.0025[μm]となり、100[Hz]の場合と比較して1桁厳しくなる。
上記した通り、車両用マフラ10では、隔室R1、R2、R3は、それぞれの共振周波数f1、f2、f3における振幅目標(上限)ラインTLを下回っており、隣り合う隔室の連成振動の影響が問題となるが、シェル12における横仕切板18、横仕切板20によって区画された隔室R1、R2、R3の共振周波数f1、f2、f3がそれぞれ100Hz以上異なるため、連成振動の振幅Ymを振幅目標ラインTLを下回る。
具体的には、図3(B)に示される如く、隔室R1と隔室R2との連成振動V12は、これら隔室R1及び隔室R2の共振周波数f1、f2が十分に(100Hz以上)離間しているため、隔室R1、R2を構成するシェル12表面の振幅が小さい周波数で生じる。このため、この連成振動V12の振幅のピークは抑制され、上記した振幅目標ラインTLを下回る。同様に、図3(C)に示される如く、隔室R2と隔室R3との連成振動V23は、これら隔室R2及び隔室R3の共振周波数f2、f3が十分に(100Hz以上)離間しているため、隔室R1、R2を構成するシェル12表面の振幅が小さい周波数で生じる。共振周波数f2、f3の周波数差Δf23は、共振周波数f1、f2の周波数差Δf12よりも大きいので、連成振動V23の振幅のピークは一層抑制されやすい。このため、この連成振動V23の振幅のピークは抑制され、上記した振幅目標ラインTLを下回る。
以上により、第1の実施形態に係る車両用マフラ10では、シェル12の表面振動に伴って生じる放射音を効果的に抑制することができる。
また、隣り合う隔室R1、R2、R3間の共振周波数差を100Hz以上とする根拠について補足する。図4は、本発明に含まれる試験用マフラ200の模式図である。試験用マフラ200は、シェル12内が縦仕切板24にて左右に区画され、縦仕切板24に対してアウトレットパイプ28側の空間が2枚のセパレータ202によって3分割されている。この試験用マフラ200のシェル12における図4中に「●」で示す部分が振動特性の実測点である。図5は、各実測点での実測結果を示し、上段に周波数と位相との関係を、下段に周波数と音圧との関係を示している。実測点との対応関係は、図5(A)が実測点5Aでの実測結果を、図5(B)が実測点5Bでの実測結果を、図5(C)が実測点5Cでの実測結果を、図5(D)が実測点5Dでの実測結果を、図5(E)が実測点5Eでの実測結果を、図5(F)が実測点5Fでの実測結果をそれぞれ示している。
これらの図から、各実測点での音圧は、ピークを生じる周波数の前後略30Hz〜50Hzの範囲で振幅の立ち上がり(増加)が認められる。したがって、隣り合う隔室間の周波数差は、それぞれの共振周波数から各50Hz以上ずつ、計100Hz以上離間していれば、隣り合う隔室の連成振動のピークを確実に低く抑えて放射音を効果的に抑制することができる。
このように、第1の実施形態に係る車両用マフラ10では、放射音を抑制することができ、特に500Hzから1.2KHz帯域の車内音、車外音として問題になり易い帯域の放射音をも効果的に抑制することができる。
そして、車両用マフラ10では、各隔室R1、R2、R3の長さL1、L2、L3を異ならせる簡単な構造で、各隔室R1、R2、R3の共振周波数を異ならせる構成が実現された。また、車両用マフラ10では、横仕切板18を補強プレート22にて補強したため、横仕切板18の隔壁単体(振動伝達体)としての剛性が向上されると共に、横仕切板18のシェル12に対する結合剛性が向上された。特に、結合剛性の向上は、横仕切板18、横仕切板20の面方向の変形をも抑制するため、隔壁単体としての剛性向上にも寄与する。これらにより、周波数差が比較的小さい隔室R1、隔室R2間での振動伝達が効果的に抑制されるので、扁平面12A、扁平面12Bで放射音を生じ易い扁平マフラである車両用マフラ10において、隔室R1、隔室R2の連成振動による放射音が効果的に抑制される構成が実現された。
しかも、各隔室R1、R2、R3のそれぞれで共振周波数が100Hz以上離間しているため、車両用マフラ10が特定の周波数で全体として振動してしまうことが効果的に抑制され、各周波数での放射音(振動エネルギ)の絶対値を低く抑えることができるので、車両用マフラ10の放射音による車室騒音、車外騒音を共に小さく抑えることができる。
さらに、車両用マフラ10では、シェル12を幅方向に区画する縦仕切板24が該シェル12の周方向振動の振幅の節位置に接合されているため、縦仕切板24は周方向振動による変位の影響を受けることなく、略全長に亘って扁平面12A、12Bを補強する。これにより、縦仕切板24がシェル12における低剛性部分である扁平面12A、12Bの表面振動を抑制し、シェル12の表面振動に起因する放射音の発生がより一層効果的に抑制される。
なお、上記した第1の実施形態では、横仕切板18に補強プレート22を設けて補強した例を示したが、本発明はこれに限定されず、横仕切板18が隔室R1、R2巻の振動伝達を抑制する(100Hz以上の周波数差を確保する)十分な剛性を有する構造であれば、補強プレート22を設けない構成としても良いことは言うまでもない。例えば、横仕切板18は、縦仕切板24、インレットパイプ26、アウトレットパイプ28等との結合によっても補強されるので、これらの補強効果や確保すべき周波数差を考慮して補強プレート22等の別部材による補強の要否を判断すれば良い。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付してその説明を省略し、また図示を省略する場合がある。
[第2の実施形態] 図6(A)には、本発明の第2の実施形態に係る車両用マフラ30が一部切り欠いた平面図にて示されており、図6(B)には、図6(A)の6B−6B線に沿った断面図が示されている。この図に示される如く、車両用マフラ30は、剛性差付与構造として、各隔室R1、R2、R3の長さに加えて、シェル補強部材であるリングプレート(リングセパレータ)32を備えている点で、第1の実施形態に係る車両用マフラ10とは異なる。
具体的には、車両用マフラ30は、隔室R1、R2が拡張室としての機能上、長さL1、L2の差が小さく、この差ΔLだけでは100Hz以上の共振周波数差を設定することができない。このため、隔室R2内にリングプレート32を設けて該隔室R2の剛性を向上することで、該隔室R2の共振周波数を高周波側にシフトしている。
図7に示される如く、リングプレート32は、シェル12(隔室R2)の内周面に対応した略楕円形状の環状体として形成されており、溶接等の接合方法にて全周に亘って連続的又は断続的にシェル12の内面に固着されている。このリングプレート32のリング本体部32Aには、周方向の一部を隔室R2の内方に向けて突出(***)させた複数の強め部32Bが形成されている。複数の強め部32Bは、プレス等にてリング本体部32Aに一体に形成されており、周方向に等間隔で配置されている。以上により、車両用マフラ30では、車両用マフラ10と同様に、各隔室R1、R2、R3の共振周波数がそれぞれ100Hz以上離間した構成とされている。
また、この実施形態では、シェル12を幅方向に区画する縦仕切板24を有しない構成とされている。このため、シェル12の前後の開口端を閉止するアウタプレート14、16は、平板状に形成されている。これにより、車両用マフラ30では、インレットパイプ26、R3、R2、R1、アウトレットパイプ28の順で排気ガスが流通する排気ガス経路が形成される。車両用マフラ30の他の構成は、車両用マフラ10の対応する構成と同じである。
したがって、第2の実施形態に係る車両用マフラ30によっても、第1の実施形態に係る車両用マフラ10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両用マフラ30では、剛性差付与構造としてリングプレート32を用いたので、隔室R1、R2、R3の長さの差のみにより共振周波数を設定する構成と比較して、設計自由度が高くなる。このため、各隔室R1、R2、R3の拡張室や共鳴室としての設計(排気脈動音等の低減)に対する制約が少なくなる。
なお、上記第2の実施形態では、隔室R1、R2、R3の長さとリングプレート32とを併用して剛性差付与構造を構成した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、リングプレート32を複数設けて各室の共振周波数を100Hz以上離間させる剛性差付与構造を構成しても良い。
次に、リングプレートの変形例について説明する。
図8には、第1変形例に係るリングプレート34の要部が断面図にて示されている。この図に示される如く、リングプレート34は、シェル12の内周面に接合されるリング本体部34Aが折り返しによって二重板とされている点で、単板構造のリング本体部32Aを有するリングプレート32とは異なる。これにより、リングプレート34は、リングプレート32と比較してリング本体部34Aの板厚が増しており、シェル12の剛性を一層向上することができる。
図9(A)には、第2変形例に係るリングプレート35が斜視図にて示されている。この図に示される如く、リングプレート35は、シェル12(隔室R2)の内周面に対応した略楕円形状の環状体として形成されたリング本体部36と、それぞれ上下方向に長手とされ、リング本体部36の扁平面36A、36B間を連結する複数の柱部38とを有している。
図9(B)には、想像線にて示すシェル12の周方向の振動モードがリングプレート35の模式的な正面図に重ね合わせて示されている。この図に示される如く、複数の柱部38のうち1つおきに位置する3つの柱部38は、シェル12の周方向振動の振幅の腹位置に位置する振動抑制用柱部38Aとされており、3つの振動抑制用柱部38A間に位置する2つの柱部38は、シェル12の周方向振動の振幅の節位置に位置する剛性確保用柱部38Bとされている。
これにより、リングプレート35は、2つの剛性確保用柱部38Bによって主に自らの剛性を確保し、3つの振動抑制用柱部38Aによってシェル12の振動を抑制する構成とされている。このリングプレート35は、シェル12の周方向の振動を抑制して剛性を向上するようになっている。また、リングプレート35は、複数の柱部38が上下方向及び前後方向に延在する板状を成すので、その前後でシェル12の振動が伝達されることを抑制する振動遮断部としても機能する構成である。特に、シェル12の周方向振動による変位が生じ難い剛性確保用柱部38Bは、その前後の振動遮断効果が高く、また縦仕切板24と同様に扁平面12A、12Bのシェル12の長手方向の振動抑制効果を果たすようになっている。すなわち、剛性確保用柱部38Bは、本発明における縦仕切板に相当する。さらに、リングプレート35は、各柱部38を前後方向に延在させることで、上記した各機能を備えながら排気ガスの流動を妨げることがない。
このようなリングプレート35を用いることで、車両用マフラ30の設計自由度が一層向上し、また拡張室や共鳴室としての設計に対する各種制約(例えば、長手方向の振動遮断のためにセパレータを用いなければならないといった制約)を少なくすることができる。
なお、上記した第2の実施形態及び各変形例では、リングプレート32、34、35によりシェル12を補強する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、シェル12にレーザ溶接やスポット溶接を施し(溶接ビードを形成し)て隔室R2等の剛性を向上するようにしても良い。
[第3の実施形態] 図10(A)には、本発明の第3の実施形態に係る車両用マフラ40が一部切り欠いた平面図にて示されており、図10(B)には、図10(A)の10B−10B線に沿った断面図が示されている。これらの図に示される如く、車両用マフラ40は、シェル12内の空間が周方向においても不均等に区画されている点で、第1の実施形態に係る10とは異なる。
具体的には、車両用マフラ40では、シェル12内の空間は、横仕切板18(及び補強プレート22)によって前後方向に2つの隔室R1、R2に区画されると共に、各隔室R1、R2がそれぞれ縦仕切板42、44によって周方向に3つの隔室R1A、R1B、R1C、R2A、R2B、R2Cに区画されている。
図10(B)に示される如く、縦仕切板42は、インレットパイプ26とアウトレットパイプ28と間で扁平面12Aと扁平面12Bとを連結することで、隔室R1Aと他の隔室R1B、R1Cとを仕切る(区画する)と共に、隔室R2Aと他の隔室R2B、R2Cとを仕切っている。この実施形態では、縦仕切板42は、扁平面12Aに接合されるフランジ42Aが扁平面12Bに接合されるフランジ42Bに対し幅方向中央側に位置するように、上下方向中央部が屈曲している。
また、縦仕切板44は、インレットパイプ26とアウトレットパイプ28と間で縦仕切板42とシェル12とを連結することで、隔室R1Bと隔室R1Cとを仕切ると共に、隔室R2Bと隔室R2Cとを仕切っている。この実施形態では、縦仕切板44は、上端側のフランジ44Aが縦仕切板42の上下方向中央部に接合されると共に下端側のフランジ44Bが扁平面12Bに接合されることで、アウトレットパイプ28が他の隔室R1C、R2Cに位置するように、隔室R1Bと隔室R1C、隔室R2Bと隔室R2Cとをそれぞれ仕切っている。
そして、図10(B)に示される如く、車両用マフラ40では、シェル12における隔室R1A、R2Aの外郭を形成する部分の周長La、隔室R1B、R2Bを形成する部分の周長Lb、隔室R1C、R2Cを形成する部分の周長Lcがそれぞれ異なっており、周方向に隣り合う各隔室R1A、R1B、R1Cの共振周波数f1A、f1B、f1Cがそれぞれ100Hz以上異ならされると共に、周方向に隣り合う各隔室R2A、R2B、R2Cの共振周波数f2A、f2B、f2Cがそれぞれ100Hz以上異ならされている。この実施形態では、周長La、Lb、Lcの関係は、Lb<La<Lcとされており、これにより、共振周波数f1A、f1B、f1Cの関係はf1C<f1A<f1とされ、また共振周波数f2A、f2B、f2Cの関係はf2C<f2A<f2とされている。
なお、車両用マフラ40では、シェル12を周方向に3分割するための縦仕切板42と縦仕切板44とが互いに接合されて立体構造(同一平面を構成しない構造)を形成するため、換言すれば、縦仕切板42、縦仕切板44が互いに補強されてこれら縦仕切板42、縦仕切板44の剛性が高い振動遮断構造が構成されるので、周方向に隣り合う隔室1、R2、R3間の共振周波数差が確保される構成である。
また、車両用マフラ40では、横仕切板18の配置によって隔室R1、隔室R2の前後方向の長さL1、L2が異なっており、第1の実施形態と同様に、該隔室R1(隔室R1A、R1B、R1C)と隔室R2(隔室R2A、R2B、R2C)とで、共振周波数が100Hz以上異ならされている。したがって、車両用マフラ40では、横仕切板18、縦仕切板42、44にて区画された6つの隔室R1A、R1B、R1C、R2A、R2B、R2Cの共振周波数がそれぞれ100Hz以上離間している。この実施形態では、L1<L2とされており、隔室(隔室R1A、R1B、R1C)の共振周波数がR2(R2A、R2B、R2C)における前後方向に隣り合う部分の共振周波数よりも100Hz以上高く設定されている。
以上説明した車両用マフラ40では、図10(A)に示される如く、縦仕切板42における隔室R1Aと隔室R1Bとを仕切る部分に連通孔46が形成されると共に、縦仕切板44における他の隔室R2Bと隔室R2Cとを仕切る部分に連通孔48が形成されている。また、横仕切板18、補強プレート22には、前後方向に隣り合う隔室R1、R2の各部を連通する多数のパンチ孔が形成されている。これにより、車両用マフラ40では、図10(A)に矢印にて示される如く、インレットパイプ26、隔室R2A、隔室R1A、連通孔46、隔室R1B、隔室R2B、連通孔48、隔室R2C、隔室R1C、アウトレットパイプ28の順で排気ガスを流通させる排気ガス経路が形成されている。
車両用マフラ40における他の構成は、車両用マフラ10の対応する構成と同じである。したがって、第3の実施形態に係る車両用マフラ40によっても、第1の実施形態と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、剛性差付与構造として、シェル12を周方向に不均等に区画する構造を付加したため、車両用マフラ40が特定の周波数で全体として振動してしまうことが一層効果的に抑制される。このように、シェル12を周方向にも区画し得るので、拡張室や共鳴室としての設計(排気脈動音等の低減)に対する制約が一層少なくなる。
なお、第3の実施形態では、前後の隔室R1、R2がそれぞれ共通の縦仕切板42、縦仕切板44によって周方向に区画された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、隔室R1、隔室R2の何れか一方のみを周方向に区画する構成としても良く、隔室R1と隔室R2とで周方向の区画の仕方を異ならせても良い。また、周方向、前後方向の各区画数が上記例に限定されないことは言うまでもない。
[第4の実施形態] 図11(A)には、本発明の第4の実施形態に係る車両用マフラ50が一部切り欠いた平面図にて示されており、図11(B)には、図11(A)の11B−11B線に沿った断面図が示されている。図11(A)に示される如く、車両用マフラ50は、シェル12を幅方向に2分割する縦仕切構造52を備え、縦仕切構造52を挟む両側が非対称に形成されている点で、第1の実施形態に係る10とは異なる。
図11(B)にも示される如く、縦仕切構造52は、上下方向に沿って設けられ、シェル12内を幅方向に対称な隔室Ra、Rbに2等分している。縦仕切構造52は、一対の板材52Aを重ね合わせた二重板構造とされており、板材52Aの上下端から幅方向外向きに延設された上下のフランジ52B、52Cがそれぞれ扁平面12A、12Bに接合されている。すなわち、縦仕切構造52は、隔壁としての一対の板材52Aに対し厚み方向に張り出した接合部としてのフランジ52B、52Cがシェル12に接合させて振動遮断構造を構成している。この実施形態では、一方の板材52Aが本発明における隔壁に相当し、他方の板材52Aが隔壁とで二重板構造を成す補強板部に相当する。また、上下のフランジ52B、52Cが本発明における接合部に相当する。
一対の板材52Aの重ね合わせによって高剛性とされると共に、厚み方向両側に張り出したフランジ52B、52Cにおいて広面積に亘って(板材52Aの厚み方向両側への倒れが規制されるように)シェル12接合されて結合剛性が高められた縦仕切構造52により、シェル12における隔室Ra、Rbを構成する部分の表面は、独立したシェル共振を生じ得る構成とされている。そして、車両用マフラ50では、隔室Raと隔室Rbとが上記した通り非対称となるように互いに独立してさらに区画されている。
具体的には、縦仕切構造52に対しインレットパイプ26側の隔室Raは、横仕切板54によって前後の隔室Ra1、Ra2に区画されている。隔室Ra1の長さLa1は、隔室Ra2の長さLa2に対し十分に短い設定とされている(La1<La2)。一方、縦仕切構造52に対しアウトレットパイプ28側の隔室Rbは、横仕切板56、58によって前後方向に沿って配置された隔室Rb1、Rb2、Rb3に3分割されている。隔室Rb1、Rb3の長さLb1、Lb2は略同等とされると共に、隔室Rb2の長さLb2に対し長く設定されている。また、隔室Rb1、Rb3の長さLb1、Lb2は、隔室Ra1の長さLa1よりも長く、かつ隔室Ra2の長さLa2よりも短く設定されている。
さらに、隔室Rb3には、リングプレート(リングセパレータ)60によって補強されている。詳細な説明は省略するが、リングプレート60は、シェル12の幅方向半分の内面、及び縦仕切構造52に接合される環状に形成されており、補強構造としては、例えばリングプレート32、34、35等の補強構造と同様の構造を採ることできる。このリングプレート60が設けられた隔室Rb3は、同等の長さを有するRb1よりも高剛性とされている。
以上により、車両用マフラ50では、各隔室Ra1、Ra2、Rb1、Rb2、Rb3の各共振周波数fa1、fa2、fb1、fb2、fb3の関係は、fa2<fb1<fb3<fa1<fb2とされ、各共振周波数の差が100Hz以上とされている。
また、各横仕切板54、56、58には、パンチ孔が形成されている。これにより、車両用マフラ50では、図11(A)に矢印にて示される如く、インレットパイプ26、隔室Ra2、隔室Ra1、隔室Rb1、アウトレットパイプ28の順で排気ガスを流通させる第1の排気ガス経路と、インレットパイプ26、隔室Ra2、アウタプレート16内のガスUターン用の空間16A、隔室Rb3、隔室Rb2、隔室Rb1、アウトレットパイプ28の順で排気ガスを流通させる第2の排気ガス経路とが形成されている。
車両用マフラ50における他の構成は、車両用マフラ10の対応する構成と同じである。したがって、第4の実施形態に係る車両用マフラ50によっても、第1の実施形態と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、前後方向の区画構造が異なる(非対称に区画された)Ra、Rbが振動遮断構造を有する縦仕切構造52にて仕切られているため、隔室Ra、Rb間、すなわち各隔室Ra1、Ra2、Rb1、Rb2、Rb3間の振動伝達が確実に遮断され、車両用マフラ50が特定の周波数で全体として振動してしまうことが一層効果的に抑制される。このように、非対称にも区画し得るので、拡張室や共鳴室としての設計(排気脈動音等の低減)に対する制約が一層少なくなる。また、リングプレート60を用いることによる作用効果は、第2の実施形態に係る車両用マフラ30の対応する作用効果と同じである。
次に、縦仕切構造の変形例について説明する。
図12(A)には、第1変形例に係る縦仕切構造62が平面図にて示されており、図12(B)には、図12(A)の12A−12A線に沿った断面図が示されている。これらの図に示される如く、縦仕切構造62は、仕切板62Aと、仕切板62Aの上下端から厚み方向の両側に張り出した接合部としてのフランジ62B、62Cと、該フランジ62B、62Cとの間にシェル12の扁平面12A、12Bを挟み込む当て板62D、62Eとを有する。この縦仕切構造62は、フランジ62Bと当て板62Dとに扁平面12Aを挟み込んだ状態で、該フランジ62B、扁平面12A、当て板62Dがスポット溶接等にてシェル12の略全長に亘って断続的に接合されている。同様に、フランジ62Cと当て板62Eとに扁平面12Bを挟み込んだ状態で、該フランジ62C、扁平面12B、当て板62Eがスポット溶接等にてシェル12の略全長に亘って断続的に接合されている。
なお、図12(A)の記号「×」はスポット溶接の打点を示す。
以上により、縦仕切構造62では、シェル12における縦仕切構造62との接合部は当て板62D、62Eによる補強によって剛性が向上すると共に、シェル12と縦仕切構造62との接合強度が向上するので、シェル12に対する結合剛性が向上する。したがって、第1変形例に係る縦仕切構造62によっても振動遮断構造が得られ、各隔室の共振周波数差を確保することができる。なお、この第1変形例では、仕切板62Aが単板構造である例を示したが、縦仕切構造52と同様に二重板構造としても良い。
図13(A)には、第2変形例に係る縦仕切構造64が斜視図にて示されており、図13(B)には縦仕切構造64が断面図にて示されている。これらの図に示される如く、縦仕切構造64は、仕切板65が上下一対の仕切板リインフォースメント66を介して12に接合されている。各仕切板リインフォースメント66は、シェル12(扁平面12A、又は扁平面12B)の内面に向けて開口する略V字状のリインフォース本体66Aと、リインフォース本体66Aの開口端から幅方向外向きに延設された一対のフランジ66Bとをそれぞれ有する。
上側の仕切板リインフォースメント66は、フランジ66Bにおいてシェル12における扁平面12Aに接合されると共に、リインフォース本体66Aには仕切板65の上側のフランジ65Aが接合されている。同様に、下側の仕切板リインフォースメント66は、フランジ66Bにおいてシェル12における扁平面12Bに接合されると共に、リインフォース本体66Aには仕切板65の下側のフランジ65Aが接合されている。図示は省略するが、一対のフランジ66Bとシェル12、リインフォース本体66Aと仕切板65とは、それぞれ12の略全長に亘ってスポット溶接にて断続的に接合されている。したがって、リインフォース本体66Aは、仕切板65の一部と二重板構造を成す本発明における補強板部に相当する。また、仕切板65に対し厚み方向の両側に張り出してシェル12に接合された一対のフランジ66Bは、本発明における接合部に相当する。
縦仕切構造64では、仕切板リインフォースメント66とシェル12とで正面視略三角形状の平断面構造を形成するため、仕切板65の接合部位の剛性が高く、一対のフランジ66Bは仕切板65の厚み方向両側でシェル12に接合されるので結合剛性が高い。したがって、第2変形例に係る縦仕切構造64によっても振動遮断構造が得られ、各隔室の共振周波数差を確保することができる。
図14には、第3変形例に係る縦仕切構造68が正面断面図にて示されている。この図に示される如く、縦仕切構造68は、上下一対の仕切板リインフォースメント66と、上下端に形成されたフランジ70Aにおいて対応する仕切板リインフォースメント66のリインフォース本体66Aに接合された仕切板70とを含む。上下の仕切板リインフォースメント66は幅方向にオフセットしており、仕切板70は上下方向に対し傾斜している。
また、縦仕切構造68は、シェル12の長手方向における特定箇所(剛性を向上させたい箇所)でシェル12を補強するブレース72を有する。ブレース72は、上端に形成されたフランジ72Aが上側の仕切板リインフォースメント66のリインフォース本体66Aに接合されると共に、下端に形成されたフランジ72Aがベース部材74を介して扁平面12Bに接合されている。ベース部材74は、シェル12の長手方向に部分的に設けられる以外は、下側の仕切板リインフォースメント66と同様に構成されており、該下側の仕切板リインフォースメント66に対し幅方向に離間して位置している。
第3変形例に係る縦仕切構造68では、第2変形例に係る縦仕切構造64と同様の振動遮断構造が得られ、各隔室の共振周波数差を確保することができる。また、縦仕切構造68では、任意の位置にフランジ72A、ベース部材74を設けてシェル12(扁平面12A、12B)を補強することができるので、設計上の制約一層少なくなる。換言すれば、シェル12の特定部位の剛性調整のための選択肢が増え、設計の自由度が向上する。なお、仕切板70は、仕切板65、仕切板62A、板材52Aと同様に、上下方向に沿って延在する構成であっても良い。
図15(A)には、第4変形例に係る縦仕切構造76が斜視図にて示されており、図15(B)には縦仕切構造76が断面図にて示されている。これらの図に示される如く、縦仕切構造76は、単独で閉断面(ボックス)構造を成す中空縦仕切壁78を主要構成要素としている。中空縦仕切壁78は、前後方向及び上下方向に延在しシェル12内を隔室Raと隔室Rbに仕切る一対の立壁78Aと、一対の立壁78Aの上端間及び下端間をそれぞれ連結する接合壁78Bと、一対の立壁78Aの前端間及び後端間をそれぞれ連結する閉壁78Cとを有する。一対の立壁78Aには、肉抜き用、排気ガス流通用の抜き孔78Dが形成されている。
これにより、中空縦仕切壁78は、各方向から見た断面が閉断面となる略直方体状に形成されている。この中空縦仕切壁78は、接合壁78Bにおいて扁平面12A、12Bに連続的又は断続的に略全長に亘って接合されている。この実施形態では、一方の立壁78Aが本発明における隔壁に相当し、他方の立壁78Aが隔壁とで二重板構造を成す補強板部に相当する。
第4変形例に係る縦仕切構造76では、中空縦仕切壁78がそれ自体で高剛性構造体であり、広い接合面積の接合壁78Bを有するためシェル12に対する結合剛性も高い。したがって、縦仕切構造76によっても、各隔室の共振周波数差を確保することができる。
なお、第4の実施形態及び各変形例では、シェル12との接合部位の剛性や仕切板全体としての剛性を高める例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図16に示される縦仕切構造52(仕切板62A、65、70等)の振動(想像線参照)の腹位置と、シェル12とを図示しない補強部材にて連結するようにしても良い。これによっても、隔室間の振動伝達遮断するための隔壁の剛性を得ることができる。なお、抑えるべき振動は、放射音が問題となる周波数帯域で縦仕切構造52に生じる次数の振動であり、図16では2次振動の場合の腹位置を示している。
また、第4の実施形態及び各変形例では、振動遮断構造として、縦仕切構造52、縦仕切構造62、68、76、78の剛性を高める例を示したが、本発明はこれに限定されず、縦仕切板の振動モードの調整によって、放射音が問題となる特定周波数帯域において隣り合う隔室間に振動を伝達し難い構造を採ることも可能である。例えば図17に示される例では、平板状の縦仕切構造52に代えて、板厚を徐変させた縦仕切板89が設けられている。縦仕切板89は、縦仕切構造52では振幅の節となる中央部89Aの板厚を増すことで、縦仕切構造52の腹に相当する相対的に薄肉の部分が剛性変化点89Bとされている。このため、縦仕切板89は、縦仕切構造52の共振モードM52(想像線参照)と同様の振動モード(2次振動)を生じることが自らの形状によって抑制され、より低周波で実線にて示す共振モードM89を生じる。これにより、縦仕切板89の共振周波数は、放射音が問題となる周波数帯域から大きく離間した低周波側にシフトされており、縦仕切板89を挟む隔室間で振動伝達が遮断される構成が実現される。
なお、上記した各縦仕切構造62、64、68、76や縦仕切板89の構造は、横仕切板18、54等に適用することも可能である。
[第5の実施形態] 図18(A)には、本発明の第5の実施形態に係る車両用マフラ80が平面図にて示されており、図18(B)には、図18(A)の18B−18B線に沿った断面図が示されている。これらの図に示される如く、車両用マフラ80は、シェル12に代えて、長さL1、L2、L3が同等の隔室R1、R2、R3が形成されるように区画され、その周壁の形状で各R1、R2、R3の共振周波数を異ならせるシェル82を備える点で、第1の実施形態に係る車両用マフラ10とは異なる。
具体的には、シェル82の内部は、横仕切板18、横仕切板20によって前後方向に略3等分されている。シェル82における隔室R1を形成する前部82Aには、前後方向に沿って長手とされた複数のビード84が周方向に並列して(略等間隔に)形成されている。また、シェル82における隔室R2を形成する中間部82Bには、周方向に沿って長手とされた複数のビード86が前後方向に並列して形成されている。この実施形態では、複数のビード86は、周方向には4分割されている。さらに、シェル82における隔室R3を形成する後部82Cには、前後方向及び周方向に対し傾斜した方向に長手とされた複数のビード88が該傾斜方向に沿って並列されている。
以上により、シェル82では、前部82Aが複数のビード84によって主に前後方向に補強(補剛)され、中間部82Bが複数のビード86によって主に周方向に補強され、後部82Cが複数のビード88によって前後方向及び周方向に補強されている。これにより、車両用マフラ80では、隔室R1、R2、R3を構成する前部82A、中間部82B、後部82Cの共振周波数f1、f2、f3がそれぞれ異なり、かつ100Hz以上異なる構成が実現されている。また、車両用マフラ80では、上記した各部のビード方向の相違によって、前部82A、中間部82B、後部82Cの振動モードが異なる構成とされている。
車両用マフラ80における他の構成は、車両用マフラ10の対応する構成と同じである。したがって、第5の実施形態に係る車両用マフラ80によっても、第1の実施形態と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、剛性差付与構造として、シェル82の形状(ビード84、86、88の方向)を異ならせる構造を採用したため、各隔室毎の周波数差を、拡張室や共鳴室としての設計(排気脈動音等の低減)に影響を与えることなく付与することができる。すなわち、マフラとしての設計上の制約を一層少なくすることができる。
[第6の実施形態] 図19には、本発明の第6の実施形態に係る車両用マフラ90が平面図にて示されている。これらの図に示される如く、車両用マフラ90は、ビード構造によって各部の剛性を異ならせたシェル82に代えて、蛇腹構造の変更によって各部の剛性を異ならせたシェル92を備える点で、第5の実施形態に係る車両用マフラ80とは異なる。
具体的には、シェル92内の空間は、横仕切板18によって長さL1、L2が同等である前後の隔室R1、R2に区画されている。シェル92における隔室R1を形成する前部92A、及び隔室R2を形成する後部92Bは、それぞれ蛇腹構造とされている。前部92Aの蛇腹ピッチP1は、後部92Bの蛇腹ピッチP2よりも小とされており、前部92Aの蛇腹の山高さY1は、後部92Bの蛇腹の山高さY2よりも小とされている。これにより、シェル92は、その板状の壁部の微小振動に対する剛性ではなく、筒状体(閉断面体)としての剛性(ばね定数)が前部92Aと後部92Bとで異なる構成とされている。そして、車両用マフラ90では、シェル92の前部92Aと後部92Bとで、共振周波数が100Hz以上異なるように、蛇腹ピッチP1、P2、蛇腹の山高さY1、Y2が設定されている。
この構造によっても、特定の周波数に対し車両用マフラ90が全体として振動してしまうことが効果的に抑制され、各周波数での放射音、振動エネルギの絶対値を低く抑えることができるので、車両用マフラ10の放射音による車室騒音、車外騒音を共に小さく抑えることができる。この構成は、比較的低周波数帯域の放射音を抑制することができる。