JP2006349809A - 異常判定方法及び異常判定装置 - Google Patents

異常判定方法及び異常判定装置 Download PDF

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均 清水
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Abstract

【課題】 まだ使用できる部品を交換したり、定期的にサービスマンを要請したりすることによるコスト高を抑えつつ、発生した異常の種類をある程度特定してメンテナンス性を向上させ、しかも、より効率的な保守を行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 異常の有無の判定に用いるマハラノビス距離を求めるための正常組データ群たる逆行列として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものをデータ記憶手段たるRAM1a等に記憶させ、これら複数種類の逆行列それぞれ個別に用いてそれぞれの逆行列に対応する異常の有無を判定する前判定を実施した後、少なくとも前判定で無しと判定した異常について、判定基準をより厳しくして有無を判定する後判定を実施するように、判定手段たる制御部1を構成した。
【選択図】 図4

Description

本発明は、互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群と、被検対象から取得した複数種類の情報とに基づいて、被検対象の異常の有無を判定する異常判定方法及び異常判定装置に関するものである。
従来、市場に出回っている様々な機械や装置においては、故障が発生すると、その内容によっては部品を交換したり清掃したりするまで装置を使用することができず、ユーザーに不便を強いてしまうことがある。
そこで、機械や装置の保守方法として、その稼働時間に基づいて部品の交換や清掃を定期的に行う方法が知られている。このような保守方法では、定期的な交換や清掃により、部品の過度の劣化や汚れの堆積による故障の発生を抑えて、機械や装置のダウンタイムを低減することができる。
しかしながら、同じ部品であっても、その寿命や汚れ進行度合いには、品質差や使用状況などによってバラツキが生ずる。このため、場合によっては、まだ十分に使用に耐え得る部品を交換してしまうことになり、コスト高を引き起こすという不具合があった。更に、サービスマンの派遣を必要とする部品の交換や清掃では、部品の寿命が間近になったり部品の汚れが著しくなったりしたときにだけサービスマンを要請する場合に比べて、サービスコストが高くなるという不具合も発生していた。
一方、従来より、被検対象の正常さ加減を量る種々の方法が知られている。例えば、非特許文献1に記載されたMTS(Maharanobis Taguchi System)法も、その1つである。MTS法では、まず、正常な状態の被検対象、あるいはこれと同一仕様のものである同一仕様物から、複数種類の情報からなる組データを取得する。そして、この組データを数多く収集して正常組データ群を構築する。その後、被検対象の正常さ加減を調べたいときに、被検対象から種々の情報を取得する。そして、それらの情報について、予め構築しておいた正常組データ群による多次元空間内でどのような相対位置関係にあるのかを示すマハラノビス距離を求め、その結果に基づいて被検対象の正常さ加減を量る。かかるMTS法を用いれば、被検対象としての機械や装置の軽微な異常を検知して、故障の発生を事前に予測することが可能になる。そして、異常の検知に基づいて、前もって部品を注文しておいたり、自分で部品交換できない場合には部品の注文とともにサービスマンを要請したりすることで、被検対象のダウンタイムを低減することができる。しかも、軽度な異常をきたすほど寿命が間近に迫った部品だけを交換することで、まだ十分に使用に耐え得る部品を交換してしまうことによるコスト高を回避することができる。更には、部品の寿命が間近になったり部品の汚れが著しくなったりしたときにだけサービスマンを要請することが可能になるので、定期的にサービスマンを要請することによる無駄なサービスコストの発生も回避することができる。
「MTシステムにおける技術開発」 刊行委員会委員長 田口玄一著 日本規格協会刊
かかるMTS法においては、正常な状態からどれだけずれているかを捉えて様々な異常の発生を包括的に検出するものであるので、異常の種類を特定することが困難である。このため、異常発見後のメンテナンス対応が煩雑になってしまう。
そこで、本発明者らは、被検対象の各部を複数のカテゴリに分類し、そのカテゴリ毎に構築された正常組データ群をMTS法に用いる新規な異常判定装置を開発中である。この異常判定装置では、正常組データ群として、例えば、被検対象たる正常な状態の画像形成装置の紙搬送系統から取得したもの、現像系統から取得したもの、などといった具合に、各カテゴリに対応する複数のものを記憶している。そして、各カテゴリについてそれぞれ、そのカテゴリに対応する正常組データ群と、稼働中の画像形成装置においてそのカテゴリに対応する箇所から取得したデータとに基づいてマハラノビス距離を求めて異常の判定に用いる。かかる構成では、異常の有無を被検対象内におけるカテゴリ毎に判定することで、紙搬送系統の部品に異常があるなどといった具合に、発生した異常の種類をある程度まで特定して、異常発見後のメンテナンス性を向上させることができる。
ところが、このようにメンテナンス性を向上させ得る異常判定装置を用いて被検対象の保守や点検を行う場合であっても、次のような課題が残されていた。即ち、異常の発生に基づいて操作者が自分で被検対象を分解して部品交換や清掃を行ったり、サービスマンを要請して部品交換や清掃を行ってもらったりして復旧させたにもかかわらず、その数日後には違う箇所で異常が発生してしまうことがある。このような場合、せっかく苦労して自分で被検対象を分解、組立したり、サービスマン派遣費用を支払ったりしたにもかかわらず、その直後に再び分解やサービスマンの派遣が必要になるという非効率的な事態に陥ってしまう。
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、次のような異常判定方法及び異常判定装置を提供することである。即ち、まだ使用できる部品を交換したり、定期的にサービスマンを要請したりすることによるコスト高を抑えつつ、発生した異常の種類をある程度特定してメンテナンス性を向上させ、しかも、被検対象のより効率的な保守を行うことができる異常判定方法等である。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群をデータ記憶手段に記憶させるデータ記憶工程と、被検対象から複数種類のデータを取得するデータ取得工程と、該データ記憶手段に記憶されている該正常組データ群、及び該データ取得工程における取得データに基づいて、該被検対象の異常の有無を判定する判定工程とを実施する異常判定方法において、上記データ記憶工程にて、上記正常組データ群として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものを上記データ記憶手段に記憶させ、且つ、上記判定工程にて、複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの正常組データ群に対応する異常の有無を判定する前判定工程と、該前判定工程で何れかの異常を有りと判定した場合に、少なくとも該前判定工程で無しと判定した異常について、判定基準をより厳しくして有無を判定する後判定工程とを実施することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群をデータ記憶手段に記憶させるデータ記憶工程と、被検対象から複数種類のデータを取得するデータ取得工程と、該データ記憶手段に記憶されている該正常組データ群、及び該データ取得工程における取得データに基づいて、既に経過した時点である過去時点における該被検対象の異常の有無を判定する判定工程とを実施する異常判定方法において、上記データ記憶工程にて、上記正常組データ群として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものを上記データ記憶手段に記憶させ、上記判定工程にて、複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの正常組データ群に対応する異常の有無を判定し、且つ、該判定工程で何れかの異常を有りと判定した場合に、少なくとも該判定工程で無しと判定した異常について、上記取得データに基づいて未だ経過していない時点である未来時点における有無を予測する予測工程を実施することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群を記憶するデータ記憶手段と、被検対象から複数種類のデータを取得するデータ取得手段と、該データ記憶手段に記憶されている該正常組データ群、及び該データ取得手段による取得データに基づいて、該被検対象の異常の有無を判定する判定手段とを備える異常判定装置において、上記正常組データ群として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものが上記データ記憶手段に記憶されている場合に、複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの正常組データ群に対応する異常の有無を判定する前判定を実施した後、該前判定で何れかの異常を有りと判定した場合に、少なくとも該前判定で無しと判定した異常について、該前判定とは異なる判定基準によって有無を判定する後判定を実施するように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の異常判定装置において、上記複数種類の正常組データ群についてそれぞれ、そのデータのサンプリングが行われた正常機に故障が発生した時点から所定の第1期間よりも大きく遡った時期に該正常機からサンプリングされたデータだけを含む第1正常組データ群と、該正常機に故障が発生した時点から、該第1期間より長い期間である第2期間よりも大きく遡った時期に該正常機から取得されたデータだけを含む第2正常組データ群とが上記データ記憶手段に記憶されている場合に、上記前判定にて、上記複数種類の正常組データ群にそれぞれ対応する複数の第1正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの第1正常組データ群に対応する異常の有無を判定した後、上記後判定にて、少なくとも該前判定で無しと判定した異常について、該第1組データに代えて該第2正常組データ群を用いることで上記判定基準をより厳しくするように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項3の異常判定装置において、上記前判定にて、上記複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いて複数のマハラノビス距離を求め、それぞれのマハラノビス距離を所定の第1閾値と比較してそれぞれ異常の有無を判定した後、上記後判定にて、少なくとも該前判定で無しと判定した異常について、該第1閾値に代えてそれよりも小さな第2閾値を用いることで上記判定基準をより厳しくするように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項3乃至5の何れかの異常判定装置において、上記複数種類の正常組データ群にそれぞれ対応する複数の異常について、それぞれ異常を解消するための異常解消対策情報を上記データ記憶手段に記憶しており、且つ、上記前判定や後判定で何らかの異常が有りと判定された場合に、その異常に対応する異常解消対策情報を該データ記憶手段の記憶データから特定して操作者に報知する報知手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群を記憶するデータ記憶手段と、被検対象から複数種類の情報を取得するデータ取得手段と、該データ記憶手段に記憶されている該正常組データ群、及び該データ取得手段による取得データに基づいて、既に経過した時点である過去時点における該被検対象の異常の有無を判定する判定手段とを備える異常判定装置において、上記正常組データ群として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものが上記データ記憶手段に記憶されている場合に、複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの正常組データ群に対応する異常の有無を判定するように上記判定手段を構成するとともに、該判定手段によって何れかの異常が有りと判定された場合に、少なくとも該判定手段によって無しと判定された異常について、上記取得データに基づいて未だ経過していない時点である未来時点における有無を予測する予測手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の異常判定装置において、上記複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いて複数のマハラノビス距離を求め、それぞれのマハラノビス距離を所定の閾値と比較してそれぞれ上記過去時点における異常の有無を判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7又は8の異常判定装置において、上記被検対象に対する部品交換又は部品清掃の履歴である部品交換履歴情報又は部品清掃履歴情報を上記データ記憶手段に入力するためのデータ入力手段を設け、上記複数種類のデータにおける少なくとも1つとして該被検対象の作動時間情報又は作動回数情報を取得するように上記データ取得手段を構成し、且つ、操作者の該データ入力手段への操作によって入力された該部品交換履歴情報又は部品清掃履歴情報と、該作動時間情報又は作動回数情報とに基づいて交換後経過期間又は清掃後経過期間を算出し、算出結果と所定の閾値との比較に基づいて上記未来時点における異常の有無を予測させるように上記予測手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れかの異常判定装置において、上記複数種類の正常組データ群にそれぞれ対応する複数の異常について、それぞれ異常を解消するための異常解消対策情報を上記データ記憶手段に記憶しており、且つ、上記判定手段によって何らかの異常が有りと判定された場合に、その異常に対応する異常解消対策情報を該データ記憶手段の記憶データから特定して操作者に報知する報知手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項10の異常判定装置において、上記予測手段によって何らかの異常の有りが予測された場合に、その異常に対応する異常解消対策情報を上記データ記憶手段の記憶データから特定して操作者に報知するように、上記報知手段を構成したことを特徴とするものである。
これらの発明においては、異常の発生に基づいてその異常に対応する部品の交換や清掃を行うことにより、まだ使用できる部品を交換したり、定期的にサービスマンを要請したりすることによるコスト高を抑えることができる。また、互いに情報の組合せの異なる複数の正常組データ群について、それぞれ、その正常組データ群と被検対象から取得した取得データとに基づいて異常の有無を判定することで、紙搬送系統、現像系統などといった具合に、発生した異常をある程度のカテゴリに分類して特定することで、メンテナンス性を向上させることができる。
また、請求項1や請求項3の発明特定事項の全てを具備する発明においては、各正常組データ群に対応する複数の異常のうち、前判定で無しと判定したものについては、前判定とは判定基準を異ならせる後判定を行う。この後判定にて、判定基準をより厳しくすることで、より軽度のレベルでの有無を判定することが可能である。これにより、通常の判定基準で無しと判定した異常のうちで、近い将来には通常の判定基準でも有りと判定される異常があるか否かを調べる。そして、かかる異常が認められた場合には、それについて、通常の判断基準を採用した前判定で認められた異常とともに対処することで、せっかく苦労して自分で被検対象を分解、組立したり、サービスマン派遣費用を支払ったりしたにもかかわらず、その直後に再び分解やサービスマンの派遣が必要になるという非効率的な事態の発生を抑える。これにより、従来に比べてより効率的な被検対象の保守を行うことができる。
また、請求項2や請求項7の発明特定事項の全てを具備する発明においては、各正常組データ群に対応する複数の異常のうち、異常無しと判定したものについては、未来時点における有無を予測する。この未来時点として、数日後などといった比較的近い将来の時点を設定すれば、無しと判定した異常のうちで、近い将来には有りと判定するようになる可能性の高い異常があるか否かを調べる。そして、かかる異常が認められた場合には、それについて、過去時点で既に有りと認められた異常とともに対処することで、せっかく苦労して自分で被検対象を分解、組立したり、サービスマン派遣費用を支払ったりしたにもかかわらず、その直後に再び分解やサービスマンの派遣が必要になるという非効率的な事態の発生を抑える。これにより、従来に比べてより効率的な被検対象の保守を行うことができる。
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した第1実施形態について説明する。
まず、本第1実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、本複写機を示す概略構成図である。この複写機は、プリンタ部100と給紙部200とからなる画像形成手段と、スキャナ部300と、原稿搬送部400とを備えている。スキャナ部300はプリンタ部100上に取り付けられ、そのスキャナ部300の上に原稿自動搬送装置(ADF)からなる原稿搬送部400が取り付けられている。
スキャナ部300は、コンタクトガラス32上に載置された原稿の画像情報を読取センサ36で読み取り、読み取った画像情報を図示しない制御部に送る。制御部は、スキャナ部300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ部100の露光装置21内に配設された図示しないレーザやLED等を制御してドラム状の4つの感光体40K,Y,M,Cに向けてレーザ書き込み光Lを照射させる。この照射により、感光体40K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
プリンタ部100は、露光装置21の他、1次転写ローラ62K,Y,M,C、2次転写装置22、定着装置25、排紙装置、図示しないトナー供給装置、トナー供給装置等も備えている。
給紙部200は、プリンタ部100の下方に配設された自動給紙部と、プリンタ部100の側面に配設された手差し部とを有している。そして、自動給紙部は、ペーパーバンク43内に多段に配設された2つの給紙カセット44、給紙カセットから記録体たる転写紙を繰り出す給紙ローラ42、繰り出した転写紙を分離して給紙路46に送り出す分離ローラ45等を有している。また、プリンタ部100の給紙路48に転写紙を搬送する搬送ローラ47等も有している。一方、手差し部は、手差しトレイ51、手差しトレイ51上の転写紙を手差し給紙路53に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ52等を有している。
プリンタ部100の給紙路48の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。このレジストローラ対49は、給紙カセット44や手差しトレイ51から送られてくる転写紙を受け入れた後、所定のタイミングで中間転写体たる中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に形成される2次転写ニップに送る。
本複写機において、操作者は、カラー画像のコピーをとるときに、原稿搬送部400の原稿台30上に原稿をセットする。あるいは、原稿搬送部400を開いてスキャナ部300のコンタクトガラス32上に原稿をセットした後、原稿搬送部400を閉じて原稿を押さえる。そして、図示しないスタートスイッチを押す。すると、原稿搬送部400に原稿がセットされている場合には原稿がコンタクトガラス32上に搬送された後に、コンタクトガラス32上に原稿がセットされている場合には直ちに、スキャナ部300が駆動を開始する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行し、第1走行体33の光源から発せられる光が原稿面で反射した後、第2走行体34に向かう。更に、第2走行体34のミラーで反射してから結像レンズ35を経由して読取りセンサ36に至り、画像情報として読み取られる。
このようにして画像情報が読み取られると、プリンタ部100は、図示しない駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動させながら他の2つの支持ローラを従動回転させる。そして、これらローラに張架される中間転写ベルト10を無端移動させる。更に、上述のようなレーザ書き込みや、後述する現像プロセスを実施する。そして、感光体40K,Y,M,Cを回転させながら、それらに、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの単色画像を形成する。これらは、感光体40K,Y,M,Cと、中間転写ベルト10とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップで順次重ね合わせて静電転写されて4色重ね合わせトナー像になる。感光体40K、40Y、40M、40C上にトナー像を形成する。
一方、給紙部200は、画像情報に応じたサイズの転写紙を給紙すべく、3つの給紙ローラのうちの何れか1つを作動させて、転写紙をプリンタ部100の給紙路48に導く。給紙路48内に進入した転写紙は、レジストローラ対49に挟み込まれて一旦停止した後、タイミングを合わせて、中間転写ベルト10と2次転写装置22の2次転写ローラ23との当接部である2次転写ニップに送り込まれる。すると、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像と、転写紙とが同期して密着する。そして、ニップに形成されている転写用電界やニップ圧などの影響によって4色重ね合わせトナー像が転写紙上に2次転写され、紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
2次転写ニップを通過した転写紙は、2次転写装置22の搬送ベルト24の無端移動によって定着装置25に送り込まれる。そして、定着装置25の加圧ローラ27による加圧力と、加熱ベルトによる加熱との作用によってフルカラー画像が定着せしめられた後、排出ローラ56を経てプリンタ部100の側面に設けられた排紙トレイ57上に排出される。
図2は、プリンタ部100を示す拡大構成図である。プリンタ部100は、ベルトユニット、各色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット18K,Y,M,C、2次転写装置22、ベルトクリーニング装置17、定着装置25等を備えている。
ベルトユニットは、複数のローラに張架した中間転写ベルト10を、感光体40K,Y,M,Cに当接させながら無端移動させる。感光体40K,Y,M,Cと中間転写ベルト10とを当接させるK,Y,M,C用の1次転写ニップでは、1次転写ローラ62K,Y,M,Cによって中間転写ベルト10を裏面側から感光体40K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ62K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体40K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト10に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。各1次転写ローラ62K,Y,M,Cの間には、中間転写ベルト10の裏面に接触する導電性ローラ74がそれぞれ配設されている。これら導電性ローラ74は、1次転写ローラ62K,Y,M,Cに印加される1次転写バイアスが、中間転写ベルト10の裏面側にある中抵抗の基層11を介して隣接するプロセスユニットに流れ込むことを阻止するものである。
プロセスユニット(18K,Y,M,C)は、感光体(40K,Y,M,C)と、その他の幾つかの装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部100に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット18Kを例にすると、これは、感光体40Kの他、感光体40K表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像手段たる現像ユニット61Kを有している。また、1次転写ニップを通過した後の感光体40K表面に付着している転写残トナーをクリーニングする感光体クリーニング装置63Kも有している。また、クリーニング後の感光体40K表面を除電する図示しない除電装置や、除電後の感光体40K表面を一様帯電せしめる図示しない帯電装置なども有している。他色用のプロセスユニット18Y,M,Cも、取り扱うトナーの色が異なる他は、ほぼ同様の構成になっている。本複写機では、これら4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cを、中間転写ベルト10に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設したいわゆるタンデム型の構成になっている。
図3は、4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cからなるタンデム部20の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット18は、感光体40の周りに、帯電手段としての帯電装置60、現像装置61、1次転写手段としての1次転写ローラ62、感光体クリーニング装置63、除電装置64等を備えている。
感光体40としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材を塗布し、感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。また、帯電装置60としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体40に当接させながら回転させるものを用いている。感光体40に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
現像装置61は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ65に供給する攪拌部66と、現像スリーブ65に付着した二成分現像剤のうちのトナーを感光体4K,Y,M,Cに転移させる現像部67とを有している。
攪拌部66は、現像部67よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本のスクリュウ68、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース70の底面に設けられたトナー濃度センサ71などを有している。
現像部67は、現像ケース70の開口を通して感光体40に対向する現像スリーブ65、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ72、現像スリーブ65に先端を接近させるドクタブレード73などを有している。ドクタブレード73と現像スリーブ65との間の最接近部における間隔は500[μm]程度に設定されている。現像スリーブ65は、非磁性の回転可能なスリーブ状の形状になっている。また、現像スリーブ65に連れ回らないようにないようされるマグネットローラ72は、例えば、ドクタブレード73の箇所から現像スリーブ65の回転方向にN1、S1、N2、S2、S3の5磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部66から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ65表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブ65の回転に伴ってドクタブレード73との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体40に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ65に印加される現像バイアスと、感光体40の静電潜像との電位差によって静電潜像上に転移して現像に寄与する。更に、現像スリーブ65の回転に伴って再び現像部67内に戻り、マグネットローラ72の磁極間の反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部66に戻される。攪拌部66内では、トナー濃度センサ71による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置61として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
感光体クリーニング装置63としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード75を感光体40に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体40に接触させる接触導電性のファーブラシ76を、図中矢印方向に回転自在に有するクリーニング装置63を採用している。そして、ファーブラシ76にバイアスを印加する金属製電界ローラ77を図中矢示方向に回転自在に設け、その電界ローラ77にスクレーパ78の先端を押し当てている。スクレーパ78によって電界ローラ77から除去されたトナーは、回収スクリュ79上に落下して回収される。
かかる構成の感光体クリーニング装置63は、感光体40に対してカウンタ方向に回転するファーブラシ76で、感光体40上の残留トナーを除去する。ファーブラシ76に付着したトナーは、ファーブラシ76に対してカウンタ方向に接触して回転するバイアスを印加された電界ローラ77に取り除かれる。電界ローラ77に付着したトナーは、スクレーパ78でクリーニングされる。感光体クリーニング装置63で回収したトナーは、回収スクリュ79で感光体クリーニング装置63の片側に寄せられ、トナーリサイクル装置80で現像装置61へと戻されて再利用される。
除電装置64は、除電ランプ等からなり、光を照射して感光体40の表面電位を除去する。このようにして除電された感光体40の表面は、帯電装置60によって一様帯電せしめられた後、光書込処理がなされる。
ベルトユニットの図中下方には、2次転写装置22が設けられている。この2次転写装置22は、2つのローラ23間に、2次転写ベルト24を掛け渡して無端移動させている。2つのローラ23のうち、一方は図示しない電源によって2次転写バイアスが印加される2次転写ローラとなっており、ベルトユニットのローラ16との間に中間転写ベルト10と2次転写ベルト24とを挟み込んでいる。これにより、両ベルトが当接しながら当接部で互いに同方向に移動する2次転写ニップが形成されている。レジストローラ対49からこの2次転写ニップに送り込まれた転写紙には、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像が2次転写電界やニップ圧の影響で一括2次転写されて、フルカラー画像が形成される。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト10から離間して、2次転写ベルト24の表面に保持されながら、ベルトの無端移動に伴って定着装置25へと搬送される。なお、2次転写ローラに代えて、転写チャージャ等によって2次転写を行わせるようにしてもよい。
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト10の表面は、支持ローラ15による支持位置にさしかかる。ここでは、中間転写ベルト10が、おもて面(ループ外面)に当接するベルトクリーニング装置17と、裏面に当接する支持ローラ15との間に挟み込まれる。そして、ベルトクリーニング装置17により、おもて面に付着している転写残トナーが除去された後、K,Y,M,C用の1次転写ニップに順次進入して、次の4色トナー像が重ね合わされる。
ベルトクリーニング装置17は、2つのファーブラシ90,91を有している。これらは、複数の起毛をその植毛方向に対してカウンタ方向で中間転写ベルト10に当接させながら回転することで、ベルト上の転写残トナーを機械的に掻き取る。加えて、図示しない電源によってクリーニングバイアスが印加されることで、掻き取った転写残トナーを静電的に引き寄せて回収する。
ファーブラシ90,91に対しては、それぞれ金属ローラ92,93が接触しながら、順または逆方向に回転している。これら金属ローラ92,93のうち、中間転写ベルト10の回転方向上流側に位置する金属ローラ92には、電源94によってマイナス極性の電圧が印加されている。また、下流側に位置する金属ローラ93には、電源95によってプラス極性の電圧が印加される。そして、それらの金属ローラ92,93には、それぞれブレード96,97の先端が当接している。かかる構成では、中間転写ベルト10の図中矢印方向への無端移動に伴って、まず、上流側のファーブラシ90が中間転写ベルト10表面をクリーニングする。このとき、例えば金属ローラ92に−700[V]が印加されながら、ファーブラシ90に−400[V]が印加されると、まず、中間転写ベルト10上のプラス極性のトナーがファーブラシ90側に静電転移する。そして、ファーブラシ側に転移したトナーが更に電位差によってファーブラシ90から金属ローラ92に転移して、ブレード96によって掻き落とされる。
このように、ファーブラシ90で中間転写ベルト10上のトナーが除去されるが、中間転写ベルト10上にはまだ多くのトナーが残っている。それらのトナーは、ファーブラシ90に印加されるマイナス極性のバイアスにより、マイナスに帯電される。これは、電荷注入または放電により帯電されるものと考えられる。次いで下流側のファーブラシ91を用いて今度はプラス極性のバイアスを印加してクリーニングを行うことにより、それらのトナーを除去することができる。除去したトナーは、電位差によりファーブラシ91から金属ローラ93に転移させ、ブレード97により掻き落とす。ブレード96、97で掻き落としたトナーは、不図示のタンクに回収される。
ファーブラシ91でクリーニングされた後の中間転写ベルト10表面は、ほとんどのトナーが除去されているがまだ少しのトナーが残っている。これらの中間転写ベルト10上に残ったトナーは、上述したようにファーブラシ91に印加されるプラス極性のバイアスにより、プラス極性に帯電される。そして、1次転写位置で印加される転写電界によって感光体40K,Y,M,C側に転写され、感光体クリーニング装置63で回収される。
レジストローラ対49は一般的には接地されて使用されることが多いが、転写紙Pの紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。
2次転写装置22および定着装置25の下には、上述したタンデム部20と平行に延びるような、転写紙反転装置28(図1参照)が設けられている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
本複写機は、その構成要素の状態や内部で生ずる現象に関連する様々な情報を取得するデータ取得手段を備えている。このデータ取得手段は、図4に示される制御部1、各種センサ2、操作表示部3などから構成されている。制御部1は、複写機全体の制御を司る制御手段であり、制御プログラムを記憶しているデータ記憶手段たるROM1c、演算データや制御パラメータ等を記憶するデータ記憶手段たるRAM1b、演算手段たるCPU1a等を有している。操作表示部3は、文字情報等を表示する液晶ディスプレイ等から構成される表示部3aや、テンキー等などによって操作者から入力情報を受け付けて制御部1cに送る操作部3bなどを有している。本複写機では、これら制御部1、各種センサ2、操作表示部3等からなるデータ取得手段が、ROM(1c)等のデータ記憶手段に記憶された正常組データ群と、複写機から定期的に取得した各種の取得情報とに基づいて被検対象たる複写機の異常の有無を判定する異常判定装置としても機能している。
本複写機のデータ取得手段によって取得される各種のデータとしては、センシングデータ、制御パラメータデータ、入力データ、画像読取データなどが挙げられる。以下、これらのデータについて詳述する。
(a)センシングデータ
センシングデータとしては、駆動関係、記録媒体の各種特性、現像剤特性、感光体特性、電子写真の各種プロセス状態、環境条件、記録物の各種特性などが取得する対象として考えられる。これらのセンシングデータの概要を説明すると、以下のようになる。
(a-1)駆動系統のデータ
・感光体ドラムの回転速度をエンコーダーで検出したり、駆動モータの電流値を読み取ったり、駆動モータの温度を読み取る。
・同様にして、定着ローラ、紙搬送ローラ、駆動ローラなどの円筒状またはベルト状の回転する部品の駆動状態を検出する。
・駆動により発生する音を装置内部または外部に設置されたマイクロフォンで検出する。
(a-2)紙搬送の状態
・透過型または反射型の光センサ、あるいは接触タイプのセンサにより、搬送された紙の先端や後端の位置を読み取り、紙詰まりが発生したことを検出したり、紙の先端や後端の通過タイミングのずれ、送り方向と垂直な方向の変動などを読み取る。
・同様に、複数のセンサ間の検出タイミングにより、紙の移動速度を求める。
・給紙時の給紙ローラと紙とのスリップを、ローラの回転数計測値と紙の移動量との比較で求める。
(a-3)紙などの記録媒体の各種特性
このデータは、画質やシート搬送の安定性に大きく影響する。この紙種のデータ取得には以下のような方法がある。
・紙の厚みは、紙を二つのローラで挟み、ローラの相対的な位置変位を光学センサ等で検知したり、紙が進入してくることによって押し上げられる部材の移動量と同等の変位量を検知することによって求める。
・紙の表面粗さは、転写前の紙の表面にガイド等を接触させ、その接触によって生じる振動や摺動音等を検知する。
・紙の光沢は、規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束をセンサで測定する。
・紙の剛性は、押圧された紙の変形量(湾曲量)を検知することにより求める。
・再生紙か否かの判断は、紙に紫外線を照射してその透過率を検出して行なう。
・裏紙か否かの判断は、LEDアレイ等の線状光源から光を照射し、転写面から反射した光をCCD等の固体撮像素子で検出して行なう。
・OHP用のシートか否かは、用紙に光を照射し、透過光と角度の異なる正反射光を検出して判断する。
・紙に含まれている水分量は、赤外線またはμ波の光の九州を測定することにより求める。
・カール量は光センサ、接触センサなどで検出する。
・紙の電気抵抗は、一対の電極(給紙ローラなど)を記録紙と接触させて直接測定したり、紙転写後の感光体や中間転写体の表面電位を測定して、その値から記録紙の抵抗値を推定する。
(a-4)現像剤特性
現像剤(トナーやキャリア)の装置内での特性は、電子写真プロセスの機能の根幹に影響するものである。そのため、システムの動作や出力にとって重要な因子となる。現像剤の情報を得ることは極めて重要である。この現像剤特性としては、例えば次のような項目が挙げられる。
・トナーについては、帯電量およびその分布、流動性、凝集度、嵩密度、電気抵抗、外添剤量、消費量または残量、流動性、トナー濃度(トナーとキャリアの混合比)を挙げることができる。
・キャリアについては、磁気特性、コート膜厚、スペント量などを挙げることができる。
これらのデータを複写機の中において単独で検出することは通常困難である。そこで、現像剤の総合的な特性として検出すると良い。この現像剤の総合的な特性は、例えば次のように測定することができる。
・感光体上にテスト用潜像を形成し、予め決められた現像条件で現像して、形成されたトナー像の反射濃度(光反射率)を測定する。
・現像装置中に一対の電極を設け、印加電圧と電流の関係を測定する(抵抗、誘電率など)。
・現像装置中にコイルを設け、電圧電流特性を測定する(インダクタンス)。
・現像装置中にレベルセンサを設けて、現像剤容量を検出する。レベルセンサは光学式、静電容量式などがある。
(a-5)感光体特性
感光体特性も現像剤特性と同じく、電子写真プロセスの機能と密接に関わる。この感光体特性のデータとしては、感光体の膜厚、表面特性(摩擦係数、凹凸)、表面電位(各プロセス前後)、表面エネルギー、散乱光、温度、色、表面位置(フレ)、線速度、電位減衰速度、電気抵抗、静電容量、表面水分量などが挙げられる。このうち、複写機の中では、次のようなデータを検出できる。
・膜厚変化に伴う静電容量の変化を、帯電部材から感光体に流れる電流を検知し、同時に帯電部材への印加電圧と予め設定された感光体の誘電厚みに対する電圧電流特性と照合することにより、膜厚を求める。
・表面電位、温度は従来周知のセンサで求めることができる。
・線速度は感光体回転軸に取り付けられたエンコーダーなどで検出される。
・感光体表面からの散乱光は光センサで検出される。
(a-6)電子写真プロセス状態
電子写真方式によるトナー像形成は、周知のように、感光体の均一帯電、レーザー光などによる潜像形成(像露光)、電荷を持ったトナー(着色粒子)による現像、転写材へのトナー像の転写(カラーの場合は中間転写体または最終転写材である記録媒体での重ね合わせ、または現像時に感光体への重ね現像を行なう)、記録媒体へのトナー像の定着という順序で行なわれる。これらの各段階での様々な情報は、画像その他のシステムの出力に大きく影響を与える。これらを取得することがシステムの安定を評価する上で重要となる。この電子写真プロセス状態のデータ取得の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
・帯電電位、露光部電位は従来公知の表面電位センサにより検出される。
・非接触帯電における帯電部材と感光体とのギャップは、ギャップを通過させた光の量を測定することにより検知する。
・帯電による電磁波は広帯域アンテナにより捉える。
・帯電による発生音。
・露光強度。
・露光光波長。
また、トナー像の様々な状態を取得すること方法としては、次のようなものが挙げられる。
・パイルハイト(トナー像の高さ)を、変位センサで縦方向から奥行きを、平行光のリニアセンサで横方向から遮光長を計測して求める。
・トナー帯電量を、ベタ部の静電潜像の電位、その潜像が現像された状態での電位を測定する電位センサにより測定し、同じ箇所の反射濃度センサから換算した付着量との比により求める。
・ドット揺らぎまたはチリを、ドットパターン画像を感光体上においては赤外光のエリアセンサ、中間転写体上においては各色に応じた波長のエリアセンサで検知し、適当な処理をすることにより求める。
・オフセット量(定着後)を、記録紙上と定着ローラ上の対応する場所をそれぞれ光学センサで読み取って、両者比較することにより求める。
・転写工程後(PD上,ベルト上)に光学センサを設置し,特定パターンの転写後の転写残パターンからの反射光量で転写残量を判断する。
・重ね合わせ時の色ムラを定着後の記録紙上を検知するフルカラーセンサで検知する。
(a-7)形成されたトナー像の特性
・画像濃度、色は光学的に検知する。反射光、透過光のいずれでもよい。色に応じて投光波長を選択すればよい。濃度及び単色情報を得るには感光体上または中間転写体上でよいが、色ムラなど,色のコンビネーションを測るには紙上の必要がある。
・階調性は、階調レベルごとに感光体上に形成されたトナー像または転写体に転写されたトナー像の反射濃度を光学センサにより検出する。
・鮮鋭性は、スポット径の小さい単眼センサ、若しくは高解像度のラインセンサを用いて、ライン繰り返しパターンを現像または転写した画像を読み取ることにより求める。
・粒状性(ざらつき感)は、鮮鋭性の検出と同じ方法により、ハーフトーン画像を読み取り、ノイズ成分を算出することにより求める。
・レジストスキューは、レジスト後の主走査方向両端に光学センサを設け、レジストローラONタイミングと両センサの検知タイミングとの差異から求める。
・色ずれは、中間転写体または記録紙上の重ね合わせ画像のエッジ部を、単眼の小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサで検知する。
・バンディング(送り方向の濃度むら)は、記録紙上で小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサにより副走査方向の濃度ムラを測定し、特定周波数の信号量を計測する。
・光沢度(むら)は、均一画像が形成された記録紙を正反射式光学センサで検知するように設ける。
・かぶりは、感光体上、中間転写体上、または記録紙上において、比較的広範囲の領域を検知する光学センサで画像背景部を読み取る方法、または高解像度のエリアセンサで背景部のエリアごと画像情報を取得し、その画像に含まれるトナー粒子数を数えるという方法がある。
(a-8)画像形成装置のプリント物の物理的な特性
・像流れや画像かすれなどは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上でトナー像をエリアセンサにより検知し、取得した画像情報を画像処理して判定する。
・トナーチリ汚れは記録紙上の画像を高解像度ラインセンサまたはエリアセンサで取り込み、パターン部の周辺に散っているトナー量を算定することにより求める。
・後端白抜け、ベタクロス白抜けは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上で高解像度ラインセンサにより検知する。
・記録紙のカール、波打ち、折れは、変位センサで検出する。折れの検出のためには記録紙の両端部分に近い所にセンサを設置することが有効である。
・コバ面の汚れやキズは、排紙トレイに縦に設けたエリアセンサにより,ある程度排紙が溜まった時のコバ面をエリアセンサで撮影,解析する。
(a-9)環境状態
・温度検出には、異種金属どうし或いは金属と半導体どうしを接合した接点に発生する熱起電力を信号として取り出す熱電対方式、金属或いは半導体の抵抗率が温度によって変化することを利用した抵抗率変化素子、また、或る種の結晶では温度が上昇したことにより結晶内の電荷の配置に偏りが生じ表面に電位発生する焦電型素子、更には、温度による磁気特性の変化を検出する熱磁気効果素子などを採用することができる。
・湿度検出には、HO或いはOH基の光吸収を測定する光学的測定法、水蒸気の吸着による材料の電気抵抗値変化を測定する湿度センサ等がある。
・各種ガスは、基本的にはガスの吸着に伴う、酸化物半導体の電気抵抗の変化を測定することにより検出する。
・気流(方向、流速、ガス種)の検出には、光学的測定法等があるが、システムへの搭載を考慮するとより小型にできるエアブリッジ型フローセンサが特に有用である。
・気圧、圧力の検出には、感圧材料を使用する、メンブレンの機械的変位を測定する等の方法がある。振動の検出にも同様に方法が用いられる。
(b)制御パラメータデータ
複写機の動作は制御部によって決定されるため、制御部の入出力パラメータを直接利用することが有効である。
(b-1)画像形成パラメータ
画像形成のために制御部が演算処理により出力する直接的なパラメータで、以下のような例がある。
・制御部によるプロセス条件の設定値で、例えば帯電電位、現像バイアス値、定着温度設定値など。
・同じく、中間調処理やカラー補正などの各種画像処理パラメータの設定値。
・制御部が装置の動作のために設定する各種のパラメータで、例えば紙搬送のタイミング、画像形成前の準備モードの実行時間など。
(b-2)ユーザー操作履歴
・色数、枚数、画質指示など、ユーザーにより選択された各種操作の頻度
・ユーザーが選択した用紙サイズの頻度。
(b-3)消費電力
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の総合消費電力あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
(b-4)消耗品消費情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)のトナー、感光体、紙の使用量あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
(b-5)故障発生情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の故障発生(種類別)の頻度あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)など。
(b-6)動作時間情報(作動時間情報)
・複写機の動作時間を計時手段によって計時して記憶する。
(b-7)プリント動作回数(作動回数情報)
・プリントアウト1枚ごとにカウントアップしていき、そのカウント値を記憶する。
(c)入力画像情報
ホストコンピュータから直接データとして送られる画像情報、あるいは原稿画像からスキャナーで読み取って画像処理をした後に得られる画像情報から、以下のような情報を取得することができる。
・着色画素累積数はGRB信号別の画像データを画素ごとにカウントすることにより求められる。
・例えば特許第2621879号の公報に記載されているような方法でオリジナル画像を文字、網点、写真、背景に分離し、文字部、ハーフトーン部などの比率を求めることができる。同様にして色文字の比率も求めることができる。
・着色画素の累積値を主走査方向で区切った領域別にカウントすることにより、主走査方向のトナー消費分布が求められる。
・画像サイズは制御部が発生する画像サイズ信号または画像データでの着色画素の分布により求められる。
・文字の種類(大きさ、フォント)は文字の属性データから求められる。
次に、本複写機における各種データの具体的取得法について説明する。
(1)温度データ
本複写機は、温度の情報を取得する温度センサとして、原理及び構造が簡単でしかも超小型にできる抵抗変化素子を用いるものを備えている。
(2)湿度データ
小型にできる湿度センサが有用である。基本原理は感湿性セラミックスに水蒸気が吸着すると、吸着水によりイオン伝導が増加しセラミックスの電気抵抗が低下することによる。感湿性セラミックスの材料は多孔質材料であり、一般的にはアルミナ系、アパタイト系、ZrO2−MgO系などが使用される。
(3)振動データ
振動センサは、基本的には気圧及び圧力を測定するセンサと同じであり、システムへの搭載を考慮すると超小型にできるシリコン利用のセンサが特に有用である。薄いシリコンのダイアフラム上に作製した振動子の運動を、振動子と対向して設けられた対向電極間との容量変化を計測する、或いはSiダイアフラム自体のピエゾ抵抗効果を利用して計測することができる。
(4)トナー濃度(4色分)データ
各色ごとにトナー濃度を検出してデータ化する。トナー濃度センサとしては従来より公知の方式のものを用いることができる。例えば、特開平6−289717号公報に記載されているような現像装置中の現像剤の透磁率の変化を測定するセンシングシステムにより、トナー濃度を検出することができる。
(5)感光体一様帯電電位(4色分)データ
各色用の感光体(40K,Y,M,C)について、それぞれ一様帯電電位を検出する。物体の表面電位を検知する公知の表面電位センサを用いることができる。
(6)感光体露光後電位(4色分)データ
光書込後の感光体(40K,Y,M,C)の表面電位を、(5)と同様にして検出する。
(7)着色面積率(4色分)データ
入力画像情報から、着色しようとする画素の累計値と全画素の累計値の比から着色面積率を色ごとに求め、これを利用する。
(8)現像トナー量(4色分)データ
感光体(40K,Y,M,C)上で現像された各色トナー像における単位面積あたりのトナー付着量を、反射型フォトセンサによる光反射率に基づいて求める。反射型フォトセンサは対象物にLED光を照射し、反射光を受光素子で検出するものである。トナー付着量と光反射率とには相関関係が成立するため、光反射率に基づいてトナー付着量を求めることができる。
(9)紙先端位置の傾き
給紙部(200)の給紙ローラから2次転写ニップに至る給紙経路のどこかに、転写紙をその搬送方向に直交する方向の両端で検知する光センサ対を設置し、搬送されてくる転写紙の先端付近の両端を検出する。両光センサについて、給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として、通過までの時間を計測し、時間のズレに基づいて送り方向に対する転写紙の傾きを求める。
(10)排紙タイミングデータ
排出ローラ対(図1の56)を通過後の転写紙を光センサで検出する。この場合も給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として計測する。
(11)感光体総電流(4色分)データ
感光体(40K,Y,M,C)からアースに流れ出る電流を検出する。感光体の基板と接地端子との間に、電流測定手段を設けることで、かかる電流を検出することができる。
(12)感光体駆動電力(4色分)
感光体の駆動源(モータ)が駆動中に費やす駆動電力(電流×電圧)を電流計や電圧計などによって検出する。
次に、本複写機の特徴的な構成について説明する。
本複写機は、上述のデータ記憶手段によって記憶している正常組データ群と、上述のデータ取得手段によって取得した各種のデータとに基づいて、MTS法によるマハラノビスの距離を求めて、装置内に異常が発生しているか否かを判定するようになっている。マハラノビスの距離を求めるためには、正常な状態の複写機から取得した複数種類の組データの集まりである正常組データ群を構築する必要がある。この構築については、本複写機と同一仕様の標準機(正常な状態)から取得した各種のデータによって構築してもよいし、完成直後あるいは初期運転時における本複写機から取得した各種のデータによって構築してもよい。なお、本複写機においては、上述した制御部1が、被検対象たる複写機の異常を判定する判定手段として機能している。
図5は、初期運転時に取得した各種のデータに基づいて正常組データ群を構築させるようにした場合におけるデータ処理の概要を示すフローチャートである。本複写機が工場から出荷された後(ステップ1:以下、ステップをSと記す)、ユーザーの元で初めに本複写機の主電源が投入されると(S2)、異常判定装置の一部である上述のCPU(1a)はその時点を期間計測開始タイミングとしてRAM(1b)に記憶させる(S3)。このRAM(1b)には、かかる期間計測開始タイミングから、ある一定の期間が経過したことを判断するために必要となる期間経過判断パラメータが、工場出荷に先立って格納されている。かかる期間経過判断パラメータとしては、経過時間閾値、経過日数閾値、経過月数閾値、プリント枚数閾値、運転時間閾値などが挙げられる。上述の期間計測開始タイミングから、これら期間経過判断パラメータに基づいて決定されるある一定の期間経過までの間、即ち、所定期間が経過するまでの間は、正常組データ群構築処理が実行される(S4でN、S5)。この所定期間内は、複写機のユーザーから見れば特別に使い勝手が変わることはなく、安定状態のデータが蓄積される。かかる所定期間に実施される正常組データ群構築処理では、データ取得手段によって取得可能な各種情報の組み合わせである組データがプリントジョブ中に取得され、正常組データ群の一部としてデータ記憶手段たるRAM1bに記憶される。上述の期間計測開始タイミングから所定期間が経過すると(S4でY)、正常組データ群構築処理に代えて、異常判定処理が実行される(S6)。この異常判定処理では、所定期間経過後のプリントジョブ中にデータ取得手段によって取得された各種情報からなる組データと、RAM(1b)内に記憶されている正常組データ群とに基づいてマハラノビスの距離が求められる。そして、得られたマハラノビスの距離に基づいて、複写機について異常ありか否かが判定される。
次に示す表1は、上述の正常組データ群構築処理において構築される取得データテーブルの一例である。この取得データテーブルでは、k種類の情報からなる組データをn組取得して逆行列を構成する例を示している。
Figure 2006349809
正常組データ群構築処理では、まず、1組目の組データを構成するk種類の情報(y11、y12・・・・・・y1k)がそれぞれデータ取得手段によって取得される。そして、データテーブル内の1行目のデータとして、RAM(1b)に記憶される。次いで、2組目の組を構成するk種類の情報(y21、y22・・・・・・y2k)がそれぞれデータ取得手段によって取得され、データテーブル内の2行目のデータとして、RAM(1b)内に記憶される。以降、3組目以降の組データがプリントジョブに伴って順次取得されていき、データテーブル内のデータとして記憶されていく。そして、上述の所定期間が経過する直前にn組目の組データが取得されて、データテーブル内のn行目のデータとしてRAM(1b)内に記憶される。所定期間が経過すると、各組データを構成するk種類の情報(データ)について、それぞれn個における平均と標準偏差(σ)とが求められて、それぞれn+1、n+2行目のデータとして、RAM内に記憶される。
上述の所定期間が経過してこのような取得データテーブル構築工程が終わると、その直後に、逆行列構築処理が行われる。この逆行列構築処理では、以下に説明する情報正規化工程と、相関係数算出工程と、逆行列変換工程とが実施される。
逆行列構築処理における情報正規化工程では、表1に示した取得データテーブルに基づいて、次の表2に示すような正規化データテーブルが構築される。
Figure 2006349809
データの正規化とは、各種情報について、その絶対値情報を変量情報に変換するための処理であり、次に示す関係式に基づいて、各種情報の正規化データが算出される。なお、次式におけるiは、n組の組データのうちの何れか1つであることを示す符号である。また、jは、k種類の情報のうちの何れか1つであることを示す符号である。
Figure 2006349809
上記情報正規化工程が終わると、次に、相関係数算出工程が行われる。この相関係数算出工程では、n組の正規化データ群において、それぞれk種類の正規化データのうち、互いに異なる2種類が成立し得る全ての組合せ(通り)について、次式に基づいて相関係数rpq(rqp)が算出される。
Figure 2006349809
全ての組合せについての相関係数rpq(rqp)が算出されると、次に、対角要素を1、その他のp行q列の要素を相関係数rpqとした、k×k個の相関係数行列Rが構築される。なお、この相関係数行列Rの内容を、次式に示す。
Figure 2006349809
このような相関係数算出工程が終わると、次に、行列変換工程が実施される。この行列変換工程により、上記数3で示した相関係数行列Rが、次式で示される逆行列A(R−1)に変換される。
Figure 2006349809
本複写機は、表1に示した正常組データ群たる取得データテーブルを構築する正常組データ群構築処理を行った後、異常判定処理を実施するのに先立って、以上のような情報正規化工程、相関係数算出工程、行列変換工程という一連のプロセスによって逆行列Aを構築する。そして、この逆行列AをRAM(1b)内に記憶する。
逆行列Aを構築すると、複写機内の異常の有無を判定する異常判定処理を実行する。この異常判定処理では、プリントジョブ毎に、データ取得手段によって定期的に取得した各種の情報の全て又は一部の組合せからなる組データについて、逆行列Aによる多次元空間内におけるマハラノビスの距離(以下、マハラノビス距離という)Dを、次式に基づいて算出する。
Figure 2006349809
図6は、正常組データ群構築処理から行列変換工程までの一連のプロセスを示すフローチャートである。同図において、まず、複写機の状態と関連があるk個の情報が、複写機を動作させながらn組取得される(ステップ1−1:以下、ステップをSと記す)。次に、情報の種類(j)毎に、上記数1の関係式に基づいた平均値と標準偏差σとが算出され、算出結果に基づいて正規化データテーブルが構築される(S1−2)。そして、正規化データテーブルに基づいて相関係数行列Rが構築された後(S1−3)、逆行列Aに変換される(S1−4)。
図7は、逆行列Aと各種取得データとに基づいてマハラノビス距離Dを算出する手順を示すフローチャートである。この手順では、まず、任意の状態でのk種類のデータx1,x2,・・・,xkが取得される(S2−1)。データの種類はy11,y12,・・・,y1kなどに対応する。次に、上記数1の関係式に基づいて、それぞれの取得データがX1,X2,・・・,Xkといった具合に規格化される。そして、すでに構築されている逆行列Aの要素akkを用いて決められた上記数5の関係式により、マハラノビス距離Dの二乗が算出される。図中の「Σ」は、添字pおよびqに関する総和を表している。
上記制御部(1)は、このようにして求めたマハラノビス距離Dを、予め設定した閾値と比較する。そして、マハラノビス距離Dが閾値よりも大きい場合には、取得された組データについて正常分布から大きくずれている異常データであると判定して、操作表示部3に故障発生注意情報を表示する。
RAM(1b)内に正常組データ群として機能する逆行列Aを記憶させておく例について説明したが、逆行列Aの代わりに、次のような正常組データ群を記憶させておいてもよい。即ち、正常組データ群構築処理で構築した上記取得データテーブルや、逆行列構築工程の途中で得られる上記正規化データテーブル、上記相関係数行列Rなどである。逆行列Aの代わりにこれら正常組データ群の何れかを記憶させた場合には、異常の判定に先立って、そのデータに基づいて逆行列Aを構築させればよい。
また、初期運転時に正常組データ群を構築する例について説明したが、本複写機と同一仕様の標準機から取得したデータに基づいて構築した正常組データ群を、RAMやROM等のデータ記憶手段に予め記憶させておいてもよい。
MTS法によれば、各種情報の全て又は一部の組合せからなる組情報の取得結果についての異常をMTS法によって判定することで、様々な種類の異常を広範囲に渡って発見することができる。しかも、個々の異常について、その原因の有無をそれぞれ監視する必要がないため、かかる監視による制御の煩雑化を回避することができる。ところが、このような異常の判定を行う場合には、異常を検出した際に、その異常についてどのような種類のものであるかを特定することが困難である。
そこで、本複写機では、異常の種類をいくつかのカテゴリに分類し、そのカテゴリ毎に、カテゴリ内の個々の異常の判定に必要な組データを取得する。そして、その取得結果と、これに対応する正常組データ群である逆行列Aとに基づいて、それぞれマハラノビス距離Dを求めるようになっている。
次に示す表3は、本複写機における異常の種類のカテゴリと、そのカテゴリ内における異常の判定に必要な組情報との関係の一例を示すテーブルである。
Figure 2006349809
表3においては、上述した(1)温度から(12)感光体駆動電力までの12項目33種類(5項目+7項目×4色分)の取得データに基づいて、3つのカテゴリの異常をそれぞれ判定する例を示している。同表に示すように、紙詰まり系の異常については、次の7項目13種類の情報からなる組データに基づいて判定することができる。即ち、(1)温度、(2)湿度、(3)振動、(7)着色面積率×4色分、(8)現像トナー量×4色分、(9)紙先端位置の傾き、及び(10)排紙タイミングである。以下、この組データを紙詰まり系組データという。
また、感光体劣化系の異常については、次の7項目22種類の情報からなる組データに基づいて判定することができる。即ち、(1)温度、(2)湿度、(5)感光体一様帯電電位×4色分、(6)感光体露光後電位×4色分、(7)着色面積率×4色分、(11)感光体総電流×4色分、及び(12)感光体駆動電力×4色分である。以下、この組データを感光体系組データという。
また、画像濃度変動系の異常は、次の7項目22種類の組データに基づいて判定することができる。即ち、(1)温度、(2)湿度、(4)トナー濃度×4色分、(5)感光体一様帯電電位×4色分、(6)感光体露光後電位×4色分、(7)着色面積率×4色分、及び(8)現像トナー量×4色分である。以下、この組データを濃度系組データという。
表3から明らかなように、紙詰まり系、感光体系、濃度系組データは、情報の種類の組合せが互いに異なっている。これは、カテゴリが異なれば、そのカテゴリ内における個々の異常の判定に有用なデータの組合せも異なってくるからである。よって、互いに種類の組合せの異なる少なくとも2以上の組データを構築し、それぞれについてマハラノビス距離Dを求めれば、発生した異常の種類をカテゴリの単位まで絞り込んで特定することができる。表3の例では、紙詰まり系、感光体系、濃度系組データのそれぞれについてマハラノビス距離Dを求めることで、異常の種類を3つのカテゴリの何れに該当するのかまで絞り込むことができる。
マハラノビス距離Dを求めるためには、被検対象の複写機から定期的に取得した組データの他に、これと同じ組合せの逆行列Aが必要になる。例えば同表の例であれば、紙詰まり系、感光体系、濃度系組データのそれぞれについて、12項目33種類(5項目+7項目×4色分)の情報からなる逆行列Aを共通に用いてしまうと、異常を正確に判定することができなくなる。紙詰まり系組データであれば、それと同じ7項目13種類の情報からなる逆行列Aを用いて、マハラノビス距離Dを求める必要がある。よって、判定に先立って、カテゴリ毎に、マハラノビス距離Dを求めるための逆行列Aを準備する必要がある。
それぞれの系統(紙詰まり系、感光体系、濃度系)のための逆行列Aを準備する方法は、大別して2通りある。第1の方法は、各系統についてそれぞれ専用の逆行列A(又はこれに代わる正常組データ群)をROM(1c)等のデータ記憶手段に記憶させておく方法である。第2の方法は、少なくとも各系統の組データに含まれる全種類の情報からなる全種組データについての逆行列Aだけを記憶させておく方法である。この方法の場合には、それぞれの系統のための個別の逆行列Aを、全種組データの集合からなる逆行列Aの中から選択した任意の正常値の組合せに基づいてそれぞれ構築する。例えば、表3の例であれば、全種組データ(12項目33種類)の集合からなる逆行列Aだけを記憶させておく。そして、紙詰まり系組データの集合からなる逆行列Aについては、全種組データの中から7項目13種類の情報を選択して構築するのである。かかる方法では、第1の方法に比べて、データ記憶手段に記憶させて置く情報量を少なくすることができる。そこで、本複写機においては、第2の方法で各系統についてそれぞれ専用の逆行列Aを構築するようになっている。
このようにして各系統用の逆行列Aをそれぞれ構築する場合には、各系統についてのマハラノビス距離Dの他に、全系統を包括したマハラノビス距離Dも求めることができる。そして、後者のマハラノビス距離を求めることで、各系統の異常の他に、その他の系統の異常も判定することができる。例えば、表3の例では、全種組データについてのマハラノビス距離Dを求めることで、紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系に加えて、その他のカテゴリの異常も判定することができる。
次に示す表4は、各カテゴリと、マハラノビス距離Dとの関係の一例を示している。なお、この表において、(Dは、表3における全種組データ(12項目33種類)についてのマハラノビス距離Dの二乗を示している。また、(Dは、紙詰まり系組データ(7項目13種類)についてのマハラノビス距離Dの二乗を示している。また、(Dは、感光体系組データ(7項目22種類)についてのマハラノビス距離Dの二乗を示している。また、(Dは、濃度系組データ(7項目22種類)についてのマハラノビス距離Dの二乗を示している。
Figure 2006349809
表4に示すように、各カテゴリに対応するマハラノビス距離(D、(D、(Dが何れも閾値未満(10)未満であったからと言って、複写機に異常が全くないとは限らない。それらが閾値未満であっても、全組情報についてのマハラノビス距離(Dが閾値以上になることもある。このような場合には、紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系の何れにも該当しない他のカテゴリの異常が発生していると考えられる。また、逆に、マハラノビス距離(D、(D、(Dが何れかが閾値未満(10)未満になったからと言って、全種組データについてのマハラノビス距離(Dも閾値以上になるとは限らない。複写機全体としては異常と言えないまでも、各カテゴリだけにそれぞれ着目すれば、軽微な異常と言えるものが発生している場合がある。このような場合には、各カテゴリについての何れかのマハラノビス距離が閾値以上になる一方で、全種組データについてのマハラノビス距離(Dは閾値未満になると考えられる。このように、各カテゴリについてのマハラノビス距離(D、(D、(Dに加えて、全種組データのマハラノビス(Dも求めることで、各カテゴリの異常の度合(軽微であるか否か)も判定することが可能になる。そこで、各組データにそれぞれ個別に対応する複数のマハラノビス距離と、全種組データについてのマハラノビス距離(Dとに基づいて異常を判定してもよい。
なお、それぞれのマハラノビス距離の二乗の閾値を何れも10に設定した例について説明したが、実際の異常に合わせて、閾値をそれぞれ異ならせる方が望ましい。また、全体異常のマハラノビス距離を求める際には、先に数5に示した関係式のkに33(33種類)が代入される。また、紙詰まり系の異常のマハラノビス距離を求める際には、kに13(13種類)が代入される。また、感光体劣化系や画像濃度変動系の異常のマハラノビス距離を求める際には、kに22(22種類)が代入される。
本複写機では、以上のようにして各系統の異常を判定するのであるが、これは、一連の判定工程における前段階にすぎない。具体的には、本複写機では、各系統の異常について、前判定、後判定という2段階の判定を行うようになっており、これまで説明してきた判定は前判定に相当する。そして、前判定、後判定それぞれで、専用の第1逆行列A、第2逆行列Aを用いるようになっている。
前判定で使用する第1正常組データ群たる逆行列Aは、次のようにして構築されたものである。即ち、運転初期に取得した各種のデータに基づいて逆行列Aを構築する場合、本複写機は、初めの故障が発生するまで、逆行列の構築に用いる各種データをサンプリングし続ける。そして、故障が発生した時点で、その時点から所定の第1期間よりも大きく遡った時期にサンプリングしたデータだけを抽出し、それらに基づいて逆行列Aを構築する。例えば、故障が発生した時点から30日(第1期間)よりも大きく遡った時期(31日以上遡った時期)にサンプリングしたデータだけに基づいて逆行列Aを構築する。故障が発生した時点の複写機は正常機ではないが、それよりも所定の第1期間よりも大きく遡った時期の複写機は、それほど異常が進行していないため、正常機とみなして差し支えないからである。かかる時期にサンプリングしたデータに基づいて構築した逆行列Aを前判定で用いるのである。標準機からサンプリングしたデータに基づいて逆行列Aを構築し、これを予めデータ記憶手段に記憶させておく場合にも、同様にしてそれぞれの系統の逆行列Aを構築する。なお、当然ながら、逆行列Aは、各系統毎にそれぞれ専用のものが構築される。また、故障とは、目に見えるあるいは比較的容易に認識することができ、且つ復旧させるまで装置の停止を余儀なくされる程度まで進行した異常のことを示す。
後判定で使用する第2正常組データ群たる逆行列Aは、次のようにして構築されたものである。即ち、故障が発生した時点で、その時点から所定の第2期間(第1期間<第2期間)よりも大きく遡った時期にサンプリングしたデータだけを抽出し、それらに基づいて逆行列Aを構築する。例えば、故障が発生した時点から40日(第2期間)よりも大きく遡った時期(41日以上遡った時期)にサンプリングしたデータだけに基づいて逆行列Aを構築する。第2期間は第1期間よりも長いので、このようにして構築した逆行列Aは、上述の逆行列Aよりも異常が進行していない状態の複写機からサンプリングされたものである。よって、正常さ加減が逆行列Aよりも大きくなる。かかる逆行列Aを用いて行う後判定は、逆行列Aを用いて行う前判定よりも判定基準を厳しくしていることになる。なお、当然ながら、逆行列Aも、各系統毎にそれぞれ専用のものが構築される。
図8は、本複写機の異常判定装置によって実施される判定工程の制御フローを示すフローチャートである。この判定工程では、まず、上述の逆行列Aを用いた前判定処理が行われる(S1)。そして、異常が検出された場合には(S2でY)、異常フラグがセットされた後(S3)、その異常の系統についての異常解消対策情報がデータ記憶手段内の各データから特定されて、操作表示部に表示される(S4)。この異常解消対策情報とは、例えば、「部品Aを注文して交換して下さいといった情報や、感光体劣化系の異常が発生した旨をサービスマンに伝えて下さいといった情報などである。本複写機では、各系統に対応した異常解消対策情報を予めデータ記憶手段に記憶しており、異常を検出した場合に、それらの中からその異常の系統に対応するものを特定して操作表示部に表示するのである。異常解消対策情報を操作表示部に表示すると、次に、全ての異常について判定を終了したか否かが判断され(S5)、終了していない場合には(S5でN)、上述のS1に制御がループせしめられる。このようなS1〜S5の工程により、全ての系統の異常についてその有無が前判定され、異常が検出された場合にはその都度、それに対応する異常解消対策情報が操作表示部に表示される。なお、異常解消対策情報を表示するのではなく、プリントアウトするようにしてもよい。
上述のS5で全ての系統について異常の有無を判定したと判断されると(S5でY)、次に、異常フラグについてセット中であるか否かが判断される(S6)。セット中であると判断されるのは、前判定で何れかの異常が検出された場合である。この場合(S6でY)、前判定で検出されなかった未検出異常について、後判定処理が行われた後(S7)、異常を検出したか否かが判断される(S8)。そして、検出した場合には(S8でY)、その系統についての異常解消対策情報が特定されて操作表示部に表示された後(S9)、全ての未検出異常について判定が終了したか否かが判断される(S10)。更に、全て終了したと判断された場合には(S10でY)、異常フラグが解除された後に(S11)、一連の制御フローが終了する。
以上の構成の本複写機では、前判定で検出されなかった異常について、判定基準をより厳しくして判定をやり直す後判定を行うことで、近い将来には前判定でも有りと判定される異常があるか否かを調べる。そして、かかる異常が認められた場合には、それについて、前判定で検出された異常とともにユーザーに対処させることで、せっかく苦労して被検対象を分解、組立したり、サービスマン派遣費用を支払ったりしたにもかかわらず、その直後に再び分解やサービスマンの派遣が必要になるという非効率的な事態の発生を抑える。これにより、従来に比べてより効率的な被検対象の保守を行うことができる。
なお、後判定の判定基準を前判定よりも厳しくする方法として、マハラノビス距離Dの算出に用いる逆行列をAからAに切り替える方法について説明したが、次のようにしてもよい。即ち、マハラノビス距離Dの二乗と比較する閾値を、第1閾値からそれよりも小さな第2閾値に切り替えるのである。
次に、本発明を適用した第2実施形態に係る複写機について説明する。なお、本第2実施形態に係る複写機の基本的な構成については、第1実施形態に係る複写機と同様であるので説明を省略する。
本複写機は、第1実施形態に係る複写機と同様にして、各系統の異常についてそれぞれ有無を判定するようになっている。但し、上述の後判定については行わない。その代わりに、何れかの系統の異常を検出した場合には、未検出異常について、近い将来に検出されるようになる可能性が高いか否かについて予測する。この予測は、上述のデータ取得手段による取得データに基づいて、上述の制御部(1)が行うようになっている。即ち、本複写機では、制御部が、取得データに基づいて未だ経過していない時点である未来時点における有無を予測する予測手段として機能している。なお、各系統の異常の有無については、データ取得手段による取得データを取得した時点、即ち既に経過してしまった時点における有無を判定しているので、過去時点における有無を判定していることになる。
データ記憶手段には、各部品について、それぞれ標準的な交換サイクル期間データあるいは清掃サイクル期間データを記憶している。交換サイクル期間データとは、標準的な交換サイクル期間を示すデータである。これは例えば次のようにして定められる。即ち、ある部品について、図9に示すような故障発生率の特性曲線が得られるとする。具体的には、部品にはその製品毎に品質差が生ずるが、使用開始時点(0時点)から累積動作時間がt2に達して時点で、全ての製品に故障が発生する。図中のt1は、このt2よりも早いタイミングで到来する時点であり、この時点で、全ての製品のうち、10%の製品に故障が発生する。例えば、このように故障発生率が10%になる時点t1を交換サイクル期間データとして定めるのである。清掃サイクル期間データも同様で、使用開始時点からある程度の故障発生率になるまでの期間が定められている。
上述のデータ取得手段は、取得データの1つとして、複写機の動作とともにカウントアップされる動作時間情報あるいはプリント動作回数情報を取得するようになっている。また、上述の制御部(1)には、既に述べたように操作表示部(3)が接続されており、これにより、各部品についての部品交換履歴情報や部品清掃履歴情報を入力してデータ記憶手段に記憶させることができる。即ち、操作表示部は、これら情報を入力するためのデータ入力手段として機能している。
予測手段たる制御部は、各部品について、上記動作時間情報あるいはプリント動作回数情報と、部品交換履歴情報あるいは部品清掃履歴情報とを比較して、最後になされた交換や清掃からどれくらい期間が経過しているのかを演算する。次いで、演算結果と、部品毎に定められた閾値とを比較して、最後になされた交換や清掃から所定の期間が経過していないか否かを判断する。ここで、所定の期間が経過していると判断した場合、近い将来、その部品の劣化や汚れの堆積に起因する異常が発生して、異常有りと判定されるようになる可能性が高いことになる。即ち、所定の期間が経過していないか否かを判断することで、未来時点における異常の有無を予測するのである。そして、近い将来に異常有りになる可能性が高いと予測して場合には、第1実施形態と同様にして、その異常の系統に対応する異常解消対策情報を特定、表示する。
これまで、異常判定装置を複写機本体内に搭載した例について説明したが、図10に示すように異常判定装置を複写機と別体に構成してもよい。同図において、異常判定装置は、中央管理センター等の管理施設に配設された管理装置と、複数のサービス拠点に配設された端末装置とから構成されている。各サービス拠点には、それぞれ被検対象としての複写機が配設されている。複写機内の各種センサ等によって取得された各種のデータは、データ通信装置と通信回線とを介して異常判定装置の管理装置に送信される。管理装置は、図示しないモデム等の通信手段により、各複写機から送信されてくる各種のデータを受信する。そして、ハードディスク等の情報記憶手段に記憶している複数の逆行列と、各複写機からそれぞれ送られてくる各種のデータとに基づいてマハラノビス距離を求めて、それぞれの複写機について異常の有無をカテゴリ別に判定する。この場合、複写機内に搭載された各種センサや制御部ではなく、通信回線を介して複写機から送られてくる各種のデータを受信する管理装置の通信手段が、データ取得手段として機能する。判定結果や異常解消対策情報は、管理装置から通信回線を介して各サービス拠点の端末装置に送られる。端末装置は、ディスプレイ等の表示手段により、その判定結果や異常解消対策情報を表示する。かかる構成では、複写機から離れた遠隔地にて、異常の判定や診断を行うことができる。更には、複数の複写機を1台の管理装置で集中管理して、それぞれの異常を判定することができる。通信回線としては、有線、無線の何れでもよく、電気回線のほか光ファイバーを用いたものなど、あらゆる形態のものを使用することができる。
以上、第1実施形態に係る複写機においては、紙詰まり系、感光体系などといった複数種類の正常組データ群たる逆行列についてそれぞれ、そのデータのサンプリングが行われた正常機に故障が発生した時点から所定の第1期間よりも大きく遡った時期に正常機からサンプリングされたデータだけを含む第1正常組データ群たる逆行列Aと、正常機に故障が発生した時点から、第1期間より長い期間である第2期間よりも大きく遡った時期に正常機から取得されたデータだけを含む第2正常組データ群たる逆行列Aとがデータ記憶手段に記憶されている場合に、判定手段たる制御部が次のような処理を行うようになっている。即ち、まず、上述の前判定にて、複数種類の正常組データ群にそれぞれ対応する複数の逆行列Aをそれぞれ個別に用いてそれぞれの逆行列Aに対応する異常の有無を判定する。そして、上述の後判定にて、少なくとも前判定で無しと判定した異常について、逆行列Aに代えて逆行列Aを用いることで判定基準をより厳しくする処理である。かかる構成では、後判定で用いる逆行列Aとして、前判定で用いる逆行列Aよりも、故障が発生した時点から大きく遡った時期の正常機からサンプリングした正常データを含むものを用いることにより、後判定での判定基準をより厳しくすることができる。
また、このようにして前判定と後判定で使用する逆行列を異ならせることに代えて、次のようにしてもよい。即ち、上述の前判定にて、複数種類の逆行列をそれぞれ個別に用いて複数のマハラノビス距離Dを求め、それぞれのマハラノビス距離Dの二乗を所定の第1閾値と比較してそれぞれ異常の有無を判定した後、上述の後判定にて、少なくとも前判定で無しと判定した異常について、第1閾値に代えてそれよりも小さな第2閾値を用いるのである。このようにしても、後判定における判定基準を前判定よりも厳しくすることができる。
また、第1実施形態や第2実施形態に係る複写機においては、複数種類の逆行列にそれぞれ対応する複数の異常について、それぞれ異常を解消するための異常解消対策情報をデータ記憶手段に記憶しており、且つ、前判定や後判定で何らかの異常が有りと判定された場合に、その異常に対応する異常解消対策情報をデータ記憶手段の記憶データから特定して操作者に報知する報知手段(CPUと操作表示部との組合せ)を設けている。かかる構成では、異常が発生した場合に、操作者に異常解消対策情報を提供することで、どの部品を交換して異常を解消したらよいのかや、どの部品を清掃して異常を解消したらよいのかを教えて、異常発生時に適切に対処してもらうことができる。
また、第2実施形態に係る複写機においては、複数種類の逆行列をそれぞれ個別に用いて複数のマハラノビス距離を求め、それぞれのマハラノビス距離Dを所定の閾値と比較してそれぞれ過去時点における異常の有無を判定するように、判定手段たる制御部を構成している。かかる構成では、マハラノビス距離Dに基づいて異常の有無を正確に判定することができる。
また、第2実施形態に係る複写機においては、被検対象たる複写機に対する部品交換又は部品清掃の履歴である部品交換履歴情報又は部品清掃履歴情報をデータ記憶手段に入力するためのデータ入力手段たる操作表示部を設けている。また、取得する複数種類のデータにおける少なくとも1つとして、複写機の作動時間情報たる動作時間情報、又は作動回数情報たるプリント動作回数を取得するようにデータ取得手段を構成している。操作者の操作表示部への操作によって入力された部品交換履歴情報又は部品清掃履歴情報と、上記作動時間情報又は作動回数情報とに基づいて交換後経過期間又は清掃後経過期間を算出し、算出結果と、所定の閾値たる交換サイクル期間データ又は清掃サイクル期間データとの比較に基づいて未来時点における異常の有無を予測させるように予測手段たる制御部を構成している。かかる構成では、交換後経過期間や清掃後経過期間に基づいて、最後になされた交換や清掃からどれくらい期間が経過しているのかを演算する。そして、演算結果と、部品毎に定められた交換サイクル期間データや清掃サイクル期間データとを比較して、最後になされた交換や清掃から交換サイクル期間や清掃サイクル期間を経過していないか否かを判断する。これにより、経過していると判断した場合には、近い将来、その部品の劣化や汚れの堆積に起因する異常が発生して、異常有りと判定されるようになる可能性が高いことになる。よって、部品交換履歴情報又は部品清掃履歴情報と、動作時間情報又はプリント動作回数と、所定の閾値たる交換サイクル期間データや清掃サイクル期間データ較に基づいて未来時点における異常の有無をある程度の精度で予測することができる。
第1実施形態に係る複写機を示す概略構成図。 同複写機のプリンタ部を示す概略構成図。 同複写機のタンデム部を示す部分拡大図。 同複写機の電気回路の一部を示すブロック図。 同複写機の異常判定装置によって実施されるデータ処理の概要を示すフローチャート。 同複写機によって実施される正常組データ群構築処理から行列変換工程までの一連のプロセスを示すフローチャート。 逆行列Aと各種取得データとに基づいてマハラノビス距離Dを算出する手順を示すフローチャート。 同複写機の異常判定装置によって実施される判定工程の制御フローを示すフローチャート。 同複写器内の部品の故障発生率特性の一例を示すグラフ。 複写機と別体で構成した異常判定装置の一例を複写機とともに示すブロック図。
符号の説明
1 制御部(判定手段、予測手段)
1a CPU(報知手段の一部)
1b RAM(データ記憶手段)
1c ROM(データ記憶手段)
2 各種センサ(データ取得手段の一部)
3 操作表示部(データ入力手段、報知手段の一部、データ取得手段の一部)

Claims (11)

  1. 互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群をデータ記憶手段に記憶させるデータ記憶工程と、被検対象から複数種類のデータを取得するデータ取得工程と、該データ記憶手段に記憶されている該正常組データ群、及び該データ取得工程における取得データに基づいて、該被検対象の異常の有無を判定する判定工程とを実施する異常判定方法において、
    上記データ記憶工程にて、上記正常組データ群として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものを上記データ記憶手段に記憶させ、
    且つ、上記判定工程にて、複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの正常組データ群に対応する異常の有無を判定する前判定工程と、該前判定工程で何れかの異常を有りと判定した場合に、少なくとも該前判定工程で無しと判定した異常について、該前判定工程とは異なる判定基準によって有無を判定する後判定工程とを実施することを特徴とする異常判定方法。
  2. 互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群をデータ記憶手段に記憶させるデータ記憶工程と、被検対象から複数種類のデータを取得するデータ取得工程と、該データ記憶手段に記憶されている該正常組データ群、及び該データ取得工程における取得データに基づいて、既に経過した時点である過去時点における該被検対象の異常の有無を判定する判定工程とを実施する異常判定方法において、
    上記データ記憶工程にて、上記正常組データ群として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものを上記データ記憶手段に記憶させ、
    上記判定工程にて、複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの正常組データ群に対応する異常の有無を判定し、
    且つ、該判定工程で何れかの異常を有りと判定した場合に、少なくとも該判定工程で無しと判定した異常について、上記取得データに基づいて未だ経過していない時点である未来時点における有無を予測する予測工程を実施することを特徴とする異常判定方法。
  3. 互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群を記憶するデータ記憶手段と、被検対象から複数種類のデータを取得するデータ取得手段と、該データ記憶手段に記憶されている該正常組データ群、及び該データ取得手段による取得データに基づいて、該被検対象の異常の有無を判定する判定手段とを備える異常判定装置において、
    上記正常組データ群として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものが上記データ記憶手段に記憶されている場合に、複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの正常組データ群に対応する異常の有無を判定する前判定を実施した後、該前判定で何れかの異常を有りと判定した場合に、少なくとも該前判定で無しと判定した異常について、判定基準をより厳しくして有無を判定する後判定を実施するように、上記判定手段を構成したことを特徴とする異常判定装置。
  4. 請求項3の異常判定装置において、
    上記複数種類の正常組データ群についてそれぞれ、そのデータのサンプリングが行われた正常機に故障が発生した時点から所定の第1期間よりも大きく遡った時期に該正常機からサンプリングされたデータだけを含む第1正常組データ群と、該正常機に故障が発生した時点から、該第1期間より長い期間である第2期間よりも大きく遡った時期に該正常機から取得されたデータだけを含む第2正常組データ群とが上記データ記憶手段に記憶されている場合に、上記前判定にて、上記複数種類の正常組データ群にそれぞれ対応する複数の第1正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの第1正常組データ群に対応する異常の有無を判定した後、上記後判定にて、少なくとも該前判定で無しと判定した異常について、該第1組データに代えて該第2正常組データ群を用いることで上記判定基準をより厳しくするように、上記判定手段を構成したことを特徴とする異常判定装置。
  5. 請求項3の異常判定装置において、
    上記前判定にて、上記複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いて複数のマハラノビス距離を求め、それぞれのマハラノビス距離を所定の第1閾値と比較してそれぞれ異常の有無を判定した後、上記後判定にて、少なくとも該前判定で無しと判定した異常について、該第1閾値に代えてそれよりも小さな第2閾値を用いることで上記判定基準をより厳しくするように、上記判定手段を構成したことを特徴とする異常判定装置。
  6. 請求項3乃至5の何れかの異常判定装置において、
    上記複数種類の正常組データ群にそれぞれ対応する複数の異常について、それぞれ異常を解消するための異常解消対策情報を上記データ記憶手段に記憶しており、且つ、上記前判定や後判定で何らかの異常が有りと判定された場合に、その異常に対応する異常解消対策情報を該データ記憶手段の記憶データから特定して操作者に報知する報知手段を設けたことを特徴とする異常判定装置。
  7. 互いに種類の異なる正常データの組合せである組データの集合からなる正常組データ群を記憶するデータ記憶手段と、被検対象から複数種類の情報を取得するデータ取得手段と、該データ記憶手段に記憶されている該正常組データ群、及び該データ取得手段による取得データに基づいて、既に経過した時点である過去時点における該被検対象の異常の有無を判定する判定手段とを備える異常判定装置において、
    上記正常組データ群として、互いにデータの種類の組合せが異なる複数種類のものが上記データ記憶手段に記憶されている場合に、複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いてそれぞれの正常組データ群に対応する異常の有無を判定するように上記判定手段を構成するとともに、
    該判定手段によって何れかの異常が有りと判定された場合に、少なくとも該判定手段によって無しと判定された異常について、上記取得データに基づいて未だ経過していない時点である未来時点における有無を予測する予測手段を設けたことを特徴とする異常判定装置。
  8. 請求項7の異常判定装置において、
    上記複数種類の正常組データ群をそれぞれ個別に用いて複数のマハラノビス距離を求め、それぞれのマハラノビス距離を所定の閾値と比較してそれぞれ上記過去時点における異常の有無を判定するように、上記判定手段を構成したことを特徴とする異常判定装置。
  9. 請求項7又は8の異常判定装置において、
    上記被検対象に対する部品交換又は部品清掃の履歴である部品交換履歴情報又は部品清掃履歴情報を上記データ記憶手段に入力するためのデータ入力手段を設け、上記複数種類のデータにおける少なくとも1つとして該被検対象の作動時間情報又は作動回数情報を取得するように上記データ取得手段を構成し、且つ、操作者の該データ入力手段への操作によって入力された該部品交換履歴情報又は部品清掃履歴情報と、該作動時間情報又は作動回数情報とに基づいて交換後経過期間又は清掃後経過期間を算出し、算出結果と所定の閾値との比較に基づいて上記未来時点における異常の有無を予測させるように上記予測手段を構成したことを特徴とする異常判定装置。
  10. 請求項7乃至9の何れかの異常判定装置において、
    上記複数種類の正常組データ群にそれぞれ対応する複数の異常について、それぞれ異常を解消するための異常解消対策情報を上記データ記憶手段に記憶しており、且つ、上記判定手段によって何らかの異常が有りと判定された場合に、その異常に対応する異常解消対策情報を該データ記憶手段の記憶データから特定して操作者に報知する報知手段を設けたことを特徴とする異常判定装置。
  11. 請求項10の異常判定装置において、
    上記予測手段によって何らかの異常の有りが予測された場合に、その異常に対応する異常解消対策情報を上記データ記憶手段の記憶データから特定して操作者に報知するように、上記報知手段を構成したことを特徴とする異常判定装置。
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