JP2007181882A - 転写光学面の加工方法、光学素子用成形金型及び光学素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学素子用成形金型に用いられる高硬度材料の加工で、工具のチッピングを抑え、工具の寿命を延ばし、1つの工具で多数の光学素子成形金型の転写光学面を連続して高精度に切削加工できる転写光学面の加工方法、それにより加工される光学素子成形金型及びそれにより成形される光学素子を提供する。
【解決手段】すくい角θを切り込み点Pcにおいてマイナスの値とすると、工具Tの刃先にかかる切削抵抗力のべクトルを、図1に示すように、すくい面Tsと平行な分力F2と垂直な分力F1に分解したときに、そのうちの後者の分力F1が工具刃先の内方へ方向を変えられることにより、刃先全体でこの力を受けることになる。また、前者の分力F2は、刃先をすくい面Tsに沿って引っ張る力ではあるが、これは外力であり、例えばダイヤモンドは摩擦係数も小さな材料であることが知られており、この力によって摩擦で刃先が引っ張られてダイヤモンド内で発生する引っ張りの内部応力は極めて小さくなる。
【選択図】図1
【解決手段】すくい角θを切り込み点Pcにおいてマイナスの値とすると、工具Tの刃先にかかる切削抵抗力のべクトルを、図1に示すように、すくい面Tsと平行な分力F2と垂直な分力F1に分解したときに、そのうちの後者の分力F1が工具刃先の内方へ方向を変えられることにより、刃先全体でこの力を受けることになる。また、前者の分力F2は、刃先をすくい面Tsに沿って引っ張る力ではあるが、これは外力であり、例えばダイヤモンドは摩擦係数も小さな材料であることが知られており、この力によって摩擦で刃先が引っ張られてダイヤモンド内で発生する引っ張りの内部応力は極めて小さくなる。
【選択図】図1
Description
本発明は、転写光学面の加工方法、光学素子用成形金型及び光学素子に関し、特にガラスモールドに適した硬度の高い光学素子用成形金型の転写光学面の加工方法、及びそれを用いて製造された光学素子成形用型並びにそれにより成形された光学素子に関するものである。
従来、光学素子の最も普及した生産方式として、プラスチック材料の射出成形があげられ、比較的精度の高い光学素子も安価に効率よく生産されてきた。しかし、デジタル映像技術が発展するにつれ容易に大容量の画像情報が扱えるようになり、その入力手段の1つである撮像カメラでは高精細化と小型化が急速に進み、撮像素子の画素数の増加や微小化によって、そこへ光学像を結像させるための撮像レンズも非常に高性能で高精度な光学素子が求められるようになってきた。
また、画像だけでなく音楽や文書データなどの情報の入力や保存手段として用いられている光ディスクにおいても大容量化と小型化を意味する高密度化が求められ、光ディスクへの読み取りや書き込みに用いるレーザー光源の波長は、従来の赤色から青色や紫外などへの短波長化が進められている。それに対応するため光ピックアップ用光学素子には、高精度化、従来のNA0.65から0,85以上への高NA化・高性能化と、従来の光ディスクシステムとの互換性を有する高機能化が要求され、実用化されてきている。
このように従来よりも非常に高精度で高機能な光学素子が急速に求められるに従って、単に光学素子の初期性能が高いだけでなく、光学素子の性能が高い故に容易に温度や波長などの変化によって大きな性能変化を発生しやすいことから、耐環境特性や耐被暴性といった初期性能が安定して維持される性質も、光学素子において非常に重要となってきている。
このような光学素子としては、プラスチック材料を用いるよりも、ガラスモールド(以下GM)と呼ばれる熱間プレス成形によって成形される光学ガラスを利用する方が、温度による屈折率変化がほとんどなく、また材料の選択範囲が広く、設計の自由度を広げられる点から好ましい。
しかるに、光学ガラスの軟化温度は400〜600℃とプラスチック材料よりも数100℃も高く、またこの温度では耐熱金属材料であっても大気中では酸化によって鏡面状態は維持できないため、GM用成形金型には、セラミックスや超硬などの耐熱性が高く且つ例えばビッカース硬度Hv1500以上と硬度が高く容易に型の転写光学面に傷が付かない高硬度な材料が用いられている。ところで、これら光学素子の生産においては、その転写マスターとなる成形金型の転写光学面の形状精度や表面粗さが、成形光学素子の品質を決める大きな要素であることは言うまでもない。尚、本明細書において、「転写光学面」とは成形される光学素子の光学面を成形転写する成形金型の部分(面)を指す。
このようなGM用成形金型の高硬度材料は、転写光学面を得るには非常に難加工な材料であり、加工具としてはダイヤモンドを用いるのが一般的であり、従来はダイヤモンドの砥粒を用いた砥石を使用して研削加工で転写光学面の創成加工を行っていた。また、研削加工後の表面粗さを向上する必要がある場合は、後加工として研磨加工を行うこともあった。
ダイヤモンド砥石は、高硬度材料を加工した際、砥石表面下に存在する新しい切れ刃(ダイヤモンド砥粒)が現れ(自生発刃作用という)、加工能力を下げずに加工出来るメカニズムとなっている。しかしながら、このような砥石は砥粒と結合剤を混合し焼き固めただけのものであるから、ミクロ的には均一な構造とはいえず、砥石の形状を高精度に形作ることは難しい。従って、この砥石の形状誤差によって加工形状は容易に誤差が発生する。また、結合材はそれほど硬度がある材料ではないので、加工中の砥石にかかる力によって弾性変形を起こすので、研削加工とはミクロ的に見ると強制切り込みによる運動精度を転写する加工とはならず、圧力転写の加工となるため、加工機の運動精度や工具の回転精度を向上しても、加工精度はほとんど向上しない。
また、砥石の形状を整える際には、ツルーイングと呼ぶ砥石を削る工程を行うが、前述したように砥石は極めて硬いダイヤモンド砥粒と柔らかい結合材の混合体であるから、均一に削ることはできず、結合材を掻き取りながらダイヤモンド砥粒をほじくり出すという、極めて荒っぽい加工により、砥石の形状を整えている。従って、できあがった砥石の形状精度が良くないだけでなく、掻き取ることで結合材にクラックを生じたり、ダイヤモンド砥粒が脱粒しかけて不安定な固定状態となっていたり、脱粒して穴があいていたり、掻き取るときに引っ掛けて動いたため周りの結合材を壊したり、ということが砥石表面で起きており、極めて雑で不安定な表面状態となっている。そのため、従来は、ツルーイングを行った後に研削加工を予備的に行って、砥石表面の不安定な部分を除去して、研削比を安定させるといったことが成されてきた。しかし、どの程度予備的な研削を行えば、砥石の状態が安定するかは甚だ感覚的であり、もともとこのような荒い構造の工具を荒い方法により整える事自体が、高精度高精密な転写光学面加工を行う上では無理があった。
又、研削加工は前述した砥石摩耗による切れ刃の自生発刃作用が前提であるから、加工中に砥石の形状が常に変わるので、加工された転写光学面には形状誤差が発生する。特に、凹面で小型な転写光学面や深い(奥行きのある)転写光学面では、砥石が外周部に干渉して加工面に届かないことを防止するために、砥石を小さくせねばならず、砥粒の摩耗がより急速に進むため高精度の転写光学面加工がさらに難しくなる。
そこで、高硬度材料を用いた転写光学面の創成に関して、ダイヤモンドバイトによる切削加工を行うことを、本出願人は見い出し、先に提案している。本出願人の出願にかかる特許文献1においては、光学素子用成形金型において、切削加工により高精度な加工形状と鏡面が得られることが開示されている。
特開2004−223700号公報
特許文献1の技術は、従来の研削加工と比較して加工形状精度や加工表面粗さにおいては格段に優れており、小径転写光学面になればなるほどその優位性は大きくなるという特徴がある。しかるに、ダイヤモンド工具を用いて高硬度な材料を切削加工する場合、ダイヤモンド工具のチッピング(欠け)が生じやすいという問題がある。工具にチッピングが生じると、加工面(加工された加工済みの面)が一様な連続した切削加工とならないため、表面粗さが劣化し、また切り込み量もそれにより変わるため、要求される転写光学面形状精度も維持することができなくなる。又、このようなチッピングの問題は、ダイヤモンド工具に関わらず発生する恐れもある。
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、光学素子用成形金型に用いられる高硬度材料の加工で、工具のチッピングを抑え、工具の寿命を延ばすと共に、1つの工具で多数の光学素子用成形金型の転写光学面を高精度に切削加工可能な転写光学面の加工方法、それにより加工される光学素子成形金型及びそれにより成形される光学素子を提供することを目的とする。
請求項1に記載の転写光学面の加工方法は、ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を切削加工により創成する際に、工具の刃先すくい面の角度を切り込み点においてマイナスの値とすることを特徴とする。
図1は、本発明の原理を説明するための図であり、工具Tが被加工材料Mを切削している状態を示す図である。この図1は、被加工材料に対する工具の相対移動方向Dを、紙面と平行な面として、工具Tで被加工材料Mを切削している状態を表したものである。ここで、本明細書中で用いる用語を、図1を参照して定義する。
「すくい面」とは、工具Tにおける被加工材料Mの切削に寄与する面Tsをいう。以下、刃先すくい面ともいい、すくい面と同義である。
「工具刃先の加工領域」とは、図1に示すように被加工材料Mの加工面Mpに対する工具Tの相対移動方向Dに対して垂直な平面でみた場合には、工具刃先の切りくずを生成する領域Sをさし、また相対移動方向Dを含む加工面Mpに垂直な平面への投影(断面に相当)でみた場合は、すくい面Tsのうち、すくい面Tsの先端から被加工材料Mの未加工面Mrに対する切り込み深さ(すくい面の切りこみ点Pc)までの領域をいうものとする。
「切り込み方向」とは、加工面(加工済みの面)Mpの接平面が工具Tの相対移動方向Dと平行となるその加工面Mpにおける、工具刃先が接している点または線 の法線に沿って、加工面Mpに向かう方向Cをいうものとする。
「切削点」とは、切り込み方向Cで最も先端となる工具刃先の点Ppまたは線をいう。平先バイトなどでは、先端点は線となり厳密には点ではないが、ここではどちらも切削点という。
「すくい面の切り込み点」とは、刃先すくい面Tsと未加工面Mrとの交点Pcをいう。
「逃げ面の切り込み点」とは、すくい面の切り込み点Pcから、切り込み方向Cに垂直に延ばした線と、工具の逃げ面Teまたはその延長面との交点Pqをいう。
「切り込み量」とは、切り込み深さともいい、切り込み方向Cに沿った方向における、すくい面の切り込み点Pcと切削点Ppとの距離Δをいう。
「断面」とは、任意の切削点Ppにおいて、切り込み方向Cと工具の相対移動方向Dを含む断面をいう。通常は、特に切り込み量が最大となる切削点Ppにおいて、切り込み方向Cと工具の相対移動方向Dを含む断面で代表する。
「すくい角」とは、刃先すくい面の角度ともいい、すくい面の切り込み点Pcにおけるすくい面Tsの接線と、切り込み方向Cの逆方向とが成す角度θを指す。切り込み方向Cと逆方向が0°であり、この切り込み方向Cの逆方向に対して、工具の相対移動方向Dが−90°(工具の相対移動方向Dと逆方向である、すくい面Ts(工具)に対する材料(被加工物)の相対移動方向が90°)となる。即ち、すくい角θがマイナスの値とは、−90°<θ<0°の範囲を言うものとする。また別の言い方をすれば、すくい角θがマイナスの値とは、すくい面の切り込み点Pcにおけるすくい面Tsの接線と、工具の相対移動方向Dとのなす角度γが、0°<γ<90°を満たすものであると言うことができる。
「逃げ角」とは、逃げ面の切り込み点Pqにおける、逃げ面Teまたはその延長面の接線と、切削点Ppにおける加工面Mpの接線が成す角度αをいう。
すくい角θを切り込み点Pcにおいてマイナスの値とすると、工具Tの刃先にかかる切削抵抗力のべクトルを、図1に示すように、すくい面Tsと平行な分力F2と垂直な分力F1に分解したときに、そのうちの後者の分力F1が工具刃先の内方へ方向を変えられることにより、刃先全体でこの力を受けることになる。また、前者の分力F2は、刃先をすくい面Tsに沿って引っ張る力ではあるが、これは外力であり、例えばダイヤモンドは摩擦係数も小さな材料であることが知られており、この力によって摩擦で刃先が引っ張られてダイヤモンド内で発生する引っ張りの内部応力は極めて小さくなる。しかし、従来の例えばすくい角0°のダイヤモンド工具では、切削抵抗力はすくい面Tsに垂直なため、このような分力に分解できず、全ての切削抵抗力を鋭く細い刃先で受けることになり、その結果、すくい面Tsに大きな応力が発生して、破断、チッピングを容易に発生することとなる。即ち、切り込み点Pcにおいてすくい角θを負にすることにより、チッピングの発生を抑制し工具Tの刃先寿命を画期的に延ばし、効率よく高硬度材料Mに対して延性モード切削を実現できる。
尚、図1において、工具Tは、すくい面Tsと逃げ面Teを結ぶ稜部に連続して、又はその近傍に別の稜部Tbが存在してもよく、稜部Tbの形状は、特に限定されない。但し、直径及び長さでいうならば、1μm以下が好ましい。
請求項2に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1に記載の発明において、前記切り込み点における前記刃先すくい面の角度が−60度以上で−5度以下であることを特徴とする。
請求項2は、前記刃先すくい面Tsの角度θのより好ましい範囲を規定する。刃先すくい面Tsの角度θをマイナスの値とすると、上述したように、工具Tの刃先にかかる切削抵抗力の分力べクトルを圧縮力に変換して刃先のチッピングを少なくすることができる。しかしながら、マイナス側にすくい角θを大きくし過ぎて、あまり−90度に近づけ過ぎると、刃先のすくい面Tsが切り込み点Pcにおいて加工面に平行に近づくこととなって、被切削材料Mが刃先すくい面Tsに沿ってすべり、下に潜り込みやすくなる、そこで、被切削材料Mに対して刃先で適切にせん断力を与えて、切り屑の生成を良好に行うためには、−90度に近づけ過ぎない方が好ましい。また、この被切削材料Mの滑り込みによる刃先の浮き上がりを抑制するには、剛性の大きな加工機によって強制的に刃先を被切削材料Mに切り込む必要があり、非常に微細な切り込みを行う延性モードの切削においては、大きな剛性を要求される。これに対し、市販されている小型で安価な加工機(剛性値100N/μm以下)を用いる場合には、マイナス側におけるすくい角θの大きさを最大でも60°以下とすることが好ましい。又、刃先のすくい面Tsの角度θは−5°よりもマイナス側に大きいほうが、刃先のチッピングを抑える効果が高く、工具刃先寿命が延びて効率よく延性モード切削が実現できて良い。
以上より、刃先のすくい面Tsの角度θが切り込み点において−5°から−60°まで(−60°以上−5°以下)だと、より安定した切り屑の生成が実現でき、例えばカメラ付き携帯電話で用いられるマイクロカメラレンズやデジタルカメラ用レンズといった形状精度PV=100nm程度のものに対しては、短時間で安定して高精度な形状精度と鏡面を高硬度材料においても得ることが出来るので好ましい。
請求項3に記載の転写光学面の加工方法は、請求項2に記載の発明において、前記切り込み点における前記刃先すくい面の角度が−45度以上で−15度以下であることを特徴とする。
これは、請求項2に規定する角度範囲よりも更に加工性(切り屑創成)が良く、しかも刃先のチッピング発生が少ないという最適なバランスが取れている角度範囲である。切り込み点Pcでこの範囲のすくい角θを用いると、通常の転写光学面加工機の剛性(100N/μm)であっても微細な切り込み量が安定して持続し、そのためより高精度な転写光学面加工が高硬度材料に行うことが出来る。
例えば、超硬で、青色レーザー光を用いる光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置のNA0.85ガラス製の対物レンズの成形金型を形成する場合、その転写光学面の有効径が3mm程度、転写光学面の最大法線角(法線と光軸がなす最大角度)が65°以上の凹非球面であっても、容易に形状精度を50nm以下で延性モード加工することができ、工具寿命を延長することができる。
即ち、請求項3で規定する角度範囲は、より高精度な転写光学面を高硬度材料に創成するのにより適している条件を規定するものである。これによって、工具交換などの段取り時間を大幅に低減し、かつ短時間で転写光学面を創成することが出来るので、低コストかつ高効率に転写光学面を創成できる。従って、高精度のガラス光学素子を安定して効率よく低コストに生産できる。
請求項4に記載の転写光学面の加工方法は、ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を、刃先すくい面と逃げ面の成す角度を90度を超える角度に設定した工具を用いて切削加工により創成することを特徴とする。ここでいう刃先すくい面と逃げ面の成す角とは、図1において、すくい面の切り込み点Pcにおける接線と逃げ面の切り込み点Pqにおける接線に挟まれる角度をいう。
図1において、逃げ面Teは、加工面(加工済み面)Mpに対して逃げ角αで角度付けされている必要がある。即ち、すくい面Tsと逃げ面Teの成す角度を90度を超える角度βに設定するということは、α+β>90度であることから、すくい面Tsのすくい角θは、切り込み点Pcにおいて必ずマイナス側の値になるということを意味する。
すくい角θを切り込み点Pcにおいてマイナスの値とすると、工具Tの刃先にかかる切削抵抗力のべクトルを、図1に示すように、すくい面Tsと平行な分力F2と垂直な分力F1に分解したときに、そのうちの後者の分力F1が工具刃先の内方へ方向を変えられることにより、刃先全体でこの力を受けることになる。また、前者の分力F2は、刃先をすくい面Tsに沿って引っ張る力ではあるが、これは外力であり、例えばダイヤモンドは摩擦係数も小さな材料であることが知られており、この力によって摩擦で刃先が引っ張られてダイヤモンド内で発生する引っ張りの内部応力は極めて小さくなる。しかし、従来の例えばすくい角0°のダイヤモンド工具では、切削抵抗力はすくい面Tsに垂直なため、このような分力に分解できず、全ての切削抵抗力を鋭く細い刃先で受けることになり、その結果、すくい面Tsに大きな応力が発生して、破断、チッピングを容易に発生することとなる。即ち、切り込み点Pcにおいてすくい角θを負にすることにより、チッピングの発生を抑制し工具Tの刃先寿命を画期的に延ばし、効率よく高硬度材料Mに対して延性モード切削を実現できる。また、刃先すくい面と逃げ面が成す角度が90度以上であると、刃先の刃厚が厚くなるため頑丈となり、よりチッピングを発生しにくくなる。
請求項5に記載の転写光学面の加工方法は、請求項4に記載の発明において、前記工具の前記刃先すくい面と前記逃げ面が成す角度を90度を超え145度以下の角度に維持して加工を行うことを特徴とする。本発明の作用効果は請求項2の発明と同様である。
請求項6に記載の転写光学面の加工方法は、請求項5に記載の発明において、前記工具の前記刃先すくい面と前記逃げ面が成す角度を100度以上130度以下の角度に維持して加工を行うことを特徴とする。本発明の作用効果は請求項3発明と同様である。
請求項7に記載の転写光学面の加工方法は、ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を切削加工により創成する際に、工具の刃先すくい面と、前記材料に対する前記工具の相対移動方向との成す角度が90度未満となるように維持して加工を行うことを特徴とする。
図1を参照して、工具Tのすくい面Tsと、被加工材料Mの未加工面Mrとの成す角度γ、より厳密に言えば、工具のすくい面Tsと工具の相対移動方向Dとの成す角度γが90度未満となるようにすると、すくい面Tsのすくい角θは、切り込み点Pcにおいて必ずマイナス側の値になる。切り込み方向Cの逆方向に対して反時計回り方向に形成される角度がマイナス側であり、そのマイナスの最大値が工具の相対移動方向Dとなす角度の−90度であることより、−γ+θ=−90度だからである。
すくい角θを切り込み点Pcにおいてマイナスの値とすると、工具Tの刃先にかかる切削抵抗力のべクトルを、図1に示すように、すくい面Tsと平行な分力F2と垂直な分力F1に分解したときに、そのうちの後者の分力F1が工具刃先の内方へ方向を変えられることにより、刃先全体でこの力を受けることになる。また、前者の分力F2は、刃先をすくい面Tsに沿って引っ張る力ではあるが、これは外力であり、例えばダイヤモンドは摩擦係数も小さな材料であることが知られており、この力によって摩擦で刃先が引っ張られてダイヤモンド内で発生する引っ張りの内部応力は極めて小さくなる。しかし、従来の例えばすくい角0°のダイヤモンド工具では、切削抵抗力はすくい面Tsに垂直なため、このような分力に分解できず、全ての切削抵抗力を鋭く細い刃先で受けることになり、その結果、すくい面Tsに大きな応力が発生して、破断、チッピングを容易に発生することとなる。即ち、切り込み点Pcにおいてすくい角θを負にすることにより、チッピングの発生を抑制し工具Tの刃先寿命を画期的に延ばし、効率よく高硬度材料Mに対して延性モード切削を実現できる。
請求項8に記載の転写光学面の加工方法は、請求項7に記載の発明において、前記工具の前記刃先すくい面と、前記材料に対する前記工具の相対移動方向との成す角度を30度以上で85度以下の角度に維持して加工を行うことを特徴とする。本発明の作用効果は請求項2の発明と同様である。
請求項9に記載の転写光学面の加工方法は、請求項8に記載の発明において、前記工具の前記刃先すくい面と、前記材料に対する前記工具の相対移動方向との成す角度を45度以上で75度以下の角度に維持して加工を行うことを特徴とする。本発明の作用効果は請求項3の発明と同様である。
請求項10に記載の転写光学面の加工方法は、ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を切削加工により創成する際に、工具の刃先すくい面の切り込み点から切削点までの任意の点における工具の刃先すくい面の第1接線は、切り込み方向に対して、前記材料に対する前記工具の相対移動方向に傾いており、前記第1接線と前記切り込み方向とのなす第1角度は、前記切り込み点における前記刃先すくい面の第2接線と前記切り込み方向とのなす第2角度より負側に小さくなっていることを特徴とする。
図1において、切り込み点Pcから切削点Ppまでにおける任意の位置Pxでの工具Tの刃先のすくい面Tsの第1接線C1は、切り込み方向Cに対して、工具Tと被加工材料Mとの相対移動方向に関する工具の相対移動方向D側に傾いており、第1接線C1と切り込み方向Cとのなす第1角度θ1は、切り込み点Ppにおける工具Tの刃先のすくい面Tsの第2接線C2と前記切り込み方向Cとのなす第2角度θより負側に小さくなっている。即ち、θ1<0且つθ1<θであるから、工具Tのすくい面Tsに作用する応力は刃先に向かうにつれて小さくなるため、チッピングの恐れは低い。
更に第1角度θ1をマイナスの値とすると、任意の位置Pxにおける工具Tの刃先にかかる切削抵抗力のべクトルを、図1に示すように、すくい面Tsと平行な分力F2と垂直な分力F1に分解したときに、そのうちの後者の分力F1が工具刃先の内方へ方向を変えられることにより、刃先全体でこの力を受けることになる。また、前者の分力F2は、刃先をすくい面Tsに沿って引っ張る力ではあるが、これは外力であり、例えばダイヤモンドは摩擦係数も小さな材料であることが知られており、この力によって摩擦で刃先が引っ張られてダイヤモンド内で発生する引っ張りの内部応力は極めて小さくなる。しかし、従来の例えばすくい角0°のダイヤモンド工具では、切削抵抗力はすくい面Tsに垂直なため、このような分力に分解できず、全ての切削抵抗力を鋭く細い刃先で受けることになり、その結果、すくい面Tsに大きな応力が発生して、破断、チッピングを容易に発生することとなる。即ち、第1角度θ1を負にすることにより、チッピングの発生を抑制し工具Tの刃先寿命を画期的に延ばし、効率よく高硬度材料Mに対して延性モード切削を実現できる。
請求項11に記載の転写光学面の加工方法は、ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を切削加工により創成する際に、工具の刃先すくい面上の加工領域における任意の点の法線方向を、切り込み方向と前記工具の相対移動方向とに挟まれる方向に維持しつつ切削加工を行うことを特徴とする。
図1において、工具Tのすくい面Ts上の加工領域Sにおける任意の点Pxの法線方向を、切り込み方向Cと工具の相対移動方向Dとに挟まれる方向に維持するということは、任意の点Pxのにおける第1接線C1と、切り込み方向Cとのなす第1角度θ1はマイナスになるということである。
更に第1角度θ1をマイナスの値とすると、任意の位置Pxにおける工具Tの刃先にかかる切削抵抗力のべクトルを、図1に示すように、すくい面Tsと平行な分力F2と垂直な分力F1に分解したときに、そのうちの後者の分力F1が工具刃先の内方へ方向を変えられることにより、刃先全体でこの力を受けることになる。また、前者の分力F2は、刃先をすくい面Tsに沿って引っ張る力ではあるが、これは外力であり、例えばダイヤモンドは摩擦係数も小さな材料であることが知られており、この力によって摩擦で刃先が引っ張られてダイヤモンド内で発生する引っ張りの内部応力は極めて小さくなる。しかし、従来の例えばすくい角0°のダイヤモンド工具では、切削抵抗力はすくい面Tsに垂直なため、このような分力に分解できず、全ての切削抵抗力を鋭く細い刃先で受けることになり、その結果、すくい面Tsに大きな応力が発生して、破断、チッピングを容易に発生することとなる。即ち、第1角度θ1を負にすることにより、チッピングの発生を抑制し工具Tの刃先寿命を画期的に延ばし、効率よく高硬度材料Mに対して延性モード切削を実現できる。
請求項12に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜11のいずれかの発明において、前記転写光学面を構成する材料が、超硬またはタングステンカーバイト(WC)が質量%で半分以上の組成からなる焼結合金であることを特徴とする。
超硬は、タングステンカーバイトの粒子にコバルトなどの結合材料を混合して焼結した合金である。また、タングステンカーバイトを質量%で半分以上の組成からなる焼結合金であれば、結合材料や副材料はコバルトである必要はないし、ニッケルであってもイットリウムなどであってもかまわない。
これらの材料は、ビッカース硬度Hv1800以上であり、ロックウェル硬度換算でもHRA92以上と、非常に硬い材料であるが、導電性があるので、切削加工前の粗削りとしてブランク形状を加工する際に、放電加工を用いて容易に加工でき、加工コストを低くできるとともに納期を短縮できる。
また、耐熱性も大気中で500℃程度であれば比較的長期にわたって酸化することなく鏡面を維持できる。特に、HIP処理と呼ばれるアルゴンなどのガス雰囲気によって静水圧的(等方的)に高圧をかけて高温焼結した場合には、WC粒子間に「す」がほとんどなくなり緻密で結合力の強い組成となるので、表面欠陥の極めて少ない転写光学面が得られ、非常に好ましい材料といえる。
このような超硬またはタングステンカーバイトを主原料とした焼結合金に、本発明の加工方法を適用すると、表面粗さに優れた耐熱性の高い転写光学面を容易に効率よく創成することができる。その結果、高精度なガラス製の光学素子を低コストで安定して生産することが出来る。
請求項13に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜11のいずれかに記載の発明において、前記転写光学面を構成する材料が、CVD−SiCまたは焼結SiCであることを特徴とする。
炭化珪素(SiC)は、超硬やタングステンカーバイトと比べ、より硬度が高く、耐熱性もより優れているので、成形時の型寿命は、超硬やタングステンカーバイトに比べ数倍長く、本発明の加工方法による低コストで高精度な転写光学面を創成することと相まって、高精度なガラス製の光学素子を低コストで安定して生産することが出来る。
請求項14に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜13のいずれかの発明において、前記工具は、刃先が単結晶ダイヤモンドにより構成されていることを特徴とする。
そもそも、刃先材料としてのダイヤモンドは、圧縮応力には非常に強く、硬度計などの圧子として用いられるほどであり、このため、本発明のように工具刃先のすくい角を負にすることで、切削抵抗力を切り込み点でダイヤモンドを圧縮する方向に分力べクトルの向きを変えた効果は、刃先のチッピングを抑制するために非常に大きな効果を上げるのである。
ダイヤモンド工具を用いることで、高精度かつ優れた表面粗さの転写光学面を高硬度材料に効率よく切削加工により得られるようになるので、この加工方法によって、高性能なガラス製の光学素子を収率高くプレス成形し低コストで生産することが容易となる。
特に、単結晶ダイヤモンドは、多結晶ダイヤモンドと比べ、より工具刃先形状が高精度に仕上げることが出来るので、高精度な加工では、単結晶ダイヤモンドを用いることが好ましい。通常、多結晶ダイヤモンド工具では、刃先の形状精度は1μm程度が限界であるが、単結晶ダイヤモンドの場合は、刃先形状精度を30nm以下まで高めることができ、この高精度な刃先形状により本発明の延性モード切削加工を行うことにより、高精度な転写光学面形状を容易にしかも効率よく創成できる。
請求項15に記載の転写光学面の加工方法は、請求項14に記載の発明において、前記ダイヤモンドの結晶面(100)の結晶方位<110>を、切り込み方向に対してプラスマイナス15度以内の角度範囲に配置したことを特徴とする。
請求項16に記載の転写光学面の加工方法は、請求項14に記載の発明において、前記ダイヤモンドの結晶面(111)の結晶方位<110>を、切り込み方向に対してプラスマイナス15度以内の角度範囲に配置したことを特徴とする。
請求項17に記載の転写光学面の加工方法は、請求項14に記載の発明において、前記ダイヤモンドの結晶面(110)の結晶方位<110>を、切り込み方向に対してプラスマイナス15度以内の角度範囲に配置したことを特徴とする。
ダイヤモンドの結晶は8方晶であるから、結晶方位が90度毎に繰り返すため、ある結晶方位の特徴が顕れるのは、その方向に対してプラスマイナス30度以内の範囲であり、より顕著に結晶方位の特徴を出すのであれば、使用範囲はプラスマイナス15度以内であることが好ましい。ここで、極めて硬度の高い材料に対する切削加工を行った場合、切削工具の刃先の磨耗は、たとえ被加工物である転写光学面が小径であっても多少は発生する。しかるに、ここで重要なことは、切削すべき転写光学面が小径になるに従い、総切削長が短くなり、従って刃先の磨耗量も非常に少なくなるため、加工コストを抑えつつ高精度な切削を行えるという点である。従って、本発明のように、切削点を工具刃先上の一点に固定すると、またはプラスマイナス15度以内の角度範囲に維持すると、切削加工に用いる工具刃先の磨耗が、刃先材料の異方性などによって不安定に進行することがなく単調に増加するため、この刃先磨耗により発生する転写光学面の加工形状誤差は、光学面の中心と周辺との間で、加工方向に従って穏やかに単調に増加することになる。このような形状誤差は、局所的に急激に変化することがないため、その補正を、例えば次の切削加工の際に、刃先の切り込み量を単調に増加させるなどすることで極めて容易に行うことができる。即ち、本発明によれば、切削加工に伴う工具刃先の磨耗を考慮しつつ、光学素子用成形金型の転写光学面を高精度に加工できるという効果を得られる。尚、「プラスマイナス15度以内の角度範囲に維持する」とは、転写光学面の光軸と切削点とを含む断面をとり転写光学面を基準とする2次元座標系を設定したときに、かかる座標系内における切り込み方向が工具に対して加工時に最大でも30度以内の角度で振れることをいい、振れなくて0度であっても良い。
切削工具としてダイヤモンド工具を用いる場合は、切れ刃に用いるダイヤモンドの結晶方位によって、工具の磨耗量が大きく異なることが知られている。したがって、セラミック材料や超硬の光学素子用成形金型の転写光学面を切削加工する場合、ダイヤモンドの磨耗が少ない結晶方位だけ用いて切削加工を行うと、工具の磨耗量を減らし工具寿命が長くなるので、多量の光学素子用成形金型を加工することができる。例えば、2軸の超精密加工機の工具テーブルに旋回軸(B軸)を設けた図9に示す超精密加工機を用いて、その回転中心軸上にダイヤモンド工具の磨耗量が最も少なくなる(100)面の<110>方位や、(110)面の<110>方位などを切り込み方向と一致するように製作されたダイヤモンド工具を取り付けて、加工すべき転写光学面の加工点に常にその刃先が位置するように(切削点を一定に固定するように)し、つまり磨耗量が少なくなる結晶方位が常に転写光学面の法線方向となるように同時3軸駆動で切削加工を行うと、工具の磨耗が少なく、長い切削長にわたって刃先の形状を良好に維持できるので、すくい角を負とする効果と相まって、工具交換の回数を減らし、その手間と加工機の稼働率の低下を抑制することができる。
図2に、ダイヤモンドの結晶方位と摩耗量との関係を示す。図において、数値が小さくなるほど摩耗しやすい傾向がある。例えば、2軸の超精密加工機の工具テーブルに旋回軸(B軸)を設けた超精密加工機を用いて、その回転中心軸上にダイヤモンド工具の磨耗量が最も少なくなる(100)面の<110>方位や、(110)面の<110>方位などを加工表面の切り込み方向と一致するように取り付けて、加工すべき転写光学面の加工点に常にその刃先が位置するように(切削点を一定に固定するように)し、つまり磨耗量が少なくなる結晶方位が常に転写光学面の法線方向となるように同時3軸駆動で切削加工を行うと、工具の磨耗が少なく、長い切削長にわたって刃先の形状を良好に維持できるので、すくい角を負とする効果と相まって、工具交換の回数を減らし、その手間と加工機の稼働率の低下を抑制することができる。
請求項18に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜13のいずれかの発明において、前記工具は、刃先がCBN(Cubic Boron Nitride:立方晶窒化ボロン)により構成されていることを特徴とする。従来の結合材料を加えたCBNに比べると、高純度CBN多結晶材料は、結合材を一切入れずに高圧で焼結した材料であるから、切削工具の刃先に用いた場合に極めて刃先寿命が長くなり被切削面も良好となる。本発明者らの実験によれば、高純度CBNのすくい面に高精度に円弧稜をダイヤモンド砥粒で研磨して創成し、高硬度材料である超硬を切削加工し、また同じ形状の単結晶ダイヤモンドの刃先を用いて同じ条件で切削加工したところ、平均表面粗さがRa4nmと、鏡面としては充分な加工面が得られた。単結晶ダイヤモンドの場合と比較すると加工形状はやや劣るが、これはCBNの刃先材料は多結晶体のためである。ただし、前述したカメラレンズ等の用途の転写光学面であれば、要求精度が低いので実用上は大きな問題はない。
請求項19に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜18のいずれかの発明において、前記刃先すくい面の刃先形状が円弧状(円弧稜ともいう)に創成されていることを特徴とする。
図3は、すくい面の刃先形状を上方(未加工面側)から見た図であり、円弧状のすくい面の例を示す図である。図3において、すくい面RBは、直線状の第1の縁部RB1と、第1の縁部RB1と交わる方向に延在する第2の縁部RB2と、第1の縁部RB1と第2の縁部RB2とを結ぶ円弧及び/又は非円弧の第3の縁部RB3とで輪郭付けされる。第1の縁部RB1と第2の縁部RB2とが成す角度hは、30°≦h≦60°とする。第3の縁部RB3は、円弧である場合には、その半径rは、0.003mm≦r≦5mmとする。又、第3の縁部RB3が、非円弧曲線である場合には、その平方2乗誤差が最も小さくなる近似円弧半径rを、0.003mm≦r≦5mmとする。
刃先形状が円弧状のすくい面を有する工具をRバイトと呼ぶが、これは刃先形状を円弧に創成する工程で、真円度を高精度に仕上げることが比較的容易であるという利点がある。従って、このようなすくい面を有するRバイトに本発明を適用して加工を行うと、高い刃先形状精度によって高精度な転写光学面加工形状を容易に効率よく得ることが出来る。ここで、Rバイトの真円度が高いことを利用した2軸の旋削加工で転写光学面を創成加工する場合には、切削加工の進行に伴い加工面の法線角が変化するに従って、加工領域が刃先の円弧稜にそって移動するため、一度チッピングが発生すると延性モード切削が脆性加工になるため切削抵抗力が増加しかつ不安定となることから、次々にチッピングを発生して刃先を破損し続け、結局チッピングを発生した以降の刃先円弧稜が全て破壊されて使えなくなってしまう。このように、Rバイトではチッピングにより破損する刃先稜の範囲が広くなることが多いため、チッピングを発生していない部分を選んで使用することが難しく、工具そのものが寿命となってしまい、大変高価な切削加工と成りやすい。しかし、本発明によればチッピングを大幅に減らし、そのような広域にわたる刃先の破損を顕著に低減するので、特に効果が大きいといえる。
最近、光学性能を高める目的で、光学面上に回折を発生させる微細形状を設けることが一般的となってきている。例えば、光学面上にブレーズ形状の回折溝を設けることで、特定の方向に回折光を収斂させ、特定の波長における集光特性を改善したり、階段状の回折溝を設けることで0次光の利用効率を高めながら回折光を収差補正に利用したりするといったことが行われている。このような微細形状は、大きさが波長の数倍程度と極めて小さく、また回折の状態は波長の数分の一の形状誤差でも大きく影響するため、この光学素子の転写光学面の微細形状加工は極めて高精度を要求される。このような微細形状は、すくい面の刃先形状が剣先形状に創成されている工具によって有効に切削加工できる。
請求項20に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜18のいずれかの発明において、前記刃先すくい面の刃先形状が剣先形状に創成されていることを特徴とする。
図4は、刃先形状が剣先状のすくい面の例を示す図である。図4において、すくい面SBは、直線状の第1の縁部SB1と、第1の縁部SB1に交わる方向に延在する第2の縁部SB2と、第1の縁部SB1端と第2の縁部SB2端とを結ぶ第3の縁部SB3とから輪郭づけられる。第1の縁部SB1と第2の縁部SB2とが成す鋭角aは、10°≦a≦45°とする。第3の縁部SB3は、円弧である場合には、その半径rは、0.05μm≦r≦3μmとする。第3の縁部SB3が、非円弧である場合には、第3の縁部SB3の端部同士を直線で結んだ距離をbとして、0.1μm≦b≦5.0μmとする。
刃先形状が剣先状のすくい面を有する工具を剣先バイトという。微細加工を行うのに好適な剣先バイトは、先端が鋭利に細いため、容易に折損しやすい刃先形状を有しているので、本発明を好適に適用できる。即ち、本発明によりチッピングだけでなく刃先の折損を大幅に低減でき、そのため従来加工が出来なかった微細形状(回折溝など)を有する高硬度材料の光学素子用成形金型の転写光学面を高精度に容易に加工することが出来るようになる。その光学素子用成形金型を用いることで、GMによる光学ガラスの成形においてブレーズ状回折構造を転写形成出来るため、環境変化に強く、設計の幅を広げ、複数の波長に対して良好に収差補正できるガラス製の光学素子が得られるようになる。
請求項21に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜18のいずれかの発明において、前記刃先すくい面の刃先形状が平先形状に創成されていることを特徴とする。
図5は、刃先形状が平先状のすくい面の例を示す図である。図5において、すくい面FBは、直線状の第1の縁部FB1と、第1の縁部FB1と交わる方向に延在する第2の縁部FB2と、第2の縁部FB2と交わる第3の縁部FB3とにより輪郭づけられている、第1の縁部FB1と第2の縁部FB2とが成す角cは、80°≦c≦100°とする。また第2の縁部FB2と第3の縁部FB3とが成す角度dは、80°≦d≦100°とする。第2の縁部FB2の長さeは、2μm≦e≦5mmとする。尚、第1の縁部FB1と第2の縁部FB2との間に、円弧もしくは直線からなる第4の縁部FB4を設けても良く、第2の縁部FB2と第3の縁部FB3との間に、円弧もしくは直線からなる第5の縁部FB5を設けても良い。
刃先形状が平先状のすくい面を有する工具を平先バイトと呼ぶ、これは、刃幅が数μmから数mm程度までのものがあるが、一般に刃幅に対して刃の突き出し長さの比(アスぺクト比)が4以上あり、刃先に負荷がかかると容易に折損する形状を有しているので、本発明を好適に適用できる。即ち、本発明によりチッピングだけでなく刃先の折損を大幅に低減でき、そのため従来加工が出来なかった微細形状(回折溝など)を有する光学素子用成形金型を高精度に容易に加工することが出来るようになる。その光学素子用成形金型を用いることで、GMでも微細な階段状回折構造を転写できるため、環境変化に強く、設計の幅を広げ、複数の波長に対して良好に収差補正できるガラス製の光学素子が得られるようになる。
請求項22に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜18のいずれかの発明において、前記刃先すくい面の刃先形状が半月状に創成されていることを特徴とする。
図6は、刃先形状が半月状のすくい面の例を示す図である。図6において、すくい面HBは、直線状の第1の縁部HB1と、第1の縁部HB1と交わる方向に延在する第2の縁部HB2と、第1の縁部HB1とは角度付けされ且つ第2の縁部HB2とは滑らかに結ばれた円弧及び/又は非円弧の第3の縁部HB3とにより輪郭づけられる。第1の縁部HB1と第2の縁部HB2とが成す角度は、0°<f<90°とする。また第3の縁部HB3は、円弧である場合には、その半径rを、0.1μm≦r≦5mmとする。第3の縁部が、非円弧である場合には、端部同士を直線で結んだ距離をgとしたとき、0.1μm≦g≦5mmとする。尚、第1の縁部HB1と第3の縁部HB3との間に、凸状である円弧もしくは直線からなる第4の縁部HB4を設けても良い。
刃先形状が半月状のすくい面を有する工具を半月バイトと呼ぶ。本発明により、従来刃先の折損により加工が出来なかった微細形状(回折溝など)を有する成形用型を高精度に加工することが可能となる。半月バイトであれば、非球面部は、工具のR部で加工するため、滑らかな転写光学面を加工することが出来るので、それにより転写された光学素子の光学面における光線の散乱が少なくなる。又、ブレーズ部は半月バイトの刃先の鋭い部分で加工するため、回折効率の低下が少ないという特徴がある。半月バイトで加工された光学素子用成形金型を用いることで、GMでもブレーズ状回折構造を転写形成出来るため、環境変化に強く、設計の幅を広げ、複数の波長に対して良好に収差補正できるガラス製の光学素子が得られるようになる。
請求項23に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜22のいずれかの発明において、前記切削加工は、旋削加工による切削加工であることを特徴とする。
旋削加工は、一度工具刃先を被加工材料に切り込むと、切り終わるまで連続的に加工が進行するので、切削工具にとって負荷の少ない加工方法である。従って、本発明と組み合わせることによって飛躍的に工具刃先のチッピングを抑えることが出来て、工具の寿命を延ばすことが出来、高精度な転写光学面形状を形成でき鏡面を容易に安価に得ることが出来るようになる。また、加工機自体も可動軸の構成が簡単であり、加工機を低価格で製作することが出来るので、軸対称形状の光学素子用成形金型の加工を安価に実現できる。即ち、高精度のガラス光学素子を成形する金型を効率よく低コストに製作できるので、高性能な光学素子を効率よく安価に生産することができる。
請求項24に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜23のいずれかの発明において、旋回軸を有する加工機を用いて行うことを特徴とする。
旋回軸を加工機に設けることによって、工具刃先の加工領域を切削加工中に変化することなく固定して延性モード切削加工を行うことができるので、工具刃先の刃先稜線の形状精度に影響を受けない加工が出来る。これに対し、旋回軸を有しないで、切削点や加工領域が加工中に刃先稜線を移動する場合においては、同時に加工領域のダイヤモンドの結晶方位が変化するので、摩耗しやすい結晶方位や欠けやすくチッピングを発生しやすい結晶方位を含むと、繰り返し加工を行うと容易にその部分で刃先摩耗が進行したり、チッピングが発生したりする恐れがある。前者の場合は、その部分で加工形状に摩耗しただけの形状誤差が発生し、後者では脆性モード加工となり鏡面が得られなくなる。旋回軸を有する加工機の場合、工具刃先の加工領域を固定することができるので、使用するダイヤモンドの結晶方位も固定され、そのような形状誤差や加工面品位の劣化などを避けることができる切削加工を実現できる。さらに、加工領域が固定されているので、その部分のダイヤモンドの結晶方位を摩耗の最も少ない結晶方位に固定して加工すると、高い加工形状精度を容易に実現でき、しかも工具の摩耗による寿命を大幅に延ばすことができて、その上に本発明の工具刃先のチッピングの発生を大幅に低減する効果を合わせることで、高硬度材料に転写光学面を低コストかつ短時間で創成できるようになる。旋回軸を有する加工機は、主軸を有する旋削加工機には限らず、主軸をもたない直交3軸加工機であっても良い。旋回軸による効果は、どちらであってもまた他の軸構成の加工機であっても、前述したように工具刃先の加工領域を固定する点では同じである。
請求項25に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜22のいずれかの発明において、前記切削加工は、フライカット方式の切削加工であることを特徴とする。
フライカット方式の切削加工方法は、回転する軸の側面に切削刃先を設け、これを移動させながら円弧状の切削領域を重畳して、加工面を創成する加工方法である。回転速度を大きくすることで、1回転毎の切り込み量を低減でき工具負担を低減できるので、回転軸と直交する方向に高速に刃先を送ることができ、特に比較的緩やかな曲率で細長い転写光学面の加工には効率的で有利な加工方法である。しかしながら、この加工方法では旋削加工のように工具刃先の切り込みが連続しておらず断続であるために、切り込み量は小さくできても工具刃先には断続的な衝撃として切削抵抗力がかかるので、刃先のチッピングが発生しやすい加工方法といえる。これに対し、本発明によれば、高硬度材料であってもチッピングを抑制して自由曲面形状の転写光学面が切削加工出来るので、研削と比べ、工具形状・工具摩耗・工具の弾性変形がないので、加工装置の運動精度を転写した高精度な加工形状を形成でき鏡面を容易に短時間で得ることが出来る。従来は、高硬度材料のフライカット切削加工は全く存在しなかったが、本発明の加工方法により、初めて実現したものである。尚、同様に断続切削であるルーリング加工に比べる、切削抵抗も少ないので、工具のチッピングも発生しにくく、送り速度も上げることが出来て、自由曲面形状において、短時間で高精度な形状と鏡面を得ることが出来るという利点もある。
請求項26に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜22のいずれかの発明において、前記切削加工は、ミーリング加工による切削加工であることを特徴とする。
ミーリング加工とは、回転する軸の端面に切削刃先を設けて、これを移動させながら円状の切削領域を重畳して加工面を創成する切削加工方法である。回転速度を大きくすることで、1回転あたりの切り込み量を小さくできるので刃先にかかる切削抵抗力を小さくでき、刃先を回転軸と直交する方向に高速に送ることができ、比較的緩く平面に近い大きな面積を有する転写光学面を効率よく切削加工するのに有利である。本発明により、高硬度材料であってもミーリング加工をチッピングを抑制して行うことができ、自由曲面形状や高精度な平面の切削加工が極めて短時間で容易に出来るので、研削加工と比べ、工具形状・工具摩耗・工具の弾性変形がないので、加工装置の運動精度を転写した高精度な加工形状を形成でき鏡面を容易に得ることが出来る。従来は、高硬度材料のミーリング切削加工は全く存在しなかったが、本発明により、初めて実現したものであり、高精度な形状と鏡面を有する複雑な曲面及び段差加工などの加工が可能となった。
請求項27に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜22のいずれかの発明において、前記切削加工は、ルーリング加工による切削加工であることを特徴とする。
ルーリング加工とは、切削工具を往復移動しながらその軌跡を重畳して、切削加工面を創成する加工方法である。特に、強曲率の凹面や複雑な加工形状でも工具が加工面に干渉することなく、高精度に加工することが出来る。この加工方法で重要な点は、フライカットやミーリングと異なり、工具刃先が回転運動をしないため、1回の切り始めから切り終わりまで切り込み量が同じであり、そのため最初の切り込む時点で刃先に大きな切削抵抗力が働く点である。通常、この加工方式ではこの切り始めのところで工具刃先にチッピングを発生することが最も多く、そのため高硬度材料をルーリング加工するという発想はこれまで全くなかった。しかし、本発明を適用して行うと、高硬度材料であってもチッピングを抑制でき自由曲面形状が切削加工出来る。しかも、従来の研削加工と比べ、工具形状・工具摩耗・工具の弾性変形も全く関係ないため、加工装置の運動精度を転写した高精度な加工形状と鏡面を容易に得ることが出来る。従来は、高硬度材料のルーリング切削加工は全く存在せず、本発明によってのみ、初めて実現したものである。
請求項28に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜27のいずれかの発明において、前記切削加工は、3軸以上の可動部を有する加工機を用いて行うことを特徴とする。可動軸が多いと加工段取りも容易であり、本発明との組み合わせで、工具形状補正や加工中の工具摩耗等の複雑な形状補正プログラムを作成する必要がなくなるため、手間をかけずに、高精度な鏡面を作りだすことが出来る。ただし、本発明は2軸以下の可動部を有する加工機により実行しても良い。
請求項29に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜28のいずれかの発明において、前記切削加工により創成する形状が、球面形状または非球面形状であることを特徴とする。
本発明により加工された光学素子用成形金型の転写光学面は、高精度な球面形状又は非球面形状と鏡面を有するので、かかる光学素子用成形金型を用いることで、高い光学性能を有する光学素子を容易に得ることが出来る。
請求項30に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜28のいずれかの発明において、前記切削加工により創成する形状が、自由曲面形状(非軸対称非球面形状ともいう)であることを特徴とする。
本発明により加工された光学素子用成形金型の転写光学面は、高精度な形状と鏡面を有するので、かかる光学素子用成形金型を用いることで、高い光学性能を有する光学素子を容易に得ることが出来る。
請求項31に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜30のいずれかの発明において、前記切削加工により創成される転写光学面の最大法線角は、30度以上であることを特徴とする。
従来の研削加工では、面形状が深くなると転写光学面との干渉を避けるため、砥石の大きさを小さくするから、加工に寄与する砥粒の数が急激に減少し、砥粒の負担が増えるため工具摩耗が増加し、高精度な形状創成には不利であった。また、小さな砥石では剛性も小さくなりその回転軸も細くなるので、研削抵抗力によりそれぞれたわんだりするため、強制的に砥粒の切れ刃を切り込むことが難しく、圧力転写加工となる傾向があり、自生発刃を前提とした加工負荷が安定しない加工であるため、転写光学面の最大法線角が30°以上(90°未満)の深い転写光学面を高精度に加工するのは非常に難しかった。例えば、GM光学素子では、近年、法線角が70°の転写光学面を有するものも増えてきている。本発明を用いることで、高精度な形状と鏡面を有する光学素子の成形金型を得ることが出来て、それにより転写形成された光学素子は、高性能な光学素子を低コストで安定して生産することが出来る。
請求項32に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜31のいずれかの発明において、前記切削加工は、1サイクル当たりの切り込み深さが0.5μm未満で切削を行うことを特徴とする。
特に、本発明の高硬度材料の切削加工では、切り込み量を0.5μm以下にすることで、工具刃先のチッピングの発生率を大幅に下げることが出来て、延性モード切削加工を安定して持続することができ、高精度な加工形状と鏡面を容易に効率よく得ることが出来る。勿論、切り込み量の最小値は0を超える値である。
請求項33に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜32のいずれかの発明において、前記切削加工は、送りピッチが20μm以下で切削を行うことを特徴とする。
高硬度材料に対し、少なくとも送りピッチを20μm以下として切削加工を行うことで、加工面の表面粗さをより小さく(例えばRa2〜3nm程度に)することができ、高品位な転写光学面を得られる。ここでいう送りピッチとは、工具の相対移動方向に対して直交する方向に、工具刃先の切削軌跡を重畳する送り単位をさす。例えば、旋削加工においては、ワークの1回転当たりの工具の送り量に相当し、フライカット加工では工具回転軸方向の送り単位、ミーリング加工では工具刃先が1回転する間に送られる単位、ルーリング加工では工具が1往復する間に送られる単位を指す。加工面には、この送りピッチで工具刃先の切削痕が繰り返される。この送りピッチが大きすぎると、切削抵抗力が増えるため加工装置の剛性によって大きく加工状態が変わり、剛性の低い装置では刃先が加工面を滑ったり、振動して叩いたりして加工形状精度や表面粗さが低下する。市販されている通常の加工機では、ワークと工具の相対的な剛性は100N/μm以下であるので、送りピッチを20μm以下にすると、切削加工中に切り込み量を一定に保持できるので、延性モード切削が安定して実現でき、高精度かつ高い鏡面性を有する転写光学面を得ることができる。勿論、送りピッチの最小値は0を超える値である。
請求項34に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜33のいずれかの発明において、前記転写光学面を切削加工した後、研磨加工を行うことを特徴とする。
本発明によれば、工具の刃先すくい面に負のすくい角を与えることでチッピングを顕著に低減して、延性モード加工によって転写光学面形状の効率的な創成が可能となるが、更にその後、転写光学面を研磨することにより、加工形状を崩すことなく、高精度な形状と高い表面粗さを得ることが出来る。また、切削加工後に研磨加工を行うことを前提として、切削加工における送り速度や送りピッチを増加させ、切削加工時間を短くすることができる。この場合においても、本発明の切削加工によれば、チッピングの発生を抑制できるものである。尚、研磨加工は数分間で行うことが可能である。
後加工研磨が有効なのは、まず高硬度材料であるため研磨加工による除去量が小さく、研磨がゆっくり進行するので転写光学面全体を時間的にまんべんなく一様に研磨加工することが容易であることと、延性モード切削加工によって生じたツールマークは高低差が非常に小さくせいぜい10〜20nm程度であり、しかも転写光学面全体に大きさが揃って略均一に生じているので、研磨により全てを一度に取り除く事が容易なことが理由にある。従来の研削加工では、砥粒による掻き傷を、後の研磨加工で落とすことになるが、結局、極一部の最も深い掻き傷が消えるまで全体を長時間にわたってまんべんなく研磨し続けなければ成らず、その加工難度によってせっかく創成した転写光学面形状を崩していたのである。
本発明の加工方法によれば、研削加工に比べ、表面粗さが均一であるため、形状を崩さず均等に短時間で研磨し終えることが容易であり、その結果、切削加工時間を短縮しても工具刃先がチッピングすることなく高精度かつ高い表面粗さを有する転写光学面を短時間で容易に得ることが出来る。
請求項35に記載の転写光学面の加工方法は、請求項1〜34のいずれかの発明において、前記転写光学面を切削加工した後、前記転写光学面に成膜することを特徴とする。
前記転写光学面に、例えば1μm以下のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)やCrなどを成膜することによって、光学素子用成形金型の酸化防止と、転写された光学素子の離型性を向上させ、成形時の型寿命を大幅に伸ばすことができる。尚、転写光学面以外の例えば転写光学面の周囲の面に対しても成膜して良いことはもちろんである。
請求項36に記載の光学素子用成形金型は、請求項1〜35のいずれかに記載の加工方法によって加工された転写光学面であって、加工された転写光学面の面粗さがRa15nm以下であることを特徴とする。
高精度な形状と鏡面を備えた転写光学面を有する光学素子用成形金型によって、良好な光学特性を有する光学素子を低コストで安定して供給することが出来る。
請求項37に記載の光学素子は、請求項36に記載の光学素子用成形金型を用いて転写された光学面を有することを特徴とする。
請求項38に記載の光学素子用成形金型は、請求項1〜35のいずれかに記載の加工方法によって加工された転写光学面であって、加工された転写光学面に微細形状を有することを特徴とする。
高精度な形状と鏡面を備えた転写光学面を有する光学素子用成形金型によって、高精度に転写形成された微細形状により良好な光学特性を有する光学素子を低コストで安定して供給することが出来る。このようにして光学素子の光学面に形成される微細形状としては回折構造がある。
請求項39に記載の光学素子は、請求項38に記載の光学素子用成形金型を用いて転写された光学面を有し、前記光学面には前記微細形状が転写されていることを特徴とする。
請求項40に記載の光学素子は、請求項37又は39に記載の発明において、光学素子用成形金型を用いて転写された後に、前記光学素子の外周面を加工することを特徴とする。
例えばガラス製の光学素子の中心と周辺の肉厚差が大きい場合は、収縮量や偏心などの影響を受けやすいので光学面精度を重視した成形条件となるため、光学面外の外径形状を精度良く成形することは難しい。そこで、成形後に研削加工(心取り)にて外径形状を整えることで、光学ユニットへの高精度な組み立てが可能となる高精度なガラス製の光学素子を得ることが出来る。特に、光ディスク用光ピックアップ装置の対物レンズなどでは、レンズ中心部と外周部での肉厚差が大きいので、レンズのフランジ外周を後加工することで、組み立て容易であり且つ高精度な光学素子を提供できる。
請求項41に記載の光学素子は、請求項37又は39に記載の光学素子において、前記光学素子を充填成形法で成形することを特徴とする。
一般的にガラスモールドで光学素子を形成する場合、その外形を精度良く形成することは難しいが、外径が円筒形状でない場合は、後加工で心取り加工を行うとかえって手間がかかり、加工誤差などの問題が発生しやすい。そこで、外径形状が非円筒の場合は、閉じたキャビティを有する型内で光学ガラス材料をプレス成形する充填成形法により、成形時に外径形状も同時に成形すると好ましく、それにより心取り工程を省くことが出来て低コスト生産が可能となる。
請求項42に記載の光学素子は、請求項37,39〜41のいずれかに記載の発明において、前記光学素子の光学面に反射防止膜を成膜したことを特徴とする。
本発明の加工方法により、非常に高精度で優れた表面粗さの転写光学面を効率よく高硬度材料に創成できるので、それから転写成形された光学素子の光学面の品位が高くなり、反射防止膜を成膜することで透過率を向上することが出来る。例えば適切な反射防止膜の成膜により、405nmの青色レーザー光に対して透過率を97%以上にすることも容易にできる。また、微細構造を有する光学素子においては、本発明により加工された光学素子用成形金型の転写光学面の微細形状が高精度に転写されているため、成形された光学素子も回折効率などが理想値に近く、この表面に反射防止膜を成膜することで、理想に近い性能を有する光学素子を得ることができる。
請求項43に記載の光学素子は、請求項37,39〜42のいずれかに記載の発明において、前記光学素子の光学面に反射ミラー膜を成膜したことを特徴とする。
本発明の加工方法により、非常に高精度で優れた表面粗さの転写光学面を効率よく高硬度材料に創成できるので、それから転写成形された光学素子の光学面の品位が高くなり、反射ミラー膜を成膜することで高い反射率と高い光学性能を有する高品質な光学素子を得ることが出来る。特に反射光学系では、反射光学面の形状精度が透過屈折型の光学面に比べ原理的に4倍程高く求められるので、本発明により加工された光学素子用成形金型の転写光学面により高精度かつ高い表面粗さの光学面を得られることは、反射型光学素子の収率や生産性を高めるのに大変に効果がある。また、微細な回折構造等を形成すべき反射光学素子においては、本発明により加工された光学素子用成形金型の微細形状が高精度に加工できているため、転写成形された光学素子も回折効率などが理想値に近く、この表面に反射コートを行うことで、理想に近い性能を有する反射型回折光学素子を得ることができる。
請求項44に記載の光学素子は、請求項37,39〜43のいずれかに記載の発明において、前記光学素子の光学面に波長選択性を有する膜を成膜したことを特徴とする。
本発明の加工方法により、非常に高精度で優れた表面粗さの転写光学面を効率よく高硬度材料に創成できるので、それから転写成形された光学素子の光学面の品位が高くなり、波長選択性を有する膜を成膜した場合に、光の散乱を抑制することで高い波長選択性と高い光学性能を有する高品質な光学素子を得ることが出来る。
請求項45に記載の光学素子は、請求項37,39〜44のいずれかに記載の発明において、前記光学素子は、転写成形後に洗浄されることを特徴とする。
本発明の加工方法により、非常に高精度で優れた表面粗さの転写光学面を効率よく高硬度材料に創成できるが、加工された転写光学面のわずかな汚れによってそれらの品質を下げてしまうため、転写光学面やこれにより成形された光学素子の成形光学面を洗浄することで、表面の不純物を洗い流し、高性能な光学素子を安定した品質で効率よく生産できる。
請求項46に記載の光学素子は、請求項37,39〜45のいずれかに記載の発明において、前記光学素子は、波長450nm以下の光束を用いて情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に用いられることを特徴とする。波長450nm以下の光束としては、青紫色レーザーによる光束が好ましく用いられる。
波長450nm以下の短波長の光束は、光学素子の光学面で散乱しやすいという特徴を有するが、本発明の加工方法により、非常に高精度で優れた表面粗さの転写光学面を効率よく高硬度材料に創成できるので、それから転写成形された光学素子の光学面の品位が高くなり、光の散乱を効果的に抑制できる。従って、このような光学素子を複数枚重ね合わせても、光透過率を高く維持できる。
本発明によれば、光学素子用成形金型に用いられる高硬度材料の加工で、工具のチッピングを抑え、工具の寿命を延ばし、1つの工具で多数の光学素子成形金型の転写光学面を連続して高精度に切削加工できる転写光学面の加工方法、それにより加工される光学素子成形金型及びそれにより成形される光学素子を提供する。
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して説明する。本発明の実施の形態にかかる転写光学面の加工方法は、図11の超精密加工機により実行することができる。図11は、本発明の実施の形態にかかる超精密加工機の斜視図である。図11において、定盤11上にX軸方向に駆動されるX軸テーブル12とZ軸方向に駆動されるZ軸テーブル14が取り付けられている。X軸テーブル12上には、工具13を旋回することが出来る旋回軸(B軸)18が取り付けられており、その旋回軸18の上には、工具取り付け部17が取り付けられている。Z軸テーブル14上には、回転駆動機構16によって回転駆動される主軸15が配置されている。主軸15には、被加工物Mが取り付けられる。
図10に示すように、切削工具であるダイヤモンド工具3は、その先端にダイヤモンドチップ3aを取り付けている。尚、ここでは、3bがすくい面、3cが逃げ面、3dがシャンクを構成し、加工時には、被加工物Mの被切削面に対して、すくい面3bが略直交する方向に保持され、すくい面3bの法線方向に両者を相対移動させることで切削加工が行われる。尚、すくい面3bの先端は、角度付けされたテーパ面3eとなっているため、切削時に、被切削面とテーパ面3eとのなすすくい角は、−5〜−60度の範囲に保持される。
(実施例1)
本発明者らは、図11に示す超精密加工機を用いて、本発明の加工方法を実行した。被加工物の材料には、日本タングステン製のRCC−FN(ビッカース硬度Hv=2500)のタングステンカーバイト(以下WC)を用いた。加工しようとする対象の非球面転写光学面形状は、近似R凹0.9mm程度で、中心曲率半径1.4mm、最大見込み角は、65°という小さく深い凹状転写光学面である。
本発明者らは、図11に示す超精密加工機を用いて、本発明の加工方法を実行した。被加工物の材料には、日本タングステン製のRCC−FN(ビッカース硬度Hv=2500)のタングステンカーバイト(以下WC)を用いた。加工しようとする対象の非球面転写光学面形状は、近似R凹0.9mm程度で、中心曲率半径1.4mm、最大見込み角は、65°という小さく深い凹状転写光学面である。
被加工物の転写光学面となる面には、予め放電加工にて凹球面に加工し、さらに軸分解能が100mm程度の汎用的な高精度研削加工機を用いて、近似球面形状から非球面形状へ粗取り加工を行った。この粗取り研削加工では、電着砥石を使用し、形状補正を繰り返しながら、形状精度1μm程度まで短時間で追い込み、非球面形状に仕上げた。
このように前加工した被加工物を、図11にで示す超精密加工機に取り付けて、切削仕上げ加工を行った。ダイヤモンド工具はRバイトであり、刃先のすくい面円弧半径は0.5mm、逃げ面角度5°であり、すくい面が切り込み点において成す角度は−25°で、この時の切り込み量は0.2μmである。被加工物を取り付けた主軸の回転数は340rpm、送り速度は0.2mm/minで切削加工を行った。
切削加工後、WYKO社製の表面粗さ測定器HD3300を使用して転写光学面粗さを測定した。測定結果を図12に示す。図12から明らかなように、平均表面粗さがRa2.15nmであり、実用十分な鏡面が得られた。一方、加工形状精度は、松下電器産業製の三次元測定器UA3Pで測定し、1回目の加工では100nmPV程度の形状誤差があったが、その形状誤差分を補正するようにNCプログラムを衝正して補正加工を実施した。測定結果を図13に示す。図13から明らかなように、この1回の補正加工で加工形状誤差が40nmPV以下という結果が得られた。
従来の研削加工では、上記形状を加工するには、砥石径をφ1mm程度まで細くする必要があり、加工に寄与する砥粒の数が極めて少なくなるため、工具摩耗が著しく進行し、細い砥石や砥石軸が研削抵抗によって容易にたわんで、その為、研削除去量が安定せず、高精度な転写光学面加工は実現出来ない。これを検証すべく、本発明者らは以下の通り比較試験を行った。
実際に同じ材料の同じ転写光学面形状を荒取り研削加工精度1μm以下で、従来の研削加工にて仕上げ加工を行った。同様な測定器による測定結果を図14に示す。図14から明らかなように、平均表面粗さRa4.19nmで、転写光学面形状誤差は100nmPV程度であった。一方、補正加工による加工形状精度につき、同じ測定器での測定結果を図15に示す。図15から明らかなように、研削加工では砥石摩耗の進行が著しく、結局、中心部を除いても形状誤差100nmPVまでしか到達することは出来なかった。加工表面粗さは、数値的には転写光学面として使えそうではあるが、多くの深い擦り傷状の溝があり、これらの底の部分までは測定原理上測れないので、実際にはこのままでは転写光学面として使用できない。よって研磨加工などの後加工が必要と判断された。
また、本発明にかかる切削加工では、1本目の転写光学面加工に使用した工具と形状補正入りNCプログラムを用いて2本目の転写光学面を切削加工し、1本目の転写光学面精度とほとんど同等の表面粗さと形状精度が得られ、優れた加工再現性が確認できた。
このようにして、1本のダイヤモンド工具で加工を続けて計5本まで転写光学面を切削加工することができ、全て、平均表面粗さ3nm以下、形状誤差50nm以下の非球面転写光学面を創成加工することができた、この切削加工後のダイヤモンド工具の刃先を、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、逃げ面に幅3μm程度の工具摩耗が見られるが、チッピングは全く起こしていないことが確認できた。
その光学素子用成形金型を、そのまま成形に使用し、熱間プレス成形したガラス光学素子の性能は、半導体レーザー波長が405nmの干渉計にて測定した。図16に、本発明の切削加工(a)と、研削加工(b)にて高精度に仕上げた高硬度材料の光学素子用成形金型を用いて成形したガラス光学素子を、干渉計で観察した結果をそれぞれ示す。図16から明らかなように、透過波面収差でRMS30mλという高精度な光学素子が得られた。
次に、得られた高精度な光学素子の透過率を向上させることと、反射光によるゴーストを抑えるため、5層の反射防止膜を成形光学素子の両面に施した結果、透過率を98%以上にすることが出来た。これは、本発明の切削加工が、研磨などの追加工を一切行わずとも、光学素子用成形金型の転写光学面の表面粗さが極めて良好で散乱の原因となるうねりや傷などが少ないからであり、特に使用する光源波長の4乗に反比例して増加すると言われるレーリー散乱が、405nmという短波長光においても充分低く押さえられていることが実証できた。
更に、前述した本発明の切削加工による成形型で成形し得られた高精度なガラス光学素子と別にプラスチック成形により得た色収差補正用の回折光学素子を組み合わせて偏心調整し、光源光が405nmの波長であっても650nmの波長であっても良好な性能を有する実用可能な高精度複数波長互換の光学ユニットを得ることができた。このような光学ユニットは、Blu−ray DiscやHD DVDなどの光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置に好適に用いることができる。
プラスチックレンズだけでの組み合わせで作られた光学ユニットと比較して、温度変化に対して高い性能安定性を確保でき、その性能変動量としてはプラスチックレンズだけの場合と比較して、半分以下に抑えることができた。
図8は、別な実施の形態にかかる、直交3軸の可動ステ一ジと、ダイヤモンド工具を回転させる回転機構とを有する超精密加工機の斜視図である。図8において、定盤21上にX軸方向に駆動するX軸テーブル22とZ軸方向に駆動するZ軸テーブル24が取り付けられている。X軸テーブル22上には、Y軸方向に駆動するY軸ステージ26が取り付けられ、Y軸ステージ26上にダイヤモンド工具23を回転させるための回転機構27が取り付けられている。その回転軸はZ軸と平行である。また、Z軸テーブル24上には、被加工物Mが固定されている。図8に示す超精密加工機を用いた切削加工方法は、ダイヤモンド工具23を高速で回転しながらX軸テーブル22によりX軸方向に送って切削した後、Z軸ステージ24によりZ軸方向に少し被加工物Mを送るという動作を繰り返して、その工具軌跡の包絡面で転写光学面を創成する方法であり、一般にフライカット法と呼ばれているものである。ダイヤモンド工具23の切削速度が回転により速くできるので、X軸方向の送りを速くしても工具刃先の負荷が少なく、高速加工ができるので、細長い転写光学面の切削加工に有利な方法である。
(実施例2)
本発明者らは、図8に示す超精密加工機で切削加工をおこなった。被加工物の材料には、タンガロイ社製のマイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850)を用いた。転写光学面となる加工形状は、断面形状が非球面形状であり、それと直交方向には曲率を有しないシリンドリカル非球面形状(Z軸方向断面形状:近似R凹3.2mm、中心曲率半径5.4mm、幅0.9mm、X軸方向形状:曲率半径∞(無限)、長さ15mm)である。
本発明者らは、図8に示す超精密加工機で切削加工をおこなった。被加工物の材料には、タンガロイ社製のマイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850)を用いた。転写光学面となる加工形状は、断面形状が非球面形状であり、それと直交方向には曲率を有しないシリンドリカル非球面形状(Z軸方向断面形状:近似R凹3.2mm、中心曲率半径5.4mm、幅0.9mm、X軸方向形状:曲率半径∞(無限)、長さ15mm)である。
転写光学面は、実施例1と同様に、放電加工の後、汎用的な高精度研削加工機により粗取り加工を行った。この粗取り加工された転写光学面形状を、図8で示した超精密加工機により、本発明の仕上げ切削加工を行った。使用したダイヤモンド工具は、Rバイトで切れ刃のすくい面円弧半径は0.8mm、逃げ面の角度5°であり、すくい面と逃げ面が切り込み点で成す角度は110°である。
加工条件は、工具回転数4000rpm、切り込み量0.5μm、X軸方向の送り速度200mm/minである。Z軸方向の送りは等ピッチとし、平均表面粗さRaが2nm程度になるには1μmとすれば良いが、総切り込み量を数nmにすると4000回程度の往復が必要となり、加工時間が13時間ほどになって効率が悪いため、加工後に切削痕(カッターマーク)を除去する極軽い研磨工程を行う前提で工程設計し、Z軸方向の送りピッチを5μmとした。
切削加工結果として、転写光学面の切削加工の形状精度の測定結果を図17に示す。図17から明らかであるが、極短周期のうねりはZ方向の送りピッチによる切削痕が表れたものであり、この時点での加工形状誤差は63nmPVであった。さらに、切削光学面全体に同一な圧力と加工時間条件で10分程度研磨加工を行った結果、図18に示すように極短周期の成分が除去され、42mmPVの形状誤差となった。
同時に平均表面粗さRaは、9.5nmから3.1nmに改善された。みかけ上、転写光学面の形状誤差がこの追加工である研磨加工により2/3程度に低減されたように見えるが、研磨加工には形状創成能力は全く無いので、単に切削痕が一様に除去されて、切削加工本来の高い形状精度が顕れたことによっている。このように、従来の研削加工を施した転写光学面とは異なり、本発明の切削加工では、転写光学面全体を均一に形状崩れすることなく短時間で研磨加工できることがわかった。
これは、切削加工表面状態が観察写真に見られるように転写光学面全体に一様で規則正しい切削痕を有するため、転写光学面全体に均等な条件の研磨を行うことで切削痕が全面にわたってほぼ同時に容易に除去できることと、この切削痕は短周期でしかも方向性があるために、その方向に垂直な方向に研磨を行うことによって、選択的に効率よく切削痕だけを除去することが容易だからである。この研磨加工を組み合わせることによって、従来の研削研磨加工よりも高精度な加工形状と充分な鏡面を、本発明の切削加工と研磨加工の組み合わせによって、1/5以下の時間で実現可能となった。加工時間は、切削加工と均等研磨を合わせて4時間であった。
従来の研削加工法による加工形状精度を測定した結果を図19に示す。図19によれば、研削工具である砥石の形状精度及び工具摩耗の影響により、短周期の大きなうねりが見られる。研削加工時間は、4回の補正を行って加工した結果、14時間かかった。また、研削によるランダムで深い加工傷により、研磨加工時間は6時間に及び、加工形状の崩れが無いように極めて慎重に研磨作業を行ったが、加工形状誤差は80mmPVであり、要求形状精度である50nmPVは満たせなかった。
図20(a)に、本発明の切削加工後、研磨加工にて高精度に仕上げた高硬度材料の光学素子用成形金型を用いて成形したガラス光学素子を、干渉計で観察した結果を示す。図20(a)に示すように、光源波長405nmにおいて、透過波面収差RMS18mλという高精度な光学素子を得ることが出来た。これに対し、図20(b)に、従来の研削加工後、研磨加工にて高精度に仕上げた高硬度材料の光学素子用成形金型を用いて成形したガラス光学素子を、干渉計で観察した結果を示す。従来の研削加工と研磨加工のよるものでは、図20(b)に示すように、波面収差はRMS32mλと悪く、しかも図からわかるとおり、研磨加工した後でも干渉縞に研削の加工痕が無数に見られ、高硬度材料といえども非常に深い領域まで砥粒による引っ掻き傷の影響が残っていることがわかった。
図9は、別の実施の形態にかかる超精密加工機の斜視図である。図9において、不図示の制御装置によってX軸方向に駆動されるX軸テーブル2が、定盤1上に配置されている。X軸テーブル2上には、ダイヤモンド工具3が工具取り付け部7を介して取り付けられている。又、不図示の制御装置によってZ軸方向に駆動されるZ軸テーブル4が、定盤1上に配置されている。Z軸テーブル4上には、不図示の制御装置によって制御される回転駆動機構6と、回転駆動機構により回転駆動される主軸(回転軸)5が取り付けられている。主軸5は、加工すべき転写光学面を有する光学素子用成形金型の材料(被加工物ともいう)Mを取り付け可能となっている。
本実施の形態にかかる転写光学面の加工方法によれば、主軸5やX・Z軸テーブル2,4の剛性が非常に高く、軸制御分解能が100nm以下の超精密加工機を用いて、主軸5に被加工物であるところの光学素子成形用型を取り付け、ダイヤモンド工具3により、切れ刃の切削点が加工中に連続的に移動するようにして、延性モードで切削加工することにより、非球面形状などの曲率を有する転写光学面を創成することができる。
(実施例3)
本発明者らは、図9に示すXZ軸の2軸の超精密加工機により本発明の切削加工を行った。被加工物の材科には、粉末焼結したSiCを母材として、転写光学面となる部分にCVDによりSiCを付けて(これをCVD−SiC膜という)、緻密な転写光学面とした。今回用いたCVD−SiCの硬度は、ビッカース硬度Hv2800であった。
本発明者らは、図9に示すXZ軸の2軸の超精密加工機により本発明の切削加工を行った。被加工物の材科には、粉末焼結したSiCを母材として、転写光学面となる部分にCVDによりSiCを付けて(これをCVD−SiC膜という)、緻密な転写光学面とした。今回用いたCVD−SiCの硬度は、ビッカース硬度Hv2800であった。
転写光学面の加工方法としては、まず実施例1と同様に、汎用的な高精度研削加工機により、CVD−SiCの膜厚を考慮した非球面形状に形状誤差100μmPV程度で研削加工する。その後、CVD−SiCを厚み500μm程度成膜する。成膜後、汎用的な高精度研削加工機により、最終非球面形状に対して形状誤差1μmPV以下に補正加工を入れながら転写光学面形状を創成する。最終非球面形状は、中心曲率半径3.5mm、最大見込み角35°、転写光学面直径3.2mmの比較的緩やかな凹状転写光学面である。
次に、粗加工された非球面転写光学面を図9に示す2軸の超精密加工機で切削仕上げ加工を行った。加工条件は、主軸回転数340rpm、切り込み量100nm、送り速度は、0.1mm/minとした。工具には、単結晶ダイヤモンドバイトを使用したRバイトで、工具刃先のすくい面円弧半径は1.0mm、すくい面と逃げ面の成す角度が切り込み点において100°のものを使用した。更に、すくい角を−25°となるようにダイヤモンド工具を加工機にセットした。
本発明による切削加工方法でCVD−SiCを非球面形状に加工し、WYKO社の表面粗さ測定器HD3300で表面粗さを測定した結果、図21に示すとおり、表面粗さRa3.44nmという鏡面が得られた。形状精度は、80nmPVと、最大見込み角が小さい割にはあまり良くなかった。
ダイヤモンド工具3の刃先の逃げ面での摩耗量は、刃先稜線の幅で1.7μmであった。超硬に比べさらに硬い材料であったが、刃先の摩耗量は比較的小さかった。これは、刃先の円弧半径が1.0mmと大きかったので、長い切れ刃稜を使用して切削加工が進むため、刃先のCVD−SiCを削り取る負担が分散されたためと思われる。刃先のチッピングは全く無く、さらに複数のCVD-SiC転写光学面を切削加工できる状態であった。
この結果が示すとおり、極めて高硬度材料であるCVD−SiCにおいても、本発明により鏡面が得られ、理想とする延性モード切削が実現できることがわかった。
(実施例4)
実施例4として、実施例3と同じく、図9に示す2軸の超精密加工機を用いて切削加工を実行した。被加工物の材料には、タンガロイ社製マイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850)を使用した。転写光学面の形状は、ブレーズ状の回折溝を有する形状であり、光学設計上のブレーズ段差量は1.15μmである。
実施例4として、実施例3と同じく、図9に示す2軸の超精密加工機を用いて切削加工を実行した。被加工物の材料には、タンガロイ社製マイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850)を使用した。転写光学面の形状は、ブレーズ状の回折溝を有する形状であり、光学設計上のブレーズ段差量は1.15μmである。
工具には、頂角30°、刃先先端からつながる円弧半径が0.6μm、直線状の稜線と円弧とが接続する点と円弧中心を結ぶ線分が、より刃先まで伸びている直線上の稜線と成す角度(接続角)が60°となる形状の半月バイトを使用した。工具単体での取り付け面に対するすくい面の角度は0°であるが、すくい面の角度が切り込み点において−15°になるように15°前側に傾けて加工機にセットした。主軸の回転数は500rpm、切り込み量100nm、送り速度0.1mm/minとした。
本条件で切削加工した結果、ダイヤモンド工具の刃先を折損することなく加工することが出来、WYKO社の表面粗さ測定器HD3300でブレーズ段差量を測定したところ、1.1μmであった。従来、すくい面の角度が切り込み点において成す角度を0°にして加工していたが、ダイヤモンド工具の刃先が折損を起こし、狙いのブレーズ段差まで加工することは全く出来なかった。また、従来行われている研削加工では、ツルーイングにより砥石先端部を半径5μm程度にしか整形できず、砥石先端部の円弧形状がブレーズ底部に転写して、設計形状通りの加工は出来なかった。
以上のように本発明の切削方法では、従来の研削加工では砥石形状の制約から設計形状を加工できず、また従来切削では容易に刃先が折れて全く回折溝形状が加工できない高硬度材料においても、ダイヤモンド刃先にかかる刃先を折る方向に働く切削抵抗力を圧縮応力に変換して緩和させることにより、ダイヤモンド工具刃先を折損することなく高精度の微細形状を切削加工できることがわかった。
その高硬度材料のブレーズ回折光学素子用成形金型を用いて熱間ガラス成形を行い、ブレーズ回折GM光学素子を実現し、温度変化による収差変動が少なくかつ色収差が補正出来る高性能ガラス光学素子を得られた。ブレーズ形状の測定結果を図7に示す。
図22は、別な実施の形態にかかる超精密加工機の斜視図である。図22において、定盤31上にX軸方向に駆動するX軸ステージ32とZ軸方向に駆動するZ軸ステージ34が取り付けられている。X軸テーブル32上には、Y軸方向に駆動するY軸ステージ36が取り付けられ、Y軸ステージ36にはダイヤモンド工具33を突き出すためのアームブロック35が存在する。アームブロック35の先にダイヤモンド切削工具33を取り付ける機構となっている。被加工物Mは、Z軸ステ一ジ34上に固定されている。
(実施例5)
実施例5としては、図22に示す直交3軸の可動ステージを有する超精密加工機で、高硬度材料を切削する工具としては、単結晶ダイヤモンド工具と高純度CBN工具を用い、ルーリング切削加工を行った。
実施例5としては、図22に示す直交3軸の可動ステージを有する超精密加工機で、高硬度材料を切削する工具としては、単結晶ダイヤモンド工具と高純度CBN工具を用い、ルーリング切削加工を行った。
転写光学面を形成する材料は、タンガロイ製マイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850で、切削加工形状は幅10mm×長40mm)の平面である。使用した単結晶ダイヤモンド工具、及び高純度CBNは同じ刃先形状で、Rバイトである。刃先のすくい面円弧半径0.5mm、逃げ面の角度2°、工具単体では切り込み点でのすくい面の角度0°となる形状である。加工条件は、切り込み量0.5μm、X軸方向送り速度50mm/min、Z軸方向送りピッチ5μmである。
まず初めに、ダイヤモンド工具をそのまま切り込み点ですくい角が0°となるように前述の加工機に取り付けた。加工表面状態は、顕微鏡写真である図23に示すとおり、加工表面には3μm以下の無数の穴らしきものが見られ、鏡面としては問題がある。これは、超硬のWC粒子が切れない条件で加工したため、工具刃先がWC粒子を引っ掛けて脱落した跡と考えられる。この時、工具を取り外しSEMにて刃先を観察すると、顕微鏡写真である図24に見られるように刃先稜線に微小なチッピングが見られ、結合材であるコバルトの中に埋もれている硬いWC粒子に刃先が切り込めない状態であったことがわかった。
次に、高純度CBN工具をやはり切り込み点でのすくい角が0°となるように図22の超精密加工機に取り付け、ダイヤモンド工具の時と同じ条件で同じ材料に加工を行った。その結果、WC粒子の脱落は比較的少ないが、やや白っぼく見える散乱があり、転写光学面としてはこのままでは不十分であった。高純度CBNは多結晶材料であるため、刃先稜が単結晶ダイヤモンド程鋭利にはならないため、鏡面になりにくいと思われる。しかし、刃先を観察した結果では、チッピングなどは発生しておらず、これはダイヤモンドの刃先よりは靭性が高く、WC粒子が刃先にぶつかった際にも切り込まれずに刃先表面を滑ってコバルトの中に押し込まれるような状況が発生したものと推測された。
更に、同じ超精密加工機と工具、被削材料を用い、同じ転写光学面形状で、すくい角を変えて切削加工を行った。まず単結晶ダイヤモンド工具を、すくい面の角度が切り込み点において成す角度を−25°となるように、前側に傾斜させて加工機にセットし、上記と同じ加工条件で切削加工した。その結果、加工表面状態は顕微鏡写真である図25が示すとおり、WC粒子の脱落もなく鏡面が得られた。平均表面粗さRaは2.3nmで、充分転写光学面として使用できるものであった。
この時のダイヤモンド工具の刃先は、顕微鏡写真である図26に示すとおり、全くチッピングを起こしておらず、すくい角を負にしただけで高硬度材料のルーリング加工において、完全な延性モード切削が実現できたことがわかった。
次に、高純度CBN工具を同じくすくい面の切り込み点において成す角度を−25°と成るように前側に傾斜させて前述の加工機にセットし、同じ加工条件で切削加工した。
結果は、加工表面の散乱はやはり見られるが、WC粒子の脱落は見られず、表面の穴はなくなった。これを、ダイヤモンドスラリーにより切削痕の方向に対して直交する方向に揺動させて研磨加工したところ、約12分で切削痕を除去でき、散乱の無い平均表面粗さRa3.5mnの転写光学平面が得られた。従って、極簡単な研磨加工を併用するのであれば、高純度CBN工具も切り込み点でのすくい角を負にすることによって、ルーリング加工で充分な表面粗さの転写光学面を得られることがわかった。特に、ルーリング加工では、旋削やフライカット加工よりも工具刃先の負荷が大きいので、高純度CBN工具ではダイヤモンドよりもチッピングを起こし難く欠けにくい性質が直接工具の長寿命化となるため、簡単な研磨加工を前提とすれば、多量の転写光学面を効率よく切削加工するには向いていることがわかった。
図27は、別な実施の形態にかかる超精密加工機の斜視図である。図27において、定盤41上にX軸方向に駆動するX軸ステージ42とZ軸方向に駆動するZ軸ステージ44が取り付けられている。X軸テーブル42上には、Y軸方向に駆動するY軸ステージ46が取り付けられ、Y軸ステージ46にはダイヤモンド工具43を回転させる回転機構47がアーム45により連結されている。回転機構47の回転軸の端面に、回転中心から半径方向に15mm離れた位置に工具刃先がくるように取り付け、Z軸ステージ44上に固定された被加工物Mに対して、Y軸方向に切り込みを与え、X軸方向にダイヤモンド工具43を送って切削加工を行う。
(実施例6)
実施例6として、図27に示す直交3軸の可動ステージを有する超精密加工機で、高硬度材料をダイヤモンド工具で、ミーリング切削加工を行った。円周状に切削する軸配置で平面状転写光学面の加工を行った。平面状転写光学面は、幅20mm長さ50mmで、材料はCVD−SiC(ビッカース硬度Hv2800)であり、母材の粉体焼結SiCに厚み300μm成膜してある。
実施例6として、図27に示す直交3軸の可動ステージを有する超精密加工機で、高硬度材料をダイヤモンド工具で、ミーリング切削加工を行った。円周状に切削する軸配置で平面状転写光学面の加工を行った。平面状転写光学面は、幅20mm長さ50mmで、材料はCVD−SiC(ビッカース硬度Hv2800)であり、母材の粉体焼結SiCに厚み300μm成膜してある。
荒取り加工としては、直径250mmの#2000のダイヤモンド砥石を用いた平面研削により、1μm以下の平面度に加工した。単結晶ダイヤモンド工具による延性モードミーリングの加工条件は、切り込み量0.3μm、工具回転数6000rpm、送り遠度100mm/minである。
使用したダイヤモンド工具は平先バイトで、すくい面の切れ刃幅1.5mm、すくい面と逃げ面のなす角度が切り込み点で110°、切り込み方向とすくい面の切り込み点でなす角度が−25°である。総切り込み量は、工具刃先が荒取り加工面に触れてから、3回切り込んだので、1μm程度の深さである。従って、切削加工時間は2分程度である。
加工結果は、平均表面粗さRa2.6mn、平面度78nmPVで、転写光学面として実用充分な結果を得られた。工具刃先をSEMで観察したところ、当然ながらチッピングは全く見られなかった。
本発明の切削加工方法は、工具回転軌跡の円内が加工領域という、広い加工領域を有するミーリング加工の特徴を活かしながら、従来では切削加工をすることすら考えられなかった高硬度材料の中でも極めて硬いCVD−SiCに、高速で高効率に転写光学面を創成することを可能とした。
(実施例7)
実施例7として、図9に示すXZステージの2軸を有する超精密加工機により切削加工を行った。ここでは、すくい面が切り込み点において成す角度を変え、加工表面粗さとの関係について調べた。切削加工材料は、タンガロイ社製の超硬マイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850)を用いた。
実施例7として、図9に示すXZステージの2軸を有する超精密加工機により切削加工を行った。ここでは、すくい面が切り込み点において成す角度を変え、加工表面粗さとの関係について調べた。切削加工材料は、タンガロイ社製の超硬マイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850)を用いた。
加工された転写光学面形状は、半径5mmの凹球面形状で、転写光学面深さ1.5mmである。ダイヤモンド工具はRバイトであり、切れ刃のすくい面円弧半径は1.5mm、逃げ面角度5°である。ダイヤモンド工具の加工機ヘのセットは、すくい面が切り込み点において成す角度を−5°〜−70°の範囲でセット位置を変えることで、加工テストを行った。
加工条件は、被加工物を取り付けた主軸回転数は340rpm、送り速度は0.2mm/min、1回当たりの切り込み深さは0.2μmである。1条件につきに4回実施し、再現性についても確認した。ここで、すくい面が切り込み点において成す角度(すくい角θ:図1参照)と、加工済み表面の粗さとの関係を求めた。その結果を図28に示す。
図28から判るとおり、すくい角のマイナスの値を大きくすると、加工表面粗さが粗くなる傾向にある。しかし、すくい角−60°で表面粗さがRa5nm程度でピークを迎え、その後は、逆に表面粗さは細かくなる傾向にある。それは、切り込みを与えても、工具と被加工物が切削抵抗力の互いに反発しあう分力が大きくなるのと、ダイヤモンド工具と高硬度材料との摩擦係数が小さいために、与えた切り込みが実際には切り込まれずに、ダイヤモンド工具が被加工物の表面を滑っているためと推測できる。実際に加工表面を観察すると、切削痕は見あたらず、切削加工が行われていないことがわかった。この結果から、超精密加工機の制御精度が高くても、すくい角が−60°よりも更にマイナスの値では所望の切り込み深さを与えることが非常に難しくなり、切り込み量を一定に保持することも難しくなり、加工形状精度は悪くなることが判る。ちなみに、本検討で使用した超精密加工機の工具と主軸間の総合的な静剛性は130N/μmであり、市販の加工機としては高い方である。
また、すくい角が−5°では、4回中2回に、ダイヤモンド工具刃先に微小なチッピングが見られ、この程度の−5°よりも0に近い負のすくい角量ではチッピングの抑制効果は少ないことが判った。
切削加工表面粗さにおいては、工具刃先の切り込み点におけるすくい角のマイナス側への大きさが25°以下(すくい角−25°以上)が表面粗さRa3nm以下と良好であることがわかった。工具刃先のチッピングの発生を抑制する効果も考慮すると、図28の結果からも−15°〜−45°の範囲(すくい角−45°以上−15°以下)が、高精度な転写光学面を効率よく高硬度材料に創成するには適していると言える。つまり、これより小さいすくい角の大きさ(−15°よりも0に近い角度)ではチッピングの発生する確率が増え、その結果、加工生産性の低下が見られ、これ以上に大きなすくい角の大きさ(−45°よりも更に大きなマイナスの角度)では、加工機の特性にもよるが安定した切削状態を維持することが徐々に難しくなり、転写光学面の形状精度や表面粗さが劣化を生じ易くなる。
従って、すくい角が、−5°〜−60°の範囲(すくい角−60°以上−5°以下)では要求精度が加工形状精度100nmPV、表面粗さRa5nmレベルのマイクロレンズやカメラレンズ用成形型であれば本発明の効果が十分得られるといえる。また、要求精度が加工形状精度50nmPV以下、表面粗さRa3nm以下の、例えばBlu-ray Disc用光ピックアップ装置に用いるレンズといった超高精度光学素子用成形金型では、すくい角θ=−15°〜−45°(すくい角−45°以上−15°以下)として加工するのが良く、これが本発明の効果を最も得られる範囲である。
(実施例8)
実施例8として、図11に示す旋回軸を有する超精密加工機を用いて、本発明の加工方法を実行した。実施例8では、単結晶ダイヤモンドの結晶方位とダイヤモンド工具刃先のチッピングと工具磨耗の関係について調べた。被加工物の材料には、実施例7で用いたタンガロイ社製の超硬マイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850)を用いた。加工された転写光学面形状は、半径5mmの凹球面形状で、転写光学面深さ1.5mmである。
実施例8として、図11に示す旋回軸を有する超精密加工機を用いて、本発明の加工方法を実行した。実施例8では、単結晶ダイヤモンドの結晶方位とダイヤモンド工具刃先のチッピングと工具磨耗の関係について調べた。被加工物の材料には、実施例7で用いたタンガロイ社製の超硬マイクロアロイF(ビッカース硬度Hv1850)を用いた。加工された転写光学面形状は、半径5mmの凹球面形状で、転写光学面深さ1.5mmである。
ダイヤモンド工具はRバイトであり、刃先のすくい面円弧半径は、0.5mm、逃げ面角度5°である。ダイヤモンド工具は、すくい面が切り込み点において成す角度を−25°になるように加工機ヘセットした。
加工条件は、被加工物を取り付けた主軸回転数は340rpm、送り速度0.2mm/min、1回当たりの切り込み深さ0.2μmで、切削長は4kmである。
今回使用したダイヤモンド工具の結晶方位は、図2が示すとおり、数値が小さくなるほど磨耗しにくい方位なので、磨耗が少ないであろう3つ結晶方位と通常使われる結晶方位で行った。即ち、1本目のダイヤモンド工具は、切り込み方向が、結晶面(100)の<110>方位に一致し、2本目は、(110)面の<110>方位に一致するように、結晶方位を選び製作した。3本目は、切り込み方向と結晶面(111)面の<111>方位に一致するように製作したが、この方位は極めて硬度が高く工具の刃先形状精度が得られなかったため、(111)面の<110>方位に一致するように製作し直した。これら3本の刃先の結晶方位は、工具摩耗が少ないと思われる方向である。4本目は、通常用いられる(100)面の<100>方位に切り込み方向が一致するように製作した。これは図2でもわかる通り摩耗しやすい結晶方位であるが、刃先を高精度に製作するにはその方が容易で収率が高くなるので、一般的に使われている方向である。
転写光学面の切削加工には、旋回軸(B軸)を用いて、切削点が切れ刃の一カ所となるように加工する光学面の法線角に応じて工具を旋回させて行った。
その結果、(100)面の<110>方位のダイヤモンド工具では、加工面の平均表面粗さは、Ra2.23nmと光学鏡面が得られた。工具刃先は、チッピングは全く見られず、逃げ面に幅20μm程度の工具摩耗が確認できた。2本目の(110)面の<110>方位の工具では、1本目の工具と同様にチッピングは見られず、平均表面粗さRa2.58nmの光学鏡面が得られた。しかし、逃げ面には幅45μm程度の工具磨耗が観察された。3本目の(111)面の<110>方位の工具は、平均表面粗さRa3.45nmと少し粗く白濁したように見える状態であった。工具摩耗は、逃げ面に幅5μm程度みられた。4本目の工具では、加工面の平均表面粗さはRa3.84nmで白濁はしていないが粗かった。刃先にはチッピングはなかったが、摩耗量は逃げ面の幅98μmにわたっていた。
以上から、すくい角を負とすることにより全ての結晶方位において切削加工中のチッピングの発生を抑制することができ、更に結晶方位を選択することによって工具摩耗を減らし、切削加工した転写光学面の鏡面性を高く保てることがわかった。本実施例によれば、刃先の切り込み方向に結晶方位を、(100)面の<110>方位と、(110)面の<110>方位、(111)面の<110>方位にすると、耐摩耗性について従来の(100)面の<100>方位にした場合よりも効果があることがわかった。
ダイヤモンドの結晶は8方晶であるから、結晶方位が90°ごとに繰り返すため、ある結晶方位の特徴が顕れるのは、その方向に対してプラスマイナス30°以内の範囲であり、より顕著に結晶方位の特徴を出すのであれば、加工使用範囲はプラスマイナス15°以内であることが好ましい。そのため、加工する転写光学面の法線角が30°を超える深い場合には、本実施例のようにB軸により工具の使用結晶方位が切り込み方向に対してプラスマイナス15°以内になるように維持しながら切削加工するのが、ダイヤモンド刃先の結晶方位の特徴を活かす上で必要であり好ましい。
11、21、31,41 定盤
12、22,32,42 X軸テーブル
13、23,33,43 ダイヤモンド工具
14、24,34,44 Z軸テーブル
15 主軸
16 回転駆動機構
17 工具取り付け部
18 旋回軸
12、22,32,42 X軸テーブル
13、23,33,43 ダイヤモンド工具
14、24,34,44 Z軸テーブル
15 主軸
16 回転駆動機構
17 工具取り付け部
18 旋回軸
Claims (46)
- ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を切削加工により創成する際に、工具の刃先すくい面の角度を切り込み点においてマイナスの値とすることを特徴とする転写光学面の加工方法。
- 前記切り込み点における前記刃先すくい面の角度が−60度以上で−5度以下であることを特徴とする請求項1に記載の転写光学面の加工方法。
- 前記切り込み点における前記刃先すくい面の角度が−45度以上で−15度以下であることを特徴とする請求項2に記載の転写光学面の加工方法。
- ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を、刃先すくい面と逃げ面の成す角度を90度を超える角度に設定した工具を用いて切削加工により創成することを特徴とする転写光学面の加工方法。
- 前記工具の前記刃先すくい面と前記逃げ面が成す角度を90度を超え145度以下の角度に維持して加工を行うことを特徴とする請求項4に記載の転写光学面の加工方法。
- 前記工具の前記刃先すくい面と前記逃げ面が成す角度を100度以上130度以下の角度に維持して加工を行うことを特徴とする請求項5に記載の転写光学面の加工方法。
- ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を切削加工により創成する際に、工具の刃先すくい面と、前記材料に対する前記工具の相対移動方向との成す角度が90度未満となるように維持して加工を行うことを特徴とする転写光学面の加工方法。
- 前記工具の前記刃先すくい面と、前記材料に対する前記工具の相対移動方向との成す角度を30度以上で85度以下の角度に維持して加工を行うことを特徴とする請求項7に記載の転写光学面の加工方法。
- 前記工具の前記刃先すくい面と、前記材料に対する前記工具の相対移動方向との成す角度を45度以上で75度以下の角度に維持して加工を行うことを特徴とする請求項8に記載の転写光学面の加工方法。
- ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を切削加工により創成する際に、工具の刃先すくい面の切り込み点から切削点までの任意の点における工具の刃先すくい面の第1接線は、切り込み方向に対して、前記材料に対する前記工具の相対移動方向に傾いており、前記第1接線と前記切り込み方向とのなす第1角度は、前記切り込み点における前記刃先すくい面の第2接線と前記切り込み方向とのなす第2角度より負側に小さくなっていることを特徴とする転写光学面の加工方法。
- ビッカース硬度でHv1500以上である材料で構成された転写光学面を有する光学素子用成形金型における転写光学面の加工方法において、該転写光学面を切削加工により創成する際に、工具の刃先すくい面上の加工領域における任意の点の法線方向を、切り込み方向と前記工具の相対移動方向とに挟まれる方向に維持しつつ切削加工を行うことを特徴とする転写光学面の加工方法。
- 前記転写光学面を構成する材料が、超硬またはタングステンカーバイト(WC)が質量%で半分以上の組成からなる焼結合金であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の転写光学面の加工方法。
- 前記転写光学面を構成する材料が、CVD−SiCまたは焼結SiCであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の転写光学面の加工方法。
- 前記工具は、刃先が単結晶ダイヤモンドにより構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の転写光学面の加工方法。
- 前記ダイヤモンドの結晶面(100)の結晶方位<110>を、切り込み方向に対してプラスマイナス15度以内の角度範囲に配置したことを特徴とする請求項14に記載の転写光学面の加工方法。
- 前記ダイヤモンドの結晶面(111)の結晶方位<110>を、切り込み方向に対してプラスマイナス15度以内の角度範囲に配置したことを特徴とする請求項14に記載の転写光学面の加工方法。
- 前記ダイヤモンドの結晶面(110)の結晶方位<110>を、切り込み方向に対してプラスマイナス15度以内の角度範囲に配置したことを特徴とする請求項14に記載の転写光学面の加工方法。
- 前記工具は、刃先がCBN(Cubic Boron Nitride)により構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の転写光学面の加工方法。
- 前記刃先すくい面の刃先形状が円弧状に創成されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記刃先すくい面の刃先形状が剣先形状に創成されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記刃先すくい面の刃先形状が平先形状に創成されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記刃先すくい面の刃先形状が半月状に創成されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工は、旋削加工による切削加工であることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記転写光学面の加工は、旋回軸を有する加工機を用いて行うことを特徴とする請求項23に記載する転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工は、フライカット方式の切削加工であることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工は、ミーリング加工による切削加工であることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工は、ルーリング加工による切削加工であることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工は、3軸以上の可動部を有する加工機を用いて行うことを特徴とする請求項1〜27のいずれかに記載の転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工により創成する形状が、球面形状または非球面形状であることを特徴とする請求項1〜28のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工により創成する形状が、自由曲面形状(非軸対称非球面形状ともいう)であることを特徴とする請求項1〜28のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工により創成される転写光学面の最大法線角は、30度以上であることを特徴とする請求項1〜30のいずれかに記載の転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工は、1サイクル当たりの切り込み深さが0.5μm未満で切削を行うことを特徴とする請求項1〜31のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記切削加工は、送りピッチが20μm以下で切削を行うことを特徴とする請求項1〜32のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記転写光学面を切削加工した後、研磨加工を行うことを特徴とする請求項1〜33のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 前記転写光学面を切削加工した後、前記転写光学面に成膜することを特徴とする請求項1〜34のいずれかに記載する転写光学面の加工方法。
- 請求項1〜35のいずれかに記載の加工方法によって加工された転写光学面であって、加工された転写光学面の面粗さがRa15nm以下であることを特徴とする光学素子用成形金型。
- 請求項36に記載の光学素子用成形金型を用いて転写された光学面を有することを特徴とする光学素子。
- 請求項1〜35のいずれかに記載の加工方法によって加工された転写光学面であって、加工された転写光学面に微細形状を有することを特徴とする光学素子用成形金型。
- 請求項38に記載の光学素子用成形金型を用いて転写された光学面を有し、前記光学面には前記微細形状が転写されていることを特徴とする光学素子。
- 請求項37又は39に記載の光学素子において、光学素子用成形金型を用いて転写された後に、前記光学素子の外周面を加工することを特徴とする光学素子。
- 請求項37又は39に記載の光学素子において、前記光学素子を充填成形法で成形することを特徴とする光学素子。
- 前記光学素子の光学面に反射防止膜を成膜したことを特徴とする請求項37,39〜41のいずれかに記載の光学素子。
- 前記光学素子の光学面に反射ミラー膜を成膜したことを特徴とする請求項37,39〜42のいずれかに記載の光学素子。
- 前記光学素子の光学面に波長選択性を有する膜を成膜したことを特徴とする請求項37,39〜43のいずれかに記載の光学素子。
- 前記光学素子は、転写成形後に洗浄されることを特徴とする請求項37,39〜44のいずれかに記載の光学素子。
- 前記光学素子は、波長450nm以下の光束を用いて情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に用いられることを特徴とする請求項37,39〜45のいずれかに記載の光学素子。
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