JP2007060367A - 音響装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単・安価な手段で,小型サイズで,低域の共振を抑制するとともに良質な低音の再生を可能にし,且つクロスオーバー周波数での音の繋がりが良好・正確で,もって高忠実度な音の再生ができる従来にはない音響装置を提供しようとするものである。
【解決手段】低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数帯域で分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切り,チャンネルデバイダーによる低音側スピーカと高音側スピーカとの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置を提供した。
【選択図】図1

Description

本件の発明は,スピーカと該スピーカを駆動する増幅器を含む,オーディオ装置,テレビジョン装置,ラジオ装置,あるいは映像に合わせて音場を生成するビジュアルオーディオ装置などの音響装置に係り,より小さい外形のスピーカシステムで良質の低音を再生するとともに,原音に忠実な音の再生を行おうとする音響装置に係わるものである。
現在の一般的な音響装置は,ダイナミック型と呼ばれるスピーカを含み,該スピーカを取り付けたキャビネットとからなるスピーカシステムと,該スピーカシステムを駆動するアンプの組合せを含んで構成されている。このような音響装置は,可聴周波数帯域の低音から高音までを一様な音圧で再生できることを目標として製作される。
ダイナミック型スピーカは,音を発生する振動板と該振動板に直結し磁界中におかれた電磁コイル(ボイスコイル)で主要部を構成している。実用的な有限面積の振動板を有するスピーカにおいて,スピーカの駆動電圧が一定という条件で低音域での音圧を高音域と同じレベルにするためには,低音域における振動板の振幅が振動板の面積に応じて高音域の振動板の振幅より大きくなければならず,振動板の面積が小さいほど大きな振幅を必要とする。そのため,一般的なダイナミック型スピーカでは,機械的な共振を用いて入力電圧の大きさが同一でも低音域での振動板の振幅が高音域の振幅より大きくなるよう構成されている。
特開2002−101494
キャビネットは,前述のスピーカ振動板の前面と背面の音を遮断し,特に低音域で振動板前面と背面の音が干渉して音圧が減少することを防止する目的で用いられる。最も簡単なものは平面バッフルであるが,実用的な大きさの有限寸法のバッフルでは,低音域での振動板の前面と背面の音の遮蔽が完全でなく,より完全にするため振動板背面の空間を音場空間と仕切ったボックスが用いられる。
一般的にスピーカシステムとしての再生音の低域限界は,前述のスピーカの低音共振周波数で決まると言われている。それは,共振周波数では振動板は非常に大きな振幅で振動して必要な音圧を稼げるが,周波数が共振周波数より下がると振幅が急激に小さくなって音圧が下がるからである。また共振が強いと共振周波数より低い周波数でスピーカを駆動した場合に,歪みが急激に大きくなって,駆動信号に対し歪みの方が大きくなるからである。
前述の密閉型ボックスにスピーカを取り付けた場合,スピーカの共振周波数は元のスピーカ単体の共振周波数より上昇するのが普通である。それは,ボックス内部の空気が振動板に対してばねとして働き,有限の小さな空気容積ではばね定数が強くなるからである。ボックスの内容積を小さくすればするほど取り付けたスピーカの共振周波数は上昇する関係にある。
従って,いくら共振周波数が低いスピーカを使用しても,小さなスピーカボックスではそのスピーカ単体の低音再生能力を十分に引き出せないという問題があった。このことが十分な低音を再生できるスピーカの小型化を妨げていた。理論どおりの計算では,低域共振周波数が25Hz,口径が30cm,振動系質量が30gのスピーカユニットを使用して,ボックスを含めた共振周波数を30Hzにしようとすると2200リットルもの内容積を必要とする。50Hzでは320リットル,70Hzでは140リットルというようになり,ボックスを小さくすればするほど再生可能な低域での周波数は高くなる。
また,共振が強いと,共振周波数での音圧が高くなりすぎたり,共振周波数より低い周波数での再生音圧が急激に小さくなって歪みが急激に増加する,さらには共振管やダクトなど共振をさらに積極的に用いた方法でより顕著であるが,入力信号が無くなってから後も再生音が尾を引く,いわゆるダンピングが悪い音になるなどの問題があった。
スピーカの共振を抑制する方法として,スピーカの振動板背面に音響抵抗物質を配する方法が知られている。
特開昭50−161225 特開昭60−218998 特開平 5−244680
さらに,ボックスを構成するにあたり,最も簡単な形状は6つの長方形平面で構成される直方体であるが,ボックス内部の平行面間で生ずる中高音での共振も再生音を濁すことがよく知られている。最近では,ボックスを構成する板に厚く重たいものを用いてボックス自体が振動しないようにして,且つボックスの内面に平行面が生じないよう内面をくさび形にしたり,曲面を持たせたり加工が複雑化する傾向がある。そのため低音用スピーカを取り付けるボックスではボックスの大きさや重量に依存するコストに加え,加工のコストもばかにならず,高級なスピーカーシステムほどボックスにコストがかかっていた。
一方で,可聴音域における低音から高音までを1つの振動板を用いて一様な音圧で音を再生するのは困難である。これまでの一般的な音楽再生用の装置では,再生する音の周波数帯域を分けて専用のスピーカを使用したものが多い。このようなスピーカシステムには,パワーアンプはひとつで,パワーアンプとスピーカの間に帯域フィルタを設け,該フィルタにより音の周波数帯域を分割し,帯域毎に専用のスピーカを接続したマルチウエイ型と呼ばれるシステムと,パワーアンプより前段で帯域フィルタにより周波数帯域を分割し,帯域専用のスピーカ毎にパワーアンプを用いるマルチチャンネル型と呼ばれるシステムがある。
マルチチャンネル型システムでは,パワーアンプの数がスピーカの数だけ必要になり装置が大型になるので,音楽鑑賞のためだけの部屋を持っているような一部の愛好家の使用に限られている。一般的にはマルチウエイ型が多く用いられ,低音と中高音はマルチチャンネル型,中音と高音はマルチウエイ型というような複合使用も行われる。
しかし,マルチウエイ型のシステムで,ダイナミック型スピーカ同士を低音側と高音側で組み合わせることは本来至難の業である。なぜなら,マルチウエイ型の帯域フィルタとして用いられるネットワークは,もともとインピーダンスや位相の変化のない純粋な抵抗を負荷として想定し,位相も含めた合成出力ができるだけ一様になるよう考えられたものだからである。
しかるに現実的なネットワークのクロスオーバー周波数と減衰周波数帯域は,低音側スピーカではインピーダンス特性が高域の上昇部に掛かり,高音側スピーカでは,低域共振によるインピーダンス上昇部に掛かるのである。
特に,高音側スピーカのクロスオーバー周波数から減衰域にかけては,スピーカの低域共振のため,周波数が下がるに従ってコイルインピーダンスが急激に上昇するので,期待どおりの減衰特性が得られない。しかも位相も変化しているから,低音側スピーカとの組み合わせについて理想的な特性とずれがあって,総じてネットワークによる周波数の分割は理屈どおりに行かないのが普通である。そこで従来の製品では,共振インピーダンスの補正を行ったり,低音側と高音側で位相を逆に接続したり,低音側と高音側でわざとクロスオーバー周波数をずらせたりして表面的に聴感上の音の繋がりをつくろったものが多い。
そこで本件の発明は,簡単・安価な手段で,しかも従来できなかった小型サイズで,低域の共振を抑制するとともに歪みやつまった感じのない良質な低音の再生を可能にし,且つ従来のマルチウエイシステムやマルチチャンネルシステムで問題となっていたクロスオーバー周波数での音の繋がりが良好・正確で,もって高忠実度な音の再生ができる従来にはない音響装置を提供しようとするものである。
そこで,請求項1の発明では,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数帯域で分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切り,チャンネルデバイダーによる低音側スピーカと高音側スピーカとの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置を提供したものである。
請求項2の発明では,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切るとともに,高音側スピーカのパワーアンプ系の信号経路には,高音側スピーカの低域共振による低域音圧の増加を抑制するノッチフィルターが設けられていて,チャンネルデバイダーより前段で低音補償回路を使用して音響信号の低音を補償し,且つチャンネルデバイダーによる低音側スピーカと高音側スピーカとの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置を提供したものである。
請求項3の発明では,低音側スピーカと,高音側スピーカと,両方のスピーカを駆動するパワーアンプと,パワーアンプとスピーカの間でスピーカ駆動信号を周波数分割するネットワークを含む音響装置,または,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切るとともに,高音側スピーカはユニットの振動板背面を多孔質の音響抵抗物質で覆い,装置への音響信号の入力段で低音補償回路を使用して音響信号の低音を補償し,且つ低音側スピーカと高音側スピーカとの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置を提供したものである。
請求項4の発明では,低音側スピーカと,高音側スピーカと,両方のスピーカを駆動するパワーアンプと,パワーアンプとスピーカの間でスピーカ駆動信号を周波数分割するネットワークを含む音響装置,または,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切るとともに,高音側スピーカもまたユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切り,装置への音響信号の入力段で低音補償回路を使用して音響信号の低音を補償し,且つ低音側スピーカと高音側スピーカとの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置を提供したものである。
請求項1の発明によれば,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数帯域で分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切ったので,低音側スピーカの振動板背面の音圧遮蔽にボックスを使用しておらず,低音側スピーカの共振周波数が上昇することがないので,非常に小さな外形寸法でもユニット本来の低域共振周波数まで歪みのない良質な低音が再生できる。また,チャンネルデバイダーによる低音側スピーカと高音側スピーカの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあるので,チャンネルデバイダーの帯域分割周波数(クロスオーバー周波数)付近での低音側スピーカと高音側スピーカの周波数−位相特性がほぼ類似となり,マルチチャンネルアンプシステムを使用していることによる高音側スピーカの低音域での音圧減衰がほぼチャンネルデバイダーの特性どおりとなることと相まって低音側スピーカと高音側スピーカのつながりが非常によいという効果を有する。
請求項2の発明によれば,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切ったので,ボックスによる低域共振周波数の上昇がなく,非常に小さい外形寸法でも,ユニット本来の低域共振周波数より低い周波数まで歪みのない低音再生が行え,高音側スピーカのパワーアンプ系の信号経路には,高音側スピーカの低域共振による低域音圧の増加を抑制するノッチフィルターが設けられているので,低域側スピーカの振動板背面を多孔質の音響抵抗物質で覆ったことによる低音の音圧不足をチャンネルデバイダーより前段で低音補償回路を使用して補償した際に低音側スピーカと高音側スピーカの周波数−音圧特性を一様ならしめ,且つチャンネルデバイダーによる低音側スピーカと高音側スピーカとの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあるので,請求項1と同様に低音側スピーカと高音側スピーカのつながりが非常によいという効果を有する。
請求項3の発明では,低音側スピーカと,高音側スピーカと,両方のスピーカを駆動するパワーアンプと,パワーアンプとスピーカの間でスピーカ駆動信号を周波数分割するネットワークを含む音響装置,または,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切ったので,ボックスを使用した場合の共振周波数の上昇がなく,非常に小さな外形寸法でもユニツト本来の低域共振周波数やそれ以下の周波数まで歪みの少ない低音の再生が行えるとともに,高音側スピーカはユニットの振動板背面を多孔質の音響抵抗物質で覆うことで高音側スピーカの低域共振が抑制され,低音側スピーカの振動板背面を多孔質の音響抵抗物質で覆ったことによる低音の音圧不足を装置への音響信号の入力段で低音補償回路を使用して補償した際に低音側スピーカと高音側スピーカの組合せにおける周波数−音圧特性を一様ならしめるとともに,マルチウエイによるシステムでは高音側スピーカの低域側の音圧の減衰がスムースで,且つ低音側スピーカと高音側スピーカとの帯域分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定したから低音側スピーカと高音側スピーカの周波数−位相特性が類似となって低音側スピーカと高音側スピーカの音のつながりが非常によいという効果を有する。
請求項4の発明によれば,低音側スピーカと,高音側スピーカと,両方のスピーカを駆動するパワーアンプと,パワーアンプとスピーカの間でスピーカ駆動信号を周波数分割するネットワークを含む音響装置,または,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切ったので,非常に小さな外形寸法で低域共振周波数やそれ以下の周波数まで歪みを改善した低音再生が得られるとともに,高音側スピーカもまたユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切って低域共振度合いを小さくしたので,低音側スピーカの振動板背面を多孔質の音響抵抗物質で覆ったことによる低音不足を装置への音響信号の入力段で低音補償回路を使用して補償した際の低音側スピーカと高音側スピーカの組合せでの周波数−音圧特性を一様ならしめるとともに,マルチウエイによるシステムでは高音側スピーカの低域側の音圧減衰がスムースで,且つ低音側スピーカと高音側スピーカとの帯域分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる周波数範囲に設定したから低音側スピーカと高音側スピーカの周波数−位相特性が類似となって低音側スピーカと高音側スピーカの音のつながりが非常によいという効果を有する。
本件発明の請求項1の実施例を図1に示す。図1において,1は音源信号入力部,2はチャンネルデバイダでハイパスフィルタ(HPF)とローパスフィルタ(LPF)を備えている。3は高音側パワーアンプ,4は低音側パワーアンプ,5は低音側スピーカ,6は高音側スピーカで一般的なボックス入りのものなどでよい。
5の低音側スピーカは,スピーカ501の振動板背面を小空間504を残して多孔質の音響抵抗物質502で覆ってあり,振動板の振動による背面側の空気の振動は,該音響抵抗物質を通じてのみ外部の音場再生空間8に通ずることができるよう構成されている。多孔質の音響抵抗物質502は例えば連続気泡を有する発泡ウレタンのようなものであり,音響損失を有する。
503は,スピーカの配置を固定するためのフレームであり,拡大解釈すれば平面バッフルとも言えないことはないが,技術的には従来の多孔質音響抵抗物質502を用いないバッフルと異なる。なぜなら,多孔質の音響抵抗物質502を用いなければ,スピーカの大きさに対する相対的な大きさが図1の程度では,再生しようとする低音域において,スピーカ振動板の前面と背面の音の干渉による音圧の減少を抑制する機能が働かないからである。
503のフレームは,空間内でスピーカ501と音響抵抗物質502の組合せと配置を決定付けるとともに,スピーカ501の振動板と外部音場再生空間8の間の音響抵抗物質の厚み,すなわち空気の通路の長さを確保している。このフレームがないとスピーカユニット501の振動板背面から多孔質の音響抵抗物質502を通じた外部音場空間8までの距離を確保できない部分が生じ,音響損失による低音の減衰効果が十分でなくなるのである。もちろん多孔質の音響抵抗物質として厚みに対する低音での音響損失が非常に大きく,通気性が適度にあるような材料があれば音響的にはこのフレームは必要ない。またフレーム503は平板状でなくてもよい。例えば後方に向けて音響抵抗物質502を逆ホーン状に包み込み,先端を開口させて該開口部を通じてスピーカ501の背面の小空間504と音場再生空間8を音響抵抗物質502で仕切るように構成すれば,音響抵抗物質502だけでなくフレーム503の逆ホーン部でも音響損失を期待できる。
このようなスピーカ5の,機械系を電気系に置き換えた等価回路は図2のようになると考えられる。図2において,eはスピーカの振動系の駆動力,rはスピーカ自体が有する振動系の振動に対する音響抵抗,Lはスピーカの振動系の質量,C1はスピーカの振動系のコンプライアンス,C2は図1に示す空間504のコンプライアンス,r’は音響抵抗物質502の音響抵抗,C3は外部音場空間のコンプライアンスである。コンプライアンスとはばね定数の逆数のことであり,密閉された空気の場合コンプライアンスはその容積に比例して大きくなり,ばね定数は容積に反比例して小さくなる。
このような等価回路において,一般の密閉型ボックスではC3がボックス内部の空気の容積で定まる値となり,r’は非常に小さく,C2はC3と一体であるので存在しない。従って,密閉型ボックスではスピーカのC1とボックスのC3が直列的に接続され,C1とC3で合成されたCはC1より小さくなるからLとの関係で共振周波数は上昇することになる。共振周波数における共振度合いQはjωL/rで表されるから共振周波数が上昇するとQも大きくなる。
一方で,本件の発明では,図1からC3の値を定める空間は音場再生空間であって,その容積はほぼ∞と等価であると言える。従って,振動板背面の空間で定まるC2と振動板背面の音響抵抗r’を適当に選べば,低音域ではそのほとんどのエネルギーを音響抵抗r’に通じ得るから,その損失によってエネルギーを消費せしめ,弱められたエネルギーを外部空間C3に逃がすことが可能である。つまりC1とC3の合成されたCはC1とほとんど同じになって共振周波数の上昇をもたらさない。共振度合いQはjωL/(r+r’)となって共振周波数が同一であればrにr’が加わる分Qを下げることが可能である。また,外部音場空間に逃げるエネルギーは音響抵抗部分で生じる損失により小さくなるから音場空間における振動板の背面からの音圧が減少し,振動板前面での音圧の相殺が少なくなるのである。
次に低音再生におけるボックスの弊害について詳細に述べる。図3(a)は,口径8cm,低域共振周波数(fo)が80Hzのスピーカを,そのまま0.6リットル程度のボックスに取り付けた場合,(b)は同スピーカの背面を連続気泡を有する発泡ウレタンで覆って(a)と同じボックスに取り付けた場合,(c)は同スピーカの背面をほぼ(a)(b)のボックスと同一外形寸法の連続気泡を有する発泡ウレタンで覆っただけの場合で,周波数毎に発生する音圧の最大振幅が同じになるようスピーカへの入力電圧を変えてその再生波形を比較した図である。
このように,(a)→(b)→(c)となるに従って,同一の音圧でも再生音の歪みが少なくなり,歪みなく再生できる低音域が拡大する。このことは小型密閉型ボックスにスピーカを取り付けた場合のスピーカの共振周波数の上昇と共振の強さが影響しているものと思われる。同じボックスを使用して共振周波数もほぼ同じに設定しても,スピーカ背面を音響抵抗物質で覆い共振を抑えた(b)の方が(a)より歪みが少なく,ボックスのない(c)の方がさらに歪みが少ない。
図1に示すチャンネルデバイダ2のLPFとHPFのクロスオーバー周波数の設定は,図4のように低音側スピーカと高音側スピーカのインピーダンス曲線のインピーダンスが一番低くなる付近に設定してある。図4において,範囲Lは低音側スピーカのインピーダンスが一番低くなる範囲であり,範囲Hは高音側スピーカのインピーダンスが一番低くなる範囲である。ふたつの範囲の共通する範囲にクロスオーバー周波数を選定している。
その理由を図5を用いて説明する。図5の(a),(b),(c)は図3の(a),(b),(c)とそれぞれ同一構造のスピーカの周波数−位相特性である。若干の相違は見られるものの数百Hz〜約kHzの範囲でネットワークのクロスオーバー周波数を選定した場合(a),(b),(c)いずれかのスピーカを低音側に,いずれかのスピーカを高音側に用いても,クロスオーバー周波数付近で著しく音圧が減少するような位相の組合せにならないことが分かる。
なぜなら位相が90°の開きがあるような特性差がないからである。もし,図6のようにネッワークの使用なしで低音側スピーカと高音側スピーカで同一周波数で発生する音の位相差が90°あると,−6dB/octのネットワークを使用すると仮定した場合,クロスオーバー周波数での位相は低音側スピーカでは−45°高音側スピーカでは+45°変化し,もともとの低音側でのスピーカと高音側スピーカの位相差90°と合わせて,位相差が180°となってしまい音圧が著しく減少する組合せになる。しかし,図5ではそのような組合せにならない。
スピーカの周波数−位相特性は,そのインピーダンス曲線に依存しているものと思われる。中音域から低音域にかけてのインピーダンスの上昇は,スピーカの振動系(機械系)を電気系に置き換えたとき低域共振の容量分によって生じているものと思われる。従って,周波数が下がるに従って,インピーダンスは上昇し電流は電圧に対して位相が進むのである。逆に中音域から高音域にかけてのインピーダンス上昇はボイスコイルのインダクタンスによって生じているものと思われる。従って電流は電圧に対して遅れる。そしてインピーダンスが一番小さくなる中音域では負荷の特性が容量性から誘導性に変わり,その境目では電圧と電流の位相ずれが少なくなり結果的に図5のような特性になるものと考えられる。
従って,インピーダンスが一番小さくなる周波数付近がスピーカへの入力電圧と再生音の位相のずれが少なく,それより周波数が低くなれば位相が進み,周波数が高くなれば位相が遅れるものと考えられるから,低音側スピーカと高音側スピーカで共通してインピーダンスが一番小さくなる領域内でクロスオーバー周波数を選定すれば低音側スピーカと高音側スピーカのクロスオーバー周波数での位相ずれを少なくできる。最も,低音側スピーカと高音側スピーカで同一のユニットを用いることができれば一番望ましい。例えば,図3の(c)を低音側スピーカに,図3の(a)〜(c)のいずれかを高音側スピーカに用いれば,図5の(a)〜(c)のように500Hz付近で位相ずれがなくなるからクロスオーバー周波数は500Hz付近に選べばよい。あるいは,クロスバー周波数の選定は,該クロスバー周波数において高音側スピーカの方が低音側スピーカより位相が進んでいる場合は,その位相差が約45度以内ならそこそこの音圧が残るし,また低音側スピーカが高音側スピーカより位相が進んでいる場合はその位相差が225度以内ならそこそこの音圧が残ることになってその範囲の位相差が確保できる周波数であれば望ましい。
30cm以上の大口径の低音用スピーカやボイスコイルを有する数kHz以上の高音再生専用のスピーカを除いて,一般的なせいぜい20cm程度までの口径の低音用スピーカやフルレンジ型のスピーカではインピーダンス曲線が一番小さくなる周波数領域は数百Hz〜約1kHz程度の範囲であり,それらのスピーカを低音側スピーカと高音側スピーカに使用するという前提であれば,クロスオーバー周波数を数百Hz〜約1kHzに選ぶことで,周波数−位相特性はそれほど吟味しなくてもよいという関係になる。
このことは,マルチウエイ型のスピーカシステムでは,クロスオーバー周波数を数百Hz〜約1kHzで選定する場合は,低音側スピーカと高音側スピーカの周波数−位相特性より,高音側スピーカの低域共振によるインピーダンス上昇がネットワークによる音圧の減衰特性に影響しないようにする方が望ましいということになる。
図1に示す請求項1の実施例では,その問題をマルチチャンネル型の音響システムとすることで回避している。すなわち,高音スピーカ側の低域減衰のためのHPFはパワーアンプより前に設けることで,高音側スピーカに低域共振があっても低域での音圧減衰がフィルター特性どおりになるようにしている。
なお,低音側スピーカ5の振動板背面と音場空間の間を多孔質の音響抵抗物質502で仕切ることにより,低域共振の度合いが小さくなるとともに,振動板背面からの音圧はいくらか音場空間に漏れるので,再生音圧は従来の場合より減少するが,共振の度合いはもともとのスピーカユニットの共振度合いを高くしておく,振動板背面の空間504の容積や音響抵抗物質502の音響抵抗を調整するなどで極端に共振を抑制しない程度に調整が可能であり,また高音側スピーカとの音圧バランスはパワーアンプの出力で調整が可能である。
このように構成された音響装置の低音側スピーカ5には,ボックスが使用されていないことから,スピーカ振動板の背面からの音圧によるスピーカ前面の音圧の相殺を補填しなければならず,低域における必要な音圧を再生するため振動板振幅は勢い大きくなってしまう。
スピーカの振動板の振幅は,図7のようにエッジ901,ダンパー902による機械的な制約と,マグネット904による空間磁気密度配分とボイスコイル903の配置による磁気駆動力の制約によって,図8のように入力電圧に対する振幅の直線性が制限され,非線形となる。
このようなスピーカに,過度の入力電圧が加わると,入力電圧の変化に振動板の振動の変化が対応しなくなる。すなわち,限界振幅以上では信号の変化に追従して振動しなくなる。低音が限界振幅であるとき,高音を同じ振動板で再生しようとしても,高音の振動は制約を受ける部分が発生するのである。すなわち再生音の歪みが生じる。例えば強力なウッドベースの信号が入った時に,ボーカルの音が歪んでしまうというような具合である。
本発明による音響装置では,その問題を低音側スピーカと高音側スピーカで帯域を分けて再生することにより解決している。
すなわち,低音側スピーカが低音で限界振幅まで振動していても,中音は高音側スピーカで再生しているので中音域以上の周波数で歪みの心配がない。もちろん,このようにスピーカで再生帯域を分けることで再生音の歪みを減らすことは従来のマルチウエイやマルチチャンネルによるシステムでも同じなのであるが,従来のシステムでは,前述のようにボックスを含めた共振周波数までしか低音を再生できず,ボックスを小型にするとスピーカの共振周波数はずっと高くなり,ボックスを含めた共振周波数以下の周波数の振幅はあまり考慮する必要がないのに対し,本件発明によれば,ボックスを用いておらず,スピーカの共振周波数やそれ以下の周波数まで再生可能となり,スピーカの振動振幅は従来のボックスを用いたシステムに比較し大きくなる。
しかも,前述のとおり音響抵抗を振動板背面に取り付けただけの構造であり,ボックスのように振動板背面のエネルギーを外部の音場再生空間から完全に遮蔽できないことで,低音における音圧を中高音と同一に得るためには,余分に大きな振幅が必要になる。それ故,より低音側と高音側でスピーカを分ける意味が大きく,歪み改善の効果が高いのである。
図9は請求項2の発明の実施例である。図1に示す請求項1の実施例との違いは,高音側スピーカ6のパワーアンプ3の信号系に高音側スピーカの低域共振による音圧の増加を抑制するノッチフィルター11があること,チャンネルデバイダー2の前段に低域補償回路10が入っていることである。
前述の「0042」で述べたように,低音側スピーカ5の振動板背面の空間504と音響抵抗物質502の音響抵抗を調整することで低域共振の度合いを調整することが可能であり,「0042」とは逆に小さくすることも可能である。より具体的には,図2におけるC2を小さくするすなわちスピーカ振動板背面の空間容積を小さくする,あるいは音響抵抗物質の音響抵抗r’を大きくすることにより行われる。スピーカ振動板背面の空間容積を小さくすることは,より高い周波数までの空気振動を音響抵抗物質側に導くこと,および音響抵抗物質への入り口の面積を小さくすることとなり音響抵抗r’が増加することにつながる。また音響抵抗r’を大きくするには,音響抵抗物質の通路を長くする,圧縮して音響抵抗物質の多孔質の部分の通気度合いを小さくするなどで行うことができる。
低域の共振度合いが小さい方が共振周波数以下の周波数における歪みの改善効果が高いことは「0032」で述べたとおりである。しかし,共振度合いを抑制すればするほど低域での入力電圧に対する振動板振幅は小さくなって低音が不足するので,請求項2の発明では,チャンネルデバイダー2の前段に低域補償回路10を挿入している。
低音側スピーカ5の低音での音圧不足を補うためには,低域補償回路10を低音側スピーカのパワーアンプの信号系に入れることでも可能であるが,低音側スピーカの振動板背面と音場再生空間の間を音響抵抗物質で覆い共振度合いを抑えた場合の補正必要領域は,一般的に高音側スピーカの再生音域にも重なることが多い。低域補償回路10は周波数毎の音圧の変化のみならず位相の変化をももたらすが,低音側スピーカの信号系だけに低域補償回路10を入れてしまうと,前述の「0034」〜「0039」で述べた低音側スピーカと高音側スピーカの位相の関係が崩れてしまい好ましくない。そのため,チャンネルデバイダー2の前段に低域補償回路10を置くことで,低音側スピーカ5と高音側スピーカ6の両方に同一の位相変化が及ぶように構成している。
しかし,チャンネルデバイダー2の前段に低域補償回路10を挿入すると高音側スピーカの低域再生音圧が増えてしまい,チャネルデバイダー2による低音側スピーカ5と高音側スピーカ 6のクロスオーバー周波数付近におけるそれぞれのスピーカの音圧のバランスが崩れてしまう。そこで,高音側スピーカ6のパワーアンプ3の信号系にノッチフィルター11を入れることで,高音側スピーカ6の低域再生音圧の増加を抑制している。
高音側スピーカ6の低域再生音圧の増加を抑制するには,簡単な1段のCRによるHPFが考えられるが,そのようなフィルターでは,低音の音圧の減衰は行えるが位相も変化し,今度は高音側スピーカ6の位相特性が崩れてしまう。ノッチフィルター11では,その定数を選定することで音圧も位相も高音側スピーカ6の低域共振と逆の特性を構成しうる。しかも共振による振幅の増加を完全に押さえ込むのでなく抑制する程度に定数を選ぶことで,高音側スピーカ6の位相特性はほぼそのまま温存して低域の音圧だけを抑制することが可能である。
発明者による請求項2の発明の実用的な試作では,低音側スピーカユニット501には口径14cmで低域共振周波数(fo)が60Hzのウーハータイプのスピーカユニットに図10のように振動板に針金状の錘をつけることでさらにfoを低くし約40Hzとしたものを用いている。
多孔質の音響抵抗物質502の大きさはスピーカ設置面が20cm角,奥行きが10cm程度で,市販の標準的な連続気泡を有する発泡ウレタンを圧縮せずに用いている。このような低音用スピーカに低域補償回路10を使用した場合の再生周波数特性を,口径30cm,foが30Hzの低音用スピーカを高さが約70cm,横幅が約40cm,奥行きが約35cmの外形で内容積が約70リットルの密閉型ボックスに入れた一般的な従来のスピーカシステムと比較してみると,図11のようになり,本件発明による低音側スピーカの方が外形がずっと小さいにも係わらず,再生可能周波数範囲の下限が低いことが分かる。但し,図11において0dBはそれぞれのスピーカシステムでの中音域の音圧を基準にしている。
すなわち,本件発明では,ボックスを使用することなく,スピーカ背面を多孔質の音響抵抗物質で覆い,スピーカ振動板の背面の音圧を多孔質の音響抵抗物質による音響損失で減少させるとともに音場再生空間に放出させることで,歪みの少ない良質な低音を非常に小さい外形寸法で再生することに成功している。
図12は,請求項3の第一の実施例である。図9に示す請求項2の実施例と異なるところは,図9のノッチフィルター11が省略され,変わりに高音側スピーカ7の振動板背面を多孔質の音響抵抗物質702で覆っていることである。このようにすると,高音側スピーカ7の低域共振度合いを小さく抑制できるので,その位相特性は温存しながら低域の音圧だけを抑制することができるから図9のノッチフィルター11を省略できる。なお,この段階では高音側スピーカ7はボックス12に取り付けられている。
図13は,請求項3の第二の実施例である。第二の実施例では,請求項3をマルチウエイ型システムで実施している。すなわちパワーアンプ13と低音側スピーカ5の間に高音カットフィルター14が,パワーアンプ13と高音側スピーカ7の間に低音カットフィルター15が挿入されている。請求項3では,高音側スピーカ7の振動板背面を多孔質の音響抵抗物質で覆っているから,高音側スピーカ7の低域共振によるインピーダンス上昇を抑制することができ,低域でのインピーダンス特性を定抵抗に近づけることができる。従って,パワーアンプ13と高音スピーカ7の間に低音カットフィルター15を配しても高音側スピーカ7の低域音圧減衰特性を低音カットフィルター15の特性に近づけることができる。ここではフィルターに単純なコイルとコンデンサーによる−6dB/octのものを用いた例を示しているが,−12dB/oct,−18dB/octのものを用いることは任意である。ただ,フィルター分割後の再合成波形では,−6dB/octのものが一番優れている。
図14は,請求項4の第一の実施例である。図13の請求項3の第二の実施例と異なるところは,高音側スピーカ7も低音側スピーカ5と同様に振動板背面と音場空間8の間を多孔質の音響抵抗物質702で仕切っただけとしていることである。
少し詳しく説明すれば,7の高音側スピーカは,低音側スピーカ5と同じく,スピーカユニット701の振動板背面に小空間704を残して音場再生空間8との間を図13のボックス12を用いることなく直接に多孔質の音響抵抗物質702で仕切っている。高音側スピーカ7では,低音側スピーカのフレーム503に相当する部位を省略し,スピーカユニット701のフレームに直接音響抵抗物質702を押しあてて振動板背面を覆っている。なぜなら15の低域カットコンデンサで低音をカットしてあり,もともとスピーカが発する低音のエネルギーが小さいので,低音での大きな音響損失をそれほど必要としないからである。もちろん低音側スピーカ のフレーム503に相当する部材を有していても差し支えない。
発明者による実用的な試作では,高音側スピーカユニット701には口径10cmで低音共振周波数が65Hzのフルレンジタイプのものを用い,図10と同様に振動板に錘を張り付けることで低音の共振周波数を約40Hzに落としている。音響抵抗物質702は,音響抵抗物質 502と同じ材質のものを幅3cm厚み1cm程度のテープ状に切断し,空気が振動板から音場空間に素通りしないようスピーカのフレームにそのまま巻き付けている。
そのことにより,低音側スピーカ同様,低音での共振周波数の上昇を起こすことなく,共振を抑制しながら,スピーカの振動板の表面と背面の音の干渉による音圧低下をも防止している。合わせて,周波数−音圧特性は,10の低域補償回路の使用を前提とした条件に合致させているのである。
以上のような低音側スピーカ5と高音側スピーカ7の周波数−位相特性を図15に,周波数−インピーダンス特性をユニット単体の場合と比較したものを図16の(a)(b)に,ネットワーク14,15に接続したそれぞれの周波数−音圧特性,合成した周波数−音圧特性,10の低域補償回路で補償した周波数−音圧特性を図17の(a)〜(d)に示す。
高音側スピーカに本件発明のようなスピーカ背面に音響抵抗物質で覆ったのみの構造を用いるには,低音側スピーカも背面を音響抵抗物質で覆ったのみの構造を用いることが非常に好都合である。もし,従来見られるようにボックス内に低音側スピーカと高音側スピーカを同時に配置する場合,低音側スピーカによる高音側スピーカの振動板への空気圧による振動影響を避けるためには,ボックス内の空間を完全に低音側スピーカ側と高音側スピーカ側で遮蔽する必要がある。
その場合,高音側スピーカをネットワークによる減衰に影響がない程度まで共振周波数を下げようとすると,ボックス内部での高音側スピーカのボックス内容積を非常に大きくとらなければならない。そのことは高音側スピーカに必要なボックスの内容積が低音側スピーカのボックス内容積を相殺してしまい,低音側スピーカの低音再生能力を制限することを意味するからである。しかし,低音側スピーカ,高音側スピーカの両方のスピーカ背面を多孔質の音響抵抗物質で覆った場合,多孔質の音響抵抗物質の外部は容積が∞に等価な音場空間であり,ボックスを用いた場合のような問題を回避できる。
図18は請求項4の第二の実施例であり,マルチチャンネル型システムで実施した例である。図19は,低音側スピーカ501‘と高音側スピーカ701’の背面の多孔質の音響抵抗物質502‘を共通として一体化して用いた場合の実施例で,一体化した音響抵抗物質を介して音場再生空間に振動板背面の空気圧の振動を排出させている。このようにしても本件発明の請求項4の効果は同じである。なお,図中のHPFとLPFについてはCR1段の−6dB/octのものでもよいし,−12dB,−18dBのものでもよい。さらに山根式,山中式と呼ばれるようなものでもよい。要するに,本発明によれば,各フィルター方式によりフィルターの負荷として抵抗に近い特性が得られることに特徴がある。また低域補償回路も図に示したようなCR一段のものでもよいし,何段か組み合わせたようなもの,あるいは能動素子を使用したトーンコントロール回路のようなものでもよい。
以上のように,本件発明による請求項1〜請求項4では低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切った構成としたから,ユニット本来の低域共振周波数ぎりぎりまで,あるいは共振度合いを抑えることが可能であってその場合は共振周波数以下の周波数の再生でも歪みを改善できるとともに,ボックスを用いた場合にくらべ非常な小型化が図れる。またボックスを用いていないので,ボックスにかかるコストを安くできて低価格で良質な低音を再生できる装置を得ることができる。またボックスによる共振がないので音の濁りがない。さらには低音側スピーカと高音側スピーカのクロスオーバー周波数をインピーダンスが最も小さくなる周波数領域に設定したから低音側スピーカと高音側スピーカで位相ずれが少なく,さらにはフィルターによる高音側スピーカの音圧減衰特性がユニット本来の低域共振によるインピーダンス上昇に影響されにくくする手段をそれぞれの請求項で講じたので,チャンネルデバイダーやネットワークによる周波数分割再生を行っても低音側スピーカと高音側スピーカの音の繋がりが非常によいとともに,低音側スピーカの振動板が限界振幅まで振動しても中音域以上の周波数の再生みが低音に影響されず,歪みが少ない優れた音響装置を得ることができる。
請求項2〜請求項4の発明では,低音側スピーカの背面を多孔質の音響抵抗物質で覆うことにより低域の共振度合いを小さく抑えた場合に,低域補正回路を使用しているので,低域から高域までさらに一様な音圧で再生が可能となる。
請求項3の発明では,高音側スピーカの振動板背面を多孔質の音響抵抗物質で覆ったので,高音側スピーカにおいてもボックス内部の空気共振による高音側スピーカの振動板への共振の影響を受けにくくすることができ音の濁りを少なくできる。
請求項4の発明では,高音側スピーカもボックスを使用しない構造としたので,さらにコストが安く,小型に構成できて,ボックス内部の空気共振も起こりえないので,音の濁りがない。
本件の発明は,通常のステレオ再生装置以外に,近年の映像機器に用いられているような図20に示すサブウーハーを用いたシステムでも実施可能である。その場合は,左右共用のサブウーハーに本件の実施例の説明の低音側スピーカ5を用い,高音側スピーカ7を左右のスピーカとして用いる。なお,以上の説明では,スピーカは低音側と高音側で計2つのシステムで説明したが,低音側と中低音側,中低音側と高音側のように3つのスピーカでそれぞれの高低の組合せに用いても良いことは自明である。そのうえ必要に応じて,数kHz以上の帯域を受け持つ高音専用のツィータを高音側スピーカにさらに追加することは任意である。
本件発明の請求項1の実施例を示す図 図1の低音側スピーカの機械系を電気系に置き換えた等価回路 スピーカを一般の密閉型ボックスに入れた場合(a),スピーカ背面を多孔質の音響抵抗物質で覆い密閉型ボックスに入れた場合(b),スピーカ背面を多孔質の音響抵抗物質で覆っただけの場合(c)での低音再生波形を比較した図 本件発明の低音側スピーカと高音側スピーカのインピーダンス特性と分割周波数を説明する図 図3の(a)(b)(c)で周波数−位相特性を比較した図 再生音圧が著しく減少する周波数−位相特性の組合せを説明した図 スピーカ振動板の振幅限界の要因を示す図 スピーカボイスコイルへの入力電圧と振動板の振幅の関係を示す図 本件発明の請求項2の実施例を説明する図 スピーカ振動板に錘をつける説明図 本件発明による実用試作と密閉型ボックスによる従来製品での低音域での再生周波数−音圧特性を比較した図 本件発明の請求項3をマルチチャンネル型システムで実施した例の図 本件発明の請求項3をマルチウエイ型システムで実施した例の図 本件発明の請求項4をマルチウエイ型システムで実施した例の図 本件発明請求項4による実用試作での周波数−位相特性の組合せを説明した図 本件発明請求項4による実用試作での低音側スピーカと高音側スピーカの周波数−インピーダンス特性を示した図 本件発明請求項4による実用試作での低音側スピーカと高音側スピーカの周波数−音圧特性の組合せを説明した図 本件発明の請求項4をマルチチャンネル型システムで実施した例の図 本件発明の請求項4によるスピーカの他の実施例を示す図 本件発明をサブウーハーシステムに適用した場合の構成例を示す図
符号の説明
1・・音源信号入力部
2・・チャンネルデバイダー
3・・パワーアンプ
4・・パワーアンプ
5・・低音側スピーカ
501・・低音側スピーカユニット
502・・多孔質の音響抵抗物質
503・・フレーム
504・・スピーカ振動板背面の空間
6・・高音側スピーカ
7・・高音側スピーカ
701・・高音側スピーカユニット
702・・多孔質の音響抵抗物質
704・・スピーカ振動板背面の空間
8・・音場再生空間
901・・振動板エッジ
902・・ダンパー
903・・ボイスコイル
904・・マグネット
10・・低域補償回路
11・・ノッチフィルター
12・・ボックス
13・・パワーアンプ
14・・高音カットフィルター
15・・低音カットフィルター

Claims (4)

  1. 低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数帯域で分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切り,チャンネルデバイダーによる低音側スピーカと高音側スピーカとの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置。
  2. 低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切るとともに,高音側スピーカのパワーアンプ系の信号経路には,高音側スピーカの低域共振による音圧の増加を抑制するノッチフィルターが設けられていて,チャンネルデバイダーより前段で低音補償回路を使用して音響信号の低音を補償し,且つチャンネルデバイダーによる低音側スピーカと高音側スピーカとの分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置。
  3. 低音側スピーカと,高音側スピーカと,両方のスピーカを駆動するパワーアンプと,パワーアンプとスピーカの間でスピーカ駆動信号を周波数分割するネットワークを含む音響装置,または,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切るとともに,高音側スピーカはユニットの振動板背面を多孔質の音響抵抗物質で覆い,装置への音響信号の入力段で低音補償回路を使用して音響信号の低音を補償し,且つ低音側スピーカと高音側スピーカとの帯域分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置。
  4. 低音側スピーカと,高音側スピーカと,両方のスピーカを駆動するパワーアンプと,パワーアンプとスピーカの間でスピーカ駆動信号を周波数分割するネットワークを含む音響装置,または,低音側スピーカと,高音側スピーカと,それぞれのスピーカを駆動する専用のパワーアンプと,パワーアンプの前段で音響信号を周波数分割するチャンネルデバイダーを含む音響装置において,低音側スピーカはユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切るとともに,高音側スピーカもまたユニットの振動板背面と音場再生空間との間を多孔質の音響抵抗物質で仕切り,装置への音響信号の入力段で低音補償回路を使用して音響信号の低音を補償し,且つ低音側スピーカと高音側スピーカとの帯域分割周波数は,低音側スピーカと高音側スピーカ両方の周波数インピーダンス曲線において,そのインピーダンスが低域共振周波数より高い周波数側でほぼ一番小さい値となる共通の周波数範囲に設定してあることを特徴とする音響装置。
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