本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されない。本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解されるからである。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容のみに限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて本発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明のマイクロマシンの検査方法、およびその検査を行うために設ける回路について説明する。本発明のマイクロマシンの検査方法は、検査対象、すなわちマイクロマシンを構成する構造体とアンテナとを接続した回路を設け、電磁波を用いて無線で検査を行うことを特徴とする。本明細書では、検査のために設ける当該回路を検査回路と記載する。
図1(A)に、検査装置101と検査回路102とを示す。検査装置101は、測定者が操作を行ったり測定結果を出力するための入出力インターフェース103、測定項目に対応して無線通信を制御するための制御回路104、および検査回路102と通信を行うための無線回路105を有する。無線回路105は、可変抵抗や可変容量等を有し、出力する電力の大きさや周波数等を変更することができる可変電源、およびアンテナ106を有し、制御回路104からの制御によって、測定項目に対応した周波数と電力の電磁波をアンテナ106から放射する。
検査回路102は、基板107上にアンテナ108、および検査対象となる検査素子、すなわちマイクロマシンを構成する構造体109を有する。そして、検査回路102は、検査装置101から放射される電磁波を受信し、アンテナ108に生じる誘導起電力により構造体109に電力が供給される。
検査装置101のアンテナ106から放射する電磁波の周波数や電力等を変化させると、構造体109の特性に応じて検査回路102内に流れる電流が変化し、検査回路102のアンテナ108からはその電流変化に応じた電磁波が発生する。したがって、本発明に係る検査方法は、検査装置101のアンテナ106が当該電磁波を受信することで構造体109の特性を非接触で検査することができる。
図1(B)に、検査装置の一部(無線回路)および検査回路を電気的等価回路で表した図を示す。検査装置101は、制御回路104、容量値C1の容量110、抵抗値R1の抵抗111およびインダクタンスL1のアンテナ106とが直列に接続された、直列共振回路として表すことができる。当該回路は、制御回路104からの制御により電圧Vを印加すると、電流i1が流れる。ここで、印加する電圧や周波数を変化させると、アンテナ106は、回路内に流れる電流の大きさに比例した強度、電流の時間変化に比例した周波数の電磁波を放出することができる。
一方、検査回路102は、抵抗値R2の抵抗112、インダクタンスL2のアンテナ108およびインピーダンスZ2の構造体109を接続した閉回路で表すことができる。また、検査装置のアンテナ106および検査回路のアンテナ108は相互インダクタンスMを有し、検査装置のアンテナ106から放射された電磁波を受信した検査回路のアンテナ108は、相互インダクタンスMとアンテナ106に流れる電流i1の時間変化の積に比例した誘導起電力u2が生じ、閉回路には電流i2が流れる。
ここで、自己インダクタンスL1、L2、および相互インダクタンスMは、コイルの幾何学的形状や大きさ、媒質等によって決定される固有値である。また、検査装置101の容量110が有する容量値C1、抵抗111が有する抵抗値R1、およびアンテナ106のインダクタンスL1は既知であり、検査装置のアンテナ106に印加される電圧V、および流れる電流i1は測定可能な量である。そして、検査回路102に流れる電流i2は検査回路、とりわけ構造体109の特性を反映し、アンテナ108は電流i2の大きさおよび時間変化に比例した電磁波を発生させる。したがって、検査回路102のアンテナ108のインダクタンスL2、および抵抗112の抵抗値R2がある値を持つように設計及び製作することで、構造体109のインピーダンスZ2を求めることができる。
検査装置のアンテナ106が放射する電磁波と、検査回路のアンテナ108が発生する電磁波との関係を、図3(A)、(B)を用いて説明する。図3(A)は、検査装置から放射する電磁波の周波数と、検査回路のアンテナが発生する電磁波の強度との関係を示す(図は横軸が周波数、縦軸が強度を示す)。例えば、構造体109が容量性のインピーダンスを持つ場合、検査回路は抵抗、インダクタンスおよび容量を接続した共振回路となる。したがって図3(A)に示すように、抵抗値、インダクタンスおよび容量値で決定される特定の周波数fに強度のピークを持つ電磁波を出力する。このように、検査装置101から放射する電磁波の周波数を変化させることによって、その周波数に依存した検査回路の特性113を得ることが可能となる。例えば、アンテナ106のインダクタンスLがL=10μHとなるように作製し、構造体の容量性のインピーダンスが約500pF程度になるように構造体109を作製した場合、共振周波数f0はf0=2.25GHzで得られる。
また、検査装置101のアンテナ106が放射する電磁波の強度と、検査回路102のアンテナ108が発生する電磁波の強度との関係を、図3(B)に示す(図は横軸が検査装置からの電磁波の強度、縦軸が検査回路からの電磁波の強度を示す)。例えば、構造体109が抵抗性のインピーダンスを有する場合、検査回路は、抵抗およびインダクタを接続した共振回路となる。ここで、検査装置101から、ある特定の周波数で強度を変化させた電磁波を放射すると、検査回路に流れる電流の大きさが変化する。したがって検査回路は、図3(B)に示すように、当該電流値に比例した強度の電磁波を出力する。このように、検査装置から放射する電磁波の電力を変化させると、検査回路に発生する電圧および流れる電流が変化することから、検査回路の特性114を得ることができる。
ここで、検査回路102のアンテナ108のインダクタンスL2、および抵抗112の抵抗値R2がある値を持つように設計、製作することで、上記検査回路の特性は、構造体の特性を反映したものとなる。したがって、測定項目に応じた検査回路を作製し、目的に応じた電力を供給することで、構造体を作製する途中に形成される犠牲層の膜厚、構造体の空間部分の高さ、構造層の膜応力、構造層のバネ定数、構造層の共振周波数、構造体の駆動電圧、等の構造体の特性を、非接触で検査することができる。
また、上記のような測定によって得られた測定結果から、様々な演算によって構造体の特性にかかるパラメータを抽出し、そのパラメータが仕様により定められた範囲内であるか否かにより、構造体の特性の評価を行うことができる。
また、上記検査回路を用いた構造体の特性の検査は、測定結果から構造体の特性そのものを求めるのではなく、特性が既知であり基準となる構造体の測定結果と比較することにより行うことも可能である。すなわち、膜厚や駆動電圧等の特性が既知である構造体を有する検査回路を上記の方法で測定する。その後、特性が未知である構造体を有する検査回路を同一の条件で測定し、その結果を前記既知の特性を有する構造体の測定結果と比較することで、未知の構造体の特性の評価を行うことができる。
当該検査方法の例を、図4を用いて説明する。ここでは一例として、構造体109が容量性のインピーダンスを有し、検査対象となる構造体の特性がその容量値に反映される場合について説明する。まず、検査対象となる特性が既知である構造体を有する検査回路に対して検査を行う。構造体のインピーダンスが容量性であり、検査回路は直列の共振回路となるので、検査は検査装置から強度が一定で周波数を変化させた電力を供給し、検査回路からの出力を受信する。結果は図4に示すように、横軸に検査装置が放出する電磁波の周波数をとり、縦軸に検査回路が出力する電磁波の強度をとると、特定の周波数fで強度が最大値を取る周波数特性115の結果を得ることができる。これを基準の周波数特性115の測定結果とする。
また、この周波数特性115の測定結果を基に、検査対象となる特性が未知である構造体を測定した場合の結果が取りうる許容範囲を設定しても良い。例えば、図4の点線で示すように、上記測定で得た共振周波数fから、正および負の方向に所定の範囲を設定し、これを共振周波数の許容範囲とすることができる。他にも、出力強度や共振のQ値等の許容範囲を設定することも可能である。この許容範囲は、検査対象となる構造体の特性を評価するために最適なものを選択し、動作仕様の範囲から設定することが望ましい。
次に、同一条件のもとで、検査対象となる特性が未知の構造体を有する検査回路の測定を行う。例えばその測定結果が、図4の二点鎖線で示す周波数特性116のように、基準の周波数特性115の測定結果と類似した結果を得た場合は、この構造体が前で測定された構造体と同じ特性を有すると評価することができる。また、所定の変数が上記で設定した許容範囲内である場合に、この構造体が前で測定された構造体と同じ特性を有すると評価することも可能である。
また、測定結果が、図4の一点鎖線で示す周波数特性117のように、基準の測定結果と大きく異なり、上記で設定した許容範囲外に強度が最大値を持つような場合には、この構造体は前で測定された構造体と大きく異なる特性を有すると評価できる。また、図4の一点鎖線で示す周波数特性118のように、最大値が許容範囲内に存在しても、その曲線が二つ以上の極大を持つような場合には、特性が異なると判断することができる。
このように、同一条件の検査回路を用いて特性が既知の構造体および特性が未知の構造体を検査し、それらの結果を比較することで、特性が未知の構造体に関する評価を行うことができる。ここで、構造体の良又は不良の評価を行う場合、既知の特性を有して評価の基準となる構造体は、良品と判断される特性を有する構造体を用いる。そして、その良品が取りうる基準の結果と比較して、良又は不良の評価を行うことが望ましい。
このような結果の比較による検査方法は、検査回路が出力する電磁波から構造体の特性を直接求めることが困難である場合等に有効に適用することができる。
以上に示したように、本発明を適用することによって作製中および作製後の構造体の特性を非接触で検査することができる。これにより、プローバの針を接触させる検査のように検査時の位置精度を求められることがなく、実施者も容易に検査を行うことができる。
また、複数の項目や複数の基板にわたって検査を行う場合にも、針の位置決めに要する時間が不要なため、検査時間を短縮し、生産性を向上することができる。さらに針の接触により、空間部分がある三次元の立体構造を有する構造体を破壊してしまう危険性をなくすことができる。
また、非接触で膜厚や動作特性等の検査を行うことができるため、検査後に基板を工程に戻すことができる。これは、検査ごとに基板を分断又は破棄する必要がなくなり、生産性を向上することができる。
また、供給電力の強度や周波数に依存した変化を検出することで、構造体の様々な動的特性若しくは静的特性又はこれら両方の特性を検査することができる。
本発明の検査方法を適用することで、マイクロマシンの作製中、好ましくは犠牲層エッチング前や、基板分断前に構造体の特性の検査を行うことができる。これにより、不良を発見した時にリペアできる確率が高くなり、生産性を向上することができる。
さらに、基準となる構造体の測定結果と比較することで、単純に検査により良又は不良を判断するだけで、個別の値を求める必要がない場合や、検査回路が出力する電磁波から構造体の特性を直接求めることが困難であるとき等に、有効に適用することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では上記実施の形態で説明した検査方法を適用し、非接触で膜厚を測定する方法についての例を説明する。
表面マイクロマシニングは、まず基板上に犠牲層を形成し、その上に構造層を形成する。その後犠牲層を除去することにより、構造層の一部が基板から離れて支持される構造体およびその構造体を有するマイクロマシンを作製する。ここで、構造体の可動部分となる層を本明細書では構造層と記載する。
また、当該構造層が可動するための領域である空間を形成するために、後にエッチングで除去する層を犠牲層と記載する。また、当該エッチングを犠牲層エッチングと呼ぶ。
犠牲層は、空間部分としたい場所に形成し、犠牲層エッチングによって除去されることで構造層を基板から分離するとともに空間部分を作るというための非常に重要な層である。
しかしながら、犠牲層は除去されるために、最終製品の形態である構造体やマイクロマシンは犠牲層を有さないことが多い。
このように、犠牲層の厚さ、および犠牲層を除去して形成される空間の高さ(基板から構造層までの距離)は、構造体の動作特性に影響を与えるため、これらの厚さ制御および測定は非常に重要となる。
本実施の形態では、犠牲層の膜厚と、犠牲層除去後にできた空間部分の高さを、非接触で検査する方法を説明する。
検査は、上記実施の形態で説明した検査回路を用いる。この検査回路が有する構造体の断面図を図5(A)〜(C)に、上面図を図5(D)に示す。なお、図5(D)は、犠牲層をエッチングする前の上面図であり、点線A−A’に示す位置の断面図が、図5(A)に対応する。構造体は、一般的な半導体素子を作製するプロセスを適用して作製することができる。まず図5(A)に示すように、基板201上に第1の導電層202を形成し、その上に犠牲層203を形成し、さらにその上に第2の導電層204を形成することで作製される。ここで、基板201は一般的にはシリコン基板が使用されるが、ガラス基板やプラスチック基板、金属基板等を用いても良い。金属基板等を用いる場合には、絶縁膜を形成する等の表面処理を行うことが望ましい。また、例えば、プラスチック基板上に構造体を形成することにより、軽量且つ柔軟性に富んだ薄型のマイクロマシンを形成することができる。また、シリコン基板、ガラス基板及び金属基板を研磨して薄くすることにより、薄型のマイクロマシンを形成することもできる。
また、第1の導電層202および第2の導電層204は導電性を有する物質で形成し、犠牲層203は比誘電率がεで与えられる絶縁性の物質で形成する。第1の導電層202及び第2の導電層204の膜厚は、例えば100nm以上700nm以下(例えば400nm)である。
また、構造体は図5(B)に示すように、犠牲層203上に第2の導電層204および絶縁性を有する層205を成膜した後に、加工することによって形成することも可能である。その後、図5(C)に示すように、エッチングによって犠牲層203を除去して空間部分206を形成することによって、最終的な構造体を形成することができる。
ここで、第1の導電層202ならびに第2の導電層204、犠牲層203および絶縁性を有する層205に用いられる材料について例を示す。
第1の導電層202及び第2の導電層204は、導電性を有する材料、例えば、アルミニウム、タングステン、タンタル、チタン、金、ルビジウム等の金属およびそれらの窒化物や酸化物、又は上記金属を主成分とする合金を用いてスパッタリング法により形成する。
また、犠牲層エッチングの際にエッチング剤としてフッ酸を用いる場合、犠牲層203をリンガラス(PSG)やシリコン酸化物で形成し、絶縁性を有する層205は多結晶構造を有するシリコンで形成することができる。また、エッチング剤にアンモニア過水を用いる場合、犠牲層203をタングステン(W)、絶縁性を有する層205を酸化シリコンで形成することができる。
なお、犠牲層203の除去には、ウェットエッチング法又はドライエッチング法を適用することができる。犠牲層203を除去することにより、空間部分206が形成される。
本明細書では、犠牲層エッチング前の構造体、および犠牲層エッチング後の構造体の両方を「構造体」と記載しているが、マイクロマシンを構成するための構造体は、犠牲層エッチングを経て空間部分を有する構造体であるため、ここでは、最終的な構造体と記載した。
また、図5(C)の構造体は、図5(B)の構造体に犠牲層エッチングを適用したものを示している。
上記の構造体を作製するプロセスは、最も簡単な例を示している。したがって、例えば基板上に下地となる保護層を形成した上に第1の導電層を形成することができる。基板上に保護層を形成することによって、基板から構造体への汚染を防止し、また、基板上に成膜する他の層の内部応力を緩和することができる。保護層としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸素を含む窒化シリコン(窒化酸化シリコンともいう)、窒素を含む酸化シリコン(酸化窒化シリコンともいう)などを用いることができる。なお、保護層は、上記に上げた材料を用いて積層構造としてもよい。保護層として、例えば膜厚50nm以上200nm以下(好ましくは100nm以上150nm以下)の窒素を含む酸化シリコンをプラズマCVD法により形成することができる。
また、第1の導電層202上に保護層となるものを形成した上に犠牲層203を形成することも可能である。さらには第2の導電層204の上下に保護層となるものを形成することが可能であり、導電層や絶縁層等の各層は単層のみならず積層で形成することも可能である。第1の導電層202上、第2の導電層204下に保護層を形成することによって、犠牲層エッチング時の導電層表面の劣化を防止することができる。また、第2の導電層と保護層との積層によって構造層を形成することにより、構造層の内部応力を緩和し、また、構造層の硬さを任意に制御することができる。
構造体は動作の必要上、基板201に固定されていて可動することのない固定電極(第1の導電層)、犠牲層、構造層として可動する可動電極(第2の導電層)を順に積層することによって構成されることが多く、本発明ではこの構造を利用して犠牲層の膜厚の測定を行う。ここで、「固定電極」、「可動電極」とは、その電極が機械的に可動するか、基板等に固定されているかを表現するためであり、その電極に印加される電位が固定であるといった意味は含まない。
また、図5(D)に示す例のように、第1の導電層202、犠牲層203および第2の導電層204の各層が重なって形成され、第1の導電層202と第2の導電層204との重なる部分207面積Sは設計時に既に分かっているものとする。
上記のように形成した構造体は、第1の導電層と第2の導電層が向かい合い、間に絶縁体を有する平行平板型の容量とみなすことができる。したがって、アンテナと構造体とを閉回路に接続した検査回路は、インダクタと容量とを、抵抗を介して接続した共振回路となる。ここで、抵抗はアンテナと構造体とを接続する配線によって生じる寄生抵抗である。
アンテナは、設計時に予想される構造体の容量値とある周波数で共振するインダクタンスLを有するように作製する。また、寄生抵抗の抵抗値Rは配線材料固有の抵抗率および配線の断面積と長さによって求めることができる。
このように作製した検査回路に対して、検査装置から電磁波を放射すると、アンテナの両端には誘導起電圧Vが生じる。ここで当該電磁波の周波数を変化させると、アンテナ、抵抗および容量(構造体)で構成される検査回路が共振する周波数f0で最も大きな吸収が起こり、検査回路内に流れる電流iが最大となる。
図6は、上記で説明した検査回路内に流れる電流iの周波数特性を示す。検査回路はインダクタ、容量、抵抗の共振回路であるため、電流iはある周波数を中心にピークを持つ曲線で示される。犠牲層エッチング前の電流の周波数特性208は、図6に示すように周波数f0を中心に電流値がピークを持つ。
検査回路のアンテナは、検査回路内に流れる電流iの時間変化に比例した電磁波を発生することから、この電磁波を検査装置で受信することで検査回路内に流れる電流の周波数特性を得ることができる。
ここで、検査回路の共振周波数f
0は式(1)で表すことができる。また、構造体の容量Cは式(2)で表すことができる。
このように、検査回路の共振周波数f0はインダクタンスL、抵抗Rおよび構造体の容量Cによって決定する。インダクタンスL、抵抗R、二つの導電層の重なり面積S、犠牲層の比誘電率εは設計時および作製時に既知である。したがって、検査回路の共振周波数f0から犠牲層の膜厚を求めることができる。この方法は、図5(A)、(B)に示す両方の構造体に対して適用することができる。
次に、犠牲層エッチングによって犠牲層を除去した後にも、同様にして共振周波数を測定することができる。このときの共振周波数をf1とすると、式(1)、式(2)から周波数f1を測定することにより空間の高さ、すなわち二つの導電層間の距離を求めることができる。
図6に、犠牲層エッチング後の、検査回路の電流iの周波数特性209を示す。犠牲層エッチング後の電流の周波数特性209は、図に示すように周波数f1を中心に電流値がピークを持つ。犠牲層エッチング後は空間部分の比誘電率は1に近似することができるため、犠牲層エッチング前後の二つの導電層間の距離が等しい場合には、検査回路の共振周波数は式(3)で表すことができる。
しかしながら、犠牲層の膜厚が犠牲層エッチング前にはdであったものが、犠牲層エッチング後には二つの導電層間の距離がd±Δdに変化した場合、共振周波数は式(4)で表される(このときの共振周波数をf2とする)。
したがって図6に示すように、検査回路に流れる電流の周波数特性210は、周波数がf1からマイナス側もしくはプラス側にずれたf2でピークを持つようになる。
上記のように本発明を適用することによって、犠牲層エッチング前後で同一の検査回路を用いて犠牲層の膜厚の検査、および空間部分の高さの検査を行うことができる。そしてそれらの検査結果を比較することによって、構造体の特性を、プロセスごとに評価することができる。また、犠牲層エッチング前後で同一の構造体の検査を行い、例えばその結果を比較して犠牲層の厚さと空間の高さが異なった場合には、構造層の歪みを検出することができるため、構造層の内部応力やバネ定数等の特性を評価することが可能になる。
ここで、犠牲層が導電性を有する材料で形成されている場合は、犠牲層エッチング前の構造体を容量と見なすことができないため、上記の方法は使えない。しかしながら、この構造体を抵抗素子と見なすと、検査回路はインダクタと抵抗とを接続した共振回路となるので、上記とは異なる方法を用いて非接触で膜厚測定を行うことができる。ここでは、構造体の抵抗値が犠牲層の膜厚を反映するので、構造体の電流電圧特性を得ることで膜厚の検査を行うことができる。
上記の場合と同様、構造体を形成する二つの導電層の重なり面積S、犠牲層の抵抗率ρは設計時および作製時に既知である。この検査回路に対して検査装置は、周波数が一定で出力強度を変化させた電磁波を放射する。そしてその出力強度の変化に対応した検査回路の応答により構造体の抵抗値を得て、犠牲層の膜厚を求めることができる。ここで、検査精度を高めるために、検査装置が放出する電磁波の周波数は検査回路の共振周波数であることが望ましい。
また、上記検査回路を用いた構造体の特性評価は、上記実施の形態で説明したように、基準となる構造体を用いた測定結果と比較することにより行うことも可能である。例えば、既知の膜厚を有する構造体をある条件で測定する。その後、検査したい構造体を同一の条件で測定し、その結果を前記既知の構造体の測定結果と比較することで評価を行うことができる。
表面マイクロマシンは、基板上に薄膜を形成、加工することで作製されるが、薄膜は異なる材料上に成膜することで内部応力が発生する。そして犠牲層エッチングを行うことで、構造体を形成する薄膜は隣り合う膜(犠牲層)が除去されて内部応力が開放されるため、基板と接していない部分が凹や凸に変形する。このように構造体を形成する膜が変形すると、空間の高さが変化するため、構造体の特性が大きく変化する。したがって、その空間の高さを測定することで構造体の特性を概算することができ、また、構造体の良又は不良を判断することができる。
本発明のように非接触で構造体の測定を行うことで、構造体を破壊することなく容易に構造体の評価を行うことができる。さらには、電磁波の強度や周波数特性によって構造体の特性検査することで、たとえば金属膜の下の膜の厚さのように、顕微鏡で見えないものでも検査することができる。このような不透明な膜の下にある膜厚を測定する場合は、一般的には基板を分断して断面を観察することにより膜厚を測定するが、本発明を適用することにより容易に測定を行うことができ、検査後に基板を工程に戻すことができる。これは破棄する必要がなく、生産性を向上することができる。
上記のように本発明を適用することによって、犠牲層エッチング前後で同一の検査回路を用いて犠牲層の膜厚の検査、および空間部分の高さの検査を行うことができるため、構造体の特性を、プロセスごとに評価することができる。これは、犠牲層エッチング前や、ダイシング前にプロセスの検査をすることで、不良を発見した時にリペアできる確率が高くなり、生産性を向上することができる。また、犠牲層エッチング前後で同一の構造体の検査を行い、その結果を比較することによって、構造層を形成する層の特性(応力等)を評価することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した検査方法に関して、異なる検査回路の構成、およびその回路を用いた検査方法の例を説明する。本発明の検査方法は、図7(A)〜(C)に示す検査回路にも適用することができる。
図7(A)、(B)に示す検査回路は、アンテナ301、構造体302および測定用パッド303によって構成されている。また検査回路が有する配線抵抗を、抵抗304によって示す。図7(C)は、構造体302と測定用パッド303によって構成される。この検査回路は、アンテナと構造体とが閉回路になるように接続され、構造体を構成する導電層と同じノードにパッドが接続されている。このパッドの接続する場所、およびその数は測定対象によって決定することができる。
この検査回路を用いる場合、プローバの針をパッドに接触させて電力を供給し、アンテナから発生する電磁波を受信することで構造体の特性を検査することができる。逆に、検査装置からアンテナ301を介して検査回路に無線で電力を供給し、プローバの針をパットに接触させて構造体に流れる電流や印加される電圧を測定することも可能である。
ここでは、後者の方法を適用して犠牲層の膜厚を測定する方法の例を示す。図7(A)〜(C)の検査回路は、図5(B)で示した構造体を有し、構造体の第1の導電層と同じノードおよび第2の導電層と同じノードに接続された二つのパッドを有するものとする。この検査回路に対して検査装置から電磁波を放射すると、アンテナ301に誘導起電圧が生じる。ここで当該電磁波の周波数を変化させると、検査回路の共振周波数で最も大きな吸収が起こり、生じる誘導起電圧は最大となる。ここで、パットにプローバの針を接触させ、構造体に印加される電圧の周波数特性を測定することによって、検査回路の共振周波数を得ることができる。上記実施の形態2で説明したように、この共振周波数から犠牲層の膜厚を評価することができる。
さらに、上記測定を犠牲層エッチング前後に行うことによって、犠牲層の膜厚および構造体が有する空間の高さ(二つの導電層間の距離)を比較し、構造層を形成する層の特性(応力等)を評価することができる。ここで、構造体が有する空間は、上記実施の形態で説明したように、第1の導電層と第2の導電層との間の犠牲層を除去することによって形成される。
また、検査回路に交流の電圧および基準となる電圧(例えば接地電圧や、一定の電圧等)を印加して検査を行う場合には、図7(B)に示す検査回路を適用することができる。図7(B)の検査回路は、アンテナ、構造体、および構造体の一部に接続される一つのパッドを有する。例えば、構造体の第1の電極にパッドを介してある一定の電圧を供給し、アンテナを介して電力を供給することができる。このような操作を行うことによって構造体の機械的共振周波数が分かるため、犠牲層エッチングによって犠牲層が完全に除去されたか否か、構造層の膜応力、またはバネ定数といった特性を求めることもできる。これは上記のような特性が、構造体の機械的共振周波数に依存するからである。
また、犠牲層の膜厚の検査や、犠牲層が除去されたか否かの検査は、図7(C)に示す検査回路を用いて接触式の検査で行うことも可能である。図7(C)の検査回路は、構造体、構造体の第1の導電層と同じノードに接続されるパッド、および構造体の第2の導電層と同じノードに接続されるパッドによって構成される。そして、上記のような検査回路に対してパッドから交流の電力を供給し、周波数依存性や強度の依存性を測定することで検査することができる。
以上のように、図5(A)〜(D)に示す構造体に上記検査方法を適用することにより、基板を分断してSEM(Scanning Electron Microscope)観察を行わずに、基板を破壊することなく工程確認の検査を行うことができる。また、この検査を行った後の基板は工程に戻すことができるので、生産性を向上することができる。
また、図5(A)〜(D)に示した上記検査回路を用いた構造体の特性評価は、上記実施の形態で説明したように、基準となる構造体を用いた測定結果と比較することにより行うことも可能である。例えば、電圧の周波数依存性から膜厚を求めることが困難である場合、既知の膜厚を有する構造体を上記の方法で測定する。その後検査したい構造を同一の条件で測定し、その結果を前記既知の構造体の測定結果と比較することで評価を行うことができる。
このように、電磁波の強度や周波数特性によって構造体の特性を検査することで、例えば金属膜の下に設けられた膜の厚さのように、顕微鏡で容易に見えないものでも検査することができる。また、犠牲層エッチング前や、ダイシング前にプロセスの検査をすることで、不良を発見した時にリペアできる確率が高くなり、生産性を向上することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、電源回路を有する検査回路を用いて行うマイクロマシンの検査方法について説明する。電源回路は交流電圧から定電圧を生成する機能を有し、構造体に定電圧の電力を供給することができるため、検査回路が電源回路を有することによって様々な構造体の特性を測定することができる。
図8(A)〜(C)に検査回路の取り得る構成の例を示す。図8(A)の検査回路は、アンテナ401、容量402、構造体403、電源回路404およびスイッチング素子405を有する。ここでスイッチング素子とは、例えばトランジスタのような入力端子、出力端子、制御電極を有する三端子素子であり、入力端子と出力端子を接続するか否か(ON又はOFF)を制御電極によって制御することができる素子のことである。なお、スイッチング素子として薄膜トランジスタを用いることができる。薄膜トランジスタは、トップゲート型、ボトムゲート型のいずれを用いてもよい。
構造体403はその形状により様々な構成を取ることができるが、ここでは一例として、二つの入力端子420、421、および一つの出力端子422を有するとする。また、電源回路404は一つの入力端子409、および二つの出力端子410、411を有する。
検査回路は、アンテナ401、容量402およびスイッチング素子405が閉回路になるように接続され、容量402とスイッチング素子405は共に電源回路404の入力端子409に接続され、スイッチング素子405の制御電極(スイッチング素子がトランジスタの場合はゲート電極)に構造体403の出力端子422が接続されている。
この検査回路において、アンテナ401および容量402は、検査装置から放射される電磁波を特定の共振周波数で吸収し、大きな誘導起電力を発生する。その誘導起電力は電源回路404の入力端子409に供給され、電源回路は当該電力を整流して基準となる一定の電圧、およびその基準となる電圧より高い一定の電圧を生成する。ここで、基準となる電圧とは検査回路内での基準の電圧であり、一般的には接地電圧、グランド等とよばれるが、本明細書中では基準電圧と記載する。また、電源回路はその基準電圧より高い一定の電圧を生成し、本明細書中ではその電圧を電源電圧と記載する。すなわち、電源回路は電源電圧および基準電圧を生成し、電源電圧を出力端子410から、基準電圧を出力端子411から出力し、それらの電圧を構造体403を含む検査回路全体へ供給する。
構造体403は、電源回路404から供給された電力によって動作し、動作特性に応じた出力(電圧変化)をスイッチング素子405に出力する。構造体403の出力によってスイッチング素子405がON、OFFすることで、アンテナ401および容量402に付随するインピーダンスが変化し、アンテナは構造体の動作特性を反映した電磁波を出力する。このアンテナから出力される電磁波を検査装置によって受信することで構造体403の特性を評価することができる。
また、図8(B)に示すように、検査回路はアンテナ401、容量402、電源回路404および構造体403を有することもできる。すなわち、検査回路はスイッチング素子を有さず、電源回路の入力端子409は容量402を介してアンテナ401と接続されている。そして上記同様、電源回路404は電源電圧および基準電圧を生成し、電源電圧を出力端子410から、基準電圧を出力端子411から出力して構造体403に供給する。また、電源回路404の出力端子411は、容量402が接続されていない方のアンテナの一端に接続される。
図8(A)で示した検査回路は、スイッチング素子のON、OFFによって構造体の動作特性に応じた電磁波を出力する構成であるので、構造体からの出力がデジタルである場合に適用できる。例えば構造体がスイッチの機能を有し、そのON、OFF特性を検査する場合に用いることができる。一方、図8(B)で示した検査回路は、アンテナ401が構造体403の出力端子と直接接続されている。図8(B)に示す検査回路は、構造体の出力端子の電圧の変化に応じた電磁波を出力することができる。したがって、この検査回路は構造体からの出力がアナログである場合、例えば構造体が可変容量であり、その容量変化を検査する場合に適用することができる。
さらに検査回路は図8(C)に示すように、アンテナ401、容量402、スイッチング素子405、電源回路404、制御回路406および構造体403を有することができる。
アンテナ401、容量402、スイッチング素子405は閉回路になるように接続され、電源回路404および制御回路406は容量402を介してアンテナ401の一端に接続される。電源回路は、上記同様交流電圧を整流し、整流された電力は制御回路および構造体に供給されている。また電源回路で生成された接地電位はアンテナのもう一方の端に接続されている。
制御回路406はアンテナ401が受信した電磁波から、検査装置から送信される制御信号を取り出して構造体403を制御する機能を有する。制御回路406によって制御された構造体は、その動作特性をスイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子は構造体の出力に応じてON、OFFするため、アンテナおよび容量に付随するインピーダンスが変化する。したがって、アンテナは、構造体の出力を反映した電磁波を出力する。
図8(C)の検査回路において、スイッチング素子を有さず、構造体の端子がアンテナの一端に接続されていても良い。
次に、検査回路を構成する電源回路404について、図9(A)、(B)を用いて説明する。電源回路404は図9(A)に示すように、ダイオード407および容量408を有し、アンテナと接続される入力端子409から入力された交流電圧を一定の電圧に整流する。整流された電源電圧は、出力端子410から検査回路内の各部へ出力される。また、電源回路404は電源電圧と同時に基準電圧を生成し、出力端子411より出力し、アンテナおよび構造層に供給する。
ここで示した電源回路404は、二つのダイオード407を、一つは順方向に接続することによって電圧を整流し、もう一つを逆方向に接続することによって逆流を防止するように回路を接続しているが、二つ以上のダイオードを用いて整流および逆流の防止を行うことにより電源回路を構成することも可能である。また、電源回路404をダイオード407および容量408によって構成しているが、インダクタ等の受動素子を用いて構成することも可能である。
また、図9(B)に示すように電源回路404は、整流回路412とレギュレータ413とで構成することもできる。整流回路412は、上記電源回路404と同様、アンテナと接続される入力端子409から供給される交流電圧を整流し、レギュレータは、整流回路412によって生成した電圧をある一定の電圧に保持する。したがって、電源回路404は、レギュレータ413によって一定の値に保持された電圧、および基準電圧を出力端子410、411より検査回路内の各部へ出力する。
検査装置から放射された電磁波の電力が大きい場合、整流回路が高い電圧を発生して構造体に供給し、構造体を破壊してしまう場合がある。このような時に、電源回路にレギュレータを設けることで、所定の電源電圧を構造体に供給することができる。
逆に、構造体に高い電圧を供給したい場合には、電源回路は昇圧回路を有することも可能である。昇圧回路は、ダイオードおよび容量を用いて構成することができる。電源回路が昇圧回路を有することによって、電源回路では生成できないような高い電圧や、負の電圧を生成し、構造体へ供給することができる。
このように、検査回路に上記のような電源回路を設けることで、構造体に電源電圧を供給することができるため、無線によって構造体の静的特性を測定することも可能になる。また、検査回路が電源回路を有することで、犠牲層の膜厚、空間の高さ、構造層の膜応力、構造層のバネ定数、構造層の共振周波数、構造体の駆動電圧、等の構造体の特性を測定することができる。
次に、図10(A)に示す検査回路を用いて、構造体の駆動電圧を測定する方法について説明する。検査回路は図に示すように、アンテナ401、容量402、構造体403、電源回路404、およびスイッチング素子405を有し、電源回路404は整流回路412と昇圧回路414とを有する。
検査回路の構造体は、図10(B)に示すように、基板上に第1の導電層415、出力端子416、構造層417を有する。構造層417は第1の導電層415と向かい合う第2の導電層418を有し、構造層417の一部は基板に支持され、他の部分は、空間を介して基板と向かい合っている。
このような構造体403の第1の導電層415と第2の導電層418との間に電圧を印加すると、構造層417が可動して基板へ引き寄せられる。さらに印加電圧を大きくすると、構造層417は基板へ引き寄せられて第1の導電層415と第2の導電層418が接する。このときの電圧をプルダウン電圧という。ここでは、構造体の駆動電圧の一例として、プルダウン電圧の検査方法について説明する。
電源回路404は、入力端子が容量402を介してアンテナの一端と接続され、整流回路412によってアンテナに生じた交流の誘導起電圧から電源電圧を生成し、昇圧回路414によって高い電圧を生成し、構造体の第2の導電層に供給する。また、電源回路が生成する基準電圧は、アンテナの一端、および構造体の第1の導電層に供給される。ここで、検査装置が検査回路に供給する電力を大きくしていくと、整流回路が生成する電源電圧が大きくなるため、その電源電圧を元に高い電圧を生成する昇圧回路もそれに比例するように大きな電圧を出力する。
また、構造体の第1の導電層と同じ層に設けられている出力端子は、スイッチング素子の制御電極に接続され、第1の導電層とは導通していない。このような構造体の第1の導電層に基準電圧を供給し、第2の導電層に電源回路が生成した高い電圧を供給すると、上記したように構造層が可動し、第2の導電層が第1の導電層および出力端子と接触する。出力端子が第2の導電層と接触することでスイッチング素子の動作が変わり、アンテナおよび容量に付随するインピーダンスが変化する。
ここで、横軸に検査装置が放射する電磁波の強度を、縦軸に検査回路が出力する電磁波の強度を取った曲線419を描くと、図10(C)に示すように、横軸のある点Xにおいて、検査回路から出力する電磁波の強度が変化することがわかる。この点がプルダウン電圧を示している。
上記実施の形態で説明した方法によって、構造体の空間の高さを検査し、さらにこのようにプルダウン電圧を検査することによって、構造体を構成する構造層の特性を評価することも可能である。例えば、プルダウン電圧は、空間の高さと構造層の形状および応力に関係して決定される。したがって、これらの検査を行うことによって構造層を形成する層の応力を評価することが可能になる。
ここでさらに、上記のような電源回路等を有する検査回路を用いて、犠牲層エッチングによって犠牲層を完全に除去できたか、それとも犠牲層エッチングが不足で犠牲層が残っているのかを検査する方法を図2(A)、(B)を用いて説明する。なお、図2(A)に、片持ち梁構造の構造体、図2(B)に橋状に形成された梁構造の構造体を示す。
例えば、図2(A)に示すように、片持ち梁構造である構造体の検査は、第1の導電層202に一定の電圧を印加し、第2の導電層204に高い周波数の電圧を供給する。これは例えば、実施の形態3において図7(B)で説明した検査回路を用いて行うことができる。
梁の長さは設計および作製時に既知であるとすると、当該構造体の共振周波数となるところで梁が共振を起こす。しかしながら犠牲層残り211(犠牲層エッチングによっても除去されずに残った犠牲層)が存在すると梁の長さが変化して、当該周波数では共振を起こさなくなる(詳細には犠牲層残り211によって実質的な梁の長さが短くなるため、共振周波数は高い方向へシフトする。)。この共振周波数を測定することによって犠牲層残りが存在するか否かを検査することができる。
また、上記で示したように、プルダウン電圧を測定することによっても犠牲層残りがあるか否かの検査を行うことができる。これはプルダウン電圧が、構造体の構造によって決定することを利用する。すなわち片持ち梁の場合、梁の長さが短くなるにしたがってプルダウン電圧が上昇するため、その電圧変化を測定することで犠牲層残りがあるか否かを検査することができる。
また、犠牲層残り211が非常に多い場合や、図2(B)に示すような梁構造において犠牲層残り211が存在する場合はプルダウンが起こらなくなるので、それによっても検査することができる。
さらに構造が片持ち梁(図2(A))の場合でも梁構造(図2(B))であっても、上記実施の形態2で説明した検査方法のように、構造体のインピーダンスが変化すること利用して上記検査を行うことができる。例えば、構造体が容量性のインピーダンスである場合(すなわち犠牲層が誘電率εの絶縁性の材料であった場合)、犠牲層残りが存在すると構造体の容量は、導電層間の誘電率がε0(真空の誘電率)である容量と、誘電率がεの容量とが並列接続された容量値となる。この容量の変化を利用することによって、犠牲層残りがあるか否かの検査を行うことも可能である。また、構造体が抵抗性のインピーダンスである場合(すなわち犠牲層が導電性材料であった場合)、犠牲層が完全に除去されていれば構造層は導電性を有さない。しかし、犠牲層残りが存在すると構造体は導電性を示すことから、検査を行うことが可能である。
したがって、上記検査方法を適用することにより犠牲層が完全に除去されているか否かを光学顕微鏡などの容易な手段を用いて容易に検査することができる。また、検査を行った基板を工程に戻すことも可能となる。したがって、生産性を向上させることができる。
このように、検査回路に電源回路や制御回路を設けることで、構造体の様々な静的特性又は動的特性、例えば犠牲層の膜厚、空間の高さ、犠牲層が除去されているか否か、構造体の機械的共振周波数、構造体の駆動電圧、等を検査することが可能となる。また、これらの検査結果から、構造層の膜の応力や構造体のバネ定数等を求めることが可能となる。さらに、基板を分断せずに検査を行うことができるので、続けて工程を進めたり、不良が発見された時にはリペアを行ったりすることが可能であり、生産性を向上することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、マイクロマシンおよび構造体を作製する基板上で試験的に犠牲層エッチングを行い、構造体の特性を検査する方法について説明する。ここでは、図11に示す形状の構造体を作製する場合の例を挙げて説明する。
構造体を作製する工程は、はじめに、基板501上に固定電極となる第1の導電層502を形成する。第1の導電層502は、金属や金属酸化物等の導電性を有する材料を、スパッタリング法やCVD法等を用いて成膜し、フォトリソグラフィ法等を用いて任意の形状に加工することにより形成することができる。また、図に示すように第1の導電層502は基板501上に直接形成してもよいが、下地となる第1の保護層を成膜した上に形成してもよい。
次に、第1の導電層502上に犠牲層503を形成する。犠牲層503は、犠牲層に適した材料を成膜し、任意の形状に加工することで形成することができる。ここで、犠牲層に適した材料とは、例えば、犠牲層エッチング時に早く除去できたり、短時間で厚い膜を成膜でき、かつ加工しやすいといったものを指す。もちろん、犠牲層エッチング時に他の層との選択比がとれる材料であることも重要である。犠牲層503の膜厚は例えば0.5μm以上5μm以下(例えば2μmである)とする。
次に、犠牲層503上に、可動電極となる第2の導電層504、および第1の絶縁層505を成膜する。そして、第2の導電層および第一の絶縁層505を加工することにより図11(A)に示す構造体を形成する。ここで、第2の導電層および第1の絶縁層は構造層506を形成する。なお、これらの構成は一例であり、例えば、構造層は第2の導電層のみで形成することができ、また第1の絶縁層505を多層に形成することもできる。すなわち、構造層や犠牲層、固定電極等のすべての層は、必要な構造体の構造に応じて様々な形状、および積層構造を適用することが好ましい。なお、第1の絶縁層505の膜厚は、例えば500nm以上3μm以下(例えば800nm)である。
上記のように構造体を形成した後、図11(A)に示すように、検査用に用いない第1の構造体508上に第2の保護層507を形成する。図11では、左側に検査に用いない構造体508、右側に検査用の構造体509を示す。図11に示すように、検査用に用いる構造体509上には第2の保護層507は形成しない。
次に、犠牲層エッチングを行うことで、図11(B)に示すように、検査用の構造体が有する犠牲層のみが除去され、空間部分510が形成される。犠牲層エッチングを行うためには、第1の導電層ならびに構造層に加えて、第2の保護層とも選択比をとることのできる犠牲層およびエッチング剤を使用する。
このようにして検査用の構造体を形成することで、基板上の一部で先行して構造体の検査を行うことができる。検査は、上記実施の形態で説明した検査回路および検査方法を用いて行うことができる。そして、空間部分の高さや、構造体に電圧を印加したときに第1の導電層と第2の導電層とが接触するプルダウン電圧、構造層の固有振動数等を測定することで、構造層の膜の応力や、それに起因する構造層のひずみ、構造体の動作電圧等を評価することができる。
これらの検査によって、構造体の特性が設計時の仕様値の範囲であり、正常動作すると評価されれば、図11(C)に示すように、検査用の構造体509および第2の保護層507を除去する。その後、構造体508の犠牲層エッチングを行うことで、マイクロマシンを作製するための構造体を形成することができる。
逆に、構造体の特性が悪く、このまま工程を進めれば不良品となる場合には、構造体のリペアを行うことができる。リペアは、例えば、検査用の構造体、第2の保護層および構造層を除去し、再度、構造層を形成するといった手段をとることが可能である。
上記で説明したように本発明は、作製するための構造体と検査用の構造体とを設け、検査用の構造体にのみ先に犠牲層エッチングを行い、構造体の検査を行うことができる。このように、検査用の構造体を用いて犠牲層エッチング後の検査を行うことで、特性が不良である場合に、基板上の構造体に対してリペアを行うことができ、生産性を向上することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態6)
上記実施の形態4で示したように、検査回路が電源回路や制御回路を有することで、複数種類の構造体の特性を検査することができ、または、同一種類の構造体を複数検査することできる。本実施の形態ではこのような検査方法について、図12(A)、(B)を用いて説明する。
複数の構造体を検査するためには、例えば、検査回路が複数の構造体を有するように構成すれば良い。そして、検査装置から電力、および必要に応じては検査回路を制御する制御信号を送信し、検査回路は一つひとつの構造体を動作させてその応答を順次出力すれば良い。
このような検査を行うための検査回路の一例を図12(A)に示す。検査回路601は、無線通信回路602、制御回路603、および複数の構造体604〜606を有する。
無線通信回路は、アンテナ、容量、および上記実施の形態4で説明した電源回路等を有する。アンテナおよび容量は検査装置との通信を行い、電源回路は定電力の生成と回路内への電力供給を行う。
制御回路は、復調回路や分周回路、ドライバ等を有し、電源回路から供給される電力で動作する。復調回路は検査装置から送信される制御信号を復調し、分周回路は必要な周波数のクロック信号を生成する。そして、ドライバは制御信号を受けて、検査対象となる構造体を選択して電力を供給する。また、制御回路は構造体からの応答信号を無線通信回路に伝える。
複数の構造体の中から一つの構造体を選択するための回路をドライバで構成する場合、制御信号は、ドライバの動作開始させるためのスタートパルスでよい。また、この回路はドライバではなくデコーダで構成することもでき、その場合の制御信号はアドレス信号となる。
上記構成を有する制御回路は、複数の構造体を順次一つずつ選択して動作させ、その構造体の応答を出力信号として無線通信回路に伝達し、無線通信回路はそれを無線で出力する。
制御回路が構造体を選択する期間は、ドライバもしくはデコーダの構成やそれらに供給するクロック信号によって任意に決定することができる。なお、この選択期間は、構造体の検査に必要十分な時間に設定することが望ましい。また、制御回路は、最初の構造体604から最後の構造体606までを順次選択して検査を行った後、最初の構造体に戻って繰り返し検査を行うこともできるし、一度検査を行えば回路の動作を停止させる構造とすることも可能である。
上記のように制御回路が順次一つずつの構造体を選択することで、検査回路が有する複数の構造体について検査を行うことができる。
ここで、図12(A)は無線通信回路および構造体が制御回路と接続し、無線通信回路と構造体とは接続しない構成を示している。これは上記で説明したように、構造体からの応答信号が制御回路を経由して無線通信回路に伝えられるからである。なお、無線通信回路と構造体とを接続し、構造体からの応答信号を直接出力する構成とすることも可能である。また、検査回路は構造体を一つだけ有し、制御回路が複数の検査項目に応じて様々な信号を構造体に入力することで、一つの構造体に対して複数項目の検査を行うことも可能である。
また、上記と異なる構成の検査回路を、図12(B)を用いて説明する。検査回路607は図に示すように、無線通信回路608、制御回路609および複数の構造体がマトリックス状に並んでいる構造体アレイ610を有する。無線通信回路は、上記実施の形態4および図12(A)で示した検査回路と同様、アンテナや電源回路を有する。
制御回路609は、複数の構造体の中から一つの構造体を選択するためのドライバ611とセレクタ612、ならびに構造体の信号を無線通信回路に伝えるIF613から構成することができる。そしてアレイ状に配列された複数の構造体は、ドライバによって順次一つずつ選択される。
ここで制御回路のドライバは、デコーダを有することも可能である。すなわち制御回路は、例えばフラットパネルディスプレイやメモリのように、複数の中から一つのもの(ここでは構造体)を選択するような構造を有する。そして上記の構成の検査回路は、図12(A)で示した検査回路と同様に、制御回路によって一つの構造体を選択し、その応答信号を無線通信回路から出力する。
検査回路をこのような構造にすることで、複数の構造体について一度に検査を行うことができる。ここで検査回路内の複数の構造体が、同一種類の構造体である場合は、複数の構造体について同一の検査を行うことができる。また、検査回路内に異なる構成の構造体があれば、異なる検査項目についての検査を行うことができる。
このように、アンテナと構造体とを接続した検査回路を構成することで、作製中および作製後の構造体の特性を非接触で検査することができる。また、針を接触させるために要する時間や針の置き換えに要する時間が不要になり、スピーディーに検査することができるため、生産性を向上することができる。また、無線通信での測定により、検査対象となる構造体の数や検査項目が多くても一度に検査することができるため、検査に要する時間を短縮することができる。
また、一般的な電気特性測定に使用するプローバを用いた針の接触による検査をする必要がないので、検査時の位置精度が大きくても良く、測定者も容易に検査を行うことができる。また、構造体は、一般的な半導体素子と異なり、空間を有する三次元の立体構造であるので、針との接触によって破壊される可能性が非常に大きい。なお、非接触測定を行うことで針によって基板に傷を付ける恐れが無くなるので、歩留まりを高くすることができる。さらに、検査後に基板を工程に戻すことができる。これは破棄する必要がなく、生産性を向上することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、図13に示すマイクロマシンを構成する構造体の作製フローを参照しながら、構造体を検査する方法について説明する。
構造体の作製はまず、構造体を作製するための基板を準備し(ステップ701)、犠牲層エッチングまでの作製工程を進める(ステップ702)。ここで犠牲層エッチングまでの工程は、一般的な半導体素子の作製方法を適用し、上記実施の形態で説明したように、基板上に固定電極、犠牲層および構造層を形成する工程である。
次に、これまでの工程確認のための検査、代表的には犠牲層の膜厚検査を行う(ステップ703)。当該検査は、上記実施の形態で説明した検査回路を作製しておき、検査を行うことが可能である。そして、不良が発見された場合には、再度成膜し直す等のリペアを行うことができる。
ここで、図5(B)に示すような、構造層を複数の層を積層させて形成する場合、上記犠牲層の膜厚の検査は、構造層をすべて形成した後に行っても良いが、図5(A)に示すように、構造層を形成する導電層(第2の導電層)のみを形成して検査を行い、その後絶縁層を形成して構造層を作製しても良い。このように、構造層を部分的に形成して検査を行うことで、検査結果が不適合だった場合に容易にリペアを行うことができる。
構造体を作製する場合、次に犠牲層エッチングにより犠牲層を除去するのであるが、上記実施の形態5で説明したように、検査用の構造体にのみ先に犠牲層エッチングを行い、構造体の検査を行うことができる。ここで、基板上の一部の犠牲層を除去し、構造体の特性、例えば構造層の膜の応力や、それに起因する構造層のひずみ、構造体の動作電圧等を測定することによって、プロセスチェックを行うことが可能である(ステップ704)。
このように、作製する構造体の犠牲層エッチングを行う前に、ステップ703およびステップ704の検査を行うことによって不良が発見された場合、不良箇所を取り除き、再度形成する修復を行うことができる。
上記の検査を行い、設計時に予定したように構造体が作製できる範囲内の測定値であれば、犠牲層エッチングを行い、犠牲層を除去することによって構造体の空間部分を形成する(ステップ705)。そして、犠牲層エッチングの後に、実施の形態2で説明した空間部分の高さの検査や、実施の形態4で説明した動作電圧の検査等を行うことができる(ステップ706)。それらの検査により構造体が正常に動作することを確認できれば、基板を分断して構造体をチップにする(ステップ707)。
その後、パッケージングを行うことで最終製品の形態とし(ステップ708)、最終検査を行う(ステップ709)。パッケージは、上記プロセスによって作製された構造体のみがパッケージされてもよく、また、他で作製された電気回路と上記構造体とを一つのパッケージに入れ、ボンディングすることで電気的に接合し、最終製品の形態とすることも可能である。
一般的にマイクロマシンを作製する場合、構造体は作製基板上での動作確認等の検査が行われず、基板の分断およびパッケージを行い最終製品の形態を作製した後、動作するか否の検査が行われる。これは、基板上で構造体の全数検査を行うことが難しいからであるが、生産効率を著しく引き下げている。しかしながら本発明を適用した上記一連のフローのように、犠牲層エッチング前に検査を実施することで、不良をリペアすることができるようになる。
上記すべての検査を行えない場合は、作製する構造体に応じて適宜検査項目を決めれば良いが、できる限り犠牲層エッチング前、もしくは基板の分断前に不良を発見し、リペアすることで生産性を向上することができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、図14に示すマイクロマシンの作製方法に上記実施の形態で説明したマイクロマシンの検査方法を適用する例を説明する。ここでマイクロマシンは、図14(A)に示すように、構造体802と構造体を制御する電気回路804とを別々の基板801、803に作製する。そして図14(B)に示すように、基板を分断して構造体を有するチップ805、および電気回路を有するチップ806を形成し、図14(C)に示すように同一のパッケージに入れ、ワイヤボンディングによって電気的に接合し、最終製品の形態であるマイクロマシン807を作製する。
まず、上記実施の形態7においてステップ706に示した検査方法を適用し、基板を分断する前に良品の構造体を選別する例を示す。例えば、図15に示すように、マイクロマシンを形成するための構造体816、および構造体の特性を評価するためのTEG(Test Element Group)817を同一の基板815上に作製する。
構造体を作製する工程が終了した後、各基板に設けられたTEGの検査を行う。TEGは上記実施の形態で説明した検査回路とすることで、非接触で検査を行うことができる。例えばこの検査は、いくつかのTEGを接触式で検査し、正常に動作することを確認できた検査回路に対して非接触での検査を行う。その検査結果を基準の結果とし、他のTEGの非接触式による検査結果を基準の結果と比較してTEG評価を行うこともできる。ここで、接触式の測定結果から、非接触式測定における許容特性図のようなものを作成して比較基準としてもよい。
そして図15(B)に示すように、上記評価によってTEGの特性が正常範囲内で動作する基板818と、正常範囲でない基板819とに分ける。TEGの特性が正常範囲内で動作すると判断された基板818は、図15(C)に示すように基板を分断し、構造体を有するチップ820にする。また、TEGが正常範囲内で動作しなかった基板819に対しては、作製されている構造体の特性が悪い可能性があるため、再度詳細な検査において良又は不良の評価を行うとともに、工程管理のフィードバックをかけることが望ましい。
構造体を有するチップ820は、そのままパッケージを行っても良いが、各チップ820に対する検査を行ってもよい。各チップに対する検査は、上記実施の形態で説明した検査回路のようにアンテナが実装されているチップの場合、非接触式で検査を行うことができ、アンテナが実装されていないチップの場合は接触式で検査を行うことができる。そして図15(D)に示すように、正常に動作することが確認されたチップ821と、動作が確認されなかったチップ822に分け、正常動作するチップのみをパッケージしてマイクロマシンを作製することも可能である。
このように、正常に作製されたか否かを基板単位で判断して構造体をチップに切り分けることが可能になる。パッケージ前に検査を行い、良品の構造体を有するチップを選択することで最終的に作製されるマイクロマシンの生産性を向上することができる。
また、上記実施の形態5で説明した検査回路を用いて、複数の構造体を非接触で一度に検査する方法を適用することもできる。図16(A)に示すように、基板810上に無線通信回路811、制御回路812および複数の構造体を有する検査回路を形成し、作製されるすべての構造体の特性を検査する。検査によって、基板上の構造体は、正常動作する構造体813と正常動作しない構造体814とに評価する。そして図16(B)に示すように、基板を分断してチップにし、正常動作する構造体を有するチップをパッケージすることができる。
ここで基板分断時には、検査時に必要であった回路を切り落とし、製品に必要な部分(構造体)のみを取り出す。例えば、図16(A)の検査回路は、無線通信回路811、制御回路812および複数の構造体によって構成されており、ダイシング時には、基板からここの構造体を切り離してチップとする。このように、複数の構造体が一つの回路を構成するように接続している場合は、基板の分断によって個々のチップを取り出すことが必要である。したがって、基板の分断によって構造体のみを取り出せるようなレイアウトデザインにする必要がある。
マイクロマシンが有する電気回路804は、LSI作製技術を用いて作製、検査が行われ、正常動作するチップが選択されてパッケージされる。しかしながら、構造体802は作製基板801上での検査は行われずパッケージされた後にマイクロマシン807の検査が行われるため、生産効率を著しく引き下げる。
しかしながら本発明の測定方法を上記のように適用することで、マイクロマシンを作製する前の構造体に対して全数の検査を行うことができる。また、正常に作製されたか否かを基板単位で判断して構造体をチップに切り分けることが可能になる。その結果、生産効率を向上し、マイクロマシンの不良検査の迅速化を図ることができる。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した検査回路の作製方法について一例を挙げて説明する。例えば実施の形態1で説明したようなアンテナと構造体から構成される検査回路の作製方法について図17〜19を用いて説明する。図は工程順の断面図であり、左側にアンテナを、右側に構造体を形成する図を示す。
初めに図17(A)に示すように、基板913上に、導電性を有する材料(金属や金属酸化物、導電性を有する有機物等)を成膜し、加工することで第1の導電層915を形成する。第1の導電層915は、アンテナ902、および構造体903の固定電極(第一の導電層)となる。また、第1の導電層915により、アンテナ902と構造体903の固定電極とが接続される(図示していない)。ここで使用する基板913は、そのまま用いてもよいが、保護層914を形成した後に第一の導電層を形成することもでき、図は基板上に保護層914を成膜しその上に第1の導電層を形成した例を示す。
次に、第1の導電層915上に、絶縁性を有する材料(珪素酸化物や珪素窒化物、絶縁性を有する有機物等)を成膜し、加工することで第1の絶縁層916を形成する。
この第1の絶縁層916は、構造体903の部分では犠牲層となり、アンテナ902部分ではアンテナの中心から取り出される配線を絶縁するための層間膜となる。
次に図17(B)に示すように、第1の絶縁層916上に、導電性を有する第2の導電層917、および絶縁性を有する第2の絶縁層918を成膜し、加工することで構造体の構造層を形成する。この構造層は、導電性を有する層のみの単層構造でも良いが、ここでは導電層および絶縁層を積層した構造層を示す。
また、導電層および絶縁層は別々に成膜および加工を行うこともできるが、ここでは二つの層を順次成膜した後に、セルフアラインによって一度で加工を行う例を示す。セルフアラインによって加工することで、フォトリソグラフィ工程およびその工程に使用するフォトマスクを減らすことができるためである。この第2の導電層917は、構造体903の可動電極、およびアンテナ902から配線を取り出して構造体の可動電極と接続するための配線となる。
ここまでを形成すれば、この検査回路を用いて上記実施の形態で説明した検査、例えば犠牲層の膜厚検査等を行うことができる。また、上記第2の絶縁層918を形成せず、第2の導電層917のみを形成した時点でも検査を行うことが可能である。
次に、図17(C)に示すように、アンテナを形成する第2の導電層および第2絶縁層918上に、前記第1の絶縁層と選択比がとれる材料を成膜し、加工することで保護層919を形成する。
この保護層919は、構造体903を作製するための犠牲層エッチング時に、アンテナ部分の第一の絶縁層をエッチングしないための保護層である。
次に、犠牲層エッチングを行うことで犠牲層を除去し、空間部分を有する構造体903、およびアンテナ902を形成することができる。
このように作製した検査回路を用いることで、上記実施の形態で説明した検査、例えば空間部分の高さの検査や、犠牲層が除去されているか否かの検査、動作電圧の検査等を行うことができる。
アンテナおよび構造体を有する検査回路は、一般的な半導体素子を作製する方法を適用して作製することができる。例えば、成膜はCVD法やスパッタリング法、蒸着法等を適用して行うことができ、各膜や層の加工はフォトリソグラフィ法およびエッチングによって行うことができる。そして、上記のように導電層と絶縁層とを組み合わせることで、アンテナおよび構造体を有する検査回路を形成することができる。
上記説明では、第1の導電層を用いてアンテナを形成したが、第2の導電層を用いてアンテナを形成することもできる。この例を図18を用いて説明する。
図18(A)に示すように、基板920上に保護層921を成膜し、その上に第1の導電層922を形成する。第1の導電層922は、構造体903の固定電極を形成するとともに、アンテナ902と固定電極を接続する配線となる。
次に第1の導電層922上に第1の絶縁層923を形成する。第1の絶縁層923は、構造体903の犠牲層となるほか、アンテナ902部分ではアンテナの中心から取り出される配線を絶縁するための層間膜となる。
そして、第1の絶縁層923上に第2の導電層924および第2の絶縁層925を成膜して加工することにより、構造体の構造層およびアンテナを形成する。ここで、第2の導電層は、構造体903の可動電極であり、第2の導電層によりアンテナと構造体の可動電極とが接続される(図示していない)。
アンテナ902を形成する第2の導電層および第2の絶縁層上に、前記第1の絶縁層と選択比がとれる材料を成膜し、加工することで保護層を形成する。そして、犠牲層エッチングを行うことで犠牲層を除去し、空間部分を有する構造体、およびアンテナを形成することができる。
しかしながら、図18(B)に示すように、上記の保護層を形成せず、犠牲層エッチングを行うことによって、空間部分926を有する構造体と共に、空間部分926を介して基板920から切り離されたアンテナ902を形成することができる。このようなアンテナは、基板や周辺に存在する導電層からのノイズを受けにくい。
上記のようにアンテナおよび構造体を作製することで、高感度のアンテナとなり、精度の高い検査を行うことができる。なお、ここで挙げた作成例は一例であり、様々な方法で検査回路を作製することができる。
また、検査回路が電源回路や制御回路を有する場合、同一基板上に容量や半導体素子を形成する必要がある。半導体素子と構造体とを同一基板上に作製する方法は様々あるが、ここでは基板上に薄膜トランジスタと構造体とを形成する例を、図19を用いて示す。
まず、図19(A)に示すように半導体素子を形成する方法を説明する。
初めに基板927上に絶縁層を形成する。絶縁層は、珪素酸化物や珪素窒化物等で形成する。次に、絶縁層上に半導体層928を形成し、レーザ結晶化や、金属触媒を用いた熱結晶化等により、当該半導体層を結晶化させ、その後、エッチングなどにより所定の形状に加工(パターニング)を行う。次に、半導体層を覆うようにゲート絶縁層を形成する。ゲート絶縁層は、珪素酸化物や珪素窒化物等で形成する。
次に、ゲート電極層929を形成する。ゲート電極層929は、導電性を持つ元素や化合物で導電層を形成し、所望の形状にパターニングする。フォトリソグラフィー法によりパターニングを行う場合、レジストマスクをプラズマ等でエッチングすると、ゲート電極幅を短くし、トランジスタの性能を高めることができる。次に、半導体層に不純物元素を添加してN型不純物領域、および、P型不純物領域を形成する。不純物領域は、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成し、燐や砒素、ボロン等の不純物元素を添加することで形成する。次に、窒素化合物等により絶縁層を形成し、当該絶縁層を垂直方向の異方性エッチングすることで、ゲート電極の側面に接する絶縁層(サイドウォール)を形成する。次に、N型不純物領域を有する半導体層に不純物を添加し、サイドウォール直下の第一のN型不純物領域と、第一の不純物領域よりも高い不純物濃度を有する第二のN型不純物領域とを形成する。上記の工程により、N型およびP型の半導体素子930が形成される。
上記の工程により作製した半導体素子が有する半導体層は、非晶質半導体、微結晶半導体、ナノクリスタル半導体、多結晶半導体、有機半導体等のいずれの半導体を用いてもよい。良好な特性の半導体素子を得るためには、200度から600度の温度(好適には350度から500度)で結晶化した結晶質半導体層(低温ポリシリコン層)や、600度以上の温度で結晶化した結晶質半導体層(高温ポリシリコン層)を用いることができる。さらに良好な特性の半導体素子を得るためには、金属元素を触媒として結晶化した半導体層や、レーザ照射法により結晶化した半導体層を用いるとよい。また、プラズマCVD法により、SiH4及びF2を含むガス、SiH4及びH2を含むガス等を用いて形成した半導体層や、前記半導体層にレーザ照射を行ったものを用いるとよい。また、回路内の半導体素子の半導体層は、キャリアの流れる方向(チャネル長方向)と平行に延びる結晶粒界を有するように形成するとよい。このような活性層は、連続発振レーザ(CWLCと略記することができる)や、10MHz以上、好ましくは60〜100MHzで動作するパルスレーザで形成することができる。また、半導体層の厚さは、20nm〜200nm、好ましくは50nm〜150nmとするとよい。また、半導体層(特にチャネル形成領域)には、1×1019atoms/cm3〜1×1022atoms/cm3の濃度、好適には1×1019atoms/cm3〜5×1020atoms/cm3の濃度で、水素又はハロゲン元素を添加することで、欠陥が少なく、クラックが生じにくい活性層を得ることができる。
上記のように作製した半導体素子は、S値(サブスレッシュホールド値)が0.35V/dec以下、好ましくは0.09〜0.25V/decを有する。また、移動度は、10cm2/Vs以上の特性を有するとよい。さらに、当該半導体素子は、電源電圧が3〜5Vで動作するリングオシレータで、1MHz以上、好適には10MHz以上の特性を有することが望ましい。また、本実施の形態に示された半導体素子は、基板上に半導体層、ゲート絶縁層、ゲート電極層を順に積層を積層させる構造を取るが、この例には限定されず、例えば、ゲート電極層、絶縁膜、半導体層を順に積層させる構造を取ることも可能である。また、本実施の形態においてN型の半導体素子は、第一のN型不純物領域と第二のN型不純物領域を有するが、この例には限定されず、不純物領域における不純物濃度が一様であっても良い。
また、半導体素子は複数の層に渡って設けられていてもよい。多層構造で作製する場合は、層間での寄生容量を低減するために、層間絶縁膜の材料に低誘電率材料を用いるとよい。例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂材料、シロキサン系ポリマー等の重合によってできた化合物材料などが挙げられる。多層構造において寄生容量を低減すれば、小面積化、動作の高速化、低消費電力化を実現することができる。また、アルカリ金属の汚染を防ぐための保護層を設けることで、信頼性を向上することができる。当該保護層は、窒化アルミニウム、窒化珪素膜等の無機材料により、回路内の半導体素子を包むように、または、回路全体を包むように設けるとよい。
続いて、半導体素子930を覆うように絶縁層931を形成する。絶縁層は、絶縁性を有する無機化合物や、有機化合物等により形成する。次に、第二のN型不純物領域と、P型不純物領域とを露出させるコンタクトホールを形成し、当該コンタクトホールを充填するように、導電層を形成し、当該導電層を所望の形状にパターニングする。導電層は、導電性を有する金属元素や化合物等で形成する。
次に、導電層を覆うように絶縁層933を形成する。絶縁層933は、絶縁性を有する無機化合物、または、有機化合物等で形成する。次に、導電層を露出させるコンタクトホールを形成し、当該コンタクトホールを充填するように導電層を形成し、所望の形状にパターニングすることで、構造層の固定電極(第1の導電層934)を形成する。なお、上記固定電極は、アンテナと固定電極を接続する配線にもなる。
次に図19(B)に示すように、第1の導電層934上に第1の絶縁層935を形成する。第1の絶縁層は、構造体の犠牲層となるほか、アンテナ部分ではアンテナの中心から取り出される配線を絶縁するための層間膜となる。そして、第1の絶縁層上に第2の導電層936および第2の絶縁層937を成膜して加工することにより、構造体の構造層およびアンテナを形成する。ここで、第2の導電層は、構造体の可動電極であり、第2の導電層によりアンテナと構造体の可動電極とが接続される(図示していない)。
アンテナを形成する第2の導電層および第2の絶縁層上に、前記第1の絶縁層と選択比がとれる材料を成膜し、加工することで保護層を形成する。そして、犠牲層エッチングを行うことで犠牲層を除去し、空間部分を有する構造体903、およびアンテナ902を形成することができる。
絶縁層、導電層、半導体素子および構造体を形成する各々の層は、単一材料の単層構造、もしくは、複数の材料の積層構造で形成することができる。
上記のように半導体素子、アンテナ、および構造体を有する検査回路を作製し、本発明の検査方法を適用することによって、作製途中および作製後の構造体の検査を行うことができる。
上記のように作製され、検査によって良品と評価された構造体は、基板を分断し、チップとなってマイクロマシンに組み立てられる。したがって基板分断時には、検査時にのみ必要であった回路を切り落とし、製品に必要な部分のみを取り出すこともできる。
例えば、図20を用いて検査回路から構造体をチップに取り出す場合を説明する。図20(A)に示すように、検査回路901がアンテナ902および構造体903を有する場合、それらを接続している配線904を点線で示す部分でアンテナ902と構造体903とを切り離し、構造体903をマイクロマシンを作製するためのチップとして取り出すことができる。
また、図20(B)に示すように、検査回路901に構造体903とパッド906が接続されている場合にも、構造体903とアンテナ902ならびにパッド906を接続している配線904、905を点線で示す部分でアンテナ902およびパッド906を構造体903から切り離し、構造体903をチップとして取り出すことができる。この場合、断線された配線904が構造体903に接続されている状態となる。なお、構造体903とアンテナ902とを接続するための配線904のみを切り離し、パッド906は電気回路と接続するためのボンディングパッドとして利用することも可能である。
また、図12や図16(A)に示すように、検査回路が容量や電源回路、制御回路等の周辺回路を有する場合でも、構造体と回路とを接続する配線部分で基板を分断し、構造体のみをチップとして取り出すことができる。なお、ここでも同様に、検査回路が有する電源回路や制御回路等の周辺回路をマイクロマシンに組み込むように設計し、構造体および周辺回路と配線を介して接続されるアンテナとを配線部分で切り出して構造体及び周辺回路をチップとし、マイクロマシンとしてパッケージを行うことも可能である。なお、構造体および周辺回路とアンテナを接続する配線は、必ずしも必要ではない。例えば、配線を介せず直接構造体及び周辺回路とアンテナとを接続することもできる。この場合、アンテナを切り出すことになる。
そして、周辺の回路と配線上で分断され切り離された構造体903は、図20(C)に示すように、別の基板で作製された電気回路907とともにパッケージされる。例えば図に示すように、構造体903と電気回路907は、パッド908、910を介してワイヤボンディング909で接合される。またここでは、電気回路907を有するチップ上に設けられたパッド910からパッケージの端子911にワイヤボンディング909により接続する例を示す。
ここでは構造体と電気回路とを別々の基板上に作製してチップにし、パッケージを行う例を示した。しかしながら、本実施の形態に示した半導体素子作製工程を適用して同一基板上に構造体および電気回路を作製し、パッケージすることも可能である。このときも、複数の回路や構造体が配線で接合している場合には、上記と同様に配線部分で基板を分断して各チップにし、パッケージングを行うことができる。また、この切断される配線は、検査時に共通の電位を与えるための電源といった、周辺回路とは異なる部分と構造体とをつなぐ配線であっても良い。このように配線部分で切断するように構造体をレイアウトし、基板上に作製することで、複数の構造体を同一基板上に作製し、さらに基板上の構造体の検査を行うことが可能になる。
このように、上記実施の形態で説明した検査回路が有する構造体を配線部分で切り出すことによって、検査を行った構造体を用いてマイクロマシンを作製することが可能である。
このようにマイクロマシンを作製することによって、動作することが確認された構造体をパッケージすることができ、一緒にパッケージを行う電気回路や、パッケージ材料等が無駄になることがない。
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。