JP2007138153A - フタロシアニン結晶並びにそれを用いた電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置 - Google Patents

フタロシアニン結晶並びにそれを用いた電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶であって、高感度で且つ安定性にも優れたフタロシアニン結晶を提供する。
【解決手段】芳香環に直接結合するフッ素原子を有し、且つ、Hammett則による置換基定数σmが0.48以下である置換基を有する芳香族化合物に、フタロシアニン結晶前駆体を接触させる工程を経て製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、LED光や半導体レーザー光に対して非常に有効で、高感度、かつ分散等に対する安定性に優れたフタロシアニン結晶、並びに、それを用いた電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置に関する。
電子写真技術は、即時性に優れ、高品質の画像が得られることなどから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種のプリンタ、印刷機の分野でも広く応用されてきている。
電子写真技術の中核となる感光体としては、従来、セレン、砒素−セレン合金、酸化亜鉛といった無機系の光導電材料を使用した感光体が用いられてきたが、最近では、無公害である、成膜・製造が容易である、材料選択・組み合わせの自由度が高い等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体が主流となっている。
有機系の光導電性材料を使用した電子写真感光体の感度は、露光光の波長や電荷発生材料の種類によって異なる。600〜800nmの長波長光に対して感度を有する電荷発生材料としては、フタロシアニン化合物が注目を浴びている。フタロシアニン化合物の中でも、特に、クロロアルミニウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、オキシバナジルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、オキシチタニルフタロシアニン等の金属含有フタロシアニン、或いは、無金属フタロシアニン等についての研究が精力的に行なわれている。
フタロシアニン化合物については、単分子構造が同一であっても、単分子の集合体である結晶の配列規則性(結晶型)の違いにより、電荷発生効率が異なることが報告されている(非特許文献1、2参照)。
近年の電子写真プロセスの高速化に伴い、電子写真感光体の特性として高感度化、高速応答化が必須となっており、より高感度の電荷発生材料の開発が必須となっている。
高感度のためには電荷発生能力の高い電荷発生材料が必須である。その中でも、現在主流となっているLD露光に高感度を示すオキシチタニルフタロシアニンに関して、盛んに研究が行なわれている。前記オキシチタニルフタロシアニンは結晶多型を有することが知られている。公知の結晶型としては、α型(特許文献1参照)、β型(特許文献2参照)、C型(特許文献3参照)、D型(特許文献4参照)、Y型(特許文献5参照)、M型(特許文献6参照)、M−α型(特許文献7参照)、I型(特許文献8参照)など数多くの結晶型が報告されている。
これら結晶型の中でも、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示す結晶型が、高い量子効率を示し、高感度を示すことが知られている。
また、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶型は、オキシチタニルフタロシアニン分子単体のみで構成される結晶以外に、オキシチタニルフタロシアニンと他のフタロシアニン類又は他の顔料等とからなる混晶でも同様の結晶型を形成し、高感度を示すことが広く知られている(特許文献9参照)。
電子写真学会誌、第29巻、第3号、第250〜258頁 電子写真学会誌、第32巻、第3号、第282〜289頁 特開昭61−217050号公報 特開昭62−67094号公報 特開昭63−366号公報 特開平2−8265号公報 特開昭63−20365号公報 特開平3−54265号公報 特開平3−54264号公報 特開平3−128973号公報 特開平3−9962号公報
これらCuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶(以下「フタロシアニン結晶」という場合には、単一種のフタロシアニンのみで構成される結晶のみならず、複数種のフタロシアニンからなる混晶や、フタロシアニンと他の分子とからなる混晶も含め、フタロシアニンが含まれる結晶全てを指すものとする。)は、主として、アモルファス性フタロシアニン又は低結晶性フタロシアニンを前駆体として、これを特定の化合物に接触させ、結晶型を変換させることによって製造される。この結晶変換工程では、特定化合物分子とフタロシアニンとの相互作用により結晶型を構築するが、この際、用いる特定化合物の種類によってフタロシアニンとの相互作用が異なり、製造法・製造ルートの違いにより様々な結晶型、粒子形状を示す。また、電荷発生能力(感度)、帯電性、暗減衰などの電子写真感光体としての特性の面も、製造法・製造ルートに依存しており、その性能を前もって予測することは非常に困難である。
また、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶の結晶型は、準安定結晶型であり、熱、化合物との接触、又は物理的な力により、より安定な安定結晶型へと結晶型が転位してしまい、感度の低下してしまうという課題がある。これら結晶の安定性も前述同様に製造法・製造ルートに依存しており、その安定性を製造前の段階から予測し、製造することは非常に困難である。
この様に、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶は、高感度である反面、結晶安定性に劣るという課題を有している。
現在の複写機、レーザープリンター、普通紙ファックスの高速化に伴い、より高感度で且つ安定的な電荷発生材料が広く望まれている。しかしながら、前述した通り、製造法・製造ルートにより得られるフタロシアニン結晶の特性、安定性を予測することは非常に困難である。このため、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶であって、より高感度で且つ安定的なフタロシアニン結晶は、未だ開発されていないのが現状である。
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶であって、高感度で且つ安定性にも優れたフタロシアニン結晶を提供すること、並びに、高感度で安定的に使用可能な電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置を提供することにある。
本発明者らは、上述の結晶変換工程に用いる化合物が、得られるフタロシアニン結晶の結晶安定性及び電荷発生材料としての感度に深く関与しているものと推測し、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のフッ素化芳香族化合物に接触させて得られるフタロシアニン結晶が高感度を発現し、且つ、安定性にも優れていることを見出した。また、このフタロシアニン結晶を電子写真感光体に用いることにより、高感度で且つ安定的に使用できる電子写真感光体、電子写真カートリッジ及び画像形成装置を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶であって、芳香環に直接結合するフッ素原子を有し、且つ、Hammett則による置換基定数σmが0.48以下である置換基を有する芳香族化合物に、フタロシアニン結晶前駆体を接触させる工程を経て得られることを特徴とするフタロシアニン結晶に存する(請求項1)。
ここで、該芳香族化合物が有する前記置換基が、フッ素原子以外のハロゲン原子であることが好ましい(請求項2)。
また、オキシチタニルフタロシアニンを含有することが好ましい(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層に上述のフタロシアニン結晶を含有することを特徴とする、電子写真感光体に存する(請求項4)。
また、本発明の別の要旨は、上述の電子写真感光体と、該電子写真感光体を画像形成装置に対して着脱可能に支持するカートリッジケースとを備えたことを特徴とする、電子写真感光体カートリッジに存する(請求項5)。
また、本発明の別の要旨は、上述の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電部と、帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部と、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部とを備えたことを特徴とする、画像形成装置に存する(請求項6)。
本発明のフタロシアニン結晶は、電荷発生材料として用いた場合に、公知のフタロシアニン結晶よりも高い感度を発揮し、且つ、結晶安定性も良好である。また、このフタロシアニン結晶を用いることで、高感度で且つ安定的に使用可能な電子写真感光体、電子写真カートリッジ及び画像形成装置を提供することが出来る。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
[I.フタロシアニン結晶]
本発明のフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示す結晶型(これを以下「特定結晶型」という場合がある。)を有するフタロシアニン結晶であって、特定の置換基を有するフッ素化芳香族化合物にフタロシアニン結晶前駆体を接触させる工程を経て得られるものである。
[I−1.フッ素化芳香族化合物]
本発明のフタロシアニン結晶を得るために用いられる化合物は、芳香環に直接結合するフッ素原子を有し、且つ、Hammett則における置換基定数σmが0.48以下の置換基を有するフッ素化芳香族化合物である。
Hammett則とは、芳香族化合物における置換基が芳香環の電子状態に与える効果を説明するために用いられる経験則である。置換ベンゼンの置換基定数σmの値は、水素原子の場合を0とし、電子吸引性が高くなるに従い正の大きな値となり、電子供与性が高くなるに従い負の大きな値となる。よって、この置換基定数σmを用いることにより、置換基を有している芳香族化合物の電子状態及び電子密度を予測・表現することが可能となる。代表的な置換基について、日本化学会編「化学便覧 基礎編II 改訂4版」(平成5年9月30日、丸善(株)発行)に記載されるHammett則における置換ベンゼンの置換基定数σmの値を表1に示す。
Figure 2007138153
本発明では、この置換基定数σmが0.48以下の置換基を有するフッ素化芳香族化合物を使用する。置換基定数σmが0.48以下の置換基を有しないフッ素化芳香族化合物を用いると、得られるフタロシアニン結晶の分散等の操作に対する結晶の安定性が低下し、それに伴い感度が低下する場合がある。中でも、本発明において使用するフッ素化芳香族化合物が有する置換基は、この置換基定数σmが0.45以下であることが好ましく、0.43以下であることが好ましい。なお、この置換基定数σmの下限は特に限定されないが、通常は−0.1以上である。
置換基定数σmが0.48以下の置換基の例としては、アセチル基等のケトン基;クロロ基、ブロモ基等のハロゲン原子基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メチル基、エチル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;チオメチル基等のチオアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基等のエステル基;カルボキサミド基等のアミド基;アミノ基;モノメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等の置換アミノ基;ホルミル基などが挙げられる。これらの中でも、結晶変換時の結晶制御性を考慮すると、ハロゲン原子基、アルキル基、ケトン基、アルコキシ基、ホルミル基が好ましい。特に、置換基としての3次元的な分子体積が大きくなると、結晶変換時の結晶制御性が低下することから、具体的には、アセチル基、クロロ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、ホルミル基が好ましく、アセチル基、クロロ基、メチル基がより好ましい。
なお、本発明において使用するフッ素化芳香族化合物は、置換基定数σmが0.48以下の置換基を一つのみ有していてもよく、二つ以上有していてもよい。
フッ素化芳香族化合物の芳香族骨格としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラリン、ビフェニル、ターフェニル等の芳香族炭化水素骨格や、ピロール、チオフェン、フラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン等の複素環芳香族骨格が挙げられる。これらは何れも使用可能であるが、芳香族骨格部分に窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を有すると、フタロシアニン結晶前駆体を特定結晶型へと変換する際の制御性が低下することから、芳香族炭化水素骨格が好ましい。
フッ素化芳香族化合物の芳香環に直接結合するフッ素原子の数は任意であるが、フッ素原子の数が多くなるにつれ、結晶変換時の際の結晶型の制御性が低下することから、3以下が好ましく、電子写真感光体の感度の面から、2以下がより好ましい。中でも、芳香環に直接結合するフッ素原子の数が1である(即ち、モノフルオロ置換芳香族化合物である)ことが特に好ましい。
なお、本発明において使用するフッ素化芳香族化合物は、上述の置換基定数σmが0.48以下の置換基、及び、芳香環に直接結合するフッ素原子を有していれば、その他に、置換基定数σmが0.48より大きい置換基を一つ又は二つ以上有していてもよい。但し、この場合でも、フッ素原子以外の置換基の置換基定数σmの算術平均が0.48以下であることが好ましい。特に、フッ素原子以外の置換基の置換基定数σmが、何れも0.48以下であることが好ましい。
また、フタロシアニン結晶前駆体との接触は普通100℃以下で行なわれるため、本発明において使用するフッ素化芳香族化合物の融点は、通常100℃以下である。中でも、あまり融点が高過ぎると、結晶変換時におけるフッ素化芳香族化合物の取扱性が低下することから、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
本発明において使用するフッ素化芳香族化合物の分子量は、通常97以上、好ましくは110以上、より好ましくは130以上、また、通常300以下、好ましくは280以下、より好ましくは250以下である。分子量が小さ過ぎると、結晶制御性が低下する場合があり、分子量が大き過ぎると、得られた結晶の安定性が低下する場合がある。
本発明において、上述の特定の置換基を有するフッ素化芳香族化合物は、何れか一種を単独で用いてもよく、複数種を任意の組み合わせ及び組成で併用してもよい。
[I−2.フタロシアニン結晶の組成]
フタロシアニン結晶は、単一種のフタロシアニンから構成される結晶と、複数種のフタロシアニンから構成される混晶と、一種又は二種以上のフタロシアニンと一種又は二種以上の他の化合物とから構成される混晶とに分けられる。本発明のフタロシアニン結晶はこれらの何れであってもよいが、結晶安定性の面から、単一種のフタロシアニンからなる結晶、又は、複数種のフタロシアニンから構成される混晶であることが好ましい。
フタロシアニンとしては、無金属フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、鉛フタロシアニン等の平面分子構造を有するフタロシアニン;オキシチタニルフタロシアニン、オキシバナジルフタロシアニン、クロロアルミニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等のシャトルコック型の分子構造を有するフタロシアニン;ジクロロ錫フタロシアニン、ジクロロ珪素フタロシアニン、ジヒドロキシ錫フタロシアニン、ジヒドロキシ珪素フタロシアニン等のこま型の分子構造を有するフタロシアニンなどが挙げられる。
本発明のフタロシアニン結晶が単一種のフタロシアニンからなる結晶である場合、その成分となるフタロシアニンの種類は特に制限されず、上記例示の何れのフタロシアニンであってもよい。但し、上記の特定結晶型を構築し易いという点から、シャトルコック型分子構造を有するフタロシアニン類であることが望ましい。中でも、一般に電子写真感光体に用いた場合の特性が良好であることから、フタロシアニン分子の中心金属が酸化物、塩化物、水酸化物であることが好ましく、フタロシアニンの製造の容易さから、中心金属が酸化物であることがより好ましい。具体的には、オキシチタニルフタロシアニン、オキシバナジルフタロシアニンが特に好ましく、オキシチタニルフタロシアニンがとりわけ好ましい。
一方、本発明のフタロシアニン結晶が混晶である場合も、その成分となるフタロシアニンの種類は特に制限されず、上記例示の何れのフタロシアニンであってもよい。但し、上記の特定結晶型を構築しやすいという点から、シャトルコック型分子構造を有するフタロシアニンを主成分として含有することが好ましい。中でも、一般に電子写真感光体に用いた場合の特性が良好であることから、フタロシアニン分子の中心金属が酸化物、塩化物、水酸化物であることが好ましく、フタロシアニンの製造の容易さから、中心金属が酸化物であることがより好ましい。具体的には、オキシチタニルフタロシアニン、オキシバナジルフタロシアニンが特に好ましく、オキシチタニルフタロシアニンがとりわけ好ましい。
主成分となるフタロシアニンの含有量は、フタロシアニン結晶に対する比率で、通常60重量%以上である。含有される量が少ないと結晶制御性が低下することから、70重量%以上が好ましく、分散時の結晶安定性の点からは、80重量%以上がより好ましく、電子写真感光体に用いた際の特性の面からは、85重量%以上が更に好ましい。
主成分となるフタロシアニン以外のフタロシアニンとしては、上記の特定結晶型を構築しやすいという点から、シャトルコック型分子構造を有するフタロシアニン、又は、平面分子構造を有するフタロシアニンが好ましい。中でも、電子写真感光体に用いた場合の特性の面から、シャトルコック型分子構造を有するフタロシアニンにおいては、オキシバナジルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニンが好ましく、平面分子構造を有するフタロシアニンにおいては、無金属フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、鉛フタロシアニンが好ましい。具体的には、オキシバナジルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニンがより好ましく、結晶格子中での空いた空間がより増えることから、平面分子構造を有する無金属フタロシアニンが特に好ましい。主成分以外のフタロシアニンとしては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよいが、1種類のみを用いることが好ましい。
主成分以外のフタロシアニンの含有量は、フタロシアニン結晶に対する比率で、通常40重量%以下である。主成分以外のフタロシアニンの含有量が多過ぎると結晶制御性が低下することから、30重量%以下が好ましく、分散時の安定性の面からは、20重量%以下がより好ましく、電子写真特性の面からは、15重量%以下が特に好ましい。但し、主成分以外のフタロシアニンの含有量が少な過ぎると、含有による効果が得られない場合があるため、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上である。
[I−3.フタロシアニン結晶の製造]
本発明のフタロシアニン結晶は、上述の組成を有するフタロシアニン結晶の前駆体を、上述の置換基を有するフッ素化芳香族化合物に接触させる工程を経て製造される。
フタロシアニン結晶前駆体としては、アモルファス性フタロシアニン又は低結晶性フタロシアニンを用いる。アモルファス性フタロシアニン又は低結晶性フタロシアニンの調製法としては、アシッドペースト法、アシッドスラリー法等の化学的処理法;粉砕、磨砕等の機械的処理法など、公知の調製法を用いることが可能であるが、均一なアモルファス性フタロシアニン又は低結晶性フタロシアニンが得られることから、化学的処理法が好ましく、中でもアシッドペースト法がより好ましい。
フタロシアニン結晶前駆体とフッ素化芳香族化合物とを接触させる手法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に制限されず、公知の任意の方法を用いることが可能である。例としては、(i)フッ素化芳香族化合物を蒸気化し、そこにフタロシアニン結晶前駆体を導入して接触させる手法、(ii)フッ素化芳香族化合物とフタロシアニン結晶前駆体とを溶剤(溶剤の種類は特に制限されないが、例えば水などが挙げられる。)に溶解又は分散させ、撹拌しながら接触させる手法、(iii)フタロシアニン結晶前駆体とフッ素化芳香族化合物とを自動乳鉢、遊星ミル、振動ボールミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等の装置中で、メディアと共に物理的な力を加えながら接触させる手法等が挙げられる。これらの中でも(ii)の手法が、材料の取り扱いが容易になるので好ましい。特に、水の存在下で(ii)の手法により接触させることが好ましい。
フタロシアニン結晶前駆体とフッ素化芳香族化合物との接触時の条件は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に制限されないが、具体的には以下の通りである。
接触時の温度は、通常0℃以上、中でも10℃以上、また、通常100℃以下、中でも80℃以下の範囲が好ましい。
接触時の圧力は、通常、大気圧である。
接触の時間は、温度等の条件によっても異なるが、通常1分以上、中でも5分以上である。上限は特に制限されないが、効率を考えると、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下が望ましい。
本発明のフタロシアニン結晶は通常、ウェットケーキとして得られる。後述するように、本発明の効果は、フタロシアニン結晶前駆体をフッ素化芳香族化合物に接触させた際、フッ素化芳香族化合物がフタロシアニン結晶中に取り込まれることにより得られるものであると考えられることから、ウェットケーキ中のフタロシアニン結晶の含有量(ウェットケーキ総重量中のフタロシアニン結晶の重量)は、いかなる量であってもよい。
本発明のフタロシアニン結晶を含むウェットケーキが得られた後、通常は溶剤成分を除去するために、乾燥工程を行なう。乾燥方法は、送風乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等、公知の方法で乾燥することが可能である。
なお、本発明のフタロシアニン結晶の粒子径は、フッ素化芳香族化合物に接触させる際の条件・処方によって大きく異なるが、分散性を考慮すると、1次粒子径として、500nm以下が好ましく、塗布成膜性の面からは250nm以下であることが好ましい。
[I−4.フタロシアニン結晶の物性]
本発明のフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを有する結晶型である。
本発明のフタロシアニン結晶におけるフッ素化芳香族化合物の効果は、フタロシアニン結晶前駆体をフッ素化芳香族化合物に接触させた際、用いるフッ素化芳香族化合物がフタロシアニン結晶中に取り込まれることにより得られるものであると考えられる。従って、本発明の効果は結晶の中の分子の配向性には依存しておらず、前記の明確な回折ピークそれぞれの強度比は本発明の効果とは相関性が無いと考えられる。よって、本発明のフタロシアニン結晶は、いかなる強度比を有していてもよい。通常は27.2°付近の回折ピーク、もしくは9.6°付近の回折ピークが最大となることが多い。
本発明のフタロシアニン結晶が、27.2°以外に有する明確な回折ピークとしては、以下の様なものが挙げられる。
1)9.6°、24.1°
2)9.5°、9.7°、24.1°
3)9.0°、14.2°、23.9°
その他の回折ピークとしては、26.2°又は28.6°付近のピークが挙げられるが、これらの回折ピークを有するフタロシアニン結晶は、分散時に他の結晶型に転位し、電子写真特性が低下することから、26.2°又は28.6°付近には明確な回折ピークを有さないことが好ましい。
また、9.5°、24.1°、27.2°に明確な回折ピークを有するフタロシアニン結晶、又は、9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に明確な回折ピークを有するフタロシアニン結晶は、分散時の結晶安定性に優れることから好ましい。
中でも、7.3°、9.6°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°に主たる回折ピークを有するフタロシアニン結晶、又は、7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有するフタロシアニン結晶が、電子写真感光体の材料として用いた場合の暗減衰、残留電位の観点からより好ましい。
[I−5.その他]
本発明において、フッ素化芳香族化合物が有する置換基の置換基定数σmの値が、得られるフタロシアニン結晶の特性に影響を及ぼすメカニズムは明白ではないが、以下の様に推測される。即ち、上述の特定結晶型(CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示す結晶型)は、他の結晶型と比較して結晶密度が低く、結晶中の空いている空間部分が多いため、フッ素化芳香族化合物をフタロシアニン結晶前駆体に接触させ、該結晶型を構築する際に、フタロシアニン結晶中に該フッ素化芳香族化合物が微量取り込まれるものと考えられる。ここで、フッ素原子の他に置換基定数σmが0.48以下の置換基を導入したフッ素化芳香族化合物は、分子全体としてある電子状態を有するようになり、この電子状態がフタロシアニン結晶中での結晶安定性及び電荷分離過程に寄与することにより、得られるフタロシアニン結晶の安定性と感度が共に向上しているのではないかと考えられる。
[II.電子写真感光体]
以下、本発明の電子写真感光体について詳述する。本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有し、該感光層に、上に説明した本発明のフタロシアニン結晶を含有するものである。
[II−1.導電性支持体]
導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を含有させて導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形状としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。また、金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものを用いてもよい。
導電性支持体の表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム基体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な基体が得られるので好ましい。
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いる場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜は、例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/l、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
陽極酸化被膜の平均膜厚が厚過ぎると、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件が求められる。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じ易くなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
陽極酸化被膜を形成した場合、封孔処理を行なうことが好ましい。封孔処理は、通常の方法で良いが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、或いは、主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理を施すのが好ましい。
低温封孔処理の場合、使用するフッ化ニッケル水溶液の濃度は、適宜選択することが可能であるが、中でも3〜6g/lの範囲とすると、より好ましい結果が得られる。フッ化ニッケル水溶液のpHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。また、被膜物性を更に改良するために、フッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に含有させておいてもよい。処理温度は、封孔処理をスムーズに進めるために、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下の範囲とするのがよい。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分間の範囲で処理することが好ましい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
高温封孔処理の場合、封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることが出来るが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合、その濃度は通常5〜20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液のpHは通常5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。pH調節剤としては、アンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。なお、被膜物性を改良するために、酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に含有させてもよい。処理温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下の範囲である。処理時間は通常10分以上、好ましくは20分以上である。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
[II−2.下引き層]
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、バインダー樹脂、バインダー樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。これらの金属酸化物粒子は、何れか1種類を単独で用いてもよいし、複数種を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。これらの金属粒子の中でも、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることが出来る。また、複数の結晶状態のものが含有されていてもよい。
金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として通常10nm以上、また、通常100nm以下、特に50nm以下の範囲のものが好ましい。
下引き層は、前記金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤などの公知のバインダー樹脂を用いることが出来る。これらは単独、もしくは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
バインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが好ましい。
その他、下引き層には、画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させてもよい。
下引き層の膜厚は任意に選ぶことが出来るが、感光体特性及び塗布性から、通常0.01μm以上、中でも0.1μm以上、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲内とすることが好ましい。
[II−3.感光層]
導電性支持体の上(下引き層を設ける場合は、下引き層の上)には、感光層が形成される。感光層は、電荷発生物質と、電荷輸送物質と、バインダー樹脂とを含んで構成される。
感光層の構造としては、電荷発生物質と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散されて同一層に存在する単層構造の感光層(以下適宜「単層型感光層」という。)と、電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造の感光層(以下適宜「積層型感光層」という。)とが挙げられるが、何れを使用することも可能である。また、積層型感光層の場合、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層される順積層型感光層と、導電性支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層される逆積層型感光層とに分けられるが、いずれを適用することも可能である。以下、各構造について説明する。
<積層型感光層の電荷発生層>
積層型感光層の電荷発生層は、溶媒又は分散媒にバインダー樹脂を溶解又は分散させるとともに、電荷発生物質を分散させて塗布液を調製し、これを順積層型感光体の場合は導電性支持体上(下引き層を設ける場合には下引き層上)、逆積層型感光体の場合は電荷輸送層上に塗布・成膜し、電荷発生物質の微粒子をバインダー樹脂によって結着することにより形成される。
・電荷発生物質:
電荷発生物質としては、少なくとも本発明のフタロシアニン結晶が用いられる。本発明のフタロシアニン結晶は、何れか一種を単独で用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、本発明のフタロシアニン結晶のみを電荷発生物質として用いてもよいが、本発明のフタロシアニン結晶を他の電荷発生物質と組み合わせ、混合状態として用いてもよい。
電荷発生物質として用いられる本発明のフタロシアニン結晶の粒子径は、充分小さいことが望ましい。具体的には、1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下で使用される。
本発明のフタロシアニン結晶と混合状態として用いる他の電荷発生物質としては、公知の各種の染顔料が挙げられる。染顔料の例としては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム顔料)、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。中でも、光感度の面から、フタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましく使用される。
・バインダー樹脂:
電荷発生層のバインダー樹脂の種類は特に制限されないが、その例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、用いることが出来るが、これらポリマーに限定されるものではない。なお、これらのバインダー樹脂は何れか一種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
・配合比:
電荷発生層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)としては、バインダー樹脂100重量部に対する電荷発生物質の比率で、通常10重量部以上、好ましくは30重量部以上、また、通常1000重量部以下、好ましくは500重量部以下の範囲とする。電荷発生物質の比率が高過ぎる場合は、電荷発生物質の凝集等の課題により塗布液の安定性が低下する場合があり、一方、低過ぎる場合は感光体としての感度の低下を招く場合があることから、前記範囲で使用することが好ましい。
・溶媒又は分散媒:
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状及び環状ケトン系溶媒;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状及び環状エーテル系溶媒;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物;リグロイン等の鉱油;水などが挙げられ、上述の下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。これらの溶媒又は分散媒は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
・分散の手法:
電荷発生物質を溶媒又は分散媒に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることが出来る。この際、電荷発生物質粒子を通常0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
・膜厚:
電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲とする。
<積層型感光層の電荷輸送層>
積層型感光層の電荷輸送層は、溶剤にバインダー樹脂を溶解又は分散させるとともに、電荷輸送物質を分散させて塗布液を調製し、これを順積層型感光体の場合は電荷輸送層上、逆積層型感光体の場合は導電性支持体上(下引き層を設ける場合には下引き層上)に塗布し、電荷輸送物質の微粒子をバインダー樹脂によって結着することにより形成される。
・バインダー樹脂:
バインダー樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は珪素試薬などで修飾されていてもよい。上記バインダー樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂の中でも、下記構造式で表わされるビスフェノール残基、及び/又は、ビフェノール残基を含有するポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が感度、残留電位の点から好ましく、中でも移動度の面からポリカーボネート樹脂がより好ましい。
Figure 2007138153
なお、これらのバインダー樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。
また、バインダー樹脂は、何れか一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いることもできる。
・電荷輸送物質:
電荷輸送物質としては、公知の物質であれば特に限定されるものではなく、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、或いはこれらの化合物からなる基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中で、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。
・配合比:
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して通常20重量部以上であり、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更に繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の観点から、40重量部以下がより好ましい。一方で、感光層の熱安定性の観点から、通常は150重量部以下であり、電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の観点からは120重量部以下が好ましく、耐刷性の観点からは100重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点からは80重量部以下がとりわけ好ましい。
・溶媒又は分散媒並びに分散の手法:
溶媒又は分散媒の種類、並びに電荷輸送物質を溶媒又は分散媒に分散させる手法については、<積層型感光層の電荷発生層>の欄で説明した通りである。
・膜厚:
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命や画像安定性の観点、並びに高解像度の観点から、通常5μm以上、中でも10μm以上、また、通常50μm以下、中でも45μm以下、更には30μm以下の範囲とすることが好ましい。
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して得られる塗布液を、導電性支持体上(下引き層を設ける場合には下引き層上)に塗布、乾燥し、電荷発生物質及び電荷輸送物質の微粒子をバインダー樹脂によって結着することにより形成される。電荷発生物質としては、上記の<積層型感光層の電荷発生層>の欄で説明したものが用いられ、電荷輸送物質及びバインダー樹脂としては、上記の<積層型感光層の電荷輸送層>の欄で説明したものが用いられる。バインダー樹脂に対する電荷発生物質及び電荷輸送物質の比率も、それぞれ上述の<積層型感光層の電荷発生層>及び<積層型感光層の電荷輸送層>の欄で説明した通りである。
単層型感光層内に分散されるフタロシアニン結晶は、少な過ぎると充分な感度が得られず、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下の弊害があるので、例えば、バインダー樹脂100重量部に対する電荷発生物質の比率が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下の範囲で使用される。
溶媒又は分散媒の種類、並びに分散の手法については、上記の<積層型感光層の電荷発生層>の欄で説明した通りである。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲で使用される。
<その他の成分>
なお、感光層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加物を含有させてもよい。
[II−4.その他の層]
電子写真感光体の構成としては、以上説明した各層に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、他の層を設けてもよい。
例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、感光層の上に保護層を設けてもよい。保護層は、適当なバインダー樹脂中に導電性材料を含有させて形成するか、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報等に記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることが出来る。導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。保護層に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることも出来る。保護層は、電気抵抗が109〜1014Ω・cmとなるように構成することが好ましい。電気抵抗が高過ぎると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう傾向があり、一方、電気抵抗が低過ぎると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう傾向がある。また、保護層は像露光に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、電子写真感光体の表面の摩擦抵抗や摩耗を低減したり、電子写真感光体から転写ベルトや紙へのトナーの転写効率を高める等の目的で、電子写真感光体の表面層(感光層、保護層等)に、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等を含有させてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や、無機化合物の粒子等を含有させてもよい。
[II−5.各層の形成方法]
これらの感光体を構成する各層は、前記方法により得られた塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。
単層型感光体の感光層及び機能分離型感光体の電荷輸送層を形成する場合、塗布液の固形分濃度は、通常5重量%以上、中でも10重量%以上、また、通常40重量%以下、中でも35重量%以下の範囲とするのが好ましい。また、塗布液の粘度は、通常10cps以上、好ましくは50cps以上、また、通常500cps以下、好ましくは400cps以下の範囲とするのが好ましい。
機能分離型感光体の電荷発生層を形成する場合、塗布液の固形分濃度は、通常0.1重量%以上、中でも1重量%以上、また、通常15重量%以下、中でも10%以下の範囲とするのが好ましい。また、塗布液の粘度は、通常0.01cps以上、中でも0.1cps以上、また、通常20cps以下、中でも10cps以下の範囲とするのが好ましい。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥方法は特に制限されないが、通常は、室温における指触乾燥後、無風又は送風下で加熱乾燥することが好ましい。加熱温度は特に30〜200℃の温度範囲で、1分〜2時間に亘って行なうことが好ましい。また、加熱温度は一定であっても、乾燥時に変更させながら行なってもよい。
[III.画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電何れも可能である。また、帯電時に印可する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。但し、600nm未満の短い波長の光では、アゾベンゼン誘導体による吸収のために十分な光書き込みができないケースがあるため、600nm〜800nmの単色光で露光することが好ましい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーとしては、粉砕トナーの他に、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。特に、ケミカルトナーの場合には、4〜8μm程度の小粒径のものが用いられ、形状も球形に近いものから、ポテト状、ラグビーボール状等の球形から外れたものも使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化には好適に用いられる。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。ケミカルトナーの場合には、4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナー粒子の形状も、球形に近いものから、球形から外れたポテト状のものまで、様々な形状のものを使用することができる。特に重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。なお、残留トナーが少ないか、殆ど無い場合は、クリーニング装置6は設けなくとも構わない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71、72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものを始め、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置では、次の方法(本発明の画像形成方法)に従って画像の記録が行なわれる。
即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を単独で、又は、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上の要素と組み合わせて、一体型のカートリッジ(これを適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、画像形成装置に対して着脱可能に構成されたカートリッジケースを用い、これに電子写真感光体1を単独で、又は上述の要素と組み合わせて収容し支持させることにより、電子写真感光体カートリッジとすることができる。こうした構成により、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[I.フタロシアニン材料]
[合成例1]
特開平10−7925号公報に記載の「粗TiOPcの製造例」、「実施例1」の順に従って、β型オキシチタニルフタロシアニンを調製した(これを以下「合成例1のフタロシアニン材料」という場合がある。)。合成例1のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図2に示す。また、合成例1のフタロシアニン材料中に含まれる塩素分を元素分析手法を用いて分析した結果、塩素含有量は検出下限以下の0.20重量%以下であった。また、特開2001−115054号公報に記載の<マススペクトル測定法>に従って、合成例1のフタロシアニン材料におけるオキシチタニルフタロシアニンとクロロオキシチタニルフタロシアニンとのピーク強度比を測定したところ、0.002であった。
[合成例2]
特開2001−115054号公報に記載の「実施例4」の手法に従って、β型オキシチタニルフタロシアニンを調製した(これを以下「合成例2のフタロシアニン材料」という場合がある。)。合成例2のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図3に示す。また、合成例2のフタロシアニン材料中に含有される塩素分を元素分析手法を用いて分析した結果、塩素含有量は0.37%であった。また、特開2001−115054号公報に記載の<マススペクトル測定法>に従って、合成例2のフタロシアニン材料におけるオキシチタニルフタロシアニンとクロロオキシチタニルフタロシアニンとのピーク強度比を測定したところ、0.032〜0.035であった。
[合成例3(低結晶性オキシチタニルフタロシアニン)]
合成例1のフタロシアニン材料(β型オキシチタニルフタロシアニン)50重量部を、−10℃以下に冷却した95重量%濃硫酸1250重量部に添加した。この時、溶液の内温が−5℃を超えないようにゆっくりと加えた。添加終了後、得られた溶液を−5℃以下で2時間撹拌した。撹拌後、溶液をガラスフィルターで濾過し、不溶分を濾別後、溶液を氷水12500重量部中に放出することにより、オキシチタニルフタロシアニンを析出させ、放出後1時間撹拌した。撹拌後、溶液を濾別し、得られたウェットケーキを再度、水2500重量部中で1時間洗浄し、濾過を行なった。この洗浄操作を、濾液のイオン伝導度が0.5mS/mになるまで繰り返すことにより、低結晶性オキシチタニルフタロシアニン(これを以下「合成例3のフタロシアニン材料」という場合がある。)のウェットケーキ(オキシチタニルフタロシアニン含有率11.0重量%)452重量部を得た。合成例3のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図4に示す。
[合成例4]
合成例3のフタロシアニン材料(低結晶性オキシチタニルフタロシアニン)のウェットケーキ33重量部を水90重量部に加え、室温で30分撹拌した。その後、2,4−ジクロロフルオロベンゼン13重量部を加え、更に室温で1時間撹拌した。撹拌後、水を分離し、メタノール80重量部を加え、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度メタノール80重量部を用いて1時間撹拌洗浄、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、オキシチタニルフタロシアニン3.4重量部を得た(これを以下「合成例4のフタロシアニン材料」という場合がある。)。合成例4のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図5に示す。
[合成例5〜7、比較合成例1〜4]
合成例4において使用した2,4−ジクロロフルオロベンゼンを、下記表2の合成例5〜7、比較合成例1〜4の欄に示す化合物にそれぞれ変更した以外は、合成例4と同様の操作を行なうことにより、オキシチタニルフタロシアニンを得た(これらを以下「合成例5〜7、比較合成例1〜4のフタロシアニン材料」という場合がある。)。合成例5〜7、比較合成例1〜4のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを、それぞれ図6〜12に示す。
[合成例8]
合成例3において原料として使用した合成例1のフタロシアニン材料50重量部を、合成例2のフタロシアニン材料(β型オキシチタニルフタロシアニン)50重量部に変更した以外は、合成例3と同様の操作を行なうことにより、低結晶性オキシチタニルフタロシアニン(これを以下「合成例8のフタロシアニン材料」という場合がある。)のウェットケーキ(オキシチタニルフタロシアニン含有率10.4重量%)478重量部を得た。合成例8のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図13に示す。
[合成例9]
合成例8のフタロシアニン材料(低結晶性オキシチタニルフタロシアニン)のウェットケーキ33重量部を水90重量部に加え、室温で30分撹拌した。その後、2,4−ジクロロフルオロベンゼン13重量部を加え、更に室温で1時間撹拌した。撹拌後、水を分離し、メタノール80重量部を時間、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度メタノール80重量部を用いて1時間撹拌洗浄、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、オキシチタニルフタロシアニン3.4重量部を得た(これを以下「合成例9のフタロシアニン材料」という場合がある。)。合成例9のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図14に示す。
[比較合成例5]
合成例9において使用した2,4−ジクロロフルオロベンゼンをオルトジクロロベンゼンに変更した以外は、合成例9と同様の操作を行なうことにより、オキシチタニルフタロシアニン3.5重量部を得た(これを以下「比較合成例5のフタロシアニン材料」という場合がある。)。比較合成例5のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図15に示す。
[合成例10]
合成例3において原料として用いた合成例1のフタロシアニン材料50重量部を、合成例1のフタロシアニン材料(β型オキシチタニルフタロシアニン)47.5重量部と無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業(株)社製「FastgenBlue8120BS」)2.5重量部との混合物に変更した以外は、合成例3と同様の操作を行うことにより、低結晶性フタロシアニン組成物(これを以下「合成例10のフタロシアニン材料」という場合がある。)のウェットケーキ(オキシチタニルフタロシアニン混晶含有率12.2重量%)410重量部を得た。合成例10のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図16に示す。
[合成例11]
合成例10のフタロシアニン材料(低結晶性フタロシアニン組成物)のウェットケーキ33重量部を水90重量部に加え、室温で30分撹拌した。その後、2,4−ジクロロフルオロベンゼン13重量部を加え、更に室温で1時間撹拌した。撹拌後、水を分離し、メタノール80重量部を添加し、室温で1時間撹拌洗浄した。洗浄後、濾別し、再度メタノール80重量部を用いて1時間撹拌洗浄、濾別し、真空乾燥機で加熱乾燥することにより、オキシチタニルフタロシアニンを含有する混晶(これを以下「合成例11のフタロシアニン材料」という場合がある。)3.4重量部を得た。合成例11のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルを図17に示す。
[合成例12、比較合成例6]
合成例4において使用した2,4−ジクロロフルオロベンゼンを、下記表2の合成例12、比較合成例6の欄に示す化合物にそれぞれ変更した以外は、合成例11と同様の操作を行なうことにより、オキシチタニルフタロシアニンを含有する混晶を得た(これらを以下、それぞれ「合成例12、比較合成例6のフタロシアニン材料」という場合がある。)。合成例12、比較合成例6のフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルをそれぞれ図18、図19に示す。
Figure 2007138153
[フタロシアニン材料の評価]
合成例4〜7、9、11、12のフタロシアニン材料は、本発明の規定を満たす化合物(芳香環に直接結合するフッ素原子を有し、且つ、Hammett則による置換基定数σmが0.48以下である置換基を有する芳香族化合物)と接触させて得られたものである。また、図5〜10、14、15、17〜19から明らかなように、合成例4〜7、9、11、12及び比較合成例1、2、5、6のフタロシアニン材料は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すオキシチタニルフタロシアニン結晶であった。
これに対して、比較合成例3及び4のフタロシアニン材料は、本発明の規定を満たしていない化合物(芳香環に直接結合するフッ素原子を有さないか、又は、Hammett則による置換基定数σmが0.48以下である置換基を有さない芳香族化合物)と接触させて得られたものである。また、図11、12から明らかなように、比較合成例3及び4のフタロシアニン材料は、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すオキシチタニルフタロシアニン結晶となっていなかった。
この結果から、本発明の規定を満たしていないフッ素化芳香族化合物は、結晶変換時の結晶制御性が低いことが明らかであり、CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すオキシチタニルフタロシアニン結晶を得るためには、本発明の規定を満たすフッ素化芳香族化合物を用いることが効果的であることが分かる。
[II.電子写真感光体]
[電子写真感光体作製方法]
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着膜(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、その導電性支持体の蒸着膜上に、以下に説明する下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μm以下となるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールのボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表される化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表される化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表される化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表される化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表される化合物]の組成モル比率が、75%/9.5%/3%/9.5%/3%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層分散液とした。
Figure 2007138153
電荷発生物質として、後述するフタロシアニン材料それぞれ20重量部を1,2−ジメトキシエタン280重量部と混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いて、この微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)社製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10重量部を1,2−ジメトキシエタン253重量部及び4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン85重量部の混合液に溶解させて得られたバインダー液、並びに、230重量部の1,2−ジメトキシエタンを混合して電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、前記導電性支持体上の下引き層上に、バーコーターにより、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成した。
更に、特開2002−80432号公報の実施例1に基づいて合成された、下記式(F)で表わされる化合物50重量部を電荷輸送物質として用い、また、下記式(G)で表わされる2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位51モル%と、下記式(H)で表わされる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位49モル%とからなり、p−t−ブチルフェノールに由来する末端構造式を有するポリカーボネート樹脂100重量部をバインダー樹脂として用い、その他に、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール8重量部、シリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.03重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、フィルムアプリケーターにより、前記電荷発生層上に乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成して、積層型の電子写真感光体を作製した。
Figure 2007138153
Figure 2007138153
Figure 2007138153
[実施例1〜7、比較例1〜4]
合成例4〜7、9、11、12、比較合成例1、2、5、6のフタロシアニン材料を用いて、上述の[電子写真感光体作製方法]に記載の手順に従い、電子写真感光体を作製した(これらを以下「実施例1〜7、比較例1〜4の電子写真感光体」という場合がある。)。各実施例及び各比較例の電子写真感光体と、その作製に用いたフタロシアニン材料との対応を下記表3に示す。
Figure 2007138153
[電子写真感光体特性の測定]
実施例1〜7、比較例1〜4の電子写真感光体を、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、以下の手順に従って、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行なった。
感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを照射して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー)を感度(E1/2)として測定した(単位:μJ/cm2)。また、初期表面電位を−700Vにした後、暗所で5秒間放置した後の表面電位を測定し、その差を暗減衰(DD)とした(単位:V)。
実施例1〜7、比較例1〜4の各電子写真感光体についての電子写真特性の評価結果を下記表4に示す。
Figure 2007138153
以上の測定結果から、本発明のフタロシアニン結晶(合成例4〜7、9、11、12のフタロシアニン材料)を感光層に含有する実施例1〜7の電子写真感光体は、従来の公知の化合物と接触させて得られたフタロシアニン材料(比較合成例1、2、5、6のフタロシアニン材料)を感光層に含有する比較例1〜4の電子写真感光体と比較して、暗減衰(DD)等の基本的な感光体の特性を損なうことなく、感度(E1/2)のみを高感度化させることが可能であることが明らかとなった。
本発明のフタロシアニン結晶並びにそれを用いた電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置は、電子写真技術を用いた複写機、プリンタ、ファクス等の各種電子写真デバイス等の各種分野において、好適に使用することができる。
本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。 合成例1で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例2で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例3で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例4で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例5で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例6で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例7で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 比較合成例1で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 比較合成例2で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 比較合成例3で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 比較合成例4で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例8で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例9で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 比較合成例5で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例10で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例11で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 合成例12で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。 比較合成例6で得られたフタロシアニン材料の粉末XRDスペクトルである。
符号の説明
1 感光体(電子写真感光体)
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置(クリーニング部)
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙,媒体)

Claims (6)

  1. CuKα特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる回折ピークを示すフタロシアニン結晶であって、
    芳香環に直接結合するフッ素原子を有し、且つ、Hammett則による置換基定数σmが0.48以下である置換基を有する芳香族化合物に、フタロシアニン結晶前駆体を接触させる工程を経て得られる
    ことを特徴とする、フタロシアニン結晶。
  2. 該芳香族化合物が有する前記置換基が、フッ素原子以外のハロゲン原子である
    ことを特徴とする、請求項1記載のフタロシアニン結晶。
  3. オキシチタニルフタロシアニンを含有する
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のフタロシアニン結晶。
  4. 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、
    該感光層に、請求項1〜3の何れか一項に記載のフタロシアニン結晶を含有する
    ことを特徴とする、電子写真感光体。
  5. 請求項4記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を画像形成装置に対して着脱可能に支持するカートリッジケースとを備えた
    ことを特徴とする、電子写真感光体カートリッジ。
  6. 請求項4記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を帯電させる帯電部と、
    帯電した該電子写真感光体を露光させ静電潜像を形成する露光部と、
    該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像部とを備えた
    ことを特徴とする、画像形成装置。
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