JP2007099531A - 分子線源セルの制御システム、その制御方法および分子線エピタキシャル装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】分子線源セル内の分子線材料の残量の減少により熱容量が変化しても、分子線源セルの温度制御性能の低下を抑え、安定した成膜を継続して行なうことができる分子線源セルの制御システムを提供する。
【解決手段】本発明の分子線源セルの制御システムは、分子線エピタキシャル装置の温度制御システムであって、成膜終了後、成膜開始までの間に、フィードバックゲインの調整の要否を判断する判断手段と、変温手段による坩堝の加熱または冷却と、温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】図3
【解決手段】本発明の分子線源セルの制御システムは、分子線エピタキシャル装置の温度制御システムであって、成膜終了後、成膜開始までの間に、フィードバックゲインの調整の要否を判断する判断手段と、変温手段による坩堝の加熱または冷却と、温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、分子線エピタキシャル(Molecular Beam Epitaxial;以下、「MBE」と記述する。)装置に用いられる分子線源セルの制御システムに関する。また、分子線源セルの制御方法およびかかる分子線源セルの制御システムを備えるMBE装置に関する。
基板上に所望の薄膜をエピタキシャル成長させる方法の1つに、MBE法がある。この方法は、分子線材料となる各種原子の蒸発源を、分子線源セル内の坩堝に入れ、真空中で坩堝を加熱し、ここから発生した分子線を、同じく真空中に置かれ、適正な温度に保持された基板上に照射して、結晶成長させる方法である。
MBE装置の一例を図10に示す。図10に示すように、このMBE装置は、真空容器103内に、基板104と、基板加熱ヒータ102とを保持するマニピュレータ101が配置され、真空容器の下部には各種分子線材料を充填した複数の分子線源セル106a,106bを有する。また、分子線源セル106a,106bと基板104の間にはセルシャッタ105a,105bを備え、セルシャッタ105a,105bの開閉によって基板104に照射される分子線量を変化させ、基板表面に成膜される薄膜の組成および膜厚を制御する。
分子線源セルの一例を図9に示す。分子線源セルは、図9に示すように、内部に分子線材料902を充填する坩堝901があり、その周囲には坩堝901を加熱するセルヒータ903が配置されている。また、坩堝901の温度を計測する熱電対904が少なくとも1個、坩堝901に近接して配置し、または接触している。セルヒータ903の周囲にはラジエーションシールド909がセルヒータ903を取り囲むように配置し、これらの構成部品は、分子線源セルのベースとなるフランジ905に固定されている。フランジ905には電力導入端子907が取り付けられており、導線908を介してセルヒータ903へ電力供給を行なっている。また、フランジ905には熱電対導入端子906が取り付けられており、熱電対904が真空容器外部の温度制御装置911に接続されている。温度制御装置911は、熱電対904の出力値が設定された値となるように、セルヒータ903の電源装置910を制御し、電源装置910は制御指示に従ってセルヒータ903に電力を供給する。
MBE装置は、分子線源セル内に充填された分子線材料を用いて、基板表面に薄膜を成長させるため、薄膜の成長を行なうたびに分子線材料は減少していく。この坩堝内の材料減少により坩堝内の熱容量は減少していく。熱容量が小さくなると、坩堝を同じだけ温度上昇させるために必要な熱量は小さくなるため、温度制御性を一定に保つためには、制御演算式を材料の減少に合わせて変化させる必要があるが、PID制御(Proportional Integral Derivative control)のような従来の温度制御装置に実装されている制御演算式は材料の減少に合わせて変化できないため、温度制御性能は低下してしまう。薄膜の量産工程内でMBE装置による成膜を繰り返して行なう場合、分子線材料は坩堝の最大容量が充填され、その材料を使い切るまで成膜を連続して行なうことが、効率的なMBE装置の運転となる。材料の充填時から、材料がなくなるまで安定した成膜を継続的に行なうためには、前述の材料残量の減少による温度制御性能の低下が問題となる。
一方、坩堝内の材料残量を推定する方法は提案されている。たとえば、電源装置を操作するなどの方法で、分子線材料が充填されている坩堝の加熱もしくは冷却をプロファイルに従って行ない、その時の温度変化から熱容量を算出し、算出された熱容量から材料残量を推定する方法である(特許文献1参照)。
特開2004−189539号公報
しかし、かかる方法は、分子線材料の残量を推定するのみであり、分子線源セル内の材料減少に伴う分子線源セルの温度制御性能の低下を防ぐ方法については示されていない。また、分子線源セルの加熱状態を変化させて熱容量を推定する手法は、加熱状態を変化させる操作が入るため、セルヒータが急激な温度変化を受けて、負担が掛かることになる。この急激な温度変化は、電力の通電状態から電力を遮断する場合、逆に、電力が遮断されている状態から通電状態へ切り替える場合、また、2つの電力量をステップ状に切り替えることで温度変化を起こそうとする場合に大きくなる。さらに、この推定方法を実行するには、MBE装置が待機中のときに作業を行なう必要があるために、MBE装置を稼動させるために必要な作業量が増加してしまう。
本発明の課題は、分子線源セル内の分子線材料の残量の減少により熱容量が変化しても、分子線源セルのヒータおよび電源装置に過剰な負荷をかけず、また、作業量を増加させることなく、分子線源セルの温度制御性能の低下を抑え、安定した成膜を継続して行なうことができる分子線源セルの制御システムを提供することにある。さらに、かかる制御方法およびMBE装置を提供することにある。
本発明の分子線源セルの制御システムは、分子線エピタキシャル装置に用いられる分子線源セル内で分子線材料を入れる坩堝と、坩堝を加熱または冷却する変温手段と、坩堝の温度を計測する温度計測手段と、変温手段および温度計測手段に接続して、坩堝の温度をフィードバック制御する温度制御手段とを備える分子線エピタキシャル装置の温度制御システムであって、成膜終了後、成膜開始までの間に、フィードバックゲインの調整の要否を判断する判断手段と、変温手段による坩堝の加熱または冷却と、温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整手段とを備えることを特徴とする。
温度制御手段によるフィードバック制御は、PID制御により実施することができる。また、判断手段では、温度計測手段からの温度情報と、設定している目標温度に基づき、フィードバックゲインの調整の要否を判断することができる。本発明の分子線エピタキシャル装置は、かかる分子線源セルの制御システムを備えることを特徴とする。
本発明の分子線源セルの制御方法は、分子線エピタキシャル装置に用いられる分子線源セル内で分子線材料を入れる坩堝と、坩堝を加熱または冷却する変温手段と、坩堝の温度を計測する温度計測手段と、変温手段および温度計測手段に接続して、坩堝の温度をフィードバック制御する温度制御手段とを備える分子線エピタキシャル装置の温度制御方法であって、成膜終了後、成膜開始までの間に、フィードバックゲインの調整の要否を判断する判断工程と、変温手段による坩堝の加熱または冷却と、温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整工程とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、MBE装置において、分子線源セル内の分子線材料の残量が減少し、熱容量が変化しても、分子線源セルのヒータおよび電源装置に過剰な負荷をかけることなく、分子線源セルの温度制御性能の低下を抑え、安定した成膜を継続して行なうことができる。
図1に、本発明のMBE装置の構成を例示する。このMBE装置は、図1に示すように、真空容器3内に、基板4と、基板加熱ヒータ2とを保持するマニピュレータ1が配置されており、真空容器3の下部には各種分子線材料を充填した複数の分子線源セル6a,6bを有する。分子線源セル6a,6bと基板4の間にはセルシャッター5a,5bを備え、セルシャッター5a,5bの開閉によって、基板4に照射される分子線を変化させ、薄膜の組成および膜厚を制御する。
分子線源セル6a,6bには加熱ヒータが備えられ、電源装置7a,7bにより加熱ヒータに電力が供給されている。この電源装置7a,7bは温度制御装置8に接続されている。分子線源セルには、熱電対などにより温度が計測され、温度情報は温度制御装置8に伝達され、分子線源セル6a,6bは、この計測データをもとに温度が制御されている。分子線源セルについては詳細を後述する。マニピュレータ1には熱電対が基板加熱ヒータ2の近傍に備えられ、成膜時には基板4が所望の温度になるように制御される。このMBE装置には、成膜レシピを実行するための制御コンピュータ9が接続されおり、温度計測データと制御コンピュータ9からの指示値が温度制御装置8に入力される。なお、図1においては、基板加熱ヒータ2の温度制御装置、熱電対以外の真空計などの各種計測装置および排気装置などは省略している。
図2に、本発明の分子線源セルおよび分子線源セルの周辺の構成要素を例示する。この分子線源セルは、図2に示すように、分子線材料202を充填する坩堝201を備え、坩堝201を加熱または冷却する変温手段として、たとえば、坩堝201の周囲にセルヒータ203を備える。また、坩堝201の温度を計測する温度計測手段として、熱電対204が坩堝201に近接もしくは接触して配置されている。さらに、ラジエーションシールド209がセルヒータ203を取り囲むように配置されている。上記の構成部品は分子線源セルのベースとなるフランジ205に固定され、フランジ205には電力導入端子207が取り付けられており、電源装置210から導線208を介してセルヒータ203へ電力供給を行なっている。また、フランジ205には熱電対導入端子206が取り付けられ、熱電対204からの温度情報が外部の温度制御装置211に伝達されている。
図2に示すように、温度制御装置211は、変温手段であるセルヒータ203と、温度計測手段である熱電対204と接続し、坩堝201の温度をフィードバック制御する。フィードバック制御とは、自動制御の1方式であり、出力と入力のあるシステムにおいて、出力に応じて入力を変化させる制御方法である。具体的には、つぎの(1)〜(4)の操作を繰り返して、坩堝201の温度が設定温度となるように制御する。
(1)熱電対204により坩堝201の温度を計測し、計測された温度信号を温度制御手段211に入力し、設定温度との温度差を計算する。
(2)温度制御手段211では、さらに、この温度差に応じて、セルヒータ203に供給する電力量を計算し、電源装置210に対して計算結果を出力する。
(3)電源装置210は、温度制御手段211からの出力値に応じた電力をセルヒータ203に供給する。
(4)セルヒータ203に電力が供給されることにより、坩堝201の温度が変化する。
(1)熱電対204により坩堝201の温度を計測し、計測された温度信号を温度制御手段211に入力し、設定温度との温度差を計算する。
(2)温度制御手段211では、さらに、この温度差に応じて、セルヒータ203に供給する電力量を計算し、電源装置210に対して計算結果を出力する。
(3)電源装置210は、温度制御手段211からの出力値に応じた電力をセルヒータ203に供給する。
(4)セルヒータ203に電力が供給されることにより、坩堝201の温度が変化する。
このような、温度の計測→制御演算→操作量の出力→温度の変化→温度の計測→・・・と繰り返し、信号をフィードバックすることにより制御する。フィードバック制御は、PID制御により行なうことができ、温度制御装置211では、計測された温度が目標値となるように、PID制御アルゴリズムを用いたフィードバック制御の演算を行ない、セルヒータ203の電源装置210への制御信号が算出される。PID制御アルゴリズムは、つぎの式で示される。
ここで、tは処理時間、u(t)は制御入力、e(t)は測定値と目標値との偏差であり、KPは比例ゲイン、TIは積分時間、TDは微分時間である。これらの制御パラメータを設定することで、PID演算の制御特性は決定される。以後、これらの制御パラメータをPIDゲインと記述する。また、温度制御装置211には、計算処理装置212が接続されており、計算処理装置212は、熱電対204により計測された温度データ、電源装置210への制御信号と出力電力など各種データの記録、および、以下に述べる分子線源セルの温度制御システムの最適化工程を実行する。この計算処理装置212は、図1における制御コンピュータ9内に組み込むこともできる。
本発明の温度制御システムにおける制御工程を図3に示す。MBE装置はバッチ処理により成膜が行なわれ、温度制御工程は、前バッチの成膜の終了(ステップ(以下、「S」と略す。)301)後に開始される。まず、現状の分子線源セルの制御システムの制御性能が評価される(S302)。そして、その評価結果により、フィードバックゲインの調整の要否を判断する(S303)。調整が必要と判断した場合には(S303にてYESの場合)、処理はS304へ移される。一方、調整が不要と判断した場合には(S303にてNOの場合)、PIDゲインの最適化処理を行なうことなく、次バッチの成膜を開始する(S309)。温度制御システムの最適化が不要と判断された場合には、つぎの成膜が開始されるまで分子線源セルおよびMBE装置を待機状態とすることもできる。温度制御システムの制御性能の評価(S302)と調整の要否の判断(S303)については後述する。
調整が必要と判断した場合には、セルヒータへ投入される電力量と熱電対で計測される分子線源セルの温度の記録を開始する(S304)。これらのデータの記録は、計算処理装置内で実行することができる。つぎに、電力量をあるパターンに従い変化させるテスト用信号を電源装置へ入力する(S305)。テスト用信号のパターンは、たとえば、温度が平衡状態となっている第1電力量から、ある差をもった第2電力量へステップ状に電力量を変化させるパターンを利用することができる。このテスト信号のデータとテスト信号の入力により変動する分子線源セルの温度は、前工程から引き続き記録される。つぎに、たとえば、第2電力量において分子線源セルの温度が平衡状態になったことを確認した後、テストを終了し(S306)、データの記録を停止する(S307)。つづいて、前述の記録データから、たとえばPIDゲインなどのフィードバックゲインの最適化計算を計算処理装置などにより実行し、計算結果を温度制御装置に入力する(S308)。この最適化計算については後述する。その後、次バッチの成膜を開始する(S309)。
温度制御システムの制御性能の評価(S302)とフィードバックゲインの調整の要否の判断(S303)の手順を図4に示す。まず、成膜中に計測した分子線源セルの温度とその目標値のデータを逐次記録する(S401)。つぎに、記録したデータを計算処理装置などに読み込み(S402)、読み込んだデータについて、たとえば、成膜中のある一定区間における、分子線源セルの設定温度と計測された温度との差分の2乗値の積分計算を行ない、この計算値を温度制御システムの制御性能の評価値とし(S403)、予め設定している基準値と評価値とを比較する(S404)。評価値は制御システムの制御性能が悪い場合に大きくなる。また、温度の偏差の2乗値を積分する方法と異なる他の計算方法による評価値を採用することもできる。
つぎに、評価値を、予め設定している基準値と比較した後(S404)、最適化のための調整の要否を判断し、評価値が基準値を超えている場合(S405にてYESの場合)、制御システムの最適化を開始する(S406)。一方、評価値が基準値を超えていない場合(S405にてNOの場合)、制御システムの最適化は必要ないとして、次バッチまで待機させることができる(S407)。たとえば、評価値をPIDゲインが最適に設定されている初期状態と比較し、初期状態の評価値と現在の評価値の差分が予め設定してある値より大きくなっている場合には、温度制御システムの最適化が必要であると判断する。このように、フィードバックゲインの調整の要否は、温度計測手段からの温度情報と、設定している目標温度に基づき判断することができる。また、これらの一連の手順は計算処理装置内で実行することができる。
図3におけるPIDゲインの最適化計算の工程(S308)について、図5に基づき手順を説明する。まず、電源装置よりセルヒータへ投入される電力量が、第1電力量から第2電力量へ変更された時刻t0を検出する。つぎに、分子線源セルの温度501の基づき、電力量の変化により分子線源セルの温度上昇が始まった時刻t1を検出する。つづいて、t0とt1より、むだ時間Lを次式により計算する。
L=t1−t0
つぎに、第1電力量の時に計測された温度T1と、第2電力量で平衡状態となった時に計測された温度T2の差分、つまり、電力量の変化による温度上昇値dT(=T2−T1)を計算し、さらに計測温度がT1+0.632dTとなる時刻t2を算出する。つづいて、時定数Tを次式により計算する。
T=t2−t1
最後に、むだ時間Lと時定数Tを用いて、次式によりPIDゲインを計算する。
KPK=0.6T/L
TI=T
TD=0.5L
ここで、Kは定常ゲインであり、電力量の変化に対する温度の変化量の比率である。これらのPIDゲインの計算式はCHR法として知られている。しかしながら、PIDゲインの計算式はこれらに制限されるものではなく、各係数を変更すること、さらには式の形を変更することが可能である。一連の手順は計算処理装置内で実行することができる。このように、本発明の分子線源セルの制御システムは、電源装置などからなる変温手段による坩堝の加熱または冷却と、温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整手段を備えることを特徴とする。フィードバックゲインとは、フィードバック制御のパロメータであり、制御方法により異なり、たとえば、PID制御の場合にはPIDゲインが該当する。フィードバックゲインを設定することにより、フィードバック制御の特性が定まる。
L=t1−t0
つぎに、第1電力量の時に計測された温度T1と、第2電力量で平衡状態となった時に計測された温度T2の差分、つまり、電力量の変化による温度上昇値dT(=T2−T1)を計算し、さらに計測温度がT1+0.632dTとなる時刻t2を算出する。つづいて、時定数Tを次式により計算する。
T=t2−t1
最後に、むだ時間Lと時定数Tを用いて、次式によりPIDゲインを計算する。
KPK=0.6T/L
TI=T
TD=0.5L
ここで、Kは定常ゲインであり、電力量の変化に対する温度の変化量の比率である。これらのPIDゲインの計算式はCHR法として知られている。しかしながら、PIDゲインの計算式はこれらに制限されるものではなく、各係数を変更すること、さらには式の形を変更することが可能である。一連の手順は計算処理装置内で実行することができる。このように、本発明の分子線源セルの制御システムは、電源装置などからなる変温手段による坩堝の加熱または冷却と、温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整手段を備えることを特徴とする。フィードバックゲインとは、フィードバック制御のパロメータであり、制御方法により異なり、たとえば、PID制御の場合にはPIDゲインが該当する。フィードバックゲインを設定することにより、フィードバック制御の特性が定まる。
つぎに、温度制御システムによる分子線源セルの温度制御性能の改善効果を説明する。温度制御システムの最適化が実行される前の分子線源セルの温度制御状態を図6に示す。一方、図7には、本発明の温度制御システムにより最適化手段が実施された後の温度制御状態を示す。図6および図7では、縦軸は、分子線源セルの計測温度と目標温度との偏差を表す。図6において、制御性能の評価値を計算すると33.8446であり、基準値を25と設定していたため、温度制御システムの最適化手段を実行し、最適化後の評価値は23.0376となった。図8に、最適化処理による評価値の変化を示す。図8から明らかなとおり、本発明の最適化処理により制御性能が改善している。したがって、本発明によれば、MBE装置において、分子線材料の減少などにより、熱容量が変化しても、分子線源セルの温度制御性能の低下を抑え、次バッチでも安定した成膜を継続して行なうことが可能となる。また、温度制御システムの最適化の評価を行なっているため、ヒータに急激な温度変化を起こすテスト信号を頻繁に電源装置に加える必要がなく、ヒータへの負荷が減り、また、MBE装置を稼動させるための作業量の増加も最低限に抑えることが可能である。
成膜終了後、成膜開始までの間に、フィードバックゲインの調整の要否を判断するが、かかる判断は、温度計測手段からの温度情報と、設定している目標温度に基づき行なうことができ、計測温度と目標温度とから評価値を算出し、評価値により制御する態様が好ましい。評価値としては、たとえば、温度の偏差の二乗の積分値を用いることができるが、評価値の算出方法はこれに制限されるものではなく、たとえば、温度の偏差の絶対値の積分値、一定温度を目標値とした場合の電源装置への制御出力のばらつきなどを用いることも可能である。また、このような評価値を複数用いることにより、より精密な制御が可能となる。
また、PIDゲインの計算式は、上述に例示するものに限定されることはなく、電源装置に入力するテスト信号のパターンに応じてPIDゲインの計算式は変更する態様が好ましい。また、分子線源セルが、1組の熱電対とヒータで構成されている態様を例示して説明したが、2組以上の熱電対とヒータにより構成されている分子線源セルにおいても、それぞれの熱電対とヒータの組において、同様の手順で制御システムの最適化を図ることが可能である。
本発明のMBE装置は、上述の分子線源セルの制御システムを備えることを特徴とする。また、本発明の分子線源セルの制御方法は、分子線源セル内で分子線材料を入れる坩堝と、坩堝を加熱または冷却する変温手段と、坩堝の温度を計測する温度計測手段と、変温手段および温度計測手段に接続して、坩堝の温度をフィードバック制御する温度制御手段とを備えるMBE装置の温度制御方法であって、成膜終了後、成膜開始までの間に、フィードバックゲインの調整の要否を判断する判断工程と、変温手段による坩堝の加熱または冷却と、温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整工程とを備えることを特徴とする。したがって、分子線材料の残量により熱容量が変化しても、分子線源セルの温度制御性能を維持することができ、セルヒータなどに過剰な負担をかけることがない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、MBE装置を用いたエピタキシャル成長において、分子線源セル内のヒータおよび電源装置に過剰な負荷をかけることなく、分子線源セル内の材料の減少による温度制御性能の低下を抑えることができる。このため、MBE装置を用いて安定した成膜を継続して行なうことが可能となるため有用である。
1 マニピュレータ、2 基板加熱ヒータ、3 真空容器、4 基板、5a,5b セルシャッター、6a,6b 分子線源セル、7a,7b,210 電源装置、8,211
温度制御装置、9 制御コンピュータ、201 坩堝、202 分子線材料、203 セルヒータ、204 熱電対、205 フランジ。
温度制御装置、9 制御コンピュータ、201 坩堝、202 分子線材料、203 セルヒータ、204 熱電対、205 フランジ。
Claims (5)
- 分子線エピタキシャル装置に用いられる分子線源セル内で分子線材料を入れる坩堝と、
該坩堝を加熱または冷却する変温手段と、
前記坩堝の温度を計測する温度計測手段と、
前記変温手段および前記温度計測手段に接続して、坩堝の温度をフィードバック制御する温度制御手段とを備える分子線エピタキシャル装置の温度制御システムであって、
成膜終了後、成膜開始までの間に、フィードバックゲインの調整の要否を判断する判断手段と、
前記変温手段による坩堝の加熱または冷却と、前記温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、前記温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整手段と
を備えることを特徴とする分子線源セルの制御システム。 - 前記温度制御手段によるフィードバック制御は、PID制御である請求項1に記載の分子線源セルの制御システム。
- 前記判断手段は、前記温度計測手段からの温度情報と、設定している目標温度に基づき、フィードバックゲインの調整の要否を判断する請求項1に記載の分子線源セルの制御システム。
- 分子線エピタキシャル装置に用いられる分子線源セル内で分子線材料を入れる坩堝と、
該坩堝を加熱または冷却する変温手段と、
前記坩堝の温度を計測する温度計測手段と、
前記変温手段および前記温度計測手段に接続して、坩堝の温度をフィードバック制御する温度制御手段とを備える分子線エピタキシャル装置の温度制御方法であって、
成膜終了後、成膜開始までの間に、フィードバックゲインの調整の要否を判断する判断工程と、
前記変温手段による坩堝の加熱または冷却と、前記温度計測手段からの坩堝の温度変化の情報に基づいて、前記温度制御手段内のフィードバックゲインを調整する調整工程と
を備えることを特徴とする分子線源セルの制御方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の分子線源セルの制御システムを備えることを特徴とする分子線エピタキシャル装置。
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