以下、本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照して、例えば50枚のウェハWを一括して処理するように構成された処理装置1に基づいて説明する。この処理装置1は、オゾンガスを利用してウェハWからレジストを除去するものである。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる処理装置1の断面説明図である。
図1に示すように、処理装置1は、ウェハWの処理が行われる処理容器2と、処理容器2内でウェハWを保持する保持手段としてのウェハガイド3と、処理容器2内に水蒸気4を供給する溶媒蒸気供給手段としての水蒸気供給手段5と、処理容器2内にオゾン(O3)ガス6を供給する処理ガス供給手段としてのオゾンガス供給手段7と、ウェハWにホットN2ガス(乾燥ガス)8を供給する乾燥ガス供給手段としてのN2ガス供給手段9とを備えている。
処理容器2は、例えば50枚のウェハWを十分に収納可能な大きさを有する容器本体10と、容器本体10の上面開口部を開放・閉鎖する容器カバー11に大別される。なお、図示の例のように、容器カバー11が容器本体10の上面開口部を閉鎖した際には、容器カバー11と容器本体10との間の空隙は、リップ式のOリング13で密閉され、処理容器2内に形成されたオゾン処理室15の雰囲気は、外に漏れない構成になっている。
容器カバー11の外周面(上面)に、ランプヒータ機構20が設置されている。ランプヒータ機構20は制御部21に接続され、制御部21からの給電により発熱する。制御部21によって供給する電力量を調整することにより、ランプヒータ機構20の発熱量を制御し、ウェハW及びウェハWの周囲雰囲気を所定の温度に加熱するようになっている。
処理容器2内に、オゾン処理室15の室内雰囲気を取り込んで外部に排気する排気ボックス22、22が設けられている。排気ボックス22、22に、工場の排気系に通じる排気管23が接続されている。
図2に示すように、ウェハガイド3は、ガイド部25と、ガイド部25に水平姿勢で固着された4本の平行な保持部材26a、26b、26c、26dとを備えている。各保持部材26a〜dに、ウェハWの周縁下部を保持する溝27が等間隔で50箇所形成されている。従って、ウェハガイド3は、50枚のウェハWを等間隔で配列させた状態で保持する構成となっている。
水蒸気供給手段5は、容器本体10の底部に設けられている。この水蒸気供給手段5は、容器本体10の底部において内壁に固着された熱板30と、熱板30の下面に取り付けられたヒータ31と、熱板30の上面に純水を滴下する純水供給回路32とを有している。ヒータ31は制御部21に接続されている。制御部21からの給電によりヒータ31の発熱量を制御するようになっている。純水供給回路32の入口側は純水供給源33に接続されている。純水供給回路32の出口側は、熱板30の上方に開口している。また、純水供給回路32に、開閉弁35、流量コントローラ36が介装されている。開閉弁35、流量コントローラ36は、制御部21に接続されている。制御部21からの操作信号により、開閉弁35の開閉を制御して純水を流すか否かを決め、流量コントローラ36の開度を制御して純水供給回路32内の純水の流量を調整する構成となっている。従って、発熱したヒータ31によって熱を帯びた熱板30に対し、純水供給回路32から純水を滴下すれば、純水が気化して水蒸気4が発生するようになり、ウェハWに水蒸気4を供給できるようになっている。なお、気化できなかった純水は、容器本体10の底部において内壁に接続された排液管37を通じて排液される。
オゾンガス供給手段7は、オゾンガス6の発生・供給を行うオゾンガス供給源40と、オゾンガス発生源40からのオゾンガス6を供給するオゾンガス供給回路41と、オゾンガス供給回路41からのオゾンガス6を処理容器2内に吐出するオゾンガスノズル42とを備えている。オゾンガス供給回路41に、開閉弁43、流量コントローラ44、UVランプ45が介装されている。開閉弁43、流量コントローラ44は制御部21に接続されている。制御部21からの操作信号により、開閉弁43の開閉を制御してオゾンガス6を流すか否かを決め、流量コントローラ44を制御してオゾンガス供給回路41内のオゾンガス6の流量を調整する構成となっている。また、UVランプ45は、オゾンガス供給回路41を通過するオゾンガス6に紫外線を照射し、オゾンを活性化させる。
N2ガス供給手段9は、N2ガス、ホットN2ガスを供給するN2ガス供給回路50と、N2ガス供給回路50から供給されたN2ガス、ホットN2ガス8を吐出するN2ガスノズル51、51とを備えている。N2ガス供給回路50の入口側は、N2ガス供給源(図示せず)に接続されている。N2ガス供給回路50に、開閉弁52、N2ガスを加熱するためのヒータ53が介装されている。開閉弁52、ヒータ53は、制御部21に接続されている。従って、制御部21により開閉弁52を開放させると共に、ヒータ53を作動させれば、N2ガス供給源から供給された例えば常温のN2ガスを加熱し、各N2ガスノズル51からホットN2ガス8を吐出させることが可能である。このとき、ウェハハンド3に直接吹きかければ、迅速にウェハハンド3を乾燥させることができる。
処理装置1では、溶媒分子の層として水分子の層(H2O molecule layer)を形成する。この場合、制御部21は、ヒータ31に給電を行い水蒸気4を十分に発生できる程度にヒータ31の発熱量を調整する一方で、ランプヒータ機構20にも給電を行いウェハWを水蒸気4の露点温度よりも高い温度に調整し、ウェハWと水蒸気4の露点温度との温度差を適切に制御してウェハWの表面に高密度の水分子の層を形成するようになっている。また、ウェハWの表面に形成された水分子の層にオゾン分子を混合させて、高密度の水分子とオゾン分子とが混合した混合層を形成し、これによりオゾンを利用した処理を行う。この場合、制御部21は、流量コントローラ36を制御して水蒸気4の発生量を調整して水分子の層の形成の度合いを調整する一方で、流量コントローラ44にも操作信号を送信して水分子の層の形成の度合いに見合うようなオゾンガス6の流量を調整し、水分子の層に対してオゾン分子を過不足なく適切に混合できるような状態にする。
その他、ウェハWに純水を吐出してリンス洗浄を行う純水吐出ノズル55が設けられている。また、前記N2ガスノズル51、51からウェハWにホットN2ガス8を吐出すれば、ウェハWを乾燥させることもできる。
次に、以上のように構成された処理装置1で行われる処理について説明する。処理装置1では、ウェハWに水蒸気4を供給し、またウェハWにオゾンガス6を供給し、水蒸気4とオゾンガス6との反応により生じた水酸基ラジカルによってウェハWを処理する。即ち、まず図3に示すように、ウェハWの表面にレジスト膜60を形成している。図1に示したように、このような50枚のウェハWを処理容器2内に収納する。なお、レジスト膜60の厚さを例えば1200nmとする。
次いで、ヒータ31を例えば120℃に発熱させると共に、熱板30に対して純水供給回路32から純水を滴下し、120℃の水蒸気4を発生させて処理容器2内に供給する。一方、オゾンガス供給回路41から、例えばオゾンを192g/m3(normal)[9vol%(体積百分率)]程度有するオゾンガス6を供給し、オゾンガスノズル42により処理容器2内に吐出する。このように、水蒸気4とオゾンガス6とを、個別の手段によって供給する。
また、ランプヒータ機構20を発熱させてウェハWを所定の温度に温度調整する。この所定の温度を、オゾンを利用した処理が最適に行われる温度の範囲内で、水蒸気4の露点温度よりも高く、かつ水蒸気4の温度よりも低い温度に設定している。ここで、ウェハWを水蒸気4の露点温度よりも高い温度に温度調整しているので、水蒸気4を供給した際には、図4に示すように、水蒸気4が凝縮することがなく、これによって純水の液膜が形成されることもなく、ウェハWの表面に高密度の水分子(H2O molecule)61の層を容易に形成することができる。
水分子61の層にオゾン分子(O3 molecule)62を混合させ、ウェハWの表面に、水分子61とオゾン分子62とが混合した混合層を形成する。この混合層中で水分子61とオゾン分子62同士が反応し、ウェハWの表面に例えば酸素原子ラジカル(O・ Oxygen radical)や水酸基ラジカル(OH・ Hydroxy radical)等の反応物質が多量に発生する。ウェハWの表面で発生した水酸基ラジカルは、消滅することなく、直ちに酸化反応を起こし、レジストをカルボン酸、二酸化炭素や水等に分解し、図4に示すように、レジスト膜60を十分に酸化分解して水溶性の膜60aに変質させる。この水溶性の膜60aは、その後の純水によるリンス洗浄で容易に除去することができる。
このように、かかる処理方法によれば、高密度の水分子61の層をウェハWの表面に形成する一方で、高密度の水分子61の層にオゾン分子62を混合させる。このため、水分子61の層を、レジスト膜60を除去可能な、水分子61とオゾン分子62とが混合した混合層に変質させることができる。この混合層は、ウェハW上で、かつ反応直前で生成され、時間的経過によるオゾン濃度の低下等が起こらず、水酸基ラジカルを有し、処理容器2内で発生した直後の水酸基ラジカルを消滅させることになく殆ど処理に活用することができるので、処理能力が高い。従って、ウェハWに対してオゾンを利用した処理を効果的に施すことができる。例えば従来よりも1.5倍以上の除去速度(Removel Rate)を得ることができる。
しかも、水蒸気4の露点温度よりも高く、かつ水蒸気4の温度よりも低い温度に調整されたウェハWに水蒸気4を供給するので、ウェハWの表面に水蒸気4を凝縮させて純水の液膜を形成することがない。純水の液膜にオゾンガス6を溶解させて生じた水酸基ラジカルよりも、水分子61とオゾン分子62とが混合した混合層中で生じた水酸基ラジカルの方が、ウェハWの表面のレジスト膜60と直ちに反応することができる。
また、高密度の水分子61の層を容易に形成することができる。高密度の水分子61の層にオゾン分子62を適切に混合させて反応を活発に行い、高密度の水分子61とオゾン分子62とが混合した混合層中では、水酸基ラジカルを多量に発生させることができる。さらに純水の液膜では、液温が高くなるにつれて溶解性が低くなり、オゾンガス6が溶けにくくなるのに対し、水分子61の層では、ウェハ温度や、ウェハWの周囲雰囲気の温度が高くなっても、オゾン分子62の混合量はあまり減退しない。このため、純水の液膜にオゾンガス6を溶解させてオゾンを利用した処理を行う場合に比べて、高温度雰囲気下でのオゾンを利用した処理を行うことが可能である。温度が高い方が、水酸基ラジカルの発生や、水酸基ラジカルによる反応が活発に行われる。従って、高い反応速度を得ることができ、オゾンを利用した処理を迅速に行うことができる。
また、オゾンガス供給回路41から新たなオゾンガス6を供給させ、分子の層に対する混合を継続的に行う。このため、反応により消滅した分のオゾンや水酸基ラジカルを補い、分子の層を通してレジスト膜60へ新たなオゾンや水酸基ラジカルを迅速かつ十分に供給することができる。従って、高い反応速度を維持することができる。なお、水分子の層や混合層等は、水滴を形成しない程度の密度であると良い。また、ウェハWを、酸化反応を活発的に行える範囲内で水蒸気4の露点温度よりも高い温度に調整しているので、オゾンを利用した処理の促進を図ることができる。
その後、純水吐出ノズル55から純水を吐出させてウェハWから水溶化したレジストを洗い流し(リンス洗浄)、N2ガスノズル51、51からN2ガス(不活性ガス)を吐出させてウェハWから液滴を取り除いた(乾燥)後、ウェハWを処理装置1から搬出する。なお、リンス洗浄や乾燥を、処理装置1で行わずに、例えばレジスト膜60を除去した後に処理装置1から搬出してリンス専用の処理装置や乾燥装置に搬入して行うようにしても良い。一方、処理装置1に、次の新たな50枚のウェハWを搬入し、続けてオゾンを利用した処理を行う。
ここで、処理中に、ウェハガイド3に水蒸気4が凝縮して水滴が付着する場合や、ウェハガイド3により、オゾンを利用した処理後のウェハWを例えば次のリンス専用の処理装置に移動させる場合に、ウェハハンド3に水滴が付着することがありえる。このようなウェハガイド3に、未だ処理されていないウェハWが保持されると、このウェハWの表面にも水滴が付着してしまう。前述したように、ウェハWの表面で、純水の液膜にオゾンガス6を溶解させるよりも、水分子61とオゾン分子62とが混合した混合層を形成した方が、反応により生じた水酸基ラジカルは、レジスト膜60と直ちに反応することができる。従って、次の新たな50枚のウェハWを搬入するまでの間、N2ガス供給手段9からウェハハンド3にホットN2ガス8を供給し、ウェハハンド3を乾燥させる。その結果、ウェハハンド3から水滴を取り除いてオゾンガス6が水滴に溶解する事態を防止することができ、オゾンを利用した処理を続けて好適に行うことができる。
かくして、本発明の第1の実施の形態にかかる処理方法によれば、処理直前に、ウェハWの表面に高密度の水分子61とオゾン分子62とが混合した混合層を生成し、この混合層中で生じた水酸基ラジカルを消滅させることになく殆ど処理に活用することができるので、ウェハWに対して効果的なオゾンを利用した処理を施すことができる。また、高温度雰囲気下で、水分子61とオゾン分子62の反応を活発に行い、水酸基ラジカルの発生や水酸基ラジカルによる反応を促進させて、オゾンを利用した処理を施すことができる。その結果、レジスト膜60を十分に除去することができる。また、本発明の実施の形態にかかる処理装置1は、以上の処理方法を好適に実施することができる。
なお、本発明の実施の形態におけるオゾンを利用した処理中については、水分子61の層にオゾン分子62を混合させる以外にも種々の反応が行われる。例えば処理容器2内で水蒸気4とオゾンガス6を衝突させて混合させ、混合ガスを生成する。この混合ガス中には、熱分解や衝突により遊離した水酸基ラジカル等が多量に発生する。混合ガスがウェハWと接触した際には、水酸基ラジカルは酸化反応を起こし、先の水分子61とオゾン分子62とが混合した混合層と同様に、レジストをカルボン酸、二酸化炭素や水等に分解する。このように、ウェハWと接触する直前に混合ガス中に水酸基ラジカルを多量に発生させ、水酸基ラジカルを消滅させることなくレジスト膜60と直接的に反応させるので、高い処理能力を得ることができる。
次に、第2の実施の形態にかかる処理装置70について図5に基づいて説明する。前記処理装置1では、排気管23からそのまま排気を行っていたが、図5に示す処理装置70は、排気管23に流量コントローラ71を設けて処理容器2内の圧力を自在に調整する構成となっている。流量コントローラ71は、前記制御部21に接続されている。また処理容器2に圧力センサ72が取り付けられている。この圧力センサ72により検出された処理容器2内の圧力は、制御部21に入力される。そして制御部21は、圧力センサ72により検出された圧力に基づいて流量コントローラ71を制御して排気管23の排気量を絞るようになっている。一方、オゾンガス供給源40は、オゾンガス6の供給圧を196kPaに設定している。このため、処理容器2内は、所定の加圧雰囲気として例えば196kPaに設定、維持が可能な構成となっている。なお、図1及び図5中において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付することにより、重複説明を省略する。
さらに処理装置70は、処理容器2の外部で水蒸気4を発生させ、この水蒸気4を処理容器2内に導入する構成となっている。即ち、水蒸気供給手段75は、水蒸気4の発生、供給を行う水蒸気供給源76と、水蒸気供給源76からの水蒸気4を供給する水蒸気供給回路77と、水蒸気供給回路77からの水蒸気4を処理容器2内に吐出する水蒸気ノズル78とを備えている。水蒸気供給源76には、熱板やヒータ等が備えられている。水蒸気供給回路77には、開閉弁79、流量コントローラ80が介装されている。開閉弁79、流量コントローラ80は制御部21に接続され、制御部21により水蒸気4の供給量が制御可能となっている。このような構成においては、処理容器2内に水蒸気供給手段を設ける必要がないので、その分、処理装置の小型化を図ることができる。
その他、処理容器2の底面開口部は、容器ボトム81により塞がれている。処理容器2と容器ボトム81の間の空隙は、ガスケット82により密閉される。容器ボトム81に排液管83が接続され、排液管83に開閉弁84が介装されている。
次に、以上のように構成された処理装置70で行われる処理方法について説明する。まず処理容器2内に常温(23℃)のウェハWを収納する。次いで、ランプヒータ機構20を例えば115℃に発熱させてウェハWを所定の温度に調整する。一方、オゾンガス供給手段7により、196kPaの供給圧でオゾンガス6を処理容器2内に供給する。このとき、N2ガス供給手段9により、例えば150℃のホットN2ガス8をウェハWに供給する。そうすれば、直ちにウェハWを所定の温度に昇温させることができる。
ウェハWを所定の温度に調整した後、ホットN2ガス8の供給を停止し、水蒸気供給手段75により水蒸気4を処理容器2内に供給する。一方、制御部21により、排気管23の流量コントローラ71を絞って排気量を低くし、処理容器2内を196kPaの加圧雰囲気にする。このような処理容器2内では、オゾンガス6の濃度が高められる。
ここで、ウェハWの表面では、先の図4に示したように、高密度の水分子61の層を形成することになるが、処理容器2内にオゾンガス6を予め供給して充満させているので、直ちに水分子61の層にオゾン分子62を混合させて混合層を生成し、混合層中に水酸基ラジカルを多量に発生させることができる。こうして混合層中の水酸基ラジカルにより、オゾンを利用した処理を迅速に行うことができる。
また、ウェハWが常温状態のままで水蒸気4を供給すれば、水蒸気4の露点温度とウェハ温度の温度差が開いているため、水蒸気4を凝縮させて多量の水滴がウェハWの表面に付着してしまう。そうなると、膜厚の厚い純水の液膜をウェハW上に形成して処理能力の低下を招いてしまう。しかしながら、前述したようにウェハWを所定の温度に昇温させた後、ウェハWに水蒸気4を供給するので、確実に高密度な水分子61の層を形成することができ、処理能力の低下を防ぐことができる。しかもウェハWの周囲雰囲気を196kPaに加圧しているので、水分子61の層に対するオゾン分子62の混合量を増加させて水酸基ラジカルの発生量を増やすことができる。さらに、より高い温度雰囲気の中でオゾンを利用しうた処理を行うことが可能となる。従って、処理能力の更なる向上を図ることができる。
レジスト膜60を水溶性の膜60aに変質させた後、処理容器2内からウェハWを搬出し、その後にリンス専用の処理装置や乾燥装置に順次搬送して、リンス洗浄、乾燥を行う。一方、処理容器2内では、水蒸気4及びオゾンガス6の供給が停止する。処理容器2内の液滴を排液管83により排液し、流量コントローラ71を全開にさせると共に、N2ガス供給手段9によりN2パージを行い、処理容器2内から水蒸気4及びオゾンガス6を追い出して内部雰囲気を乾燥させる。また、前述したようにウェハガイド3も乾燥させ、液滴を取り除く。そして、次の常温のウェハWを処理容器2内に収納する。ここで、水蒸気4が残存した状態で、常温のウェハWを処理容器2内に収納してしまうと、ウェハガイド3に水滴が付着している時と同様に、多量の水滴がウェハWの表面に付着してしまう。しかしながら、処理容器2と水蒸気供給源76とを個別に設けて、処理容器2内の雰囲気を簡単に置換することができるので、新たなウェハWを処理容器2内に搬入しても、このウェハWの表面に水滴が付着することを防止でき、処理容器2内に水蒸気4を導入するまでは、ウェハWの表面を乾燥させた状態に保つことができる。
かかる処理方法によれば、ホットN2ガス8を用いてウェハWの昇温時間を短縮させると共に、水蒸気4を供給する前にオゾンガス6を供給して混合層、混合層中の水酸基ラジカルの生成時間も短縮させるので、オゾンを利用した処理を迅速に行い、スループットを向上させることができる。さらにウェハWの周囲雰囲気を加圧して、水分子61の層に対するオゾン分子62の混合量を向上させると共に、より高い温度雰囲気下での処理を可能にするので、レジスト膜60の除去効率が増し、より一層効果的なオゾンを利用した処理を施すことができる。
かかる処理装置70によれば、水蒸気供給回路77を通じて処理容器2内に水蒸気4を供給するので、処理容器2内の水分量を容易に調整することができ、内部雰囲気を乾燥させることができる。さらに水蒸気供給源76内に設けられたヒータの熱的影響は、処理容器2内のウェハWに及ばない。従って、ウェハWを過加熱することがなく、ウェハ温度が必要以上に上がらない。その結果、例えばウェハ温度が高くなり過ぎて、水分子61がウェハWの表面に吸着し難くなって水分子の層形成が行われず、オゾンを利用した処理が行えなくなる事態を防止することができる。また、処理装置1と同様に、ウェハガイド3を乾燥させて水滴を取り除き、オゾンガス6が水滴に溶解する事態を防止することができる。なお、処理装置70に限らず、前記処理装置1の排液管23にも流量コントローラ71を設け、処理容器2内でウェハWの周囲雰囲気を加圧するようにしても良い。
次に、第3の実施の形態にかかる処理装置90について図6に基づいて説明する。図6に示す処理装置70は、前記処理容器2と、洗浄槽91と、処理容器2と洗浄槽91との間に設けられた通路部92とを備え、オゾンを利用した処理とリンス処理とを行えるように構成されている。
処理容器2内に形成されたオゾン処理室15(第1の処理室)には、前記オゾンガス供給手段7によるオゾンガス6の供給、前記水蒸気供給手段75による水蒸気4の供給、N2ガス供給手段9によるN2ガス、ホットN2ガス8の供給が行われる。処理容器2の底面開口部は、塞がれておらず、前記通路部92に形成された開閉位置121に通じている。
洗浄槽91は、リンス処理室(第2の処理室)93を形成する内槽94と、内槽94の開口部を取り囲んで装着された中槽95と、中槽95の開口部を取り囲んで装着された外槽96とを備えている。
リンス処理室93には、処理液供給手段としての純水供給手段96により処理液としての純水(DIW)の供給が行われる。純水供給手段96は、純水を供給する純水供給回路100と、純水供給回路100から供給された純水をリンス処理室93内に吐出する純水ノズル111、111とを備えている。純水供給回路100の入口側は、純水供給源(図示せず)に接続されている。純水供給回路100に、開閉弁112、流量コントローラ113が介装されている。これら開閉弁112、流量コントローラ113は、制御部21により制御される。
内槽94において、上面開口部は、前記通路部92に形成された開閉位置121に通じている。内槽94の底部中央に、リンス処理室93内の純水を排液するための排液管115が接続されている。排液管115に、開閉弁116が介装されている。中槽95は、内槽94の上端からオーバーフローした純水を受け止め、底部に接続されたオーバーフロー管117に流すように構成されている。オーバーフロー管117に、開閉弁118が介装されている。外槽96内には、常時純水が溜められていると共に、環状のシール板119が設けられている。シール板119の上端は、前記通路部92の底面に密着されている。このため、外槽96は、純水を利用した水シール機能を有し、洗浄槽91内の液雰囲気を外部に漏らさないようになっている。
通路部92には、オゾン処理室15とリンス処理室93との間を開閉するシャッタ120が設けられている。シャッタ120は、駆動機構(図示せず)により、上下方向(図6中のZ方向)及び水平方向(図6中のX方向)に移動自在に構成されている。さらに通路部92は、前述した開閉位置121と、シャッタ120を待機させる待機位置122とに大別される。従って、駆動機構によりシャッタ120を開閉位置121に移動させれば、オゾン処理室15の室内雰囲気とリンス処理室93の室内雰囲気とを遮断でき、一方、シャッタ120を待機位置122に移動させれば、オゾン処理室15の室内雰囲気とリンス処理室93の室内雰囲気とを連通させることができる。
通路部92の一方側(図6中の右側)の底壁部92aに、N2ガスを吐出するN2ノズル123が、他方側の底壁部92aにN2ノズル123がそれぞれ埋め込まれている。これらN2ノズル123がN2ガスを吐出すれば、リンス処理室93の上方でエアカーテンが形成されることになる。前記シャッタ120やエアカーテンにより、オゾン処理室15内の雰囲気がリンス処理室93内に拡散したり、リンス処理室93の液雰囲気がオゾン処理室15内に流入することを防止できる。
通路部92における待機位置122側の底部に、排液部125が設けられている。排液部125に、排液管126が接続されている。排液管126に、開閉弁127が介装されている。また、シャッタ120が閉じた場合、シャッタ120の底面に、洗浄槽91の液雰囲気が凝縮して液滴が付着することがあっても、この液滴は、通路部92に設けられた排液通路(図示せず)を通じて外部に排液される。また、液滴が付着した状態でシャッタ120が開いた場合でも、待機中にシャッタ120の底面から自重落下した液滴は、排液部125、排液管126を通じて排液される。
ウェハガイド128は、昇降機構(図示せず)により昇降自在に構成されている。このため、上下に配置されたオゾン処理室15とリンス処理室93との間でウェハWを移動させることができる。図6中の実線で示したウェハWは、上昇したウェハガイド128によりオゾン処理室15における収納状態を示し、図6中の二点鎖線W’で示したウェハWは、下降したウェハガイド128によりリンス処理室93における収納状態を示している。処理装置90は、ウェハガイド128を昇降移動させることにより、ウェハWを収納する処理室をオゾン処理室15とリンス処理室93に切り換えるように構成されている。処理装置90は、密閉された内部で、オゾンを利用した処理と、リンス処理を一貫して行うように構成されている。
処理容器2及び洗浄槽91を収納するボックス130が設けられている。ボックス130内に、前記排液管115、117、126、前記排液通路が導入され、これらの出口側が開口している。ボックス130の底部には、排液回路131が接続され、この排液回路131は工場の排液系に通じている。排液回路131には、開閉弁132が介装されている。開閉弁132を開放させれば、排液管115、117、126内を流れる純水は、ボックス130、排液回路131を経由して工場の排液系に排液される。ボックス130に、排気が行われる排気回路133が接続されている。このため、ボックス130は、処理容器2及び洗浄槽91の周囲雰囲気の排気をとることが可能となり、例えば容器カバー11を開放させてウェハWを搬入出させる場合、オゾン処理室15の室内雰囲気やリンス処理室93の液雰囲気が外部に拡散することを防止できるようになっている。
次に、以上のように構成された処理装置90で行われる処理方法について、図7に示すフローチャートに従って説明する。容器カバー11を開放させ、例えばレジスト膜60が形成されたウェハW50枚を処理容器2内に収納して装置内に搬入する(S1)。その後、容器カバー11を閉鎖する(S2)。また、シャッタ120を閉めると共に、N2ノズル123からN2ガスを吐出させエアカーテンを形成し、オゾン処理室15の室内雰囲気とリンス処理室93の室内雰囲気とを遮断する。
次いで、オゾン処理室15内でオゾンを利用した処理を行う(S3)。即ち、ランプヒータ機構20等により、ウェハWを所定の温度に加熱する。水蒸気供給手段75によりオゾン処理室15内に水蒸気4を供給し、ウェハWの表面に水分子61の層を形成する。また、オゾンガス供給手段7によりオゾンガス6を供給し、水分子61の層にオゾン分子62を混合させる。前記処理装置1、70と同様に、水酸基ラジカルを多量に発生させ、レジスト膜60を十分に酸化分解して水溶性に変質させる。
水蒸気4及びオゾンガス6の供給が停止し、オゾンを利用した処理を終了する。その後、リンス処理室93内でリンス洗浄(リンス処理)を行う(S4)。即ち、予め純水供給手段96の純水ノズル111、111によりリンス処理室93内に純水を供給する。純水で充填すると、シャッタ120を開く。ここで、ウェハガイド128が下降し、処理装置90内に閉じこめられた状態で、ウェハWをリンス処理室93内に迅速に収納する。このため、外気と接触する機会がないまま、短時間でウェハWを純水中に浸漬させてリンス処理に移行することができる。ここで、前述したようにレジスト膜60を水溶性の膜60aに変質させているので、リンス処理室93内では、ウェハWからレジストを容易に除去することができる。
リンス処理後、ウェハガイド128が上昇し、ウェハWをオゾン処理室15内に移動させる。そして、容器カバー11を開放させ(S5)、ウェハWを処理容器2内から取り出して処理装置90から搬出する(S6)。容器カバー11を開放させた際には、ボックス130により処理容器2及び洗浄槽91の周囲雰囲気の排気をとり、オゾン処理室15及びリンス処理室93の室内雰囲気が周囲に拡散するのを防止する。また、次に処理されるウェハW50枚に備えて、N2ガス供給手段9により常温のN2ガスをオゾン処理室15内に供給してN2パージを行い、オゾン処理室15の室内雰囲気を置換したり、またはホットN2ガスをウェハガイド128に供給して液滴を取り除く。
処理装置90から搬出されたウェハWを、別の処理装置に搬送する。この別の処理装置では、例えば処理容器内で薬液処理、最終リンス処理、乾燥処理を行い、洗浄槽内でリンス処理を行うように構成されている。薬液処理には、例えばアンモニア(NH4OH)の蒸気と水蒸気とを供給し、ウェハWの表面からパーティクル、有機不純物を除去するSC1処理(アンモニア処理)等がある。こうして、別の処理装置では、処理容器内でSC1処理した後、洗浄槽内でリンス処理を行い、最後に処理容器内で最終リンス処理、乾燥処理を行う。もちろん、薬液処理、リンス処理、最終リンス処理と乾燥処理を行う装置をそれぞれ個別に設け、これら装置にウェハWを順次搬送しても良い。
かかる処理装置90によれば、オゾンを利用した処理、リンス処理を一貫して行うことができ、装置の小型化を図ることができる。また、オゾンを利用した処理を開始してからリンス処理を終了するまでは、ウェハWを装置から搬出することはないので、オゾンを利用した処理後に、ウェハWが外気と接触することを防止することができる。このため、ウェハWの表面に自然酸化膜が形成されたり、オゾンを利用した処理により水溶性になった膜60aが、外気接触により、例えば硬化して不溶性に変質することを防止することができる。オゾンを利用した処理によりウェハWの表面に生成された各種反応物が、外気接触により、違った形態に変化することを防止することできる。例えばコンタミネーション等に変化することを防止することができる。このため、リンス処理を好適に行うことができる。さらにウェハWを迅速に昇降移動させて、オゾンを利用した処理後、直ちにリンス処理を実施でき、スループットを向上させることができる。また、処理装置1、70と同様に、ウェハガイド128を乾燥させて水滴を取り除くことができる。
なお、処理装置90では、オゾン処理室15とリンス処理室93を上下に配置した場合について説明したが、オゾン処理室15とリンス処理室93を横一列に並べて配置しても良い。かかる配置によっても、オゾンを利用した処理、リンス処理を一貫して行うことができ、外気接触の防止やスループットの向上を図ることができる。
次に、第4の実施の形態にかかる処理装置140について図8に基づいて説明する。図8に示す処理装置140は、前記第2の実施の形態にかかる処理装置70と同様に、排気管23に流量コントローラ71が設けられると共に、処理容器2に圧力センサ72が取り付けられている。そして、制御部21は、圧力センサ72により検出された圧力に基づいて流量コントローラ71を制御して排気管23の排気量を絞るようになっている。
かかる処理装置140によれば、オゾン処理室15内を加圧雰囲気にすることができるので、前記処理装置70と同様に、水分子61の層に対するオゾン分子62の混合量を増加させると共に、より高い温度雰囲気下での処理を可能にするので、処理能力の更なる向上を図ることができる。また、処理装置1、70、90と同様に、ウェハガイド128を乾燥させて水滴を取り除くことができる。
なお、本発明の実施の形態の一例ついて説明したが、本発明はこの例に限らず種々の態様を取りうるものである。例えば、触媒ガスを処理容器2内に微量に供給し、水酸基ラジカルの発生を促進させて酸化反応をより活発的に行えるようにするのも良い。この場合、触媒ガスには、NOxガス等が挙げられる。
また、オゾンガス6を利用してレジスト膜60を除去した場合について説明したが、オゾンガス6を利用して他の膜を除去しても良い。例えばレジスト膜60の下に塗り、解像度を上げるためのような有機物の膜(BARC:ボトム・アンチ・リフレクティブ・コーティング)も除去可能である。さらに、オゾンガス6以外の他の処理ガスを利用してウェハ上に付着した様々な付着物を除去するようにしても良い。
例えば、塩素(Cl2)ガスを供給し、水分子61の層を、塩酸(HCl)分子の層(水分子と塩素分子とが混合した混合層)に変質させて塩素原子ラジカルを発生させ、ウェハWの表面から金属付着物、パーティクルを除去することが可能である。また、水素(H2)ガスを供給し、水分子61の層中に水素原子ラジカルを発生させ、ウェハWの表面から金属付着物、パーティクルを除去することも可能である。また、フッ素(F2)ガスを供給し、水分子61の層を、例えばフッ酸(HF)分子の層(水分子とフッ素分子とが混合した混合層)に変質させてフッ素原子ラジカルを発生させ、ウェハWの表面から自然酸化膜、パーティクルを除去することが可能である。
さらに、予め処理ガスに励起反応を起こさせて、ラジカルを有するようにしても良い。即ち、酸素原子ラジカルを有するオゾンガス、塩素原子ラジカルを有する塩素ガス、水素原子ラジカルを有する水素ガス、フッ素原子ラジカルを有するフッ素ガスを供給し、より多量のラジカルを発生させて処理の促進を図ることもできる。
本発明は、複数枚の基板を一括して処理するバッチ式の処理だけでなく、一枚ずつ基板を処理する枚葉式の処理の場合にも適用することができる。また、基板が、上記ウェハWに限定されずにLCD基板、CD基板、プリント基板、セラミック基板等であってもよい。