JP2007180434A - リチウムイオンキャパシタ - Google Patents
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Abstract
【課題】エネルギー密度、出力密度が高い高容量であり、かつ実用的な使用条件下で極めて長期間に亘って安定して優れた性能を保持できるリチウムイオンキャパシタを提供する。
【解決手段】正極、負極、セパレータ及び電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えたリチウムイオンキャパシタであって、(a)正極がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(b)負極がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(c)正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、(d)セパレータの表面及び/又は空隙内部が高分子化合物で含浸されている、ことを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【選択図】なし
【解決手段】正極、負極、セパレータ及び電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えたリチウムイオンキャパシタであって、(a)正極がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(b)負極がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(c)正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、(d)セパレータの表面及び/又は空隙内部が高分子化合物で含浸されている、ことを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【選択図】なし
Description
本発明は、正極、負極、及び電解質としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解液を備えた、特性の優れたリチウムイオンキャパシタに関する。
近年、グラファイト等の炭素材料を負極に用い、正極にLiCoO2等のリチウム含有金属酸化物を用いた所謂リチウムイオン二次電池は高容量であり有力な蓄電装置として、主にノート型パソコンや携帯電話の主電源として実用化されている。リチウムイオン二次電池は、電池組立後、充電することにより正極のリチウム含有金属酸化物から負極にリチウムイオンを供給し、更に放電では負極のリチウムイオンを正極に戻すという、いわゆるロッキングチェア型電池であり、高電圧及び高容量、高安全性を有することを特長としている。
一方、環境問題がクローズアップされる中、ガソリン車にかわる電気自動車用又はハイブリッド自動車用の蓄電装置(メイン電源と補助電源)の開発が盛んに行われ、また、自動車用の蓄電装置として、これまでは鉛電池が使用されてきた。しかし、車載用の電気設備や機器の充実により、エネルギー密度、出力密度の点から新しい蓄電装置が求められるようになってきている。
かかる新しい蓄電装置としては、上記のリチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタが注目されている。しかし、リチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高いものの出力特性、安全性やサイクル寿命には問題を残している。一方、電気二重層キャパシタは、ICやLSIのメモリーバックアップ用電源として利用されているが、一充電当たりの放電容量は電池に比べて小さい。しかし、瞬時の充放電特性に優れ、数万サイクル以上の充放電にも耐えるという、リチウムイオン二次電池にはない高い出力特性とメンテナンスフリー性を備えている。
電気二重層キャパシタはこうした利点を有してはいるが、従来の一般的な電気二重層キャパシタのエネルギー密度は3〜4Wh/l程度で、リチウムイオン二次電池に比べて二桁程度小さい。電気自動車用を考えた場合、実用化には6〜10Wh/l、普及させるには20Wh/lのエネルギー密度が必要であるといわれている。
こうした高エネルギー密度、高出力特性を要する用途に対応する蓄電装置として、近年、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの蓄電原理を組み合わせた、ハイブリッドキャパシタとも呼ばれる蓄電装置が注目されている。ハイブリッドキャパシタでは、通常、正極に分極性電極を使用し、負極に非分極性電極を使用するもので、電池の高いエネルギー密度と電気二重層の高い出力特性を兼ね備えた蓄電装置として注目されている。一方、このハイブリッドキャパシタにおいて、リチウムイオンを吸蔵、脱離しうる負極をリチウム金属と接触させて、予め化学的方法又は電気化学的方法でリチウムイオンを吸蔵、担持(以下、ドーピングともいう)させて負極電位を下げることにより、耐電圧を高くしエネルギー密度を大幅に大きくすることを意図したキャパシタが提案されている。(特許文献1〜特許文献4参照)
この種のハイブリッドキャパシタでは、高性能は期待されるものの、負極にリチウムイオンをドーピングさせる場合に、全負極に対してリチウム金属を貼り付けることを必要とすることや、あるいはセル内の一部に局所的にリチウム金属を配置させ負極と接触させることも可能であるが、ドーピングが極めて長時間を要することや負極全体に対する均一性のあるドーピングに問題を有し、特に、電極を捲回した円筒型装置や、複数枚の電極を積層した角型電池のような大型の高容量セルでは実用化は困難とされていた。
しかし、この問題は、セルを構成する負極集電体及び正極集電体の表裏に貫通する孔を設け、この貫通孔を通じてリチウムイオンを移動させ、同時にリチウムイオン供給源であるリチウム金属と負極を短絡させることにより、セルの端部にリチウム金属を配置するだけで、セル中の全負極にリチウムイオンをドーピングできることの発明により、一挙に解決するに至った(特許文献5参照)。なお、リチウムイオンのドーピングは、通常、負極に対して行なわれるが、負極とともに、又は負極の代わりに正極に行う場合も同様であることが特許文献5に記載されている。
かくして、電極を捲回した円筒型装置や、複数枚の電極を積層した角型電池のような大型のセルでも、装置中の全負極に対して短時間にかつ負極全体に均一にリチウムイオンをドーピングでき、耐電圧が向上することによりエネルギー密度が飛躍的に増大し、電気二重層キャパシタが本来有する大きな出力密度と相俟って、高容量のキャパシタが実現する見通しが得られた。
しかし、かかる高容量のキャパシタを実用化するためには、更に、高い耐電圧、高容量、高エネルギー密度及び高出力密度とすることが要求されるともに、実用的な使用に際しては温度、湿度が広い範囲で変り、また、振動なども加わる条件下で極めて長期間に亘って安定した性能を保持することが要求される。
特開平8−107048号公報
特開平9−55342号公報
特開平9−232190号公報
特開平11−297578号公報
国際公開WO98/033227号公報
本発明は、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、かつ負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質であり、負極及び/又は正極をリチウムイオン供給源と電気化学的に接触させ、予め負極にリチウムイオンをドーピングする方式のリチウムイオンキャパシタであって、実用的な使用条件下で極めて長期間に亘って安定して優れた性能を保持できるリチウムイオンキャパシタを提供することを課題とする。
本発明者らは、正極と負極を短絡させた後の正極及び負極電位が2.0V以下となるように、負極及び/又は正極に対してリチウムイオンを予めドーピングさせたリチウムイオンキャパシタの長期間に亘る安定的性能を保持するために諸要因について検討したところ、その大きな原因の一つがキャパシタセルにおける液漏れにあることを見出した。キャパシタセルにおいて液漏れが生じた場合には、キャパシタに要求される特性が維持できないとともに、キャパシタの使用環境を汚染する。そして、かかる液漏れは、キャパシタセル内に配置されるセパレータに特定の高分子化合物を含浸しておくことにより良好に防止できることを見出し、本発明に到達した。
かくして、本発明は、以下の要旨を有することを特徴とするものである。
(1)正極、負極、セパレータ及び電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えたリチウムイオンキャパシタであって、(a)正極がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(b)負極がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(c)正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、(d)セパレータの表面及び/又は空隙内部が高分子化合物で含浸されている、ことを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
(2)高分子化合物が電解液に対して膨潤し、膨潤率が200〜1000%であることを特徴とする上記(1)に記載のリチウムイオンキャパシタ。
(3)高分子化合物がセパレータ重量あたり10〜100重量%含浸されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のリチウムイオンキャパシタ。
(4)セパレータ表面及び/又は空隙内部を被覆及び/又は充填している高分子化合物がポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリルを繰返し単位に含む、少なくとも1種の高分子化合物を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(5)前記正極及び/又は負極が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有する集電体を備えており、負極及び/又は正極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によってリチウムイオンが負極及び/又は正極にドーピングされている上記(1)〜(4)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(6)負極活物質は、正極活物質に比べて、単位重量あたりの静電容量が3倍以上を有し、かつ正極活物質重量が負極活物質量よりも大きい上記(1)〜(5)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(1)正極、負極、セパレータ及び電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えたリチウムイオンキャパシタであって、(a)正極がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(b)負極がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(c)正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、(d)セパレータの表面及び/又は空隙内部が高分子化合物で含浸されている、ことを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
(2)高分子化合物が電解液に対して膨潤し、膨潤率が200〜1000%であることを特徴とする上記(1)に記載のリチウムイオンキャパシタ。
(3)高分子化合物がセパレータ重量あたり10〜100重量%含浸されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のリチウムイオンキャパシタ。
(4)セパレータ表面及び/又は空隙内部を被覆及び/又は充填している高分子化合物がポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリルを繰返し単位に含む、少なくとも1種の高分子化合物を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(5)前記正極及び/又は負極が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有する集電体を備えており、負極及び/又は正極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によってリチウムイオンが負極及び/又は正極にドーピングされている上記(1)〜(4)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
(6)負極活物質は、正極活物質に比べて、単位重量あたりの静電容量が3倍以上を有し、かつ正極活物質重量が負極活物質量よりも大きい上記(1)〜(5)のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
リチウムイオン二次電池は、充電することにより正極のリチウム含有金属酸化物から負極にリチウムイオンを供給し、更に放電では負極のリチウムイオンを正極に戻すという、いわゆるロッキングチェア型電池であり、充放電によって電解液の濃度変化がないため、電解液量は少量でも高い性能を維持できる。一方、リチウムイオンキャパシタは正極の使用範囲が3V以下の場合はリチウムイオン二次電池と同様にロッキングチェア型となり、電解液の濃度に変化はないが、正極電位が3V以上の使用範囲においては、電気二重層キャパシタと同じ機構となり、電解液濃度が低下する。したがって、リチウムイオンキャパシタの組立においては、リチウムイオン二次電池の組立よりも液漏れに関して注意が必要である。
本発明によれば、予め負極及び/又は正極にリチウムイオンをドーピングする、特に高容量のリチウムイオンキャパシタであって、温度、湿度が広い範囲で変り、また、振動なども加わる過酷な実用的な条件下に長期間亘って使用された場合にも、キャパシタセルから液漏れなどを起こさず、極めて長期間に亘って安定して優れた性能を保持できる。本発明において、キャパシタセル内に配置されるセパレータに特定の高分子化合物を含浸しておくことにより何故に液漏れが防止できるかについては、次のように推定される。
すなわち、本発明のキャパシタセルにおけるセパレータの表面及び・又は空隙内部は、特定の性質を有する高分子化合物が存在するために、キャパシタ中の比較的粘度の小さい電解液は、キャパシタセル中で自由に移動することなくセパレータを膨潤させ、セパレータに保持されることになる。このため、キャパシタが使用される温度や湿度などの環境条件が変り、また、キャパシタに振動などが加えられても電解液はキャパシタから漏れることが小さくなるものと思われる。このような液漏れが小さい結果、リチウムイオンキャパシタは長期にわたって安定した性能が保持できることになる。
本発明のリチウムイオンキャパシタは、正極、負極、及び、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機電解液を備え、正極活物質がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質であり、かつ負極活物質がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質である。ここで、「正極」とは、放電の際に電流が流れ出る側の極であり、「負極」とは放電の際に電流が流れ込む側の極をいう。
本発明のリチウムイオンキャパシタでは、負極及び/又は正極に対するリチウムイオンのドーピングにより正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下にされていることが必要である。負極及び/又は正極に対するリチウムイオンのドーピングされていないキャパシタでは、正極及び負極の電位はいずれも3Vであり、正極と負極を短絡させた後の正極の電位は3Vである。なお、本発明で、正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2V以下とは、以下の(A)又は(B)の2つのいずれかの方法で求められる正極の電位が2V以下の場合をいう。即ち、(A)リチウムイオンのドーピングの後、キャパシタセルの正極端子と負極端子を導線で直接結合させた状態で12時間以上放置した後に短絡を解除し、0.5〜1.5時間内に測定した正極電位、(B)充放電試験機にて12時間以上かけて0Vまで定電流放電させた後、0.5〜1.5時間内に測定した正極電位をいう。
また、短絡後の正極電位が2.0V以下というのは、リチウムイオンがドーピングされたすぐ後だけに限られるものではなく、充電状態、放電状態あるいは充放電を繰り返した後に短絡した場合等、いずれかの状態で短絡後の正極電位が2.0V以下となることである。
正極電位が2.0V以下になるということに関し、以下に詳細に説明する。上述のように活性炭や炭素材は通常3V(Li/Li+)前後の電位を有しており、正極、負極ともに活性炭を用いてセルを組んだ場合、いずれの電位も約3Vとなるためセル電圧は約0Vとなり、短絡しても正極電位はかわらず約3Vである。また、正極に活性炭、負極にリチウムイオン二次電池にて使用されている黒鉛や難黒鉛化炭素のような炭素材を用いた、いわゆるハイブリッドキャパシタの場合も同様であり、いずれの電位も約3Vとなるためセル電圧は約0Vとなり、短絡しても正極電位はかわらず約3Vである。正極と負極の重量バランスにもよるが充電すると負極電位が0V近傍まで推移するので、充電電圧を高くすることが可能となるため高電圧、高エネルギー密度を有したキャパシタとなる。一般的に充電電圧の上限は正極電位の上昇による電解液の分解が起こらない電圧に決められるので、正極電位を上限にした場合、負極電位が低下する分、充電電圧を高めることが可能となるのである。しかしながら、短絡時に正極電位が約3Vとなる上述のハイブリッドキャパシタでは、正極の上限電位が例えば4.0Vとした場合、放電時の正極電位は3.0Vまでであり、正極の電位変化は1.0V程度と正極の容量を充分利用できていない。更に、負極にリチウムイオンを挿入(充電)、脱離(放電)した場合、初期の充放電効率が低い場合が多く、放電時に脱離できないリチウムイオンが存在していることが知られている。これは、負極表面にて電解液の分解に消費される場合や、炭素材の構造欠陥部にトラップされる等の説明がなされているが、この場合正極の充放電効率に比べ負極の充放電効率が低くなり、充放電を繰り返した後にセルを短絡させると正極電位は3Vよりも高くなり、更に利用容量は低下する。すなわち、正極は4.0Vから2.0Vまで放電可能であるところ、4.0Vから3.0Vまでしか使えない場合、利用容量として半分しか使っていないこととなり、高電圧にはなるが高容量にはならないのである。
ハイブリッドキャパシタを高電圧、高エネルギー密度だけでなく、高容量そして更にエネルギー密度を高めるためには、正極の利用容量を向上させることが必要である。
短絡後の正極電位が3.0Vよりも低下すればそれだけ利用容量が増え、高容量になるということである。2.0V以下になるためには、セルの充放電により充電される量だけでなく、別途リチウム金属から負極にリチウムイオンをドーピングすることが好ましい。正極と負極以外からリチウムイオンがドーピングされるので、短絡させた時には、正極、負極、リチウム金属の平衡電位になるため、正極電位、負極電位ともに3.0V以下になる。リチウム金属の量が多くなる程に平衡電位は低くなる。負極材、正極材が変われば平衡電位も変わるので、短絡後の正極電位が2.0V以下になるように、負極材、正極材の特性を鑑みて負極に担持させるリチウムイオンの調整をすることが必要である。
本発明において、予め負極及び/又は正極にリチウムイオンをドーピングし、正極と負極を短絡させた後の正極の電位を2V以下にすることにより、正極の利用容量が高くなるため高容量となり、大きいエネルギー密度が得られる。リチウムイオンの供給量が多くなるほどに正極と負極を短絡させた時の正極電位は低くなりエネルギー密度は向上する。更に高いエネルギー密度を得る上では1.5V以下、特には1V以下が更に好ましい。正極及び/又は負極に供給されたリチウムイオンの量が少ないと正極と負極を短絡させた時に正極電位が2Vよりも高くなり、セルのエネルギー密度は小さくなる。
本発明で、リチウムイオンのドーピングは、負極と正極の片方あるいは両方いずれでもよいが、例えば正極に活性炭を用いた場合、リチウムイオンのドーピング量が多くなり正極電位が低くなると、リチウムイオンを不可逆的に消費してしまい、セルの容量が低下する等の不具合が生じる場合がある。このため、負極と正極にドーピングするリチウムイオンは、それぞれの電極活物質を考慮し、これらの不具合を生じないようにするのが好ましい。本発明では、正極のドーピング量と負極のドーピング量を制御することは工程上煩雑となるため、リチウムイオンのドーピングは好ましくは負極に対して行われる。
本発明のリチウムイオンキャパシタでは、特に、負極活物質の単位重量当たりの静電容量が正極活物質の単位重量当たりの静電容量の3倍以上を有し、かつ正極活物質重量を負極活物質重量よりも大きくする場合、高電圧且つ高容量のキャパシタが得られる。また、それと同時に、正極の単位重量当たりの静電容量に対して大きな単位重量当たりの静電容量を持つ負極を用いる場合には、負極の電位変化量を変えずに負極活物質重量を減らすことが可能となるため、正極活物質の充填量が多くなりセルの静電容量及び容量が大きくなる。
なお、本発明において、キャパシタセルの静電容量及び容量は次のように定義される。セルの静電容量とは、セルの単位電圧当たりセルに流れる電気量(放電カーブの傾き)を示し、単位はF(ファラッド)である。セルの単位重量当たりの静電容量とはセルの静電容量に対するセル内に充填している正極活物質重量と負極活物質重量の合計重量の除で示され、単位はF/gである。また、正極又は負極の静電容量とは、正極あるいは負極の単位電圧当たりセルに流れる電気量(放電カーブの傾き)を示し、単位はFである。正極あるいは負極の単位重量当たりの静電容量とは正極あるいは負極の静電容量をセル内に充填している正極あるいは負極活物質重量の除で示され、単位はF/gである。
更に、セル容量とは、セルの放電開始電圧と放電終了電圧の差、即ち電圧変化量とセルの静電容量の積であり単位はC(クーロン)であるが、1Cは1秒間に1Aの電流が流れたときの電荷量であるので本発明においては換算してmAh表示する。正極容量とは放電開始時の正極電位と放電終了時の正極電位の差(正極電位変化量)と正極の静電容量の積であり単位はCまたはmAh、同様に負極容量とは放電開始時の負極電位と放電終了時の負極電位の差(負極電位変化量)と負極の静電容量の積であり単位はCまたはmAhである。これらセル容量と正極容量、負極容量は一致する。
本発明のリチウムイオンキャパシタにおいて、予め負極及び/又は正極にリチウムイオンをドーピングさせる手段は特に限定されない。例えば、リチウムイオンを供給可能な、リチウム金属等のリチウムイオン供給源をリチウム極としてキャパシタセル内に配置できる。リチウムイオン供給源の量(リチウム金属等の重量)は、所定の負極の容量が得られる量だけあればよい。この場合、負極とリチウム極は物理的な接触(短絡)でもよいし、電気化学的にドーピングさせてもよい。リチウムイオン供給源は、導電性多孔体からなるリチウム極集電体上に形成してもよい。リチウム極集電体となる導電性多孔体としては、ステンレスメッシュ等のリチウムイオン供給源と反応しない金属多孔体が使用できる。
大容量の多層構造のキャパシタセルでは正極及び負極にそれぞれ電気を受配電する正極集電体及び負極集電体が備えられるが、かかる正極集電体及び負極集電体が使用され、かつリチウム極が設けられるセルの場合、リチウム極が負極集電体に対向する位置に設けられ、電気化学的に負極にリチウムイオンを供給することが好ましい。この場合、正極集電体及び負極集電体として、例えば、エキスパンドメタルのように表裏面を貫通する孔を備えた材料を用い、リチウム極を負極及び/又は正極に対向させて配置する。この貫通孔の形態、数等は特に限定されず、後述する電解液中のリチウムイオンが電極集電体に遮断されることなく電極の表裏間を移動できるように、設定することができる。
本発明のリチウムイオンキャパシタでは、負極及び/又は正極にドーピングするリチウム極をセル中の局所的に配置した場合もリチウムイオンのドーピングを均一に行うことができる。従って、正極及び負極を積層若しくは捲回した大容量のセルの場合も、最外周又は最外側のセルの一部にリチウム極を配置することにより、スムーズにかつ均一に負極にリチウムイオンをドーピングできる。
電極集電体の材質としては、一般にリチウム系電池に提案されている種々の材質を用いることができ、正極集電体にはアルミニウム、ステンレス等、負極集電体にはステンレス、銅、ニッケル等をそれぞれ用いることができる。また、セル内に配置されたリチウムイオン供給源との電気化学的接触によりドーピングする場合のリチウムイオン供給源とは、リチウム金属あるいはリチウム−アルミニウム合金のように、少なくともリチウム元素を含有し、リチウムイオンを供給することのできる物質をいう。
本発明のリチウムイオンキャパシタにおける正極活物質は、リチウムイオンと、例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンを可逆的に担持できる物質からなる。かかる正極活物質としては、種々のものが使用できるが、活性炭、導電性高分子、又は芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子比が0.5〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系物質(PAS)等を挙げることができる。
一方、本発明のリチウムイオンキャパシタにおける負極を構成する負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に担持できる物質から形成される。本発明で使用される好ましい負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素等の炭素材料、又は上記正極活物質としても使用されるポリアセン系有機半導体(PAS)が好ましい。黒鉛としては人造黒鉛、天然黒鉛いずれでも良く、難黒鉛化性炭素としてはフェノール樹脂炭、フラン樹脂炭などが、易黒鉛化性炭素としては石油コークス、石炭ピッチコークス、ポリ塩化ビニル炭等を挙げることが出来る。
正極及び/又は負極活物質として使用される上記PASはアモルファス構造を有することから、リチウムイオンの挿入・脱離に対して膨潤・収縮といった構造変化がないためサイクル特性に優れ、またリチウムイオンの挿入・脱離に対して等方的な分子構造(高次構造)であるため急速充電、急速放電にも優れるので好適である。PASの前駆体である芳香族系縮合ポリマーとは、芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類との縮合物である。芳香族炭化水素化合物としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等の如き、いわゆるフェノール類を好適に用いることができる。例えば、下記式
また、上記芳香族系縮合ポリマーとしては、上記のフェノール性水酸基を有する芳香族炭化水素化合物の一部にフェノール性水酸基を有さない芳香族炭化水素化合物、例えばキシレン、トルエン、アニリン等で置換した変成芳香族系縮合ポリマー、例えばフェノールとキシレンとホルムアルデヒドとの縮合物を用いることもできる。更に、メラミン、尿素で置換した変成芳香族系ポリマーを用いることもでき、フラン樹脂も好適である。
本発明でPASは好ましくは次のようにして製造される。即ち、上記芳香族系縮合ポリマーを、非酸化性雰囲気下(真空も含む)中で400〜800°Cの適当な温度まで徐々に加熱することにより、水素原子/炭素原子の原子比(以下H/Cと記す)が0.5〜0.05、好ましくは0.35〜0.10の不溶不融性基体となる。この不溶不融性基体を、非酸化性雰囲気下(真空も含む)中で、350〜800°Cの温度まで、好ましくは400〜750°Cの適当な温度まで徐々に加熱した後、水あるいは希塩酸等によって充分に洗浄することにより、上記H/Cを有し、かつ例えば600m2/g以上のBET法による比表面積を有する不溶不融性基体を得ることもできる。
上記の不溶不融性基体は、X線回折(CuKα)によれば、メイン・ピークの位置は2θで表して24°以下に存在し、また該メイン・ピークの他に41〜46°の間にブロードな他のピークが存在する。即ち、上記不溶不融性基体は、芳香族系多環構造が適度に発達したポリアセン系骨格構造を有し、かつアモルファス構造を有し、リチウムイオンを安定にドーピングすることができる。
本発明において、上記の正極活物質及び負極活物質は、D50が好ましくは0.5〜30μmである粒子から形成される。特に、D50は、好ましくは0.5〜15μmであり、特には0.5〜6μmが好適である。また、活物質粒子は、比表面積が好ましくは0.1〜2000m2/gであるのが好適であり、好ましくは0.1〜1000m2/gであり、特には0.1〜600m2/gが好適である。
本発明における正極及び負極は、それぞれ上記の正極活物質及び負極活物質から形成されるが、その手段は既知の手段が使用できる。即ち、活物質粒子、バインダー及び必要に応じて導電性粉末を水系又は有機溶媒中に分散させてスラリーとし、該スラリーを必要に応じて使用される集電体に塗布するか、又は上記スラリーを予めシート状に成形し、これを好ましくは導電性接着剤を使用して集電体に貼り付けてもよい。ここで使用されるバインダーとしては、例えば、SBR、NBR等のゴム系バインダーや、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
本発明でバインダーは、水に乳濁又は懸濁させたエマルジョン又はサスペンジョンとして使用されるのが好ましい。エマルジョン又はサスペンジョン中のバインダーの含有量は、固形分として、好ましくは30〜50重量%、特に好ましくは35〜45重量%が好適である。バインダーの使用量は、活物質粒子の電気伝導度、電極形状等によっても異なるが、活物質粒子100重量部に対して、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜10重量%で含有させることが好適である。
本発明において、上記正極活物質及び負極活物質活物質から正極及び負極を形成する場合、必要に応じて導電材が使用される。導電材としては、アセチレンブラック、グラファイト、金属粉末等が挙げられる。導電材は、活物質の電気伝導度、電極形状等により異なるが、活物質100重量部に対して好ましくは2〜40重量部、特に好ましくは5〜10重量部使用されるのが好適である。
本発明のリチウムイオンキャパシタにおいて、上記の正極と負極を分離するセパレータとしては、微多孔膜または不織布であり、厚みが好ましくは10〜150μm、特に好ましくは20〜100μmである。セパレータの気孔率は、好ましくは、30〜90%、特に好ましくは、50〜80%であるのが好適である。電解液を多量に保持するためには、セパレータは厚みを厚くすれば多量の電解液を保持できるが、電極間距離が大きくなり内部抵抗が増大する上、単位体積あたりの活物質の充填量が減少し容量が低下する。セパレータの厚みを薄くして気孔率を高くすることにより容量を低下させることなく多量の電解液を保持できるので好ましい。この場合、気孔率は、(1−(セパレータ重量/セパレータの素地密度)/セパレータの見かけの体積)の比率を百分率に換算して得られるものとする。例えば、サイズが10mm×10mmで厚みが50μmで重量が0.27gのセルロースのセパレータの場合、セルロースの密度は1.2g/cc、見かけの体積は0.5ccであるので、気孔率は55%になる。
セパレータの材質としては、各種のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、レーヨン、ポリアミドイミド、ポリイミド、或いはこれらの混合物が挙げられる。セパレータの形態は、織布、不織布、編物、多孔性成形シートなどの各種のものが使用できるが、好ましくは不織布、多孔性成形シートが好ましい。
本発明において、セパレータに含浸させる高分子化合物としては、各種のものが使用できるが、該高分子化合物は、好ましくは、後記する電解液に対して溶解するものは好ましくなく、膨潤するものが好ましい。このため、使用する電解液の種類に応じて選択するのが好ましい。膨潤する程度は、膨潤率が好ましくは200〜1000重量%、特には400〜700重量%であるのが好適である。なお、ここにおける膨潤率は、次のようにして求められる。
厚さ100μmに調整した高分子化合物の試験片を乾燥した後の重量をP1、使用する電解液に25℃で10時間含浸した後の重量をP2としたとき、膨潤率(%)は、以下の式で求められる。
膨潤率(%)=P2/P1×100
このようにして、本発明では、セパレータに含浸させる高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレンオキサイド、及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種である
ことが好ましい。
膨潤率(%)=P2/P1×100
このようにして、本発明では、セパレータに含浸させる高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレンオキサイド、及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種である
ことが好ましい。
セパレータの表面及び/又は内部への高分子化合物の含浸は、通常、使用する高分子化合物を媒体中に溶解又は分散させた溶液又は分散液を使用して行われる。すなわち、高分子化合物を媒体中に溶解又は分散させた溶液又は分散液中にセパレータを所定の時間浸漬するか、又は高分子化合物を媒体中に溶解又は分散させた溶液又は分散液をセパレータに噴霧又は塗布することにより行われる。
このようにしてセパレータにおける高分子化合物の含浸量は、本発明では、好ましくは、セパレータの重量基準で好ましくは10〜100重量%、特に好ましくは15〜80%であるのが好適である。含浸量が、10重量%より少ない場合には、電解液の保液性が低くなり液漏れ改善の効果が小さく、逆に多い場合いは、液漏れ改善の効果は高いもののセルの内部抵抗が高くなるので好ましくない。
また、本発明のリチウムイオンキャパシタにおける、電解液としては、各種のものが使用できるが、上記したセパレータに含浸させる高分子化合物を考慮して使用される。電解液を形成する有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等が挙げられる。更に、これら非プロトン性有機溶媒の二種以上を混合した混合液を用いることもできる。
本発明では、なかでも、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合物を含むことが必要である。環状カーボネートとしては、炭素数が好ましくは3〜5のカーボネートが好適である。かかる環状カーボネートとしては、好ましくは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネ−トなどが挙げられる。また、鎖状カーボネートとしては、炭素数が好ましくは3〜5のカーボネートが好適である。かかる鎖状カーボネートとしては、好ましくは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合比率は、重量比で、1/99〜80/20が好ましく、特には10/90〜60/40が好適である。
本発明の非プロトン性有機溶媒としては、なかでも、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合物のなかでも、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物が特に、耐久性、低温特性、出力特性の点で特に好ましい。プロピレンカーボネートが重量比で全体の25%以下であり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの重量比が70/30〜30/70が好ましく、特にはプロピレンカーボネートが重量比で全体の5〜15%であり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの重量比が50/50〜40/60が好適である。
本発明において、上記の非プロトン性有機溶媒に溶解させる電解質は、リチウムイオンを生成しうる電解質が使用できる。このような電解質としては、例えばLiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩が挙げられる。なかでも、LiPF6、LiN(C2F5SO2)2が好ましく、特には、LiPF6が好ましい。上記の電解質及び溶媒は、充分に脱水された状態で混合され、電解質溶液とするのであるが、電解液中の電解質の濃度は、電解液による内部抵抗を小さくするため少なくとも0.1モル/l以上とすることが好ましく、0.5〜1.5モル/lの範囲内とすることが更に好ましい。
本発明のリチウムイオンキャパシタとしては、特に、帯状の正極と負極とをセパレータを介して捲回させる捲回型セル、板状の正極と負極とをセパレータを介して各3層以上積層された積層型セル、あるいは、板状の正極と負極とをセパレータを介した各3層以上積層物を外装フィルム内に封入したフィルム型セル等の大容量のセルに適する。これらのセルの構造は、国際公開WO00/07255号公報、国際公開WO03/003395号公報、特開2004−266091号公報等により既に知られており、本発明のキャパシタセルもかかる既存のセルと同様な構成とすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはもちろんである。
実施例1
(正極1の製造法)
市販の比表面積が1950m2/g活性炭粉末100重量部とポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン100重量部に溶解した溶液とを充分に混合することによりスラリーを得た。該スラリーをカーボン系導電塗料をコーティングした厚さ20μmのアルミニウム箔片面に固形分にして約7mg/cm2程度になるよう塗工し、乾燥、プレスして正極1を得た。
実施例1
(正極1の製造法)
市販の比表面積が1950m2/g活性炭粉末100重量部とポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン100重量部に溶解した溶液とを充分に混合することによりスラリーを得た。該スラリーをカーボン系導電塗料をコーティングした厚さ20μmのアルミニウム箔片面に固形分にして約7mg/cm2程度になるよう塗工し、乾燥、プレスして正極1を得た。
(正極1の単位重量当たりの静電容量測定)
上記正極を1.5cm×2.0cmのサイズに切り出し、評価用正極とした。この正極を使用し、対極として1.5cm×2.0cmのサイズ、厚み200μmの金属リチウムを厚さ50μmのポリエチレン製不織布をセパレータとして介し模擬セルを組んだ。参照極として金属リチウムを用いた。電解液としては、プロピレンカーボネートに、1モル/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いた。
充電電流1mAにて3.6Vまで充電しその後定電圧充電を行い、総充電1時間の後、1mAにて2.5Vまで放電を行った。3.5V〜2.5V間の放電時間より正極1の単位重量当たりの静電容量を求めたところ92F/gであった。
上記正極を1.5cm×2.0cmのサイズに切り出し、評価用正極とした。この正極を使用し、対極として1.5cm×2.0cmのサイズ、厚み200μmの金属リチウムを厚さ50μmのポリエチレン製不織布をセパレータとして介し模擬セルを組んだ。参照極として金属リチウムを用いた。電解液としては、プロピレンカーボネートに、1モル/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を用いた。
充電電流1mAにて3.6Vまで充電しその後定電圧充電を行い、総充電1時間の後、1mAにて2.5Vまで放電を行った。3.5V〜2.5V間の放電時間より正極1の単位重量当たりの静電容量を求めたところ92F/gであった。
(負極1の製造法)
厚さ0.5mmのフェノール樹脂成形板をシリコニット電気炉中に入れ、窒素雰囲気下で500℃まで50℃/時間の速度で、更に10℃/時間の速度で660℃まで昇温し、熱処理し、PASを合成した。かくして得られたPAS板をディスクミルで粉砕することにより、PAS粉体を得た。このPAS粉体のH/C比は0.21であった。
次に、上記PAS粉体100重量部と、ポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン80重量部に溶解した溶液とを充分に混合することによりスラリーを得た。該スラリーを厚さ18μmの銅箔片面に固形分にして約7mg/cm2程度になるよう塗工し、乾燥、プレスしてPAS負極1を得た。
厚さ0.5mmのフェノール樹脂成形板をシリコニット電気炉中に入れ、窒素雰囲気下で500℃まで50℃/時間の速度で、更に10℃/時間の速度で660℃まで昇温し、熱処理し、PASを合成した。かくして得られたPAS板をディスクミルで粉砕することにより、PAS粉体を得た。このPAS粉体のH/C比は0.21であった。
次に、上記PAS粉体100重量部と、ポリフッ化ビニリデン粉末10重量部をN−メチルピロリドン80重量部に溶解した溶液とを充分に混合することによりスラリーを得た。該スラリーを厚さ18μmの銅箔片面に固形分にして約7mg/cm2程度になるよう塗工し、乾燥、プレスしてPAS負極1を得た。
(負極1の単位重量当たりの静電容量測定)
上記負極を1.5cm×2.0cmのサイズに4枚切り出し、評価用負極とした。負極と対極として1.5cm×2.0cmのサイズ、厚み200μmの金属リチウムを厚さ50μmのポリエチレン製不織布をセパレータとして介し模擬セルを組んだ。参照極として金属リチウムを用いた。電解液としては、プロピレンカーボネートに、1モル/lの濃度にLiPF6
を溶解した溶液を用いた。
充電電流1mAにて負極活物質重量に対して、それぞれ、280mAh/g、350mAh/g、400mAh/g、500mAh/g分のリチウムイオンを充電し、その後1mAにて1.5Vまで放電を行った。放電開始後1分後の負極の電位から0.2V電位変化する間の放電時間より負極1の単位重量当たりの静電容量を求めた。結果を表1に示す。
上記負極を1.5cm×2.0cmのサイズに4枚切り出し、評価用負極とした。負極と対極として1.5cm×2.0cmのサイズ、厚み200μmの金属リチウムを厚さ50μmのポリエチレン製不織布をセパレータとして介し模擬セルを組んだ。参照極として金属リチウムを用いた。電解液としては、プロピレンカーボネートに、1モル/lの濃度にLiPF6
を溶解した溶液を用いた。
充電電流1mAにて負極活物質重量に対して、それぞれ、280mAh/g、350mAh/g、400mAh/g、500mAh/g分のリチウムイオンを充電し、その後1mAにて1.5Vまで放電を行った。放電開始後1分後の負極の電位から0.2V電位変化する間の放電時間より負極1の単位重量当たりの静電容量を求めた。結果を表1に示す。
(負極2の製造法)
厚さ32μm(気孔率50%)、LW:SW:W=1.0:0.52:0.143の銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)両面に上記負極1のスラリーをダイコーターにて成形し、プレス後負極全体の厚さ(両面の負極電極層厚さと負極集電体厚さの合計)が148μmの負極2を得た。
厚さ32μm(気孔率50%)、LW:SW:W=1.0:0.52:0.143の銅製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)両面に上記負極1のスラリーをダイコーターにて成形し、プレス後負極全体の厚さ(両面の負極電極層厚さと負極集電体厚さの合計)が148μmの負極2を得た。
(正極2の製造法)
厚さ35μm(気孔率50%)、LW:SW:W=1.0:0.52:0.143のアルミニウム製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)両面に非水系のカーボン系導電塗料(日本アチソン株式会社製:EB−815)をスプレー方式にてコーティングし、乾燥することにより導電層が形成された正極用集電体を得た。全体の厚み(集電体厚みと導電層厚みの合計)は52μmであり貫通孔はほぼ導電塗料により閉塞された。上記正極1のスラリーをロールコーターにて該正極集電体の両面に成形し、プレス後正極全体の厚さ(両面の正極電極層厚さと両面の導電層厚さと正極集電体厚さの合計)が312μmの正極2を得た。
厚さ35μm(気孔率50%)、LW:SW:W=1.0:0.52:0.143のアルミニウム製エキスパンドメタル(日本金属工業株式会社製)両面に非水系のカーボン系導電塗料(日本アチソン株式会社製:EB−815)をスプレー方式にてコーティングし、乾燥することにより導電層が形成された正極用集電体を得た。全体の厚み(集電体厚みと導電層厚みの合計)は52μmであり貫通孔はほぼ導電塗料により閉塞された。上記正極1のスラリーをロールコーターにて該正極集電体の両面に成形し、プレス後正極全体の厚さ(両面の正極電極層厚さと両面の導電層厚さと正極集電体厚さの合計)が312μmの正極2を得た。
(セパレータ1〜5の製造)
ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP、膨潤率:650%)粉末をN−メチルピロリドンに溶解させ、5重量%の溶液を調製した。該PVdF−HFP溶液を、6.5cm×8.0cmのサイズにカットした厚さ35μmのセルロース/レーヨン混合不織布を浸漬し、それぞれ浸漬時間を変えて含浸させ、乾燥させることにより、PVdF−HFP含有のセパレータ1〜5を得た。
なお、PVdF−HFP溶液のセパレータへの含浸量は、セパレータの重量を基準にして、それぞれ、5重量%(セパレータ1)、15重量%(セパレータ2)、55重量%(セパレータ3)、85重量%(セパレータ4)、及び105重量%(セパレータ5)であった。
ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP、膨潤率:650%)粉末をN−メチルピロリドンに溶解させ、5重量%の溶液を調製した。該PVdF−HFP溶液を、6.5cm×8.0cmのサイズにカットした厚さ35μmのセルロース/レーヨン混合不織布を浸漬し、それぞれ浸漬時間を変えて含浸させ、乾燥させることにより、PVdF−HFP含有のセパレータ1〜5を得た。
なお、PVdF−HFP溶液のセパレータへの含浸量は、セパレータの重量を基準にして、それぞれ、5重量%(セパレータ1)、15重量%(セパレータ2)、55重量%(セパレータ3)、85重量%(セパレータ4)、及び105重量%(セパレータ5)であった。
(セパレータ6、7の製造)
ポリエチレンオキサイド(PEO、膨潤率:550%)粉末をアセトニトリルに溶解させ、5重量%の溶液を調製した。該PEO溶液を、6.5cm×8.0cmのサイズにカットした厚さ35μmのセルロース/レーヨン混合不織布を浸漬し、それぞれ浸漬時間を変えて含浸させ、乾燥させることによりPEO含有のセパレータ6、7を得た。
なお、PEOの含浸量は、セパレータの重量を基準にして、それぞれ13重量%(セパレータ6)、及び56重量%(セパレータ7)であった。
ポリエチレンオキサイド(PEO、膨潤率:550%)粉末をアセトニトリルに溶解させ、5重量%の溶液を調製した。該PEO溶液を、6.5cm×8.0cmのサイズにカットした厚さ35μmのセルロース/レーヨン混合不織布を浸漬し、それぞれ浸漬時間を変えて含浸させ、乾燥させることによりPEO含有のセパレータ6、7を得た。
なお、PEOの含浸量は、セパレータの重量を基準にして、それぞれ13重量%(セパレータ6)、及び56重量%(セパレータ7)であった。
(電極積層ユニットの作製)
厚さ148μmの負極2及び厚さ312μmの正極2をそれぞれ6.0×7.5cm2(端子溶接部を除く)にカットし、セパレータとして該セパレータ1〜7、及び高分子化合物を含有していないセルロース/レーヨン混合不織布(セパレータ8)を用いて、正極集電体、負極集電体の端子溶接部がそれぞれ反対側になるよう配置し、正極、負極の対向面が20層になるように、また積層した電極の最外部の電極が負極となるように積層した。最上部と最下部はセパレータを配置させて4辺をテープ止めし、正極集電体の端子溶接部(10枚)、負極集電体の端子溶接部(11枚)をそれぞれ巾50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmのアルミニウム製正極端子及び銅製負極端子に超音波溶接して電極積層ユニット1〜8を得た。尚、正極は10枚、負極は11枚用いた。正極活物質重量は負極活物質重量の1.3倍である。
厚さ148μmの負極2及び厚さ312μmの正極2をそれぞれ6.0×7.5cm2(端子溶接部を除く)にカットし、セパレータとして該セパレータ1〜7、及び高分子化合物を含有していないセルロース/レーヨン混合不織布(セパレータ8)を用いて、正極集電体、負極集電体の端子溶接部がそれぞれ反対側になるよう配置し、正極、負極の対向面が20層になるように、また積層した電極の最外部の電極が負極となるように積層した。最上部と最下部はセパレータを配置させて4辺をテープ止めし、正極集電体の端子溶接部(10枚)、負極集電体の端子溶接部(11枚)をそれぞれ巾50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmのアルミニウム製正極端子及び銅製負極端子に超音波溶接して電極積層ユニット1〜8を得た。尚、正極は10枚、負極は11枚用いた。正極活物質重量は負極活物質重量の1.3倍である。
(セル1〜8の作製)
リチウム極として、リチウム金属箔(82μm、6.0×7.5cm2、200mAh/g相当)を厚さ80μmのステンレス網に圧着したものを用い、該リチウム極を最外部の負極と完全に対向するように電極積層ユニット1〜6の各上部及び下部に各1枚配置し三極積層ユニット1〜8を得た。尚、リチウム極集電体の端子溶接部(2枚)は負極端子溶接部に抵抗溶接した。
リチウム極として、リチウム金属箔(82μm、6.0×7.5cm2、200mAh/g相当)を厚さ80μmのステンレス網に圧着したものを用い、該リチウム極を最外部の負極と完全に対向するように電極積層ユニット1〜6の各上部及び下部に各1枚配置し三極積層ユニット1〜8を得た。尚、リチウム極集電体の端子溶接部(2枚)は負極端子溶接部に抵抗溶接した。
上記三極積層ユニット1〜8をそれぞれ6.5mm深絞りした外装フィルムの内部へ設置し、外装ラミネートフィルムで覆い三辺を融着した。次いで、電解液としてエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びプロピレンカーボネートを重量比で3:4:1とした混合溶媒に、1モル/lの濃度にLiPF6を溶解した溶液を真空含浸させた後、残り一辺を融着させ、フィルム型キャパシタセル1〜8を各11セル組み立てた。熱融着部の幅は3mmとし、接着強度を低く設定した。尚、セル内に配置されたリチウム金属は負極活物質重量当たり400mAh/g相当である。
(セルの初期評価)
セル組み立て後20日間放置後に各1セル分解したところ、リチウム金属はいずれも完全に無くなっていたことから、負極活物質の単位重量当たりに660F/g以上の静電容量を得るためのリチウムイオンが予めドーピングされたと判断した。負極の静電容量は正極の静電容量の7.2倍となる。
セル組み立て後20日間放置後に各1セル分解したところ、リチウム金属はいずれも完全に無くなっていたことから、負極活物質の単位重量当たりに660F/g以上の静電容量を得るためのリチウムイオンが予めドーピングされたと判断した。負極の静電容量は正極の静電容量の7.2倍となる。
(セルの特性評価)
2000mAの定電流でセル電圧が3.6Vになるまで充電し、その後3.6Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を1時間行った。次いで、200mAの定電流でセル電圧が1.9Vになるまで放電した。この3.6V−1.9Vのサイクルを繰り返し、10回目の放電においてセル容量及びエネルギー密度及び1kHzでの交流内部抵抗を評価した。結果を表2に示す。ただし、データは10セルの平均である。また、耐久性試験として60℃の恒温層内にて3.6Vの電圧を連続1000時間印加した後、室温まで放冷後、セルの外観を目視により観察した。
耐久試験後のセル2〜7はいずれもガス発生、液漏れの不具合もなく形状に変化はなかった。しかし、セル1は1セル、セル8は3セル液漏れを生じた。液漏れの発生率として結果を表2に示す。
2000mAの定電流でセル電圧が3.6Vになるまで充電し、その後3.6Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を1時間行った。次いで、200mAの定電流でセル電圧が1.9Vになるまで放電した。この3.6V−1.9Vのサイクルを繰り返し、10回目の放電においてセル容量及びエネルギー密度及び1kHzでの交流内部抵抗を評価した。結果を表2に示す。ただし、データは10セルの平均である。また、耐久性試験として60℃の恒温層内にて3.6Vの電圧を連続1000時間印加した後、室温まで放冷後、セルの外観を目視により観察した。
耐久試験後のセル2〜7はいずれもガス発生、液漏れの不具合もなく形状に変化はなかった。しかし、セル1は1セル、セル8は3セル液漏れを生じた。液漏れの発生率として結果を表2に示す。
上記測定終了後に正極と負極を短絡させ正極の電位を測定したところ、いずれも0.95V程度であり、2.0V以下であった。正極と負極を短絡させた時の正極電位が2.0V以下になるよう負極及び/又は正極に予めリチウムイオンを担持させることにより、高いエネルギー密度を有するキャパシタが得られた。また、封止強度は弱く設定しているにもかかわらず、液漏れ発生を抑制できることがわかった。ただし、高分子化合物の含浸量が多くなる程に内部抵抗が大きくなり、一方、含浸量が少ないと液漏れの抑制効果も小さくなるので、求められる特性に応じて高分子化合物の含有量は最適化が必要であることがわかる。
本発明のリチウムイオンキャパシタは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの駆動用又は補助用蓄電源として極めて有効である。また、電動自転車、電動車椅子などの駆動用蓄電源、ソーラーエネルギーや風力発電などの各種エネルギーの蓄電装置、あるいは家庭用電気器具の蓄電源などとして好適に用いることができる。
Claims (6)
- 正極、負極、セパレータ及び電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えたリチウムイオンキャパシタであって、(a)正極がリチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(b)負極がリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなり、(c)正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下になるように負極及び/又は正極に対してリチウムイオンがドーピングされており、(d)セパレータの表面及び/又は空隙内部が高分子化合物で含浸されている、ことを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
- 高分子化合物が電解液に対して膨潤し、膨潤率が200〜1000%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 高分子化合物がセパレータ重量あたり10〜100重量%含浸されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオンキャパシタ。
- セパレータ表面及び/又は空隙内部を被覆及び/又は充填している高分子化合物がポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレンオキサイド、及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 前記正極及び/又は負極が、それぞれ表裏面を貫通する孔を有する集電体を備えており、負極及び/又は正極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によってリチウムイオンが負極及び/又は正極にドーピングされている請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
- 負極活物質は、正極活物質に比べて、単位重量あたりの静電容量が3倍以上を有し、かつ正極活物質重量が負極活物質重量よりも大きい請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオンキャパシタ。
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