JP2007186431A - 抗酸化組成物及び脳神経細胞保護用医薬組成物、抗酸化剤及び脳神経細胞保護剤、並びにそれらの使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】体内酸化を抑制するための方法と、そのための組成物、薬剤、及び食品を提供すること。
【解決手段】クラチャイを乾燥物、粉末、又は抽出物などの加工物とし、又は4−hydroxypanduratinを精製し、これらを含有する組成物、薬剤、食品組成物、又は食品を調製する。これらをヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与することによって、体内酸化の抑制をはじめとし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させることや、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することができる。
また、パスピエールを乾燥物、粉末、又は抽出物などの加工物とし、これらを含有する組成物、薬剤、食品組成物、又は食品を調製する。これらをヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与することによって、体内酸化の抑制をはじめとし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】クラチャイを乾燥物、粉末、又は抽出物などの加工物とし、又は4−hydroxypanduratinを精製し、これらを含有する組成物、薬剤、食品組成物、又は食品を調製する。これらをヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与することによって、体内酸化の抑制をはじめとし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させることや、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することができる。
また、パスピエールを乾燥物、粉末、又は抽出物などの加工物とし、これらを含有する組成物、薬剤、食品組成物、又は食品を調製する。これらをヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与することによって、体内酸化の抑制をはじめとし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、クラチャイ加工物を含有する抗酸化組成物及び脳神経細胞保護用医薬組成物、4−hydroxypanduratinを有効成分として含有する抗酸化剤及び脳神経細胞保護剤、パスピエール加工物を含有する抗酸化組成物、並びにそれらの使用方法に関する。
活性酸素は、種々の生活習慣病、老化、癌等の疾患の罹患に深く関与している。一般に、活性酸素は、環境汚染による空気の汚れ、放射線、添加物が含まれた食品、喫煙、紫外線、ストレス等の刺激により体内で自然に発生すると考えられている。また、呼吸により体内に取り入れた酸素のうち約2%が活性酸素となり、この活性酸素が身体の細胞を傷つけているとも考えられている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
「八木国夫、中野稔(監修)、二木鋭雄、島崎弘幸(編):「活性酸素 化学・生物学・医学」、医歯薬出版(1987)」 「Halliwell, B., and Gutteridge, J. M. C.(松尾光芳、嵯峨井勝、吉川敏一訳):「フリーラジカルと生体」、学会出版センター(1988)」
「八木国夫、中野稔(監修)、二木鋭雄、島崎弘幸(編):「活性酸素 化学・生物学・医学」、医歯薬出版(1987)」 「Halliwell, B., and Gutteridge, J. M. C.(松尾光芳、嵯峨井勝、吉川敏一訳):「フリーラジカルと生体」、学会出版センター(1988)」
このように、活性酸素を発生させる要因は、我々の生活環境に深く関与していると共に、我々は、常に活性酸素にさらされやすい状況下に置かれている。
そこで、本発明は、体内酸化を抑制するための方法と、そのための組成物、薬剤、及び食品を提供することを目的とする。
そこで、本発明は、体内酸化を抑制するための方法と、そのための組成物、薬剤、及び食品を提供することを目的とする。
本発明者らは、以下の実施例に示す通り、抗酸化作用を有する新規植物について検討を行ったところ、クラチャイ及びパスピエールに抗酸化作用を有することを発見した。さらに、クラチャイに含まれる化合物を分析した結果、4−hydroxypanduratinが強い抗酸化作用及び脳神経保護作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる抗酸化組成物は、クラチャイ加工物を含有していることを特徴とする。ここで、前記加工物は、例えば、乾燥物、粉末、又は抽出物であることが好ましい。
また、本発明にかかる組成物は、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる組成物であって、クラチャイ加工物を含有していることを特徴とする。ここで、前記加工物は、例えば、乾燥物、粉末、又は抽出物であることが好ましい。
さらに、本発明にかかる脳神経細胞保護用組成物は、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するための脳神経細胞保護用組成物であって、クラチャイ加工物を含有していることを特徴とする。ここで、前記加工物は、例えば、乾燥物、粉末、又は抽出物であることが好ましい。
また、本発明にかかる食品組成物は、抗酸化作用を有する食品組成物であって、クラチャイ加工物を含有することを特徴とする。ここで、食品組成物は、例えば、健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品は、クラチャイ加工物を含有し、抗酸化抑制作用を有することを特徴とし、体内酸化を抑制するために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
また、本発明にかかる食品は、クラチャイ加工物を含有し、抗酸化抑制作用を有することを特徴とし、体内酸化に起因する疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品組成物は、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる食品組成物であって、クラチャイ加工物を含有することを特徴とする。ここで、食品組成物は、例えば、健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする。
また、本発明にかかる食品は、クラチャイ加工物を含有し、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させることを特徴とし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品組成物は、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するための食品組成物であって、クラチャイ加工物を含有することを特徴とする。ここで、食品組成物は、例えば、健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする。
また、本発明にかかる食品は、クラチャイ加工物を含有し、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することを特徴とし、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品は、クラチャイ加工物を含有し、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することを特徴とし、グルタミン酸の過剰摂取による神経疾患の治療、予防、又は症状の緩和のために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
また、本発明にかかる抗酸化剤は、4−hydroxypanduratinを有効成分として含有していることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる薬剤は、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる薬剤であって、4−hydroxypanduratinを有効成分として含有していることを特徴とする。
また、本発明にかかる脳神経細胞保護剤は、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するための脳神経細胞保護剤であって、4−hydroxypanduratinを有効成分として含有していることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品組成物は、抗酸化作用を有する食品組成物であって、4−hydroxypanduratinを含有することを特徴とする。ここで、食品組成物は、例えば、健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする。
また、本発明にかかる食品は、4−hydroxypanduratinを含有し、抗酸化抑制作用を有するものであることを特徴とし、体内酸化を抑制するために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品は、4−hydroxypanduratinを含有し、抗酸化抑制作用を有するものであることを特徴とし、体内酸化に起因する疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
また、本発明にかかる食品組成物は、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる食品組成物であって、4−hydroxypanduratinを含有することを特徴とする。ここで、食品組成物は、例えば、健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品は、4−hydroxypanduratinを含有し、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるものであることを特徴とし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
また、本発明にかかる食品組成物は、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制する食品組成物であって、4−hydroxypanduratinを含有することを特徴とする。ここで、食品組成物は、例えば、健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品は、4−hydroxypanduratinを含有し、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することを特徴とし、脳神経細胞を保護するために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
また、本発明にかかる食品は、4−hydroxypanduratinを含有し、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することを特徴とし、グルタミン酸の過剰摂取による神経疾患の治療、予防、又は症状の緩和のために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる抗酸化組成物は、パスピエール加工物を含有していることを特徴とする。ここで、前記加工物は、例えば、乾燥物、粉末、又は抽出物であることが好ましい。
また、本発明にかかる組成物は、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる組成物であって、パスピエール加工物を含有していることを特徴とする。ここで、前記加工物は、例えば、乾燥物、粉末、又は抽出物であることが好ましい。
さらに、本発明にかかる食品組成物は、抗酸化作用を有する食品組成物であって、パスピエール加工物を含有することを特徴とする。ここで、食品組成物は、例えば、健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする。
また、本発明にかかる食品は、パスピエール加工物を含有し、抗酸化抑制作用を有することを特徴とし、体内酸化を抑制するために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品は、パスピエール加工物を含有し、抗酸化抑制作用を有することを特徴とし、体内酸化に起因する疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
また、本発明にかかる食品組成物は、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる食品組成物であって、パスピエール加工物を含有することを特徴とする。ここで、食品組成物は、健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする。
さらに、本発明にかかる食品は、パスピエール加工物を含有し、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させることを特徴とし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
ここでクラチャイは、Boesenbergia pandurataであるが、異名として知られているKaempferia rotunda、Boesenbergia rotunda、Gastrochilus panduratus、及びKaempferia pandurataも含むものとする。
本発明によって、体内酸化を抑制するための方法と、そのための組成物、薬剤、及び食品を提供することができる。
以下に、本発明の実施の形態において実施例を挙げながら具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
===クラチャイ加工物及びパスピエール加工物の製造方法===
クラチャイ加工物に用いられるクラチャイ(学名:Boesenbergia pandurata)、及びパスピエール加工物に用いられるパスピエール(学名:Salicornia europaea L.)は、野生のものでも、一般の食料品店で販売しているものでもよい。ここで、加工物の形態としては、乾燥物、粉末、抽出物等が挙げられるが、これらに限定されない。加工物の製造方法は、例えば以下の通りである。
クラチャイ加工物に用いられるクラチャイ(学名:Boesenbergia pandurata)、及びパスピエール加工物に用いられるパスピエール(学名:Salicornia europaea L.)は、野生のものでも、一般の食料品店で販売しているものでもよい。ここで、加工物の形態としては、乾燥物、粉末、抽出物等が挙げられるが、これらに限定されない。加工物の製造方法は、例えば以下の通りである。
乾燥物は、風乾、凍結乾燥等により製造することができる。また、粉末は、前述の乾燥物を、例えば、ミキサー等を用いて裁断したり、挽いたりすることによって得られる。また、抽出物は、クロロホルム・メタノール抽出(例えばクロロホルム:メタノール=3:1〜1:1溶液を使用)、エタノール抽出(例えば、60%〜100%エタノールを使用)、メタノール抽出(例えば、60%〜100%メタノールを使用)、水抽出(例えば、60〜100℃の熱水を使用)によって得られる。
===4−hydroxypanduratinの抽出方法===
4−hydroxypanduratinの抽出方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、クラチャイを凍結乾燥し、これをミキサーにかけて粉末にする。この粉末をCH2Cl2-MeOH (1:1)の溶液に入れて抽出する。抽出液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮乾固する。これをhexane-EtOAc (5:1)で平衡化したシリカゲルカラムに供し、同溶媒で展開する。最後に、ESI-MS, NMR解析(2次元NMRを含む)などにより、展開物が(-)-4-hydroxypanduratinか否かを確認する。
4−hydroxypanduratinの抽出方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、クラチャイを凍結乾燥し、これをミキサーにかけて粉末にする。この粉末をCH2Cl2-MeOH (1:1)の溶液に入れて抽出する。抽出液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮乾固する。これをhexane-EtOAc (5:1)で平衡化したシリカゲルカラムに供し、同溶媒で展開する。最後に、ESI-MS, NMR解析(2次元NMRを含む)などにより、展開物が(-)-4-hydroxypanduratinか否かを確認する。
===抗酸化組成物===
一般に、生物が生命現象を維持するのに必要不可欠な酸化反応と、過剰に生産される活性酸素を不活性化する抗酸化防御機構のバランスが崩れたときに、酸化ストレスが誘起され、生体内では脂質過酸化反応が引き起こされる。
一般に、生物が生命現象を維持するのに必要不可欠な酸化反応と、過剰に生産される活性酸素を不活性化する抗酸化防御機構のバランスが崩れたときに、酸化ストレスが誘起され、生体内では脂質過酸化反応が引き起こされる。
発明者らが見出したように、以下の実施例に記載の通り、クラチャイ加工物及び4−hydroxypanduratin、並びにパスピエール加工物は、細胞における脂質過酸化作用を抑制する。従って、クラチャイ加工物を含有する組成物及び4−hydroxypanduratin、並びにパスピエール加工物を有効成分として含有する組成物は、抗酸化組成物として有用である。
上述の通り、クラチャイ加工物及び4−hydroxypanduratin、並びにパスピエール加工物は、脂質過酸化作用を抑制する。細胞膜脂質は、不飽和脂肪酸を多く含むため、活性酸素やフリーラジカルによる酸化的攻撃を受けやすく、その結果として、脂質過酸化が生じる。従って、クラチャイ加工物を含有する組成物及び4−hydroxypanduratinを有効成分として含有する組成物、並びにパスピエール加工物を含有する組成物は、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる組成物としても有用である。
なお、活性酸素とは、普通の酸素分子(O2)よりも活性化された状態の酸素分子とその関連物質のことを意味し、ラジカル種<スーパーオキシド(・O2 −)、ヒドロキシルラジカル(HO・)、ヒドロペルオキシルラジカル(HOO・)、アルコキシルラジカル(LO・)、アルキルペルオキシルラジカル(LOO・)、一酸化窒素(NO)など>及びノンラジカル種<過酸化水素(H2O2)、一重項酸素(1O2)、ペルオキシナイトライト(ONOO−)、脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)、次亜塩素酸(HOCl)、オゾン(O3)など>を含む。
また、ラジカルとは、酸化作用が強く、他の分子から、1個の電子を奪って容易に酸化させる原子又は分子のことをいい、多くの場合、不対電子を有する。
ここで、活性酸素/ラジカルとは、活性酸素及び/又はラジカルのことを意味し、相手分子を容易に酸化させるという作用機序を有し、脂質、特に、細胞膜のリン脂質を酸化させたり、蛋白やDNAに酸化障害を与えたりすることにより、血管を障害し、老化や癌化を促進する分子種のことである。活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させると、成人病、老化、癌化などの予防になるばかりでなく、それらの進行を抑制する効果がある。
===抗酸化剤===
本発明の抗酸化組成物を含有する抗酸化剤に用いられ得る薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質を用いてもよく、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等を含有してもよい。さらに必要に応じて、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量含有してもよい。また、剤形としては、経口剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、シロップ剤、徐放性錠・カプセル・顆粒剤、カシュー剤、咀嚼錠剤又はドロップ剤等が、注射剤は、例えば、溶液性注射剤、乳濁性注射剤、又は固形注射剤等が挙げられる。
本発明の抗酸化組成物を含有する抗酸化剤に用いられ得る薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質を用いてもよく、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等を含有してもよい。さらに必要に応じて、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量含有してもよい。また、剤形としては、経口剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、シロップ剤、徐放性錠・カプセル・顆粒剤、カシュー剤、咀嚼錠剤又はドロップ剤等が、注射剤は、例えば、溶液性注射剤、乳濁性注射剤、又は固形注射剤等が挙げられる。
なお、本発明の抗酸化剤の投与量は、年齢、体重、適応症又は投与・摂取経路によって異なるが、上記作用が発揮でき、かつ、生じる副作用が許容し得る範囲内であれば特に限定されない。
また、投与の判断基準としては、例えば、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において、血液中の過酸化物濃度(例えば、過酸化脂質)を測定し、その値が所定値以上である場合にクラチャイ加工物又は4−hydroxypanduratin、並びにパスピエール加工物を投与する。ここで、「所定値」とは、例えば、一般的に血液中の過酸化物濃度(例えば、過酸化脂質)が健常人より高いと判断される値や、医療従事者によって定めた基準値等が考えられる。なお、過酸化脂質の具体的な測定方法としては、チオバルビツール酸(TBA)法又はヘモグロビン−メチレンブルー法等が挙げられる。
あるいは、例えば、ヒト又はヒト以外の脊椎動物が、体内酸化に起因する疾患(例えば、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、未熟児網膜症、肝疾患、老化、神経細胞障害、癌等)に罹患した場合、又はその疾患を予防する必要がある場合に、クラチャイ加工物又は4−hydroxypanduratin、並びにパスピエール加工物を投与するような場合が考えられる。
なお、「体内酸化に起因する疾病」とは、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、未熟児網膜症、肝疾患、老化、神経細胞障害、癌等が挙げられるが、酸化、又は活性酸素/ラジカルによる酸化に起因する疾患であれば、これらに限定されない。
また、本剤は、抗酸化作用を増強させるために、カロチノイドやビタミンC・E等の天然抗酸化剤の他、フラボノイドやタンニン等のポリフェノール・カフェー酸誘導体・リグナン類・サポニン類等生薬に含まれる抗酸化物質と併用してもよい。
さらに、本剤は活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる働きも有する。従って、本剤とSOD(superoxide dismutase)、カタラーゼ、ビタミンE、又はビタミンC等の生体内ラジカル消去物質を併用すれば、本剤の効果はより高まることが予想される。
===脳神経細胞保護組成物===
培養神経細胞に対してグルタミン酸を投与したときに神経細胞死などの神経細胞障害が生じる。マウス個体に対しても、新生仔に過剰のグルタミン酸を経口的にあるいは非経口的に与えると、視床下部の弓状核及び網膜の特異な変化を生じることが報告され、乳児に対しては脳障害や脳発達障害の危険性が指摘されている。
培養神経細胞に対してグルタミン酸を投与したときに神経細胞死などの神経細胞障害が生じる。マウス個体に対しても、新生仔に過剰のグルタミン酸を経口的にあるいは非経口的に与えると、視床下部の弓状核及び網膜の特異な変化を生じることが報告され、乳児に対しては脳障害や脳発達障害の危険性が指摘されている。
また、臨床的には、中華料理症候群と呼ばれている疾患があり、グルタミン酸ナトリウムの過剰摂取は、成人に対しても、悪心、頭痛、眩暈、吐き気、手足の痺れなどの神経疾患又は神経疾患に随伴する症状が生じることが知られている。
以下の実施例に示す通り、4−hydroxypanduratinは、グルタミン酸の過剰投与による神経細胞傷害を抑制できる。従って、4−hydroxypanduratinやそれを豊富に含有するクラチャイ加工物を有効成分として含有する組成物は、脳神経細胞保護組成物として有用である。
===脳神経細胞保護剤===
本発明の脳神経細胞保護組成物を含有する脳神経細胞保護剤において、薬学的に許容される担体、投与経路及び投与量は、上記「抗酸化剤」に記載の通りである。
本発明の脳神経細胞保護組成物を含有する脳神経細胞保護剤において、薬学的に許容される担体、投与経路及び投与量は、上記「抗酸化剤」に記載の通りである。
また、投与の判断基準としては、例えば、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において、血中又は脳内のグルタミン酸の濃度を測定し、その値が所定値以上である場合に4−hydroxypanduratinやクラチャイ加工物を投与する。ここで、「所定値」とは、例えば、一般的に血中又は脳内のグルタミン酸の濃度が健常人より高いと判断される値や、医療従事者によって定めた基準値等が考えられる。
あるいは、グルタンミン酸の過剰摂取に起因する神経疾患(例えば、脳細胞損傷、神経障害)に罹患した場合、又はその疾患を予防する必要がある場合に、4−hydroxypanduratinやクラチャイ加工物を投与するような場合が考えられる。
==クラチャイ加工物又は4−hydroxypanduratinを含有する食品組成物又は食品==
ヒト又はヒト以外の脊椎動物に対してクラチャイ加工物又は4−hydroxypanduratinを含有する食品組成物又は食品を与えることは、例えば、体内における酸化、活性酸素/ラジカルによる酸化、又はグルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害の治療、予防、又はこれらに起因する症状の緩和を可能にする。
ヒト又はヒト以外の脊椎動物に対してクラチャイ加工物又は4−hydroxypanduratinを含有する食品組成物又は食品を与えることは、例えば、体内における酸化、活性酸素/ラジカルによる酸化、又はグルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害の治療、予防、又はこれらに起因する症状の緩和を可能にする。
また、これらの食品組成物又は食品は、「体内酸化を抑制するために用いられるもの」、「体内酸化に起因する疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるもの」、「体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるために用いられるもの」、「グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するために用いられるもの」、又は「グルタミン酸の過剰摂取による神経疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるもの」である旨の表示を付しておくことが好ましい。
ここで、「体内酸化に起因する疾患」とは、例えば、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、未熟児網膜症、肝疾患、老化、神経細胞障害、癌等が挙げられるが、体内酸化、又は活性酸素/ラジカルによる酸化に起因する疾患であれば、これらに限定されない。
クラチャイ加工物又は4−hydroxypanduratinを含有する食品組成物又は食品が経口から摂取される場合は、固形状又は液状等の任意の形態で構わない。
なお、本発明の食品組成物又は食品の摂取量は、年齢、体重、適応症又は投与・摂取経路によって異なるが、体内酸化、活性酸素/ラジカルによる酸化、又はグルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害の治療、予防、又は症状の緩和ができ、かつ、生じる副作用が許容し得る範囲内であれば特に限定されない。
また、本発明の食品組成物又は食品は、抗酸化作用を増強させるために、カロチノイドやビタミンC・E等の天然抗酸化組成物の他、フラボノイドやタンニン等のポリフェノール・カフェー酸誘導体・リグナン類・サポニン類等生薬に含まれる他の抗酸化物質と併用してもよい。
さらに、本発明の食品組成物又は食品は活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる働きも有する。従って、本発明の食品組成物又は食品の効果をより高めるために、本発明の食品組成物又は食品と、SOD(superoxide dismutase)、カタラーゼ、ビタミンE、又はビタミンC等の生体内ラジカル消去物質を併用してもよい。
また、調味料として知られているグルタミン酸ソーダを一度に大量摂取すると、脳神経細胞障害を起こすと言われている。従って、本発明の食品組成物又は食品は、グルタミン酸(例えば、グルタミン酸ソーダ)との食べ合わせに適している。
==パスピエール加工物を含有する食品組成物又は食品==
ヒト又はヒト以外の脊椎動物に対してパスピエール加工物を含有する食品組成物又は食品を与えることは、例えば、体内における酸化もしくは活性酸素/ラジカルによる酸化の治療、予防、又はこれらに起因する症状の緩和を可能にする。
ヒト又はヒト以外の脊椎動物に対してパスピエール加工物を含有する食品組成物又は食品を与えることは、例えば、体内における酸化もしくは活性酸素/ラジカルによる酸化の治療、予防、又はこれらに起因する症状の緩和を可能にする。
また、これらの食品組成物又は食品は、「体内酸化を抑制するために用いられるもの」、「体内酸化に起因する疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるもの」、又は「体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるために用いられるもの」である旨の表示を付しておくことが好ましい。
ここで、「体内酸化に起因する疾患」とは、例えば、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、未熟児網膜症、肝疾患、老化、神経細胞障害、癌等が挙げられるが、体内酸化、又は活性酸素/ラジカルによる酸化に起因する疾患であれば、これらに限定されない。
パスピエール加工物を含有する食品組成物又は食品が経口から摂取される場合は、固形状又は液状等の任意の形態で構わない。
なお、本発明の食品組成物又は食品の摂取量は、年齢、体重、適応症又は投与・摂取経路によって異なるが、体内酸化の抑制、又は活性酸素/ラジカルによる酸化の治療、予防、又はこれらに起因する症状の緩和ができ、かつ、生じる副作用が許容し得る範囲内であれば特に限定されない。
また、本発明の食品組成物又は食品は、抗酸化作用を増強させるために、カロチノイドやビタミンC・E等の天然抗酸化組成物の他、フラボノイドやタンニン等のポリフェノール・カフェー酸誘導体・リグナン類・サポニン類等生薬に含まれる他の抗酸化物質と併用してもよい。
さらに、本発明の食品組成物又は食品は活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる働きも有する。従って、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる食品組成物又は食品の効果をより高めるために、本発明の食品組成物又は食品と、SOD(superoxide dismutase)、カタラーゼ、ビタミンE、又はビタミンC等の生体内ラジカル消去物質を併用してもよい。
以下、実施例を用いて、以上に説明した実施態様を具体的に説明するが、これは例示であって、本発明をこの実施例に限定するものではない。なお、以下の実施例において、クラチャイはBoesenbergia pandurataを用いた。
<実施例1:クラチャイ加工物及び4-hydroxypanduratinを用いた実験>
===抗酸化活性物質の調製===
(1)クラチャイ粉末の作製
クラチャイ(市販品)1.5kgを凍結乾燥し、これをミキサーで粉末とした。これと同様な方法を用いて、茶葉(市販品:聚楽苑「一会の友」)と銀杏草(市販品)も粉末にした。
===抗酸化活性物質の調製===
(1)クラチャイ粉末の作製
クラチャイ(市販品)1.5kgを凍結乾燥し、これをミキサーで粉末とした。これと同様な方法を用いて、茶葉(市販品:聚楽苑「一会の友」)と銀杏草(市販品)も粉末にした。
(2)クラチャイ抽出物の作製
クロロホルム・メタノール抽出(クロロホルム:メタノール=1:1)、エタノール抽出(100%エタノールを使用)、メタノール抽出(100%メタノールを使用)、熱水抽出(100℃の熱水を使用)によって、クラチャイ抽出物を得た。具体的な抽出方法は、以下の通りである。
クロロホルム・メタノール抽出(クロロホルム:メタノール=1:1)、エタノール抽出(100%エタノールを使用)、メタノール抽出(100%メタノールを使用)、熱水抽出(100℃の熱水を使用)によって、クラチャイ抽出物を得た。具体的な抽出方法は、以下の通りである。
まず、クラチャイ1.5 kgを凍結乾燥し、これをミキサーで粉末とした。このうち16 g ずつを(i)CH2Cl2-MeOH (1:1)の溶液100 ml、(ii)EtOH溶液100ml、(iii)MeOH溶液100ml、(iv)100℃の熱水100ml、(v)20℃の水100mlで、2度抽出した。抽出液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮乾固したところ、その重量はそれぞれ(i)1.4g、(ii)1.0g、(iii)1.6g、(iv)2.6g、(v)2.0gであった。
また、上記と同様の方法を用いて、茶葉の抽出物も作製した。
また、上記と同様の方法を用いて、茶葉の抽出物も作製した。
(3)4−hydroxypanduratinの単離
クラチャイ1.5 kg(購入先)を凍結乾燥し、これをミキサーで粉末とした。これをCH2Cl2-MeOH (1:1)の溶液1Lで、2度抽出した。抽出液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮乾固したところ、その重量は2.89 gであった。これをhexane-EtOAc (5:1)で平衡化したシリカゲルカラム(直径3 cm×長さ 20 cm、silica gel 60 (Merck))に供し、同溶媒で展開した。
クラチャイ1.5 kg(購入先)を凍結乾燥し、これをミキサーで粉末とした。これをCH2Cl2-MeOH (1:1)の溶液1Lで、2度抽出した。抽出液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮乾固したところ、その重量は2.89 gであった。これをhexane-EtOAc (5:1)で平衡化したシリカゲルカラム(直径3 cm×長さ 20 cm、silica gel 60 (Merck))に供し、同溶媒で展開した。
その結果、活性物質として6種類の化合物が単一化合物として溶出された。各化合物に対してESI-MS, 2次元NMRを含むNMR解析を実施した結果、それぞれ5-hydroxy-7-methoxyflavanone (458.0mg)、(-)-panduratin A (402.5mg)、5,7-dihydroxyflavanone (270.1mg)、2’,6’-dihydroxy4’-methoxychalcone (47.0mg)、2’,4’-dihydroxy-6’-methoxychalcone (39.1mg)、(-)-4-hydroxypanduratin A (213.2mg)と同定した。
(-)-4-hydroxypanduratin Aを同定するに至ったMS、NMRのデータは、以下に示す通りである。ここで、NMRの炭素のナンバーは、構造式に付記したものである。
ESI-MS 393 (M+H)+, 415 (M+Na)+
ESI-MS 393 (M+H)+, 415 (M+Na)+
<(-)-4-hydroxypanduratin Aの400 MHz 1H NMR(C6D6中)及び13C NMRデータ(DMSO-d6中で測定したデータを示す)>
本データは、以前に報告された(-)-4-hydroxypanduratin Aのデータ(J. Agric. Food Chem., vol. 49 (6), 3046と一致した。
本データは、以前に報告された(-)-4-hydroxypanduratin Aのデータ(J. Agric. Food Chem., vol. 49 (6), 3046と一致した。
===ラット脳脂質過酸化抑制作用実験===
以下の実験では、凍結したラット脳(フナコシ、カタログNo.J-201)を氷冷下ホモジナイズして使用した。また、茶葉は抗酸化作用を有するので、ポジティブコントロールとして使用し、銀杏草は抗酸化作用を有さないので、ネガティブコントロールとして使用した。実験方法は、以下の通りである。
以下の実験では、凍結したラット脳(フナコシ、カタログNo.J-201)を氷冷下ホモジナイズして使用した。また、茶葉は抗酸化作用を有するので、ポジティブコントロールとして使用し、銀杏草は抗酸化作用を有さないので、ネガティブコントロールとして使用した。実験方法は、以下の通りである。
(1)クラチャイ加工物を用いたラット脳脂質過酸化抑制作用実験
100 mMリン酸緩衝液(pH 7.4) 0.6 ml中に、被検試料(クラチャイ粉末8μg/ml〜4mg/ml、及びクラチャイ抽出物(濃度は各々、粉末量に換算して32μg/ml〜16 mg/ml)0.05 ml、1mMアスコルビン酸0.1 ml及び蒸留水0.05 mlを添加し、37℃で5分間のプレインキュベーションを行った。ここにKuboらの方法(Cheeseman, K. H.; Forni, L. G. An investigation of the novel anti-inflammatory agents ONO-3144 and MK-447. Studies on their potential antioxidant activity. Biochem Pharmacol, 1988, 37, 4225-4233)により調製したラット脳ホモジネート(2.5% (w/v))を0.2 ml添加することで反応を開始させ、37℃で1時間、振とうしながらインキュベートを行った。その後、0.2 N塩酸中に20% (w/v)トリクロロ酢酸、0.5% (w/v) 2-チオバルビツール酸を含む混合液1 mlを上記反応液に添加することで反応を停止した。これを100℃で30分間煮沸処理して発色させ、冷却後、3000 rpmで5分間遠心分離した。遠心分離上清の532 nmでの吸光度を測定した。脂質酸化抑制率(%)は、式100-{(S-B)/(C-B)}×100を計算することによって求めた。ここで、C(control)は被検試料を含まないメタノール溶液での532 nmの吸光度を、B(blank)はラット脳ホモジネートを添加しない場合の532 nmの吸光度を、S(sample)は被検試料の吸光度を示す。なお、コントロール実験として、被験物質を銀杏草粉末(ネガティブコントロール)、茶葉粉末(ポジティブコントロール)又は茶葉抽出物(ポジティブコントロール)に変更し、上記と同様な実験を行った。
100 mMリン酸緩衝液(pH 7.4) 0.6 ml中に、被検試料(クラチャイ粉末8μg/ml〜4mg/ml、及びクラチャイ抽出物(濃度は各々、粉末量に換算して32μg/ml〜16 mg/ml)0.05 ml、1mMアスコルビン酸0.1 ml及び蒸留水0.05 mlを添加し、37℃で5分間のプレインキュベーションを行った。ここにKuboらの方法(Cheeseman, K. H.; Forni, L. G. An investigation of the novel anti-inflammatory agents ONO-3144 and MK-447. Studies on their potential antioxidant activity. Biochem Pharmacol, 1988, 37, 4225-4233)により調製したラット脳ホモジネート(2.5% (w/v))を0.2 ml添加することで反応を開始させ、37℃で1時間、振とうしながらインキュベートを行った。その後、0.2 N塩酸中に20% (w/v)トリクロロ酢酸、0.5% (w/v) 2-チオバルビツール酸を含む混合液1 mlを上記反応液に添加することで反応を停止した。これを100℃で30分間煮沸処理して発色させ、冷却後、3000 rpmで5分間遠心分離した。遠心分離上清の532 nmでの吸光度を測定した。脂質酸化抑制率(%)は、式100-{(S-B)/(C-B)}×100を計算することによって求めた。ここで、C(control)は被検試料を含まないメタノール溶液での532 nmの吸光度を、B(blank)はラット脳ホモジネートを添加しない場合の532 nmの吸光度を、S(sample)は被検試料の吸光度を示す。なお、コントロール実験として、被験物質を銀杏草粉末(ネガティブコントロール)、茶葉粉末(ポジティブコントロール)又は茶葉抽出物(ポジティブコントロール)に変更し、上記と同様な実験を行った。
結果は、図1に示す通りである。なお、脂質酸化を50%抑制する値をIC50とした。図1はIC50に達した各被験試料の希釈率を示している。具体的には、最終濃度として、クラチャイ粉末は0.2 mg/ml、抽出エキスは同粉末換算0.8mg相当/mlに調製し、これを1/2ずつ希釈して、各濃度について脂質酸化抑制率(%)を測定し、希釈倍率と脂質酸化抑制率(%)の関係をグラフにプロットすることによりIC50に達するときの希釈倍率を決定した。この希釈倍率を縦軸に示す。
クラチャイ粉末は、抗酸化作用を有することで知られている茶葉より抗酸化作用が弱かったものの、高い抗酸化作用を有した。また、クラチャイ抽出物(特に、クロロホルム・メタノール抽出、エタノール抽出、メタノール抽出)においても、クラチャイ粉末より弱いながらも抗酸化作用が認められた。
従って、クラチャイ粉末やクラチャイ抽出物は、体内酸化を抑制するのに有効であると考えられる。
(2)クラチャイに含まれる化合物を用いたラット脳脂質過酸化抑制作用実験
次に、クラチャイに含まれる、「抗酸化活性物質の調製(3)4−hydroxypanduratinの単離」に記載の方法によって得られた化合物を用いて、以下の実験を行った。
次に、クラチャイに含まれる、「抗酸化活性物質の調製(3)4−hydroxypanduratinの単離」に記載の方法によって得られた化合物を用いて、以下の実験を行った。
本実験は、被験試料に「抗酸化活性物質の調製(3)4−hydroxypanduratinの単離」に記載の方法によって得られた化合物を用いた以外は、上記「ラット脳脂質過酸化抑制作用実験(1)」と同じ方法を用いて実験を行った。なお、脂質酸化を50%抑制する値をIC50とした。その結果、IC50は、以下の通りであることがわかった。
5-hydroxy-7-methoxyflavanone 230μM
(-)-panduratin A 15μM
5,7-dihydroxyflavanone 210μM
2’,6’-dihydroxy4’-methoxychalcone 70μM
2’,4’-dihydroxy-6’-methoxychalcone 38μM
(-)-4-hydroxypanduratin A 4.5μM
catechin (control) 17μM
以上より、クラチャイに含まれる化合物の中で最も抗酸化活性が高い化合物は、(-)-4-hydroxypanduratin Aであることがわかった。さらに、(-)-4-hydroxypanduratin Aの抗酸化作用は、(-)-panduratin Aの値と比べて約3.3倍も高かった。
5-hydroxy-7-methoxyflavanone 230μM
(-)-panduratin A 15μM
5,7-dihydroxyflavanone 210μM
2’,6’-dihydroxy4’-methoxychalcone 70μM
2’,4’-dihydroxy-6’-methoxychalcone 38μM
(-)-4-hydroxypanduratin A 4.5μM
catechin (control) 17μM
以上より、クラチャイに含まれる化合物の中で最も抗酸化活性が高い化合物は、(-)-4-hydroxypanduratin Aであることがわかった。さらに、(-)-4-hydroxypanduratin Aの抗酸化作用は、(-)-panduratin Aの値と比べて約3.3倍も高かった。
===脳神経細胞保護作用実験===
本発明の4-hydroxypanduratin Aが、脳神経細胞を保護するか否かを調べるために、以下の実験を行った。
本発明の4-hydroxypanduratin Aが、脳神経細胞を保護するか否かを調べるために、以下の実験を行った。
まず、N18-RE-105細胞(マウス神経芽腫クローンN18TG-2×18日齢Fisherラットの胎児網膜神経)をHAT(0.14mMチミジン、40μMアミノプテリン、0.1mMヒポキサンチン)含有90%DMEM及び10%胎仔ウシ血清を含む培養液を入れた25 cm2培養皿に播種し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。次に、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに上記の培養液を100μlずつ入れ、上記のN18-RE-105細胞を20,000細胞/ウェルずつ入れ、24時間培養した。その後、各ウェルの培地を10mM L-グルタミン酸を含む培地に交換し、48時間培養した。その後MTS(テトラゾリウム)を入れ、生細胞によるホルマザンクリスタル(青色)の産生を自動比色分析で定量した。なお、MTS活性は、プロメガ社から購入したキット(製品番号:#G5430)を用いて測定した。また、細胞死の割合(%)は、式100-{(T-C)/(B-C)}×100 (%)を用いて算出した。ここで、T(試験試料+L-グルタミン酸)、C(L-グルタミン酸のみ)及びB(試験試料もL-グルタミン酸も添加無し)は、492nmにおける吸光度である。グルタミン酸による細胞死を50%抑制するのに必要な試験試料の濃度をEC50とした。その値を以下に示す。
5-hydroxy-7-methoxyflavanone >200μM
(-)-panduratin A 13μM
5,7-dihydroxyflavanone >200μM
2’,6’-dihydroxy4’-methoxychalcone 37μM
2’,4’-dihydroxy-6’-methoxychalcone 48μM
(-)-4-hydroxypanduratin A 14μM
catechin (control) 160μM
これより、(-)-4-hydroxypanduratin Aの脳神経細胞保護作用は、非常に高いことが分かった。なお、(-)-4-hydroxypanduratin Aの脳神経細胞保護作用は、(-)-panduratin Aと同等であった。
5-hydroxy-7-methoxyflavanone >200μM
(-)-panduratin A 13μM
5,7-dihydroxyflavanone >200μM
2’,6’-dihydroxy4’-methoxychalcone 37μM
2’,4’-dihydroxy-6’-methoxychalcone 48μM
(-)-4-hydroxypanduratin A 14μM
catechin (control) 160μM
これより、(-)-4-hydroxypanduratin Aの脳神経細胞保護作用は、非常に高いことが分かった。なお、(-)-4-hydroxypanduratin Aの脳神経細胞保護作用は、(-)-panduratin Aと同等であった。
<実施例2:パスピエール加工物を用いた実験>
===抗酸化活性物質の調製===
(1)パスピエール粉末の作製
パスピエール(市販品)1.5kgを凍結乾燥し、これをミキサーで粉末とした。これと同様な方法を用いて、茶葉(市販品:聚楽苑「一会の友」)と銀杏草(市販品)も粉末にした。
(2)パスピエール抽出物の作製
クロロホルム・メタノール抽出(クロロホルム:メタノール=1:1)、エタノール抽出(100%エタノールを使用)、メタノール抽出(100%メタノールを使用)、熱水抽出(100℃の熱水を使用)によって、クラチャイ抽出物を得た。具体的な抽出方法は、上記実施例1「クラチャイ抽出物の作製」に記載の通りである。また、この抽出方法を用いて、茶葉の抽出物も作製した。
===抗酸化活性物質の調製===
(1)パスピエール粉末の作製
パスピエール(市販品)1.5kgを凍結乾燥し、これをミキサーで粉末とした。これと同様な方法を用いて、茶葉(市販品:聚楽苑「一会の友」)と銀杏草(市販品)も粉末にした。
(2)パスピエール抽出物の作製
クロロホルム・メタノール抽出(クロロホルム:メタノール=1:1)、エタノール抽出(100%エタノールを使用)、メタノール抽出(100%メタノールを使用)、熱水抽出(100℃の熱水を使用)によって、クラチャイ抽出物を得た。具体的な抽出方法は、上記実施例1「クラチャイ抽出物の作製」に記載の通りである。また、この抽出方法を用いて、茶葉の抽出物も作製した。
===ラット脳脂質過酸化抑制作用実験===
「パスピエール加工物」や「パスピエール抽出物」は、上記実施例1「(1)クラチャイ加工物を用いたラット脳脂質過酸化抑制作用実験」に記載した「クラチャイ加工物」や「クラチャイ抽出物」に対して用いられた方法と同様の方法を用いて、本実験を行った。
「パスピエール加工物」や「パスピエール抽出物」は、上記実施例1「(1)クラチャイ加工物を用いたラット脳脂質過酸化抑制作用実験」に記載した「クラチャイ加工物」や「クラチャイ抽出物」に対して用いられた方法と同様の方法を用いて、本実験を行った。
結果は、図2に示す通りである。なお、脂質酸化を50%抑制する値をIC50とした。図2はIC50に達した各被験試料の希釈率を示している。具体的には、パスピエール粉末あるいは抽出エキスを最終濃度粉末換算8mg相当/mlに調製し、これを1/2ずつ希釈して、各濃度について脂質酸化抑制率(%)を測定し、希釈倍率と脂質酸化抑制率(%)の関係をグラフにプロットすることによりIC50に達するときの希釈倍率を決定した。この希釈倍率を縦軸に示す。
パスピエール粉末は、抗酸化作用を有することで知られている茶葉と比べて、約2倍の抗酸化作用を有した。また、パスピエール抽出物(クロロホルム・メタノール抽出、エタノール抽出、メタノール抽出、熱水抽出)において、パスピエール粉末より弱いながらも抗酸化作用が認められた。
従って、パスピエール粉末及びパスピエール抽出物は、体内酸化を抑制するのに有効であると考えられる。
Claims (42)
- クラチャイ加工物を含有していることを特徴とする抗酸化組成物。
- 前記加工物が、乾燥物、粉末、又は抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化組成物。
- 活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる組成物であって、
クラチャイ加工物を含有していることを特徴とする組成物。 - 前記加工物が、乾燥物、粉末、又は抽出物であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
- グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するための脳神経細胞保護用組成物であって、
クラチャイ加工物を含有していることを特徴とする脳神経細胞保護用組成物。 - 前記加工物が、乾燥物、粉末、又は抽出物であることを特徴とする請求項5に記載の脳神経細胞保護用組成物。
- 抗酸化作用を有する食品組成物であって、
クラチャイ加工物を含有することを特徴とする食品組成物。 - 健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする請求項7に記載の食品組成物。
- クラチャイ加工物を含有し、抗酸化抑制作用を有することを特徴とし、体内酸化を抑制するために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- クラチャイ加工物を含有し、抗酸化抑制作用を有することを特徴とし、体内酸化に起因する疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるものである旨の表示を付した食品。
- 活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる食品組成物であって、
クラチャイ加工物を含有することを特徴とする食品組成物。 - 健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする請求項11に記載の食品組成物。
- クラチャイ加工物を含有し、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させることを特徴とし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するための食品組成物であって、
クラチャイ加工物を含有することを特徴とする食品組成物。 - 健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする請求項14に記載の食品組成物。
- クラチャイ加工物を含有し、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することを特徴とし、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- クラチャイ加工物を含有し、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することを特徴とし、グルタミン酸の過剰摂取による神経疾患の治療、予防、又は症状の緩和のために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- 4−hydroxypanduratinを有効成分として含有していることを特徴とする抗酸化剤。
- 活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる薬剤であって、
4−hydroxypanduratinを有効成分として含有していることを特徴とする薬剤。 - グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制するための脳神経細胞保護剤であって、
4−hydroxypanduratinを有効成分として含有していることを特徴とする脳神経細胞保護剤。 - 抗酸化作用を有する食品組成物であって、
4−hydroxypanduratinを含有することを特徴とする食品組成物。 - 健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする請求項21に記載の食品組成物。
- 4−hydroxypanduratinを含有し、抗酸化抑制作用を有するものであることを特徴とし、体内酸化を抑制するために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- 4−hydroxypanduratinを含有し、抗酸化抑制作用を有するものであることを特徴とし、体内酸化に起因する疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるものである旨の表示を付した食品。
- 活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる食品組成物であって、
4−hydroxypanduratinを含有することを特徴とする食品組成物。 - 健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする請求項25に記載の食品組成物。
- 4−hydroxypanduratinを含有し、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるものであることを特徴とし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制する食品組成物であって、
4−hydroxypanduratinを含有することを特徴とする食品組成物。 - 健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする請求項28に記載の食品組成物。
- 4−hydroxypanduratinを含有し、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することを特徴とし、脳神経細胞を保護するために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- 4−hydroxypanduratinを含有し、グルタミン酸の過剰摂取による脳神経細胞障害を抑制することを特徴とし、グルタミン酸の過剰摂取による神経疾患の治療、予防、又は症状の緩和のために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- パスピエール加工物を含有していることを特徴とする抗酸化組成物。
- 前記加工物が、乾燥物、粉末、又は抽出物であることを特徴とする請求項32に記載の抗酸化組成物。
- 活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる組成物であって、
パスピエール加工物を含有していることを特徴とする組成物。 - 前記加工物が、乾燥物、粉末、又は抽出物であることを特徴とする請求項34に記載の組成物。
- 抗酸化作用を有する食品組成物であって、
パスピエール加工物を含有することを特徴とする食品組成物。 - 健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする請求項36に記載の食品組成物。
- パスピエール加工物を含有し、抗酸化抑制作用を有することを特徴とし、体内酸化を抑制するために用いられるものである旨の表示を付した食品。
- パスピエール加工物を含有し、抗酸化抑制作用を有することを特徴とし、体内酸化に起因する疾患の治療、予防、又は症状の緩和に用いられるものである旨の表示を付した食品。
- 活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させる食品組成物であって、
パスピエール加工物を含有することを特徴とする食品組成物。 - 健康食品、機能性食品、又は保健機能食品を構成することを特徴とする請求項40に記載の食品組成物。
- パスピエール加工物を含有し、活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させることを特徴とし、体内に存在する活性酸素/ラジカルによる酸化を減少させるために用いられるものである旨の表示を付した食品。
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