JP2007084882A - 低加工硬化型鉄合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Cr当量(質量%)=(Cr質量%+1.21Mo質量%+0.48Si質量%+2.48Al質量%)及びNi当量(質量%)=(Ni質量%+0.11Mn質量%−0.0086(Mn質量%)2+24.5C質量%)で示されるCr当量対Ni当量図(図1)の4点で囲まれる領域Aにあり、残部Fe及び不可避的不純物からなる低加工硬化鉄合金であって、10emu/g以上の飽和磁化を有する強磁性体であり、引張応力-歪み曲線において10%歪み付加時の加工硬化率が16MPa/%未満であることを特徴とする低加工硬化鉄合金。
【選択図】 図1
Description
このようなことから、加工硬化性の少ない鉄合金について幾つかの文献が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。これらの特許文献によれば、オーステナイト安定化元素であるNi、Cu、Mnを利用し、加工誘起マルテンサイト変態を抑制することで低加工硬化性を得ている。
また、低加工硬化性を有する既知鋼種として、SUS305などがあるが、上記の合金と同様に強度が低く、低加工硬化性も十分でない。
この知見に基づき、次の発明を提供する。
その4)として、B:0.001〜1.5質量%、N:0.001〜1.5質量%、各添加量が0.01〜5.0質量%であるBe,Mg,Ti,V,Co,Cu,Nb,Mo,Ta、Wから選択した元素の1種又は2種以上をさらに含有する1)〜3)のいずれかに記載の低加工硬化鉄合金を提供する。
Cr当量については、当然ながら前記(Cr質量%+1.21Mo質量%+0.48Si質量%+2.48Al質量%)となる範囲で、CrをMo、Si、Alに代替できる。同様に、Ni当量についても、(Ni質量%+0.11Mn質量%−0.0086(Mn質量%)2+24.5C質量%)となる範囲で、NiをMn、Cに代替できる。
Mn:10.0〜45.0質量%とする理由は、10.0質量%未満ではfcc構造を有するγ相が得られず、45.0質量%を超えると十分な強度が得られないからである。特にMn:15.0〜40.0質量%が望ましい。これにより、さらに引張強度の向上が可能である。
C:0.5〜2.0質量%とする理由は、0.5質量%未満ではα相が多量に析出して脆くなってしまい、2.0質量%を超えるとM3C(M:Fe、Mn、Cr等)等の炭化物が析出してしまうためである。
Cr:0.01〜10.0質量%とする理由は、0.01質量%未満では耐食性及び耐酸化性に優れた合金が得られず、10.0質量%を超えるとCr炭化物やσ相などの金属間化合物が出現してしまう。特に、Cr:5.0〜10.0質量%が望ましい。これにより、耐食性をさらに向上させることができる。
Ni:0.001〜15.0質量%とする理由は、0.001質量%未満では、高延性を得ることができず、15質量%を超えると、低加工硬化率が得られないためである。Ni添加によって延性の効果を持たせるためには、Ni添加の下限値を、特に0.01重量%とすることが望ましい。
さらに、図2から明らかなように、Cr当量対Ni当量図において、(Cr:25質量%、Ni:48質量%)、(Cr:24.2質量%、Ni:10質量%)、(Cr:38質量%、Ni:11質量%)、(Cr:45質量%、Ni:41質量%)の4点で囲まれる領域Bとする理由は、加工硬化率を10MPa/%未満に抑えるためである。これによって、さらに加工硬化率を低減することができる。
B:0.001〜1.5質量%とする理由は0.001質量%未満では鋳造組織及び鍛造組織においても微細な結晶粒組織が得られず、また1.5質量%を超えると硼素化合物等の析出により脆化してしまうからである。
N:0.001〜1.5質量%とする理由は、0.01質量%未満では十分な比強度を得ることができず、1.5質量%を超えると窒化物等の析出により脆化するからである。上記の組成範囲において微細な結晶粒組織が得られ、優れた機械的特性を持つ合金が得られる。
これらを単独添加又は複合添加することができる。また、これらを0.01〜5.0質量%の範囲とするのは、0.01質量%未満であると添加の効果がなく、5.0質量%を超えると脆化してしまう問題があるので、上限を5.0質量%とする。これらは、さらに本発明の鉄合金の特性を向上させるために、副成分として添加するものであり、必須成分とするものではない。
特に、本発明の低加工硬化鉄合金では、微細なκ相が析出した強磁性体とすることにより、加工硬化率が10MPa/%未満であり、かつ降伏強度が700MPa以上、引張強度が900MPa以上とすることができる。
また、必要に応じて、B、N(それぞれ0.001〜1.5質量%)及びBe、Mg、Ti、V、Co、Cu、Nb、Mo、Ta及びW(それぞれ0.01〜5.0質量%)からなる群から選択した1種又は2種以上の元素を所定量添加して、適宜原料成分を調整する。
B、N及びBe、Mg、Ti、V、Co、Cu、Nb、Mo、Ta及びWを添加する場合には、純元素単体、フェロボロン、フェロタンタル、フェロニオブなどの合金を適宜調整し所定量を添加する、また窒素雰囲気での溶解などにより含有させる。
このようにして得られた材料は、合金の化学組成及び加工条件の選択により、γ単相、γ+α(bcc構造)2相、γ+κ2相、γ+α+κ3相組織が得られる。
本願発明において適用できる組織はγ+α(bcc構造)2相組織と微細なκ相を含む組織を有する鉄合金であり、特に微細なκ相を含む組織の合金において、極めて高い高耐力・高引張強度と、極めて低い加工硬化性を備えた本発明の鉄合金が得られる。
このようなκ相の微細組織を得るためには、熱処理後の冷却速度を制御することが重要であり、合金組成により水中焼入れ、オイル中焼入れ、空冷、炉冷などの製造工程を採用する。
また、鋳造インゴット若しくは該鋳造インゴットを熱間圧延した後、又は必要に応じてこれをさらに冷間加工した後、熱処理により一旦γ単相とし、その後200°C〜1000°Cの温度範囲で1分以上時効することによっても、微細なκ相を析出させることができる。本発明においては、微細なκ相の析出が達成できれば、特にその製造工程に制限はなく、必要な加工、熱処理及び冷却を行うことができる。
(実施例1−23)
本発明の鉄合金の範囲で、表1に示す実施例1−23の合金組成について高周波溶解炉を用いて溶解し、これを鋳造インゴットとした。次に1100°Cの温度にて、熱間圧延、900〜1100°Cの温度にて10分の熱処理、及び水中焼き入れ又は空冷の製造工程を経て合金試料を作製した。
実施例1−23に示すいずれの合金も、飽和磁化が10emu/g以上である強磁性体であり、10%引張歪み付加時の加工硬化率は16(MPa/%)以下であった。
実施例1、2、5及び9はγ+α相を有し、強磁性体である。このγ+α相を含む組織の代表例(実施例2)を図3に示す。図3の、γ相に点在する粒状又は紐状の組織がα相で、この紐状の長さが200μm程度の比較的粗な結晶でも脆くなることがなく、α相を含む合金は加工硬化率が低下し良好な延性を示す。
他の実施例、即ち実施例3、4、6、7及び10−23は、微細なκ相を含むもの、すなわちγ相+α相+κ相又はγ相+κ相の組織を有し、同様に強磁性体である。いずれも加工硬化率が低下し、延性を示す。
本鉄合金の加工硬化率は、Al濃度の増加に伴い低くなる傾向にあり、特に、Cr当量対Ni当量図(図2)中の領域B内に存在する合金では、10(MPa/%)未満と非常に小さい。
図5に、Cr当量対Ni当量図上に実施例1〜23の合金で得られた10%引張歪み付加時の加工硬化率及び後述する比較例1〜16の合金における10%引張歪み付加時の加工硬化率を表記した。
領域A内にある実施例合金は、いずれも加工硬化率が16(MPa/%)未満となっており、特に領域B内にある実施例合金はいずれも加工硬化率が10(MPa/%)未満であることが分る。
本発明の鉄合金は、含有成分の添加量を調整することにより、ヤング率、降伏強度、引張強さ、伸び、飽和磁化を多様に変化させることができることが分かる。
図6に示すように、κ析出相のサイズは100nm以下と非常に微細である。特に、このような組織を有する本鉄合金は、強磁性体であり、かつ高耐力・高強度・高延性を有し、極めて低い加工硬化率を有する。図6に示すような微細なκ相は、特に熱処理後の冷却過程(水焼入れ、空冷、炉冷などによる)において生成する。
比較例1−16は、本発明から逸脱する鉄合金であり、表3に示す比較例1−16の合金成分を、実施例と同様の製造工程を経て鉄合金を作製した。
比較例1−16については、表4に実施例と同様に、比較例合金のヤング率(GPa)、0.2%耐力(MPa)、加工硬化率(MPa/%)、引張強度(MPa)、引張伸び(%)、飽和磁化(emu/g)及び構成相を示す。
比較例3、4は、α相が存在するため強磁性体であるが、本発明合金の組成範囲から逸脱しており、その加工硬化率は、16(MPa/%)以上と大きい。
比較例1、2及び7〜15の鉄合金は、α相と粗大なκ相の存在により、強磁性を示すが、本発明合金の組成範囲から逸脱している。また、1μmサイズより大きい粗大なκ相の析出により、延性に乏しく、引張伸びはいずれも10%以下であった。
図5に示すように、本発明のCr当量対Ni当量図中の領域A及び領域Bの範疇外にある比較例は、いずれも10%引張歪み付加時の加工硬化率が16(MPa/%)以上と大きい。また、引張伸びが10%以下と延性に乏しい。
一方、比較例8は、Cr当量及びNi当量が本発明の成分範囲にあるが、Crを一切含有しておらず、粗大なκ相が析出しているために、引張伸びが0.25%と著しく悪かった。これは、比較例8材は、Crを一切含有していないために、κ相が熱処理温度(1100°C)にて安定相として存在し、κ相のサイズが容易に粗大化した為である。
図8に、比較例8にて得られた粗大なκ相を含有するγ+κ2相組織を示す。この組織は、光学顕微鏡により観察されたものである。マトリックスはγ相であり、この中に粗大なκ相が析出しているのが分る。このように粗大なκ相は、1100°Cの熱処理温度にて既に存在するため、そのサイズは大きく、材料の急激な低下を招く。この粗大κ相を有する鉄合金は、非常に脆く、10%以上の引張伸びを達成することができない。
Claims (4)
- Mn:10.0〜45.0質量%、Al:5.0〜15.0質量%、C:0.5〜2.0質量%、Si:0.01〜5.0質量%、Cr:0.01〜10.0質量%、Ni:0.001〜15質量%を含有し、Cr当量(質量%)=(Cr質量%+1.21Mo質量%+0.48Si質量%+2.48Al質量%)及びNi当量(質量%)=(Ni質量%+0.11Mn質量%−0.0086(Mn質量%)2+24.5C質量%)で示されるCr当量対Ni当量図(図1)において、(Cr当量:22.0質量%、Ni当量:48質量%)、(Cr当量:10質量%、Ni当量:10質量%)、(Cr当量:38質量%、Ni当量:11質量%)、(Cr当量:45質量%、Ni当量:41質量%)の4点で囲まれる領域Aにあり、残部Fe及び不可避的不純物からなる低加工硬化鉄合金であって、10emu/g以上の飽和磁化を有する強磁性体であり、引張応力-歪み曲線において10%歪み付加時の加工硬化率が16MPa/%未満であることを特徴とする低加工硬化鉄合金。
- Mn:15.0〜40.0質量%、Al:8.0〜15.0質量%、C:0.5〜2.0質量%、Si:0.01〜5.0質量%、Cr:5.0〜10.0質量%、Ni:0.01〜15質量%を含有し、Cr当量(質量%)=(Cr質量%+1.21Mo質量%+0.48Si質量%+2.48Al質量%)及びNi当量(質量%)=(Ni質量%+0.11Mn質量%−0.0086(Mn質量%)2+24.5C質量%)で示されるCr当量対Ni当量図(図2)において、(Cr:25質量%、Ni:48質量%)、(Cr:24.2質量%、Ni:10質量%)、(Cr:38質量%、Ni:11質量%)、(Cr:45質量%、Ni:41質量%)の4点で囲まれる領域Bにあり、残部Fe及び不可避的不純物からなる低加工硬化鉄合金であって、かつ15emu/g以上の飽和磁化を有する強磁性体であり、引張応力-歪み曲線において10%歪み付加時の加工硬化率が10MPa/%未満であることを特徴とする低加工硬化鉄合金。
- 1μm以下のサイズを有するペロブスカイト相(κ相)をマトリクス中に含有した強磁性体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低加工硬化鉄合金。
- B:0.001〜1.5質量%、N:0.001〜1.5質量%、各添加量が0.01〜5.0質量%であるBe,Mg,Ti,V,Co,Cu,Nb,Mo,Ta、Wから選択した元素の1種又は2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低加工硬化鉄合金。
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