JP2007163655A - 光学用樹脂材料及び光学素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】温度に対する屈折率変化が極めて小さく、光線透過率も高い光学素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学素子としての対物レンズ7は、熱可塑性樹脂と無機微粒子とを含有する光学用樹脂材料を用いて成型されたものであって、当該光学用樹脂材料はX線小角散乱測定により得られる20〜50nm領域のフラクタル形状パラメータが−2.0〜−0.5である。
【選択図】図1

Description

本発明は、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路などとして好適に用いられる光学用樹脂材料とそれを用いた光学素子に関する。
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体に対して、情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を光情報記録媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を光情報記録媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1参照。)等が知られている。
ところで、例えば、CD/DVDプレーヤーのような、複数種の光情報記録媒体に対して情報の読み書きが可能な情報機器の場合、光ピックアップ装置は、両者の光情報記録媒体の形状や適用する光の波長の違いに対応した構成とする必要がある。この場合、光学素子ユニットはいずれの光情報記録媒体に対しても共通とすることがコストやピックアップ特性の観点から好ましい。
一方、プラスチックを材料として適用した光学素子ユニットにおいては、ガラスレンズのような光学的安定性を有する物質であることが求められている。例えば、環状オレフィンのような光学的プラスチック物質は、湿度に関して大幅に改善された屈折率の安定性を有するのに対し、温度に対する屈折率の安定性の改良は未だ十分でないのが現状である。
上記のようなプラスチックレンズの光学的屈折率を修正する方法の1つとして、微細粒子充填材を使用する方法が、種々提案されている。
この微細粒子充填材は、光学的プラスチックの屈折率を修正するために使用され、粒子サイズが十分に小さい充填材を用いることによって、充填材による光散乱を起こさず、充填されたプラスチックは、レンズとしての十分な透明性を維持することができるものである。例えば、プラスチックの屈折率を増加させるための微細粒子の添加を記載する技術文献としては、C.BeckerとP.Mueller及びH.Schmidtの編による“シリカ微細粒子で修飾された表面を有する熱可塑性微細合成物質における光学的及び熱力学調査”、SPIE Proceedings第3469巻、1998年7月、88−98ページ、並びにB.BrauneとP.Mueller及びH.Schmidtによる“光学的応用のための酸化タンタルナノマー(Tantalum Oxide Nanomers)”、SPIE Proceedings第3469巻、1998年7月、124−132ページ等に記載されている。
感温性を有するポリマー状ホスト材料と、分散された微細粒子物質から構成され、感温性が減少された微細合成物光学製品が提案されている(例えば、特許文献2〜8参照)。該特許文献には、例えば、ホスト材料中に、酸化アルミニウムや酸化マグネシウムの微粒子を40質量%以上混合することにより感温性が減少されることが記載されているが、このように樹脂との屈折率差が大きい無機微粒子を多量に混合した樹脂材料では、光線透過率の低下が大きく、光学素子としての実用化には適さない樹脂材料を提供することしかできていなかった。
さらに、シリカ等の酸化物微粒子を分散した樹脂材料については多くの提案がなされている。例えば、ゾル−ゲル法により有機ポリマーとシリカゲルが分子分散した有機−無機ポリマーハイブリッドの合成が開示される(中條善樹著、季刊化学総説、No.42、75〜82頁、無機有機ナノ複合物質、日本化学会(1999))。この合成方法は、フェニル基間のスタッキング、すなわち、π−π電子相互作用を利用するものであり、例えば、有機ポリマーとしてポリスチレンを使用し、ゾル−ゲル反応の出発原料としてフェニルトリメトキシシランを使用すると、ポリスチレンと無機マトリックスとしてのフェニル置換シリカゲル(フェニルトリメトキシシラン)との間でπ−π電子相互作用が起こり、その結果として、均一透明なポリマーハイブリッドが得られる。
また、樹脂製ウィンドウの強度または剛性及び透明性を確保することを目的として、可視光線波長(380nm)以下の直径を有するシリカ微粒子を透明な非結晶の有機高分子に分散・混合した透明樹脂組成物からなる樹脂製ウィンドウ(特許文献9参照)が開示されている。また、剛性と寸法安定性の向上を目的として、熱可塑性樹脂と疎水性基および極性基を表面に有する酸化化合物を含有した樹脂組成物(特許文献10参照)が開示されている。
特開2002−105131号公報(第4頁) 特開2002−207101号公報(特許請求の範囲) 特開2002−240901号公報(特許請求の範囲) 特開2002−241560号公報(特許請求の範囲) 特開2002−241569号公報(特許請求の範囲) 特開2002−241592号公報(特許請求の範囲) 特開2002−241612号公報(特許請求の範囲) 特開2002−303701号公報(特許請求の範囲) 特許第3559894号公報(特許請求の範囲) 特開2004−269773号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、これらの樹脂組成物は、その製造時に微粒子とホスト樹脂材料の架橋反応により生じる立体構造により、樹脂組成物の強度および剛性を上げているため流動性が低く、成形性に問題がある。特に、微粒子の体積分率を上げると流動性が大幅に低下するとともに透明性の低下を生じやすいために、これらの方法で得られた樹脂組成物では光学素子として使用するための十分な光線透過率を得ることができない。
本発明の目的は、温度に対する屈折率変化が極めて小さく、光線透過率も高い光学用樹脂材料及び光学素子を提供することである。
上記課題を解決するため第1の発明は、
熱可塑性樹脂と無機微粒子とを含有する光学用樹脂材料であって、
X線小角散乱測定により得られる20〜50nm領域のフラクタル形状パラメータが−2.0〜−0.5であることを特徴としている。
前記フラクタル形状パラメータは−1.4〜−0.8であるのが好ましい。
当該光学用樹脂材料に占める前記無機微粒子の体積分率は20〜60%であるのが好ましい。
前記無機微粒子の平均粒子径は1〜30nmであるのが好ましい。
前記無機微粒子は有機シラン化合物により表面改質されているのが好ましい。
前記熱可塑性樹脂の屈折率は1.49〜1.60であるのが好ましい。
前記熱可塑性樹脂が環状オレフィン構造を有するのが好ましい。
第2の発明は、上記第1の発明に係る光学用樹脂材料を用いて成型された光学素子である。
本発明によれば、温度に対する屈折率変化の極めて小さく、かつ光線透過率の高い光学用樹脂材料と、さらに高温高湿環境下で長期間保存しても透明性の劣化を生じない光学素子を提供することができる(下記実施例参照)。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、X線小角散乱測定より得られる20〜50nmの領域のフラクタル形状パラメータが−2.0〜−0.5、好ましくは−1.4〜−0.8である光学用樹脂材料により、温度変化に対する屈折率変化が極めて小さい光学用樹脂材料を得ることができ、この光学用樹脂材料を光学素子に適用することにより、屈折率の温度依存性が小さく、かつ光線透過率が高く、さらに高温高湿環境下で長期間保存しても透明性の劣化を生じない光学素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
また、上記光学素子を、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置に適用し、少なくとも1つの光学面に、当該光学面を通過する特定の波長光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有するプラスチック製光学素子に適用することにより、例えば、Blu−Ray Disc等のいわゆる次世代光ディスクの情報の記録、再生のために、波長400nm近傍の短波長の光を用いても、光学素子自身が白濁したり屈折率が変動を受けたりすることがなくて極めて製品寿命も長く、かつ、良好な光学的屈折率と高い精度の光学特性を具備したプラスチック製光学素子と、それを用いて良好なピックアップ特性を有した光ピックアップ装置を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
上記「光学素子」とは、光ピックアップ装置の光学系を構成する、例えば、対物レンズ、対物レンズユニット、カップリングレンズ(コリメータ)、ビームエキスパンダ、ビームシェイパ、補正板等の部材として使用することができるものを指す。「対物レンズ」とは、狭義には光ピックアップ装置に光情報記録媒体を装填した状態において、最も光情報記録媒体側の位置で、これと対向すべく配置される集光作用を有するレンズを指し、広義にはそのレンズとともに、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に作動可能なレンズを指すものとする。
「光情報記録媒体」とは、CD、DVD、CD−R、MD、MO、高密度DVD等の所定の波長の光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行う一般的な光ディスクを指す。「情報の再生」とは光情報記録媒体の情報記録面上に記録された情報を再生することをいい、「情報の記録」とは光情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録することをいう。なお、ここでいう「再生」とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
また、上記光学素子及び光ピックアップ装置は、情報の記録だけあるいは再生だけを行うために用いるものであってもよいし、記録と再生の両方を行うために用いるものであってもよい。
また、上記「少なくとも1つの光学面」とは、レンズの表裏面のうちの光の入射面又は出射面のことを言い、これら入射面と出射面のどちらか一方の面に光路差付与構造を有していても良いし、両方の面に有していても良い。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明に係る「光学用樹脂材料」は、熱可塑性樹脂と無機微粒子とを含有するもので、その特性としてX線小角散乱測定により得られる20〜50nm領域のフラクタル形状パラメータが特定範囲の値を有している。更に、本発明に係る「光学素子」は当該光学用樹脂材料を用いて成型したものである。
下記では、始めに(1)熱可塑性樹脂、(2)無機微粒子及び(3)その他添加可能な添加剤についてそれぞれ説明し、その後に(4)当該光学用樹脂材料の製造方法や特性等及び(5)光学素子の製造方法や適用例についてそれぞれ説明する。
(1)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、光学材料として一般的に用いられる透明の熱可塑性樹脂材料であれば特に制限はないが、光学素子としての加工性を考慮すると、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂であることが好ましい。適用可能な熱可塑性樹脂としては、例えば、特開2003−73559に記載の化合物を挙げることができ、その好ましい化合物を表1に示す。
Figure 2007163655
本発明に係る光学用樹脂材料においては、有機重合体からなる熱可塑性樹脂が、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体である、特開平7−145213号公報の段落番号〔0032〕〜同〔0054〕に示されている化合物や、脂環式構造を有する繰り返し単位からなる脂環式炭化水素系共重合体であることが好ましい。本実施形態で好ましく用いられる環状オレフィン樹脂としては、ZEONEX(日本ゼオン製)、APEL(三井化学製)、アートン(JSR製)、TOPAS(チコナ製)などが挙げられるが、これらに限るものではない。また、本発明に係る光学用樹脂材料においては、熱可塑性樹脂として屈折率が1.49〜1.60の範囲内にあるものを適用するのが好ましい。
(2)無機微粒子
(2.1)無機微粒子の種類や特性等
熱可塑性樹脂中に分散される無機微粒子としては、特に限定はなく、得られる光学用樹脂材料の温度による屈折率の変化率(以後「|dn/dT|」とする。)が小さいという本発明の目的の達成を可能とする無機微粒子の中から任意に選択することができる。具体的には酸化物微粒子、金属塩微粒子、半導体微粒子などが好ましく用いられ、この中から、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものを適宜選択して使用することが好ましい。
酸化物微粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である金属酸化物を用いることができ、具体的には、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl)等が挙げられる。
その他の酸化物微粒子として希土類酸化物を用いることもでき、具体的には酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。金属塩微粒子としては、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、具体的には炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
本発明に係る光学用樹脂材料には副元素を含有させてもよい。当該副元素としては周期表3から12族の元素、好ましくは3から5族の元素、特に好ましくは4族の元素が好ましい。上記元素を微量含有させることにより、屈折率の温度変化を抑制し、かつ長期の信頼性を向上させることができる理由は明確ではないが、無機微粒子を含有することにより発現する屈折率の温度変化を抑制す効果を熱可塑性樹脂と無機微粒子の結合性を強固にする働きがあると推察している。
熱可塑性樹脂中に無機微粒子を分散させる際には、母材となる熱可塑性樹脂と無機微粒子の屈折率の差が小さいことが望ましい。発明者らの検討の結果、熱可塑性樹脂と分散される無機微粒子の屈折率の差が小さいと、光を透過させた場合に散乱を起こし難いということがわかった。熱可塑性樹脂に無機微粒子を分散させる際、無機微粒子が大きい程、光を透過させた時の散乱を起こしやすくなるが、熱可塑性樹脂と分散される無機微粒子の屈折率の差が小さいと、比較的大きな無機微粒子を用いても光の散乱が発生する度合いが小さく、また無機微粒子の含有量を増加しても透明性を維持することが可能であることを発見した。さらに副元素を含有させることにより、長期の耐久性を向上させることが可能であることを発見した。
本発明に係る光学用樹脂材料においては、無機微粒子は屈折率(np)が熱可塑性樹脂に近いものが好ましく、熱可塑性樹脂との屈折率差が0.15以下であるのが好ましく、0.1以下であるのがさらに好ましく、0.05以下であるのがより好ましい。当該無機微粒子の屈折率は、熱可塑性樹脂の組成により異なるが、通常1.4〜2.0であることが好ましく、1.45〜1.7であることがさらに好ましい。具体的には、当該無機微粒子として、二酸化珪素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、りん酸アルミニウム等が好ましく用いられる。
ここで言う屈折率とは、25℃においてd線を光源として測定される屈折率nd25として得られる値の平均値であり、例えば、炭酸カルシウムの様な屈折率の異方性がある化合物については、その常光と異常光の屈折率値の平均値である。上記屈折率nd25は、例えばASTMD542規格に則りアッベ式屈折計等により測定されるものが該当し、種々の文献に記載されている値を用いることができる。また、無機微粒子を、屈折率を調整した種々の溶媒に分散させて分散液の吸光度を測定し、その値が最小になる溶媒の屈折率を測定することにより、該無機微粒子の屈折率を確認できる。
光学用樹脂材料(光学材料)として好ましく用いられる熱可塑性樹脂の屈折率は1.4〜1.6程度である場合が多く、これらの熱可塑性樹脂に分散させる無機微粒子としては、例えばシリカ(酸化ケイ素)、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物などが好ましく用いられる。
光学用樹脂材料のdn/dTの低減効果、光透過性、所望の屈折率等を全て同時に向上させることは困難であり、熱可塑性樹脂に分散させる無機微粒子は、光学用樹脂材料に求める特性に応じて、無機微粒子自体のdn/dTの大きさ、無機微粒子のdn/dTと母材となる熱可塑性樹脂のdn/dTとの差、及び無機微粒子の屈折率等を考慮して適宜選択することができる。更に、母材となる熱可塑性樹脂との相性、即ち、熱可塑性樹脂に対する分散性、散乱を引き起こし難い無機微粒子を適宜選択して用いることは、光透過性を維持する上で好ましい。
例えば、光学素子に好ましく用いられる環状オレフィンポリマーを母材として用いる場合、光透過性を維持しながら|dn/dT|を小さくする無機微粒子としては、シリカ、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
上記の無機微粒子は、1種類の無機微粒子を用いてもよく、また複数種類の無機微粒子を併用してもよい。異なる性質を有する複数種類の無機微粒子を用いることで、必要とされる特性を更に効率よく向上させることもできる。
無機微粒子は、平均粒子径が1〜30nm以下であることが好ましく、1〜20nm以下であることがより好ましく、1〜10nm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が1nm未満の場合、無機微粒子の分散が困難になり所望の性能が得られない恐れがあることから、平均粒子径は1nm以上であることが好ましい。他方、平均粒子径が30nmを超えると、得られる光学用樹脂材料が濁るなどして透明性が低下し、光線透過率が70%未満となる恐れがあることから、平均粒子径は30nm以下であることが好ましい。ここでいう「平均粒子径」とは、各無機微粒子を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値のことである。
さらに、無機微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状の無機微粒子が好適に用いられる。具体的には、無機微粒子の最小径(無機微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最小値)/最大径(無機微粒子の外周に接する2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最大値)が0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。
また、無機微粒子の粒子径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
(2.2)無機微粒子の製造方法、表面修飾
無機微粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、ハロゲン化金属やアルコキシ金属を原料に用い、水を含有する反応系において加水分解することにより、所望の酸化物微粒子を得ることができる。この際、無機微粒子の安定化のために有機酸や有機アミンなどを併用する方法も用いられる。より具体的には、例えば、二酸化チタン微粒子の場合、ジャーナル・オブ・ケミカルエンジニアリング・オブ・ジャパン第31巻1号21−28頁(1998年)や、硫化亜鉛の場合は、ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリー第100巻468−471頁(1996年)に記載された公知の方法を用いることができる。例えば、これらの方法に従えば、平均粒子直径5nmの酸化チタンはチタニウムテトライソプロポキサイドや四塩化チタンを原料として、適当な溶媒中で加水分解させる際に適当な表面修飾剤を添加することにより容易に製造することができる。また平均粒子直径40nmの硫化亜鉛はジメチル亜鉛や塩化亜鉛を原料とし、硫化水素あるいは硫化ナトリウムなどで硫化する際に、表面修飾剤を添加することにより製造することができる。
また、通常酸化物微粒子作製によく用いられる酸素を含む雰囲気内においてバーナにより化学炎を形成し、この化学炎中に金属粉末を粉塵雲を形成しうる量投入して燃焼させて、酸化物微粒子5〜100nmを合成する方法が開示されている(特開昭60−255602)。
以上のようなクラスターからのボトムアッププロセスによる無機ナノ粒子の作製以外にも無機微粒子を粉砕することでナノ粒子を作成するトップダウンプロセスも提案されている。具体的に使用する粉砕機としてはウルトラアペックスミル(コトブキ技研社製);カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)等があげられる。
表面修飾する方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、水が存在する条件下で加水分解により微粒子の表面に修飾する方法が挙げられる。この方法では、酸またはアルカリなどの触媒が好適に用いられ、微粒子表面の水酸基と、表面修飾剤が加水分解して生じる水酸基とが、脱水して結合を形成することが一般に考えられている。
本発明に係る光学用樹脂材料においては、無機微粒子が表面処理を施されているのが好ましい。
無機微粒子の表面処理の方法としては、カップリング剤等の表面修飾剤による表面処理、ポリマーグラフト、メカノケミカルによる表面処理などが挙げられる。
無機微粒子の表面処理に用いられる表面修飾剤としては、シラン系カップリング剤を始め、シリコーンオイル、チタネート系、アルミネート系等が挙げられる。これらは特に限定されず、無機微粒子および無機微粒子を分散する熱可塑性樹脂の種類により適宜選択することが可能である。また、各種表面処理を二つ以上同時又は異なる時に行っても良い。
具体的には、例えば、シラン系の表面処理剤として、ビニルシラザン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好ましく用いられる。
シリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルを用いることができる。
またこれらの処理剤はヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン水等で適宜希釈して用いても良い。
表面修飾剤による表面処理の方法としては、湿式加熱法、湿式濾過法、乾式攪拌法、インテグルブレンド法、造粒法等が挙げられる。50nm以下の無機微粒子を表面改質する場合、乾式攪拌法が粒子凝集抑制の観点から好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
これらの表面修飾剤は1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよく、さらに、用いる表面修飾剤によって得られる表面修飾微粒子の性状は異なることがあり、光学用樹脂材料を得るにあたって用いる熱可塑性樹脂との親和性を、表面修飾剤を選ぶことによって図ることも可能である。表面修飾の割合は特に限定されるものではないが、表面修飾後の無機微粒子に対して、表面修飾剤の割合が10〜99質量%であることが好ましく、30〜98質量%であることがより好ましい。
(3)添加剤
本発明に係る光学用樹脂材料の調製時や光学用樹脂材料の成型工程においては、必要に応じて各種添加剤(配合剤ともいう)を添加することができる。添加剤については、格別限定はないが、主には可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤等が挙げられ、それ以外にも、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤などの樹脂改質剤;軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラーなどが挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。本発明においては、特に、重合体が少なくとも可塑剤または酸化防止剤を含有することが好ましい。
(3.1)可塑剤
可塑剤としては、特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を挙げることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、例えば、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を挙げることができる。
(3.2)酸化防止剤
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
(3.3)耐光安定剤
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本発明においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALSともいう)の中でも、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いたGPCにより測定したポリスチレン換算のMnが1,000〜10,000であるものが好ましく、2,000〜5,000であるものがより好ましく、2,800〜3,800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できなかったり、射出成型等の加熱溶融成型時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。逆にMnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。したがって、本発明においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
このようなHALSの具体例としては、N,N′,N″,N′″−テトラキス−〔4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などのMnが2,000〜5,000のものが好ましい。
光学用樹脂材料に対する上記耐光安定剤の配合量は、重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。添加量が少なすぎると耐光性の改良効果が十分に得られず、屋外で長時間使用する場合等に着色が生じる。一方、HALSの配合量が多すぎると、その一部がガスとなって発生したり、熱可塑性樹脂への分散性が低下して、レンズの透明性が低下する。
また、光学用樹脂材料に、更に最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
(4)光学用樹脂材料の製造方法や特性等
(4.1)光学用樹脂材料の製造方法
本発明に係る光学用樹脂材料は、主にはホスト材料としての熱可塑性樹脂と無機微粒子とから成る混合物であって、その混合物に副元素を添加したものであるが、その作製方法は特に限定されるものではない。すなわち、熱可塑性樹脂と無機微粒子をそれぞれ独立して作製し、その後に両者を混合させる方法、予め作製した無機微粒子が存在する条件で熱可塑性樹脂を作製する方法、予め作製した熱可塑性樹脂が存在する条件で無機微粒子を作製する方法、熱可塑性樹脂と無機微粒子の両者を同時に作製させる方法など、いずれの方法をも採用できる。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂が溶解した溶液と、無機微粒子が均一に分散した分散液の二液を均一に混合し、熱可塑性樹脂に対して溶解性が乏しい溶液中に打ち合わせることにより、目的とする光学用樹脂材料を得る方法を好適に挙げることができるが、これに限定されるものではない。
副元素の添加法についても特に限定はなく、副元素を含有する微細な粒子を混合する方法、無機微粒子に副元素を含む溶液を添加しておく方法、上記で述べたような熱可塑性樹脂中に添加する添加剤中に混合しておく方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明に係る光学用樹脂材料において、熱可塑性樹脂と無機微粒子の混合の程度は特に限定されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、均一に混合していることが望ましい。混合の程度が不十分の場合には、特に屈折率やアッベ数、光線透過率などの光学特性に影響を及ぼすことが懸念され、また熱可塑性や溶融成形性などの樹脂加工性にも悪影響する恐れがある。混合の程度は、その作製方法に影響されることが考えられ、用いる熱可塑性樹脂及び無機微粒子の特性を十分に勘案して、方法を選択することが重要である。熱可塑性樹脂と無機微粒子の両者がより均一に混合するために、熱可塑性樹脂と無機微粒子を直接結合させる方法等も、好適に用いることができる。
無機微粒子の含有量は、本発明の効果を発揮できる範囲であれば特に限定されず、熱可塑性樹脂と無機微粒子の種類により任意に決めることができる。無機微粒子の含有量は、作製される光学用樹脂材料の全体積に対する無機微粒子の体積分率が20%以上60%以下であることが好ましく、20%以上50%以下であることがより好ましく、30%以上50%以下であることがさらに好ましい。ここでいう無機微粒子の体積分率は、無機微粒子の比重をa、含有量をxグラム、作製された光学用樹脂材料の全体積をYミリリットルとしたときに式(x/a)/Y×100で求められる。無機微粒子の含有量の定量は、透過型電子顕微鏡(TEM)による半導体結晶像の観察(EDX等の局所元素分析により半導体結晶組成に関する情報も得ることが可能)、あるいは与えられた光学用樹脂材料が含有する灰分の元素分析により求まる所定組成の含有重量と該組成の結晶の比重とから算出可能である。
また、副元素の含有量も光学用用樹脂材料を酸あるいはアルカリにて溶解し、原子吸光分光分析、フレーム発光分光分析、誘導結合プラズマ発光分光、誘導結合プラズマ質量分析法等の元素分析により求めることができる。
(4.2)光学用樹脂材料の特性等
《光学材料のフラクタル次元パラメータ》
本発明に係る光学用樹脂材料は、その特性として、X線小角散乱測定により得られる20〜50nm領域のフラクタル形状パラメータが特定範囲の値を有している。当該フラクタル形状パラメータはX線小角散乱測定により決定することができる。X線小角散乱測定によれば、通常のX線回折では得ることのできないナノメーター以上の周期構造に関する情報(構造の周期及び頻度に関する情報)を得ることができるので、この情報に基づき、フラクタル形状パラメータを決定することができる。
例えば、固体内に微粒子が分散した複合材料をX線小角散乱測定した場合には、微粒子は粒子の集合体となっているために、得られるX線小角散乱曲線は種々の大きさの周期による散乱曲線の重ね合わせとなる。
従って、得られたX線小角散乱曲線を解析することにより、種々の大きさの周期構造の頻度に対応する“凝集粒子の形状の指標となるフラクタル性パラメータ”を決定することができる。すなわち、X線小角散乱におけるバックグラウンド補正後の散乱強度(I)、散乱ベクトル(k)及びフラクタル形状パラメータ(α)との間には下記式(A)の関係があるので、横軸をk、縦軸をIとしてプロットしたX線小角散乱曲線から、フラクタル形状パラメータを決定することができる。
I∝k−α … (A)
但し、k=4πλ−1sinθである。なお、「k」の単位は(1/nm)であり、「π」は円周率、「λ」は入射X線の波長(単位はnm)、「θ」はX線散乱角度(該θは検出器の走査角度を0.5倍した値である。)を意味する。
X線小角散乱曲線を得るためには、まず単色化されたX線をスリット及びブロックを用いて細く絞り試料に照射し、検出器の走査角度を変化させながら、試料によって散乱されたX線を検出し、横軸をk、縦軸をIとしてプロットすればよい。このとき両対数目盛りでプロットすれば散乱曲線のkにおける接線の傾きが−αに等しくなるのでα値を求めることができる。
また、粒子径をDとすると、DとX線散乱角度θと入射X線波長λとの間には、ブラッグの式(2Dsinθ=λ)の関係があるので、kとDの間には下記式(B)の関係が成立する。
D=2πk … (B)
本発明に係る光学用樹脂材料においては、20〜50nm領域のフラクタル形状パラメータが−2.0〜−0.5となっており、−1.4〜−0.8であることが好ましい。
光学用樹脂材料のフラクタル形状パラメータを本発明の範囲に調整する為の方法としては特に限定されないが、添加される無機微粒子の材料、粒径及び表面処理条件を適宜変更する方法、母材となる熱可塑性樹脂の材料を適宜選択する方法及び無機微粒子を熱可塑性樹脂に分散(混練)する際の設定温度、混練用ロータの回転数、混練時間等を適宜変更する方法等を用いることができる。またこれらの方法を適宜組み合わせることにより、光学用樹脂材料のフラクタル形状パラメータを調整することができる。
例えば、光学用樹脂材料に求められる屈折率やdn/dT等の性能を鑑みて無機微粒子や熱可塑性樹脂を適宜選択した上で、混練後得られた光学用樹脂材料のフラクタル形状パラメータの数値が所望の数値よりも大きい場合、設定温度及び回転数を固定した状態で、再度混練し、混練時間に従い経時的にフラクタル形状パラメータを測定することで所望の数値に調整することができる。このような場合もフラクタル形状パラメータの調整方法はこれに限られず、無機微粒子への表面処理条件を変更したり、設定温度や回転数を適宜変更する方法により調整することも可能である。
更に、本発明に係る光学用樹脂材料は、屈折率の温度変化率(dn/dT)が小さいことを特徴とする。
ここでいう温度Tに対する屈折率nの変化率の指標であるdn/dTとは、光学用樹脂材料の屈折率(n)が温度(T)の変化に対しdn/dTの割合で変化することを示している。dn/dTの値は、各温度で光学用樹脂材料の屈折率を測定し、屈折率の温度変化率を読みとることで求めることができる。
屈折率の測定方法としては、例えば、エリプソメトリ、分光反射率法、光導波路法、Abbe法、最小偏角法等から、光学用樹脂材料の形態に応じて好ましい方法を選択することができる。
本発明に係る光学用樹脂材料においては、このdn/dTの絶対値である|dn/dT|が0以上、9.0×10−5以下であることが好ましく、さらに|dn/dT|が0以上、5.0×10−5以下であることが好ましい。このdn/dTが全ての波長領域で上記の範囲であることが好ましいが、光学素子として使用する際に用いられる波長領域で上記の範囲であれば、従来よりも温度安定性に優れた光学素子を提供することができるため好ましい。
本発明に係る光学用樹脂材料は、可視領域波長における透明性を有すことが好ましい。本発明に係る光学用樹脂材料の透明性は、可視領域波長での光線透過率が光路長3mmにおいて通常は60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上であるのが望ましい。かかる測定は、例えばASTM D−1003(3mm厚)規格での試験により行われる。ここでいう可視領域とは、400〜650nmの波長領域を意味する。
また、本発明に係る光学用樹脂材料の屈折率は、熱可塑性樹脂と無機微粒子の組み合わせにより決まりるが、通常は熱可塑性樹脂より屈折率の高い無機微粒子を選択することにより、熱可塑性樹脂の屈折率より高くすることが好ましい。具体的には、1.45〜2.0程度の範囲が好ましく、更に好ましくは1.49〜1.7である。
本発明に係る光学用樹脂材料は、屈折率の温度依存性が小さく、かつ透明度が高く、光学的に優れた材料組成物であり、さらには熱可塑性及び/または射出成形性を有するために、成形加工性に非常に優れた熱可塑性材料である。この優れた光学特性と成形加工性を併せ持った当該光学用樹脂材料は、これまでに開示されている材料では達成することができなかった特性であり、特定の熱可塑性樹脂と特定の無機微粒子から成ることが、この特性に寄与していることが考えられる。
(5)光学素子の製造方法や適用例
(5.1)光学素子の製造方法
次いで、本発明に係る光学素子(例えば光学用樹脂レンズ)の作製方法について説明する。
当該光学素子の作製では、まず、光学用樹脂材料を調製し、次いで、得られた光学用樹脂材料を成型する工程を含む。
本発明に係る光学用樹脂材料の成型物は、前記光学用樹脂材料(樹脂単独の場合もあれば、樹脂と添加剤との混合物の場合もある)からなる成型材料を成型して得られる。成型方法としては、格別制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成型物を得る為には溶融成型が好ましい。溶融成型法としては、例えば、市販のプレス成型、市販の押し出し成型、市販の射出成型等が挙げられるが、射出成型が成型性、生産性の観点から好ましい。
成型条件は使用目的、または成型方法により適宜選択されるが、例えば、射出成型における光学用樹脂材料(樹脂単独の場合または樹脂と添加物との混合物の両方がある)の温度は、成型時に適度な流動性を樹脂に付与して成型品のヒケやひずみを防止し、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、更に、成型物の黄変を効果的に防止する観点から150℃〜400℃の範囲が好ましく、更に好ましくは200℃〜350℃の範囲であり、特に好ましくは200℃〜330℃の範囲である。
当該成型物は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、本発明の光学素子の一つである光学用樹脂レンズとして好適に用いられるが、その他の光学部品として用いてもよい。
(5.2)光学素子の適用例
本発明に係る光学素子は、上記の作製方法により得られるが、光学部品への具体的な適用例としては、以下のようである。
例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
本発明に係る光学素子は、これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適に用いられ、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
以下、図1を参照しながら、上記光学用樹脂材料によって成形された光学素子が用いられた光ピックアップ装置1について説明する。
図1は、光ピックアップ装置1の内部構造を示す模式図である。
なお、本実施形態では、使用波長が405nmのいわゆる青紫色レーザ光源を用いた「高密度な光ディスク」をターゲットとしており、この光ディスクの有する保護基板厚は、0.1mmであり、記憶容量は約30GBである。
本実施形態における光ピックアップ装置1には、図1に示すように、光源である半導体レーザ発振器2が具備されている。この半導体レーザ発振器2から出射される青色光の光軸上には、半導体レーザ発振器2から離間する方向に向かって、コリメータ3、ビームスプリッタ4、1/4波長板5、絞り6、対物レンズ7が順次配設されている。
また、ビームスプリッタ4と近接した位置であって、上述した青色光の光軸と直交する方向には、2組のレンズからなるセンサーレンズ群8、センサー9が順次配設されている。
光学素子である対物レンズ7は、光ディスクDに対向した位置に配置されるものであって、半導体レーザ発振器2から出射された青色光を、光ディスクDの一面上に集光するようになっている。このような対物レンズ7には、2次元アクチュエータ10が具備されており、この2次元アクチュエータ10の動作により、対物レンズ7は、光軸上を移動自在となっている。
次に、光ピックアップ装置1の作用について説明する。
本実施形態における光ピックアップ装置1は、光ディスクDへの情報の記録動作時や、光ディスクDに記録された情報の再生動作時に、半導体レーザ発振器2から青色光を出射する。出射された青色光は、図1に示すように、光線Lとなって、コリメータ3を透過して無限平行光にコリメートされた後、ビームスプリッタ4を透過して、1/4波長板5を透過する。さらに、絞り6及び対物レンズ7を順次透過した後、光ディスクDの保護基板Dを介して情報記録面Dに集光スポットを形成する。
集光スポットを形成した光は、光ディスクDの情報記録面Dで情報ピットによって変調され、情報記録面Dによって反射される。そして、この反射光は、光線Lとなって、対物レンズ7及び絞り6を順次透過した後、1/4波長板5によって偏光方向が変更され、ビームスプリッタ4で反射する。その後、センサーレンズ群8を透過して非点収差が与えられ、センサー9で受光されて、最終的には、センサー9によって光電変換されることによって電気的な信号となる。
以後、このような動作が繰り返し行われ、光ディスクDに対する情報の記録動作や、光ディスクDに記録された情報の再生動作が完了する。
なお、光ディスクDにおける保護基板Dの厚さ寸法及び情報ピットの大きさにより、対物レンズ7に要求される開口数NAも異なる。本実施形態においては、高密度な光ディスクDであり、その開口数は0.85に設定されている。
(1)試料の作製
(1.1)試料1〜6の作製
熱可塑性樹脂としてシクロオレフィン樹脂(日本ゼオン社製:ゼオネックス340R)を、無機微粒子としてシリカ(日本アエロジル社製:R976、一次粒子径7nm)を、混練装置としてHAAKE社製:ポリラボミキサーシステムをそれぞれ適用し、当該熱可塑性樹脂39gと当該無機微粒子21g(35重量%)とを、設定温度200℃、ロータ回転数25rpm及び混練時間1〜60分で混練し、「試料1〜6」を作製した(試料1の混練時間は5分と、試料2〜5の混練時間は6〜59分と、試料6の混練時間は60分と設定した。)。
(1.2)試料7〜9の作製
上記(1.1)の項目の試料1〜6の作製において、混練装置及び添加量は変化させずに、無機微粒子をシリカ(日本アエロジル社製:RX300、一次粒子径7nm)に変更して、設定温度、ロータ回転数及び混練時間を同じ範囲内で条件を変化させて混練を行い、「試料7〜9」を作製した(試料7の混練時間は5分と、試料8,9の混練時間は6〜59分と設定した。)。
(1.3)試料10〜12の作製
上記(1.1)の項目の試料1〜6の作製において、混練装置及び添加量は変化させずに、無機微粒子を下記の手順に従って作製した表面処理済みのリン酸アルミニウムアルミナ(一次粒径20nm)に変更して、設定温度、ロータ回転数及び混練時間を同じ範囲内で条件を変化させて混練を行い、「試料10〜12」を作製した(試料10,11の混練時間は6〜59分と、試料12の混練時間は60分と設定した。)。
当該無機微粒子の作製では、始めに、0.027モルのリン酸三アンモニウムを含有する水溶液3リットルに、3.53モルの硫酸アルミニウム水溶液と、10.59モルのリン酸三アンモニウム水溶液のそれぞれ2リットルを、ダブルジェット法で10分間かけて添加した。微粒子形成中のpHは硫酸を用いて6.5に、温度は25℃に制御した。添加終了後、限外濾過法により可溶性塩類を脱塩除去し、10質量%のリン酸アルミニウム分散液を得た。この分散液100gに、メタノール300gと1モル%の硝酸水溶液を添加した。この液を50℃で撹拌しながら、メタノール100gとトリメチルメトキシシラン6gの混合液を60分かけて添加し、その後さらに2時間撹拌した。得られた透明な分散液を酢酸エチルに懸濁させ、遠心分離を行い白色の微粒粉末を得た。TEM観察によればこの粉末は平均粒径約20nmであり、これを当該無機微粒子とした。
(1.4)試料13〜15の作製
上記(1.1)の項目の試料1〜6の作製において、混練装置及び添加量は変化させずに、無機微粒子をシリカ(日本アエロジル社製A300,表面処理なし)に変更して、設定温度、ロータ回転数及び混練時間を同じ範囲内で条件を変化させて混練を行い、「試料13〜15」を作製した(試料13,14の混練時間は6〜59分と、試料15の混練時間は60分と設定した。)。
(1.5)試料16〜18の作製
上記(1.1)の項目の試料1〜6の作製において、熱可塑性樹脂を三井化学製APEL5014DP、帝人化成製パンライトAD5503、カネボウ製O-PET4にそれぞれ変更して、試料2と同条件にて混練を行い、「試料16〜18」を作製した。
なお、各試料1〜18の熱可塑性樹脂や無機微粒子の詳細を下記表2に示したが、同表中の無機微粒子の「表面処理」の有無は、有機シラン化合物による表面処理を無機微粒子に施したか否かを示している。
(2)試料の評価
(2.1)フラクタル形状パラメータの測定
小角広角X線回折装置(理学電機株式会社製RINT2500/PC)を用いて、各試料1〜18についてX線小角散乱測定を行い、熱可塑性樹脂中の無機微粒子のフラクタル形状パラメータを求めた。以下の測定条件で、透過法で測定を行った。この際、試料1〜18の厚さを1/μ(μは試料の質量吸収係数)となるように調整した。
ターゲット:銅
出力:40kV−200mA
1stスリット:0.04mm
2ndスリット:0.03mm
受光スリット:0.1mm
散乱スリット:0.2mm
測定法:2θ FTスキャン法
測定範囲:0.05〜1°
サンプリング:0.04°
計数時間:30秒
上記測定条件にて得たX線小角散乱測定結果について、試料1〜18ごとに、k=4πλ−1sinθ(「π」は円周率、「λ」は入射X線の波長(単位はnm)、「θ」はX線散乱角度(「θ」は検出器の走査角度を0.5倍した値)を意味する。)と強度Iの両対数プロットを作成し、そのなかでの20〜50nmに相当するkの範囲について残差平方和が最小となるような一次式にて近似し、その傾きをフラクタル形状パラメータとした。各試料1〜18の当該フラクタル形状パラメータの値を下記表2に示す。
(2.2)屈折率の評価
各試料1〜18を溶融し、加熱成型することにより厚さ3mmの試験用プレートをそれぞれ作製した。その後、各試料1〜18について、10℃から60℃まで温度変化させ、カルニュー光学工業(株)製の自動屈折計KPR−200を用いて波長588nmの屈折率を測定した。10℃から60℃での屈折率の温度変化率をdn/dTとし、得られた結果を下記表2に示す。
(2.3)透過率の評価
各試料1〜18を溶融し、加熱成型することにより厚さ3mmの試験用プレートをそれぞれ作製した。各試料1〜18の試験用プレートについて、ASTM D1003に準拠した方法で東京電色(株)製TURBIDITY METER T-2600DAを用いて光線透過率を測定した。試料作製直後に測定した値を「未処理」と、試料作製後に当該試料を65℃環境に48時間放置して測定した値を「(強制劣化)処理後」として、それぞれの測定結果を下記表2に示す。
なお、光線透過率が80%未満では透明度が低いため光学用途に適さない。
Figure 2007163655
(3)結果
表2に記載の結果より明らかな様に、本発明に係る試料2〜5,8〜11,13,14,16〜18は、その比較例に係る試料1,6,7,12,15に対し、屈折率の温度依存性が小さく、かつ透明性が高いことが分かる。更に、2〜5,8〜11,13,14,16〜18は、強制劣化処理を行った後でも、透明性の低下幅が極めて小さく、光学素子に使用する光学用樹脂材料として極めて有用であることがわかる。以上から、フラクタル形状パラメータの値が−2.0〜−0.5である光学用樹脂材料は温度に対する屈折率変化や光線透過率の点で極めて優れている。
さらに、上記試料2〜5,8〜11,13,14,16〜18を用いてプラスチック製光学素子を作製して評価した結果、当該光学素子は、良好な光学特性を持ち、かつCDやDVDの記録、再生に用いられるBlue−Rayを長時間照射しても、白濁化等の材料変質耐性に優れていることを確認することができた。
光ピックアップ装置の内部構造を示す模式図である。
符号の説明
1 光ピックアップ装置
2 半導体レーザ発振器
3 コリメータ
4 ビームスプリッタ
5 1/4波長板
6 絞り
7 対物レンズ(光学素子)
8 センサーレンズ群
9 センサー
10 2次元アクチュエータ
D 光ディスク
保護基板
情報記録面

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂と無機微粒子とを含有する光学用樹脂材料であって、
    X線小角散乱測定により得られる20〜50nm領域のフラクタル形状パラメータが−2.0〜−0.5であることを特徴とする光学用樹脂材料。
  2. 請求項1に記載の光学用樹脂材料において、
    前記フラクタル形状パラメータが−1.4〜−0.8であることを特徴とする光学用樹脂材料。
  3. 請求項1又は2に記載の光学用樹脂材料において、
    当該光学用樹脂材料に占める前記無機微粒子の体積分率が20〜60%であることを特徴とする光学用樹脂材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学用樹脂材料において、
    前記無機微粒子の平均粒子径が1〜30nmであることを特徴とする光学用樹脂材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学用樹脂材料において、
    前記無機微粒子が有機シラン化合物により表面改質されていることを特徴とする光学用樹脂材料。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学用樹脂材料において、
    前記熱可塑性樹脂の屈折率が1.49〜1.60であることを特徴とする光学用樹脂材料。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学用樹脂材料において、
    前記熱可塑性樹脂が環状オレフィン構造を有することを特徴とする光学用樹脂材料。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学用樹脂材料を用いて成型されたことを特徴とする光学素子。
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