JP2007177317A - 強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法およびこれを用いた金属ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法を低コストで提供し、さらにはCVT用ベルトに好適な金属ベルトを安価に提供すること。
【解決手段】質量%で、C:0.30%超、0.50%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成であり、表面に厚さ50μm以下かつビッカース硬度750以上の硬化層を有し、硬化層以外の鋼組織が旧オーステナイト粒径が10μm以下かつマルテンサイト分率が90%以上であり、ビッカース硬度450以上、750未満であることを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼を用いる。
【選択図】図1
【解決手段】質量%で、C:0.30%超、0.50%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成であり、表面に厚さ50μm以下かつビッカース硬度750以上の硬化層を有し、硬化層以外の鋼組織が旧オーステナイト粒径が10μm以下かつマルテンサイト分率が90%以上であり、ビッカース硬度450以上、750未満であることを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼を用いる。
【選択図】図1
Description
本発明は,主に自動車や産業機械用部品用の機械構造用鋼に関するものであり、特に、現状高価なマルエージング鋼等が使用されている無段変速機(CVT)に用いられる金属ベルト等へ用いることが好適な、強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法およびこれを用いた金属ベルトに関する。
近年、環境問題への関心の高まりにより、自動車分野等では一層の燃費の向上、排気ガス規制が求められてきている。そのため駆動系の小型高出力化を志向する開発方向であり、一例としては、一般に無段変速機と呼ばれる(変速比)連続可変トランスミッション(Continuously Variable Transmission:CVT)などの開発が盛んである。無段変速機(以下「CVT」と記載する。)は歯車を用いず、ベルト等を用いて摩擦に依って変速比を連続的に変化させる動力伝達機構であり、例えばCVTに用いられる金属ベルトには、高い強度、高い延性、高い靭性、耐磨耗性を併せ持つ必要がある。このような用途には、現状マルエージング鋼が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。また準安定型オーステナイト系ステンレス鋼を用いる技術も知られている(例えば、特許文献4参照。)。
特開2000−345302号公報
特開2002−38251号公報
特開2003−231921号公報
特開2004−11683号公報
上記の特許文献に記載されている鋼に関らず、鋼材料の高強度化をはかろうとする際には、合金元素の添加を行なう方法が一般的である。マルエージング鋼は10数質量%のNiに加えて、CoやMo、Cr等を含有するものであり、準安定型オーステナイト系ステンレス鋼はCrやNiを10数質量%含有する。このような多量の合金元素の添加は、鋼のコストを著しく高めるとともに、昨今の原料枯渇の情勢では生産そのものがおびやかされる恐れもある。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法を低コストで提供し、さらにはCVT用ベルトに好適な金属ベルトを安価に提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討をかさねた。その結果、マルエージング鋼やオーステナイトステンレス鋼のように多量のNiやCrを含有しない成分系の場合であっても、C、Mo、Ti、Bを適正範囲で添加した鋼を、まず窒化処理によって表面に高硬度の層を形成させ、しかる後に高周波による極短時間加熱での焼入れをおこない、低温域での焼戻しをおこなって、表面硬化層以外を旧オーステナイトの微細なマルテンサイト組織とすれば、マルエージング鋼を凌駕する優れた引張強度―伸びバランスおよび高い靭性そして高硬度を示すという知見を得て、以下の特徴を有する本発明を完成させた。
(1)、質量%で、C:0.30%超、0.50%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成であり、表面に厚さ50μm以下かつビッカース硬度750以上の硬化層を有し、該硬化層以外の鋼組織が旧オーステナイト粒径が10μm以下かつマルテンサイト分率が90%以上であり、ビッカース硬度450以上、750未満であることを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
(2)、鋼組成が、さらに、質量%で、Al:2.0%以下、Cr:2.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
(3)、鋼組成が、さらに、質量%で、Co:2.0%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
(4)、(1)ないし(3)のいずれかに記載の組成を有する鋼を、圧延して所定形状とした後、浸炭処理または窒化処理して表面に硬化層を形成し、その後昇温速度100℃/秒以上で、800℃〜1100℃まで加熱後、直ちに焼入れし、直ちに400℃以下の温度で焼戻すことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
(5)、硬化層を形成後の加熱を、高周波加熱を用いて行うことを特徴とする(4)に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
(6)、(1)ないし(3)のいずれかに記載の組成を有する鋼を、圧延して厚さ0.5mm以下の鋼板とし、切断後に溶接して無端のリングを形成し、該リングに浸炭処理または窒化処理を行い表面に硬化層を形成し、その後高周波加熱により加熱して焼入れし、直ちに400℃以下の温度で焼戻すことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れたリングの製造方法。
(7)、(6)に記載の方法で製造されたリングを複数枚重ねて一体化したことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた金属ベルト。
(1)、質量%で、C:0.30%超、0.50%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成であり、表面に厚さ50μm以下かつビッカース硬度750以上の硬化層を有し、該硬化層以外の鋼組織が旧オーステナイト粒径が10μm以下かつマルテンサイト分率が90%以上であり、ビッカース硬度450以上、750未満であることを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
(2)、鋼組成が、さらに、質量%で、Al:2.0%以下、Cr:2.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
(3)、鋼組成が、さらに、質量%で、Co:2.0%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
(4)、(1)ないし(3)のいずれかに記載の組成を有する鋼を、圧延して所定形状とした後、浸炭処理または窒化処理して表面に硬化層を形成し、その後昇温速度100℃/秒以上で、800℃〜1100℃まで加熱後、直ちに焼入れし、直ちに400℃以下の温度で焼戻すことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
(5)、硬化層を形成後の加熱を、高周波加熱を用いて行うことを特徴とする(4)に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
(6)、(1)ないし(3)のいずれかに記載の組成を有する鋼を、圧延して厚さ0.5mm以下の鋼板とし、切断後に溶接して無端のリングを形成し、該リングに浸炭処理または窒化処理を行い表面に硬化層を形成し、その後高周波加熱により加熱して焼入れし、直ちに400℃以下の温度で焼戻すことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れたリングの製造方法。
(7)、(6)に記載の方法で製造されたリングを複数枚重ねて一体化したことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた金属ベルト。
本発明によれば、高価な合金元素を多量に添加することなく、高強度、高延性、高靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼が得られる。このため、無断変速機用の金属ベルトを安価に提供できる。
以下に、本発明の詳細を説明する。
まず、本発明において、鋼組成を上記範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の説明において、成分元素の含有量%は全て質量%を意味するものである。
C:0.30%超、0.50%以下とする。
Cは必要な強度、靭性を確保するために必須の元素であり、0.30%以下では所定の強度確保が難しい。いっぽう0.50%を超えると延性、靭性が低下し、また鋼組織中に巨大な炭化物が生成し、疲労特性を著しく低下させるため0.5%を上限とした。
Cは必要な強度、靭性を確保するために必須の元素であり、0.30%以下では所定の強度確保が難しい。いっぽう0.50%を超えると延性、靭性が低下し、また鋼組織中に巨大な炭化物が生成し、疲労特性を著しく低下させるため0.5%を上限とした。
Si:1.0%以下とする。
Siは脱酸剤として鋼の溶製時に作用するために、含有させることができる。但し、1.0%を超えると鋼の延性を著しく低下させるので、上限を1.0%とした。
Siは脱酸剤として鋼の溶製時に作用するために、含有させることができる。但し、1.0%を超えると鋼の延性を著しく低下させるので、上限を1.0%とした。
Mn:1.5%以下とする。
Mnは、鋼の溶製時の脱酸剤としての作用を有しているので、含有させることができる。但し、1.5%を超えると鋼の延性を著しく低下させるので、上限を1.5%とした。
Mnは、鋼の溶製時の脱酸剤としての作用を有しているので、含有させることができる。但し、1.5%を超えると鋼の延性を著しく低下させるので、上限を1.5%とした。
Mo:0.3%以上、0.5%以下とする。
Moは本発明において、特に重要な元素である。Moは延性を大きく損なうことなく強度、靭性を向上させる。その効果を発現するには0.3%以上の添加が必須である。一方で、0.5%を超えて添加しても強度や靭性のそれ以上の向上にならず、コスト高となってしまう。また過剰に添加すると延性も低下する傾向にあるので、上限を0.5%とした。
Moは本発明において、特に重要な元素である。Moは延性を大きく損なうことなく強度、靭性を向上させる。その効果を発現するには0.3%以上の添加が必須である。一方で、0.5%を超えて添加しても強度や靭性のそれ以上の向上にならず、コスト高となってしまう。また過剰に添加すると延性も低下する傾向にあるので、上限を0.5%とした。
Ti:0.1%以下とする。
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNを形成してBの焼入れ性向上効果が消失することを防止する。この効果を得るためには0.005%以上含有することが好ましいが、0.1%を超えて添加してもTiNが大量に形成されて、強度や疲労強度の低下を招くため、上限を0.1%とする。
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNを形成してBの焼入れ性向上効果が消失することを防止する。この効果を得るためには0.005%以上含有することが好ましいが、0.1%を超えて添加してもTiNが大量に形成されて、強度や疲労強度の低下を招くため、上限を0.1%とする。
B:0.0005%以上、0.01%以下とする。
Bは、焼入れ性の向上に有効であり、また粒界強化により鋼全体の強度向上に寄与する有用な元素である。そのためには0.0005%以上の含有が必要である。しかし0.01%を超えて含有してもその効果は飽和するので、上記範囲に限定した。
Bは、焼入れ性の向上に有効であり、また粒界強化により鋼全体の強度向上に寄与する有用な元素である。そのためには0.0005%以上の含有が必要である。しかし0.01%を超えて含有してもその効果は飽和するので、上記範囲に限定した。
以上が、本発明における基本成分であるが、本発明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Al、Cr、Cu、Ni、Vの中から選んだ1種又は2種以上を含有してもよい。
Al:2.0%以下とする。
Alは脱酸に有効な元素である。また焼入れ時のオーステナイト粒成長を抑制することによって、強度、靭性の維持に有効であり、窒化層の硬化にも有益な元素である。しかしながら含有量が2.0%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろコスト上昇を招く不利が生じるので上記の範囲に限定した。
Alは脱酸に有効な元素である。また焼入れ時のオーステナイト粒成長を抑制することによって、強度、靭性の維持に有効であり、窒化層の硬化にも有益な元素である。しかしながら含有量が2.0%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろコスト上昇を招く不利が生じるので上記の範囲に限定した。
Cr:2.5%以下とする。
Crは焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用である。しかし過度に含有すると、炭化物安定効果によって残留炭化物の生成を助長し、強度の低下をまねく。従ってCr含有はできる限り低減することが望ましいが、2.5%までは許容できる。なお、焼入れ性を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Crは焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用である。しかし過度に含有すると、炭化物安定効果によって残留炭化物の生成を助長し、強度の低下をまねく。従ってCr含有はできる限り低減することが望ましいが、2.5%までは許容できる。なお、焼入れ性を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Cu:1.0%以下とする。
Cuは焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶して強度を向上させる。しかし1.0%を超えて含有すると熱延時に割れが発生する。そこで上記の範囲に限定した。なお、焼入れ性や強度を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Cuは焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶して強度を向上させる。しかし1.0%を超えて含有すると熱延時に割れが発生する。そこで上記の範囲に限定した。なお、焼入れ性や強度を向上させる作用を発現させるためには、0.2%以上含有させることが好ましい。
Ni:2.0%以下とする。
Niは焼入れ性を向上させるのに有効であり、また炭化物の生成を抑制するため、膜状炭化物の粒界への生成を抑制し粒界強度を上げることで強度、靭性の向上に寄与する。ただしNiは非常に高価な元素であり、2.0%を超えて添加しても効果が飽和するばかりで、鋼材コストが著しく上昇する。そこで2.0%以下とすることが好ましい。なお、焼入れ性や強度、靭性を向上させる作用を発現させるためには、0.5%以上含有させることが好ましい。
Niは焼入れ性を向上させるのに有効であり、また炭化物の生成を抑制するため、膜状炭化物の粒界への生成を抑制し粒界強度を上げることで強度、靭性の向上に寄与する。ただしNiは非常に高価な元素であり、2.0%を超えて添加しても効果が飽和するばかりで、鋼材コストが著しく上昇する。そこで2.0%以下とすることが好ましい。なお、焼入れ性や強度、靭性を向上させる作用を発現させるためには、0.5%以上含有させることが好ましい。
V:0.5%以下とする。
Vは、鋼中でCと結合し強化元素としての作用が期待される。また焼き戻し軟化抵抗性を向上させる効果もあり、強度向上に寄与する。しかし0.5%を超えて含有してもその効果は飽和するため、上記の範囲に限定した。なお、強度を向上させる作用を発現させるためには、0.1%以上含有させることが好ましい。
Vは、鋼中でCと結合し強化元素としての作用が期待される。また焼き戻し軟化抵抗性を向上させる効果もあり、強度向上に寄与する。しかし0.5%を超えて含有してもその効果は飽和するため、上記の範囲に限定した。なお、強度を向上させる作用を発現させるためには、0.1%以上含有させることが好ましい。
さらに本発明では以下に示すCo、W、Nb成分のうちから選んだ1種または2種以上を含有することができる。
Co:2.0%以下とする。
Coは粒界強化に有効な元素であり、添加によって強度、靭性の向上をもたらす。ただし非常に高価であり、2.0%を超える添加では安価に製造するという本来の発明意義が失われてしまう。そこで2.0%以下の範囲に限定した。
Coは粒界強化に有効な元素であり、添加によって強度、靭性の向上をもたらす。ただし非常に高価であり、2.0%を超える添加では安価に製造するという本来の発明意義が失われてしまう。そこで2.0%以下の範囲に限定した。
W:1.0%以下とする。
Wは安定した炭化物を形成し、強化元素として有効である。一方で、1.0%を超えて含有するとむしろ強度が低下するので上記の範囲に限定した。
Wは安定した炭化物を形成し、強化元素として有効である。一方で、1.0%を超えて含有するとむしろ強度が低下するので上記の範囲に限定した。
Nb:0.1%以下とする。
Nbは焼入れ性向上効果のほかに、析出強化元素として強度や靭性の向上に寄与する。この効果を発現させるためには0.005%以上含有させることが好ましい。しかし0.1%を超えて含有しても、その効果は飽和するので0.1%以下とすることが好ましい。
Nbは焼入れ性向上効果のほかに、析出強化元素として強度や靭性の向上に寄与する。この効果を発現させるためには0.005%以上含有させることが好ましい。しかし0.1%を超えて含有しても、その効果は飽和するので0.1%以下とすることが好ましい。
以上説明した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。主な不可避的不純物としては、S、P、N、Oが挙げられる。これら元素は、S:0.05%以下、P:0.05%以下、N:0.01%以下、O:0.01%以下であれば許容できる。
以上、好適成分組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定した上で、以下に説明するように鋼組織が調整されている必要がある。
表面硬化層:表面に厚さ50μm以下、硬さHv750以上の硬化層を有する。
マルエージング鋼と同等以上の耐磨耗性が必要な環境で使用するために、本発明では、鋼の表面に硬化層を形成し、表面硬さをビッカース硬さで750以上とする。この場合硬化層の厚さが50μm超えであっても硬化層自体の硬さには変化はなく、硬化層形成のための処理時間が長くなりコスト高をまねき、むしろ延性低下の要因ともなる。そこで上記範囲に限定した。耐磨耗性を維持するためには、硬化層の厚さは5μm以上とすることが好ましい。硬化層は、鋼の表面の少なくとも一部に形成されている必要があり、鋼板の場合は、板面である両表面に形成されていることが好ましい。
マルエージング鋼と同等以上の耐磨耗性が必要な環境で使用するために、本発明では、鋼の表面に硬化層を形成し、表面硬さをビッカース硬さで750以上とする。この場合硬化層の厚さが50μm超えであっても硬化層自体の硬さには変化はなく、硬化層形成のための処理時間が長くなりコスト高をまねき、むしろ延性低下の要因ともなる。そこで上記範囲に限定した。耐磨耗性を維持するためには、硬化層の厚さは5μm以上とすることが好ましい。硬化層は、鋼の表面の少なくとも一部に形成されている必要があり、鋼板の場合は、板面である両表面に形成されていることが好ましい。
次に、表面の硬化層以外の鋼組織について説明する。
旧オーステナイト粒径:10μm以下とする。
本発明では旧オーステナイト粒径の調整が重要である。旧オーステナイト粒径を微細化することで粒界に析出する膜状炭化物を抑制し粒界強度を上げることができる。旧オーステナイト粒径の微細化により高強度、高延性、高靭性が発現する。そのためには粒径は10μm以下であることが必要である。
本発明では旧オーステナイト粒径の調整が重要である。旧オーステナイト粒径を微細化することで粒界に析出する膜状炭化物を抑制し粒界強度を上げることができる。旧オーステナイト粒径の微細化により高強度、高延性、高靭性が発現する。そのためには粒径は10μm以下であることが必要である。
マルテンサイト組織の分率:90%以上とする。
マルテンサイトは強度を得るために必須の組織である。本発明の場合には分率で90%以上のマルテンサイト組織とすることで優れた特性を発揮する。そのため上記範囲に限定した。マルテンサイトの分率が90%以下である場合には、強度の上昇に寄与しない残留オーステナイト相等の未変態相や炭化物等の析出物の量が多くなりすぎて、マルエージング鋼と同等以上の高強度化の達成は困難となる。マルテンサイト組織の分率は、例えば、鋼表面を腐食後、一定面積を光学顕微鏡により観察し、面積率から測定することができる。
マルテンサイトは強度を得るために必須の組織である。本発明の場合には分率で90%以上のマルテンサイト組織とすることで優れた特性を発揮する。そのため上記範囲に限定した。マルテンサイトの分率が90%以下である場合には、強度の上昇に寄与しない残留オーステナイト相等の未変態相や炭化物等の析出物の量が多くなりすぎて、マルエージング鋼と同等以上の高強度化の達成は困難となる。マルテンサイト組織の分率は、例えば、鋼表面を腐食後、一定面積を光学顕微鏡により観察し、面積率から測定することができる。
硬さ:ビッカース硬さで450以上、750未満とする。
現状高価であるマルエージング鋼と代替するために、本発明の鋼がマルエージング鋼と同等以上の強度レベルを持つためには、硬さはビッカース硬さで450以上である必要がある。また延性、靭性レベルを維持するためには、硬さ上限を規定する必要がある。そこでビッカース硬さで450以上、750未満の範囲に限定した。硬化層以外の母相がこの硬さ範囲であれば微細粒と重畳して、高強度、高延性、高靭性を発現する。
現状高価であるマルエージング鋼と代替するために、本発明の鋼がマルエージング鋼と同等以上の強度レベルを持つためには、硬さはビッカース硬さで450以上である必要がある。また延性、靭性レベルを維持するためには、硬さ上限を規定する必要がある。そこでビッカース硬さで450以上、750未満の範囲に限定した。硬化層以外の母相がこの硬さ範囲であれば微細粒と重畳して、高強度、高延性、高靭性を発現する。
以上の成分組成および鋼組織を満足することにより、マルエージング鋼と同等の特性を持つ、引張強度2000MPa以上、全伸び10%以上を満足し、かつ高靭性を維持し、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼となる。
次に、本発明の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼の製造方法を説明する。本発明の機械構造用鋼は、上記の成分組成を有する鋼を用い、所定の形状とした素材の表面に硬化層を形成し、焼入れ焼き戻しを行なって製造する。
上述の成分を含む鋼には、転炉による溶製で製造されたものでも、真空溶製により製造されたものでも使用できる。鋼塊または連鋳スラブは加熱されて熱間圧延され、酸洗してスケール除去された後に冷間圧延で所定の厚さに整えられ、所定形状とする。
その後に、まず浸炭処理または窒化処理を行ない、表面に硬化層を形成する。浸炭処理は通常のガス浸炭を用いて行なうことができる。窒化処理の方法はガス窒化や、塩浴窒化で行なうことができる。
表面に硬化層を形成した後に、鋼組織をマルテンサイト組織とするために焼入れ焼き戻しを行う。
焼入れ処理:高周波焼入れを行なうことが好ましい。
表面硬化させた後に極短時間の加熱による焼入れをおこなう点が本発明の製造方法における重要な条件の1つである。これは先に生成した硬化層を消失させないためであり、また、不必要な結晶粒の粗大化を避け微細な結晶粒組織を得るためである。このためには、昇温速度100℃/s以上で、最高温度800℃〜1100℃に加熱し、最高温度に到達後、即座に焼き入れる。このような極短時間の加熱とするためには、高周波加熱を用い、水焼入れとすることが好ましい。
表面硬化させた後に極短時間の加熱による焼入れをおこなう点が本発明の製造方法における重要な条件の1つである。これは先に生成した硬化層を消失させないためであり、また、不必要な結晶粒の粗大化を避け微細な結晶粒組織を得るためである。このためには、昇温速度100℃/s以上で、最高温度800℃〜1100℃に加熱し、最高温度に到達後、即座に焼き入れる。このような極短時間の加熱とするためには、高周波加熱を用い、水焼入れとすることが好ましい。
焼き戻し温度:400℃以下とする。
焼き戻し温度も本発明では重要な条件である。このような低温は、通常では焼き戻しに使用されない温度域である。しかし本発明の場合には、この温度域とすることで、含有しているBが拡散したり不必要な析出をすることなく、粒界に濃化して粒界の強化に適切に寄与する。そして焼き戻し温度が高くないことで、表面硬化層および微細粒効果との重畳により、一定以上の強度レベルおよび靭性、表面硬度を維持する。
焼き戻し温度も本発明では重要な条件である。このような低温は、通常では焼き戻しに使用されない温度域である。しかし本発明の場合には、この温度域とすることで、含有しているBが拡散したり不必要な析出をすることなく、粒界に濃化して粒界の強化に適切に寄与する。そして焼き戻し温度が高くないことで、表面硬化層および微細粒効果との重畳により、一定以上の強度レベルおよび靭性、表面硬度を維持する。
本発明の製造方法においては、硬化層を形成後に焼入れ焼戻しを行なう点も重要な条件である。焼き入れ後に表面硬化処理を行なうと、強度が低下して高強度と耐磨耗性の両立が困難となる。
かくして得られた鋼材は、安価に製造できるにもかかわらず、マルエージング鋼に匹敵する強度延性バランスを有し、高強度、高延性、高靭性、耐磨耗性を必要とする自動車部品等への使用が可能となる。
次に、本発明の機械構造用鋼を用いて製造する金属ベルトについて説明する。
金属ベルトは、以下のようにして製造することができる。成分組成が本発明の範囲の鋼を、0.5mm以下の厚さの鋼板として製造し、帯状に裁断した両端部を溶接してループ形状とし、リング(無端リング)を形成する。溶接には、例えばレーザー溶接やプラズマ溶接を用いることができる。形成した無端リングに浸炭処理または窒化処理を行ない、表面に硬化層を形成した後に、上記のように焼き入れ焼き戻しを行い、高強度、高延性、高靭性、耐磨耗性を有する無端リングを製造する。このような無端リングを複数枚、例えば10枚重ねて金属ベルトとする。
無端リングを製造する際には、ループ形状とした後に、硬化層の形成、焼き入れ焼戻しを行なうことが重要である。0.5mm以下の厚さの鋼板に所定の熱処理を行い本発明の機械構造用鋼を製造した後に、裁断し、溶接して無端リングを製造すると、溶接部の強度、表面硬度が得られないため望ましくない。
上記のようにして製造した無端リングは、表面に厚さ50μm以下でビッカース硬度750以上の硬化層を有し、かつ、硬化層以外の鋼の旧オーステナイト粒径が10μm以下でマルテンサイト分率が90%以上であり、ビッカース硬度450以上、750未満である本発明の機械構造用鋼からなるものである。
金属ベルトはその表面部分に耐磨耗性が必要であるため、複数枚重ねた表層部である、両外側の2枚のみを本発明鋼を用いた無端リングとすれば効果がある。その場合は、表層部以外の無端リングには、例えば上記の無端リングを硬化層の形成を省略して製造したものを用いることが好ましい。
本発明の機械構造用鋼を用いて製造した金属ベルトは、マルエージング鋼を用いて製造された金属ベルトと同等以上の強度、延性、靭性、耐磨耗性を有し、しかも低コストで製造可能であり、CVT用金属ベルト等に好適に用いることができる。
表1に示す化学成分を有する鋼No.2〜19の鋼を真空溶製にて製造した。これらの鋼を1100℃加熱して熱間圧延し厚さ3mmの板とした。その後酸洗して表面スケールを除去した後に、冷間圧延をおこなった。圧延は多数回おこない、厚さ0.8mmの時点で1回焼鈍をおこなって加工歪を除去し、さらに冷間圧延した。最終的な厚さは0.4mm厚さとして素材とし、これに以下の熱処理を行い、記号1−2〜1−19の試験片を製造し、引張試験、靭性の評価、組織評価、表面硬さ測定に供した。
素材より、引張試験片(JIS5号)の形状に放電加工で試験片を切り出した。この試験片にタフトライド処理を570℃で120分間おこない、表面に窒化硬化層を設けた。次に高周波加熱によって300℃/sの昇温速度で920℃に加熱した後、即水焼入れした。その後170℃で20分間の焼き戻しをおこない、引張試験に供した。
表1に示す鋼No.1はマルエージング鋼(Fe―18質量%Ni−8質量%Co−5質量%Mo―0.4質量%Ti)であり、マルエージング鋼においても冷間圧延で0.4mm厚さとして素材とし、上記と同じ形状の試験片を切り出した後、820℃加熱後空冷によって焼入れし、520℃加熱によってエージング処理を行った。その後ガス窒化(550℃で5時間処理)をおこなった。(記号1−1)
靭性の評価のみは上述と異なり、熱間圧延で15mm厚さとした。圧延材のC方向と一致するようにUノッチのシャルピー試験を切り出した。試験片は上記と同じ条件で窒化処理を施された後、高周波焼入れにて300℃/sの昇温速度で920℃に加熱された後、即水焼入れした。焼き戻しは170℃で30分間おこない、その後シャルピー試験に供した。マルエージング鋼については上記と同じ条件で熱処理を行なった。試験温度は40℃、−40℃の2条件でおこない、その吸収エネルギーを比較した。
靭性の評価のみは上述と異なり、熱間圧延で15mm厚さとした。圧延材のC方向と一致するようにUノッチのシャルピー試験を切り出した。試験片は上記と同じ条件で窒化処理を施された後、高周波焼入れにて300℃/sの昇温速度で920℃に加熱された後、即水焼入れした。焼き戻しは170℃で30分間おこない、その後シャルピー試験に供した。マルエージング鋼については上記と同じ条件で熱処理を行なった。試験温度は40℃、−40℃の2条件でおこない、その吸収エネルギーを比較した。
組織評価は以下に示す方法で行なった。まず硬化層深さについては、断面からマイクロビッカース10gで10μmピッチで硬さを測定し、その硬さプロファイルからHv750以上である部分の深さを硬化層深さとして求めた。硬化層の硬さは、Hv750以上である硬さ測定値の平均値とした。硬化層以外の組織部分の硬さは、厚み方向中央部の硬さ測定値を採用した。旧オーステナイト粒径に関しては、腐食によってオーステナイト粒径を現出させた後、1000倍で観察撮影し、得られた画像から切断法にて求めた。マルテンサイト分率に関しては、3%硝酸アルコールで腐食後に400倍で5視野の観察撮影をおこない、得られた画像からマルテンサイトの面積率を求めて分率とした。
マルテンサイト組織の分率、旧オーステナイト粒径、硬化層(窒化層)深さおよび表面硬度、引張強度、全伸び、靭性の測定結果を表1中に併せて示す。表1によれば、成分および窒化層を含む組織が本発明の範囲内にある鋼は、引張強度が2000MPa以上、全伸び10%以上、シャルピー吸収エネルギーが低温においても高温においても40J以上でありマルエージング鋼と同等以上であり、強度延性バランスがマルエージング鋼を上回る良好な結果を示した。
本実施例においてはマルテンサイト分率、旧オーステナイト粒径の影響を調べた。表1の鋼No.4について、マルテンサイト分率、旧オーステナイト粒径の影響を見るために、高周波加熱の温度(焼入れ温度)およびその回数を変化させて、種々の条件で試験片を製造した。その他の実験方法は全て実施例1と同じとした。測定結果を表2に示す。表2によれば、マルテンサイトの分率が90%より低くなると強度が顕著に低下してしまうことがわかる。また旧オーステナイト粒径が10μmより大きくなると強度や延性が低下するが、靭性も顕著に低下することがわかる。
本実施例においては、他の成分(Al、Cr、Cu、Ni、V、Co、W、Nb)の添加の効果を調べた。表3に示すような化学成分を有する鋼(鋼No.21〜34)を真空溶製にて製造した。その他の実験方法は全て実施例1と同じとして、記号3−1〜3−14について、引張試験、靭性の評価、組織評価、表面硬さ測定を行なった。結果を表3中に併せて示す。Co添加はさらに鋼を高強度化させ、Cr、Wが過度に含有されると強度と靭性の低下を招き、またAl、Cu、Ni、V、Nbについては過度に添加してもその効果が飽和することがわかる。
本実施例においては、表1の鋼No.4について、焼入れ焼戻しの条件の影響について調べた。記号4−1の試験片は、窒化処理までは実施例1における記号1−4(高周波加熱焼入れ)と同様におこない、その後の焼入れに関して赤外線誘導加熱(昇温速度20℃/s)でおこなった。最高温度に到達するまでの時間は1時間であった。最高温度に到達後は即取り出して水焼入れ処理をおこなった。その後焼戻し処理は170℃で30分施した。
また焼戻し温度の影響については、記号4−2〜4−4の試験片について、実施例1における記号1−4(焼戻し温度170℃)と同様に焼入れまでおこなった後、焼戻し温度を225、450、550℃に変化させて測定をおこなった。
結果を表4に示す。雰囲気炉加熱では旧オーステナイト粒径が大きくなり必要な特性が発現しない。また窒化層が散逸してしまい、その効果が消滅することがわかる。
焼戻し温度に関しては、400℃以上で強度が顕著に低下する。また550℃以上で焼戻すと、表面硬化層が失われることがわかる。
本実施例においては、実際に無端リングを製造した際の疲労強度について評価した。鋼No.1、4、11について、実施例1と同様にして0.4mm厚さの素材を製造し、幅20mmに裁断して両端部を溶接してリング状につなぎ、その後記号1−1、1−4、1−11、2−5、4−3と同様の熱処理を行ない、無端リングを製造した。疲労強度は、図1に示すようなSUJ2製のプーリー1(ベルト車1aの外径120mm、ベルト車1bの外径200mm)に無端リング2を掛けて、一定の引っ張り荷重(P=3500N)をかけながら回転数2000rpmで回転させた際の破断までの回転数を測定して評価した。実験に供した素材は、マルエージング鋼(記号1−1)、本発明鋼(記号1−4)、比較鋼(記号1−11、2−5、4−3)である。試験は各3回(n=3)行なった。
結果を表5に示す。本発明鋼を用いた無端リング(無端リングNo.5−2)は、破断までの回数がマルエージング鋼(無端リングNo.5−1)と同等であるが、比較鋼を用いた無端リング(無端リングNo.5−3〜5−5)では、破断までの回数が顕著に低下することがわかる。
本実施例においては、表1に示す鋼No.4を用いて行なった。実施例1と同様に引張試験片を製造し、窒化処理を行なった後、焼入れ焼戻しを行なった、実施例1の記号1−4と全く同じ物と、以下に示すように焼入れ後に窒化処理をおこなった記号6−1についての比較を行なった。
すなわち、記号6−1については、鋼No.4を用いて実施例1と同様にして製造した素材より、引張試験片(JIS5号)の形状に放電加工で試験片を切り出した。次に高周波加熱により920℃に加熱した後、即焼入れした。その後170℃で20分間の焼戻しを行なった。さらにこの試験片にタフトライド処理を570℃×120分間行い、表面に窒化硬化層を設けた。その後評価に供した。
試験片の評価方法は実施例1と同じであり、引張試験、靭性の評価、組織評価、表面硬さ測定を行なった。
評価結果を表6に示す。焼入れ焼戻し後に窒化処理をおこなった記号6−1は、表面は良好な硬化層が形成されて十分な硬さを有しているが、硬化層以外の組織の硬さ(内部硬度)が低下して本発明の範囲外であり、全体としての強度が低下して、引張強度は高温焼戻しをおこなったのと同じレベル(実施例4の記号4−4)にまで低下した。
1 プーリー
1a、1b ベルト車
2 無端リング
1a、1b ベルト車
2 無端リング
Claims (7)
- 質量%で、C:0.30%超、0.50%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Mo:0.3%以上、0.5%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0005%以上、0.01%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成であり、表面に厚さ50μm以下かつビッカース硬度750以上の硬化層を有し、該硬化層以外の鋼組織が旧オーステナイト粒径が10μm以下かつマルテンサイト分率が90%以上であり、ビッカース硬度450以上、750未満であることを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
- 鋼組成が、さらに、質量%で、Al:2.0%以下、Cr:2.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、V:0.5%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
- 鋼組成が、さらに、質量%で、Co:2.0%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の組成を有する鋼を、圧延して所定形状とした後、浸炭処理または窒化処理して表面に硬化層を形成し、その後昇温速度100℃/秒以上で、800℃〜1100℃まで加熱後、直ちに焼入れし、直ちに400℃以下の温度で焼戻すことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
- 硬化層を形成後の加熱を、高周波加熱を用いて行うことを特徴とする請求項4に記載の強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の組成を有する鋼を、圧延して厚さ0.5mm以下の鋼板とし、切断後に溶接して無端のリングを形成し、該リングに浸炭処理または窒化処理を行い表面に硬化層を形成し、その後高周波加熱により加熱して焼入れし、直ちに400℃以下の温度で焼戻すことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れたリングの製造方法。
- 請求項6に記載の方法で製造されたリングを複数枚重ねて一体化したことを特徴とする強度、延性、靭性、耐磨耗性に優れた金属ベルト。
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