JP2007070880A - 木製重ね梁およびそれを使用した木橋 - Google Patents
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Abstract
【課題】 接着層に気泡が残りにくく接着剤溜まりの発生も少なく、接着効果の薄い接着面を可及的に少なくした木製重ね梁を提供する。また、その重ね梁を使用して曲げ耐力や剪断耐力の向上を図りつつ軽量化を実現した橋桁を可能にする。
【解決手段】 芯持ち角材5の各重ね合わせ面5aに、一定断面形を保って長手方向へ延び角材相互が係合する複数の凹凸条7を形成する。その凹凸条7は個々に頂部、谷部、頂部と谷部をつなぎ平面的に見て頂部や谷部と重なることのない斜部からなる。各重ね合わせ面5aは、凹凸条7の表面に塗布された接着剤6により接合され、重ね合わせ面5aにはジベル等の金属部品を介装させずして上下の角材5の長手方向のずれを阻止することができるように、接着剤塗布面積を少なくとも1.2倍は増大されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 芯持ち角材5の各重ね合わせ面5aに、一定断面形を保って長手方向へ延び角材相互が係合する複数の凹凸条7を形成する。その凹凸条7は個々に頂部、谷部、頂部と谷部をつなぎ平面的に見て頂部や谷部と重なることのない斜部からなる。各重ね合わせ面5aは、凹凸条7の表面に塗布された接着剤6により接合され、重ね合わせ面5aにはジベル等の金属部品を介装させずして上下の角材5の長手方向のずれを阻止することができるように、接着剤塗布面積を少なくとも1.2倍は増大されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は木製重ね梁およびそれを使用した木橋に係り、詳しくは、長尺な木質角材を水平に置いた姿勢で重ね、重ね面に接着剤を塗布して一体化させた木製重ね梁に関する。すなわち、間伐材などの低品質小断面材を、橋梁の木製桁や建築物の梁等に適用できるようにした重ね梁の改良に関するものである。
柱や梁に使われる建築用の長い構造材は、「一本もの」の材料から製材するか、薄板材を積み重ねた集成材でつくられる。「一本もの」は材径が大きくなると高価となるだけでなく、国産材では入手がもはや困難になってきているものもある。一方、集成材は、繊維方向が板材の長さ方向に並行して品質のばらつきが少ない。しかし、一本の木材における使用可能な部分に限界のあることから原木に対する歩留りが悪く、低廉化は簡単に望めない。
近年、間伐材等の低品質材の有効利用法が種々開発されてきているが、それを建築土木資材に供するうえで乗り越えなければならないことに、長尺化と大断面化がある。特開2000−289008に記載されているように、木材を重ねたり縦継ぎする際に鋼棒を内装させたり、それに予張力を掛けるなどして木材の弱点を補いつつ大構造材とする試みが展開されている。これと並行して最近では、強大な接着力を発揮し耐候性もある接着剤の開発や接着処理技術の進歩も見逃すことはできない。
ところで、橋梁の桁材として木材を使用することが注目されるようになってきている。すなわち、特開2003−342911に開示されたごとく、路盤を形づくるコンクリート床版を下部で長手方向に支える桁材に木製梁を使用するもので、地元の山から出る余剰木材を消費する機会を与えようとする。もちろん、コンクリートや鉄筋の消費を抑えることも目的の一つであるが、橋梁の軽量化をおおいに促すことは言うまでもない。
間伐材などにおいては、それから得られる角材の一辺は90〜200ミリメートル、長さは3〜4メートルといったところであるから、橋桁とするためには上記したごとく長尺化と大断面化が不可欠となる。前者は加工精度の上がったフィンガージョイント技術をもってすれば全強接合すら達成されるまでに進歩してきているので問題は少ないが、後者は前者と同じく接着処理技術にかかわるものの、実現のために種々な工夫が提案されているとはいえ、いまだ模索の段階であることは否めない。
高強度構造材を角材の組合せ品によって得ようとする場合、図11の(a)に表したように、多段に重ね合わされた角材31,31を長いねじ棒またはラグスクリュー32によって一体化させる締結法がある。この場合、それぞれの重ね合わせ面には接着剤33が塗布され、ラグスクリュー32は養生中の圧着力を及ぼすようにも作用する。このような重ね梁に曲げが作用すると重ね合わせ面にずれが発生し、重ね梁としての一体性が損なわれる。
図11の(b)は各重ね合わせ面にジベル34が配設された例で、年輪を横断するようにして上段から下段の角材までを縦通するラグスクリュー32を取り囲むようにして角材に噛みこむ。下に拡大して表されたジベルには爪34aが上向きおよび下向きに設けられており、組合せ角材を油圧ジャッキで挟んで木面に噛みこませた後にラグスクリュー32を縦通させる。重ね合わせ面に作用する剪断力は接着層とジベルとで分担して対抗され、段ごとの相対的なずれの発生を阻止できると期待される。
ジベルは金属薄板をリング状や菱形輪郭に成形したものであり、例えば120ミリメートルの角材に対して差し渡し6センチメートル、高さ10ミリメートル程度である。それゆえ、その配設は断続的とならざるを得ず、重ね合わせ面でのずれ応力が大きくなると合わせ面の木層はジベルの爪との間で力を及ぼしあい、爪がめり込むなどする。結局、飛び石的に存在するジベルの爪元にガタが生じてその部分での一体性が損なわれ、組合せ角材の剛性低下を招く。
このように、ジベルは経時的にずれ止め作用を低下させるので、車両等が通過する際に振動や繰り返し荷重を受ける橋桁に適用することは好ましくない。その原因は、重ね合わせ面での接着剤による接合が角材の一体性を維持するに十分でないことに基づく。また、角材に芯持ちを使用すると大なり小なり違いがある年輪の偏りに原因して、組合された状態においても個々の角材の挙動が微妙に異なることは否定できず、これが重ね合わせ面における接着層に二次的な負荷をも掛けることになる。
接着力を大きくするためには、接着性能に変わりがないなら接着面を広くすればよい。広くした場合には空気が噛みやすくなるという問題も付随するが、これはある程度塗布技量の向上や塗布量の選定さらには接合面に及ぼす養生時の圧力の調整などによって解決することができる。図11の(a)は、角材31の上下の製材面に接着剤33を塗布し、長いラグスクリュー32によって例えば四段重ね状態で一気に一体化するものである。この場合の平坦な接着面積は、言うまでもなく幅(紙面左右方向の寸法)×長さ(紙面垂直方向の寸法)である。
これを大きくしたいときは(c)のように凹凸をつくって嵌合させ、立ち上がり面35によって面積を増大させればよい。また、(d)のように上下面をV字状に変形させ、傾斜角αを例えば30度にすれば2/√3≒1.15倍、45度にすれば1.41倍の接着面積を与えることができる。ところが、これらを丸材もしくは角材から得ようとすると、図12中に影を施した部分36,37からも分かるように、周囲を不平等かつ複雑な形で除去しなければならなくなるから、歩留りが悪くなる。すなわち、例えば120ミリメートル角に相当する重ね梁用の角材にしようとすれば、150〜160ミリメートルの角材を得ることができる丸太や角材を準備しておかなければならないといった無駄が生じる。
この無駄を少なくするためには、重ね合わせ面に大きな形状を与えないことである。例えば図11の(e)のように、数は多くして形の小さな凹凸38なら、対応できるかのように見える。図では約2倍の接着面積を達成しているが、上記したように角材は3〜4メートルもあり、切削された重ね合わせ面を全面密着させることは簡単なことでない。ましてや、凹みに残った空気が隅に追いやられる結果、逃げ出せないまま空洞をつくると接着力は必然的に落ちてしまう。もう一つの問題は、凹凸の立ち上がり面の接着が面積分ほど効いてこないということである。凹凸を噛みあわせる時点で竪面に付着する接着剤が擦り取られること、凹みに入って逃げ道を失った接着剤が凹凸条の深い嵌まり込みを阻害することなどが挙げられる。
特開2000−289008
特開2003−342911
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、低品質木材であっても原木から高い歩留りで角材を得て、これを安定した接合による大断面化により大きい強度や剛性を発揮しさらには繰り返し荷重にも強い建築土木用資材とすること、重ね合わせ面でのずれを防止するが経時的に機能を低下させるジベルを採用しなくてもよいようにすること、角材とはいえ個々に等質性が若干異なるゆえの重ね合わせ面でのばらつきのある変形を拘束しておくことができること、接着層に気泡が残りにくく接着剤溜まりの発生も少なく、効きの悪い接着面を可及的に少なくした木製重ね梁を提供することである。さらに、その重ね梁を使用して、変動荷重に対して強くさらに軽量化も図られる橋桁を実現し、地元の余剰木材を消費する機会を与え、コンクリートや鉄筋の消費を抑えられるようにすることである。
本発明は、長尺な木質材を水平に置いた姿勢で重ね、重ね面に接着剤を塗布して一体化させた木製重ね梁に適用される。その特徴とするところは、図1を参照して、芯持ち角材5の各重ね合わせ面5aに、一定断面形を保って長手方向へ延び角材相互が係合する複数の凹凸条7が形成される。その凹凸条7は図2の(b)に示すように個々に頂部、谷部、頂部と谷部をつなぎ平面的に見て頂部や谷部と重なることのない斜部からなる。そして、各重ね合わせ面5aは、凹凸条7の表面に塗布された接着剤6(図1を参照)により接合され、重ね合わせ面5aにはジベル等の金属部品を介装させずして上下の角材5の長手方向のずれを阻止することができるように、凹凸条7の成形に基づき接着剤塗布面積を少なくとも1.2倍に増大させていることである。
凹凸条7の1サイクルは、図2の(b)に示すa・sinθ(1≦a≦1.8、θ:rad)で与えられる形状としたり、図3の(c)および(d)に示した1/3円弧20以上1/2円に近い円弧21の正逆姿勢の連結によって与えられる形にしたりすることができる。また、上辺と高さがほぼ等しい台形で与える場合(図3の(e)を参照)、斜辺の立ち上がり角は少なくとも45度であり、大きくても75度までとしておく。
最上段の角材5Aの上面から最下段の角材5Dに向けてラグスクリュー8を掛けて重ね梁としておいたり(図2の(c)を参照)、掛けられたラグスクリューをその後に取り除いた重ね梁(図2の(d)を参照)としてもよい。
図4の(b)のごとく、最上段の角材5Aの上面にはウエブ部9wを上にした溝形鋼9を被せて接着したり、その溝形鋼のフランジ部9fを角材5Aの上面に設けた二条の溝10に嵌め込むようにしておく。
溝形鋼9の上面から最下段の角材に向けてラグスクリュー8(図4の(c)を参照)を掛けておいたり、溝形鋼の上面に上方へ向けて突出するスタッド12(図4の(b)を参照)を固定しておけば、このような重ね梁1を木橋13の構築に供することができる(図1の(a)を参照)。
本発明によれば、芯持ち角材の各重ね合わせ面に一定断面形を保って長手方向へ延び角材相互が係合する複数の凹凸条を形成するようにしたので、個々の角材は年輪構成に基因して曲がり方、捩れ方が微妙に異なるものであっても、凹凸条による係合はそれを現出させない一体挙動性の高い重ね梁を実現する。すなわち、重ね合わせ面は全長にわたって角材の単独挙動を阻止することになるから、重ね梁は等質性ある部材としての変形を呈しやすくなる。凹凸条は接着層における幅方向の剪断力負担を大きく低減するだけでなく、凹凸条により増えた接着面を利して長手方向の剪断耐力を向上させ、結局接着力は長期にわたり安定して発揮される。
凹凸条は、その1サイクルを頂部、谷部、頂部と谷部をつなぎ平面的に見て頂部や谷部と重なることのない斜部からなるので、塗布された接着剤の層に厚薄が生じにくくまた接着剤溜まりの発生も少なくなる。空気が混入しても開口側にひらいた斜部はその排出を助長し、空洞部の発生を可及的に抑える。凹凸条のある重ね合わせ面にジベルを配設することはできなくないが、そのジベル等の金属部品を介装させなくても上下の角材の長手方向のずれは阻止され、存在すれば経時的に生じるずれ止め機能の低下を受容する必要もなくなる。
凹凸条の存在により角材の製材面に対して表面積を少なくとも1.2倍増大させておけば、それだけ接着面積が増大する。面積の増大のみならず、接着面が係合状態におかれるから接着層は幅方向のずれ阻止負荷から解放され、大部分が長手方向のみの一次元的ずれ防止に対抗させることになり、接着層の脆弱化や剥離を抑えることができる。低品質材であっても原木から高い歩留りの角材を得て、これを安定した接合による大断面化により大きい強度や剛性を発揮させ、さらには繰り返し荷重にも強い建築土木用資材としておくことができる。
前記凹凸条の1サイクルの断面形状をa・sinθ(1≦a≦1.8、θ:rad)で与えておくと、a=1で表面積を1.2倍にすることができ、a=1.8のときは1.5倍以上にすることが可能となる。サインカーブはa=1のときの変曲点の勾配が45度であるから、混入空気も余剰接着剤も移動しやすくなる。凹凸条を部分円弧で与える場合、1/3円弧以上1/2円弧未満の円弧ならほぼ同じような増加率を得ることができる。1/2円弧に接近するとつなぎ部の勾配は90度に近づくが、その前後では接線勾配が急に減少するから接着剤の流動が阻害されることはない。
凹凸条は、上辺と高さがほぼ等しい台形の場合、斜辺の立ち上がり角は少なくとも45度であり、大きくても75度までとしておけば、表面積を1.2倍から1.6倍にすることができる。斜辺の立ち上がり角は90度よりかなり小さくなるから、接着剤や気泡が凹凸条の隅部分に停滞するにしても、許容できる程度で済む。
最上段の角材の上面から最下段の角材に向けてラグスクリューを掛けておけば、接着の養生時の固縛力が強化され、その後は重ね梁の重ね合わせの一体性を接着層とともに果たす。重ね梁からラグスクリューを取り除けば、日頃静荷重しか作用しないか大きい繰り返し荷重を想定する必要のないといったところでは十分に使用することができる。
最上段の角材の上面にウエブ部を上にした溝形鋼を被せて接着しておくなら、ヤング係数が約20倍も大きいから、その溝形鋼の断面積の20倍に及ぶ大きさの断面積の木質材を重ね梁のその部分に付加させたのと同等の効果が発揮される。組合せ構造材が単に上下のみ重ね合わされた竪方向に長いものであっても、力学的には大きい断面を有するT字形構造材とみなすことができ、断面性能の大幅な改善が果たされる。溝形鋼の存在は床版からの荷重を橋桁に分散して伝え、木桁の局部的損傷や損壊の発生も抑制される。
溝形鋼のフランジ部を角材上面に設けた二条の溝に嵌め込んでおけば、最上段の角材の補強がなされるだけでなく、溝形鋼を重ね梁に対して不動の位置におくことができる。ましてや、溝形鋼の上面から最下段の角材に向けてラグスクリューが掛けられていれば、橋桁としても使用できるほどに強固な重ね梁とすることができる。その溝形鋼の上面に上方に向けて突出するスタッドが固定されていれば、それをコンクリート床版に埋めこんで橋梁としての一体性が高められた木製桁となる。
スタッドを植設した溝形鋼を固定した木製重ね梁を橋桁として用いれば、通行に基因する荷重に耐えられまた大きい靱性を有するものとなるとともに、軽量化の図られた橋梁が実現される。地元の余剰木材を消費する機会も与えられ、コンクリートや鉄筋の消費が抑えられるようになる。
以下に、本発明に係る木製重ね梁およびそれを使用した木橋を、その実施の形態を表した図面をもとにして詳細に説明する。図1は木製重ね梁1を橋桁として用いた例であり、(a)は鉄筋2により補強されたコンクリート床版3の上面が路面4をなし、車両等が紙面に垂直となる方向に往来する横断面で表されている。すなわち、重ね梁1がコンクリート床版3を下部で長手方向に支える桁材として機能している。その重ね梁1は図2の(a)のように、長尺な木質の角材5を水平に置いた姿勢で重ね、重ね合わせ面5aに接着剤6を塗布して一体化されている。
角材5は芯持ち材が採用され、その各重ね合わせ面5aには、一定断面形を保って長手方向へ延び角材相互が係合する複数の凹凸条7が連続して形成される。その凹凸条7は、個々にはすなわち1サイクルにおいて、頂部、谷部、頂部と谷部をつなぎ平面的に見て頂部や谷部と重なることのない斜部からなっている。詳しく述べれば、図2の(b)のような例えばサインカーブで与えられる。この例では、斜部の中心位置における傾斜はなだらかとなっている。
図3の(a)の(1)から(3)では頂部と谷部をつなぐ斜部に相当する部分が、平面的に見て頂部や谷部と重なっているが、本発明においてはこのような形状としないことにしている。ちなみに、(1)から(3)に表した凹凸条7A,7B,7Cの場合、蟻継ぎ的となるから角材を重ねるにあたり上下方向から噛みあわせることは不可能であり、長手方向に滑らせて嵌合させる必要がある。接着剤が塗布されるから、3メートルもしくはそれ以上ともなる角材では摺動抵抗が極めて大きくなり、操作は実質的に不可能となる。
上記した重ね合わせ面5aは、その各々の凹凸条7の表面に塗布された接着剤により接合されるが、図11の(b)におけるジベル34が採用されることはないので、ジベルがあれば曲げが大きく作用した場合などに起こるめり込みや、それに基づくガタの発生は排除される。凹凸条7は重ね合わせ面5aにジベル等の金属部品を介装させずして上下の角材5の長手方向のずれの防止に寄与するが、それを形成するにおいては、接着剤塗布面が少なくとも1.2倍増大する形状としておく。
凹凸条7の1サイクルを図2の(b)のようにa・sinθ(1≦a≦1.8、θ:rad)で与えておくなら、a=1の実線の場合、面積増加率は20%強となる。これは線積分すれば分かることであるが、図中の二点鎖線のサインカーブのようにa=1.8とすれば増加率は60%近くにもなる。前者の場合の斜部における傾斜、すなわち変曲点における接線の勾配は45度、後者は約61度であり、いずれにしても混入空気や余剰接着剤の流動を妨げず、接着に好適な塗膜を生成させる準備が整えられる。上下面にa=1のサインカーブが与えらると、図3の(b)に示したようなサイズバランスとなる。
ところで、図2の(c)に示すように、最上段の角材5Aの上面から最下段の角材5Dに向けてラグスクリュー8が掛けられる。ラグスクリュー8としては軸長の大きいものが使用され、その軸端側にねじ部8sが形成され、頭部8hとねじ部8sとの間は円形断面の軸部8aとなっている。従って、(d)のごとく、重ねられる上の三つの角材5A,5B,5Cには軸部の円滑な挿通を図る馬鹿孔5bが形成され、最下段の角材5Dにはねじ部の谷径以下の直径を持ったねじ用下孔5cが設けられる。このようにしておけば、ラグスクリュー8は年輪を横切る方向に簡単に挿通され、ひび割れを起こさせることなく下端の角材5Dに至り、そこで回転が加えられるとねじ用下孔5cを螺進する。このようにしておけば、接着養生時の固縛がなされ、その後は重ね梁1の一体性を接着層とともに果たす。
重ね梁1を橋桁として使用する場合には、図2の(a)のごとく、最上段の角材5Aの上面にウエブ部9wを上にした溝形鋼9が被せられて接着される。このようにしておくなら、溝形鋼9が角材5よりもヤング係数が約20倍大きいから、その溝形鋼の断面積の20倍に及ぶ大きさの断面積の木質材を重ね梁の上部位に付加させたのと同等の効果が発揮される。重ね梁が単に上下のみ重ね合わされた背の高いものであっても、力学的には大きい断面を有する構造材と見なすことができ、断面性能の大幅な改善が図られる。
なお、溝形鋼9は、そのフランジ部を角材の幅全体に被せてもよいが、ここで挙げた例ではフランジ部9fが角材5Aの上面に設けた二条の溝10(図2の(d)を参照)に嵌め込まれ、そこに予め充填した接着剤11によって角材との一体化が図られるようにしている。最上段の角材5Aの補強がなされるだけでなく、溝形鋼自体は重ね梁1に対して断面欠損を生じさせることなく不動の位置におかれる。もちろん、角材の側方に金属物がはみ出ることもない。図1の(b)に示すように、溝形鋼9の上面から最下段の角材5Dに向けてラグスクリュー8が掛けられれば、橋桁としても使用するに十分な耐力を持った重ね梁1となる。
その溝形鋼9の上面に図4の(b)に示したごとくの上方に向けて突出するスタッド12を固定しておけば、それを図1の(a)のようにコンクリート床版3に埋めこんで木橋13としての一体性が高められる。ちなみに、ラグスクリュー8は接着剤6の養生の間の面圧着力を発揮するものであるが、図2の(d)のように養生後に一旦抜き去り、溝形鋼9を固定してから図4の(c)のように再度立てれば、曲げ耐力や剪断耐力が格段に増強された重ね梁となる。
以上のような構成の重ね梁は、その組立てによる大断面化と長尺化とが、次のような手順によって進められる。まず、図5の(a)のように、四面プレーナを用いて角材5の平面部とすべき部分5dの加工と、カッタによる重ね合わせ面5aの凹凸条切りを、通常同時に行う。角材5は3〜4メートルの長さがあるが、どの段に使用される角材であるかを定めた後はたいした時間を掛けることなく処理される。図4の(a)のように、最上段となる角材5Aには、溝形鋼のフランジ部を埋める二条の溝10も切られる。各角材5の接合端5eには図5の(b)のようにフィンガー加工が施され、長尺化の準備もなされる。長尺化により車両運搬不可能な長さとなる場合は、縦継ぎ作業を工事現場に運び込んでから行うことにして工場内処理はここでとどめられる。
いずれの場所で縦継ぎするにしても、図6の(a)ように角材5のフィンガー部14に接着剤15を塗布して、図7のように接合される。その作業要領は材軸方向に圧縮力を及ぼした状態で養生するが、本発明は縦継ぎ方法の提案を直接の目的としていないので、その加圧要領の説明は省く。なお、図ではフィンガー部を凹凸条のない面に与えているが、凹凸条に被せて形成することも差し支えない。次に、凹凸条7の表面に、エポキシ系樹脂などの接着剤6を刷毛などを用いて塗布する。角材5を図6の(b)のように重ねてラグスクリュー8により圧着する。合わせ面から出た塗膜生成後の余剰分は、適宜拭き取られる。
接着剤6が硬化した後に図2の(d)のように全てのラグスクリューを外し、二条の溝10に接着剤11が充填され、図4の(b)のようにスタッド12が溶接された溝形鋼9のフランジ部9fを入れて、図2の(a)に示した小ねじ16などによって止める。外したラグスクリュー8を図4の(c)のごとく溝形鋼9の上からさし込み、再度全段を図1の(b)のように拘束しておく。その後、二次材を取りつける穴や凹みが必要に応じて加工される。これを橋梁建設現場の該当位置に設置し、図1の(a)のように、その上部にコンクリート床版3を形成させる。その際、溝形鋼9にから突出させたスタッド12を埋没させ、橋桁と床版との一体性が高められる。
このようにして構築された木橋13においては、コンクリート床版3からスタッド12に作用するずれ応力(剪断応力)は溝形鋼9を介して重ね梁1に連続して伝達されることになり、重ね梁に不均等な荷重を及ぼさないようにしておくことができる。溝形鋼9がなければスタッド12はラグスクリュー8と同様に重ね梁内を下方へ伸ばすことになるが、その埋め込まれたスタッドがずれ応力により木にめり込む。しかし、溝形鋼の存在は下に延びるスタッドを不要としつつ、床版3との接合剛性を格段に高いものにする。
以上の説明から分かるように、芯持ち角材の各重ね合わせ面に一定断面形を保って長手方向へ延び角材相互が係合する複数の凹凸条を形成するようにしたので、接着面積を平坦な接着面に比べて思いのほか大きく拡大することができる。ましてや角材の幅方向に連続して形成されていれば、重ね合わせ面全体に均等な接着力を発揮させやすくなる。ちなみに、角材は芯持ちとはいえ年輪構成の違いにより厳密に言えば等質性があるわけでなく、従って組合された状態にあっても僅かながらも異方的な変形やその程度にばらつきが出ることは否定しがたい。長手方向に延びる凹凸条は角材の重ね合わせ面における一体性を向上させ角材独自の変形が阻止される結果、重ね梁の変形は等質性ある部材としてのそれにとどまり、それゆえ接着層に無用の負荷を与えることも少なく、結局は接着耐力も長期にわたり安定して発揮される。
凹凸条は、その1サイクルを頂部、谷部、頂部と谷部をつなぎ平面的に見て頂部や谷部と重なることのない斜部からなるので、塗布された接着剤の層に厚薄が生じにくくまた接着剤溜まりの発生も少なくなる。空気が混入しても開口側にひらいた斜部はその排出を助長し、空欠部の発生を可及的に抑える。凹凸条のある重ね合わせ面にジベルを配設できなくはないが、そのジベル等の金属部品を介装させなくても上下の角材の長手方向のずれは阻止され、却ってジベルが存在するなら爾後的に生じるずれ止め機能の低下をきたすこともない。逆に、靱性を大きくすることにも寄与する。
凹凸条の存在により角材の製材面に対して表面積を少なくとも1.2倍増大させることにしているから、それだけ接着面積が増大する。面積の増大のみならず、接着面が係合状態におかれるから接着層は幅方向のずれ阻止負荷から解放され、大部分が長手方向のみの一次元的ずれの防止に集中して作用させることができ、接着層の脆弱化や剥離を抑制しまた遅らせることができる。低品質材であっても原木から高い歩留りで角材を得て、これを安定した接合による大断面化により大きい強度や剛性を発揮しさらには繰り返し荷重にも強い建築土木用資材を得ることができる。もちろん、廃材扱いされることの多い間伐材以外の木材を使用することも可能であり、使用木材の対象が拡大されることは言うまでもない。
ところで、接着面積の増加率を少なくとも1.2倍としているのは、これより小さければ面積の増加による接合力増強効果が顕著に発揮されないからである。加えて、凹凸条の高低比率も必然的に小さくなり、接着層には幅方向の保持力も担わされることになって接着面における応力の大きさや分布の複雑化を招き、経時的な接着力の低下が進行しやすくなるからである。その1.2倍を越えるようにしておけば、実用に供することができる程度にそれらの現象が弱められる。一方、増加率は幾ら高くても良いというものではなく、凹凸条として角材に成形できることや接着操作時の角材の重ね合わせ操作の難易等を考慮して決められ、1.5倍から1.6倍程度確保できれば十分である。
以上のような思想のもとに作り上げられた重ね梁を使用し、スタッドを植設した溝形鋼が固定された梁材を橋桁とすれば、車両や人の通行により生じる変動荷重にも耐えられ、しかも、橋梁自体の軽量化も促進されることになる。地元の余剰材を消費する機会も与えられ、コンクリートや鉄筋の消費量が抑えられる。なお、図1のような木橋13にかぎらず、図8に示す波形鋼板17上にコンクリート18を打設した路盤19や建築床構造に適用することも、その他の構造材としても使用することもできる。
重ね梁の形状としては図1のような上下に長い矩形に限らず、図9の(a)ないし(d)に示したような正方形梁1A、T形梁1B、溝形梁1C、I(H)形梁1Dや、図示しないL形、等辺L形といったように縦横に組み込むことにより、構造材としての断面形状を任意に与えることができる。ラグスクリュー8は縦横に配置されることになるが、挿通位置は角材の長手方向でずらせておけばよい。
ところで、凹凸条は上記したサインカーブに限らず、図3の(c)や(d)に示すように、1サイクルを1/3円弧20ないし1/2円弧に近い円弧21の正逆姿勢の連結によって与えるようにしてもよい。1/3円弧の場合の面積増は20%であり、1/2円弧に近づけると57%増とすることができる。しかし、それを越えると凹凸条が(a)の(1)の符号7Aのごとく蟻溝的となり、角材の上下方向からの重ね合わせを不可能にする。1/2円弧に近づけると、斜部の中心における変曲点の勾配は約90度となるが、その前後で傾斜を急に落とすので、嵌合操作に特別問題が生じることはない。
凹凸条は部分楕円や部分長円の組合せ曲線によって与えられる場合に限らず、図3の(e)のように台形の正逆の繰り返し22とすることもできる。上辺と高さがほぼ等しい台形で与える場合、斜辺の立ち上がり角は少なくとも45度であり、大きくても75度までとしておく。斜部の立ち上がり角は90度に程遠いから、接着剤や気泡の閉塞で悩まされることはなくなる。いずれも、面積増による接着耐力の増強が顕著に見込まれるが、加工ならびに組立ての都合から許容される範囲で角度等が選定される。
以上は主として橋桁に適用する場合を念頭において説明した。しかし、上で少し触れた建築物の梁材として使用することも差し支えなく、その場合には溝形鋼を必ずしも取りつけてなくてよくまた二条の溝も必要でなくなる。例えば、通常静荷重しか作用しないか大きい繰り返し荷重を想定する必要のない梁として使用する場合には、接着の養生が済んだ後に、図2の(d)のようにラグスクリューを取り除いたかたちでも使用することもできる。溝形鋼がなければ、例えば図10に示すような二次材としての小梁23を取りつける穴や凹み24等を必要に応じて形成することも容易となる。
1…重ね梁、、1A…正方形梁、1B…T形梁、1C…溝形梁、1D…I(H)形梁、5,5A,5B,5C,5D…角材、5a…重ね合わせ面、6…接着剤、7…凹凸条、8…ラグスクリュー、9…溝形鋼、9f…フランジ部、9w…ウエブ部、10…二条の溝、12…スタッド、13…木橋、14…フィンガー部、19…床構造、20…1/3円弧、21…1/2円弧に近い円弧、22…台形の正逆繰り返し。
Claims (11)
- 長尺な木質材を水平に置いた姿勢で重ね、重ね面に接着剤を塗布して一体化させた木製重ね梁において、
芯持ち角材の各重ね合わせ面には、一定断面形を保って長手方向へ延び角材相互が係合する複数の凹凸条が形成され、
該凹凸条は個々に頂部、谷部、頂部と谷部をつなぎ平面的に見て頂部や谷部と重なることのない斜部からなり、
各重ね合わせ面は凹凸条の表面に塗布された接着剤により接合され、重ね合わせ面にはジベル等の金属部品を介装させずして上下の角材の長手方向のずれを阻止することができるように、前記凹凸条の成形に基づき接着剤塗布面積を少なくとも1.2倍は増大させたことを特徴とする木製重ね梁。 - 前記凹凸条の1サイクルは、a・sinθ(1≦a≦1.8、θ:rad)で与えられる形状であることを特徴とする請求項1に記載された木製重ね梁。
- 前記凹凸条の1サイクルは、1/3円弧以上1/2円弧に近い円弧の正逆姿勢の連結によって与えられることを特徴とする請求項1に記載された木製重ね梁。
- 前記凹凸条の1サイクルは、上辺と高さがほぼ等しい台形で与える場合、斜辺の立ち上がり角は少なくとも45度であり、大きくても75度までであることを特徴とする請求項1に記載された木製重ね梁。
- 最上段の角材の上面から最下段の角材に向けてラグスクリューが掛けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された木製重ね梁。
- 最上段の角材の上面から最下段の角材に向けてラグスクリューが掛けられ、その後ラグスクリューが取り除かれていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された木製重ね梁。
- 最上段の角材の上面にはウエブ部を上にした溝形鋼が被せられて接着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載された木製重ね梁。
- 前記溝形鋼のフランジ部が角材上面に設けた二条の溝に嵌め込まれていることを特徴とする請求項7に記載された木製重ね梁。
- 前記溝形鋼の上面から最下段の角材に向けてラグスクリューが掛けられていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載された木製重ね梁。
- 前記溝形鋼の上面には上方に向けて突出するスタッドが固定されていることを特徴とする請求項9に記載された木製重ね梁。
- 請求項10に記載された木製重ね梁を橋桁として構築されたことを特徴とする木橋。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005258823A JP2007070880A (ja) | 2005-09-07 | 2005-09-07 | 木製重ね梁およびそれを使用した木橋 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015081430A (ja) * | 2013-10-22 | 2015-04-27 | Jfe建材株式会社 | 取付金具および波形鋼板の木造梁取付構造 |
JP2015151841A (ja) * | 2014-02-19 | 2015-08-24 | Jfe建材株式会社 | 合成床構造 |
-
2005
- 2005-09-07 JP JP2005258823A patent/JP2007070880A/ja active Pending
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