JP2007155558A - 微弱光解析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微弱光試料でも、所望の細胞解析が可能な解析方法および対物レンズが特定の条件を満たす場合に、鮮明な画像を短い露出時間で、リアルタイムに解析できる解析方法の提供。
【解決手段】特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域に対して発現可能に連結された第1の不完全なレポーター遺伝子と、ある物質を細胞へ接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された第2の不完全なレポーター遺伝子とを導入した細胞を含む試料を、撮像視野内に配置し、試料に前記物質を接触させて刺激を行ない、刺激を行った細胞において発現した第1のレポーター遺伝子および第2のレポーター遺伝子間の相互作用に基づく検出可能なシグナルを撮像手段により光学イメージングし、レポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を定量的に決定する光学的処理工程とを備え、光学的処理工程が微弱光を画像解析可能な画像を生成する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞や組織等の生体試料中における生物学的活性をその活性を極力損なわないようにして長期間ないし連続的に検出する微弱光解析方法に関する。本発明は、その方法により実行される自動化装置と、該装置と連携するソフトウェアにも適用可能である。
生物学分野や医学分野の研究において、細胞等の生体試料の生物学的活性をレポータアッセイにより検出する技術が広く利用されてきた。レポータアッセイを用いると、視覚的に調べることが不可能な様様な生物学的活性を可視化することができる。従来の臨床的な検査は、生体試料から調べたい生体関連物質(核酸、血液、ホルモン、タンパク質等)のみを種々の分離方法により単離して、その単離した生体関連物質の量や活性を試薬と反応させていた。しかし、生命体においては、多様な生体関連物質同士の相互作用こそが真の生物学的活性を示すものである。近年、医療用薬剤を研究または開発する場合、生きた生体試料中での生物学的活性に対して最も効果的に作用する薬剤が決定的条件となっている。生きた生体試料を対象としたレポータアッセイには、生体試料と調べたい生体関連物質とを画像化して、生体試料内外におぇる動的変化を経時的に観察する必要性が高まってきている。
具体的には、レポーター物質としての発光(生物発光、化学発光)や蛍光を用いる観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるためにタイムラプスや動画撮像が求められている。現状では、蛍光試料を対象として撮像した画像による動的変化の観察(例えば、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察)が行われている。蛍光試料の撮像の場合、励起光を照射し続けることで蛍光試料から発せられる光量が時間の経過とともに減少するという性質があるため、定量的な評価に利用できる安定した画像を経時的に撮ることが困難であったが、しかし、鮮明な、つまり、空間分解能の高い画像を短い露出時間で撮ることができた。一方、発光試料を対象とした画像による動的変化の経時的観察においては、発光試料からの発光が極めて小さいので、発光試料の観察には、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラを用いて行われていた。発光試料の撮像の場合、励起光を照射する必要がないため、定量的な評価に利用できる安定した画像を経時的に撮ることができた。
これまで、発光試料の観察においては、発光試料からの発光量の測定が行われていた。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子が導入された細胞の観察では、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さ(具体的には発現量)を調べるために、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量の測定が行われていた。そして、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量の測定は、まず細胞を溶解した細胞溶解液とルシフェリンやATPやマグネシウムなどを含む基質溶液とを反応させ、ついで基質溶液と反応させた細胞溶解液からの発光量を光電子増倍管を用いたルミノメーターで定量する、という手順で行われていた。つまり、発光量は細胞を溶解した後に測定されていた。これにより、ある時点でのルシフェラーゼ遺伝子の発現量を細胞全体の平均値として測定することができた。ここで、ルシフェラーゼ遺伝子などの発光遺伝子をレポーター遺伝子として細胞に導入する方法には例えばリン酸カルシウム法やリポフェクチン法やエレクトロポーション法などがあり、各方法は目的や細胞の種類の違いに応じて使い分けられている。また、ルシフェラーゼ遺伝子がレポーター遺伝子として導入された細胞においてルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さをルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量を指標として調べる際、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の上流や下流に目的のDNA断片を繋ぐことで当該DNA断片がルシフェラーゼ遺伝子の転写に及ぼす影響を調べることができ、また、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の転写に影響を及ぼすと思われる転写因子などの遺伝子を発現ベクターに繋いでルシフェラーゼ遺伝子と共発現させることで当該遺伝子の遺伝子産物がルシフェラーゼ遺伝子の発現に及ぼす影響を調べることができる。
また、時間経過に沿って発光遺伝子の発現量を捉えるには生きた細胞からの発光量を経時的に測定する必要がある。そして、生きた細胞からの発光量の経時的測定は、まず細胞を培養するインキュベーターにルミノメーターの機能を付け、ついで培養している全細胞集団からの発光量をルミノメーターで一定時間ごとに定量する、という手順で行われていた。これにより、一定の周期性をもった発現リズムなどを測定することができ、よって、細胞全体における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができた。一方、発光遺伝子の発現が一過性である場合には、個々の細胞での発現量に大きなばらつきがある。例えば、HeLa細胞などのクローン化した培養細胞であっても、細胞膜表面のレセプターを介した薬剤の応答が個々の細胞でばらつくことがある。すなわち、細胞全体としての応答は検出されなくとも数個の細胞は応答している場合がある。このことから、発光遺伝子の発現が一過性である場合には、細胞全体からではなく個々の細胞から発光量を経時的に測定することが重要である。そして、顕微鏡を用いた生きた個々の細胞からの発光量の経時的測定は、各細胞の発光が極めて弱いので、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラとフォトンカウンティング装置とを用いたりして行われていた。これにより、生きた個々の細胞における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができた。
以上の説明において、例えば蛍光タンパク質をレポーター遺伝子として用いる遺伝子発現の解析方法および装置は特許文献1(特表2004−500576)に開示されている。また、ルミノメーターを用いて生物発光による遺伝子発現の解析方法およぼ装置は特許文献2(特開2005−118050)に開示されている。
特表2004−500576 特開2005−118050
しかしながら、微弱な発光の発光試料を撮像する場合、発光試料からの発光量が極めて少ないため、どうしても肉眼では見ることが出来ず、CCDのような蓄積型の撮像手段を用いて光量を蓄積しなければ画像生成することができない、という制約が有る。しかも、単一の細胞ないし組織を構成する細胞群において、細胞1個当りから発生する微弱光は、あまりに弱過ぎるので、鮮明な画像を撮るのに必要な露出時間が長くなる、という問題点があった。即ち、撮像の時間間隔は単位時間あたりの光量に制約されるため、微弱な発光の発光試料を撮像する場合、鮮明な画像を長い時間間隔で、例えば60分間隔で、経時的に撮ることができても、10〜30分程度の短い露光時間、ひいては1〜5分の露光でリアルタイムに撮像することはできなかった、という問題点があった。特に生細胞を長時間(例えば、50分以上)露光すると、培養容器等の支持体上でさえ細胞自身が動いて鮮明な画像を形成できない場合がある。一般に、画像を用いた解析を行なうためには、正確な輪郭を認識できなければならない。従って、画像が不鮮明なときは解析結果が不正確である可能性が有る。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、肉眼で見えないような微弱光を発生する微弱光試料でも、所望の細胞解析が可能な解析方法を提供することを目的とする。また、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる発光試料撮像方法を組合わせた解析方法を提供することも目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる請求項1に記載の微弱光解析方法は、特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域に対して発現可能に連結された第1の不完全なレポーター遺伝子と、ある物質を細胞へ接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された第2の不完全なレポーター遺伝子とを導入させた細胞を含む試料を、撮像手段の撮像視野内に配置する工程と、前記試料に前記物質を接触させて刺激を行なう工程と、刺激に行った細胞において発現した前記の第1のレポーター遺伝子および第2のレポーター遺伝子間の相互作用に基づく検出可能なシグナルを前記撮像手段により光学イメージングするとともに、前記レポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を定量的に決定する光学的処理工程とを備え、前記光学的処理工程が微弱光を画像解析可能な画像を生成する工程をさらに有することを特徴とする。
ここで、前記の第1のレポーター遺伝子のプロモーター領域は、神経細胞において特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域であるのが好ましい。また、前記のプロモーター領域は、最初期遺伝子のプロモーター領域であるのが好ましい。また、前記のレポーター遺伝子が発光タンパク質であることにより、一定量の基質溶液との混合状態において、遺伝子の発現量に対応する光量を長期間安定に発生するので好ましい。また、前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの強度を輝度値に変換することにより、正確な解析ができるので好ましい。また、前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの光学イメージング像と細胞の明視野像を重ね合わせすることにより、発光した細胞を正確に同定できる点で好ましい。
本発明において、発光試料を光学イメージングするには、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いることにより、発光だけの画像もイメージングできる点で好ましい。この光学条件によると、高価な極低温冷却型の撮像素子を使わずに撮像できる利点もある。
とくに、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.039以上である対物レンズを用いることにより、従来よりも高速にイメージングを実行できる点で好ましい。
さらに、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.071以上である場合に1分〜5分という短時間で対物レンズを用いることにより、リアルタイムなイメージングを実行できる点で好ましい。
また、本発明は発光イメージングを高い開口数(NA)の対物レンズを用いて、短かい時間間隔の画像解析を行なうことが可能になるので、あらゆる刺激応答性を見逃さない。これにより、創薬や診断において優れた方法を提供する。また、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムな解析が可能となる。
本発明の微弱光解析方法によれば、肉眼で見えないような微弱光を発生する微弱光試料でも、所望の細胞解析が可能な解析方法を提供できる。また、対物レンズが特定の条件を満たす場合に、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに解析できる解析方法を提供できる。
以下に、本発明にかかる微弱光解析方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
本発明にかかる方法を実施するための装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置は、撮像対象であるサンプル1を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するためのものであり、対物レンズ2と集光レンズ3とCCDカメラ4とモニタ5とで構成されている。なお、当該装置は図示の如くズームレンズ6をさらに備えてもよい。
サンプル1は、発光試料であり、例えば、発光タンパク質(例えば導入された遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子など)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞や、発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の臓器や、発光性の個体(動物など)などである。また、サンプル1は、具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞でもよい。対物レンズ2は、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上のものである。集光レンズ3は、対物レンズ2を介して到達したサンプル1からの発光を集める。CCDカメラ4は、0℃程度の冷却CCDカメラであり、対物レンズ2や集光レンズ3を介してサンプル1を撮像する。モニタ5はCCDカメラ4で撮像した画像を出力する。
そして、対物レンズ2や対物レンズ2の包装容器(パッケージ)には、(NA/β)2の値を表記する。従来の対物レンズにはレンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)および無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)が表記されていた。しかし、本発明の方法にかかる撮像手段の対物レンズ(対物レンズ2)には、レンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)、無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)の他に、さらに射出開口角(例えば、“(NA/β)2:0.05”)が表記されている。
以上、説明したように、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置において、対物レンズ2は、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である。これにより、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。また、対物レンズ2は、従来の対物レンズと比較して、開口数が大きく且つ倍率が小さいので、対物レンズ2を用いれば広範囲を分解能よく撮像することができる。これにより、例えば動きのある発光試料や移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料を撮像対象とすることができる。また、対物レンズ2は、当該対物レンズ2および/または当該対物レンズ2を包装する包装容器(パッケージ)に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値(例えば0.01以上)を表記した。これにより、例えば発光画像観察を行う者は、表記された(NA÷β)2の値を確認すれば、発光試料を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するのに適した対物レンズを容易に選択することができる。
従来、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイにおいては、細胞を溶解した後に発光量を測定するため、ある時点での発現量しか捉えることができず、しかも細胞全体の平均値としての計測になってしまう。また、培養しながらの計測においては、細胞コロニーの経時的な発現量の変化を捉えることはできるが、個々の細胞での発現量の変化を捉えることはできない。そして、個々の細胞の発光を顕微鏡で観察するためには、生きた細胞からの発光量が極めて弱いため、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラでフォトンカウンティングをしたりしなければならない。そのため、発光検出のカメラは高価で大掛かりなものになってしまう。しかし、レポーター遺伝子産物としてのルシフェラーゼ活性を示す個々の細胞の発光を顕微鏡によって観察する際、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度の冷却CCDカメラを用いて定量的な画像を取得することができる。すなわち、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、生きた状態で個々の細胞の発光を0℃程度の冷却CCDカメラによって観察することができるので、イメージ・インテンシファイアやフォトンカウンティングのための装置が不要である。つまり、低コストで発光試料の撮像を行うことができる。また、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、個々の生きた細胞の発光を、培養しながら経時的に観察することができ、さらにリアルタイムに観察することもできる。また、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、同じ細胞について、異なった条件での薬剤や刺激の応答をモニタすることができる。
ここで、本発明にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズの理解を容易にするために、従来の対物レンズおよびそれを用いた発光画像観察について簡単に説明する。
一般に、顕微鏡観察における空間分解能εは、下記数式1で表される。
ε=0.61×λ÷NA ・・・(数式1)
(数式1において、λは光の波長であり、NAは開口数である。)
また、観察範囲の直径dは、下記数式2で表される。
d=D÷M ・・・(数式2)
(数式2において、Dは視野数であり、Mは倍率である。なお、視野数は一般に22から26である。)
従来、顕微鏡用対物レンズの焦点距離は国際規格で45mmとされていた。そして、最近では、焦点距離を60mmとする対物レンズが使われはじめている。この焦点距離を前提にしてNAが大きい、つまり空間分解能が高いレンズを設計すると作動距離(WD)は一般には0.5mm程度であり、また長WD設計のものでも8mm程度であった。このような対物レンズを用いた場合、観察範囲は0.5mm径程度である。
しかし、ディッシュやガラズボトムディッシュに分散した細胞群や組織、個体の観察を行う場合、観察範囲が1から数cmに及ぶことがある。このような範囲を分解能よく観察したいときには、低倍率でありながらNAを大きい値で維持しなければならない。換言すると、NAはレンズ半径と焦点距離との比であるので、NAが大きいまま広い範囲を観察できる対物レンズは、低倍である必要がある。そして、結果的に、このような対物レンズは大口径となる。なお、大口径の対物レンズの製作では、一般的に光学材料の物性の均一性やコーティングの均一性において、また、レンズ形状においても高い精度が求められる。
また、顕微鏡観察の場合、光学系の透過率や対物レンズの開口数やCCDカメラのチップ面での投影倍率やCCDカメラの性能などが像の明るさに大きく影響してくる。そして、像の明るさは、開口数(NA)を投影倍率(β)で割った値の2乗、すなわち(NA/β)2で評価される。ここで、対物レンズには、一般に、入射開口角NAと射出開口角NA'との間に下記数式3の関係があり、NA'2が観察者の目やCCDカメラなどに届く明るさを示す値である。
NA'=NA÷β ・・・(数式3)
(数式3において、NAは入射開口角(開口数)であり、NA'は射出開口角であり、βは投影倍率である。)
一般の対物レンズにおいて、NA'は高々0.04であり、NA'2は0.0016である。また、現在市販されている一般的な顕微鏡の対物レンズにおける像の明るさ(NA/β)2の値を調査したところ、0.0005から0.002の範囲であった。
ところが、上記のような現在市販されている対物レンズを装着した顕微鏡を用いて、例えば細胞内でルシフェラーゼ遺伝子を発現させ発光している細胞を観察しても、当該細胞からの発光を目視で観察することができないし、さらに0℃程度に冷却したCCDカメラを用いて撮像した発光画像を観察しても細胞からの発光を確認することができない。なお、発光試料を観察する場合には、蛍光観察に必要な励起光の投影は不要である。例えば、落射蛍光観察では、対物レンズは、励起光投影レンズと蛍光を集光して画像を形成するレンズとの両方の機能を満たしている。
そこで、光量の少ない発光を画像で観察するためには、大きなNAと小さいβの特性を有する対物レンズが必要である。そして、結果的に、当該対物レンズは大口径となる傾向がある。なお、このような対物レンズでは、励起光投影の機能を考慮することなく機能を単純化して設計、製造しやすくすることが求められる。
また、発光や蛍光観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるためにタイムラプスや動画撮像が求められている。最近では、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察が行われている。これらの撮像では単位時間の撮像フレーム数が多いほど画像1フレームあたりの露出時間は短くなる。このような観察においては、明るい光学系、特に、明るい対物レンズが必要となる。しかし、蛍光に比べて発光タンパク質の光量は少ないので、1フレームの撮像に、例えば20分の露出時間を要することが多い。このような露出時間でタイムラプス観察を行うには動的な変化が非常に遅い試料に限られる。例えば、約1時間に一度***する細胞では、その周期内の変化を観察することはできない。従って、シグナル・ノイズ比を高く維持しながら少ない光量を効率よく画像化するために、光学系の明るさを向上することは重要である。
以上の経緯を踏まえて製作された本発明の対物レンズは、上記の一般に市販されている対物レンズに比べて、大きなNAと小さいβの特性を有している。よって、本発明の対物レンズのNA'2は大きな値である。つまり、本発明の対物レンズは明るい対物レンズであると言うことができる。これにより、本発明の対物レンズのような明るい対物レンズを用いれば、光量の少ない発光試料からの発光を画像で観察することができる。また、より暗い像を観察するために、開口数の大きい本発明の対物レンズを実体顕微鏡に装着することで、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度に冷却したCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができる。また、液体窒素冷却を用いるCCDカメラで感度を上げる方法があるが、この場合CCDカメラが非常に高価に、大規模になる。しかし、本発明の対物レンズを用いれば、ペルチェ冷却によるCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができる。また、本発明の対物レンズは、数から10cm程度の大口径である。これにより、従来では撮像対象となり得なかった移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料などを撮像対象とすることができる。
本発明の方法を実施するための測定原理、光学系の構成その他については、図1により既に説明したが、本出願人による出願(特願2005−267531号および特願2005−44737号)を参照してもよい。前記出願にも記載されるように、本出願人は、光学的実験を通じ、対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上の光学系で撮像することによって、単一の細胞から発生する発光だけで画像化できる証明データを取得した。さらに、本出願人は、検討を進め、同一シャーレ内で培養された複数の細胞において、遺伝子発現の変動パターンが異なることも発見した。驚くべきことに、上記の撮像条件は、本発明において実施される応用例で取り扱われる微弱な発光画像に対しても適用でき、短い時間(例えば1分〜20分)で生物発光のような微弱な発光成分による細胞画像を撮像できる。さらに、撮像装置の対物レンズを開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できることも分かった。
上述した図1に示すように、本発明にかかる撮像方法を実施するための装置は、撮像対象であるサンプル1を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するためのものであり、従来採用されたことの無い高開口数(NA)の対物レンズ2とCCDカメラ4とモニタ5とで基本的に構成されている。これらの基本構成を備える装置を、本発明では発光顕微鏡と称することとする。発光顕微鏡は、暗視野での撮像を行うために、適宜、遮光用のフタまたはハウジングによって収容されているのが好ましい。また、適当な培養条件を維持できる培養装置を発光顕微鏡と一体に組合せることで、撮像を長期間に亘り、自動的に実行できる。なお、撮像を行う機構を有する構造であれば、顕微鏡の形態である必要はなく、マイクロプレートリーダーのような測定機器の形態であってもよい。
次に、本発明で使用する発光顕微鏡の構成、形態とその作用を説明する。 発光顕微鏡の基本的な特徴は、顕微鏡視野中の細胞に発現させた発光タンパク質から発する光を、対物レンズ(NA0.75)および光学フィルタを通してデジタルカメラで画像化することで、短時間でモニタリング出来ることである。遺伝子の発現パターンを発光画像としてリアルタイムに取得できるため、細胞を用いた遺伝子発現アッセイ系の幅広い研究対象に応用できると期待されている技術である。基本的な測定系の構成は、培養装置部に隣接した光学系を試料観察部とし、そこでの発光を対物レンズ(NA0.75、好ましくはNA0.75以上)および光学フィルタを通してデジタルカメラで捉えた後、デジタル画像取り込み用のパソコンでデータの記録と解析を行うようになっている。培養装置部はヒートプレートおよびチャンバーにより保温、保湿することができる。培養装置部内の温度は25−37℃に設定して試料を観察する。好ましくは37℃に設定して試料を観察する。湿度は0〜100%に設定して観察する。好ましくは60〜100%に設定する。 さらに、発光の光学イメージングを行なったときと同視野において明視野による画像を取得し、画像解析ソフト等で発光画像と明視野画像を重ね合わせることによって、発光している細胞を同定することができる。
本発明の方法および装置は、以下に説明するような態様への応用が有用である。
技術分野
この態様は、本発明において、特定細胞において遺伝子発現を解析する方法に関する。
背景となる技術
従来のフ゜ロモーターアッセイ法では、個々の細胞によって外来の刺激に対する遺伝子発現量の変化が異なっていることを見ることが出来なかった。しかし、比較的均一な性質をもつ株化細胞を用いても刺激に対する個々の細胞の反応は異なっていることが知られているので、不均一な細胞集団では刺激に対する反応はより複雑であることが予想される。さらに、従来は均一な細胞が集まっている実験系を用いていたため、個々の細胞を同定する必要がなく、全細胞の平均値を観察していた。しかし、初代培養やスライス培養など不均一な細胞集団を用いた実験系では、従来のフ゜ロモーターアッセイ法を用いると対象とする細胞からのシク゛ナルが周辺の細胞のシク゛ナルと重なって正確に細胞を同定することができない。さらに、細胞外からの刺激により発現が誘導される最初期遺伝子(c-fosなど)は多くの細胞種において発現することが知られており、最初期遺伝子の発現量変化を観察することで薬物などに対する細胞の反応性をリアルタイムで観察することが可能である。しかし、複数種の細胞が混在する中では、発現の見られた細胞を同定することが困難である。そこで、特定の細胞においてのみ最初期遺伝子の発現量変化がリアルタイムで見られる実験系を構築する必要がある。
上記背景から生じる課題
従来の方法では、複数の細胞種からなる細胞群の中で特定の細胞においてのみ遺伝子発現を観察することについて考慮されておらず、ルシフェラーセ゛遺伝子が生ずる検出可能なシク゛ナルを特定の細胞からのみ光学イメーシ゛ンク゛するという点について対応することが出来なかった。本発明はこの点に着目し、特定の細胞においてのみルシフェラーセ゛遺伝子が生ずるシク゛ナルを発するようにしてそのシク゛ナルを発光顕微鏡で光学イメーシ゛ンク゛を行なう、特定細胞において遺伝子発現を解析する方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決する手段と作用効果について
MyoD遺伝子またはId遺伝子に融合したスフ゜リットルシフェラーセ゛の片方は細胞特異的フ゜ロモーター領域を用いて特定細胞のみに発現させ、さらにもう片方は発現量解析を行ないたい遺伝子(最初期遺伝子など)のフ゜ロモーター領域を用いて細胞に発現させる。この細胞試料を発光顕微鏡で観察することにより、両方の融合遺伝子が発現してルシフェラーセ゛の酵素活性が観察される特定の細胞を光学イメーシ゛ンク゛することが出来る。
本態様においては、特許(U.S. Pat. No.5,670,356)および非特許論文(PNAS (2002) vol.99 No.24 pp3105-3110)に記載れるような、哺乳類ツーハイフ゛リット゛システムを応用した細胞内でのタンハ゜ク間の相互作用の検出法およびフ゜ロモーターアッセイ法を参照できる。これらの方法は、相互作用を引き起こすことが知られている遺伝子(MyoD遺伝子およびId遺伝子)と酵母のGAL4 DNA結合ト゛メインまたはヘルヘ゜スシンフ゜レックスウイルスのVP16活性化ト゛メインとの融合タンハ゜ク発現ヘ゛クター、およびGAL4結合領域を5つ含んだルシフェラーセ゛発現ヘ゛クターを細胞に導入する工程を含んでいる。ここにおいて、目的遺伝子同士(MyoD遺伝子とId遺伝子)が相互作用を起こすとルシフェラーセ゛の発現量が増加するという原理を利用してタンハ゜ク間の相互作用の検出およびフ゜ロモーターアッセイを行なうようにすることができる。
また、非特許論文(PNAS (2002) vol.99 No.24 pp15608-15613)において、スフ゜リットルシフェラーセ゛を用いた細胞内でのタンハ゜ク間の相互作用の検出法およびフ゜ロモーターアッセイ法を参照することもできる。この方法は、ルシフェラーセ゛遺伝子をN末側とC末側に分けて、それぞれ相互作用を引き起こすことが知られている遺伝子(MyoD遺伝子およびId遺伝子)との融合タンハ゜クをつくり細胞に発現させる工程を含んでいる。ここにおいて、ルシフェラーセ゛はN末側もしくはC末側のみの状態では酵素活性を持たないため発光は検出されないが、融合した遺伝子同士(MyoD遺伝子とId遺伝子)の結合があるとルシフェラーセ゛のN末側とC末側も結合して酵素活性をもつようになるという原理を利用してタンハ゜ク間の相互作用の検出およびフ゜ロモーターアッセイを行なうようにすることができる。以下の実施形態は、上記の方法を参照しながらも、本態様に適用可能なように適切に組み立てた例であり、本発明を限定するものではない。
応用例に関しての実施の形態
A.語句の定義
<特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域>
本発明における特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域としては、例えば神経細胞特異的な遺伝子、あるいはグリア細胞特異的な遺伝子のプロモーターが挙げられる。
本発明で用いられる神経細胞特異的な遺伝子のプロモーターとしては、例えば、NSE(neuron-specific enolase)遺伝子のプロモーター領域が挙げられる。また、本発明で用いられるグリア細胞特異的な遺伝子のプロモーターとしては、例えば、GFAP(glial fibrillary acidic protein)遺伝子ののプロモーター領域が挙げられるまた、本発明で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。
ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、該遺伝子の転写部位に対して上流500から4000塩基の領域の一部または全部を用いることができる。
<刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域>
本発明における刺激により発現が誘導される遺伝子プロモーター領域としては、最初期遺伝子のプロモーターが挙げられる。
本発明で用いられる最初期遺伝子のプロモーターとしては、例えば、c-fosプロモーター領域が挙げられる。また、本発明で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。
ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、該遺伝子の転写部位に対して上流500から2000塩基の領域の一部または全部を用いることができる。
<レポーター遺伝子>
本発明におけるレポーター遺伝子は、検出可能な蛍光を発するレポータータンパク質をコードする遺伝子を意味する。例えば、蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼを挙げることができる。さらには、例えば、βガラクトシダーゼをコードする遺伝子、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子を挙げることができる。
<物質>
本発明に使用される物質とは、自然界に存在する天然の物質あるいは人工的に調製される任意の物質を意味する。
具体的には、例えば、化学的に合成された任意の化合物を挙げることができる。該化合物の種類および分子量などについては特に限定されない。
該物質がタンパク質、またはペプチドである場合には、生体組織や細胞から単離されるもの、および遺伝子組換えや化学的合成により調製されるものも含まれる。さらにまた、それらの化学修飾体も含まれる。
<光学イメージング>
本発明における光学イメージングとは、レポーター遺伝子を導入した細胞において、レポーター遺伝子により発せられる検出可能なシグナルの存在、不在または強度をモニタリング、記録および分析するイメージング方法を意味する。光学イメージングを達成するためには、レポーター遺伝子により発せられるシグナルの強度が、シグナルを細胞の外部から分析することができるように、十分に高くなくてはならない。光学イメージングは自動化に容易に適用可能であることから、多数の遺伝子発現を同時にモニタリングするのに用いることができる。なお、イメージングした試料画像の任意の位置について、時系列に2次元または3次元に画像情報を処理する技術は、本出願人による特願2004−172156、特願2004−178254等を参照してもよい。蛍光観察と発光観察における時系列な画像取得の違いは、発光観察が励起光による光学的走査(レーザスキャン)を必要としない点で余計な光による影響が無い点にある。本発明で行うイメージング技術によれば、リアルタイムに発光画像を撮像できる。
B.遺伝子発現の光学イメージング方法
<遺伝子発現ベクターの作製>
動物細胞を用いる場合、発現ベクターは少なくともプロモーター、開始コドン、目的のタンパク質をコードするDNA、終止コドンを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、該タンパク質をコードする遺伝子の5'側および3'側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリA付加シグナル、選択マーカー領域または複製可能単位などを含んでいてもよい。
<細胞への遺伝子導入方法>
遺伝子を細胞へ導入する方法としては、塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。本発明で使用される遺伝子導入した細胞には一過性発現細胞あるいは安定発現細胞のいずれもが含まれる。
<刺激による遺伝子発現の光学イメージング>
本発明は例えば、下記のように実施することが出来る。
N末側ルシフェラーセ゛(NLuc)遺伝子(アミノ酸番号1−416)とマウスのId遺伝子(アミノ酸番号29−148)との融合遺伝子(NLuc-Id遺伝子)、およびC末側ルシフェラーセ゛(CLuc)遺伝子(アミノ酸番号398−550)とマウスのMyoD遺伝子(アミノ酸番号1−318)との融合遺伝子(MyoD-CLuc遺伝子)を作製する。図2に示すように、細胞内で発現したNLuc-Id遺伝子中のId遺伝子部位とMyoD-CLuc遺伝子中のMyoD遺伝子部位とが相互作用して結合すると、NLuc遺伝子とCLuc遺伝子とが結合し検出可能なシグナルを発する。
さらに、物質を細胞に接触させる刺激により発現が誘導される最初期遺伝子のフ゜ロモーター領域(例えば、c-fos遺伝子のフ゜ロモーター領域)に発現可能に連結されたNLuc-Id遺伝子とともに細胞特異的な発現をする遺伝子のフ゜ロモーター領域(例えば、神経細胞を観察したい場合には神経細胞特異的に発現するNSE(neuron-specific enolase)遺伝子のフ゜ロモーター領域を用い、ク゛リア細胞を観察したい場合にはク゛リア細胞特異的に発現するGFAP(glial fibrillary acidic protein)遺伝子のフ゜ロモーター領域を用いる)に発現可能に連結されたMyoD-CLuc遺伝子を従来の遺伝子導入方法を用いて混合培養した複数の細胞種からなる細胞群(例えば、神経細胞とク゛リア細胞との混合培養)に導入する。または、最初期遺伝子のフ゜ロモーター領域(例えば、c-fos遺伝子のフ゜ロモーター領域)に発現可能に連結されたMyoD-CLuc遺伝子とともに細胞特異的な発現をする遺伝子のフ゜ロモーター領域(例えば、神経細胞を観察したい場合には神経細胞特異的に発現するNSE(neuron-specific enolase)遺伝子のフ゜ロモーター領域を用い、ク゛リア細胞を観察したい場合にはク゛リア細胞特異的に発現するGFAP(glial fibrillary acidic protein)遺伝子のフ゜ロモーター領域を用いる)に発現可能に連結されたNLuc-Id遺伝子を従来の遺伝子導入方法を用いて混合培養した複数の細胞種からなる細胞群(例えば神経細胞とク゛リア細胞との混合培養)に導入する。
遺伝子導入された細胞の定数(例えば、1〜1x109個、好ましくは1x103〜1x106個)は所望の細胞培養が可能な器具(例えば、シャーレ、多数のウェルを有するマルチプレートなど)を用いて所望の栄養培地(例えば、D-MEM培地など)中で培養する。この定数の細胞からなる試料を、あらかじめ細胞にとって最適な温度(例えば、25〜37℃、好ましくは35〜37℃)に保温し、試料の乾燥を防ぐため水を注入して保湿した発光顕微鏡の培養装置部に設置し、該発光顕微鏡の試料観察部にある対物レンズを通してデジタルカメラで発光イメージを記録する。前記の試料に、細胞に接触させて刺激を行なうための物質(例えば、化合物)を所望の濃度(例えば、1pM〜1M、好ましくは100nM〜1mM)で加えて、所望の時間間隔(例えば5分間〜5時間、好ましくは10分間〜1時間)で発光イメージを記録する。図3に示すように、NLuc-Id遺伝子(もしくはMyoD-CLuc遺伝子)が発現している特定の細胞Bにおいて、物質を細胞に接触させる刺激によりMyoD-CLuc遺伝子(もしくはNLuc-Id遺伝子)の発現が誘導されたときにルシフェラーセ゛の酵素活性が増強し検出可能なシク゛ナルを発するようになる。一方、該物質を細胞に接触させる刺激によりMyoD-CLuc遺伝子(もしくはNLuc-Id遺伝子)のみの発現が誘導された細胞Aでは検出可能なシク゛ナルを発しない。記録した画像は市販の画像解析ソフト(例えば、MetaMorph;ユニバーサルイメージング社製など)を用いて画像内の所望の領域における輝度値を取得する。さらに、発光イメージと同視野において明視野イメージを記録し、前記の画像解析ソフトを用いて発光イメージと明視野イメージを重ね合わせて、発光している細胞を同定する。
以上の実施形態に記載された説明によれば、本発明は次に示すような各付記項に表現される発明であると理解できる。
付記項1
特定細胞において遺伝子発現を解析する方法であって、
特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された不完全なレポーター遺伝子を細胞へ導入する工程と、
ある物質を細胞へ接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された不完全なレポーター遺伝子を細胞へ導入する工程と、
細胞を生存し続けられる状態で維持する工程と、
細胞に前記の物質を接触させて刺激を行なう工程と、
刺激を行なった各細胞において発現した前記の不完全なレポーター遺伝子同士が結合することによって生ずる検出可能なシグナルを光学イメージングする工程と、
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を高いS/N比で、定量的に決定する工程と、
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルが検出された細胞を同定する工程
を含む、特定細胞において遺伝子発現を解析する方法。
付記項2
前記の特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域が神経細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域である付記項1に記載の方法。
付記項3
前記の神経細胞特異的に発現する遺伝子がNSE(neuron-specific enolase)遺伝子である付記項2に記載の方法。
付記項4
前記の特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域がグリア細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域である付記項1に記載の方法。
付記項5
前記のグリア細胞特異的に発現する遺伝子がGFAP(glial fibrillary acidic protein)遺伝子である付記項4に記載の方法。
付記項6
前記の刺激により発現が誘導されるプロモーター領域が最初期遺伝子のプロモーター領域である付記項1に記載の方法。
付記項7
前記の最初期遺伝子がヒト由来のc-fos遺伝子である付記項6に記載の方法。
付記項8
前記の不完全なレポーター遺伝子が発光タンパク質の遺伝子配列の一部を含む付記項1に記載の方法。
付記項9
前記の発光タンパク質が蛍由来のルシフェラーゼである付記項8に記載の方法。
付記項10
前記の発光タンパク質がウミシイタケ由来のルシフェラーゼである付記項8に記載の方法。
付記項11
前記のプロモーター領域に発現可能に連結された前記の不完全なレポーター遺伝子を細胞へ導入する付記項1に記載の方法
付記項12

前記の細胞へ接触させる物質がGタンパク質共役型受容体のリガンドである付記項1に記載の方法
付記項13
前記の細胞へ接触させる物質が血清である付記項1に記載の方法。
付記項14
前記の不完全なレポーター遺伝子同士が結合して生ずるシグナルを光学イメージングすることを特徴とする付記項1に記載の方法。
付記項15
前記の光学イメージングにおいて発光顕微鏡で撮像することを特徴とする付記項14に記載の方法。
付記項16
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの強度を輝度値に変換することを特徴とする付記項1に記載の方法。
付記項17
前記の細胞において発光顕微鏡で明視野像を撮像することを特徴とする付記項1に記載の方法。
付記項18
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの光学イメージング像と細胞の明視野像を重ね合わせてシグナルを生じている細胞を同定することを特徴とする付記項1に記載の方法。
本発明の方法および装置は、以下に説明するような別の態様への応用が有用である。
技術分野
この態様は、本発明において、リポーター遺伝子の発するシグナルを光学イメージングすることにより、単一細胞での遺伝子の発現量変化を解析する方法に関する。
背景となる技術
従来の光学イメージングによる遺伝子発現の解析方法としては、蛍光タンパク質をレポーター遺伝子として用いている(特表2004−500576)に示されているように、発現量を観察しようとする遺伝子のプロモーター領域の下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)、あるいは青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)の遺伝子を連結させた遺伝子発現ベクターを作製して細胞に導入し、それぞれの蛍光タンパク質に合った励起光を照射して得られる蛍光量を測定する。蛍光量は遺伝子の発現量に比例するため、目的の遺伝子の発現量を観察することが可能である。一方、生物発光を用いた遺伝子発現解析法として、特開2005−118050、特開2000−354500、特許第3643288に示されているように、Gタンパク質を介する刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結させた遺伝子発現ベクターを作製して細胞に導入し、Gタンパク質を介する刺激を行なった後の細胞から発せられる光をルミノメーターにより検出する。発光量は遺伝子の発現量に比例するため、刺激により発現が誘導される遺伝子の発現量を観察することが可能である。
上記背景から生じる課題
蛍光タンパク質を用いた従来技術では、励起光照射による細胞への光毒性について考慮されておらず、細胞を生存し続けられる状態で維持するという点について対応することが出来ない。よって、この点に着目し、励起光を照射する必要が無いため細胞に傷害が少ない、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することが課題となる。また、蛍光タンパク質を用いた従来技術では、励起光自身や細胞内物質の自家蛍光によるバックグラウンドについて考慮されておらず、レポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を高いS/N比で、定量的に決定するという点について対応することが出来ない。よって、励起光が必要なく比較的バックグランドが少ない発光タンパクを利用する、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することも課題となる。さらに、発光タンパク質を用いた従来技術では、レポーター遺伝子が生ずるシグナルを単一細胞において観察することについて考慮されておらず、レポーター遺伝子が生ずる検出可能なシグナルを光学イメージングするという点について対応することが出来ない。よって、この点に着目し、レポーター遺伝子が生ずるシグナルを発している細胞が同定出来るように発光顕微鏡で撮像する、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することも課題となる。
上記課題を解決する手段と作用効果について
上記課題を解決するという目的を達成するために、後述するように、蛍(ほたる)またはウミシイタケなどのルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として用いることでシグナルの発生に励起光を照射する必要が無く、細胞への傷害を低減させ、なお且つ細胞内物質の自家蛍光などによるバックグランドを低減させた状態で光学イメージング出来ることを見出した。また、ルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として用いて細胞での遺伝子発現量の解析を行なう方法において、発光顕微鏡を用いて観察を行なった場合に、リガンド添加によりレポーター遺伝子の発現が単一細胞で光学イメージング出来ることを見出した。また、レポーター遺伝子の発現を制御するプロモーターとしてヒトc-fos遺伝子のプロモーター領域を用いることにより、ATPや血清をリガンドとして添加するとレポーター遺伝子産物の発現増加を単一細胞で光学イメージング出来ることを見出した。 さらに、発光イメージと同視野において細胞の明視野像を撮像して画像同士を重ね合わせ、発光イメージが得られた細胞を同定することで、単一細胞での遺伝子発現量の経時的変化を得ることが可能であることを見出し、発明を完成できた。
A.語句の定義
<刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域>
本発明におけるプロモーター領域としては、最初期遺伝子のプロモーターが挙げられる。本発明で用いられる最初期遺伝子のプロモーターとしては、例えば、c-fosプロモーター領域が挙げられる。また、本発明で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、該遺伝子の転写部位に対して上流500から2000塩基の領域の一部または全部を用いることができる。
<レポーター遺伝子>
本発明におけるレポーター遺伝子は、検出可能な蛍光を発するレポータータンパク質をコードする遺伝子を意味する。例えば、蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼを挙げることができる。さらには、例えば、βガラクトシダーゼをコードする遺伝子、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子を挙げることができる。
<物質>
下記に説明する発明において使用される「物質」とは、自然界に存在する天然の物質あるいは人工的に調製される任意の物質を意味する。具体的には、例えば、化学的に合成された任意の化合物を挙げることができる。該化合物の種類および分子量などについては特に限定されない。該物質がタンパク質、またはペプチドである場合には、生体組織や細胞から単離されるもの、および遺伝子組換えや化学的合成により調製されるものも含まれる。さらにまた、それらの化学修飾体も含まれる。
<リガンド>
本発明に使用されるGタンパク質共役型受容体のリガンドとは、Gタンパク質共役型受容体と相互作用する任意のアゴニストまたは該受容体の任意のアンタゴニストを意味する。
<光学イメージング>
本発明における光学イメージングとは、レポーター遺伝子を導入した細胞において、レポーター遺伝子により発せられる検出可能なシグナルの存在、不在または強度をモニタリング、記録および分析するイメージング方法を意味する。光学イメージングを達成するためには、レポーター遺伝子により発せられるシグナルの強度が、シグナルを細胞の外部から分析することができるように、十分に高くなくてはならない。光学イメージングは自動化に容易に適用可能であることから、多数の遺伝子発現を同時にモニタリングするのに用いることができる。
B.遺伝子発現の光学イメージング方法
<遺伝子発現ベクターの作製>
動物細胞を用いる場合、発現ベクターは少なくともプロモーター、開始コドン、目的のタンパク質をコードするDNA、終止コドンを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、該タンパク質をコードする遺伝子の5'側および3'側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリA付加シグナル、選択マーカー領域または複製可能単位などを含んでいてもよい。
<細胞への遺伝子導入方法>
遺伝子を細胞へ導入する方法としては、塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。本発明で使用される遺伝子導入した細胞には一過性発現細胞あるいは安定発現細胞のいずれもが含まれる。
<刺激による遺伝子発現の光学イメージング>
本発明は例えば、下記のように実施することが出来る。
細胞の定数(例えば、該物質を細胞に接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域(好ましくは、c-fos遺伝子のプロモーター領域)に発現可能に連結されたレポーター遺伝子(好ましくは蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼ)を前記の遺伝子導入方法を用いて細胞に導入する。得られた前記の遺伝子導入された細胞の定数(例えば、1〜1x109個、好ましくは1x103〜1x106個)を所望の細胞培養が可能な器具(例えば、シャーレ、多数のウェルを有するマルチプレートなど)を用いて所望の栄養培地(例えば、D-MEM培地など)中で培養する。この定数の細胞からなる試料を、あらかじめ細胞にとって最適な温度(例えば、25〜37℃、好ましくは35〜37℃)に保温し、試料の乾燥を防ぐため水を注入して保湿した発光顕微鏡の培養装置部に設置し、該発光顕微鏡の試料観察部にある対物レンズを通してデジタルカメラで発光イメージを記録する。前記の試料に、細胞に接触させて刺激を行なうための物質(例えば、化合物)を所望の濃度(例えば、1pM〜1M、好ましくは100nM〜1mM)で加えて、所望の時間間隔(例えば5分間〜5時間、好ましくは10分間〜1時間)で発光イメージを記録する。記録した画像を市販の画像解析ソフト(例えば、MetaMorph;ユニバーサルイメージング社製など)を用いて画像内の所望の領域における輝度値を取得する。さらに、発光イメージと同視野において明視野イメージを記録し、前記の画像解析ソフトを用いて発光イメージと明視野イメージを重ね合わせて、発光している細胞を同定する。
実施例1
<c-fosプロモーター−ルシフェラーゼレポーター遺伝子の構築>
c-fosプロモーター−ルシフェラーゼレポーター遺伝子を以下のようにして構築した。ヒトゲノミックDNAを鋳型として、プライマーfos pro Fw(5'-AGCTCGAGAGCAGTTCCCGTCAATCCCT-3')およびプライマーfos pro Rv( 5'-CAAAGCTTTGCAGAAGTCCTAGAACAA-3')を用いてPCRを行ない、c-fos遺伝子のプロモーター領域(転写開始部位に対して-363〜+1,067)を増幅した。増幅されたDNA断片を制限酵素XhoIおよびHindIIIにて消化した。
発現ベクターpGL3-Basicベクター(Promega社)を制限酵素XhoIおよびHindIIIにて消化し、上記のDNA断片をpGL3-Basicベクターにクローン化した。(以下、レポーター遺伝子発現ベクター(pGL3−fos)と記載することもある。)
実施例2
<ATPをリガンドとして細胞を刺激したときのレポーター遺伝子の発現量変化>
ATPを細胞刺激のリガンドとして用いた時のレポーター遺伝子の発現量変化測定の例を以下に示す。
HeLa細胞をガラスボトムディッシュ(径35mm;IWAKI製)に1x105細胞/ディッシュとなるようにまいた。増殖培地には、10%の牛胎児血清を含むD-MEMを用いた。該細胞を37℃で1日培養後に、リポフェクトアミン2000試薬(インビトロゲン製)を用いて、メーカーの説明書に従いレポーター遺伝子発現ベクターを細胞へ導入した。約2時間後に遺伝子導入液を捨て、増殖培地を加えて37℃で16時間以上培養した。増殖培地を無血清培地(牛胎児血清を含まないD-MEM)に交換して37℃で16時間以上培養した。該細胞を培養している培養器を、あらかじめ35〜37℃に設定しておいた発光顕微鏡の培養装置部内に設置し、試料観察部を操作して該細胞にフォーカスを合わせた。ルシフェリンを終濃度1mMとなるように加えて1時間以上静置した後、ATPを終濃度100μMとなるように加えた。デジタルカメラ(DP30;オリンパス製)の操作用ソフト(DPコントローラ;オリンパス製)を用いて該細胞の明視野画像を取り込み、記録を行なった。発光イメージはデジタルカメラに1分間露光したものを5回加算することで得た。発光イメージは10分おきに取得したものをコンピューターで取り込み、記録を行なった。画像解析ソフト(Metamorph;ユニバーサルイメージング製)を用いて発光イメージの輝度値を求め、また発光イメージと明視野画像を重ね合わせて発光している細胞を同定した。
図4に、この実施例2で同定を行なった際の重ね合わせ画像を示す。ここにおいて、細胞の明視野画像を図4−1、同視野で取得した発光イメージを図4−2、明視野画像と発光イメージを画像解析ソフト上で重ね合わせた画像を図4−3に示した。この重ね合わせ画像により、発光している細胞の位置や形態が確認出来た。
図5に示すように、レポーター遺伝子産物であるルシフェラーゼの活性はATPを接触させる刺激に応じて一過性に上昇する様子が単一細胞で観察出来た。しかし、刺激を行なってからルシフェラーゼの活性がピークに達するまでに要する時間や、ピーク時の活性量は細胞間でばらついていることが明らかに出来た。
実施例3
<血清により細胞を刺激したときのレポーター遺伝子の発現量変化>
牛胎児血清を細胞刺激のリガンドとして用いた時のレポーター遺伝子の発現量変化測定の例を以下に示す。使用したリガンドが異なる以外、他の条件は実施例2と同様に行なった。牛胎児血清刺激は終濃度10%で行なった。
図6に、この実施例3で同定を行なった際の重ね合わせ画像を示す。ここにおいて、細胞の明視野画像を図6−1、同視野で取得した発光イメージを図6−2、明視野画像と発光イメージを画像解析ソフト上で重ね合わせた画像を図6−3に示した。発光している細胞の位置や形態が確認出来た。
図7に示すように、レポーター遺伝子産物であるルシフェラーゼの活性は牛胎児血清を接触させる刺激に応じて一過性に上昇する様子が単一細胞において観察できた。しかし、刺激を行なってからルシフェラーゼの活性がピークに達するまでに要する時間や、ピーク時の活性量は、実施例2のATPの刺激と同様、細胞間でばらついていることが明らかに出来た。
以上の実施例1〜3に記載された説明によれば、本発明は次に示すような各付記項に表現される発明であると理解できる。
付記項19
刺激に対する遺伝子の発現量変化を単一細胞において解析する方法であって、
ある物質を細胞へ接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を細胞へ導入する工程と、
細胞を生存し続けられる状態で維持する工程と、
細胞に前記の物質を接触させて刺激を行なう工程と、
刺激を行なった各細胞において発現した前記のレポーター遺伝子が生ずる検出可能なシグナルを光学イメージングする工程と、
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を高いS/N比で、定量的に決定する工程と、
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルが検出された細胞を同定する工程
を含む、遺伝子発現量変化を単一細胞において解析する方法。
付記項20
前記のプロモーター領域が最初期遺伝子のプロモーター領域である付記項19に記載の方法。
付記項21
前記の最初期遺伝子がヒト由来のc-fos遺伝子である付記項20に記載の方法。
付記項22
前記のレポーター遺伝子が発光タンパク質である付記項19に記載の方法。
付記項23
前記の発光タンパク質が蛍由来のルシフェラーゼである付記項22に記載の方法。
付記項24
前記の発光タンパク質がウミシイタケ由来のルシフェラーゼである付記項22に記載の方法。
付記項25
前記のプロモーター領域に発現可能に連結された前記のレポーター遺伝子を細胞へ導入する付記項19に記載の方法
付記項26
前記の細胞へ接触させる物質がGタンパク質共役型受容体のリガンドである付記項19に記載の方法
付記項27
前記のGタンパク質共役型受容体のリガンドが核酸である付記項26に記載の方法。
付記項28
前記の核酸がアデノシン三リン酸である付記項26に記載の方法。
付記項29
前記の細胞へ接触させる物質が血清である付記項19に記載の方法。
付記項30
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルを光学イメージングすることを特徴とする付記項19に記載の方法。
付記項31
前記の光学イメージングにおいて発光顕微鏡で撮像することを特徴とする付記項30に記載の方法。
付記項32
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの強度を輝度値に変換することを特徴とする付記項19に記載の方法。
付記項33
前記の細胞において発光顕微鏡で明視野像を撮像することを特徴とする付記項19に記載の方法。
付記項34
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの光学イメージング像と細胞の明視野像を重ね合わせてシグナルを生じている細胞を同定することを特徴とする付記項19に記載の方法。
本発明の解析方法を実施するための装置の概要を示す図である。 本発明の態様において、細胞内で発現したNLuc-Id遺伝子中のId遺伝子部位とMyoD-CLuc遺伝子中のMyoD遺伝子部位との相互作用を示す図である。 NLuc-Id遺伝子(もしくはMyoD-CLuc遺伝子)が発現している細胞Bにおける刺激物質を用いた誘導を示す図である。 別の態様における実施例2で同定を行なった際の明視野画像を示す図である。 実施例2で同定を行なった際の発光イメージを示す図である。 図2−1および図2−2の各画像を重ね合わせた画像を示す図である。 ATPによる刺激後の経過時間ごとにルシフェラーゼ活性を解析した結果を示す図である。 実施例3で同定を行なった際の明視野画像を示す図である。 実施例3で同定を行なった際の発光イメージを示す図である。 図4−1および図4−2の各画像を重ね合わせた画像を示す図である。 血清による刺激後の経過時間ごとにルシフェラーゼ活性を解析した結果を示す図である。
符号の説明
1:サンプル
2:対物レンズ
3:集光レンズ
4:CCDカメラ
5:モニタ
6:ズームレンズ


Claims (10)

  1. 特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域に対して発現可能に連結された第1の不完全なレポーター遺伝子と、ある物質を細胞へ接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された第2の不完全なレポーター遺伝子とを導入させた細胞を含む試料を、撮像手段の撮像視野内に配置する工程と、
    前記試料に前記物質を接触させて刺激を行なう工程と、
    刺激に行った細胞において発現した前記の第1のレポーター遺伝子および第2のレポーター遺伝子間の相互作用に基づく検出可能なシグナルを前記撮像手段により光学イメージングするとともに、前記レポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を定量的に決定する光学的処理工程とを備え、
    前記光学的処理工程が微弱光を画像解析可能な画像を生成する工程をさらに有することを特徴とする微弱光解析方法。
  2. 前記の第1のレポーター遺伝子のプロモーター領域は、神経細胞において特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域であることを特徴とする請求項1に記載の微弱光解析方法。
  3. 前記の神経細胞において特異的に発現する遺伝子がNSE(neuton-specifec enolase)遺伝子であることを特徴とする請求項2に記載の微弱光解析方法。
  4. 前記のレポーター遺伝子が発光タンパク質であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の微弱光解析方法。
  5. 前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの強度を輝度値に変換することを特徴とする請求項4に記載の微弱光解析方法。
  6. 前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの光学イメージング像と細胞の明視野像を重ね合わせすることを特徴とする請求項4に記載の微弱光解析方法。
  7. 前記の撮像手段が、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上である対物レンズを用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微弱光解析方法。
  8. 前記の(NA÷β)の2乗の値が0.039以上であることを特徴とする請求項7に記載の微弱光解析方法。
  9. 前記の(NA÷β)の2乗の値が0.071以上であることを特徴とする請求項8に記載の微弱光解析方法。
  10. 前記の光学イメージングを、高い開口数(NA)の対物レンズを用いて、短かい時間間隔で実行することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の微弱光解析方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009139336A (ja) * 2007-12-10 2009-06-25 Olympus Corp カルシウム測定方法
JP2010213661A (ja) * 2009-03-18 2010-09-30 Olympus Corp 受容体発現量解析方法および発光タンパク質
JP2014089193A (ja) * 2007-04-04 2014-05-15 Olympus Corp 発光タンパクによる長期モニタリング方法および解析方法
JP2014193118A (ja) * 2013-03-28 2014-10-09 Olympus Corp 脳活動の解析方法

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