JP2007030387A - バリア性フィルム基板およびそれを用いた有機電界発光素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 プラスチックフィルム上に少なくとも1層の有機層と少なくとも2層の無機層からなる有機層と無機層の交互積層体を有してなるバリア性フィルム基板であって、前記有機層がポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される1以上の有機化合物を含み、前記有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
これらの従来技術の課題を考慮して、本発明の第1の目的は、水蒸気バリア性が高くて、有機EL素子の基板として使用したときにダークスポットを効果的に抑えることができて、かつ膜強度が高いフィルム基板を提供することに設定した。また、本発明の第2の目的は、ダークスポットが発生せず、表示特性が優れた有機EL素子を提供することに設定した。
[2] ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される前記有機化合物が、カルボキシル基またはホスホン酸基を有することを特徴とする[1]に記載のバリア性フィルム基板。
[3] 前記無機層の少なくとも1層がSi、Al、In、Sn、ZnおよびTiからなる群より選択される1以上の金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載のバリア性フィルム基板。
[4] プラスチックフィルム上に少なくとも2層の有機層と少なくとも3層の無機層から成る有機層と無機層の交互積層体を有してなるバリア性フィルム基板であって、前記有機層がポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される1以上の有機化合物を含み、前記有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であることを特徴とするバリア性フィルム基板。
[5] ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される前記有機化合物が、カルボキシル基またはホスホン酸基を有することを特徴とする[4]に記載のバリア性フィルム基板。
[6] 前記無機層の少なくとも1層がSi、Al、In、Sn、ZnおよびTiからなる群より選択される1以上の金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物を含むことを特徴とする[4]または[5]に記載のバリア性フィルム基板。
[7] 40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.01g/m2・day以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
[8] 前記プラスチックフィルムのガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項にに記載のバリア性フィルム基板を用いたことを特徴とする有機EL素子。
本発明のバリア性フィルム基板は、プラスチックフィルム上に、少なくとも1層の有機層と少なくとも2層の無機層を有するフィルム基板である。層の構成としてはプラスチックフィルム側から第1の無機層、有機層、第2の無機層の順に堆積している。プラスチックフィルムと第1の無機層との間には別の層が挿入されていても良い。また、第2の無機層の上には他の層が存在しても良い。
本発明のバリア性フィルム基板は、好ましくはプラスチックフィルム上に2層以上の無機層と2層以上の有機層からなる無機層と有機層の交互積層体を有するフィルム基板である。より好ましくは、プラスチックフィルム上に3層以上の無機層と2層以上の有機層からなる無機層と有機層の交互積層体を有するフィルム基板である。層の構成としては、プラスチックフィルム側から第1の無機層、第1の有機層、第2の無機層の順に堆積しており、さらにこの上に第2の有機層、第3の無機層、第3の有機層、第4の無機層...のように繰り返し積層されていても良い。あるいはプラスチックフィルム側から第1の有機層、第1の無機層、第2の有機層、第2の無機層の順に堆積しており、さらにこの上に第3の有機層、第3の無機層、第4の有機層、第4の無機層...のように繰り返し積層されていても良い。交互積層体の最上層は無機層でも有機層でもよい。
この他、必要に応じてプラスチックフィルムと前記交互積層体との間、交互積層体の上、あるいはプラスチックフィルムの裏面に別の機能性層が挿入されていても良い。挿入される別の機能性層は単層でも多層でも良い。
本発明における無機層とは、無機材料で構成される層を意味する。無機層は、ガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造の薄膜である。無機層の例としては、金属化合物からなる薄膜(金属化合物薄膜)が挙げられる。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
前記無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特にSi、Al、Sn、Tiがから選ばれる金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
また、無機層は均一層であることが好ましい。ここで「均一層」とは、層内の組成が均一である層を意味する。均一層であれば、力学的、光学的に不連続な境界が生じにくく、ディスプレイ材料として好適であるという利点がある。
本発明のバリア性フィルム基板における有機層は、有機ポリマーを主成分とする。有機ポリマーとしてはポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、およびポリメタクリレート等が挙げられる。有機ポリマーは付加重合ポリマーでも縮合重合ポリマーでも良い。付加重合ポリマーはホモポリマーでも共重合ポリマーでも良い。有機ポリマーは架橋されていても良い。有機層中に含まれる有機ポリマーは1種でも2種以上の混合物でも良い。本発明の有機ポリマーは有機層を成膜する際、モノマーおよび/またはオリゴマーの重合反応および/または架橋反応により形成する。
なお、有機層を設置する際に揮発性の有機溶剤を用いることは差し支えないが、前記揮発性の有機溶剤が有機層に残存することは本発明の趣旨に反する。本発明において有機層設置の際に用いる有機溶剤は沸点が200℃以下であり、150℃以下が好ましく、100℃以下がさらに好ましい。これらの有機溶剤を用いるなどして、実質的に有機溶剤が残存しないように製造する。
未反応モノマーをポリマーに転換するためにポスト重合を行っても良い。ポスト重合は加熱、光(紫外線、可視光線)照射、電子線照射、プラズマ照射、およびこれらの組み合わせを用いて行われる。ポスト重合は有機層を設置した直後に行っても良いし、すべての層を設置した後に行っても良い。有機層を複数層設置する場合は、各有機層設置ごとにポスト重合を行っても良い。
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難となるし、厚すぎると外力によりクラックを発生し、バリア性が低下する。かかる観点から、上記隣接有機層の厚みは、10nm〜2000nmが好ましく、20nm〜1000nmさらに好ましく、50nm〜500nmが最も好ましい。
本発明のバリア性フィルム基板に用いられるプラスチックフィルムは、上記各層を保持できるフィルムであれば特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的に、ポリエステル、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明のバリア性フィルム基板は吸湿性層を有しても良い。好ましい吸湿性層の例としては、2属金属一酸化物から構成される層を挙げることができる。前記2属金属一酸化物に含まれる2属金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。本発明においては何れの2属金属をも使用することができるが、コスト、吸湿性を考慮すると、Ca、Sr、Baが好ましい。
本発明のバリア性フィルム基板は、プラスチックフィルム上に公知のプライマー層を設置することができる。プライマー層としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂層、親水性樹脂共存下でゾルーゲル反応により形成する有機無機ハイブリッド層、無機蒸着層またはゾル−ゲル法による緻密な無機層を挙げることができる。
本発明のバリア性フィルム基板は保護層を有していても良い。特に基板の裏面には保護層を設置するのが好ましい。保護層に使用するポリマーとしては、水溶性ポリマー、セルロースアシレート、ラテックスポリマー、水溶性ポリエステルなどが例示される。水溶性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などであり、セルロースアシレートとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。ラテックスポリマーとしては塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などが挙げられる。
前記保護層には、バリア性フィルム基板の透明性を実質的に損なわない程度に無機または、有機の微粒子をマット剤として含有させることができる。無機の微粒子のマット剤としてはシリカ(SiO2),二酸化チタン(TiO2),炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを使用することができる。有機の微粒子マット剤としては、ポリメチルメタクリレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリスチレン、米国特許第4,142,894号明細書に記載されている処理液可溶性のもの、米国特許第4,396,706号明細書に記載されているポリマ−などを用いることができる。これらの微粒子マット剤の平均粒子サイズは0.01〜10μmのものが好ましい。より好ましくは、0.05〜5μmである。また、その含有量は0.5〜600mg/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜400mg/m2である。
前記保護層は、一般に良く知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法により塗布することができる。
本発明のバリア性フィルム基板は、帯電防止層(導電性層)を有しても良い。帯電防止層は、バリア性フィルム基板の裏面(バリア層が形成されていない面)に形成することが好ましい。帯電防止層は、ガスバリアフィルムの取扱の際に帯電するのを防ぐ機能を付与するものであり、具体的には、イオン導電性物質や導電性微粒子を含有する層を設けることによって行う。
ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであり、例としてはイオン性高分子化合物を挙げることができる。イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、特公昭49−23827号、特公昭47−28937号各公報に見られるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、特公昭57−18175号、特公昭57−18176号、特公昭57−56059号各公報などに見られるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、特公昭57−15376号、特公昭53−45231号、特公昭55−145783号、特公昭55−65950号、特公昭55−67746号、特公昭57−11342号、特公昭57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、特公昭62−9346号各公報に見られるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることができる。
本発明のバリア性フィルム基板は必要に応じて平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層等を設置しても良い。
次に、本発明のバリア性フィルム基板を用いた有機EL素子(以下、「本発明の有機EL素子」と呼ぶ)について説明する。
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。なお、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としては1属金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%の1属金属または2属金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜して、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
本発明の有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
本発明の有機EL素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。正孔ブロック層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、平坦化作用を持つ材料、水分や酸素が素子内に入ることを抑止する機能を有しているものが好ましい。具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等の金属酸化物、SiNx等の金属窒化物、SiNxOy等の金属窒化酸化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。これらのうち、金属の酸化物、窒化物、窒化酸化物が好ましく、珪素の酸化物、窒化物、窒化酸化物が特に好ましい。
さらに、本発明の有機EL素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤または不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
プラスチックフィルム上に少なくとも第1の無機層、第1の有機層および第2の無機層を設けたバリア性フィルム基板BF−1〜BF−4を下記の手順にしたがって作製した。各フィルム基板の各層の組成の詳細は、表1に記載される通りである。
樹脂Aを、濃度が15質量%になるようにジクロロメタン溶液に溶解し、該溶液をダイコーティング法によりステンレスバンド上に流延した。次いで、バンド上からフィルムを剥ぎ取り、残留溶媒濃度が0.08質量%になるまで乾燥させた。乾燥後、フィルムの両端をトリミングし、ナーリング加工した後に巻き取り、厚み100μmの基材となるプラスチックフィルムを作製した。作製したプラスチックフィルムのガラス転移温度(Tg)は355℃(DMA法)であった。
(2−1)第1の無機層の形成
スパッタリング装置を用いて、(1)で作製したプラスチックフィルム上に無機層(酸化アルミニウム)を形成した。ターゲットとしてアルミニウム、放電ガスとしてアルゴン、反応ガスとして酸素をそれぞれ用いた。成膜圧力は0.1Pa、到達膜厚は50nmであった。
プラスチックフィルム上に形成した第1の無機層の上に、表1に示す組成のモノマー20g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュアー184の商品名で市販されているもの)0.6g、2−ブタノン200gの混合溶液を液厚5μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。室温にて2時間乾燥した後、高圧水銀ランプの紫外線を照射して硬化させ(積算照射量約2J/cm2)、有機層を形成した。膜厚はいずれの場合も約500nmであった。
第1の無機層と同様の方法で第1の有機層上に第2の無機層(酸化アルミニウム)を形成した。
表1に示すように、バリア性フィルム基板BF−4を作製するときのみ、第1の有機層と同様の方法で第2の無機層上に第2の有機層を形成した。
表1に示すように、バリア性フィルム基板BF−4を作製するときのみ、第2の無機層と同様の方法で第2の有機層上に第3の無機層(酸化アルミニウム)を形成した。
以上のようにしてバリア性フィルム基板BF−1〜BF−4を作製した。
下記の方法でバリア性フィルム基板BF−1〜BF−4の物性を評価した。
(3−1)水蒸気透過率
MOCON社製、「PERMATRAN−W3/31」を用いて、40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率を各サンプルについて20箇所測定した。いずれのサンプルも過半数の測定部位において水蒸気透過率が検出限界以下(0.01g/m2・day以下と推定される)であった。
水蒸気透過率が観測可能な有限値を与えた部位をバリア性フィルム基板の故障部位と見なした。20箇所の中で正常部位の見出される確率を歩留まりと定義し、百分率で表した。歩留まりが70%以上のものを実用性ありと判定した。
(3−2)膜強度
JIS K5600-5-6(ISO2409)に準拠した方法(クロスカット剥離法)で、バリア層の膜強度を調べた。評価値は膜破壊の起きなかった面積の比率(百分率)で表した。膜強度が50%以上のものを実用性ありと判定した。
(3−3)評価結果
以上のようにして調べた各バリア性フィルム基板の物性値を表2に示した。膜強度は有機層がカルボキシル基を含有するBF−3およびBF−4が特に良好である。バリア性フィルム基板の歩留まりも膜強度の高いBF−3およびBF−4が良好であるが、2層の有機層と3層の無機層からなる有機層と無機層の交互積層体を有するBF−4の方がより歩留まりが高いことは明らかである。
(1)有機EL素子の作成
実施例1で作製したバリア性フィルム基板BF−1〜BF−4を真空チャンバー内に導入し、ITOターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、厚み0.2μmのITO薄膜からなる透明電極を形成した。ITO膜を有するバリア性フィルム基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この基板(陽極)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
Alq:膜厚60nm
このものを、大気に触れさせること無く、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、有機EL素子OEL−1〜OEL−4を得た。
製造した各有機EL素子に9Vの電圧を印加して発光させた。いずれの素子もAlqに由来する緑色の発光を示した。発光面状を顕微鏡で観察したところ、OEL−1はダークスポットが多数観察された。一方、OEL2〜4にはダークスポットが観察されなかった。
Claims (7)
- プラスチックフィルム上に少なくとも1層の有機層と少なくとも2層の無機層から成る有機層と無機層の交互積層体を有してなるバリア性フィルム基板であって、前記有機層がポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される1以上の有機化合物を含み、前記有機層に含まれる有機化合物の99.5質量%以上が25℃において固体であることを特徴とするバリア性フィルム基板。
- ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群より選択される前記有機化合物が、カルボキシル基またはホスホン酸基を有することを特徴とする請求項1に記載のバリア性フィルム基板。
- 前記無機層の少なくとも1層がSi、Al、In、Sn、ZnおよびTiからなる群より選択される1以上の金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のバリア性フィルム基板。
- 前記交互積層体が少なくとも2層の有機層と少なくとも3層の無機層からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
- 40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.01g/m2・day以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
- 前記プラスチックフィルムのガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバリア性フィルム基板。
- 請求項1〜6のいずれか一項にに記載のバリア性フィルム基板を用いたことを特徴とする有機電界発光素子。
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