JP2007044779A - スローアウェイチップ及びそれを用いたミーリングカッタ - Google Patents

Abstract

【課題】主切れ刃と副切れ刃で直角コーナを加工する焼結して作られたスローアウェイチップにおいて、副切れ刃が損傷したときにも支持安定性が損なわれない構造を持ちながら製造時の各部の粉末の充填密度のばらつきを小さくして寸法精度を高められるようにすることを課題としている。
【解決手段】スローアウェイチップ１を、上面２と、平坦な底面と、２つの側面と、２つの端面と、側面と上面が交差した位置の稜線で形成される主切れ刃６と、端面と上面が交差した位置の稜線で形成される副切れ刃７と、カッタボディのチップ座で支える軸方向支持面８と上面のコーナに形成されるノーズ部９_−１〜９_−４を有し、ノーズ部９_−１〜９_−４はチップの平面視におけるコーナ角が実質的に直角をなし、軸方向支持面８は端面の一部で構成され、副切れ刃７は、軸方向支持面８と平行で底面と平行な面上、かつ、軸方向支持面の上端の稜線１３よりも主切れ刃長手方向に突出した位置にあるものにした。
【選択図】図１

Description

この発明は、直角コーナのフライス加工に用いるスローアウェイチップとそのチップを採用したエンドミル、隅削りフライスなどのミーリングカッタに関する。

所謂ネガ、ポジの配置にして直角コーナの切削加工に用いるスローアウェイチップ（以下単にチップとも言う）として、例えば、下記特許文献１，２に開示されたものがある。ネガ、ポジの配置とは、カッタボディに対して、チップをラジアルレーキがネガティブ（負）、アキシャルレーキがポジティブ（正）となる姿勢に装着することを言う。

特許文献１が開示しているチップは、すくい面となる上面に対して側面が鋭角に交わったポジティブ型であり略平行四辺形をなし、上面の鋭角コーナ側がワークのコーナの加工に利用される。また、特許文献２が開示しているチップは、略長方形をなし、側面と上面が交差した位置に主切れ刃を、ボディの端部から軸方向に突出した位置に副切れ刃として機能する稜線と斜面の端面をそれぞれ備えている。

ところで、切削加工に用いるスローアウェイチップは、焼結チップが主流をなしている。焼結チップは、原料の粉末を型に充填してプレス機で押し固め、得られた成形体を焼結して製造されるチップであって、焼結による不可避の寸法変化が起こる。チップの形状によっては、粉末成形時に各部の粉末充填密度に差が発生し、このような成形体を焼結して得られるチップは、焼結後の寸法精度が低下し、カッタボディに対する取り付け精度や加工精度が悪くなる。

特許文献１が開示しているような平行四辺形を基本形にしたポジティブ型のチップは、鈍角コーナ側に比べて鋭角コーナ側の粉末充填がし難いことから、鋭角コーナ側のノーズ部と鈍角コーナ側のノーズ部の粉末充填量、粉末充填密度に差がつき易く、それが原因で焼結時の寸法変化量に差が生じるため、焼結後の寸法精度が低下する。

また、特許文献２のチップは、特許文献１のチップに比べれば粉末の充填密度のばらつきを小さくすることができると考えられるが、ボディの端部から軸方向に突出した位置の稜線を副切れ刃として使用し、さらに、その副切れ刃を作り出す斜面でチップの軸方向支持を行う構造にしているので、もともと狭い斜面の面積が副切れ刃損傷時にさらに減少して軸方向支持の安定性が悪化し、また、支持面の減少により支持面の面圧が上昇するため、チップ及びカッタボディの寿命低下なども招く。
実用新案登録第２５３１５５７号公報 特開平１１−３３３６１６号公報

この発明は、特許文献１，２が開示しているチップの弱点を共に無くすこと、具体的には、副切れ刃損傷時にも支持安定性が損なわれない構造を持ちながら各部の粉末の充填密度のばらつきを小さくして焼結チップの寸法精度を高められるようにすることを課題としている。

上記の課題を解決するため、この発明においては、上面と、４つのコーナを有する平坦な底面と、底面の平行な２辺に連なる２つの側面と、底面の他の平行な２辺に連なる２つの傾斜した端面と、側面と上面が交差した位置の稜線で形成される主切れ刃と、端面と上面が交差した位置の稜線で形成される副切れ刃と、カッタボディのチップ座で支える軸方向支持面と、上面のコーナに形成される４つのノーズ部をスローアウェイチップに備えさせた。また、前記４つのノーズ部はチップの平面視におけるコーナ角が実質的に直角をなすものにし、さらに、その４つのノーズ部のうち少なくとも一つのノーズ部は、主切れ刃と副切れ刃とノーズＲを組み合わせて構成され、前記軸方向支持面は前記端面の一部で構成され、前記副切れ刃は、前記軸方向支持面と平行で、前記底面と平行な面上、かつ、軸方向支持面の上端の稜線よりも主切れ刃長手方向に突出した位置にあるものにした。

主切れ刃は、緩やかに湾曲して平面視で外側に膨らむ曲線で形成されるものが好ましい。また、主切れ刃と副切れ刃とノーズＲを組み合わせて構成されるノーズ部のコーナ角と主切れ刃と軸方向支持面の上端の稜線とノーズＲを組み合わせて構成されるノーズ部のコーナ角（いずれもチップの平面視における角度）は、角度差ができるだけ生じないようにするのがよい。前者のコーナ角は８８°〜９１°、後者のコーナ角は９０°〜９１°が適当である。この発明では、ノーズ部のコーナ角については、９０°からの振れが２°以下であれば実質的に直角とみなす。

主切れ刃と副切れ刃とノーズＲを組み合わせて構成されるノーズ部を対角位置の２箇所に設け、チップ中心を基準にして１８０°回転させたときのチップ輪郭が重なるようにしたもの、前記軸方向支持面とのなす角が実質的に直角な径方向支持面を側面に設けたもの、副切れ刃と、その副切れ刃に連なる稜線をチップの端面視において底面と平行にしたもの、上面の各コーナと底面の各コーナの位相を一致させたものなども好ましい。

かかるスローアウェイチップは、副切れ刃が最先端に、主切れ刃が最外周にそれぞれ位置し、アキシャルレーキが正、ラジアルレーキが負となり、かつ、主切れ刃によって加工されるコーナの壁面がカッタの軸心と平行、副切れ刃によって加工されるコーナの底面がカッタの軸心と直角になる姿勢にしてカッタボディの先端外周に設けたチップ座に装着する。この発明では、このようにして構成されるミーリングカッタも同時に提供する。

この発明のチップは、４つのノーズ部の平面視におけるコーナ角を実質的に直角にしており、各ノーズ部の粉末充填がし易い。そのために、各ノーズ部の粉末充填の条件を平均化して充填のばらつき、それによる密度差のばらつきを小さくすることができ、充填密度のばらつきに起因した焼結時の寸法変化量のばらつき（変形）を抑制して寸法精度、形状精度を高めることが可能になる。

また、チップの軸方向支持面を端面の一部で構成し、この軸方向支持面を副切れ刃から独立した位置に設けたので、副切れ刃が損傷しても軸方向支持面の面積減少が起こらず、軸方向支持の安定性が維持される。そのために、加工が安定して加工精度がより良くなり、なおかつ、面積の減少による支持負担の増加が防止されてチップやカッタボディの寿命も向上する。

さらに、加工コーナの底面をさらえる副切れ刃を設けているので、底面の面粗度も高めることができる。

その他の好ましい構成の作用、効果は次項で述べる。

以下、添付図面の図１〜図６に基づいて、この発明のスローアウェイチップの実施の形態を説明する。図示のスローアウェイチップ１は、上面２と、４つのコーナを有する略長方形の平坦な底面３と、底面３の平行な２辺に連なる２つの側面４，４と、底面３の他の平行な２辺に連なる２つの端面５，５と、縦長の２つの主切れ刃６，６と、対角コーナ部に配置される２つの副切れ刃７，７と、カッタボディのチップ座で支える軸方向支持面８と、上面２のコーナに形成される４つのノーズ部９_−１〜９_−４と、チップの中心に設けられるクランプ用のチップ穴１０と、側面４，４の下側部分に形成された径方向支持面１１を備えている。

例示のチップの上面２には高低差がついている。上面２は、対角位置にあるノーズ部９_−１，９_−３の位置が最も高く、ノーズ部９_−１からノーズ部９_−４に向かって、また、ノーズ部９_−３からノーズ部９_−２に向かって主切れ刃６に沿った領域の上面２がそれぞれ下り傾斜をなし、そのために、主切れ刃６は、図３の側面視において底面３に対して傾きをもつ刃になっている。

側面４と端面５は、上面２に対して共に鋭角に交わっており、側面４と上面２が交差した位置の稜線で主切れ刃６が、端面５と上面２が交差した位置の稜線で副切れ刃７がそれぞれ形成されている。

また、軸方向支持面８は端面５の一部で構成されている。この軸方向支持面８は、副切れ刃７を作り出す位置の端面５から離れた位置にある。

ノーズ部９_−１，９_−３は、主切れ刃６と副切れ刃７と円弧のノーズＲ１２を組み合わせて構成され、また、ノーズ部９_−２，９_−４は、主切れ刃６と軸方向支持面８の上端の稜線１３と円弧のノーズＲ１２を組み合わせて構成されている。

また、各ノーズ部９_−１〜９_−４は、チップの平面視におけるコーナ角α（図１参照）が実質的に直角をなすものにしている。コーナ角αは、ノーズＲ１２の形成範囲で表す。ノーズＲ１２が主切れ刃６に連なる図６のａ点から副切れ刃７又は軸方向支持面８の上端の稜線１３に連なるｂ点までの範囲をコーナ角とする。４つのノーズ部９_−１〜９_−４のコーナ角αは全て９０°とするのが理想であるが、主切れ刃の形状による制約によって９０°
から若干ずれることがある。コーナ部の加工精度(壁面直角度)を向上させ、かつ、製造時の粉末充填ばらつきを抑制するには、ノーズ部９_−１，９_−３のコーナ角αを８８°〜９１°、ノーズ部９_−２，９_−４のコーナ角αは９０°〜９１°の範囲に収めるのが好ましい。各ノーズ部のコーナ角が均一化されるほど、各ノーズ部に粉末が均一に充填され、充填密度のばらつきが小さくなって焼結時の寸法変化量のばらつき（変形）が小さくなる。図２に示す底面３の各コーナのコーナ角θも、ノーズ部と同様に構成される。

副切れ刃７は、平面視において軸方向支持面８と平行に形成されている。また、この副切れ刃７は、軸方向支持面８の上端の稜線１３よりも主切れ刃長手方向に突出して（図１のＬが突出量）底面３と平行な面上に配置されている。

このほか、主切れ刃６は、円弧半径の大きい（曲率の小さい）曲線で形成されて平面視（図１）において緩やかに湾曲して外側に膨らんでおり、直線の主切れ刃を設けたものに比べて主切れ刃各部の理想刃形（主切れ刃の各部は、同一回転円上にあるのが理想）からのずれが小さくなって加工するコーナの直角度が高まる。

また、この発明のチップは、上面の４コーナのうち少なくとも１箇所が主切れ刃６と副切れ刃７とノーズＲ１２を組み合わせて構成されるノーズ部となっていればよいが、例示のチップ１のように、主切れ刃６と副切れ刃７とノーズＲ１２を組み合わせて構成されるノーズ部９_−１と９_−３を対角位置に設けてチップ中心を基準にして全体を１８０°回転させたときのチップ輪郭が重なるようにすると、コーナチェンジによる刃先交換が可能になり、経済性に有利なものになる。

また、側面４の下側部分に、図３のＹ−Ｙ断面（図７参照）において軸方向支持面８とのなす角が実質的に直角な径方向支持面１１を設け、軸方向支持面８と径方向支持面１１の２面をカッタボディで拘束するようにしており、そのために、カッタボディに対する取付け精度や取付け状態がより安定する。

さらに、副切れ刃７と、その副切れ刃７に連なる軸方向支持面８の上端の稜線１３をチップの端面視において底面３と平行にしており（図４参照）、また、図２からわかるように、上面２と底面３のコーナの位相も一致させている（コーナにねじれが生じていない）ので、プレス成形の際に各ノーズ部に同一方向（プレスによる加圧方向即ち垂直方向）の圧力がかかり、これが有効に作用してノーズ部の粉末充填密度のばらつきが抑制される。

なお、上面２の主切れ刃６と副切れ刃７に沿った位置には、必要に応じてチップブレーカを設けることができる。また、副切れ刃７と稜線１３との間の傾斜した稜線１４は、カッタを横送りしながら縦方向にも送りをかけて使用するときに中間切れ刃として機能させることができる。

このように構成したこの発明のチップは、実質的に直角に形成されたノーズ部９_−１〜９_−４に粉末が均一に充填され、そのために、焼結時の寸法変化のばらつきが小さくなる。例えば、平行四辺形のチップの場合、０．３％程度の寸法変化のばらつきが起こる。これに対し、実施例に示した形状のチップはそのばらつきが０．０６％程度と非常に小さく抑えられた。

次に、この発明のスローアウェイチップを採用したミーリングカッタ２０の一例を図８〜図１０に示す。

図中２１はカッタボディである。このカッタボディ２１の先端外周にはチップ座２２が周方向に間隔をあけて複数設けられている。そのチップ座２２に、上述したスローアウェイチップ１をクランプねじ２３などで固定して装着している。

このとき、スローアウェイチップ１は、副切れ刃７が最先端に、主切れ刃６が最外周にそれぞれ位置し、図８に示すアキシャルレーキγ_ｐが正、図１０に示すラジアルレーキγ_ｆが負となり、かつ、主切れ刃６によって加工されるコーナの壁面（図１１の２４）がカッタの軸心Ｃと平行、副切れ刃７によって加工されるコーナの底面（図１１の２５）がカッタの軸心Ｃとほぼ直角になる姿勢にして（副切れ刃７自体は、カッタの軸心と直角な線に対して１°３０′以下の角度で傾けることがある）カッタボディ２１に装着される。

例示のスローアウェイチップ１は、図３の側面視において主切れ刃６を底面３に対して傾けているので、カッタボディ２１に設けるチップ座２２の軸方向傾きβ（図９参照）をさほど大きくせずに主切れ刃６に正の大きなアキシャルレーキを付与することができる。

また、チップ１の端面５に形成した軸方向支持面８と側面４に形成した径方向支持面１１の２面をチップ座２２で支持する構造にしたので、チップの取付け精度、支持安定性にも優れる。

さらに、副切れ刃７によるさらえ効果によって加工コーナの底面の面粗度を良くすることができ、また、主切れ刃６が曲線で形成されているので、直角度の高いコーナを加工することができる。

なお、例示のカッタはエンドミルであるが、この発明は隅削りフライスにも適用できる。

この発明のスローアウェイチップの一例を示す平面図 図１のチップの底面図 図１のチップの側面図 図１のチップの端面図 図１のＸ−Ｘ線に沿った断面図 図１のチップのノーズ部の拡大平面図 図３のＹ−Ｙ線に沿った断面図 この発明のミーリングカッタの一例を示す平面図 図８のカッタの９０度回転した位置の側面図 図８のカッタの正面図 この発明のカッタで加工するコーナの断面図

符号の説明

１ スローアウェイチップ
２ 上面
３ 底面
４ 側面
５ 端面
６ 主切れ刃
７ 副切れ刃
８ 軸方向支持面
９_−１〜９_−４ ノーズ部
１０ チップ穴
１１ 径方向支持面
１２ ノーズＲ
１３，１４ 稜線
２０ ミーリングカッタ
２１ カッタボディ
２２ チップ座
２３ クランプねじ

Claims (8)

1. 上面（２）と、４つのコーナを有する平坦な底面（３）と、底面（３）の平行な２辺に連なる２つの側面（４,４）と、底面（３）の他の平行な２辺に連なる２つの傾斜した端面（５,５）と、側面（４）と上面（２）が交差した位置の稜線で形成される主切れ刃（６）と、端面（５）と上面（２）が交差した位置の稜線で形成される副切れ刃（７）と、カッタボディのチップ座で支える軸方向支持面（８）と、上面（２）のコーナに形成される４つのノーズ部（９_−１〜９_−４）を有し、
   前記４つのノーズ部（９_−１〜９_−４）はチップの平面視におけるコーナ角（α）が実質的に直角をなし、かつ、この４つのノーズ部のうち少なくとも一つのノーズ部（９_−１及び／もしくは９_−３）は、主切れ刃（６）と副切れ刃（７）とノーズＲ（１２）を組み合わせて構成され、
   前記軸方向支持面（８）は端面（５）の一部で構成され、
   前記副切れ刃（７）は、軸方向支持面（８）と平行で、底面（３）と平行な面上、かつ、軸方向支持面（８）の上端の稜線（１３）よりも主切れ刃長手方向に突出した位置にあるスローアウェイチップ。
2. 前記主切れ刃（６）が緩やかに湾曲して平面視で外側に膨らむ曲線で形成されている請求項１に記載のスローアウェイチップ。
3. チップの平面視において、主切れ刃（６）と副切れ刃（７）とノーズＲ（１２）を組み合わせて構成されるノーズ部（９_−１，９_−３）のコーナ角を８８°〜９１°、主切れ刃（６）と軸方向支持面（８）の上端の稜線（１３）とノーズＲ（１２）を組み合わせて構成されるノーズ部（９_−２，９_−４）のコーナ角を９０°〜９１°に設定した請求項１又は２に記載のスローアウェイチップ。
4. 主切れ刃（６）と副切れ刃（７）とノーズＲ（１２）を組み合わせて構成されるノーズ部（９_−１），（９_−３）を対角位置に設け、チップ中心を基準にしてチップを１８０°回転させたときのチップ輪郭が重なるようにした請求項１〜３のいずれかに記載のスローアウェイチップ。
5. 側面（４）に、前記軸方向支持面（８）とのなす角が実質的に直角な径方向支持面（１１）を設けた請求項１〜４のいずれかに記載のスローアウェイチップ。
6. 前記副切れ刃（７）と、その副切れ刃に連なる稜線（１３）をチップの端面視において底面（３）と平行にした請求項１〜５のいずれかに記載のスローアウェイチップ。
7. 上面の各コーナと底面の各コーナの位相を一致させた請求項１〜６のいずれかに記載のスローアウェイチップ。
8. 請求項１〜７のいずれかに記載のスローアウェイチップ（１）を、副切れ刃（７）が最先端に、主切れ刃（６）が最外周にそれぞれ位置し、アキシャルレーキ（γ_ｐ）が正、ラジアルレーキ（γ_ｆ）が負となり、かつ、主切れ刃（６）によって加工されるコーナの壁面がカッタの軸心（Ｃ）と平行、副切れ刃（７）によって加工されるコーナの底面がカッタの軸心（Ｃ）と直角になる姿勢にしてカッタボディ（２１）の先端外周に設けられているチップ座（２２）に装着したミーリングカッタ。

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