JP2007056090A - 難燃性樹脂組成物及びそれからなる成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
難燃化の方法としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物や窒素化合物を単独で又は組み合わせて使用することが広く知られている。
しかしながら、ポリオレフィンにリン酸エステルアミドを10重量部以上配合すると、混練時及び成形時にリン酸エステルアミドが著しくブリードアウトするため、混練及び成形は不可能である。一方、ポリオレフィンにリン酸エステルアミドを通常の添加剤配合量程度(1質量%)添加しても、難燃性は十分に発現しない。
1.下記の成分(A)〜(C)を含む難燃性樹脂組成物。
(A)ポリオレフィン系樹脂:90〜99.6質量%
(B)リン酸エステルアミド:0.2〜8質量%
(C)下記式(1)で示されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤:0.2〜2質量%
6.上記1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる厚さ0.3mm未満の薄物成形体。
7.上記1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる繊維。
本発明の難燃性樹脂組成物は、下記の成分(A)〜(C)を含む。
(A)ポリオレフィン系樹脂:90〜99.6質量%
(B)リン酸エステルアミド:0.2〜8質量%
(C)後述する式(1)で示されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤:0.2〜2.0質量%
尚、質量分率は上記(A)〜(C)成分の合計質量に対する値を意味する。
さらに、(D)無機系難燃剤を、成分(A)〜(D)の合計量に対して、0.2〜5質量%含むことが好ましい。尚、組成物に成分(D)を添加した分、成分(A)の混合比率を低減すればよい。即ち、成分(A)のポリオレフィン系樹脂の混合比率は85〜99.4質量%となる。
以下、成分(A)〜(D)について説明する。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びオレフィン系合成ゴム等が挙げられる。
尚、ポリオレフィン系樹脂のメルトインデックス(MI)は高いほうがより難燃性が高くなる。
具体的には、温度230℃、荷重2.16kg/10分の条件で測定したMIが3(g/10分)以上であるポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にMIが10(g/10分)以上あるポリオレフィン系樹脂が難燃性の点から好ましい。但し、MIが30(g/10分)を超えるとフィルムの成形が困難であり、また、MIが50(g/10分)を超えると繊維の成形は可能であるが、低強度の繊維しか得られない。
また、成分(D)を配合したときの、成分(A)〜(D)の合計質量に占める(A)成分の配合量は、85〜99.4質量%、好ましくは94.2〜99.1質量%、特に好ましくは94.9〜98.5質量%である。
リン酸エステルアミドは、リン酸エステル及びリン酸アミドの結合を有する化合物であればよい。
例えば、下記式(3)で表わされる化合物が好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC5−20シクロアルキル基、好ましくはC6−12シクロアルキル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、ナフチル等のC6−20アリール基、置換アリール基(メチルフェニル基、エチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基等)が挙げられる。
また、R12及びR13は互いに結合して環(例えば、隣接する窒素原子をヘテロ原子とする4〜10員の複素環等)を形成してもよい。尚、これらの基は、置換基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等のC1−4アルキル基、特にC1−3アルキル基;ヒドロキシル基等)を有していてもよい。
Z1及びZ2で表される二価の芳香族性基としては、アリーレン基(例えば、フェニレン、ナフチレン基等のC6−20アリーレン基等)、複数の前記アリーレン基を有する基[例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールD、ビスフェノールAD、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等のジヒドロキシジアリールアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のジヒドロキシジアリールシクロアルカン類;1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン等のジヒドロキシアリールアルキルベンゼン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等のジヒドロキシジアリールケトン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキルフェニル)スルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類等)のビスフェノール類からヒドロキシル基が除かれた基、ビフェニレン基等]であってもよい。
これらのリン酸エステルアミドは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
市販のリン酸エステルアミドは、商品名「リン酸エステルアミド系難燃剤SPシリーズ(例えば、SP−601、SP−703等)」(四国化成工業(株)製)として入手できる。
本発明の組成物では、リン酸エステルアミドの添加量が少ないので、本成分のブリードアウトを抑制することができる。
下記式(1)で表されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤を使用する。
また、炭素数5〜10のシクロアルキル基のうち、シクロヘキシル基が好ましい。
また、フェニル基又は炭素数7〜15のフェニルアルキル基のうち、フェニル基が好ましい。
R10である炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基のうち、n−ブチル基が好ましい。
具体的には、N,N’,N”−トリス{2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−sym−トリアジン−6−イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン、N,N’,N”−トリス{2,4−ビス[(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−sym−トリアジン−6−イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン、N,N’,N”−トリス{2,4−ビス[(1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−sym−トリアジン−6−イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン等を例示することができる。
無機系難燃剤としては、シリカ(二酸化ケイ素)、合成非晶質シリカ(二酸化ケイ素)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ藻土等のケイ素化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ヒドロキシスズ酸亜鉛、酸化スズ水和物、ホウ砂等の金属水酸化物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化アンチモン、ジルコニウム−アンチモン複合酸化物等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウム等の金属炭酸塩化合物;硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩化合物;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸化合物;錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛等の錫酸化合物;アルミナ水和物、ゼオライト、セピオライト、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、ケイ藻土等の無機系化合物複合体が挙げられる。
Mg1−XAlX(OH)2(Aq−)X/q・aH2O
(式中、qは1又は2であり、Aq−はq価のアニオン、即ち(CO3)2−又は(ClO4)−であり、Xは0<X≦0.5、aは0<a≦1を満足する実数である。)
Mg0.750Al0.250(OH)2(CO3)0.125・0.5H2O
Mg0.692Al0.308(OH)2(CO3)0.154・0.1H2O
Mg0.683Al0.317(OH)2(CO3)0.159・0.5H2O
Mg0.667Al0.333(OH)2(CO3)0.167・0.1H2O
Mg0.750Al0.250(OH)2(ClO4)0.250・0.5H2O
Mg0.692Al0.308(OH)2(ClO4)0.308・0.1H2O
Mg0.667Al0.333(OH)2(ClO4)0.333・0.1H2O
ハイドロタルサイトは、市販されているものが使用できる。
これらのドロマイト系化合物は工業的に幅広く、大量に産出されており、製鋼から陶器、建材、農業等極めて幅広い産業で使用されているため、安定な品質で、安易かつ安価に入手可能なものである。
尚、平均粒子径(D50)は、メジアン径ともいい、累積50%に相当する粒子径の値である。
また、ポリオレフィン系樹脂との相溶性、分散性等を向上させるために、成分(D)を表面処理剤で表面処理したものも使用することができる。表面処理剤としては、有機酸及び有機酸金属塩が挙げられる。これらの化合物は各々単独で用いてもよく、任意の混合物として用いてもよい。
例えば、酸化防止剤として、リン系化合物、フェノール系化合物、イオウ系化合物等を、耐候剤として、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系等の各種耐候剤を、帯電防止剤として、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系等の各種帯電防止剤を、滑剤として、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、炭化水素系等を、核剤として、金属塩系、ソルビトール系等の各種核剤を、充填剤として、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、マイカ、ワラストナイト等を使用できる。さらに、金属不活性化剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤等も使用できる。
例えば、フィルムの場合、上記難燃性樹脂組成物を一般に用いられるインフレーション、Tダイ法等により均一にフィルム状に押出して、通常のチルロールで冷却した後、巻き取ることにより成形することができる。フィルムは1軸、2軸延伸しても良い。また、簡易的に熱プレスによりフィルムを成形することもできる。
また、十分な強度を有し、さらに燃焼時に有毒ガスを発生しない。
尚、薄物成形体には、フィルム(シート)状、チューブ状等、各種形態を含む。
尚、下記の実施例及び比較例に用いた物質は、下記のとおりである。
・成分(A)ポリオレフィン
ポリプロピレン(プライムポリマー(株)製 F−300SP ホモポリプロピレン MI=3(g/10分))
・成分(B)リン酸エステルアミド
式(3)において、n=1の化合物(四国化成工業(株)製 SP−703)
・成分(C)NOR型ヒンダードアミン系安定剤
チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製 FlameStab NOR116FF
・成分(D)無機系難燃剤
ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製 DHT−4A
ドロマイト系化合物:三共有機合成(株)製 MC−100B
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製 キョウワマグ3−150
硼酸亜鉛:水澤化学(株)製 ALCANEX FRC−150
錫酸亜鉛:水澤化学(株)製 ALCANEX ZHS
・比較物(リン酸エステル)
特開2001−348724号で使用されている下記式で示されるリン酸エステル(旭電化工業(株)製、FP−500)
(1)予備混合
表1に示す配合組成で成分(A)〜(C)を配合し、これらの合計量100重量部に対して、0.2重量部のグリセリンモノステアレート(ライオン(株)製、GS95P)、0.2重量部のトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、MARK2112)、0.1重量部のペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(旭電化工業(株)製、AO−60)を配合し、ヘンシェルミキサー又はタンブラーで予備混合した。
得られた予備混合物を、二軸混練機(池貝鉄鋼(株)製、PCM45)を用いて、以下の条件にて溶融混練して組成物を製造し、ストランドカットを用いてペレット化した。
・混練温度 210〜230℃
・スクリュー回転数 150rpm
・メッシュ 40と60の組み合わせ
・ベント 2箇所(常圧ベント一箇所、真空ベント一箇所)
・吐出量 40kg/h
得られた組成物ペレット3gを鏡面加工した300×300mmのアルミ板にはさみ、熱プレス機で230℃、30トンの条件で加圧し、厚み100μmのフィルムを得た。
得られた組成物ペレットを、バレル径9.55mmのキャピラリーメーター(東洋精機製キャピログラフ1D)を用いて230℃で溶融し、内径1mm、長さ10mmのキャピラリーより、押出速度5mm/分、引取速度5m/分で紡糸し、巻き取り延伸を行うことで繊維(平均直径:0.25mm)を作製した。
作製したフィルム及び繊維について、以下の方法により評価した。
・フィルムの酸素指数
JIS−K−7201−2に示されるV型試験片試験法に従って酸素指数試験を行った。
簡略に説明すると、指定のU字型保持具に試験片を挟み固定した後、各種酸素濃度の雰囲気下に置き、その上端に点火器を近づけ、着火後に連続燃焼する際の酸素濃度を求めた。酸素指数値の決定は、燃焼時間が上部標線から3分以上継続して燃焼するか、又は燃焼長さが上部標線から80mm以上燃え続けるのに必要な酸素濃度である。
・繊維の酸素指数
JIS−L−1091に示された試験方法のE−1号試験片試験に従って酸素指数を測定した。
簡略に説明すると、直径0.8mmの針金を芯にして繊維をコイル状に密に巻き上げ、その長さを100mmにした後針金を抜き取る。各種酸素濃度の雰囲気下に置き、その上端に点火器を近づけ、着火後に連続燃焼する際の酸素濃度を求めた。酸素指数値の決定は、燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、又は着火後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な酸素濃度である。
評価結果を表1に示す。
比較例1及び2は、成分(B)又は成分(C)が配合されていない場合であり、実施例1に比較して難燃性が低下している。
比較例3は、成分(B)の代わりにリン酸エステルを使用した場合であり、成分(B)リン酸エステルアミドを使用した実施例1に比較して難燃性が低下している。
表2に示す配合組成で成分(A)〜(D)を配合した他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物ペレット、フィルム及び繊維を作製し、評価した。
評価結果を表2に示す。
成分(D)を配合することで、実施例1よりも、さらに難燃性が向上している。
例えば、薄物のコルゲートチューブの酸素指数合格値は23.5以上である。本発明の樹脂組成物のコルゲートチューブ成形体に近いフィルム成形体の酸素指数値は25以上で合格している。しかし、比較例では23であり不合格となる。従って、本発明の樹脂組成物は、薄物分野の成形体用途に十分な難燃性を有している。
Claims (7)
- 下記の成分(A)〜(C)を含む難燃性樹脂組成物。
(A)ポリオレフィン系樹脂:90〜99.6質量%
(B)リン酸エステルアミド:0.2〜8質量%
(C)下記式(1)で示されるNOR型ヒンダードアミン系安定剤:0.2〜2質量%
- さらに、(D)無機系難燃剤を、前記成分(A)〜(D)の合計量に対して、0.2〜5質量%含む請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(B)成分のリン酸エステルアミドが、下記式(3)で表される化合物である請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記成分(D)の無機系難燃剤が、ハイドロタルサイト、ドロマイト系化合物、酸化マグネシウム、硼酸亜鉛及び錫酸亜鉛の中から選択される少なくとも1種の難燃剤である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる厚さ0.3mm未満の薄物成形体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる繊維。
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